(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-6021(P2016-6021A)
(43)【公開日】2016年1月14日
(54)【発明の名称】チオレドキシン関連因子発現促進剤
(51)【国際特許分類】
A61K 36/18 20060101AFI20151211BHJP
A61K 36/23 20060101ALI20151211BHJP
A61K 36/25 20060101ALI20151211BHJP
A61K 36/28 20060101ALI20151211BHJP
A61K 36/60 20060101ALI20151211BHJP
A61K 36/70 20060101ALI20151211BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20151211BHJP
A61P 39/06 20060101ALI20151211BHJP
A61P 17/18 20060101ALI20151211BHJP
A61K 8/97 20060101ALI20151211BHJP
A61Q 5/00 20060101ALI20151211BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20151211BHJP
A61Q 19/08 20060101ALI20151211BHJP
A61Q 19/02 20060101ALI20151211BHJP
A61Q 17/04 20060101ALI20151211BHJP
A61K 36/00 20060101ALI20151211BHJP
【FI】
A61K35/78 C
A61K35/78 N
A61K35/78 M
A61K35/78 T
A61K35/78 D
A61K35/78 E
A61P43/00 111
A61P39/06
A61P17/18
A61K8/97
A61Q5/00
A61Q19/00
A61Q19/08
A61Q19/02
A61Q17/04
A61K35/78 X
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-127270(P2014-127270)
(22)【出願日】2014年6月20日
(71)【出願人】
【識別番号】000135324
【氏名又は名称】株式会社ノエビア
(72)【発明者】
【氏名】上野 省一
【テーマコード(参考)】
4C083
4C088
【Fターム(参考)】
4C083AA111
4C083AA112
4C083BB47
4C083CC01
4C083CC02
4C083CC31
4C083EE07
4C083EE12
4C083EE13
4C083EE14
4C083EE16
4C083EE17
4C083EE29
4C083FF01
4C088AB12
4C088AB13
4C088AB17
4C088AB26
4C088AB29
4C088AB34
4C088AB40
4C088AB43
4C088AB76
4C088AC01
4C088AC02
4C088AC03
4C088AC04
4C088AC05
4C088AC11
4C088AC13
4C088BA08
4C088BA09
4C088BA10
4C088BA11
4C088CA03
4C088CA04
4C088CA05
4C088CA06
4C088MA52
4C088MA63
4C088NA14
4C088ZA34
4C088ZA36
4C088ZA42
4C088ZA45
4C088ZA55
4C088ZA66
4C088ZA70
4C088ZA81
4C088ZA89
4C088ZA92
4C088ZA94
4C088ZA96
4C088ZB08
4C088ZB13
4C088ZB26
4C088ZC06
4C088ZC21
4C088ZC35
4C088ZC37
4C088ZC54
(57)【要約】
【課題】 チオレドキシン関連因子の発現を促進することにより、安全かつ効率的に生体の酸化トレスを減少させ、健康を維持し、また酸化ストレスに起因する様々な疾患及び症状を防ぐことを課題とする。
