【解決手段】主軸Jを中心とする環状の第1〜第3転動体31〜33と、主軸Jの周方向に配置される遊星ローラ20と、遊星ローラ20を回転可能に支持する支持ピン21と、主軸Jを含む断面上において支持ピンを傾斜自在に支持する遊星ローラ支持部22とを有する。遊星ローラ20は、支持ピン21を中心とする外周上に円環形状の凹部230を有する。第1転動体31は、凹部230よりも軸方向下側において、径方向の一方から遊星ローラ20の転動面23に接触する。第2転動体32は、凹部230よりも軸方向上側において、径方向の一方から遊星ローラ20の転動面23に接触する。第3転動体33は、径方向の他方から、遊星ローラ20の凹部230に接触し、遊星ローラ支持部22に対し、上下方向に相対移動可能に支持される。
前記第1転動体及び前記第2転動体の前記遊星ローラに対する接触部は、前記支持ピンの前記主軸に対する傾斜角を変化させたときの前記遊星ローラの前記転動面の円錐母線の包絡線であることを特徴とする請求項1〜15のいずれかに記載の摩擦式無段変速機。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。本明細書では、便宜上、無段変速機の主軸Jの方向を上下方向として説明するが、本発明による無段変速機の使用時における姿勢を限定するものではない。また、主軸Jの方向を単に「軸方向」と呼び、主軸Jを中心とする径方向及び周方向を単に「径方向」及び「周方向」と呼ぶことにする。
【0012】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1による無段変速機100の一構成例を示した図であり、主軸Jを含む平面で切断したときの断面が示されている。なお、
図1は、説明の便宜上、主軸Jを挟んで左側と右側に、それぞれ異なる動作状態の断面が示されている。
【0013】
無段変速機100は、自転車用の摩擦式無段変速機であり、変速機能を有するハブとして、自転車の車輪に組み込まれる。なお、本発明に係る無段変速機は、自転車用に限定されず、また、ハブとして車輪に組み込まれるものにも限定されない。
【0014】
無段変速機100は、シャフト10、調整ロッド12、遊星ローラ20、第1転動体31、第2転動体32及び第3転動体33を備えている。以下、これらの各部品について詳しく説明する。
【0015】
[シャフト10]
シャフト10は、軸方向(上下方向)に延びる略円柱形状の部材である。シャフト10は、主軸Jと一致する中心軸を有し、両端が一対のドロップアウト11によって支持される。ドロップアウト11は、自転車フレームに設けられたハブ取付部である。また、シャフト10内には、調整ロッド12を収容するための軸方向に延びる中空部13が設けられている。例えば、シャフト10内において軸方向に延びる円柱形状の空間が中空部13として形成される。この場合、シャフト10は、軸方向の少なくとも一部において円筒形状となる。
【0016】
[調整ロッド12]
調整ロッド12は、軸方向に延びる部材であり、例えば、略円柱形状を有し、シャフト10の中空部13内に配置されている。第3転動体33は、ピン33Pを介して、調整ロッド12に支持され、調整ロッド12とともに軸方向に移動する。このため、調整ロッド12は、シャフト10に対し、相対回転することはできないが、軸方向に相対移動することができる。
【0017】
[遊星ローラ20]
遊星ローラ20は、主軸Jを中心とする周方向に配置される転動体である。無段変速機100は、複数の遊星ローラ20を有し、これらの遊星ローラ20は、主軸Jと直交する平面内において周方向に等間隔で配列される。各遊星ローラ20は、同一形状の2つの円錐台の底面を接合したダブルコーン形状の接合部の外周に凹部230を形成した形状を有する。
【0018】
支持ピン21は、遊星ローラ20を回転可能に支持する。また、支持ピン21は、遊星ローラ支持部22により、主軸Jを含む平面内において傾斜自在に支持される。
【0019】
遊星ローラ支持部22は、支持ピン21を傾斜自在に支持する。また、遊星ローラ支持部22は、シャフト10に固定されている。遊星ローラ支持部22は、支持ピン21の両端をそれぞれ支持する一対のガイド部22gを有する。一対のガイド部22gは、例えば、主軸Jを含む平面上において同心に配置された円弧形状を有し、支持ピン21の両端は、これらのガイド部22gに沿って移動自在に支持される。
【0020】
[転動面23]
転動面23は、遊星ローラ20の外周面であり、支持ピン21を中心とする円で構成される。転動面23は、円環形状の凹部230と、凹部230よりも軸方向下方の第1円錐面231と、凹部230よりも軸方向上方の第2円錐面232とにより構成される。
