(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-69822(P2016-69822A)
(43)【公開日】2016年5月9日
(54)【発明の名称】シールド掘進機の掘削土砂密度計測方法及び装置
(51)【国際特許分類】
E21D 9/13 20060101AFI20160404BHJP
E21D 9/06 20060101ALI20160404BHJP
E21D 9/12 20060101ALI20160404BHJP
【FI】
E21D9/06 301T
E21D9/06 301P
E21D9/12 J
E21D9/12 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-197206(P2014-197206)
(22)【出願日】2014年9月26日
(71)【出願人】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】391004791
【氏名又は名称】カジマメカトロエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110711
【弁理士】
【氏名又は名称】市東 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100078798
【弁理士】
【氏名又は名称】市東 禮次郎
(72)【発明者】
【氏名】沼宮内 克己
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 寛昌
(72)【発明者】
【氏名】長津 浩太良
(72)【発明者】
【氏名】福田 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】菅野 雄彦
(72)【発明者】
【氏名】中津留 寛介
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 聡
(72)【発明者】
【氏名】天野 潤
【テーマコード(参考)】
2D054
【Fターム(参考)】
2D054AC04
2D054BA04
2D054DA03
2D054GA12
2D054GA25
2D054GA42
2D054GA52
2D054GA58
2D054GA68
2D054GA89
2D054GA92
2D054GA93
2D054GA95
(57)【要約】
【課題】強力なガンマ線を用いることなくシールド掘進機の掘削直後の掘削土砂の密度を連続的に計測できる方法及び装置を提供する。
【解決手段】シールド掘進機1の掘削土砂圧が片側面に加わる壁体14a又は11に貫通孔29を穿ち,貫通孔29の反対側面周囲に一端を密着させてシリンダ21を取り付け,シリンダ21内に貫通孔29を塞止するピストン22を他端側から嵌合させると共にシリンダ21の外周面にシリンダ21内の密度を非接触で測定するガンマ線密度計23を装着し,ピストン23の引き操作時のガンマ線密度計23の出力値により貫通孔29からシリンダ21内に吐出された掘削土砂Eの密度を計測する。好ましくは,ピストン23の押し操作により密度計測後の掘削土砂Eを貫通孔29へ戻し,ピストン22の引き操作と押し操作とを繰り返してピストン22の複数回の引き操作時のガンマ線密度計23の出力平均値により掘削土砂Eの密度を求める。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シールド掘進機の掘削土砂圧が片側面に加わる壁体に貫通孔を穿ち,前記貫通孔の反対側面周囲に一端を密着させてシリンダを取り付け,前記シリンダ内に貫通孔を塞止するピストンを他端側から嵌合させると共にシリンダ外周面にシリンダ内の密度を非接触で測定するガンマ線密度計を装着し,前記ピストンの引き操作時のガンマ線密度計の出力値により貫通孔からシリンダ内に吐出された掘削土砂の密度を計測してなるシールド掘進機の掘削土砂密度計測方法。
【請求項2】
請求項1の方法において,前記ピストンの押し操作により密度計測後の掘削土砂を貫通孔へ戻してなるシールド掘進機の掘削土砂密度計測方法。
【請求項3】
請求項1又は2の方法において,前記ピストンの引き操作と押し操作とを繰り返し,前記ピストンの複数回の引き操作時のガンマ線密度計の出力平均値により掘削土砂の密度を求めてなるシールド掘進機の掘削土砂密度計測方法。
【請求項4】