【解決手段】 オトギリソウ、センキュウ、トウキ、エゾニュウ、チシマザサ、ウド、オオヨモギ、オウゴン、エーデルワイス、クワ、シナノキ、イタドリ、ハイビスカス、ボタンボウフウから選択される1種又は2種以上を有効成分とするチオレドキシン関連因子発現促進剤。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オトギリソウ、センキュウ、トウキ、エゾニュウ、チシマザサ、ウド、オオヨモギ、オウゴン、エーデルワイス、クワ、シナノキ、イタドリ、ハイビスカス、ボタンボウフウから選択される1種又は2種以上を有効成分とするチオレドキシン関連因子発現促進剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オトギリソウ、センキュウ、トウキ、エゾニュウ、チシマザサ、ウド、オオヨモギ、オウゴン、エーデルワイス、クワ、シナノキ、イタドリ、ハイビスカス、ボタンボウフウから選択される1種又は2種以上を有効成分とするチオレドキシン関連因子発現促進剤に関する。
【背景技術】
【0002】
チオレドキシン系は生体における酸化ストレスに対する防御機構として働く(細胞工学Vol.25、No.2、2006、p143-148(非特許文献1))。また、チオレドキシンのトランスジェニックマウスは長寿になること(Mitsui A, et al: Antioxid Redox Signal (2002) 4: 693-696(非特許文献2))、ならびにチオレドキシンは脳梗塞、糖尿病への抵抗性を有すること(Takagi Y, et al: Proc Natl Acad Sci USA(1999) 96:4131-4136(非特許文献3), Hotta M, et al: J Exp Med (1998) 188:1445-1451(非特許文献4))やアレルギー性皮膚炎に有効であること(特開2007−269671号公報(特許文献1))が報告されており、チオレドキシンは活性酸素消去剤として幅広く使用されている(特開平9−157153(特許文献2))。しかしながら、チオレドキシン系は高分子タンパク質であるため、これらの化合物を対象に直接投与したとしても、これらの分子を細胞内に取り込むことができない。このため、生体内においてチオレドキシン系の発現を促進させることが望ましい。これらの発現を促進する成分としては、これまでにヨモギ抽出物又は青ジソ抽出物(国際公開番号WO2006/033351(特許文献3))、ケンフェロール類、クエルセチン類、センナ抽出物、イチョウ抽出物、テンチャエキス(国際公開番号WO2011/093469(特許文献 4))が知られているだけである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】細胞工学Vol.25、No.2、2006、p143-148
【非特許文献2】Mitsui A, et al: Antioxid Redox Signal (2002) 4: 693-696
【非特許文献3】Takagi Y, et al: Proc Natl Acad Sci USA(1999) 96:4131-4136
【非特許文献4】Hotta M, et al: J Exp Med (1998) 188:1445-1451
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−269671号公報
【特許文献2】特開平9−157153号公報
【特許文献3】国際公開番号WO2006/033351
【特許文献4】国際公開番号WO2011/093469
