特開2016-67324(P2016-67324A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-67324(P2016-67324A)
(43)【公開日】2016年5月9日
(54)【発明の名称】うどん麺の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 7/109 20160101AFI20160404BHJP
【FI】
   A23L1/16 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【全頁数】4
(21)【出願番号】特願2014-202732(P2014-202732)
(22)【出願日】2014年10月1日
(71)【出願人】
【識別番号】506364891
【氏名又は名称】株式会社姫太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100091465
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 久夫
(72)【発明者】
【氏名】唐津 雅徳
【テーマコード(参考)】
4B046
【Fターム(参考)】
4B046LA02
4B046LB04
4B046LC11
4B046LE18
4B046LG29
4B046LG51
4B046LP01
4B046LP10
4B046LP15
4B046LP41
4B046LP51
4B046LP71
(57)【要約】      (修正有)
【課題】使用できる小麦粉が限定されず、食塩入りの従来のうどん麺と風味が大きく異ならないうどん麺を製造する方法の提供。
【解決手段】小麦粉100重量部に対して無塩食酢4.0重量部を添加し、27〜30重量部の冷水を加えて真空下に混練し、1.9〜2.1mm厚の麺帯に圧延して麺線を切り出し、麺線を弱酸性の熱湯で7〜8分茹でた後、冷水、好ましくは5°C以下で冷却してから個装するうどん麺の製造方法。個装したうどん麺は10℃以下に保冷する。
【効果】食酢によってグルテンの網目構造が展開されてグルテンが引き締められ、うどん麺特有の食感が得られ、又食塩を使用していないので、糖尿病患者や高血圧症患者も安心して食せる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
小麦粉100重量部に対し、無塩食酢4.0重量部及び冷水27〜30重量部を添加して真空下に混練し、1.9〜2.1mm厚の麺帯に圧延して麺線を切り出し、この麺線を弱酸性の熱湯で7〜8分茹でた後、冷水で冷却し、個装するようにしたことを特徴とするうどん麺の製造方法。
【請求項2】
個装したうどん麺を10°C以下で保冷するようにした請求項1記載のうどん麺の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はうどん麺の製造方法に関し、特に使用できる小麦粉が限定されず、食塩入りの従来のうどん麺と風味が大きく異なることのないうどん麺を製造するようにした製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
うどん麺を製造する場合、中力粉などの小麦粉に対して3〜5重量%の食塩及び必要量の水を添加し、この原料をミキサーを用いて混練して生地を調製し、その生地を圧延して所定の厚さの麺帯とし、これを麺線に切り出すようにした方法が広く採用されている。
【0003】
ここで、うどん麺に食塩を添加する理由は、(1)グルテンを引き締めて生地の粘弾性を増加させ、(2)生地の発酵を抑制して防腐し、(3)生地の乾燥を抑制し、(4)温度変化の生地に対する影響を少なくし、(5)うどん麺の風味や食感をよくする、ためであるとされている。
【0004】
他方、糖尿病患者や高血圧症患者はパン類や麺類の摂取が制限される。通常、パン類や麺類には小麦粉100重量部に対して2〜4重量部程度の食塩が添加されており、これが腎臓に対する負担や血圧上昇の原因となるからとされている。したがって、うどん麺についても食塩の使用量を少なくすることが求められる。
【0005】
これに対し、粗蛋白質含量が8〜10重量%の小麦粉から主としてなる穀粉に対して食塩を添加してないかまたは1重量%以下の割合で添加して調製した製麺原料を、混練して、減圧下にて麺帯に押し出し、押し出した麺帯を圧延した後、麺線に切り出すようにした製造方法が提案されている(特許文献1)。
【0006】
また、うどんの原料粉を、米酢に梅の果肉成分を浸出させた梅酢に南天の実の粉末、笹の葉の粉末、赤紫蘇の葉の粉末のうち少なくとも二種以上の少量を添加して成る薬草入り梅酢の適量と牛乳の適量で混練して麺生地を調製し、製麺するようにした製造方法が提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−266812号公報
