(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-67518(P2016-67518A)
(43)【公開日】2016年5月9日
(54)【発明の名称】携帯用スロープ
(51)【国際特許分類】
A61G 3/02 20060101AFI20160404BHJP
B61D 23/02 20060101ALI20160404BHJP
E04F 11/00 20060101ALI20160404BHJP
【FI】
A61G3/00 502
B61D23/02
E04F11/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-198663(P2014-198663)
(22)【出願日】2014年9月29日
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000105899
【氏名又は名称】サカイ・コンポジット株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091384
【弁理士】
【氏名又は名称】伴 俊光
(74)【代理人】
【識別番号】100125760
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】植野 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】松下 昌之
(72)【発明者】
【氏名】長瀬 一
(72)【発明者】
【氏名】野口 洋平
【テーマコード(参考)】
2E101
【Fターム(参考)】
2E101BB01
2E101CC02
2E101EE00
(57)【要約】
【課題】建物や、電車用の物体間に生じる段差に掛け渡して使用する携帯用スロープに関し、軽量で、スロープ自体の可搬性にも優れており、さらには、運搬する距離が変動しても対応できるフレキシビリティー性にも優れた携帯用スロープ及びその製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】物体間に生じる段差に掛け渡して車椅子を走行させるために使用される携帯用スロープであって、前記携帯用スロープは、前記車椅子が走行可能な所定厚みの板材を含み、前記板材は、前記板材と垂直な面で少なくとも2つに分割可能とする接続部を有することを特徴とする携帯用スロープ。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
段差に掛け渡して車椅子を走行させるために使用される携帯用スロープであって、前記携帯用スロープは、前記車椅子が走行可能な板材を含み、前記板材は、前記板材と垂直な面で前記板材を少なくとも2つに分割可能な接続部を有することを特徴とする携帯用スロープ。
【請求項2】
前記板材は中空部を有することを特徴とする請求項1記載の携帯用スロープ。
【請求項3】
前記接続部は、前記中空部に挿入可能に形成されていることを特徴とする請求項2記載の携帯用スロープ。
【請求項4】
前記板材が少なくとも繊維強化プラスチックを含むことを特徴とする請求項1〜3記載の携帯用スロープ。
【請求項5】
前記板材の側端面に脱輪防止壁を有することを特徴とする請求項1〜4記載の携帯用スロープ。
【請求項6】
前記板材及び前記脱輪防止壁は一体成形されていることを特徴とする請求項5記載の携帯用スロープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体間に生じる段差に掛け渡して使用する携帯用スロープに関し、軽量で、スロープ自体の可搬性に優れており、さらには、運搬する距離が変動しても対応できるフレキシビリティー性にも優れた携帯用スロープに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、公共施設等ではバリアフリー対策としてエレベータやエスカレータが設置され、また、階段にはその傍らに迂回路としてスロープが作られている場合もあり、車椅子での通行が容易に行えるようになっている。しかし、いまだ公共施設やビルディング等の建造物の内外において、多くの段差が存在している。こうした段差は、通常人であれば容易に超えることが出来るが、車椅子使用者や老人にとっては、乗り越えるのが困難な場合がある。
【0003】