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、チオレドキシン関連因子の発現を促進することにより、安全かつ効率的に生体の酸化トレスを減少させ、健康を維持し、また酸化ストレスに起因する様々な疾患及び症状を防ぐことを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、天然由来の種々の成分について検討を行った結果、オトギリソウ、センキュウ、トウキ、エゾニュウ、チシマザサ、ウド、オオヨモギ、オウゴン、エーデルワイス、クワ、シナノキ、イタドリ、ハイビスカス、ボタンボウフウから選択される1種又は2種以上が、ヒト表皮角化細胞におけるチオレドキシン関連因子の発現を著しく促進することを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
すなわち本発明は、オトギリソウ、センキュウ、トウキ、エゾニュウ、チシマザサ、ウド、オオヨモギ、オウゴン、エーデルワイス、クワ、シナノキ、イタドリ、ハイビスカス、ボタンボウフウから選択される1種又は2種以上を有効成分とするチオレドキシン関連因子発現促進剤に関する。
【発明の効果】
【0008】
生体内におけるチオレドキシン関連因子の発現を促進することにより、安全かつ効率的に生体の酸化トレスを減少させ、健康を維持し、また酸化ストレスに起因する様々な疾患及び症状を防ぐ効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、オトギリソウ抽出物、センキュウ抽出物、トウキ抽出物、エゾニュウ抽出物、チシマザサ抽出物、ウド抽出物、オオヨモギ抽出物、エーデルワイス抽出物が、チオレドキシン遺伝子の発現を有意に促進する効果を示す図である。
【0010】
【
図2】
図2は、オトギリソウ抽出物、センキュウ抽出物、トウキ抽出物、エゾニュウ抽出物、チシマザサ抽出物、ウド抽出物、オオヨモギ抽出物、オウゴン抽出物、エーデルワイス抽出物、クワ抽出物、シナノキ抽出物、イタドリ新芽抽出物、イタドリ根抽出物、ハイビスカス抽出物、ボタンボウフウ抽出物が、チオレドキシンリダクターゼ遺伝子の発現を有意に促進する効果を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明で用いるオトギリソウとしては、トモエソウ(Hypericum ascyron L.),オトギリソウ(Hypericum erectum Thunb.),ヒメオトギリソウ(Hypericum japonicum Thunb.),セイヨウオトギリソウ(Hypericum perforatum L.)、エゾオトギリ(Hypericum yezoense)等のオトギリソウ属植物から選択される1種又は2種以上を用いることができる。これらのオトギリソウ属植物の中でも、オトギリソウ及びセイヨウオトギリソウから選択される1種又は2種を用いることが好ましく、さらにはオトギリソウを用いることが最も好ましい。
オトギリソウの使用部位としては、特に限定されず、全草、地上部位、根、葉、花、茎から選択される1種又は2種以上の部位を用いることができ、好ましくは開花期の地上部位を用いる。
オトギリソウは植物をそのまま、若しくはその抽出物を使用する。
【0012】
本発明において使用するオトギリソウ抽出物を調製する方法について以下に述べるが、これらの抽出溶媒及び抽出方法に限定されるものではない。抽出溶媒としては、水、エタノール、メタノール、イソプロパノール、イソブタノール、n−ヘキサノール、メチルアミルアルコール、2−エチルブタノール、n−オクチルアルコールなどのアルコール類、グリセリン、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ペンチレングリコール等の多価アルコール又はその誘導体、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチル−n−プロピルケトンなどのケトン類、酢酸エチル、酢酸イソプロピルなどのエステル類、エチルエーテル、イソプロピルエーテル、n−ブチルエーテル等のエーテル類などの極性溶媒から選択される1種又は2種以上の混合溶媒が好適に使用でき、また、リン酸緩衝生理食塩水を用いることができる。或いは、石油エーテル、n−ヘキサン、n−ペンタン、n−ブタン、n−オクタン、シクロヘキサン、スクワラン等の炭化水素類、四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、トリクロロエチレン、ベンゼン、トルエンなどの低極性若しくは無極性溶媒から選択される1種又は2種以上の混合溶媒も好適に使用することもできる。さらには、水や二酸化炭素、エチレン、プロピレン、エタノール、メタノール、アンモニアなどの1種又は2種以上の超臨界流体や亜臨界流体も用いることもできる。