【特許文献2】特開平08−275746号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1記載の製造方法では粗蛋白質含量8〜10重量%の小麦粉を使用しなければならず、使用できる小麦粉が限定されてしまう。
【0009】
他方、特許文献2記載の製造方法では小麦粉に、南天の実の粉末、笹の葉の粉末、赤紫蘇の葉の粉末のうち少なくとも二種以上を少量添加してなる薬草入り梅酢と牛乳を添加しているので、食塩入りの従来のうどん麺とは風味が異なるという問題があった。
【0010】
本発明はかかる問題点に鑑み、使用できる小麦粉が限定されず、食塩入りの従来のうどん麺と風味が大きく異なることのないうどん麺を製造するようにしたうどん麺の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そこで、本発明に係るうどん麺の製造方法は、 小麦粉100重量部に対し、無塩食酢4.0重量部及び冷水27〜30重量部を添加して真空下に混練し、1.9〜2.1mm厚の麺帯に圧延して麺線を切り出し、この麺線を弱酸性の熱湯で7〜8分茹でた後、冷水で冷却し、個装するようにしたことを特徴とする。
【0012】
本発明の特徴の1つは食塩に代えて無塩食酢を用いるようにした点にある。これにより、食酢によってグルテンの網目構造が展開されてグルテンが引き締められ、うどん麺特有の食感が得られ、又食塩を使用していないので、糖尿病患者や高血圧症患者も安心して食することができる。
【0013】
本発明の第2の特徴は麺線の厚みを1.9〜2.1mmとした点にある。食塩の入った麺線は2.7〜3.3mmの厚みとし、10〜15分程度茹でることが行われるが、食塩を使用しないと、麺線を茹でるとき麺線が水分を吸収しにくく、茹で時間を長くする必要がある。これに対し、麺線の厚みを1.9〜2.1mmとすると、茹で時間を7〜8分にできる。
【0014】
本発明の第3の特徴は小麦粉に冷水を添加して真空下に混練し、麺線を弱酸性の熱湯で茹で、冷水冷却して個装するようにした点にある。食塩を使用しないと、蛋白質分解酵素の働きを抑制し難くなり、腐敗しやすくなるが、小麦粉に冷水を加えて真空下に混練し、弱酸性の熱湯で茹で、冷水冷却して個装すると、真空下の混練によって雑菌の混入が少なくなり、弱酸性の熱湯で茹でることによって雑菌の繁殖が抑制され、さらに食酢に含まれる酢酸が雑菌の繁殖を抑制し、うどん麺を防腐できる。
【0015】
出来上がったうどん麺は10°C以下で保冷するのがよい。
【0016】
無塩食酢を小麦粉100重量部に対して4.0重量部としたのは、4.0重量部未満ではグルテンの引き締め効果や防腐効果が得にくい一方、4.0重量部を越えると、うどん麺の風味が従来の食塩入りのうどん麺に比較して大きく相違するからである。また、冷水を小麦粉100重量部に対して27〜30重量部としたのは、使用する小麦粉の特性によっても異なるが、27重量部未満では小麦粉が混練しにくくなる一方、30重量部を越えると、麺生地が「へたり」やすくなるからである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を具体例に基づいて説明する。
【0018】
〔実施例1〕
小麦粉150kg及び無塩食酢6.0kgを計量してミキサーに投入し、そこに冷水42.5kgを投入し、0.04Mpaの真空下、3分間低速混練した後、6分間高速混練して麺生地を調製した。この麺生地を複合機にかけて2.0mm厚に圧延して麺帯とし、これを切り出し機に送って所定の幅に切り出して麺線を製造した。
【0019】
他方、茹で釜で熱湯を沸かし、乳酸でpH5.7に調整する。この熱湯に麺線を投入し、7.5分間茹でる。茹で上った麺線を釜から取り出して5°C以下の冷水に投入して2分間冷却し、三方包装機にて個装し、最後に金属と重さをチェックした後、冷蔵庫で10°C以下で保冷した。
【0020】
〔実施例2〕
小麦粉150kgに対して無塩食酢を6.0kg、冷水40.5kgとした以外、実施例1と同様にうどん麺を製造した。
【0021】
〔実施例3〕
小麦粉150kgに対して無塩食酢を6.7kg、冷水45kgとした以外、実施例1と同様にうどん麺を製造した。
【0022】
実施例1〜3で製造したうどん麺を茹でて食した。茹でる際には食塩入りのうどん麺に比較して硬くなっていて切れやすいので、自然にほぐれるまで箸などでかき混ぜないことが重要であった。自然にほぐれた後は、しっかりとした滑らかなうどん麺になっていたので、切れ難く、歯ごたえのある食感が得られた。