(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-68144(P2016-68144A)
(43)【公開日】2016年5月9日
(54)【発明の名称】レーザ切断方法
(51)【国際特許分類】
B23K 26/38 20140101AFI20160404BHJP
【FI】
B23K26/38 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-202810(P2014-202810)
(22)【出願日】2014年10月1日
(71)【出願人】
【識別番号】000185374
【氏名又は名称】小池酸素工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】513116324
【氏名又は名称】神鋼鋼板加工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000718
【氏名又は名称】特許業務法人中川国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田辺 良一
(72)【発明者】
【氏名】望月 陽平
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 和則
(72)【発明者】
【氏名】中山 和彦
(72)【発明者】
【氏名】東 和彦
【テーマコード(参考)】
4E168
【Fターム(参考)】
4E168AD07
4E168AD13
4E168CB03
4E168CB08
4E168DA23
4E168DA28
4E168FB01
4E168JA02
(57)【要約】
【課題】レーザ切断トーチによって被切断材から角部を有する製品を切断したとき、該製品を分離する際の作業を確実に行って、容易な取出作業を行うことができるレーザ切断方法を提供する。
【解決手段】被切断材Aに対しレーザ切断トーチからレーザ光を照射すると共に目的の経路に沿って移動させて製品1を切断するためのレーザ切断方法であって、被切断材Aから切断すべき製品1が角部1aを有しており、製品1の角部1aを切断する際に、製品1の角部1aに対応する被切断材A側に該製品1の角部1aとの接触を避ける逃げ部2〜4を形成する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被切断材に対しレーザ切断トーチからレーザ光を照射すると共に目的の経路に沿って移動させて製品を切断するためのレーザ切断方法であって、
被切断材から切断すべき製品が角部を有しており、
前記製品の角部を切断する際に、前記製品の角部に対応する被切断材側に該製品の角部との接触を避ける逃げ部を形成することを特徴とするレーザ切断方法。
【請求項2】
前記製品の角部に対応する被切断材側に逃げ部を形成する際に、前記製品の角部を構成する一方の辺から該製品の角部を超えて延長方向に切断した後、他方の辺の延長方向から切断して該他方の辺を切断することを特徴とする請求項1に記載したレーザ切断方法。
【請求項3】
前記製品の角部に対応する被切断材側に逃げ部を形成する際に、前記角部を構成する一方の辺から該角部を超えて延長方向に対する切断と他方の辺の延長方向から切断して該他方の辺に対する切断を連続させて行うことを特徴とする請求項2に記載したレーザ切断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ切断トーチを用いて角部を有する製品を被切断材から切断して取り出す際に、切断された製品を被切断材から確実に分離し得るようにしたレーザ切断方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ガス切断トーチやプラズマ切断トーチ或いはレーザ切断トーチを切断装置に搭載し、搭載した切断トーチによって、鋼板やステンレス鋼板等の被切断材から目的の製品を切断することが行われている。このような切断装置では、稼働率を向上させるために連続運転化がはかられている。
【0003】
長時間連続運転する切断装置として、レーザ切断トーチを搭載したレーザ切断装置が用いられる。このレーザ切断装置では、ガス切断装置のようにプラズマ切断やレーザ切断に比較して切断速度が遅いという問題や、プラズマ切断装置のように電極やノズルの交換作業が必要となるという問題がないため、連続運転や、無人運転化をはかりやすいという利点がある。
【0004】
一方、目的の製品の切断が終了した被切断材では、製品と残材(被切断材)とが同一平面上に存在するため、この平面から製品を取り出す取出作業が行われる。夜間を含む長時間連続運転し且つ無人化した切断装置の場合、切断された製品の数も多くなり、取出作業を人手で行う場合、多くの工数を投入する必要が生じる。このため、切断された製品を被切断材から取り出す取出作業を機械的に行う装置が提案されている。
【0005】