バリアフリーの社会インフラ整備が進んでも、未だ整備されていない段差は数多く存在し、たとえば、歩道と車道との段差、バスの乗降口と道路との段差、道路に作られた溝、電車に乗降する際の車両とホームとの段差や溝が車椅子の通行に支障を来している。
【0004】
多数の段差が存在するという状況は、公共の空間や交通機関のみならず、車椅子使用者や老人の居住する個人住居の内外でも同様である。
【0005】
最近、可搬型の携帯用スロープを用い、必要な時のみ設置して使用することを可能とし、例えば、車椅子をホームから電車の車内に移動させる際や電車の乗降口からホームに移動させる際、あるいは、車椅子を道路からバスの車内に移動させる際やバスの乗降口から道路に移動させる際、ホームと電車の車内とに架け渡す渡し板や道路とバスの車内とに架け渡す渡し板が利用される場合がある。
【0006】
これらのスロープは、可搬型であることを前提とするため、軽量で運搬しやすいことが望ましく、このため、金属製や木製のスロープよりも、樹脂製のスロープ、特に軽量である上に耐荷重性能に優れた繊維強化プラスチック製のものが開示されている(例えば特許文献1)。
【0007】
また、可搬型の携帯用スロープは、運搬距離の長い状況や間口の幅が異なる場合があり、使用態様に合わせたフレキシビリティー性が必要である。
【0008】
また、収納性も重要な要素であり、狭い車内等に収納する場合があり、コンパクト性が要求される。
【0009】
特許文献1(特開2013−162818号公報)では、「発泡性樹脂からなる方形の芯材の表裏両面に、繊維強化プラスチック(FRP:Fiber Reinforce Plastic)製の板材を接着した少なくとも2枚以上の合板からなり、合板は、通行方向上下端それぞれに合板自身の段差を解消するためのテーパ構造4,5を有し、通行方向に対する外側面を枠部材9によって嵌合させた構造を有し、2枚以上の合板を、通行方向に対して並列させ、合板の対向側面をシート材6によって連結させ、合板が互いに重なり合うように折り畳み」する構成が記載され、「軽量で持ち運びが容易であり、加工性が良く最適なサイズを容易かつ安価に製造でき、固定性能に秀で、スロープ縁部及び脱輪防止壁の高い耐衝撃性能により破損が生じにくく、優れた補修性能を有する」効果が開示されている。そのスロープは、硬質ウレタン、ポリプロピレン又はアクリル等の発泡性樹脂からなる芯材の表裏両面に炭素繊維強化プラスチックを接着した合板の構成である。
【0010】
しかし、特許文献1の構成では、合板は発泡性樹脂の表裏両面に炭素繊維強化プラスチックを強固に接着した積層構成であり、積層構成体の製造工程に複数の工程を踏む必要があることから製造コスト的な課題がある。また、運搬する距離が異なる段差に対しては対応する長さのスロープを別途用意する必要があり、フレキシビリティー性に難がある。
【0011】
また、特許文献2(特開2002−87164号公報)では、「車椅子等の出し入れを可能にするスロープ装置において、前記スロープを構成するフロア部材を前記スロープの展開方向に交差する方向に複数個に分割し、隣り合う前記フロア部材の互いに対向する端面に、互いに係合可能な係合部を一体的に設けた」構成が記載され、隣り合うフロア部材が係合部により鉛直方向に互いに係合することで、複数のフロア部材でスロープ上の荷重を受けることができ、フロア部材の剛性の低下を招くことなく、スロープの展開・収納時の操作をスムーズにでき、別部材によるフロア部材の補強も必要ない効果が開示されている。
【0012】
しかし、特許文献2の構成では、両側面に設けられる脱輪防止壁はスロープのフロア部材と溶接又はビス止めにより固定した構成であり、複数の工程を踏む必要があることから製造コスト的な課題がある。また、脱輪防止壁となる所定の長さのサイドレールを溶接又はビス止めにより固定しているため、運搬する距離が異なる段差に対しては対応する長さのスロープを複数用意する必要があり、フレキシビリティー性に難がある。
【0013】