【0013】
抽出方法としては、常圧、若しくは加圧,減圧下で、室温、冷却又は加熱した状態で含浸させて抽出する方法、水蒸気蒸留などの蒸留法を用いて抽出する方法、オトギリソウを圧搾して抽出物を得る圧搾法などが例示され、これらの方法を単独で、又は2種以上を組み合わせて抽出を行うこともできる。
【0014】
このようにして得られたオトギリソウ抽出物は、抽出物をそのまま用いることもできるが、その効果を失わない範囲で、脱臭、脱色、濃縮などの精製操作を加えたり、さらにはカラムクロマトグラフィーなどを用いて分画物として用いてもよい。これらの抽出物や、その精製物、分画物は、これらから溶媒を除去することによって乾固物とすることもでき、さらに、アルコールなどの溶媒に可溶化した形態、或いは乳剤の形態で用いることができる。
【0015】
本発明においては、オトギリソウの水、1,3−ブチレングリコール、エタノールから選択される1種又は2種以上の溶媒による抽出物を用いることが好ましい。
【0016】
本発明で用いるセンキュウとしては、センキュウ(Cnidium officinale Makino)及びその類縁植物を用いる。
センキュウの使用部位としては、特に限定されず、全草、地上部位、根、根茎、葉、花、茎、から選択される1種又は2種以上の部位を用いることができ、好ましくは根茎を用いる。
センキュウは植物をそのまま、若しくはその抽出物を使用する。抽出溶媒、抽出方法としては、上述のオトギリソウの場合と同様である。好ましい抽出溶媒としては水、1,3−ブチレングリコール、エタノールから選択される1種又は2種以上の溶媒を挙げることができる。
【0017】
本発明で用いるトウキとしては、トウキ(Angelica acutiloba Kitagawa又はAngelica acutiloba Kitagawa var. sugiyamae Hikino(Umbelliferae))及びその類縁植物を用いる。
トウキの使用部位は特に限定されず、全草、葉、茎、花、実、根から選択される1種又は2種以上の部位を用いることができ、好ましくは根を用いる。
トウキは植物をそのまま、若しくはその抽出物を使用する。抽出溶媒、抽出方法としては、上述のオトギリソウの場合と同様である。好ましい抽出溶媒としては1,3−ブチレングリコール、1,2−ペンタンジオール、プロピレングリコール、エタノール、水から選択される1種又は2種以上を用いることができ、さらには、エタノール水溶液を用いることが最も好ましい。
【0018】
本発明で用いるエゾニュウとしては、エゾニュウ(Angelica ursina(Rupr.)Maxim.)及びその類縁植物を用いる。
エゾニュウの使用部位は特に限定されず、全草、葉、茎、花、実、根から選択される1種又は2種以上の部位を用いることができ、好ましくは根を用いる。
エゾニュウは植物をそのまま、若しくはその抽出物を使用する。抽出溶媒、抽出方法としては、上述のオトギリソウの場合と同様である。好ましい抽出溶媒としては1,3−ブチレングリコール、1,2−ペンタンジオール、プロピレングリコール、エタノール、水から選択される1種又は2種以上を用いることができ、さらには、エタノール水溶液を用いることが最も好ましい。
【0019】
本発明で用いるチシマザサとしては、チシマザサ(Sasa kurilensis)及びその類縁植物を用いる。
チシマザサの使用部位は特に限定されず、全草、根、幼芽、葉、茎、花から選択される1種又は2種以上の部位を用いることができ、好ましくは幼芽を用いる。
チシマザサは植物をそのまま、若しくはその抽出物を使用する。抽出溶媒、抽出方法としては、上述のオトギリソウの場合と同様である。好ましい抽出溶媒としては1,3−ブチレングリコール、1,2−ペンタンジオール、プロピレングリコール、エタノール、水から選択される1種又は2種以上を用いることができ、さらには、エタノール水溶液を用いることが最も好ましい。