請求項1から3の何れかの方法において,前記壁体を,前記シールド掘進機の掘削土砂を充満させるカッターチャンバーの後方隔壁,又は前記カッターチャンバーから掘削土砂を排出するスクリューコンベアの管壁,又は前記シールド掘進機の切羽面に配置したスポークの中空周壁としてなるシールド掘進機の掘削土砂密度計測方法。
【請求項5】
シールド掘進機の掘削土砂圧が片側面に加わる壁体に穿った貫通孔の反対側面周囲に一端を密着させて取り付けるシリンダ,前記シリンダ内に他端側から嵌合させて貫通孔を塞止するピストン,及び前記シリンダ外周面に装着してシリンダ内の密度を非接触で測定するガンマ線密度計を備え,前記ピストンの引き操作時のガンマ線密度計の出力値によりシリンダ内に吐出した掘削土砂の密度を計測してなるシールド掘進機の掘削土砂密度計測装置。
【請求項6】
請求項5の装置において,前記ピストンの引き操作及び押し操作を駆動するアクチュエータと,前記アクチュエータ及びガンマ線密度計に接続されてアクチュエータによるピストンの引き操作時のガンマ線密度計の出力値により掘削土砂の密度を求める演算手段とを設けてなるシールド掘進機の掘削土砂密度計測装置。
【請求項7】
請求項5の装置において,前記アクチュエータによりピストンの引き操作と押し操作とを繰り返し,前記演算手段によりピストンの複数回の引き操作時のガンマ線密度計の出力平均値により掘削土砂の密度を求めてなるシールド掘進機の掘削土砂密度計測装置。
【請求項8】
請求項6又は7の装置において,前記壁体に穿った複数の貫通孔にそれぞれ取り付ける複数のシリンダと各シリンダに装着するピストン及びガンマ線密度計とを設け,前記演算手段により複数の貫通孔における密度計測値から掘削土砂の密度を算出してなるシールド掘進機の掘削土砂密度計測装置。
【請求項9】
請求項5から8の何れかの装置において,前記壁体を,前記シールド掘進機の掘削土砂を充満させるカッターチャンバーの後方隔壁,又は前記カッターチャンバーから掘削土砂を排出するスクリューコンベアの管壁,又は前記シールド掘進機の切羽面に配置したスポークの中空周壁としてなるシールド掘進機の掘削土砂密度計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシールド掘進機の掘削土砂密度計測方法及び装置に関し,とくに土圧式ないし泥土圧式シールド掘進機の掘削土砂の密度をガンマ線密度計で計測する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
土圧式のシールド掘進機1は,
図4(A)に示すように切羽面2の背後に後方隔壁11で区画されたカッターチャンバー10を設け,
図4(B)に示すように切羽面2のカッタービット6で掘削した土砂Eをカッタースリット7からカッターチャンバー10内に取り込んで充満させることにより,切羽面前方の土圧及び地下水圧を抑えながら掘進する(非特許文献1参照)。隔壁11の後方下部にはカッターチャンバー10の一端を接続し,掘進に応じて増えるカッターチャンバー10内の掘削土砂Eをスクリューコンベア14によって隔壁11の後方のテール部へ順次排出するが,スクリューコンベア14のモータ(図示せず)の回転数を制御してカッターチャンバー10及びスクリューコンベア14の内部に絶えず掘削土砂Eを充満させることにより,切羽面前方の土水が機内へ流入するのを防ぐことができる。図中の符号9はシールド掘進機1の周壁であるスキンプレートを示し,符号19はスキンプレート9のテール部の内周面に組み立てる円筒状のセグメントを示す。
【0003】
図4の実施例は,カッターチャンバー10の掘削土砂Eに添加剤(ベントナイト等)Dを注入して練り混ぜて混合泥土とし,その混合泥土をカッターチャンバー10及びスクリューコンベア14の内部に充満させる泥土圧式シールド工法を示している。掘削土砂Eを添加剤Dと練り混ぜて不透水化及び塑性流動化された混合粘土へと変換することにより,土圧式シールドの適用範囲を広げることができる(非特許文献1参照)。図中の符号12は,カッターチャンバー10に添加剤Dを注入する注入口を示す。
【0004】
土圧式ないし泥土圧式シールド(以下,両者をまとめて土圧式シールドということがある)は,カッターチャンバー10に取り込む掘削土量Wsとカッターチャンバー10から排出する排土量Wdとのバランスが崩れると切羽を安定に維持することができなくなり,地中や地表面に大きな変位や変形を引き起こすおそれがある。理論掘削土量Wsは,例えばシールド掘進機1の切羽断面積Asと掘進速度Vsとから算出できる(Ws=As・Vs)。これに対して実排土量Wdは,例えばスクリューコンベア14の回転数から推定できるが,スクリューコンベア14の回転数はスクリューコンベア内の充填率や土質(密度など)によって左右されるので精度が低い。このため従来の土圧式シールドでは,