また、特許文献3(特開2004−60287号公報)では、「段差における上段の路面と下段の路面に、左側スロープ板と右側スロープ板を車椅子等の車幅に合わせた間隔をおいて平行に設置して架け渡されるスロープであって、前記左側スロープ板及び前記右側スロープ板には、それぞれ外側部材と、該外側部材に伸縮自在に内挿される内側部材が備えられており、前期内側部材が前記外側部材に収納された状態で、前記左側スロープ板を前記右側スロープ板に、それぞれの表面が対向するように重ねて取付けできるように、前記外側部材には取付け部材が設けられ、前期内側部材は中空部を有したアルミニウム合金押出形材からなる」構成が記載され、左側スロープ板を右側スロープ板に重ねて取付けることで、2枚のスロープ板を一体化でき、剛性低下を招くことなく軽量化することでスロープの携帯性を向上させる効果が開示されている。
【0014】
しかし、特許文献3の構成では、スライド伸縮式スロープとすることにより取り回しは改善されているが、単にスロープ板を縮めて携帯しているだけであり、軽量化に対しては改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2013−162818号公報
【特許文献2】特開2002−087164号公報
【特許文献3】特開2004−060287号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、かかる従来技術の問題点に鑑み、物体間に生じる段差に掛け渡して使用する携帯用スロープに関し、軽量で、スロープ自体の可搬性にも優れており、さらには、運搬する距離が変動しても対応できるフレキシビリティー性にも優れた携帯用スロープを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
(1)段差に掛け渡して車椅子を走行させるために使用される携帯用スロープであって、前記携帯用スロープは、前記車椅子が走行可能な板材を含み、前記板材は、前記板材と垂直な面で前記板材を少なくとも2つに分割可能な接続部を有することを特徴とする携帯用スロープ。
(2)前記板材は中空部を有することを特徴とする(1)記載の携帯用スロープ。
(3)前記接続部は、前記中空部に挿入可能に形成されていることを特徴とする(2)記載の携帯用スロープ。
(4)前記板材が少なくとも繊維強化プラスチックを含むことを特徴とする(1)〜(3)記載の携帯用スロープ。
(5)前記板材の側端面に脱輪防止壁を有することを特徴とする(1)〜(4)記載の携帯用スロープ。
(6)前記板材及び前記脱輪防止壁は一体成形されていることを特徴とする(5)記載の携帯用スロープ。
【発明の効果】
【0018】
上述した携帯用スロープ及びその製造方法によれば、物体間に生じる段差に掛け渡して使用する携帯用スロープに関し、軽量で、かつスロープ自体の可搬性にも優れており、さらには、運搬する距離が変動しても対応できるフレキシビリティー性にも優れた携帯用スロープを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明にかかる携帯用スロープの実施の形態を示した平面斜視図
【
図2】
図1に示すスロープ1の長手方向と垂直なA−A線断面図
【
図3】
図1に示すスロープ1が接続部で2つに分割された状態を示した平面斜視図
【
図4】
図3に示すスロープ1の幅方向と垂直なB−B線断面図の一例
【
図5】
図3に示すスロープ1の幅方向と垂直なB−B線断面図の一例
【
図6】複数の板材を長手方向に対して並列させて板材の対向側面を連結させた平面斜視図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明について図面を用いながら説明する。なお、本発明は図面によって何ら制限されるものではない。
【0021】
前記課題を解決するためになされた本発明の構成は、少なくとも車椅子が走行可能な所定厚みの板材を含み、前記板材は、前記板材と垂直な面で少なくとも2つに分割可能とする接続部を有することを特徴とする携帯用スロープの構成である。
【0022】
本発明によれば、少なくとも車椅子が走行可能な所定厚みの板材を含み、前記板材は、前記板材と垂直な面で少なくとも2つに分割可能とする接続部を有することを特徴とする携帯用スロープを基本構成とすることにより、例えば、車椅子を運搬する距離が変動しても対応できるフレキシビリティー性に優れ、狭い車内等に収納することが可能なコンパクト性を確保することが可能となる。
【0023】
また、本発明において、板材と垂直な断面形状が中空部を有することが好ましく、前記中空部に前記接続部が配置されていることが好ましい。本発明の構成により、スロープ自体を軽量にすることで、可搬性に優れ、接続部を中空部に配置することで更にコンパクトにすることが可能である。
