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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-680(P2016-680A)
(43)【公開日】2016年1月7日
(54)【発明の名称】ナノ中空粒子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/187 20060101AFI20151204BHJP
   B82Y 40/00 20110101ALI20151204BHJP
【FI】
   C01B33/187
   B82Y40/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-121910(P2014-121910)
(22)【出願日】2014年6月12日
(71)【出願人】
【識別番号】000230593
【氏名又は名称】日本化学工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504229284
【氏名又は名称】国立大学法人弘前大学
(72)【発明者】
【氏名】澤田 英夫
【テーマコード(参考)】
4G072
【Fターム(参考)】
4G072AA25
4G072BB05
4G072BB07
4G072BB16
4G072DD06
4G072GG03
4G072HH21
4G072JJ14
4G072JJ23
4G072JJ30
4G072JJ47
4G072KK01
4G072KK03
4G072KK07
4G072KK13
4G072KK17
4G072LL11
4G072MM22
4G072MM23
4G072MM33
4G072SS01
4G072SS14
4G072TT01
4G072UU07
4G072UU17
4G072UU30
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ケイ酸ナトリウム等のケイ酸アルカリ金属塩をシリカ源として用いて、工業的に有利な方法で、収率よくナノ中空粒子を得る方法の提供。
【解決手段】平均粒子径が500nm以下の炭酸カルシウム粒子、ケイ酸アルカリ金属塩、及びノニオン系界面活性剤とを含む親水性溶媒に、酸又はアルカリから選ばれる触媒を添加し、炭酸カルシウム、ノニオン系界面活性剤及びケイ酸アルカリ金属塩を含む複合体粒子を得、次いで該複合体粒子から酸処理により炭酸カルシウム粒子を除去するナノ中空粒子の製造方法。ノニオン系界面活性剤がポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルか又は、ヘキサフルオロイソプロパノールであり、親水性溶媒がエタノールであるナノ中空粒子の製造方法。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒子径が500nm以下の炭酸カルシウム粒子、ケイ酸アルカリ金属塩、及びノニオン系界面活性剤とを含む親水性溶媒に、酸又はアルカリから選ばれる触媒を添加し、炭酸カルシウム、ノニオン系界面活性剤及びケイ酸アルカリ金属塩を含む複合体粒子を得、次いで該複合体粒子から酸処理により炭酸カルシウム粒子を除去することを特徴とするナノ中空粒子の製造方法。
【請求項2】
ノニオン系界面活性剤がポリオキシアルキレンモノアルキルエーテルであることを特徴とする請求項1記載のナノ中空粒子の製造方法。
【請求項3】
ノニオン系界面活性剤がポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルであることを特徴とする請求項1記載のナノ中空粒子の製造方法。
【請求項4】
ノニオン系界面活性剤がフルオロアルコールであることを特徴とする請求項1記載のナノ中空粒子の製造方法。
【請求項5】
ノニオン系界面活性剤がヘキサフルオロイソプロパノールであることを特徴とする請求項1記載のナノ中空粒子の製造方法。
【請求項6】
親水性溶媒がエタノールであることを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載のナノ中空粒子の製造方法。
【請求項7】
ケイ酸アルカリ金属塩がケイ酸ナトリウムであることを特徴とする請求項1乃至6の何れか一項に記載のナノ中空粒子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノ中空粒子の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シリカ殻からなる中空粒子は、例えば、医薬品、化粧品の分野で、ドラッグデリバリー用の担体、また、断熱性及び透明性に優れていることから、断熱塗料、断熱フィルム、断熱繊維用の充填材、或いは軽量であることから軽量充填材等の幅広い用途での応用が期待されている。
【0003】