図4(A)に示すように,例えばスクリューコンベア14の後方テール部に排出した排出土砂Eを積載する台車(ズリトロ台車)18aの重量Mdを排土流量測定器41で連続的に測定し,数日に1回程度の割合で排出土砂Eの密度σdを排土密度測定器42で測定し,測定した重量M及び密度σdから排土量算出装置50により排土量Wd(=Md/σd)を算出する土量管理が実施されている。
【0005】
また,
図4(C)に示すように,スクリューコンベア14の後方に接続した排土ダクト17に電磁式の排土流量測定器41とガンマ線透過式の排土密度測定器43とを取り付け,排土量算出装置50において流量測定器41で測定した流量Vdと排土ダクト17の断面積Asとから排土量Wd(=Vd・As)を算出すると共に,密度測定器43で測定した密度σdから排土重量Md(=Wd・σd)を算出する土量管理が提案されている(特許文献1及び2,非特許文献2参照)。
図4(C)の排土密度測定器43の断面図を
図4(D)に示す。
図4(D)に示すガンマ線透過式の密度測定器43は,ダクトの径を挟んで対向配置されたガンマ線の線源45及び検出器46と,それらを覆う遮蔽箱49とを有し,排土ダクト17の管壁17aに締付ける形で装着される。線源45の出射するガンマ線の吸収・散乱とその経路上の流体の密度との間には相関関係があるので,検出器46の出力値(係数率)と掘削土砂Eの密度との関係式を予め求めておけば,例えば検出器46に接続した演算装置47で掘削土砂Eの密度σdを算出することができる。図中の符号48は,演算装置47に接続されたディスプレイ,プリンタ等の表示装置を示す。
【0006】
更に,
図4(E)に示すように,スクリューコンベア14にガンマ線透過式の排土密度測定器44を取り付け,排土量算出装置50において排土ダクト17上の排土流量測定器41で測定した流量Vdから排土量Wdを算出すると共に,スクリューコンベア14上の密度測定器44で測定した密度σdから排土重量Mdを算出する土量管理が提案されている(特許文献3参照)。
図4(E)の排土密度測定器44の断面図を
図4(F)に示す。
図4(F)に示すガンマ線透過式の密度測定器44は,スクリューコンベア14のスクリュー羽根16の外周部分に切欠き部16aを形成し,その切欠き部16aに埋め込まれたガンマ線の線源45と,その切欠き部16aと対向するスクリューコンベア管壁14aの外周面に配置された検出器46と,検出器46に接続された演算装置47とを有する。スクリューコンベア14は内部に回転軸15が設けられているが,
図4(E)のような密度測定器44を用いることにより,スクリューコンベア14内の掘削土砂Eの密度σdを測定することが期待できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平1−146098号公報
【特許文献2】特開平4−011193号公報
【特許文献3】特開2001−098892号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】シールド工法入門編集委員会編「シールド工法入門」社団法人地盤工学会,平成4年9月20日発行
【非特許文献2】坪井広美ほか「泥土圧シールドにおける掘削土量管理方法」土木学会第56回年次学術講演会講演概要集,2001年10月発行,インターネット(URL:http://www.jsce.or.jp/library/open/proc/maglist2/00035/2001/06/mg03.htm)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし,
図4(A)のように数日に1回程度の割合で排出土砂Eの密度σdを測定する方法では,排土量Wdないし排土重量Md(以下,両者をまとめて排土量Wdということがある)の変動を迅速に把握することは難しい。これに対して,
図4(C)のように密度測定器43を排土ダクト17に取り付ける方法によれば,排出土砂Eの密度σdを連続的に測定できるので,排土量Wdの変動を迅速に把握できる。ただし,カッターチャンバー10内の掘削直後の排出土砂Eは地中と同じ応力状態であるのに対し,チャンバー10から離れた排土ダクト17後方の排出土砂Eは応力から開放されて空気が進入するので,