【0021】
凹部230は、第3転動体33が接触する転動面である。凹部230は、遊星ローラ20の外周面を支持ピン21に向かって窪ませた断面を有し、当該断面は円弧で構成される。また、凹部230は、支持ピン21の長手方向の略中央に配置され、支持ピン21を中心とする円環形状を有する。つまり、凹部230は、支持ピン21と同軸の円環形状を有する溝部である。
【0022】
第1円錐面231は、第1転動体31が接触する転動面である。第1円錐面231は、支持ピン21と同軸の円錐面であり、凹部230よりも下方に配置され、凹部230から遠ざかるほど窄まる形状を有する。また、第1円錐面231は、凹部230と隣接して配置され、第1円錐面231の上端は、凹部230の下端と一致する。
【0023】
第2円錐面232は、第2転動体32が接触する転動面である。第2円錐面232は、支持ピン21と同軸の円錐面であり、凹部230よりも上方に配置され、凹部230から遠ざかるほど窄まる形状を有する。また、第2円錐面232は、凹部230と隣接して配置され、第2円錐面232の下端は、凹部230の上端と一致する。
【0024】
[第1転動体31]
第1転動体31は、シャフト10に対し、相対回転可能に支持され、遊星ローラ20に対し、主軸Jの径方向外側から接触する。第1転動体31は、主軸Jを中心とする環状形状を有する。より具体的には、第1転動体31は、第1転動体支持部310、第1転動体環状部311及び第1転動体円筒部312により構成される。
【0025】
第1転動体支持部310は、径方向に延びる略円板形状を有する。第1転動体支持部310は、さらに小径支持部310A、円環部310B及びボルト310Cによって構成される。円環部310Bは、小径支持部310Aよりも大きな外径を有し、小径支持部310Aに対しボルト310Cで固定されている。
【0026】
第1転動体環状部311は、環状形状を有し、第1転動体支持部310の径方向外端から軸方向上方に延びる。第1転動体環状部311の下端は、調圧カム31Aを介して、第1転動体支持部310の円環部310Bに支持される。第1転動体環状部311は、その上端近傍の内周面に遊星ローラ20に接触する接触部31Cを有する。当該接触部31Cは、遊星ローラ20の第1円錐面231に対し、主軸Jの径方向外側から接触する。調圧カム31Aは、主軸Jを中心とする回転トルクを利用して、軸方向の付勢力を発生する。このため、第1転動体環状部311は、遊星ローラ20の転動面23に押しつけられ、過不足のない適切な接触圧が確保される。
【0027】
第1転動体円筒部312は、円筒形状を有し、第1転動体支持部310の径方向内端から軸方向下方へ延びる。第1転動体円筒部312は、軸受41を介してシャフト10に支持される。第1転動体円筒部312の外周面には、スプロケット50が固定されている。スプロケット50は、図示しない動力伝達チェーンと連結されるチェーンホイールである。
【0028】
[第2転動体32]
第2転動体32は、無段変速機100のハウジングであり、遊星ローラ20、第1転動体31及び第3転動体33を収容する。第2転動体32は、シャフト10及び第1転動体31に対し、相対回転可能に支持され、遊星ローラ20に対し、主軸Jの径方向外側から接触する。
【0029】
第2転動体32は、主軸Jを中心とする環状形状を有する。より具体的には、第2転動体32は、第2転動体上支持部320、第2転動体下支持部321、第2転動体円筒部322及び第2転動体環状部323により構成される。
【0030】
第2転動体上支持部320は、径方向に延びる略円板形状を有し、遊星ローラ20よりも軸方向上方に配置される。また、第2転動体上支持部320は、軸受42Aを介して、シャフト10に支持される。
【0031】
第2転動体下支持部321は、径方向に延びる略円板形状を有し、遊星ローラ20よりも軸方向下方に配置される。また、第2転動体下支持部321は、第1転動体支持部310よりも軸方向下方に配置され、軸受42Bを介して、第1転動体円筒部312に支持される。
【0032】
第2転動体円筒部322は、円筒形状を有し、第2転動体上支持部320の径方向外端及び第2転動体下支持部321の径方向外端を繋いでいる。第2転動体円筒部322は、車輪ハブの外周面に相当する。
【0033】
第2転動体環状部323は、円環形状を有し、第2転動体円筒部322の内周面に固定される。第2転動体環状部323は、その下端近傍の内周面に遊星ローラ20に接触する接触部32Cを有する。当該接触部32Cは、遊星ローラ20の第2円錐面232に対し、主軸Jの径方向外側から接触する。
