(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-70079(P2016-70079A)
(43)【公開日】2016年5月9日
(54)【発明の名称】ガソリン用デリバリパイプ
(51)【国際特許分類】
F02M 55/02 20060101AFI20160404BHJP
【FI】
F02M55/02 330Z
F02M55/02 350H
F02M55/02 330D
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-196723(P2014-196723)
(22)【出願日】2014年9月26日
(71)【出願人】
【識別番号】000120249
【氏名又は名称】臼井国際産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000501
【氏名又は名称】特許業務法人 銀座総合特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西澤 洋行
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 秀司
【テーマコード(参考)】
3G066
【Fターム(参考)】
3G066AA01
3G066AD05
3G066BA46
3G066BA54
3G066CB03
3G066CD04
(57)【要約】
【課題】
インレットパイプのデリバリパイプ本体への取り付け位置に自由度を持たせることにより、デリバリパイプのレイアウト性の向上を図る。
【解決手段】
ガソリン用デリバリパイプにおいて、対向する一対の幅広壁2,3と、この一対の幅広壁2,3よりも幅狭な対向する一対の幅狭壁4,5とを設けた扁平形状のデリバリパイプ本体1を備え、このデリバリパイプ本体1の幅狭壁4にインレットパイプ6を接続配置するとともに、このインレットパイプ6と幅狭壁4との接続部10に、この接続部10から幅広壁2,3にかけて補強部材11を連続的に被覆配置することにより、前記接続部10を補強可能とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガソリン用デリバリパイプにおいて、対向する一対の幅広壁と、この一対の幅広壁よりも幅狭な対向する一対の幅狭壁とを設けた扁平形状のデリバリパイプ本体を備え、このデリバリパイプ本体の幅狭壁にインレットパイプを接続配置するとともに、このインレットパイプと幅狭壁との接続部に、この接続部から幅広壁にかけて補強部材を連続的に被覆配置することにより、前記接続部を補強可能としたことを特徴とするガソリン用デリバリパイプ。
【請求項2】
インレットパイプ及び補強部材は、デリバリパイプ本体にろう付けにより接合したことを特徴とする請求項1のガソリン用デリバリパイプ。
【請求項3】
補強部材は、接続部からこの接続部の両側に位置する幅広壁の一部にかけて連続的に被覆配置したことを特徴とする請求項1のガソリン用デリバリパイプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インレットパイプを設けたガソリン用のデリバリパイプに関する発明であって、特に、デリバリパイプ本体とインレットパイプとの接続部分に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、複数のインジェクタを設けてエンジンの複数の気筒にガソリンを供給するガソリン用デリバリパイプが知られている。このガソリン用デリバリパイプは、床下配管を介して燃料タンクから供給された燃料を、複数のインジェクタから順次、エンジンの複数の吸気管又は気筒内に噴射し、この燃料を空気と混合し、この混合気を燃焼させる事によってエンジンの出力を発生させている。
【0003】
そして、このガソリン用デリバリパイプの中でもリターンレスタイプのガソリン用デリバリパイプは、余分な燃料を燃料タンクに戻す配管がないため、エンジンの吸気管又は気筒へのインジェクタからの燃料噴射によってガソリン用デリバリパイプの内部が減圧されると、この急激な減圧と、燃料噴射の停止によって生じる圧力波が、ガソリン用デリバリパイプの内部に圧力脈動を生じさせるものとなる。この圧力脈動は、車内に騒音として伝播され、この騒音が運転者や乗車者に不快感を与えるものとなる。そこで、上記の如き圧力脈動を低減させる目的で、壁面を扁平形状として脈動吸収機能を備えたものが提案されている。これらの圧力脈動吸収機能を有するガソリン用デリバリパイプは、外壁に可撓性のアブゾーブ面を形成し、燃料噴射に伴って発生する圧力を受けてアブゾーブ面が撓み変形する事によって圧力脈動を吸収低減し、振動による異音の発生を防止可能とするものである。
【0004】
そして、上記の如き脈動低減を可能とするガソリン用デリバリパイプのデリバリパイプ本体(31)の壁面に
図6、7に示す如くインレットパイプを接続した場合、