図4(C)のような排土ダクト17上の密度測定器44では,チャンバー10内の排出土砂Eの密度を求められない問題点がある。土圧式シールドの土量管理では,上述したように地山土量と比較可能な排土量Wdを算出する必要があり,そのような排土量Wdを精度よく算出するためには,できるだけ地中と同様の応力状態の掘削土砂Eの密度を求めることが重要となる。
【0010】
図4(E)のように密度測定器44をスクリューコンベア14上に取り付ければ,カッターチャンバー10から排出された直後の掘削土砂Eの密度を求めることが期待できる。しかし,
図4(E)の方法は,スクリュー羽根16に切欠き部16aを形成するので,その切欠きによってスクリューコンベア14の排土効率が低下するおそれ,或いは掘削土砂中の水分が噴発するおそれがある。また,切欠き部16aから徐々にスクリュー羽根16が摩耗して線源45が露出し,線源45が破損しやすい問題点がある。更に,切欠き部16に線源45を埋め込むため,配線が複雑になるので実装が難しく,配線の破損が生じやすい問題点もある。排土効率の低下や線源45・配線の破損は測定機能の中断に繋がるので,連続的な測定の妨げとなる。
【0011】
或いは,スクリューコンベア14は比較的大径(例えばφ=90〜120cm)であることも多いが,比較的強力なガンマ線の線源45を用いた密度測定器43(
図4(D)参照)をスクリューコンベア14に取り付けて,カッターチャンバー10から排出された直後の掘削土砂Eの密度を求めることも考えられる。しかし,強力なガンマ線を用いることは作業員の安全上問題があり,作業安全上の対策が別途必要となりうる。シールド掘進機の排土量Wdを迅速に且つ精度よく把握するためには,従来と同程度の強さのガンマ線を用いて,地中ないしカッターチャンバー10内と同様の応力状態のまま掘削土砂Eの密度を連続的に測定できる技術の開発が必要である。
【0012】
そこで本発明の目的は,強力なガンマ線を用いることなくシールド掘進機の掘削直後の掘削土砂の密度を連続的に計測できる方法及び装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
図1の実施例を参照するに,本発明によるシールド掘進機の掘削土砂密度計測方法は,シールド掘進機1の掘削土砂圧が片側面に加わる壁体14a又は11(例えばスクリューコンベア14の管壁14a又はカッターチャンバー10の後方隔壁11)に貫通孔29を穿ち(
図1(B)参照),貫通孔29の反対側面周囲に一端を密着させてシリンダ21を取り付け,シリンダ21内に貫通孔29を塞止するピストン22を他端側から嵌合させると共にシリンダ21の外周面にシリンダ21内の密度を非接触で測定するガンマ線密度計23を装着し,ピストン23の引き操作時のガンマ線密度計23の出力値により貫通孔29からシリンダ21内に吐出された掘削土砂Eの密度σdを計測してなるものである(
図1(D)参照)。
【0014】
また,
図1(C)及び(D)のブロック図を参照するに,本発明によるシールド掘進機の掘削土砂密度計測装置は,シールド掘進機1の掘削土砂圧が片側面に加わる壁体14a(スクリューコンベア14の管壁14a)に穿った貫通孔29の反対側面周囲に一端を密着させて取り付けるシリンダ21,シリンダ21内に他端側から嵌合させて貫通孔29を塞止するピストン22,及びシリンダ21の外周面に装着してシリンダ21内の密度を非接触で測定するガンマ線密度計23を備え,ピストン23の引き操作時のガンマ線密度計23の出力値により貫通孔29からシリンダ21内に吐出された掘削土砂Eの密度σdを計測してなるものである(
図1(D)参照)。
【0015】
好ましくは,
図1(C)及び(D)に示すように,ピストン22の引き操作及び押し操作を駆動するアクチュエータ36と,アクチュエータ36及びガンマ線密度計23に接続されてアクチュエータ36によるピストン22の引き操作時のガンマ線密度計23の出力値により掘削土砂Eの密度σdを求める演算手段30とを設ける。望ましくは,ピストン23の押し操作により密度計測後の掘削土砂Eを貫通孔29へ戻す。アクチュエータ36によりピストン22の引き操作と押し操作とを繰り返し,演算手段30によりピストン22の複数回の引き操作時のガンマ線密度計23の出力平均値により掘削土砂Eの密度σdを求めることができる。
【0016】
更に好ましくは,