例えば、特許文献1に記載された切断処理装置は、内側のレールに載置された切断装置と、外側のレールに載置され内周寸法が切断装置の外周寸法よりも大きい仕分装置と、切断装置及び仕分装置を制御する制御装置と、を有して構成されている。特に、仕分装置には複数の吸着部材を有する吸着ヘッドが設けられ、この吸着ヘッドによって被切断材から切断された製品を吸着すると共に上昇させて分離し得るように構成されている。
【0006】
また、特許文献2に記載されたピッキング装置は、部材を吸着する吸着マグネットを上下に搖動させる搖動装置を有しており、切断された部材を吸着マグネットによって吸着して吊り上げることで被切断材から分離させるように構成されている。特に、部材を分離する際に負荷が大きい場合、吸着マグネットを上下に搖動させることで、裏面にスラグが付着しているような場合でも確実に分離し得るように構成されている。
【0007】
上記した特許文献1、2に記載された装置では、切断された製品を被切断材から分離する際に、吸着ヘッド或いは吸着マグネット(吸着部材)によって製品を吸着している。そして、切断された製品を吸着部材によって吸着して上昇させることで、製品を被切断材に形成されている切溝を通過させて被切断材から分離させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第2824277号公報(特開平03−008570号公報)
【特許文献2】特許第3148360号公報(特開平05−337855号公報)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1又は特許文献2に開示された装置を用いて被切断材から切断した製品を吸着部材によって吸着して分離させる場合、ガス切断やプラズマ切断で切断した製品は確実に分離して取り出すことができる。しかし、レーザ切断で角部を有する製品を切断した場合、該製品を被切断材から円滑に分離することができず、取出作業が容易でないという問題が生じている。
【0010】
本発明の目的は、レーザ切断トーチによって被切断材から角部を有する製品を切断したとき、該製品を分離する際の作業を確実に行って、容易な取出作業を行うことができるレーザ切断方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、レーザ切断トーチによる被切断材の切断を行い、切断された製品を確実に分離することができるレーザ切断方法について検討を重ねた。その結果、レーザ切断トーチを用いて切断した製品を吸着して分離する際に吸着した製品に位置ずれが生じた場合、製品の辺に対応する切断面どうしが接触した場合には確実に分離できるものの、角部どうしが接触した場合には分離が困難であることが判明した。
【0012】
即ち、
図6に示すように、被切断材51から角部52aを有する製品52を切断したとき、角部52aに対向する被切断材51側の隅部51aは僅かな曲面状に形成される。このため、二点鎖線で示すように、製品52の位置がずれて角部52aが対向する隅部51aと接触した場合、該角部52aが曲面状の隅部51aに引っ掛かって係止されてしまい、円滑な分離を実現できないことが判明した。
【0013】
レーザ切断トーチによって被切断材を切断したときに形成される切溝の幅は、被切断材の板厚の如何に関わらず略0.3mmである。このため、吸着部材によって吸着された製品に僅かな位置ずれが生じると、製品の角部が対向する被切断材の隅部と接触して係止されてしまい、円滑な分離ができないことが判明した。
【0014】
これに対し、ガス切断トーチによって被切断材を切断したときに形成される切溝の幅は板厚によっても異なるものの、略3mm〜略5mmの範囲であり、プラズマ切断トーチによる切断の場合、略5mmである。このため、吸着部材によって吸着された製品に位置ずれが生じても、製品の角部が対向する被切断材の隅部に接触することがなく、円滑な分離が実現できるのである。
【0015】
上記の如く、レーザ切断によって形成される切溝の幅は、ガス切断、プラズマ切断によって形成される切溝の幅よりも極端に小さい。このため、吸着部材によって吸着された製品が被切断から分離される際に、例えば位置ずれを含む僅かな姿勢の変化が生じても、製品の角部が対向する隅部と接触して係止されることになってしまうのである。
【0016】
従って、本発明に係るレーザ切断方法は、被切断材に対しレーザ切断トーチからレーザ光を照射すると共に目的の経路に沿って移動させて製品を切断するためのレーザ切断方法であって、被切断材から切断すべき製品が角部を有しており、前記製品の角部を切断する際に、前記製品の角部に対応する被切断材側に該製品の角部との接触を避ける逃げ部を形成することを特徴とするものである。
【0017】
上記レーザ切断方法に於いて、前記製品の角部に対応する被切断材側に逃げ部を形成する際に、前記製品の角部を構成する一方の辺から該製品の角部を超えて延長方向に切断した後、他方の辺の延長方向から切断して該他方の辺を切断することが好ましい。