シリカ殻からなる中空粒子の製法として、テトラアルコキシシラン等の有機ケイ化合物をシリカ源とする方法(例えば、特許文献1〜2参照。)や、ケイ酸アルカリ金属塩をシリカ源とする方法(例えば、特許文献3参照。)等が知られている。有機ケイ素化合物は高価であり、安価な原料のケイ酸ナトリウム等のケイ酸アルカリ金属塩を用いたナノ中空粒子の開発が要望されている。
【0004】
ケイ酸アルカリ金属塩をシリカ源とする方法としては、例えば、下記特許文献3には、炭酸カルシウム等の支持体粒子上にケイ酸ナトリウム等のケイ酸アルカリ金属塩を酸処理により沈着させてシリカ被膜を形成した後、酸で炭酸カルシウム等の支持体を溶出させる方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−91194号公報
【特許文献2】特開2006−256921号公報
【特許文献3】特表2000−500113号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
光学的に透明であることが要求される分野では、中空粒子はナノサイズであることが必要である。
しかしながら、特許文献3では、実際に用いている支持体粒子の炭酸カルシウムは、数μmの大きさのもので、得られる中空シリカ粒子も数μmの大きさのものであり、また、特許文献3の方法で、ナノ中空粒子を得るためナノオーダの大きさの炭酸カルシウムを用いて反応を行っても、中間生成物の炭酸カルシウム粒子とシリカとの複合体を収率よく生成させることが出来ないため、結果的にナノ中空粒子を収率よく生成させることが難しいという問題があった。
【0007】
従って、本発明の目的は、ケイ酸ナトリウム等のケイ酸アルカリ金属塩をシリカ源として用いて、収率よくナノ中空粒子を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記実情に鑑み鋭意研究を重ねた結果、平均粒子径が500nm以下の炭酸カルシウム粒子、ケイ酸アルカリ金属塩及びノニオン系界面活性剤とを含む親水性溶媒に、酸又はアルカリから選ばれる触媒を加えて反応を行うことにより、炭酸カルシウムの粒子表面にノニオン系界面活性剤とケイ酸アルカリ金属塩の複合膜を形成した炭酸カルシウム、ノニオン系界面活性剤及びケイ酸アルカリ金属塩とを含む複合体粒子が収率よく得られること。また、この得られた複合体粒子を酸処理して該複合体粒子から炭酸カルシウムを溶出させて除去することで収率よくナノ中空粒子が得られることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0009】
即ち、本発明が提供しようとするナノ中空粒子の製造方法は、平均粒子径が500nm以下の炭酸カルシウム粒子、ケイ酸アルカリ金属塩、及びノニオン系界面活性剤とを含む親水性溶媒に、酸又はアルカリから選ばれる触媒を添加し、炭酸カルシウム、ノニオン系界面活性剤及びケイ酸アルカリ金属塩を含む複合体粒子を得、次いで該複合体粒子から酸処理により炭酸カルシウム粒子を除去することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ケイ酸ナトリウム等のケイ酸アルカリ金属塩をシリカ源として用いて、工業的に有利な方法で、収率よくナノ中空粒子を得ることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例1で得られた複合体粒子試料及びナノ中空粒子試料のX線回折図。 上段;炭酸カルシウム、中段;複合体粒子、下段;ナノ中空粒子。
図2】実施例2で得られた複合体粒子試料及びナノ中空粒子試料のX線回折図。 上段;炭酸カルシウム、中段;複合体粒子、下段;ナノ中空粒子。
図3】実施例3で得られた複合体粒子試料及びナノ中空粒子試料のX線回折図。 上段;炭酸カルシウム、中段;複合体粒子、下段;ナノ中空粒子。
図4】実施例4で得られた複合体粒子試料及びナノ中空粒子試料のX線回折図。 上段;炭酸カルシウム、中段;複合体粒子、下段;ナノ中空粒子。
図5】比較例1で得られた複合体粒子試料及びナノ中空粒子試料のX線回折図。 上段;炭酸カルシウム、中段;複合体粒子、下段;ナノ中空粒子。
図6】比較例2で得られた複合体粒子試料及びナノ中空粒子試料のX線回折図。 上段;炭酸カルシウム、中段;複合体粒子、下段;ナノ中空粒子。
図7】比較例3で得られた複合体粒子試料及びナノ中空粒子試料のX線回折図。 上段;炭酸カルシウム、中段;複合体粒子、下段;ナノ中空粒子。
図8】実施例2で得られたナノ中空粒子試料の電子顕微鏡写真。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明をその好ましい実施形態に基づいて説明する。
本発明のナノ中空粒子の製造方法は、基本的に下記の工程を有するものである。