図1(B)に示すように,壁体14aに穿った複数の貫通孔29にそれぞれ取り付ける複数のシリンダ21と各シリンダ21に装着するピストン22及びガンマ線密度計23を設け,演算手段30により複数の貫通孔29における密度計測値から掘削土砂Eの密度σdを算出する。本発明は,
図1のようなスクリューコンベア14の管壁14aに適用できるほか,
図2(A)のようなシールド掘進機1の掘削土砂Eを充満させるカッターチャンバー10の後方隔壁11に適用することができ,更に
図2(B)及び
図3のようなシールド掘進機1の切羽面2に配置したスポーク5の中空周壁5aに適用することも可能である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によるシールド掘進機の掘削土砂密度計測方法及び装置は,シールド掘進機1の掘削土砂圧が片側面に加わる壁体14aに穿った貫通孔29の反対側面周囲にシリンダ21の一端を密着させて取り付け,シリンダ21内に貫通孔29を塞止するピストン22を他端側から嵌合させると共に,シリンダ21の外周面にシリンダ21内の密度を非接触で測定するガンマ線密度計23を装着し,ピストン23の引き操作時のガンマ線密度計23の出力値により貫通孔29からシリンダ21内に吐出された掘削土砂Eの密度σdを計測するので,次の効果を奏する。
【0018】
(イ)スクリューコンベア14の管壁14aに貫通孔29を設けて本発明を適用すれば,スクリューコンベア14に対してピストン23の口径を比較的小さくすることができるので,強力なガンマ線を用いることなくスクリューコンベア14内の掘削直後の掘削土砂の密度を計測することができる。
(ロ)また,通常時はピストン23の押し操作により貫通孔29が塞止され,必要時のみピストン23の引き操作により貫通孔29を開放して掘削土砂Eの密度を計測できるので,スクリューコンベア14の機能に影響を与えることなく,スクリューコンベア14内と同様の応力状態の掘削土砂Eの密度を計測することができる。
(ハ)また,ピストン22の引き操作と押し操作とを繰り返することにより,スクリューコンベア14内の掘削土砂Eの密度を連続的に計測することができる。
(ニ)スクリューコンベア14だけでなく,シールド掘進機1のカッターチャンバー10の後方隔壁11,又は切羽面2のスポーク5の中空周壁5aに本発明を適用することにより,地中の又は掘削直後の掘削土砂Eの密度を直接的に且つ連続的に計測することも可能である。
【0019】
(ホ)ピストン23の引き操作時に掘削土砂Eのサンプルを貫通孔29からシリンダ内に吐出させて密度を計測し,ピストン23の押し操作により密度計測後の掘削土砂Eのサンプルを貫通孔29へ戻すことができるので,測定サンプルの廃棄処分等が不要である。
(ヘ)掘削土砂Eの一部分のサンプルから密度を計測するため,掘削土砂Eの全体にバラツキのあると全体の密度との誤差が大きくなりうるが,ピストン22の複数回の引き操作時のガンマ線密度計23の出力平均値を求めることにより,全体の密度との誤差を小さく抑えることが期待できる。
(ト)更に,壁体14aに穿った複数の貫通孔29にそれぞれ本発明を適用し,複数の貫通孔29における密度計測値から掘削土砂Eの密度を算出することにより,バラツキのある掘削土砂Eの全体の密度を精度よく推定することも期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
以下,添付図面を参照して本発明を実施するための形態及び実施例を説明する。
【
図1】土圧式シールド掘進機のスクリューコンベアに適用した本発明の掘削土砂密度計測装置の一実施例の説明図である。
【
図2】本発明の掘削土砂密度計測装置を土圧式シールド掘進機のカッターチャンバーの後方隔壁に適用した実施例の説明図である。
【
図3】本発明の掘削土砂密度計測装置を土圧式シールド掘進機の切羽面のスポーク中空周壁に適用した実施例の説明図である。
【
図4】従来の土圧式シールドにおける掘削土砂の密度計測方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は,土圧式シールド掘進機1のスクリューコンベア14の管壁14aに適用した本発明の掘削土砂密度計測装置20の実施例を示す。
図1(A)のシールド掘進機1は,
図4(B)の場合と同様に切羽面2のカッタービット6で地山を掘削し,掘削土砂Eをカッタースリット7からカッターチャンバー10内に取り込んで充満させ,必要に応じて添加剤Dを注入して練り混ぜて混合泥土とするものである。カッターチャンバー10内の掘削土砂Eは,後方隔壁11に接続したスクリューコンベア14に充満させながら順次送り出され,その後方に接続した排土ダクト17を介して台車(ズリトロ台車)18aに搭載して排出される。台車18aに代えて,
