(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-65346(P2016-65346A)
(43)【公開日】2016年4月28日
(54)【発明の名称】裏地用経編み地
(51)【国際特許分類】
D04B 21/00 20060101AFI20160401BHJP
A41D 27/02 20060101ALI20160401BHJP
【FI】
D04B21/00 A
A41D27/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2014-196227(P2014-196227)
(22)【出願日】2014年9月26日
(71)【出願人】
【識別番号】514244550
【氏名又は名称】アートボーン企画株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095430
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 勲
(72)【発明者】
【氏名】竹内 宏恵
【テーマコード(参考)】
3B035
4L002
【Fターム(参考)】
3B035AA23
3B035AB05
3B035AD04
4L002AA05
4L002AA06
4L002AA07
4L002AB02
4L002CA00
4L002CA03
4L002CA04
4L002EA00
4L002EA02
4L002EA05
4L002EA06
4L002FA02
(57)【要約】
【課題】簡単な構成で編み組織が緻密で、面ファスナ等との係合もなく、ある程度の伸縮性も有した裏地用経編み地を提供する。
【解決手段】第一の筬L1により形成された第一編み組織12と、第二の筬L2により形成された第二編み組織14と、第一第二編み組織12,14と交差して編成された第三編み組織16とを備える。第一第二編み組織12,14は、経糸11,13がループを形成せずに、緯方向に複数ウェール分振られて編成されている。第三編み組織16は、鎖編みにより形成され、複数ウェール分振られた第一第二編み組織12,14を、生地面に押さえるように編成される。経糸11,13,15は、非弾性糸から成る
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の筬により形成された第一編み組織と、第二の筬により形成された第二編み組織と、前記第一第二編み組織と交差して編成された第三編み組織とを備え、前記第一第二編み組織は、経糸が緯方向に複数ウェール分振られて編成され、前記第三編み組織は、鎖編みにより形成され、複数ウェール分振られた前記一第二編み組織を、生地面に押さえるように編成されていることを特徴とする裏地用縦編み地。
【請求項2】
前記組織を形成した経糸は、非弾性糸から成る請求項1記載の裏地用縦編み地。
【請求項3】
前記第一編み組織は、ループを形成しない挿入組織により形成されている請求項1記載の裏地用縦編み地。
【請求項4】
前記第二編み組織は、ループを形成しない挿入組織により形成されている請求項1記載の裏地用縦編み地。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、雨具やスキーウエア等の防寒着、その他衣服の裏地に用いられる裏地用経編み地に関する。
【背景技術】
【0002】
衣服の裏地は、着用時の滑りや伸縮性を良くしたり、通気性や保温性、吸湿性を考慮して、衣服の表地の裏側に取り付けられている。従って、このような裏地は、特許文献1,2に開示されているように、伸縮性や通気性等に優れた構造の編み地が用いられていた。具体的には、上記特許文献に記載されているように、丸編み地であるシングル丸編み地やダブル丸編み地、経編み地であるシングルトリコット編み地やダブルトリコット編み地、シングルラッシェル編み地やダブルラッシェル編み地などである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−69726号公報
【特許文献2】特開2002−220718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1,2に開示された編み地の構造は、経編みの構造がシングルデンビー編みとシングルコード編み等の組合せによるもので、伸縮性があるが、組織の緻密さがなく、しかも経糸がループを形成して編成されているので、面ファスナの雄面に経糸が引っかかりやすいものである。また、雄面に係合した経糸は、生地表面にループ状に引き出され、さらに引っかかりやすくなる。従って、これが繰り返されると、裏地の表面に多数のループが形成された状態となり、面ファスナの雄面がさらに付きやすくなり、外観上も良好なものではなくなってしまうものであった。しかも、着用時に面ファスナの雄面に裏地が引っかかると、スムーズに着用できず、引っかかりを直して着直さなければならず、不便なものであった。
【0005】
また、このような面ファスナの雄面に係合しない薄い織物の裏地も、衣服に用いられているが、編み地ではないので伸縮性や通気性が低く、防寒着や雨具等には用いることができないものであった。
【0006】
この発明は、上記背景技術に鑑みて成されたものであり、簡単な構成で編み組織が緻密で、面ファスナ等との係合もなく、ある程度の伸縮性も有した裏地用経編み地を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、第一の筬により形成された第一編み組織と、第二の筬により形成された第二編み組織と、前記第一第二編み組織と交差して編成された第三編み組織とを備え、前記第一第二編み組織は、経糸が緯方向に複数ウェール分振られて編成され、前記第三編み組織は、鎖編みにより形成され、複数ウェール分振られた前記一第二編み組織を、生地面に押さえるように編成されている裏地用縦編み地である。
