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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-67645(P2016-67645A)
(43)【公開日】2016年5月9日
(54)【発明の名称】トレーニング装置およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61H 1/00 20060101AFI20160404BHJP
   A63B 69/00 20060101ALI20160404BHJP
【FI】
   A61H1/00
   A63B69/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-200802(P2014-200802)
(22)【出願日】2014年9月30日
(71)【出願人】
【識別番号】501450029
【氏名又は名称】株式会社キューブス
(74)【代理人】
【識別番号】110001830
【氏名又は名称】東京UIT国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】山川 烈
(72)【発明者】
【氏名】下野 雅芳
(57)【要約】
【課題】トレーニングを誰にでも取り組むことができるようにし,かつトレーニング結果(評価)を簡単に理解することができるようにする。
【解決手段】表示画面上に表示される円軌道20に沿って玉画像10が所定速度で移動表示される。円軌道20を移動する途中で玉画像10の透過度が次第に上げられる。円軌道20上に当たり円範囲31および当たり角度範囲32,33が設けられ,玉画像10の中心(重心)が当たり円範囲31にあるときにスイッチがタップされると,その入力について当たり(優)が判定される。玉画像10の中心が当たり角度範囲32,33にあるときにスイッチがタップされると,その入力について当たり(可)が判定される。それ以外の範囲で入力があると,その入力についてはずれが判定される。当たり(優),当たり(可)およびはずれの判定は,表示画面上の背景色によって色で区別して示される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示装置の表示画面上に表示される閉ループ軌道に沿って移動体画像を移動表示する移動体画像表示手段,
上記閉ループ軌道上に設けられる評価範囲,
上記移動体画像が閉ループ軌道上を一周する途中であってかつ上記評価範囲に到達する前に,上記移動体画像を透明にする透明化手段,
入力装置への入力タイミングを取得する入力タイミング取得手段,
取得した入力タイミングと上記評価範囲とに基づいて,上記入力タイミングを評価する評価手段,および
上記評価手段による評価結果を表示画面に色分け表示する評価結果表示手段,
を備えるトレーニング装置。
【請求項2】
上記評価範囲は,第1の評価範囲と,上記第1の評価範囲の前後に連続する第2の評価範囲および第3の評価範囲を含み,
上記評価手段は,取得した入力タイミングが第1の評価範囲に属するときに,第2および第3の評価範囲に属するときよりも上記入力タイミングを高く評価する,
請求項1に記載のトレーニング装置。
【請求項3】
上記透明化手段は,移動体画像の透過度を次第に上げることにより,閉ループ軌道上を移動する移動体画像を次第に透明にするものである,
請求項1または2に記載のトレーニング装置。
【請求項4】
上記入力タイミングのときに上記移動体画像が位置していた場所に,上記移動体画像を所定時間だけ残像描画する残像描画手段を備えている,
請求項1から3のいずれか一項に記載のトレーニング装置。
【請求項5】
移動体画像の移動速度に応じてテンポが変化するビート音を再生するビート音再生手段を備えている,
請求項1から4のいずれか一項に記載のトレーニング装置。
【請求項6】
上記入力装置は複数のスイッチを含み,
上記複数のスイッチのうち,表示画面上に表示される画像に対応するスイッチへの入力が行われたときに,上記評価手段による上記入力タイミングと上記評価範囲とに基づく入力タイミングの評価に進む,
請求項1から5のいずれか一項に記載のトレーニング装置。
【請求項7】
入力装置,表示装置,および処理装置を備えるコンピュータ・システムをトレーニング装置として機能させるためのプログラムであって,
上記処理装置を,