【0020】
本発明で用いるウドとしては、ウド(Aralia cordata)及びその類縁植物を用いる。
ウドの使用部位は特に限定されず、全草、葉、茎、花、実、根、新芽から選択される1種又は2種以上の部位を用いることができ、好ましくは根又は新芽を用いる。
ウドは植物をそのまま、若しくはその抽出物を使用する。抽出溶媒、抽出方法としては、上述のオトギリソウの場合と同様である。好ましい抽出溶媒としては1,3−ブチレングリコール、1,2−ペンタンジオール、プロピレングリコール、エタノール、水から選択される1種又は2種以上を用いることができ、さらには、エタノール水溶液を用いることが最も好ましい。
【0021】
本発明で用いるオオヨモギとしては、オオヨモギ(Artemisia montana)及びその類縁植物を用いる。
オオヨモギの使用部位は特に限定されず、全草、葉、茎、花、実、根から選択される1種又は2種以上の部位を用いることができ、好ましくは葉を用いる。
オオヨモギは植物をそのまま、若しくはその抽出物を使用する。抽出溶媒、抽出方法としては、上述のオトギリソウの場合と同様である。好ましい抽出溶媒としては1,3−ブチレングリコール、1,2−ペンタンジオール、プロピレングリコール、エタノール、水から選択される1種又は2種以上を用いることができ、さらには、エタノール水溶液を用いることが最も好ましい。
【0022】
本発明で使用するオウゴンは、コガネバナ(Scutellaria baicalensis)及びその類縁植物の根を用いる。
オウゴンは植物をそのまま、若しくはその抽出物を使用する。抽出溶媒、抽出方法としては、上述のオトギリソウの場合と同様である。好ましい抽出溶媒としては1,3−ブチレングリコール、1,2−ペンタンジオール、プロピレングリコール、エタノール、水から選択される1種又は2種以上を用いることができ、さらには、エタノール水溶液を用いることが最も好ましい。
【0023】
エーデルワイス(Leontopodium alpinum)は、キク科ウスユキソウ属に分類される高山植物であり、栽培されたものを用いる。
エーデルワイスの使用部位は特に限定されず、全草、葉、茎、花、実、根から選択される1種又は2種以上の部位を用いることができ、好ましくは根を除いた全草を用いる。
エーデルワイスは植物をそのまま、若しくはその抽出物を使用する。抽出溶媒、抽出方法としては、上述のオトギリソウの場合と同様である。好ましい抽出溶媒としては1,3−ブチレングリコール、1,2−ペンタンジオール、プロピレングリコール、エタノール、水から選択される1種又は2種以上を用いることができ、さらには、エタノール水溶液を用いることが最も好ましい。
【0024】
クワは、マグワ(Morus alba)及びその類縁植物を使用する。
クワの使用部位は特に限定されないが、葉、根皮から選択される1種又は2種の部位を用いることが好ましく、さらには葉を用いることが最も好ましい。
クワは植物をそのまま、若しくはその抽出物を使用する。抽出溶媒、抽出方法としては、上述のオトギリソウの場合と同様である。好ましい抽出溶媒としては1,3−ブチレングリコール、1,2−ペンタンジオール、プロピレングリコール、エタノール、水から選択される1種又は2種以上を用いることができ、さらには、エタノール水溶液を用いることが最も好ましい。
【0025】
シナノキは、シナノキ属(Tilia)に属する植物を使用する。
シナノキの使用部位は特に限定されないが、葉、花、実、根、幹、樹皮、根、根皮、新芽から選択される1種又は2種以上を用いることが好ましく、新芽若しくは花を用いることがさらに好ましく、新芽を用いることが最も好ましい。
シナノキは植物をそのまま、若しくはその抽出物を使用する。抽出溶媒、抽出方法としては、上述のオトギリソウの場合と同様である。好ましい抽出溶媒としては1,3−ブチレングリコール、1,2−ペンタンジオール、プロピレングリコール、エタノール、水から選択される1種又は2種以上を用いることができ、さらには、エタノール水溶液を用いることが最も好ましい。