【0008】
前記各組織を形成した経糸は、非弾性糸から成るものである。前記第一編み組織は、ループを形成しない挿入組織により形成されている。また、前記第二編み組織も、ループを形成しない挿入組織により形成されている。
【発明の効果】
【0009】
この発明の裏地用経編み地によれば、簡単な構造で編み組織が緻密であるとともに通気性や伸縮性があり、表面性状も滑らかな裏地を提供することができる。これにより、衣服等に設けられた面ファスナの雄面が付着しにくく、裏地に毛羽立ちも生じさせないものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】この発明の第一実施形態の経編み地の編組織を示す図である。
【
図2】この発明の第二実施形態の経編み地の編組織を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、この発明の実施形態の経編み地について、図面に基づいて説明する。
図1は、この発明の第一実施形態の裏地用経編み地の組織を示す。この実施形態の経編み地10は、
図1に示すような第一編み組織12と第二編み組織14、及び第三編み組織16とを備えている。
【0012】
第一編み組織12は、第一の筬L1により形成され、経糸11により、第一の筬L1の糸位置番号(3−1/1−3/3−0/0−2/2−0/0−3)の繰り返しで、ループを形成しない挿入組織により編成される。第二編み組織14は、経糸13により、第二の筬L2の糸位置番号(3−2/2−3/3−0/0−1/1−0/0−3)の繰り返しで、ループを形成しない挿入組織により編成される。
【0013】
さらに、第三編み組織16は、第三の筬L3により形成され、経糸15により第三の筬L3の糸位置番号(1−0/0−1)の繰り返しの鎖編みの編み組織で編成され、第一第二編み組織12,14と交差している。
【0014】
各第一第二第三編み組織12,14,16の経糸11,13,15は、非弾性糸で、ポリエステルやナイロン、キュプラ、アセテート、ポリウレタンあるいはそれらを複合した糸等が用いられる。太さは適宜選択され、例えば30〜100デニール、好ましくは50〜75デニールのものである。また、各第一第二第三編み組織12,14,16の経糸11,13,15で、糸の太さを変えても良く、例えば鎖編みの第三編み組織16の経糸15のみを太くしても良く、又は各第一第二第三編み組織12,14のいずれかの経糸11,13のみを太くしても良い。
【0015】
この実施形態の経編み地10の製造は、第一の筬L1により第一編み組織12を形成し、第二の筬L2により第二編み組織14を形成し、第三の筬L3により第三編み組織16を形成する。このとき、第一第二編み組織12,14の経糸11,13が、鎖編みの第三編み組織16の経糸15により、編成される生地側に押さえられるように、即ち、第一第二編み組織12,14の経糸11,13と経糸15が交差するように編成される。
【0016】
この実施形態の経編み地10は、経編みによる挿入組織である第一第二編み組織12,14の経糸11,13を、鎖編みの第三編み組織16の経糸15が押さえるように編成され、ループ部分や浮き上がった部分の糸がなく、経糸11,13,15が面ファスナの雄面等に引っかかりにくいものである。しかも、縦編み地の構造により、一定の伸縮性があり、着用時にも不自由さはない。従って、裏地に使用した際に、面ファスナの雄面のような引っかかりやすい対象物に対しても、引っかかることなく表面が滑り、表面の状態を良好に保つ。従って、衣服の着用時に、雄面に裏地が付着してしまうことがなく、しかも伸縮性もあるので、きわめて着用しやすいものである。
【0017】
この発明の裏地用経編み地を用いた衣服としては、スキーウエアや雨具、ウインドブレーカ、その他の防寒着等の上着やズボンに用いることができる。また、それ以外の様々な衣服の裏地としても適宜利用することができる。
【0018】
次に、この発明の経編み地の第二実施形態について、
図2を基にして説明する。ここで、上記実施形態と同様の部材は、同一の符号を付して説明を省略する。この実施形態の経編み地20は、第二編み組織22の経糸21の振り幅を上記実施形態の第二編み組織14よりも大きくしたものである。第二編み組織22は、経糸13により第二の筬L2の糸位置番号(0−1/1−0/0−5/5−4/4−5/5−0)の繰り返しで表される。
【0019】
この実施形態の経編み地20によっても、上記実施形態と同様の機能を有し、同様の作用効果を有し、さらに、編み目の開口部が大きくなり、通気性が向上するものである。
【0020】
なお、この発明の裏地用縦編み地は、第一第二編み組織は適宜の組織を用いることができ、一定の通気性と伸縮性を備えて、且つ面ファスナの雄面に引っかかりにくい表面であれば良い。
【0021】
また、この発明の裏地用縦編み地は、上記実施形態に限定されるものではなく、上述の挿入組織に加えて、ループを有した編み組織を形成し、さらに強度や雄面に対する耐性を高めた編み地を形成することもできる。
【符号の説明】
【0022】
10 経編み地
11,13,15,21 経糸
12 第一編み組織
14,22 第二編み組織
16 第三編み組織
L1,L2,L3 筬