上記表示装置の表示画面上に閉ループ軌道を表示し,かつ表示される閉ループ軌道に沿って移動体画像を移動表示する移動体画像表示制御手段,
上記閉ループ軌道上に評価範囲を設定する評価範囲設定手段,
上記移動体画像が上記閉ループ軌道上を一周する途中であって,かつ上記評価範囲に到達する前に,上記移動体画像を透明にする透明化手段,
上記入力装置への入力タイミングを取得する入力タイミング取得手段,
取得した入力タイミングと上記評価範囲とに基づいて,上記入力タイミングを評価する評価手段,および
上記評価手段による評価結果を表示画面に色分け表示する評価結果表示手段,
として機能させる,トレーニング用プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は,トレーニング装置,特に簡易なインターフェースを用いて注意力,記憶力,協調性,集中力などを身につけるために用いられるトレーニング装置およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
インタラクティブ・メトロノーム(Interactive Metronome )トレーニング(以下,IMトレーニングという)は,1990年代初期に,注意力,記憶力,協調性,集中力などの問題を克服する目的で開発されたトレーニングである。IMトレーニングでは,コンピュータから出力されるビート音に身体動作(拍手,足踏みなど)を合わせる機器操作が行われる。コンピュータのビート音に身体動作をできるだけ合わせるトレーニングを繰り返すことで,注意力,記憶力,協調性,集中力などに改善が見られることが報告されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】インタラクティブ・メトロノーム/多動症対策のIMトレーニング[平成26年9月12日検索],インターネット<URL http://www.im-training.jp/metronome.html>
【0004】
しかしながら,従来のIMトレーニング機器は,機器操作のタイミングが早かったのか遅かったのかを含む結果出力(評価)の理解が難しく,機器操作自体も簡単なものではない。IMトレーニングは,自閉症,認知症,注意欠如・多動性障害,鬱,統合失調症などの治療にも効果を期待することができる。しかしながら,自閉症,認知症,注意欠如・多動性障害の場合には,IQが低いことが多いためにとにかく簡易なインターフェースで,1日数分といったトレーニングを気軽にできることが必要である。
【発明の開示】
【0005】
この発明は,トレーニングを誰にでも取り組むことができるにようにし,かつトレーニング結果(評価)も簡単に理解することができるようにすることを目的とする。
【0006】
この発明によるトレーニング装置は,表示装置の表示画面上に表示される閉ループ軌道に沿って移動体画像を移動表示する移動体画像表示手段,上記閉ループ軌道上に設けられる評価範囲,上記移動体画像が閉ループ軌道上を一周する途中であってかつ上記評価範囲に到達する前に,上記移動体画像を透明にする透明化手段,入力装置への入力タイミングを取得する入力タイミング取得手段,取得した入力タイミングと上記評価範囲とに基づいて,上記入力タイミングを評価する評価手段,および上記評価手段による評価結果を表示画面に色分け表示する評価結果表示手段を備えている。
【0007】
この発明は,コンピュータ・システムをトレーニング装置として機能させるプログラムも提供する。この発明によるプログラムは,入力装置,表示装置,および処理装置を備えるコンピュータ・システムをトレーニング装置として機能させるためのプログラムであって,上記処理装置を,上記表示装置の表示画面上に閉ループ軌道を表示し,かつ表示される閉ループ軌道に沿って移動体画像を移動表示する移動体画像表示制御手段,上記閉ループ軌道上に評価範囲を設定する評価範囲設定手段,上記移動体画像が上記閉ループ軌道上を一周する途中であって,かつ上記評価範囲に到達する前に,上記移動体画像を透明にする透明化手段,上記入力装置への入力タイミングを取得する入力タイミング取得手段,取得した入力タイミングと上記評価範囲とに基づいて,上記入力タイミングを評価する評価手段,および上記評価手段による評価結果を表示画面に色分け表示する評価結果表示手段,として機能させるものである。
【0008】