【0018】
また、上記レーザ切断方法に於いて、前記製品の角部に対応する被切断材側に逃げ部を形成する際に、前記角部を構成する一方の辺から該角部を超えて延長方向に対する切断と他方の辺の延長方向から切断して該他方の辺に対する切断を連続させて行うことが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係るレーザ切断方法では、被切断材から角部を有する製品を切断する場合、角部に対応する被切断材側に逃げ部を形成することで、切断された製品を被切断材から分離して取り出す際に、製品の角部が被切断材の隅部に接触することがない。従って、切断された製品の被切断材からの確実な分離を実現することができる。
【0020】
特に、製品の角部に対応する被切断材側に逃げ部を形成する際に、一方の辺から角部を超えて延長方向に切断した後、他方の辺の延長方向から切断して該他方の辺を切断することで、製品の角部に切断による角だれ等の悪影響を及ぼすことなく幅広部を形成することができる。
【0021】
また、製品の角部を切断する際に、一方の辺から角部を超えて延長方向に対する切断から連続させて他方の辺の延長方向から切断して該他方の辺に対する切断を行うことで、連続した切断を継続させて円滑な切断を行うことができる。特に、連続して切断した切溝が製品の角部に対向した部位で交差するため、容易に幅広部を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】被切断材に角部を有する製品をネスティングした状態を説明する図である。
【
図2】切断された製品を分離する分離部材の例を説明する図である。
【
図3】第1実施例に係るレーザ切断方法を説明する図である。
【
図4】第2実施例に係るレーザ切断方法を説明する図である。
【
図5】第3実施例に係るレーザ切断方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係るレーザ切断方法(以下単に「切断方法」という)について説明する。本発明に係る切断方法は、
図1に示すように、被切断材Aから角部1aを有する製品1を切断する際に、該角部1aに対応する被切断材Aに、該角部1aとの接触を避けるための逃げ部(例えば
図3に於ける逃げ部2)を形成するものである。
【0024】
上記の如く、被切断材Aに於ける製品1の角部1aと対応する部分に逃げ部を形成しておくことで、目的の切断が終了した後、被切断材Aから製品1を分離する際に、該製品1の位置がずれたような場合でも、角部1aが被切断材Aに接触することがなく、確実な分離を円滑に行うことが可能である。
【0025】
本発明に係る切断方法を実施する切断装置の構造は特に限定するものではなく、搭載したレーザ切断トーチを用いて被切断材から角部を有する製品を切断することが可能なものであれば良い。このような切断装置としては、大型の被切断材を対象とした切断装置や、比較的小型の被切断材を対象とした切断ロボット等があり、何れも採用することが可能である。
【0026】
大型の切断装置としては、レールに走行可能に載置された門型のガーターと、該ガーターに横行可能に載置されたキャリッジと、該キャリッジに搭載されたレーザ切断トーチと、数値制御(NC)装置と、を有して構成されたものがある。また、切断ロボットとしては、先端にレーザ切断トーチを装着した多関節アームと、NC装置と、を有して構成されたものがある。これらの切断装置では、数値制御(NC)装置によって、ガーターの走行とキャリッジの横行、或いは多関節アームを制御すると共にレーザ切断トーチの稼働を制御することで、被切断から角部を有する目的の製品を切断することが可能である。
【0027】
本発明に係る切断方法を実施するためのレーザ発振器の仕様を限定するものではなく、炭酸ガスレーザ発振器やファイバーレーザ発振器等のレーザ発振器を選択的に用いることが可能である。そして、選択したレーザ発振器に応じた最適なレーザ切断トーチが選択されて切断装置に搭載される。
【0028】
被切断材の材質も特に限定するものではなく、鋼板やステンレス鋼板等を含むレーザ切断トーチによって切断することが可能な材質を対象とすることが可能である。また、被切断材の板厚は限定するものではなく、レーザ発振器の出力に応じて変化する。
【0029】
本発明に於いて、上記の如き被切断材から切断する製品は角部を有する。この角部の角度は限定するものではなく、製品の角部が被切断材側の対応する部位に形成された隅部に接触したとき、係止されて円滑な分離を阻害する虞のある角度を含むものである。即ち、製品が有する角部は、鋭角な角部及び鈍角な角部を含む。
【0030】
本発明に於いて、製品の角部に対応する被切断材側に形成される該角部との接触を避ける逃げ部は、形状を限定するものではなく、切断された製品を取り出す際に位置ずれが生じて製品が被切断材に接触したとき、角部が被切断材に係止されることがなければ良い。即ち、逃げ部としては、製品の辺が被切断材に接触したとき、角部が被切断材の何れの部位にも接触しないような形状であれば良い。