第一工程;平均粒子径が500nm以下の炭酸カルシウム粒子、ケイ酸アルカリ金属塩、及びノニオン系界面活性剤とを含む親水性溶媒に、酸又はアルカリから選ばれる触媒を添加して、炭酸カルシウム、ノニオン系界面活性剤及びケイ酸アルカリ金属塩を含む複合体粒子(以下、単に「複合体粒子」と言うことがある。)を得る工程。
第二工程;次いで該複合体粒子から酸処理により炭酸カルシウム粒子を除去する工程。
【0013】
(第一工程)
本製造方法の第一工程では、平均粒子径が500nm以下の炭酸カルシウム粒子、ケイ酸アルカリ金属塩及びノニオン系界面活性剤とを含む親水性溶媒に、酸又はアルカリから選ばれる触媒を添加して、炭酸カルシウムの粒子表面にノニオン系界面活性剤とケイ酸アルカリ金属塩の複合膜を形成した炭酸カルシウム、ノニオン系界面活性剤及びケイ酸アルカリ金属塩を含む複合体粒子を得る工程である。
【0014】
第一工程で用いる炭酸カルシウムは、平均粒子径が500nm以下、好ましくは10〜300nm、いっそう好ましくは10〜100nmのものを用いることが本製造方法において、重要な要件の一つである。この理由は、用いる炭酸カルシウムの平均粒子径が500nmより大きくなると、ナノサイズの粒子を生成させることが難しくなるだけでなく、粒子同士の凝集等により返って中空粒子自体を製造することが困難になるからである。
【0015】
また、用いる炭酸カルシウムの粒子形状は、特に制限はなく、例えば球状、回転楕円体状、円筒状、立方体状等の粒子形状のものを使用するこができる。
【0016】
第一工程で用いる炭酸カルシウムは市販品を用いることができ、例えば、白石工業社、林化成工業社等から市販されている。
【0017】
炭酸カルシウムの親水性溶媒への添加量は、0.01〜5g/ml、好ましくは0.03〜2g/mlとすることが反応操作が容易になり、また、収率よく複合体粒子を得る観点から好ましい。
【0018】
第一工程で用いるケイ酸アルカリ金属塩は、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸リチウム等のケイ酸アルカリ金属塩を用いることができ、このうちケイ酸ナトリウムが工業的に安価に入手でき、反応を工業的に有利に行える観点から特に好ましい。
【0019】
ケイ酸アルカリ金属塩のSiO2:M2O(式中、Mは、Na、K及びLiから選ばれるアルカリ金属元素を示す。)のモル比(SiO2/M2O)は、特に制限はなく通常2〜5、好ましくは2.5〜3.5である。
【0020】
本製造方法において、ケイ酸アルカリ金属塩の添加量は、炭酸カルシウム3gに換算したときの値で、0.05〜10g、好ましくは0.1〜5gとすることが収率よく複合体粒子を得る観点から好ましい。
【0021】
第一工程で用いるノニオン系界面活性剤は、例えば、ポリオキシアルキレングリコール、ポリオキシアルキレンモノアルキルエーテル、脂肪酸エステル、アルキルアミンエチレンオキサイド付加体、グリコール類、フルオロアルコール或いは高分子界面活性剤類が使用でき、なかでも、水溶性のポリオキシアルキレンモノアルキルエーテル、フルオロアルコールが好ましい。
【0022】
ポリオキシアルキレンモノアルキルエーテルとしては、例えばポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンコレステリルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンジノニルフェニルエーテル、ポリオキシプロピレンブチルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブチルエーテル、ポリオキシエチレンメチルグルコシド、ポリオキシプロピレンメチルグルコシド等が挙がられる。
【0023】
フルオロアルコールとしては、例えば、トリフルオロエタノール、ヘキサフルオロイソプロパノール、テトラフルオロプロパノール、オクタフルオロペンタノール等のC2 〜C10脂肪族フルオロアルコールが挙げられる。
【0024】
本製造方法において、これらのうち、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ヘキサフルオロイソプロパノールが好ましく、特にヘキサフルオロイソプロパノールが好ましい。
【0025】
本製造方法においてノニオン系界面活性剤の添加量は、炭酸カルシウム3gに換算したときの値で、10〜1000mg、好ましくは50〜500mgとすることが収率よく複合体粒子を得る観点から好ましい。
【0026】
第一工程で用いる親水性溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等の低級アルコールが挙げられ、この中で、エタノールが特に好ましい。
【0027】
第一工程では、前記炭酸カルシウム、ケイ酸アルカリ金属塩及びノニオン系界面活性剤を含む親水性溶媒中に、酸又はアルカリから選ばれる触媒を添加する。
【0028】