表示画面上に表示される閉ループ軌道に沿って移動体画像が移動表示される。閉ループ軌道上に評価範囲が設定されており,入力装置への入力タイミングと評価範囲とに基づいて上記入力タイミングが評価される。一般に評価範囲に合致する入力タイミングである場合にその入力タイミングは高く評価され,評価範囲から外れるとその入力タイミングは低く評価される。たとえば評価範囲内に移動体画像が位置しているときの入力タイミングであるか,評価範囲から外れているところに移動体画像が位置しているときの入力タイミングであるかを判断することによって,入力タイミングを評価することができる。
【0009】
上記移動体画像は,それが閉ループ軌道上を一周する途中であってかつ上記評価範囲に到達する前に透明にされる。このため,高い評価を得ようとする場合,表示されている(透明にされる前の)移動体画像の閉ループ軌道上の位置および速度を確認して,その後に移動体画像が評価範囲に到達したであろうタイミングを予測する必要がある。このような予測訓練は,子供,特に小学校入学前後の子供に発見されることが多いADD(Attention Deficit hyperactivity Disorder,注意欠如・多動性障害)の治療に効果的である。この発明によると,閉ループ軌道上を移動する移動体画像を見ながら,入力装置に入力タイミングを与える(典型的にはスイッチないしボタンを押す)だけでよいから,入力装置への入力を非常にシンプルなものとすることができる。さらに予測する対象が表示画面上の閉ループ軌道に沿って移動する移動体画像であるからこれも非常にシンプルである。7歳前後の子供に対し,遊び感覚でトレーニングを行うことができる。またこの発明によると,入力タイミングの評価結果が表示画面に色分け表示されるので,トレーニング結果(評価)を幼い子供であっても簡単に理解することができる。
【0010】
一実施態様では,上記評価範囲は,第1の評価範囲と,上記第1の評価範囲の前後に連続する第2の評価範囲および第3の評価範囲を含み,上記評価手段は,取得した入力タイミングが第1の評価範囲に属するときに,第2および第3の評価範囲に属するときよりも上記入力タイミングを高く評価する。評価を複数段階に分けることで,トレーニングに楽しさないしゲーム性をさらに付加することができる。
【0011】
好ましい実施形態では,上記透明化手段は,移動体画像の透過度を次第に上げることにより,閉ループ軌道上を移動する移動体画像を次第に透明にするものである。移動体画像が,これから,たとえば数秒後に,透明になって画面上から消えて見えなくなることを,分かりやすく示すことができる。
【0012】
一実施態様では,トレーニング装置は,上記入力タイミングのときに上記移動体画像が位置していた場所に,上記移動体画像を所定時間だけ残像描画する残像描画手段を備えている。入力タイミングのときの移動体画像の位置が分かるので,入力装置からの入力タイミングが早すぎたのか,遅すぎたのか,ちょうどよかったのかが,分かりやすく示される。
【0013】
他の実施態様では,トレーニング装置は,移動体画像の移動速度に応じてテンポが変化するビート音を再生するビート音再生手段を備えている。再生されるビート音(そのテンポ)を移動体画像の位置予測に用いることができ,トレーニングに一層の楽しさを与えることができる。
【0014】
好ましい実施態様では,上記入力装置は複数のスイッチを含み,上記複数のスイッチのうち,表示画面上に表示される画像(たとえば文字画像,色画像など)に対応するスイッチへの入力が行われたときに,上記評価手段による上記入力タイミングと上記評価範囲とに基づく入力タイミングの評価に進む。スイッチ入力のタイミングに加えて,スイッチの種類を選ぶことを同時に行うデュアルトレーニングが実現される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】IMトレーニング装置を用いてユーザがIMトレーニングをしている様子を示す。
図2】IMトレーニング装置の表示画面例を示す。
図3】当たり判定およびはずれ判定が行われる角度範囲を示す。
図4】IMトレーニング・プログラムの処理を示すフローチャートである。
図5】IMトレーニング・プログラムの処理を示すフローチャートである。
図6】(A)は他の実施例の表示画面例を,(B)は他の実施例のスイッチをそれぞれ示す。
【実施例】
【0016】
図1はインタラクティブ・メトロノーム・トレーニング装置(以下,IMトレーニング装置という)を用いてユーザがIMトレーニングをしている様子を模式的に示している。
【0017】