【0031】
また、被切断材から角部を有する製品を分離して取り出す際の手段は限定するものではなく、特許文献1、2に記載された仕分装置やピッキング装置を用いることが可能である。しかし、人手によって分離して取り出すことでも良い。機械を利用した場合でも、人手による場合でも、切断された製品の角部が被切断材に係止されることがないため、円滑な分離を実現することが可能となる。
【0032】
本発明に係る切断方法では、予め被切断材Aには、
図1に示すように、角部1aを有する製品1がネスティングされている。そして、このネスティングに基づいてレーザ切断トーチの移動経路や寸法が設定され、これらの条件に基づいて移動情報が設定される。また、被切断材Aの板厚や材質に基づいて切断速度やレーザ発振器の出力を含む切断条件が設定され、これらの切断条件に基づいて切断情報が設定される。前記各情報、及びレーザ切断トーチの稼働に必要な他の情報はNC装置に入力される。
【0033】
また、製品1の角部1aに対応する被切断材Aに形成する逃げ部(2〜4)を形成するためのレーザ切断トーチの移動情報や切断情報は、逃げ部形成情報として、後述する各実施例で説明する形状毎に設定される。これらの逃げ部(2〜4)を形成するための移動情報や切断情報は、予めNC装置に入力される。
【0034】
そして、上記各情報に従って図示しないレーザ切断トーチを制御して被切断材Aに対する切断を行う。即ち、被切断材Aに於ける製品1の近傍に設定された起点5にレーザ切断トーチを対向させ、被切断材Aに向けてレーザ光を照射すると共にアシストガスを噴射し
てピアシングを行い、被切断材Aに厚さ方向に貫通した孔を形成する。その後、起点5から製品1の輪郭線1bに向けて切断を開始すると共に、輪郭線1bに沿って切断を開始する。
【0035】
レーザ切断トーチが製品の角部1aに対応する位置に到達したとき、逃げ部(2〜4)を形成するための移動情報、切断情報に従ってレーザ切断トーチの移動、稼働条件を制御することで、被切断材Aに逃げ部(2〜4)を形成することが可能である。次いで、レーザ切断トーチを製品1の輪郭線1bに沿って移動させると共に、角部1aに対応する部位に到達する毎に逃げ部(2〜4)を形成することで、逃げ部(2〜4)を含んで一筆書き状にレーザ切断トーチを移動させて製品1を切断することが可能である。
【0036】
上記の如くして被切断材Aから切断された製品1を分離して取り出す方法は限定するものではない。しかし、機械的に構成された分離装置を用いることが好ましい。例えば、機械的な分離装置の例として
図2に示す分離装置15の構成について簡単に説明する。
【0037】
分離装置15は、図示しない昇降装置によって昇降可能に構成されたアーム16の先端に設けたブラケット15aに取り付けられた直線ガイド部材15bと、該直線ガイド部材15bに設けられ互いに直線往復移動可能に構成された二つの往復台15cと、該往復台15cの夫々に設けられた吸着器15dとを有している。特に、吸着器15dとしては、被切断材Aが鋼板の場合磁石を採用し、被切断材Aがステンレス鋼板の場合、真空カップを採用することが好ましい。
【0038】
二つの往復台15cは夫々モータ15eによって独立して駆動され、直線ガイド部材15bの所望の位置に移動し得るように構成されている。また、二つの吸着器15dには夫々ロードセル15fが設けられており、吸着器15dに作用する負荷を検出し得るように構成されている。
【0039】
上記の如く構成された分離装置15では、
図1に示すように、分離装置15の中心軸15gを製品1の重心Gに対向させ、二つのモータ15eを夫々独立して駆動することで、二つの吸着器15dを中心軸15gから等距離に移動させる。そして、アーム16によって分離装置15を下降させて吸着器15dを製品1に対向させて吸着することが可能である。その後、アーム16によって分離装置15を上昇させることで、吸着した製品1を被切断材Aから分離することが可能である。
【0040】
次に、第1実施例に係る切断方法について、
図1のB部の詳細図である
図3を用いて説明する。図に於いて、レーザ切断トーチが製品1を切断すると共に、角部1に対応する被切断材Aに逃げ部2を形成した軌跡を軌跡10として表している。
【0041】
本実施例では、製品1の角部1aを切断する際に、該角部1aと対応する被切断材Aの隅部を製品1の辺に対する切断方向から被切断材Aの母材側に切断することで、逃げ部2を形成している。即ち、製品1の角部1aに到達したレーザ切断トーチを、該角部1aから被切断材Aの母材側に向けて斜め方向に往復移動(軌跡10a)させることで、角部1aに対向する被切断材Aの隅部を切断した切溝12によって逃げ部2を形成している。
【0042】