【0034】
[第3転動体33]
第3転動体33は、主軸Jを中心とする環状形状を有し、軸受43を介して、調整ロッド12に支持される。つまり、第3転動体33は、シャフト10に対して軸方向に相対移動可能に支持されるとともに、シャフト10に対して相対回転可能に支持されている。
【0035】
第3転動体33は、遊星ローラ20に接触する接触部33Cを有する。当該接触部33Cは、遊星ローラ20の凹部230の内面に対し、主軸Jの径方向内側から接触する。当該接触部33Cは、主軸Jを含む断面において、径方向外方に向かって凸となる円弧形状を有する。
【0036】
[無段変速機100の動作]
次に、無段変速機100の動作について説明する。無段変速機100では、第1転動体31が入力側、第2転動体32が出力側として用いられる。第1転動体31は、スプロケット50を介して、図示しない動力伝達チェーンから回転トルクが与えられる。当該回転トルクは、遊星ローラ20を介して、第2転動体32に伝達される。
【0037】
第1転動体31及び第2転動体32の回転数の比は、シャフト10に対する支持ピン21の傾斜角に応じて変化する。従って、調整ロッド12を軸方向に移動させ、支持ピン21の傾きを変化させることにより、無段変速機100の変速比を変化させることができる。
【0038】
調整ロッド12は、シャフト10に対し、軸方向に相対移動可能であり、第3転動体33は、調整ロッド12とともに軸方向に移動する。これに対し、遊星ローラ支持部22はシャフト10に固定されている。このため、調整ロッド12を軸方向に移動させることにより、第3転動体33は、遊星ローラ支持部22に対し、軸方向に相対移動する。
【0039】
ここで、支持ピン21は、遊星ローラ支持部22により傾斜自在に支持されている。また、第3転動体33の接触部33Cは、遊星ローラの凹部230の内面に接触している。このため、第3転動体33が、遊星ローラ支持部22に対し、軸方向に相対移動すれば、支持ピン21が傾き、無段変速機100の変速比が変化する。
【0040】
[接触部31C,32Cの形状]
図2及び
図3は、第1転動体31及び第2転動体32の接触部31C,32Cの形状についての説明図である。
図2には、主軸Jに対する支持ピン21の傾斜角が異なる3つの遊星ローラ20が重複して記載されている。
図3は、
図2の一部を拡大して示した拡大図である。
【0041】
図中のa1〜a3は、第1転動体31と遊星ローラ20との接触点の一例であり、支持ピン21の傾斜角に応じて、第1転動体31の接触部31C上を移動する。また、図中のb1〜b3は、第2転動体32と遊星ローラ20との接触点の一例であり、支持ピン21の傾斜角に応じて、第2転動体32の接触部32C上を移動する。
【0042】
遊星ローラ20の転動面23は、球面ではなく、第1円錐面231及び第2円錐面232を含んでいる。このため、主軸Jに対する支持ピン21の傾斜角が変化すれば、主軸Jに対する転動面23の傾斜角も変化する。一方、転動面23と接触する接触部31C,32Cの形状は、支持ピン21の傾斜角を変化させたときの転動面23の包絡線と一致している。
【0043】
支持ピン21の傾斜角にかかわらず、第1転動体31及び第2転動体32の位置及び傾きは一定である。このため、接触部31C,32Cの形状を上記包絡線と一致させることにより、支持ピン21の傾斜角に応じて、転動面23との接触点を接触部31C,32C上において移動させることができる。その結果、支持ピン21の傾斜角にかかわらず、遊星ローラ20に対し、第1転動体31及び第2転動体32が良好に接触している状態を維持することができ、適切な接触圧を確保することができる。
【0044】
第1転動体31の接触部31Cの形状について、より具体的に説明する。遊星ローラ20の第1円錐面231の主軸Jに対する傾斜角は、支持ピン21の傾斜角に応じて変化する。一方、主軸Jを含む切断面における接触部31Cの断面形状は、支持ピン21の傾斜角を変化させたときの第1円錐面231の母線の包絡線と一致する。このような構成により、支持ピン21の傾斜角に応じて、遊星ローラ20との接触点a1〜a3が接触部31C上を移動することができる。従って、支持ピン21の傾斜角にかかわらず、遊星ローラ20の第1円錐面231に対し、第1転動体31が良好に接触している状態を維持することができる。なお、第1円錐面231の母線とは、第1転動体31との接触点を含む母線であり、支持ピン21を含む平面と、第1円錐面231との交線である。
【0045】