【0024】
図1に、本発明にかかる携帯用スロープ(以下、単に「スロープ」ということがある。)の平面斜視図を示す。
【0025】
1は携帯用スロープを示し、2は車椅子等が通行するスロープ部を構成する板材を示す。携帯用スロープ1は、階段などの高さが異なる段差に掛け渡されて使用され、スロープ1の上端側3及び下端側4には車椅子の乗降を容易にするため一定の傾斜を持つように、それぞれテーパ状で形成されることが好ましい。また、スロープ1の乗降口と段差との接触位置には適宜滑り止めのゴム部材が固着させることも好ましい。5はスロープ1の両側端部に配置される脱輪防止壁を示す。スロープ1の左右両側面に脱輪防止壁5を設置することにより、車両の転落が防止できる。なお、脱輪防止壁5は、必ずしもスロープ1の全長に亘って形成される必要はなく、スロープ1の上端側3や下端側4では形成されなくても良い。脱輪防止壁5の設置方法としては、たとえば板材2と一体に成形する方法、または板材2を成形したあと、脱輪防止壁を板材側端面に接着する方法がある。なかでも板材2と脱輪防止壁5とを一体に成形する方法が好ましい。この場合には脱輪防止壁を取り付ける工程を省くことができることから、製造コストを低減させることが出来る。また、板材2と脱輪防止壁5とが一体に成形されていることから、脱輪防止壁がより折れにくくなる。
【0026】
次に、
図2に、
図1に示すスロープ1のA−A断面図を示す。
図2において、板材2の上面を車椅子等が移動する図となっている。6は板材と垂直な断面に形成される中空部を示す。
【0027】
図3に、
図1に示すスロープ1を接続部7で2つに分割した状態を示す。接続部7は中空部6に配置されることが好ましい。接続部7をスロープ1に内包することで、スロープ1自体のコンパクト性を維持することが出来る。
【0028】
また、
図4及び
図5に、
図3に示すスロープ1のB−B断面図の一例を示す。本発明において、接続部7は
図4のように直線的な形状でも良いし、
図5のようにテーパ形状を有していても良い。直線形状である場合には中空部6を雌側として利用することにより部品点数の削減によるコストダウンを図ることが可能であるし、テーパ形状とする場合には、スロープ1の組立及び分割がより容易となる効果がある。
【0029】
板材は軽量化の観点から繊維強化プラスチックから形成されることが好ましい。強化繊維として比強度、比剛性に優れる炭素繊維を用いた炭素繊維強化プラスチックとすることがより好ましい。また、炭素繊維強化プラスチックの重量繊維含有率が15〜80重量%の範囲であることが好ましい。含有量が15重量%未満であると、耐荷重性や剛性が失われ所望の機能を果たすことができない。重量含有量が80重量%を超えると、前記繊維強化樹脂中にボイドが発生する問題が生じやすくなり、成形が困難となる。
【0030】
板材を形成する炭素繊維強化プラスチックが連続した炭素繊維ことが好ましく、炭素繊維はスロープの掛け渡し方向である長手方向にほぼ平行、あるいは長手方向に対してほぼ直角方向に配列され得る。また、これらの配列を組合せた場合には、スロープ全体としての曲げ強度、耐面圧力が向上する。
【0031】
以上のスロープは1枚板として使用する状況で説明をしてきたが、スロープは持ち運びの便宜上から少なくともそれぞれ第1の補強部を具備した2つの板材(例えば板材A及び板材B)の表面同士が対向して折り畳めるように2枚以上の板材を連結させる構成を取ることも好ましい。
【0032】
図6に、複数の板材(例えば板材A及び板材B)の表面どうしが対向するように2枚の板材を、通行方向に対して並列させ、板材の対向側面をシート材や蝶番によって連結させた平面斜視図を示す。8はシート材や蝶番によって連結された連結箇所を示す。図中2a、2bはそれぞれ板材A、板材Bを示す。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、物体間に生じる段差に掛け渡して使用する携帯用スロープに関し、軽量で、かつスロープ自体の可搬性にも優れており、さらには、運搬する距離が変動しても対応できるフレキシビリティー性にも優れた携帯用スロープを得ることができる。
【符号の説明】
【0034】
1 スロープ
2,2a,2b 板材
3 スロープ1の上端側
4 スロープ1の下端側
5 脱輪防止壁
6 中空部
7 接続部
8 連結箇所