図4(C)に示すように,排土ダクト17の後方にベルトコンベア18bを配置して掘削土砂Eを排出する場合もある。カッターチャンバー10及びスクリューコンベア14に掘削土砂Eを充満させて切羽面前方の土圧及び地下水圧に対抗しながら,スキンプレート9のテール部に組み立てたセグメント19に反力をとって掘進する。
【0022】
図示例の密度計測装置20は,
図1(C)及び(D)に示すように,内周面(片側面)に掘削土砂圧が加わるスクリューコンベア14(例えばφ=90〜120cm)の管壁14aに貫通孔29を設け,その貫通孔29の外周面(反対側面)の周囲に一端を密着させて取り付けるシリンダ21と,シリンダ21内に嵌合させるピストン22と,シリンダ21の外周面に装着するガンマ線密度計23とを有する。管壁14a上の貫通孔29を設ける位置にとくに制限はないが,カッターチャンバー10から排出された直後の掘削土砂Eの密度σdを計測するため,できるだけカッターチャンバー10の後方隔壁11に近い管壁14a上の部位を選択して貫通孔29を設けることが望ましい。
【0023】
図示例の貫通孔29は,スクリューコンベア14の管壁14aに所定径(例えばφ=20〜30cm)の開口を穿ち,その開口の内縁部を管壁14aの外周面側へ折り曲げてフランジ付き立ち上がり部21aを形成したものである。必要に応じて,
図1(B)に示すように管壁14aに複数の貫通孔29を設け,そこから選択した任意の又は全ての貫通孔29に密度計測装置20を取り付けることができる。
【0024】
図示例のシリンダ21は,貫通孔29と同程度の口径(例えばφ=20〜30cm)であって,貫通孔29の周囲の立ち上がり部21aと,立ち上がり部21aの先端に密着して取り付ける中間筒状部21bと,中間筒状部21bの先端に密着して取り付けるピストンロッドカバー部21cとで構成されている。カバー部21cには,ピストン22のロッドを挿通する摺動孔21dが形成されている。各部分21a,21b,21cの密着端にそれぞれフランジを設け,必要に応じてガスケット等を挟み込んだうえで,フランジを突き合わせてボルトナットで締めつけて密着させることにより,貫通孔29の外周面周囲に一端を密着させたシリンダ21を形成する。ただし,シリンダ21の構成は図示例に限定されるものではない。
【0025】
図示例のピストン22は,シリンダ21の他端側から嵌合して貫通孔29を塞止するピストンヘッド22aと,シリンダ21のカバー部21cの摺動孔21dに挿通するロッドとを有する。
図1(C)はピストン23の押し操作時を表し,ピストンヘッド22aにより貫通孔2が塞止されることを示す。また,
図1(D)はピストン22の引き操作時を表し,ピストンヘッド22aの撤退位置までスクリューコンベア14内の掘削土砂Eがシリンダ21内に吐出されることを示す。図示例のシリンダ21のカバー部21cはピストン22の撤退位置を規定するリミッタ機能を果たしており,カバー部21cで規定された撤退位置までシリンダ21を引き込むことによりシリンダ21の中間筒状部21bに掘削土砂Eを充満させることができる。必要に応じて,シリンダ21の中間筒状部21bに掘削土砂Eの未充填部分が生じないように,引き込んだシリンダ21を若干押し戻して掘削土砂Eを押圧してもよい。更に,引き操作に続く押し操作により,シリンダ21内に吐出された掘削土砂Eを貫通孔29からスクリューコンベア14内へ戻すことができるので,吐出された掘削土砂Eの廃棄処分等は不要である。
【0026】
図示例のガンマ線密度計23は,
図4(D)の密度測定器43と同様に,シリンダ21の径を挟んで対向配置されたガンマ線の線源26及び検出器27と,検出器46の出力値(係数率)から透過経路上の流体の密度を求める演算装置28とを有し,シリンダ21の中間筒状部21bの外表面に締付ける形で装着される。検出器46の出力値(係数率)と掘削土砂Eの密度との関係式を予め求めてガンマ線密度計23に記憶しておけば,シリンダ21の中間筒状部21bに掘削土砂Eを充満させたときの演算装置28の出力値から掘削土砂Eの密度σdを求めることができる。ガンマ線密度計23は,後述する演算手段30に演算装置28の出力値の信号を送出することができ,演算手段30を介してディスプレイ,プリンタ等の表示手段33に演算装置28の出力値を表示することができる(