また、第2転動体32の接触部32Cの形状について、より具体的に説明する。遊星ローラ20の第2円錐面232の主軸Jに対する傾斜角は、支持ピン21の傾斜角に応じて変化する。一方、主軸Jを含む切断面における接触部32Cの外形は、支持ピン21の傾斜角を変化させたときの第2円錐面232の母線の包絡線と一致する。このような構成により、支持ピン21の傾斜角に応じて、遊星ローラ20との接触点b1〜b3が接触部32C上を移動することができる。従って、支持ピン21の傾斜角にかかわらず、遊星ローラ20の第2円錐面232に対し、第2転動体32が良好に接触している状態を維持することができる。なお、第2円錐面232の母線とは、第2転動体32との接触点を含む母線であり、支持ピン21を含む平面と、第2円錐面232との交線である。
【0046】
図4の(a)〜(c)は、変速比と回転トルクについての説明図である。図中の(a)〜(c)には、低速回転時、中速回転時、高速回転時の様子がそれぞれ示されている。まず、
図4を用いて、支持ピン21の傾斜角と変速比との関係について説明する。次に、
図4を用いて、支持ピン21の傾斜角と回転トルクとの関係について説明する。
【0047】
[支持ピン21の傾斜と変速比の関係]
図4(b)では、支持ピン21が主軸Jと平行に配置されている。このため、第1転動体31及び第2転動体32は、回転半径が略一致する遊星ローラ20の外周上に接触する。その結果、第1転動体31及び第2転動体32の回転数は略一致し、第2転動体32は中速で回転する。
【0048】
図4(a)では、支持ピン21が主軸Jに対して傾斜し、支持ピン21の上端が下端よりも径方向外方に位置する。このため、第2転動体32は、
図4(b)のときよりも回転半径がより小さな遊星ローラ20の外周上に接触し、第1転動体31は、
図4(b)のときよりも回転半径がより大きな遊星ローラ20の外周上に接触する。その結果、第2転動体32の回転数は、第1転動体31よりも小さくなり、第2転動体32は低速で回転する。
【0049】
図4(c)では、支持ピン21が主軸Jに対し(a)の場合とは反対方向に傾斜し、支持ピン21の上端が下端よりも径方向内方に位置する。このため、第2転動体32は、
図4(b)のときよりも回転半径がより大きな遊星ローラ20の外周上に接触し、第1転動体31は、
図4(b)のときよりも回転半径がより小さな遊星ローラ20の外周上に接触する。その結果、第2転動体32の回転数は、第1転動体31より大きくなり、第2転動体32は、高速で回転する。
【0050】
[支持ピン21の傾斜と回転トルクの関係]
第1転動体31及び第2転動体32は、軸方向において、遊星ローラ20を挟んで配置される。また、第1転動体31及び第2転動体32は、調圧カム31Aによって軸方向に付勢され、当該付勢力が法線力31F,32Fに変換され、当該法線力31F,32Fによって第1転動体31及び第2転動体32が遊星ローラ20の転動面23に押しつけられる。つまり、転動体31の法線力31Fの軸方向成分31fと、第2転動体32の法線力32Fの軸方向成分32fとは、ともに一定であり、互いに逆向きで大きさが略一致する。
【0051】
法線力31F,32Fは、遊星ローラ20の転動面23に対し、第1転動体31及び第2転動体32を押しつける力であり、第1転動体31及び第2転動体32の接触点における転動面23の法線方向に作用する。このため、法線力31F,32Fの向きは、支持ピン21の傾きに応じて変化し、法線力31F,32Fの大きさも、支持ピン21の傾きに応じて変化する。つまり、第1転動体31及び第2転動体32と、遊星ローラ20との間で伝達される回転トルクは、支持ピン21の主軸Jに対する傾きに応じて変化する。
【0052】
より具体的には、主軸Jに対する第1円錐面231の母線の傾斜角が小さくなるほど、第1転動体31の法線力31Fは大きくなる。同様にして、主軸Jに対する第2円錐面232の母線の傾斜角が小さくなるほど、第2転動体32の法線力32Fは大きくなる。つまり、第1転動体31及び第2転動体32は、変速比に応じて回転数が小さくなるほど、遊星ローラ20との間で伝達される回転トルクが大きくなる。従って、変速比にかかわらず、常に最適な法線力31F,32Fの比が得られ、回転トルクの比が得られる。その結果、無段変速機100の伝達性能を向上させ、高効率化することができる。
【0053】
また、第1転動体31及び第2転動体32と、第3転動体33とは、径方向において遊星ローラ20を挟んで配置される。このため、第3転動体33は、遊星ローラ20を介して、第1転動体31の法線力31Fと、第2転動体32の法線力32Fとの合力を受け、第3転動体33の法線力33Fは、当該合力の反力となる。