【0026】
イタドリは、イタドリ(Polygonum cuspidatum;Polygonum japonicum;Fallopia japonica;Raynoutria japonica)、オオイタドリ(Polygonum sachalinense;Fallopia sachalinensis;Reynoutria sachalinensis)及びその類縁植物を用いる。
イタドリの使用部位は特に限定されないが、全草、葉、茎、花、実、根、新芽から選択される1種又は2種以上の部位を用いることができ、好ましくは根又は新芽を用いる。
イタドリは植物をそのまま、若しくはその抽出物を使用する。抽出溶媒、抽出方法としては、上述のオトギリソウの場合と同様である。好ましい抽出溶媒としては1,3−ブチレングリコール、1,2−ペンタンジオール、好ましい抽出溶媒としては1,3−ブチレングリコール、1,2−ペンタンジオール、プロピレングリコール、エタノール、水から選択される1種又は2種以上を用いることができ、さらには、エタノール水溶液を用いることが最も好ましい。
【0027】
ハイビスカスは、ハイビスカス(Hibiscus sabdariffa)及びその類縁植物を用いる。
ハイビスカスの使用部位は特に限定されないが、全草、葉、茎、花、実、根から選択される1種又は2種以上の部位を用いることができ、好ましくは花を用いる。
ハイビスカスは植物をそのまま、若しくはその抽出物を使用する。抽出溶媒、抽出方法としては、上述のオトギリソウの場合と同様である。好ましい抽出溶媒としては1,3−ブチレングリコール、1,2−ペンタンジオール、プロピレングリコール、エタノール、水から選択される1種又は2種以上を用いることができ、さらには、エタノール水溶液を用いることが最も好ましい。
【0028】
ボタンボウフウは、ボタンボウフウ(Peucedanum japonicum)及びその類縁植物を用いる。
ボタンボウフウの使用部位は特に限定されないが、全草、葉、茎、花、実、根から選択される1種又は2種以上の部位を用いることができ、好ましくは葉、若しくは根を用いる。
ボタンボウフウは植物をそのまま、若しくはその抽出物を使用する。抽出溶媒、抽出方法としては、上述のオトギリソウの場合と同様である。好ましい抽出溶媒としては1,3−ブチレングリコール、1,2−ペンタンジオール、プロピレングリコール、エタノール、水から選択される1種又は2種以上を用いることができ、さらには、エタノール水溶液を用いることが最も好ましい。
【0029】
オトギリソウ、センキュウ、トウキ、エゾニュウ、チシマザサ、ウド、オオヨモギ、オウゴン、エーデルワイス、クワ、シナノキ、イタドリ、ハイビスカス、ボタンボウフウは、チオレドキシン関連因子発現を促進する作用を有する。
【0030】
オトギリソウ、センキュウ、トウキ、エゾニュウ、チシマザサ、ウド、オオヨモギ、エーデルワイスは、チオレドキシン遺伝子の発現を有意に促進する作用を有する。
【0031】
オトギリソウ、センキュウ、トウキ、エゾニュウ、チシマザサ、ウド、オオヨモギ、オウゴン、エーデルワイス、クワ、シナノキ、イタドリ、ハイビスカス、ボタンボウフウは、チオレドキシンリダクターゼ遺伝子の発現を有意に促進する作用を有する。
【0032】
本発明のチオレドキシン関連因子発現促進剤は、デキストリン、シクロデキストリン等の薬学的に許容し得るキャリアーその他任意の助剤を用いて、定法に従い、粉末状、顆粒状、錠剤状、液状等の任意の剤型に製剤化することができる。この際、助剤としては、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、潤沢剤、安定剤、矯味・矯臭剤等を用いることができる。チオレドキシン関連因子発現促進剤は、他の組成物(例えば、皮膚外用剤、美容用飲食品等)に配合して使用することができる他、軟膏剤、外用液剤、貼付剤として使用することができる。
【0033】