図8に示す如くデリバリパイプ本体(31)の幅広壁(33)(34)及び幅狭壁(35)(36)が撓み変形することにより幅狭壁(35)とインレットパイプ(32)との接続部(38)付近に応力が集中し、デリバリパイプ本体(31)が破損するおそれがあった。そこでこのような破損を防止するため、
図9に示す如くデリバリパイプ本体(41)の両端部に設けたエンドキャップ(42)にインレットパイプ(45)を接続したり、
図10や特許文献1に示す如くエンドキャップ(51)に近い部分にインレットパイプ(55)を接続するなど、デリバリパイプ本体(31)(41)(52)の幅広壁(33)(34)(43)(53)及び幅狭壁(35)(36)(44)(54)のたわみ変形が生じにくい部分にインレットパイプ(32)(45)(55)を接続する方法が既に知られている。
【特許文献1】特開平4−252859号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の如くインレットパイプのデリバリパイプ本体への接続位置をエンドキャップやエンドキャップに近い部分に限定すると、インレットパイプの取り付け位置が限定されるものとなるため、エンジンレイアウトの大幅な見直しが必要となるおそれがあるとともに、所望のレイアウトにするためにインレットパイプを必要以上に長くしなければならない場合もあった。
【0006】
そこで、本発明は上記の如き課題を解決しようとするものであって、インレットパイプのデリバリパイプ本体への取り付け位置に自由度を持たせることにより、レイアウト性の向上を図ろうとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上述の如き課題を解決するため、ガソリン用デリバリパイプにおいて、対向する一対の幅広壁と、この一対の幅広壁よりも幅狭な対向する一対の幅狭壁とを設けた扁平形状のデリバリパイプ本体を備え、このデリバリパイプ本体の幅狭壁にインレットパイプを接続配置するとともに、このインレットパイプと幅狭壁との接続部に、この接続部から幅広壁にかけて補強部材を連続的に被覆配置することにより、前記接続部を補強可能としたものである。またこのように補強部材を幅広壁まで連続的に被覆配置することにより、幅広壁の撓みによる角部の広がりを補強部材によって抑制することができるため、接続部付近における高応力の発生を抑えることが可能となる。
【0008】
また、インレットパイプ及び補強部材は、デリバリパイプ本体にろう付けにより接合されたものであってもよい。
【0009】
また、補強部材は、接続部からこの接続部の両側に位置する幅広壁の一部にかけて連続的に被覆配置したものであってもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明は上述の如く、デリバリパイプ本体の幅狭壁とインレットパイプとの接続部に補強部材を被覆配置することにより前記接続部を補強可能としたものであるから、燃料圧力に対して接続部付近における高応力の発生を抑制することが可能となり、デリバリパイプ本体が破損する事態が生じにくいものとなる。そのため、インレットパイプのデリバリパイプ本体への取り付け位置をエンドキャップやエンドキャップに近い部分に限定する必要がないことから、インレットパイプの取り付け位置に自由度を持たせることができ、レイアウト性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図3】燃料圧力によるデリバリパイプ本体の変形時の概念図。
【
図4】燃料圧力を付与した際の接続部付近の切欠斜視図。
【
図8】燃料圧力を付与した際の接続部付近の切欠斜視図。
【
図9】エンドキャップにインレットパイプを接続した従来例の斜視図。
【
図10】エンドキャップ付近にインレットパイプを接続した従来例の斜視図。
【実施例1】
【0012】
本発明の実施例1を説明すると、(1)はデリバリパイプ本体であって、鋼管にて形成したものである。そしてこのデリバリパイプ本体(1)は
図1、2に示す如く、対向する一対の幅広壁(2)(3)と、この一対の幅広壁(2)(3)よりも幅狭な対向する一対の幅狭壁(4)(5)とを設けた扁平形状としている。また、このデリバリパイプ本体(1)の両端には、平板状のエンドキャップ(6)をそれぞれ固定配置している。尚、本実施例ではデリバリパイプ本体(1)を鋼管にて形成しているが、他の異なる実施例ではSUS材にて形成したものであっても良い。
【0013】
また、上記の如く形成したデリバリパイプ本体(1)の一方の幅狭壁(4)には、インレットパイプ(7)を接続配置している。即ち、一方の幅狭壁(4)の長さ方向中央部よりもエンドキャップ(6)寄りに、インレットパイプ(7)の先端部(8)をデリバリパイプ本体(1)の幅狭壁(4)から内方に挿入し、ろう付けによって固定配置している。尚、本実施例では上記の如く、一方の幅狭壁(4)の長さ方向中央部よりもエンドキャップ(6)寄りにインレットパイプ(7)を固定配置しているが、他の異なる実施例ではこれに限らず、一方の幅狭壁(4)の長さ方向中央部にインレットパイプ(7)を固定配置したものであっても良い。
【0014】