逃げ部2の長さ寸法(軌跡10aの長さ寸法)は、同図に点線で示すように、製品1の位置がずれて角部1aを構成する二つの切断面1cが被切断材Aに形成された切断面11に接触したとき、角部1aが被切断面Aの何れの部位(切断面11)にも接触することがない程度であることが必要である。
【0043】
例えば、レーザ切断トーチによって製品1を切断したときに形成される切溝12の寸法が0.3mmである場合、逃げ部2の長さ寸法は略0.5mm程度よりも大きければ良い。しかし、製品1を確実に被切断材Aから分離するために、逃げ部2の長さ寸法は
2mm〜3mm程度であることが好ましい。
【0044】
製品1の角部1aに対応する被切断材Aに、上記の如き逃げ部2を形成することによって、製品1を被切断材Aから分離して取り出す際に、製品1に位置ずれが発生しても、角部1aが被切断材Aの切断面11にも接触することがない。また、製品1の切断面1cが被切断材Aの切断面11に接触しても障害になることはなく、円滑な分離が見込める。このため、製品1を被切断材Aから円滑に且つ確実に分離して取り出すことが可能である。
【0045】
次に、第2実施例に係る切断方法について、
図1のB部の詳細図である
図4を用いて説明する。本実施例では、製品1の角部1aを形成する際に、製品1を構成する一方の辺から角部1aを超えて延長方向に切断し、その後、他方の辺の延長方向から切断を再開して該他方の辺を切断し、これらの二方向の切溝12を交差させて逃げ部3を形成している。
【0046】
即ち、製品1の一方向の辺を切断し、角部1aに到達したレーザ切断トーチを他方の辺の方向に屈折させることなく、延長方向に移動させて予め設定された距離
(例えば3mm〜4mm)だけ切断を継続(軌跡10b)させる。その後、レーザ切断トーチによる被切断材Aに対する切断を停止させ、製品1の他方の辺の延長方向であって、角部1aから予め設定された距離
(例えば3mm〜4mm)だけ離隔させた位置Pに移動させる。この位置Pから再度ピアシングを行って切断を開始(軌跡10c)し、製品1の他方の辺を切断する。
【0047】
被切断材Aに対し上記の如き切断を行うことによって、製品1の角部1aに対応する被切断材Aには該角部1aと対称形の角部が形成されるものの、この角部にはピアシング時に投入された熱が集中して鋭利な角を形成することなく曲面状となり、この結果、逃げ部3が形成される。このような逃げ部3であっても、製品1に位置ずれが発生しても、角部1aが被切断材Aの切断面11にも接触することがない。このため、製品1を被切断材Aから円滑に且つ確実に分離して取り出すことが可能である。
【0048】
次に、第3実施例に係る切断方法について、
図1のB部の詳細図である
図5を用いて説明する。本実施例では、製品1の角部1aを形成する際に、製品1を構成する一方の辺から角部1aを超えて延長方向に切断した後、切断を継続させて他方の辺の延長方向から該他方の辺を切断し、連続させた二方向の切断を交差させて逃げ部4を形成している。
【0049】
即ち、製品1の一方向の辺を切断し、角部1aに到達したレーザ切断トーチを該一方の辺の延長方向への切断を継続させた状態で、他方の辺の延長方向にまで移動させて該他方の辺の延長側から切断することによって、これらの二方向の切溝を交差させて逃げ部4を形成している。即ち、製品1の角部1aに対応する被切断材A側に円弧状に連続した切溝を形成することで逃げ部4を形成している。
【0050】
製品1の角部1aに対応する被切断材Aに円弧状の逃げ部4を形成する際に、該円弧の半径を限定するものではないが、
例えば2mm〜3mm程度であることが好ましい。被切断材Aを、この程度の半径を持つ円弧を切断する場合、被切断材Aの厚さの如何に関わらず、円弧で囲まれた母材は溶融してしまい。充分に有効な逃げ部4を形成することが可能である。
【0051】
尚、本実施例では、製品1の角部1aに対応する被切断材Aを円弧状に切断して逃げ部4を形成したが、逃げ部4の形状は必ずしも円弧状である必要はなく、三角形を含む多角形状であって良い。しかし、製品1を構成する一方の辺に対する切断から他方の辺に対する切断を連続して行うことは必要である。
【0052】
上記の如く形成された逃げ部4では、製品1に位置ずれが発生しても、角部1aが被切断材Aの切断面11にも接触することがない。このため、製品1を被切断材Aから円滑に且つ確実に分離して取り出すことが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明に係るレーザ切断方法は、夜間を含む長時間の連続運転を行うレーザ切断装置に利用して有利である。
【符号の説明】
【0054】
A 被切断材
1 製品
1a 角部
1b 輪郭線
1c 切断面
2〜4 逃げ部
5 起点
10、10a、10b、10c
軌跡
11 切断面
12 切溝
15 分離装置
15a ブラケット
15b 直線ガイド部材
15c 往復台
15d 吸着器
15e モータ
15f ロードセル
15g 中心軸
16 アーム