第一工程で用いる酸又はアルカリから選ばれる触媒としては、特に制限されず、例えば、アルカリとしては、水酸化アンモニウム、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウム等が挙げられ、酸としては、硫酸、塩酸、硝酸又は酢酸等が挙げられ、反応性が高い点で、好ましくは水酸化アンモニウム又は塩酸であり、特に好ましくは水酸化アンモニウムである。
【0029】
酸又はアルカリから選ばれる触媒の添加量は、特に制限されるものではないが、酸の場合は、炭酸カルシウム3gに対して1Nの酸として換算した値で0.1〜10ml、好ましくは0.05〜5mlとすることが、収率よく複合体粒子を得る観点から好ましい。アルカリの場合は、炭酸カルシウム3gに対して、25wt%溶液として換算した値で0.1〜10ml、好ましくは0.5〜5mlとすることが収率よく複合体粒子を得る観点から好ましい。
【0030】
第一工程での反応条件は、反応温度が5〜50℃、好ましくは15〜35℃であり、反応時間は0.5時間以上、好ましくは1〜5時間である。
【0031】
反応終了後、得られた炭酸カルシウム、ノニオン系界面活性剤及びケイ酸アルカリ金属塩を含む複合体粒子を常法により濾過等により回収し、必要により洗浄等の精製、乾燥を行って、複合体粒子を得、次いで該複合体粒子を第二工程に付す。
【0032】
(第二工程)
本製造方法の第二工程では、第一工程で得られた複合体粒子から酸処理により炭酸カルシウム粒子を溶出させ、ナノ中空粒子を得る工程である。第二工程では、また、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属の不純物を複合体粒子から除去することも出来る。
なお、本製造方法では、ノニオン系界面活性剤として、ポリオキシアルキレンモノアルキルエーテルを用いた場合には、この第二工程の酸処理及び必要により行う水での洗浄処理により、複合体粒子からポリオキシアルキレンモノアルキルエーテルを除去したナノ中空粒子を得ることができる。一方、ノニオン系界面活性剤としてフルオロアルコールを用いた場合には、場合によってはナノ中空粒子の表面にフルオロアルコールが多少残存することがあるが、用途等を考慮してそのまま用いても何ら差し支えなく、また、洗浄により除去されないノニオン系界面活性剤は、例えば200〜400℃で加熱処理することにより完全に除去することが出来る。
【0033】
第二工程での操作は、複合体粒子と酸溶液とを接触させることで行うことが出来る。使用できる酸としては、例えば、塩酸、硝酸、酢酸等を使用することが出来る。
【0034】
酸溶液の添加量が低いと、炭酸カルシウムの溶解反応が遅くなり、製造効率が悪化する傾向があり、一方、酸の添加量が多くなると、反応が激しくなり、炭酸カルシウムの溶解にともなう炭酸カルシウムの溶解反応が激しくなり、炭酸カルシウムの発泡により、シリカ殻が破壊され、ナノ中空粒子が得られない可能性がある。このため、酸の添加量は炭酸カルシウム1gに対して1Nの酸として換算したときに1〜50ml、好ましくは5〜25mlとすることが好ましい。
【0035】
また、複合体粒子と酸溶液との接触温度は10〜40℃、好ましくは20〜30℃であり、また接触時間は、0.5時間以上、好ましくは1〜48時間である。
【0036】
酸により炭酸カルシウムを溶解し、複合体粒子から炭酸カルシウム粒子を除去してナノ中空粒子を生成させた後は、必要により水等で洗浄、乾燥、更には200〜400℃で加熱処理等を行って製品とする。
【0037】
本製造方法で得られるナノ中空粒子は、光散乱光度計で求められる平均粒子径が10〜500nm、好ましくは20〜300nmである。
本製造方法で得られるナノ中空粒子は、例えば医薬品、化粧品の分野で、ドラッグデリバリー用の担体、断熱塗料、断熱フィルム、断熱繊維等の充填材、また、軽量であることから軽量充填材等の幅広い用途での応用が期待できる。
【実施例】
【0038】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
{実施例1}
第一工程;
市販のナノサイズの炭酸カルシウム(平均粒子径80nm)3g、ケイ酸ナトリウム(日本化学工業社製、SiO2;62.1wt%、Na2O;19.7wt%)320mg及びポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル 310mg及びエタノール15mlを反応容器に仕込み、室温(25℃)下でよく撹拌した。
次いで、1N塩酸水溶液を1ml添加し、室温(25℃)下に2時間撹拌した。
反応終了後、常法に従って濾過、次いで50℃で真空下に乾燥して炭酸カルシウム、ノニオン系界面活性剤及びケイ酸アルカリ金属塩を含む複合体粒子試料を得た。
第二工程;
第一工程で得られた複合体粒子試料1gに対して1N塩酸を20ml加え、室温(25℃)下に24時間撹拌を行った。