本発明のチオレドキシン関連因子発現促進剤を製剤化した場合、オトギリソウ、センキュウ、トウキ、エゾニュウ、チシマザサ、ウド、オオヨモギ、オウゴン、エーデルワイス、クワ、シナノキ、イタドリ、ハイビスカス、ボタンボウフウの含有量は、特に限定されるものではなく、目的に応じて適宜設定することができる。
【0034】
本発明のチオレドキシン関連因子発現促進剤は、必要に応じてチオレドキシン関連因子発現促進作用を有する他の成分とともに配合して用いることができる。
【0035】
本発明のチオレドキシン関連因子発現促進剤の投与方法としては、経皮投与、経口投与、経粘膜投与等が挙げられるが、目的に応じてその予防・改善等に公的な方法を適宜選択すればよい。
【0036】
また本発明のチオレドキシン関連因子発現促進剤の投与量も、目的、適用方法、適用期間等によって適宜増減すればよい。
【0037】
本発明のチオレドキシン関連因子発現促進剤によって生体の健康を維持し、また酸化ストレスに起因する様々な疾患及び症状を防ぐことが可能である。このような疾患及び症状としては、制限されることなく、癌、糖尿病、自己免疫疾患、例えば関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、抗リン脂質抗体症候群、皮膚筋炎、全身性皮膚硬化症、シェーグレン症候群、ギラン・バレー症候群、慢性萎縮性胃炎、大動脈炎症候群、グッドパスチャー症候群、急速進行性糸球体腎炎、バセドウ病、慢性円板状エリテマトーデス又は習慣性流産、虚血性疾患、例えば狭心症、心筋梗塞、脳梗塞又は閉塞性動脈硬化症、アレルギー疾患、例えば気管支ぜんそく、アレルギー性鼻炎、花粉症、アレルギー性胃腸炎、じんま疹、接触皮膚炎又はアトピー性皮膚炎、皮膚の老化、色素沈着、皴、脂漏症、日焼け、火傷、アクネ、皮膚のたるみ、肥満、高血圧、メタボリックシンドローム、貧血が挙げられる。ただし、本発明のチオレドキシン関連因子発現促進剤は、これらの用途以外にもチオレドキシン関連因子発現促進作用を発揮することに意義のある全ての用途に用いることができる。
【0038】
本発明のチオレドキシン関連因子発現促進剤は、優れたチオレドキシン関連因子発現促進作用を有するとともに、皮膚に適用した場合の使用感と安全性に優れているため、例えば、皮膚外用剤に配合するのに好適である。
【0039】
皮膚外用剤の剤型は任意であり、例えば、ローションなどの可溶化系、クリームや乳液などの乳化系、カラミンローション等の分散系として提供することができる。さらに、噴射剤と共に充填したエアゾール、軟膏剤、粉末、顆粒などの種々の剤型で提供することもできる。
【0040】
なお、皮膚外用剤には、チオレドキシン関連因子発現促進剤の他に、必要に応じて、通常医薬品、医薬部外品、皮膚化粧料、毛髪用化粧料及び洗浄料に配合される、油性成分、保湿剤、粉体、色素、乳化剤、可溶化剤、洗浄剤、紫外線吸収剤、増粘剤、薬剤、香料、樹脂、防菌防黴剤、アルコール類等を適宜配合することができる。また、本発明の効果を損なわない範囲において、他の保湿剤、細胞賦活剤、あるいは抗酸化剤等との併用も可能である。
【実施例】
【0041】
以下にチオレドキシン関連因子発現促進剤の実施例について詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はこれによってなんら限定されるものではない。
【0042】
[オトギリソウ抽出物]
開花期のセイヨウオトギリソウの地上部位全草を乾燥後細切し、20質量倍量の50v/v%エタノール水溶液に浸漬し、ろ過後ろ液を採取し、凍結乾燥したものをオトギリソウ抽出物とした。
【0043】
[センキュウ抽出物]
センキュウの根茎を乾燥後細切し、20質量倍量の50v/v%エタノール水溶液に浸漬し、ろ過後ろ液を採取し、凍結乾燥したものをセンキュウ抽出物とした。
【0044】
[トウキ抽出物]
トウキの根を乾燥後細切し、20質量倍量の50v/v%エタノール水溶液に浸漬し、ろ過後ろ液を採取し、凍結乾燥したものをトウキ抽出物とした。
【0045】
[エゾニュウ抽出物]
エゾニュウの根を乾燥後細切し、20質量倍量の50v/v%エタノール水溶液に浸漬し、ろ過後ろ液を採取し、凍結乾燥したものをエゾニュウ抽出物とした。