IMトレーニング装置は,装置全体を統括的に制御する処理装置(パーソナル・コンピュータ)1を備えている。処理装置1に,画像,文字等を表示する表示装置2,ユーザによるタップ入力を受け付けるスイッチ(入力装置)3,および音を出力するスピーカ4が,有線または無線により接続されている。パーソナル・コンピュータのみならず,携帯電話,スマートフォン,タブレット型端末などをIMトレーニング装置として機能させることもできる。
【0018】
詳細は後述するが,IMトレーニング装置の表示装置2の画面上には,等速円運動する玉画像が描画される。等速円運動する玉画像を見ながら,所定タイミングに身体動作を合わせるトレーニングがIMトレーニング装置を用いて行われる。ユーザの身体動作を検知するためにユーザの手元にスイッチ3が設置される。スイッチ3をタップする(叩く)と,その入力タイミングがユーザの身体動作のタイミングとして扱われる。ビート音ないしビート音を含む音楽が,等速円運動する玉画像の速度に沿うテンポでスピーカ4から出力される。
【0019】
図2はIMトレーニング装置の表示装置2に表示される画面例を示している。図3は当たり判定およびはずれ判定が行われる角度範囲を示している。
【0020】
IMトレーニング装置の表示装置2の表示画面には,時計回りに所定の角速度ωで等速円運動する玉画像10,玉画像10が等速円運動する所定半径の円軌道20,当たり円範囲31,および当たり角度範囲32,33が表示される。図示の便宜上,当たり円範囲31および当たり角度範囲32,33をそれぞれ一点鎖線および二点鎖線によって示すが,鎖線に代えて実線によってこれらの範囲を示してもよいし,鎖線,実線に代えてまたは加えて,着色(色区別)によってこれらの範囲を示してもよい。またこの実施例において円軌道20として真円形のものを示すが,楕円形であってもよく,さらにその他の形状(矩形,三角形など)であってもよい。いずれにしても玉画像10の円運動の始点と終点とが一致する閉ループをなす軌道が,表示画面に表示される。
【0021】
図2には,異なる3つのタイミングにおける玉画像10t1,10t2,10t3が図示されている。玉画像10t1は時刻t1における玉画像10の位置を示している。同様に,玉画像10t2は時刻t1よりも遅いタイミングの時刻t2における玉画像10の位置を,玉画像10t3は時刻t2よりも遅いタイミングの時刻t3における玉画像10の位置を,それぞれ示している。3つの玉画像10t1,10t2,10t3は同時に表示されるのではないことを理解されたい。すなわち玉画像10は円軌道20上を回転(公転)しているかのように表示される。
【0022】
上述のように,等速円運動する玉画像10の角速度ωに応じたテンポでビート音ないしビート音を含む音楽がスピーカ4から再生される。図2にスピーカ4から再生されるビート音の再生タイミングを八分音符40によって部分的に示す。八分音符は画面表示はされず,便宜的に図面に示すものであることを理解されたい。たとえば玉画像10が円軌道20上を一周する間に24回のビート音が再生される。この場合,玉画像10が円軌道20上をθ=15°の角度分移動するたびにビート音が再生される。ビート音にはたとえば時計の秒針が動くときの音を用いることができる。
【0023】
円軌道20上を等速円運動する玉画像10は,円運動の途中で透過度(透明度)を次第に増していき,一周するまでの間に完全に透明となる(画面上から消えて見えなくなる)ように描画される。時刻t1で表示される玉画像10t1は完全非透明(全く透明化されていない)状態であり,これを図2では太線によって示している。時刻t2で表示される玉画像10t2は次第に透過度を増していく途中の状態であり,図2ではこれを細線によって示している。時刻t3における玉画像10t3は完全に透明であって見えない状態であり,図3ではこれを破線によって示している。玉画像10の角度θが所定角度を超えたときに透明化処理が開始され,玉画像10が一周するまでの間に,より詳細には後述する当たり角度範囲32に到達する前に,玉画像10が画面上から消えて見えなくなるように,透明化処理は制御される。
【0024】
IMトレーニング装置は,ユーザの身体運動をスイッチ3によって受付け,その入力タイミングに応じて「当たり」または「はずれ」の判定を行う。当たり判定はさらに,当たり「優」と,当たり「可」の2つに分類される。すなわち,当たり「優」,当たり「可」およびはずれの3つの判定が行われる。
【0025】