図1(D)参照)。
【0027】
好ましくは,図示例の密度計測装置20のように,ピストン22の引き操作及び押し操作を自動的に駆動するアクチュエータ36と,アクチュエータ36及びガンマ線密度計23に接続された演算手段30とを設ける。図示例のアクチュエータ36は,通常時はピストン23の押し操作を駆動して貫通孔29を塞止し,例えばシールド掘進機1の掘削ストローク毎又は一定時間毎にピストン22の引き操作を一時的に駆動する。また,ピストン22の操作状態(引き操作状態又は押し操作状態)の信号を演算手段30に出力する。演算手段30の一例は,メモリ等である記憶手段31と内蔵プログラムである密度計測手段32とが内蔵されたコンピュータである。演算手段30の密度計測手段32は,アクチュエータ36の引き操作信号に基づきシリンダ21の中間筒状部21bに掘削土砂Eが充満していると判断し,その時のガンマ線密度計23の出力値により掘削土砂Eの密度σdを求める。
【0028】
ただし,図示例のようなアクチュエータ36及び演算手段30hは本発明の密度計測装置20にとって必須のものではなく,例えばピストン22の押し引きを手動で操作し,ピストン23を手動で引いた時の表示手段33を読み取ることにより掘削土砂Eの密度σdを求めることができる。通常時はピストン23の押し操作状態として貫通孔29を塞止し,必要時のみピストン23の引き操作により掘削土砂Eの密度σdを求めることにより,スクリューコンベア14の機能に影響を与えることなく,スクリューコンベア14内の掘削土砂Eの密度σdを把握することができる。また,ピストン22の引き操作と押し操作とを適宜間隔で繰り返することにより,スクリューコンベア14内の掘削土砂Eの密度σdを連続的に把握することができる。
【0029】
望ましくは,アクチュエータ36によりピストン22の引き操作と押し操作とを一定時間おきに繰り返し,演算手段30によりピストン22の複数回の引き操作時のガンマ線密度計23の出力平均値により掘削土砂Eの密度σdを求める。図示例の密度計測装置20は,ピストン22の引き操作によりスクリューコンベア14内の掘削土砂Eの一部をシリンダ21内に吐出して密度を計測するので,スクリューコンベア14内の掘削土砂Eの密度分布にバラツキがあると,ガンマ線密度計23の出力値と掘削土砂Eの全体の密度との誤差が大きくなりうる。このような場合でも,ピストン22の引き操作及び押し操作を繰り返し,複数回の引き操作時のガンマ線密度計23の出力平均値を求めることにより,掘削土砂Eの全体の密度との誤差を小さく抑えることが期待できる。例えば,複数回の引き操作時のガンマ線密度計23の出力値を演算手段30の記憶手段31に順次記憶しておき,新しいガンマ線密度計23の出力値を入力したときに,過去の所定回数分の出力値の平均値を求めて表示手段33へ表示する。
【0030】
更に望ましくは,
図1(B)に示すようにスクリューコンベア14の管壁14aに複数の貫通孔29を設け,複数の貫通孔29にそれぞれ取り付けた密度計測装置20の密度計測値から例えば平均値として掘削土砂Eの密度σdを算出する。スクリューコンベア14内の掘削土砂Eの密度分布にバラツキがある場合に,各貫通孔29の密度計測装置20の密度計測値は掘削土砂Eの全体の密度との誤差が大きくなりうるが,複数の貫通孔29の密度計測装置20の密度計測値の平均値を求めることにより,掘削土砂Eの全体の密度との誤差を小さく抑えることが期待できる。また,この場合において,各貫通孔29の密度計測装置20において複数回の引き操作時の出力平均値から掘削土砂Eの密度を計測することにより,掘削土砂Eの全体の密度との誤差を一層小さく抑えることが期待できる。
【0031】
例えば,カッターチャンバー10内の掘削土砂Eに添加剤Dとして特殊気泡剤で作られた気泡を注入して混合粘土とする泥土圧式シールド工法(気泡シールド工法)では,チャンバー10から混合粘土が放出されて減圧されると,空気量が急激に増加して密度が減少する。このため,例えば
図4(C)のようにスクリューコンベア14から排出後の掘削土砂Eの密度を測定する方法では,泡が消えるまで長時間待たなければ掘削土砂Eの密度を精度よく求めることは難しい。これに対し本発明によれば,ピストンの押し操作により,スクリューコンベア14内の応力状態の掘削土砂Eの密度σdを精度よく求めることができ,しかもピストン22の引き操作と押し操作とを繰り返することで掘削土砂Eの密度σdを連続的に把握することができるので,気泡シールド工法における排土量Wdを精度よく把握することができる。