反応終了後、常法により濾過し、更に水で洗浄し、次いで50℃で真空下に乾燥を行ってナノ中空粒子試料を得た。
【0039】
{実施例2}
第一工程で、1N塩酸水溶液に代えて25wt%アンモニア水を1ml添加した以外は実施例1と同様な条件で複合体粒子試料及びナノ中空粒子試料を得た。
【0040】
{実施例3}
第一工程;
市販のナノサイズの炭酸カルシウム(平均粒子径80nm)3g、ケイ酸ナトリウム(日本化学工業社製、SiO2;62.1wt%、Na2O;19.7wt%)320mg及びヘキサフルオロイソプロパノール 310mg及びエタノール15mlを反応容器に仕込み、室温(25℃)下でよく撹拌した。
次いで、1N塩酸水溶液を1ml添加し、室温(25℃)下に2時間撹拌した。
反応終了後、常法に従って濾過、次いで50℃で真空下に乾燥して炭酸カルシウム、ノニオン系界面活性剤及びケイ酸アルカリ金属塩を含む複合体粒子試料を得た。
第二工程;
第一工程で得られた複合体粒子試料1gに対して1N塩酸を20ml加え、室温(25℃)下に24時間撹拌を行った。
反応終了後、常法により濾過し、更に水で洗浄し、次いで50℃で真空下に乾燥を行ってナノ中空粒子試料を得た。
【0041】
{実施例4}
第一工程で、1N塩酸水溶液に代えて25wt%アンモニア水を1ml添加した以外は実施例3と同様な条件で複合体粒子試料及びナノ中空粒子試料を得た。
【0042】
{比較例1}
市販のナノサイズの炭酸カルシウム(平均粒子径80nm)3g、ケイ酸ナトリウム(日本化学工業社製、SiO2;62.1wt%、Na2O;19.7wt%)0.93mg及びエタノール15mlを反応容器に仕込み、室温(25℃)下でよく撹拌した。
次いで、1N塩酸水溶液を1ml添加し、室温(25℃)下に2時間撹拌した。
反応終了後、常法に従って濾過、次いで50℃で真空下に乾燥して炭酸カルシウム及びケイ酸アルカリ金属塩を含む複合体粒子試料を得た。
第二工程;
第一工程で得られた複合体粒子試料1gに対して1N塩酸を20ml加え、室温(25℃)下に24時間撹拌を行った。
反応終了後、常法により濾過し、更に水で洗浄し、次いで50℃で真空下に乾燥を行ってナノ中空粒子試料を得た。
【0043】
{比較例2}
第一工程で、1N塩酸水溶液に代えて25wt%アンモニア水を1ml添加した以外は比較例1と同様な条件で複合体粒子試料及びナノ中空粒子試料を得た。
【0044】
{比較例3}
第一工程で、1N塩酸水溶液に代えて水を1ml添加した以外は比較例1と同様な条件で複合体粒子試料及びナノ中空粒子試料を得た。
【0045】
【表1】
注)表中の「quant.」は、収率が5%以下であることを示す。
【0046】
表1の結果より、ノニオン系界面活性剤を用いて反応を行った実施例のものは、ノニオン系界面活性剤を用いないで反応を行った比較例のものに比べて、複合体粒子が高収率で得られていることが分かる。
【0047】
<物性評価>
実施例及び比較例で調製した複合体試料及びナノ中空粒子試料について、X線回析分析及びEDXにより元素分析を行った。その結果を表2に示す。
また、実施例及び比較例で調製した複合体試料及びナノ中空粒子試料を、メタノールに加えて、24時間撹拌して、メタノール中に分散させ、光散乱光度計を用いて、平均粒子径を測定した。その結果を表2に示す。
実施例1〜4の複合体試料及びナノ中空粒子試料のX線回折図を図1図4に示す。また、比較例1〜3の複合体試料及びナノ中空粒子試料のX線回折図を図5図7に示す。なお、図1〜7の上段には炭酸カルシウムのX線回折図も併記した。
また、実施例2で得られたナノ中空粒子試料の電子顕微鏡写真を図8に示す。
【0048】
【表2】
注)表中の「−」は未測定であることを示す。
【0049】
表2及び図1図7の結果より、実施例及び比較例のものは、複合体粒子から炭酸カルシウム粒子及びナトリウムが第二工程後に除去されていることが分かる。また、ノニオン系界面活性剤として、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルを用いた実施例1及び実施例2では、第2工程後にポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルもナノ中空粒子から完全に除去されていることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明によれば、ケイ酸ナトリウム等のケイ酸アルカリ金属塩をシリカ源として用いて、工業的に有利な方法で、収率よくナノ中空粒子を得ることが出来る。
また、本製造方法で得られるナノ中空粒子は、例えば医薬品、化粧品の分野で、ドラッグデリバリー用の担体、断熱塗料、断熱フィルム、断熱繊維等の充填材、また、軽量であることから軽量充填材等の幅広い用途での応用が期待できる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8