円軌道20の始点(頂点)を中心とする所定の半径を持つ当たり円範囲(一点鎖線)31が,当たり「優」を判定するために用いられる。図3を参照して,円軌道20上を等速円運動する玉画像10の中心(重心)Cが当たり円範囲31内にあるときにユーザ入力が受け付けられると,IMトレーニング装置は,そのときのユーザの身体動作(入力タイミング)について当たり「優」を割り当てる。すなわち,円軌道20の頂点から−θからθまでの所定角度範囲に玉画像10の中心Cが位置しているときにユーザ入力が受け付けられた場合に,IMトレーニング装置は当たり「優」を判定する。
【0026】
当たり「優」が行われる円範囲31の前後の所定角度範囲(二点鎖線)32,33が,当たり「可」を判定するために用いられる当たり角度範囲である。円軌道20上を等速円運動する玉画像10の中心Cが当たり円範囲31の前後の当たり角度範囲32,33内にあるときにユーザ入力が受け付けられると,IMトレーニング装置は,そのときのユーザの身体動作について当たり「可」を割り当てる。すなわち,円軌道20の頂点から−θから−θまで,またはθからθまで(θ>θ)の所定角度範囲に玉画像10の中心Cが位置しているときにユーザ入力が受け付けられた場合に,IMトレーニング装置は当たり「可」を判定する。
【0027】
上述した−θからθまでの角度範囲以外の範囲に玉画像10の中心Cが位置しているときにユーザ入力が受け付けられると,IMトレーニング装置は「はずれ」を判定する。
【0028】
上述したように,円軌道20上を円運動する玉画像10はその途中で画面上から見えなくなる。当たり「優」または当たり「可」の判定を得るためには,玉画像10の動きを予測しなければならない。すなわちIMトレーニング装置のユーザは,現在の(画面上から消える前の)玉画像10の位置とその速度とに基づいて,画面上から消えた後の玉画像10の数秒後の位置を予測して,当たり円範囲31または当たり角度範囲32,33に到達したであろうタイミングでユーザ入力を行う。このような予測訓練は,子供,特に小学校入学前後の子供に発見されることが多いADD(Attention Deficit hyperactivity Disorder,注意欠如・多動性障害)の治療に効果的である。上述したように,IMトレーニング装置はユーザ入力がスイッチ3を押す(タップする)ことで実現され,さらに予測する対象も画面表示される等速円運動する玉画像10であり,非常にシンプルである。7歳前後の子供に対し,遊び感覚でトレーニングを行うことができる。
【0029】
図4および図5は,処理装置1,表示装置2,スイッチ3およびスピーカ4をIMトレーニング装置として機能させるプログラム(IMトレーニング・プログラム)の処理を示すフローチャートである。IMトレーニング・プログラムは処理装置1に設けられる記憶装置(図示略)にあらかじめ記憶される。IMトレーニング・プログラムを読み出して実行することによって,処理装置1,表示装置2,スイッチ3およびスピーカ4を含むコンピュータ・システムがIMトレーニング装置として機能する。
【0030】
IMトレーニング・プログラムを起動すると,表示装置2の画面上に所定半径rの円軌道20が表示され,その始点(頂点)に静止した玉画像10が表示される(ステップ51)。表示画面上の開始ボタン(図示略)をクリックすると(ステップ52),所定の角速度ωで円軌道20上を等速円運動しているかのように玉画像10が描画される。また,音ファイル(リズムファイル)が呼び出されて再生される。音ファイルは玉画像10の角速度ωに応じたテンポで再生され,これにより一定時間間隔でビート音がスピーカ4から出力される(ステップ53)。
【0031】
玉画像10の角度θがフェードアウト閾値Tを超えたかどうかが判定される(ステップ54でYES またはNO)。等速円運動する玉画像10の角度θがフェードアウト閾値Tに達すると(ステップ54でYES ),玉画像10の透明化処理が開始する。閾値Tを超えた角度θの大きさに応じて玉画像10の透過度が次第に強められる(ステップ55)。上述したように,玉画像10は当たり角度範囲32に到達する前に完全に透明になる(見えなくなる)。
【0032】
スイッチ3からの入力(スイッチ3のタップ)が受け付けられる(ステップ56)。その入力タイミング(タップのタイミング)に応じて当たり判定処理が行われる(ステップ57)。
【0033】
図5を参照して,スイッチ3からの入力タイミングにおいて,玉画像10の角度θが−θ≦θ<−θの範囲であるかどうかが判断される(ステップ61,図3)。すなわち,図3に示す当たり角度範囲32に玉画像10の中心Cが入っているタイミングで,スイッチ3がタップされたかどうかが判定される。