【0032】
こうして本発明の目的である「強力なガンマ線を用いることなくシールド掘進機の掘削直後の掘削土砂の密度を連続的に計測できる方法及び装置」の提供を達成できる。
【0033】
以上,スクリューコンベア14の管壁14aに密度計測装置20を適用した実施例について説明したが,
図2(A)に示すように,本発明の密度計測装置20をシールド掘進機1の掘削土砂Eを充満させるカッターチャンバー10の後方隔壁11に適用し,カッターチャンバー10内の掘削直後の掘削土砂Eの密度を直接的に計測することも可能である。この場合は,片側面(切羽側面)に掘削土砂圧が加わる隔壁11に貫通孔29を設け,その貫通孔29の反対側面の周囲にシリンダ21の一端を密着させて取り付け,そのシリンダ21内にピストン22を嵌合させると共にシリンダ21の外周面にガンマ線密度計23を装着する。
【0034】
カッターチャンバー10の後方隔壁11に密度計測装置20を適用した場合も,上述したスクリューコンベア14に適用した場合と同様に,通常はピストン23の押し操作により貫通孔29が塞止し,例えばシールド掘進機1の掘削ストローク毎又は一定時間毎にピストン22の引き操作を一時的に駆動して掘削土砂Eの密度を求めることができる。また,ピストン22の引き操作と押し操作とを繰り返し,複数回の引き操作時のガンマ線密度計23の出力平均値から掘削土砂Eの密度を求めることにより,カッターチャンバー10内の掘削土砂Eの密度分布にバラツキがある場合でも,掘削土砂Eの全体の密度との誤差を小さく抑えることができる。
【実施例1】
【0035】
図2(B)は,本発明の密度計測装置20を土圧式シールド掘進機1の切羽面2に配置したスポーク5の中空周壁5aに適用した実施例を示し,
図3は,そのシールド掘進機1の切羽面2の拡大図を示す。土圧式シールド掘進機1の切羽面2には,中心部のフィッシュテールから放射状にスポーク5を配置してカッタービット6を取り付けることがあり,そのようなスポーク5にはカッタービット6の交換時に作業員が通行できる程度の中空部を設ける場合がある。図示例では,
図3(B)に示すように,片側面(外側面)に掘削土砂圧が加わるスポーク5の中空周壁5aに貫通孔29を設け,その貫通孔29の反対側面(内側面)の周囲にシリンダ21の一端を密着させて取り付け,そのシリンダ21内にピストン22を嵌合させると共にシリンダ21の外周面にガンマ線密度計23を装着している。
【0036】
図2(B)の実施例のようにスポーク5の中空周壁5aに本発明を適用することにより,地中において掘削直後の掘削土砂Eの密度を計測することができ,カッターチャンバー10内の土砂の比重に偏り・ムラ(一か所に滞留・閉塞していること)がないか否かを確認することが可能となる。チャンバー10内の土砂の比重に偏り・ムラが検出された場合は,例えばシールド掘進機1の掘進を一旦止め,切羽面2のカッタ回転によって混練することにより比重の偏り・ムラを解消することができる。或いは,カッターチャンバー10内に注入して掘削土砂Eと練り混ぜる添加剤Dの添加量又は材質を変更することにより,比重の偏り・ムラを解消することも可能である。
【符号の説明】
【0037】
1…シールド掘進機 2…切羽面(カッターヘッド)
3…フィッシュテール 5…スポーク
5a…中空周壁
6…カッタービット 7…カッタースリット
8…モータ 9…スキンプレート
10…カッターチャンバー 11…チャンバー隔壁(後方隔壁)
12…添加剤注入口 14…スクリューコンベア
14a…管壁 15…回転軸
16…スクリュー羽根 16a…切欠き部
17…排土ダクト 17a…(排土ダクトの)管壁
18a…台車(ズリトロ台車) 18b…ベルトコンベア
19…セグメント
20…計測装置 21…シリンダ
21a…立ち上がり部 21b…中間筒状部
21c…ピストンロッドカバー部 21d…摺動孔
22…ピストン 22a…ピストンヘッド(塞止部)
23…密度測定器 26…線源
27…検出器 28…演算装置
29…貫通孔
30…演算手段(コンピュータ) 31…記憶手段
32…密度計測手段 33…表示手段
36…アクチュエータ 37…引き・押し操作機構
41…排土流量測定器 42…排土密度測定器
43,44…排土密度測定器 45…線源
46…検出器 47…演算装置
48…表示装置 49…遮蔽箱
50…排土量算出装置
A…切羽面積 V…掘進速度
E…掘削土砂 D…添加剤
Ws…掘削土量 Wd…排土量