【0046】
[チシマザサ抽出物]
チシマザサの葉を乾燥後細切し、20質量倍量の50v/v%エタノール水溶液に浸漬し、ろ過後ろ液を採取し、凍結乾燥したものをチシマザサ抽出物とした。
【0047】
[ウド抽出物]
ウドの新芽を、20質量倍量の50v/v%エタノール水溶液に浸漬し、ろ過後ろ液を採取し、凍結乾燥したものをウド抽出物とした。
【0048】
[オオヨモギ抽出物]
オオヨモギの葉を乾燥後細切し、20質量倍量の50v/v%エタノール水溶液に浸漬し、ろ過後ろ液を採取し、凍結乾燥したものをオオヨモギ抽出物とした。
【0049】
[オウゴン抽出物]
コガネバナの根を乾燥後細切し、20質量倍量の50v/v%エタノール水溶液に浸漬し、ろ過後ろ液を採取し、凍結乾燥したものをオウゴン抽出物とした。
【0050】
[エーデルワイス抽出物]
エーデルワイスの地上部部位全草を乾燥後細切し、20質量倍量の50v/v%エタノール水溶液に浸漬し、ろ過後ろ液を採取し、凍結乾燥したものをエーデルワイス抽出物とした。
【0051】
[クワ抽出物]
マグワの葉を乾燥後細切し、20質量倍量の50v/v%エタノール水溶液に浸漬し、ろ過後ろ液を採取し、凍結乾燥したものをクワ抽出物とした。
【0052】
[シナノキ抽出物]
フユボダイジュノ新芽を乾燥後細切し、20質量倍量の50v/v%エタノール水溶液に浸漬し、ろ過後ろ液を採取し、凍結乾燥したものをシナノキ抽出物とした。
【0053】
[イタドリ新芽抽出物]
イタドリの新芽を乾燥後細切し、20質量倍量の50v/v%エタノール水溶液に浸漬し、ろ過後ろ液を採取し、凍結乾燥したものをイタドリ新芽抽出物とした。
【0054】
[イタドリ根抽出物]
イタドリの根を乾燥後細切し、20質量倍量の50v/v%エタノール水溶液に浸漬し、ろ過後ろ液を採取し、凍結乾燥したものをイタドリ根抽出物とした。
【0055】
[ハイビスカス抽出物]
ハイビスカスの花を、20質量倍量の50v/v%エタノール水溶液に浸漬し、ろ過後ろ液を採取し、凍結乾燥したものをハイビスカス抽出物とした。
【0056】
[ボタンボウフウ抽出物]
ボタンボウフウの葉を乾燥後後細切し、20質量倍量の50v/v%エタノール水溶液に浸漬し、ろ過後ろ液を採取し、凍結乾燥したものをボタンボウフウ抽出物とした。
【0057】
[チオレドキシン関連因子発現の確認]
チオレドキシン関連遺伝子の発現、下記の手順で確認した。
正常ヒト表皮角化細胞を6×10
5個/ウェルとなるように6ウェルプレートに播種し、5%FBSを含むDMEM培地にて一晩培養した。植物抽出物を溶解した培地に交換し、37℃、5% CO
2インキュベーター内で24時間培養した。細胞からのTotal RNA抽出はTrizol reagentを用い、ライフテクノロジーズ社のプロトコールに従って調製した。cDNA合成後に下記表のプライマーを使用してリアルタイムPCRにより遺伝子発現を確認した。内部標準として下記表1のGAPDHを使用した。また、植物抽出物の培地への添加量は、単独の添加で細胞毒性を示さない濃度を添加量とし、それぞれ設定した。またコントロールとして、植物抽出物無添加の培地で同様の実験を行い、コントロールの発現量を1とした相対値で結果を
図1、
図2に示した。
【0058】
【表1】
【0059】
図1に示した通り、オトギリソウ抽出物、センキュウ抽出物、トウキ抽出物、エゾニュウ抽出物、チシマザサ抽出物、ウド抽出物、オオヨモギ抽出物、エーデルワイス抽出物は、チオレドキシン遺伝子の発現を有意に促進する作用を有し、その効果はポジティブコントロールであるクエルセチンと同程度、若しくははるかに凌駕するものであった。
【0060】
図2に示した通り、オトギリソウ抽出物、センキュウ抽出物、トウキ抽出物、エゾニュウ抽出物、チシマザサ抽出物、ウド抽出物、オオヨモギ抽出物、オウゴン抽出物、エーデルワイス抽出物、クワ抽出物、シナノキ抽出物、イタドリ新芽抽出物、イタドリ根抽出物、ハイビスカス抽出物、ボタンボウフウ抽出物は、チオレドキシンリダクターゼ遺伝子の発現を有意に促進する効果を発揮した。