【0034】
当たり角度範囲32に玉画像10の中心Cが入っているタイミングでスイッチ3がタップされた場合には(ステップ61でYES),以下の処理が行われる(ステップ62)。
【0035】
(1)表示画面上に「当たり(可)」を文字表示する。
(2)入力タイミングのときに玉画像10が位置していた場所に,玉影(玉画像10と同じ大きさの画像であって,玉画像10よりも明度を低くした画像)を所定時間だけ描画(残像描画)する。
(3)当たり(可)に対応する当たり音1をスピーカ4から出力する。
(4)当たり(可)に対応する色に表示画面上の背景色を変更する。
【0036】
もちろん,入力タイミングが少し早すぎた(より高い評価である当たり(優)が判定されるタイミングよりも早いタイミングであったこと)ことをユーザが伝える文字メッセージ,たとえば「すこしはやいよ!」といった文字メッセージを,表示画面に表示するようにしてもよい。
【0037】
さらに判定が当たり(可)であったことが,記憶装置に記憶されるログ・データ(図示略)に記述される(ステップ68)。
【0038】
図4に戻って,当たり判定を終えると,初期化処理(ステップ58)を経て再度玉画像10の描画が開始される(ステップ59でNO,ステップ53)。初期化処理を経ることで玉画像10は円軌道20の頂点から再び等速円運動を開始する。また初期化処理ではビート音を出力するための音ファイル(リズムファイル)の再呼出しも行われる。
【0039】
再び図5に戻って,玉画像10の角度θが−θ≦θ<θの範囲にあるときにスイッチ3がタップされた,すなわち当たり円範囲31に玉画像10の中心Cが入っているタイミングでスイッチ3がタップされた場合には(ステップ61でNO,ステップ63でYES ),以下の処理が行われる(ステップ64)。
【0040】
(1)表示画面上に「当たり(優)」を文字表示する。
(2)入力タイミングのときに玉画像10が位置していた場所に,玉影を残像描画する。
(3)当たり(優)に対応する当たり音2(上記当たり音1と異なる音)をスピーカ4から出力する。
(4)当たり(優)に対応する色(当たり(可)に対応する色と異なる色)に,表示画面上の背景色を変更する。
【0041】
上述と同様に,判定が当たり(優)であったことがログ・データに記述される(ステップ68)。初期化処理を経て再び玉画像10の描画が開始される(ステップ58,ステップ59でNO,ステップ53)。
【0042】
玉画像10の角度θがθ≦θ<θの範囲にあるときにスイッチ3がタップされた,すなわち当たり角度範囲33に玉画像10の中心Cが入っているタイミングでスイッチ3がタップされた場合には(ステップ63でNO,ステップ65でYES ),以下の処理が行われる(ステップ66)。
【0043】
(1)表示画面上に「当たり(可)」を文字表示する。
(2)入力タイミングのときに玉画像10が位置していた場所に,玉影を残像描画する。
(3)当たり(可)に対応する当たり音1をスピーカ4から出力する。
(4)当たり(可)に対応する色に,表示画面上の背景色を変更する。
【0044】
もちろん,入力タイミングが少し遅すぎたことをユーザが伝える文字メッセージ,たとえば「すこしおそいよ!」という文字メッセージを,表示画面に表示するようにしてもよい。
【0045】
判定が当たり(可)であったことがログ・データに記述され(ステップ68),初期化処理を経て再び玉画像10の描画が開始される(ステップ58,ステップ59でNO,ステップ53)。
【0046】
玉画像10の角度θが−θ≦θ≦θの範囲外にあるときにスイッチ3がタップされた,すなわち当たり角度範囲32よりも早いタイミングまたは当たり角度範囲33よりも遅いタイミングでスイッチ3がタップされた場合には(ステップ65でNO),以下の処理が行われる(ステップ67)。
【0047】
(1)表示画面上に「はずれ」を文字表示する。
(2)入力タイミングのときに玉画像10が位置していた場所に,玉影を残像描画する。
(3)はずれ判定に対応するはずれ音をスピーカ4から出力する。
(4)はずれ判定に対応する色に,表示画面上の背景色を変更する。
【0048】
はずれ判定された入力タイミングを当たり判定に近づけるための文字メッセージ,たとえば「はやすぎるよ!」,「おそすぎるよ!」といった文字メッセージを,表示画面に表示するようにしてもよい。
【0049】