そして、このインレットパイプ(7)とデリバリパイプ本体(1)との接続部(10)には、炭素鋼にて形成した補強部材(11)を被覆配置している。即ちこの補強部材(11)は、
図1に示す如く幅狭壁(4)とインレットパイプ(7)との接続部(10)に略直方形状に被覆配置するとともに、
図2に示す如くこの幅狭壁(4)の両側の幅広壁(2)(3)の上面に、これらの幅広壁(2)(3)の一部を被覆した状態で固定配置している。尚、本実施例の補強部材(11)は上記の如く、幅広壁(2)(3)の一部を被覆した状態で固定配置しているが、他の異なる実施例ではこれに限らず、
図5に示す如く、補強部材(11)を、幅広壁(2)(3)及び幅狭壁(5)の全周にわたって固定配置したものであっても良い。
【0015】
このように補強部材(11)をデリバリパイプ本体(1)に被覆配置することにより、
図2に示す如く補強部材(11)が断面コ字型に接続部(10)に被覆配置されるものとなる。そのため、接続部(10)付近において燃料圧力に対する幅広壁(2)(3)の撓みが抑制され、デリバリパイプ本体(1)の接続部(10)付近での破損を防止することが可能となる。尚、本実施例では補強部材(11)を炭素鋼にて形成しているが、他の異なる実施例ではSUS材にて形成しても良い。
【0016】
このように、補強部材(11)を接続部(10)に設けることにより接続部(10)付近の破損を防止できることを確かめるために、本実施例と、補強部材(11)を設けていない比較例とで燃料圧力のデリバリパイプ本体(1)への影響についてシミュレーションによる比較を行った。本実施例の各寸法について説明すると、デリバリパイプ本体(1)の軸方向の形成長さが275mm(
図1のa)、形成幅が36mm(
図2のd)、高さが16mm(
図2のe)、補強部材(11)のデリバリパイプ本体(1)の軸方向の長さが12mm(
図1のb)、デリバリパイプ本体(1)の高さ方向の長さが20mm(
図2のc)、デリバリパイプ本体(1)の幅方向の長さが14mm(
図2のg)、デリバリパイプ本体(1)の幅広壁(2)(3)上に張り出した長さが8mm(
図2のf)である。
【0017】
また、本実施例の比較例1は
図6、7に示す如く、本実施例と同一形状及び寸法のデリバリパイプ本体(31)及びインレットパイプ(32)を用いて形成したものであって、補強部材(11)の配置を除き、デリバリパイプ本体(31)へのインレットパイプ(32)の接続位置、インレットパイプ(32)の挿入長さ等、各構成を同一としている。そしてこのシミュレーションの結果、比較例1では燃料圧力を800kPaとした場合に、接続部(38)付近の最大応力値が353MPaであったのに対し、本実施例では燃料圧力を800kPaとした場合に、接続部(10)付近での最大応力値は254MPaであった。
【0018】
上記結果について考察すると、まず、デリバリパイプ本体(1)に燃料圧力が付与された場合、デリバリパイプ本体(1)は
図3に示す如く変形をする。即ち、一対の幅広壁(2)(3)は外側に張り出して膨らむ(
図3の矢印X)一方、一対の幅狭壁(4)(5)は内方に凹む(
図3の矢印Y)かたちとなる。このように幅狭壁(4)(5)が内方に凹む際に、デリバリパイプ本体(1)は幅広壁(2)(3)と幅狭壁(4)(5)とにより形成される角部(12)を直角に保とうとする。
【0019】
そして、比較例1の場合には
図8に示す如く、インレットパイプ(32)が存在する部分では幅狭壁(35)は十分に内側に凹むことが困難となる。そのため、デリバリパイプ本体(31)とインレットパイプ(32)との接続部(38)付近では幅狭壁(35)の凹みが少ない状態で幅広壁(33)(34)が外方に膨らみ、これにより角部(37)の角度が広くなることから、高応力が発生するものとなる。そしてこの高応力の発生によって、接続部(38)付近におけるデリバリパイプ本体(31)の破損が生じやすいものとなる。
【0020】
一方、本実施例の如くデリバリパイプ本体(1)とインレットパイプ(7)との接続部(10)に補強部材(11)を設けた場合には、
図4に示す如くインレットパイプ(7)を接続した幅狭壁(4)と幅広壁(2)(3)とにより形成された角部(12)に断面コ字型の補強部材(11)が固定されていることから、燃料圧力が発生しても角部(12)を略直角に保つことが可能となる。そのため、本実施例では接続部(10)に補強部材(11)を設けることにより、燃料圧力による接続部(10)付近での高応力の発生を抑制することが可能となり、デリバリパイプ本体(1)が破損する事態が生じにくいものとなる。
【0021】
従って、インレットパイプ(7)のデリバリパイプ本体(1)への取り付け位置を、もともと高応力が生じにくいエンドキャップ(6)やエンドキャップ(6)に近い部分に限定する必要がなく、インレットパイプ(7)のデリバリパイプ本体(1)への取り付け位置に自由度を持たせることができ、レイアウト性を向上させることが可能となる。
【符号の説明】
【0022】
1 デリバリパイプ本体
2,3 幅広壁
4,5 幅狭壁
7 インレットパイプ
10 接続部
11 補強部材