はずれ判定であったことがログ・データに記述される(ステップ68)。初期化処理を経て再び玉画像10の描画が開始される(ステップ58,ステップ59でNO,ステップ53)。
【0050】
表示画面上の終了ボタン(図示略)をクリックすると,IMトレーニング・プログラムは終了する(ステップ59でYES )。終了するときに,上述したログ・データに基づいて,IMトレーニング装置を用いたトレーニング結果,たとえば当たり(優)の数,当たり(可)の数,およびはずれの数を一覧に表示するようにしてもよい。ログ・データを蓄積しておくことで所定期間にわたるトレーニング結果を比較することもできる。
【0051】
スイッチ3が全くタップされない場合には,透明化された玉画像10が円軌道20を回り続けることになるので,玉画像10のない(見えない)画面が表示され続けることになる。スイッチ3がタップされない状態が続いて玉画像10が円軌道20を所定回数連続して円軌道20を回ったときにはリセット処理を行うようにしてもよい。リセット処理が行われると,IMトレーニング・プログラムを起動した直後の状態,すなわち円軌道20の頂点に玉画像10が静止表示されている状態(ステップ51)に戻る。
【0052】
上述した実施態様では,玉画像10は所定の角速度ωで等速円運動するものとして説明したが,円運動の途中で加速したり減速したりするといった速度変化を持たせてもよい。また,円軌道20上に複数の玉画像10を角度位置をずらして描画し,複数の玉画像10のそれぞれについてスイッチ3からの入力を受付けて当たり/はずれ判定を行うようにしてもよい。たとえば3つの玉画像10が角度位置をずらして描画され,かつそのいずれもが等速円運動するように画面表示される。第1回目のスイッチ3からの入力(タップ)が先頭の玉画像10に対する入力に,第2回目のスイッチ3からの入力が2番目の玉画像10に対する入力に,第3回目のスイッチ3からの入力が最後尾の玉画像10に対する入力に,それぞれ対応する。
【0053】
さらに複数の円軌道20を一つの表示画面上に表示して,複数の円軌道20のそれぞれで玉画像10が円運動するように表示してもよい。たとえば,3つの円軌道20が表示画面上に表示され,それぞれ異なる角速度で等速円運動するように玉画像10が描画される。一つのスイッチ3,または円軌道20ごとに用意される3つのスイッチ3を用いて,入力(タップ)が受け付けられる。
【0054】
図6(A),(B)は他の実施例を示すもので,図6(A)は表示装置に表示される画面例を,(B)はフットスイッチをそれぞれ示している。
【0055】
表示装置2の表示画面上に表示される円軌道20内(視野の中心)に,アルファベット文字A,BまたはCのいずれか一文字が表示される(図6(A),符号11)。また,ユーザが扱う入力装置として,A,BおよびCのアルファベット文字がそれぞれ印字された3つのスイッチを含むフットスイッチ3Aが用いられる(図6(B))。この実施例では,3つのスイッチのうち,表示画面上に表示されるアルファベット文字と同じアルファベット文字のスイッチを,当たり円範囲31または当たり角度範囲32,33に玉画像10が位置しているときに押すことが必要とされる。玉画像10が当たり円範囲31または当たり角度範囲32,33に位置しているときにスイッチが押され,かつ押されたスイッチが表示画面上に表示されるアルファベット文字と同じアルファベット文字のスイッチのときに,当たり(優)または当たり(良)が判定される。玉画像10が当たり円範囲31または当たり角度範囲32,33に位置しているときにスイッチが押されたとしても,表示画面に表示されているアルファベット文字と異なるアルファベット文字のスイッチが押されると,そのときのユーザ入力ははずれ判定になる。スイッチ入力のタイミングに加えて,スイッチの種類を選ぶことを同時に行うデュアルトレーニングが実現される。このデュアルトレーニングでは脳の大きな活性化が期待され,認知症予防などに効果が期待される。表示画面上に表示されるアルファベット文字はユーザ入力が行われるたびにランダムに切り換えられる。アルファベット文字は,玉画像10が円運動している間常時表示してもよいし,所定のタイミングに,たとえば玉画像10が当たり角度範囲32に近づいてきたときないし玉画像10が表示画面上から消えたタイミングで表示してもよい。
【符号の説明】
【0056】
1 処理装置
2 表示装置
3 スイッチ(入力装置)
3A フットスイッチ(入力装置)
4 スピーカ
10 玉画像
20 円軌道
図1
図2
図3
図4
図5
図6