【0054】
図4(b)では、支持ピン21が主軸Jと平行に配置されているため、第1円錐面231及び第2円錐面232の母線は、傾斜する向きが異なるが、主軸Jに対する傾斜角は略一致している。従って、第1転動体31及び第2転動体32の法線力31F,32Fの大きさも略一致する。つまり、第1転動体31及び第2転動体32は、互いの回転数が略一致すれば、遊星ローラ20に対する伝達トルクも略一致する。
【0055】
図4(a)では、第1円錐面231の母線の主軸Jに対する傾斜角が、第2円錐面232の母線の主軸Jに対する傾斜角よりも大きい。このため、第1転動体31の法線力31Fは、
図4(b)のときよりも小さくなる一方、第2転動体32の法線力32Fは、
図4(b)のときよりも大きくなる。つまり、
図4(b)の場合と比較すれば、回転数が大きな第1転動体31は、遊星ローラ20に対する伝達トルクが小さくなり、回転数が小さな第2転動体32は、遊星ローラ20に対する伝達トルクが大きくなる。
【0056】
図4(c)では、第1円錐面231の母線の主軸Jに対する傾斜角が、第2円錐面232の母線の主軸Jに対する傾斜角よりも小さい。このため、第1転動体31の法線力31Fは、
図4(b)のときよりも大きくなる一方、第2転動体32の法線力32Fは、
図4(b)のときよりも小さくなる。つまり、
図4(b)の場合と比較すれば、回転数が小さな第1転動体31は、遊星ローラ20に対する伝達トルクが大きくなり、回転数が大きな第2転動体32は、遊星ローラ20に対する伝達トルクが小さくなる。
【0057】
発明者らの検証結果によれば、第1円錐面231及び第2円錐面232の母線が、支持ピン21に対し略45度の角度を有している場合に、無段変速機100の効率が最も良好になることがわかった。
【0058】
[凹部230/接触部33Cの形状]
図5は、遊星ローラ20の凹部230及び第3転動体33の接触部33Cの形状の一例を示した図であり、主軸Jを含む断面が示されている。
【0059】
第3転動体33の接触部33Cは円弧からなる。つまり、互いに接触する遊星ローラ20の凹部230及び第3転動体33の接触部33Cは、いずれも主軸Jを含む断面上において円弧となる。このため、接触部33C及び凹部230が損傷又は摩耗するのを抑制することができる。
【0060】
また、接触部33Cの曲率半径Rは、凹部230の曲率半径Rと略一致するが、接触部33Cの円弧の長さは、凹部230の円弧の長さよりも長い。つまり、接触部33Cが凹部230の内面に接触している状態において、凹部230の円弧は、接触部33Cの円弧の一部と一致している。このため、接触部33Cが凹部230の内面に接触している状態を維持しつつ、軸方向の一定の範囲内において、第3転動体33をスムーズに移動させることができる。
【0061】
図6は、遊星ローラ20の凹部230及び第3転動体33の接触部33Cの形状の他の例を示した図であり、主軸Jを含む断面が示されている。
【0062】
第3転動体33の接触部33Cは円弧からなる。つまり、互いに接触する凹部230及び接触部33Cは、ともに、主軸Jを含む断面上において円弧になる。このため、接触部33C及び凹部230が、損傷又は摩耗するのを抑制することができる。
【0063】
また、接触部33Cの曲率半径rは、凹部230の曲率半径Rよりも小さい。つまり、接触部33Cの先端が凹部230の内面の最深部に接触している状態において、接触部33Cと凹部230との間には、上下方向に隙間が形成される。このため、接触部33Cが凹部230の内面に接触している状態を維持しつつ、軸方向の一定の範囲内において、第3転動体33をスムーズに移動させることができる。また、
図5の場合に比べて、第3転動体33の移動可能な距離が長くなり、主軸Jに対する支持ピン21の傾斜角の変化範囲が広くなる。このため、実現できる変速比の範囲が広くなる。
【0064】
本実施の形態による無段変速機100は、遊星ローラ20が円環状の凹部230を有し、第3転動体33が当該凹部230の内面に接触している。このため、第3転動体33を軸方向に移動させれば、遊星ローラ20の支持ピン21を傾け、変速比を変化させることができる。このため、従来のような複雑な変速機構を有することなく、無段変速機を実現することができる。従って、無段変速機の部品点数を削減することができる。その結果、無段変速機を小型化し、あるいは、軽量化することができる。また、無段変速機の製造コストを低減して安価に提供することができる。
【0065】
また、本実施の形態による無段変速機100は、遊星ローラ20の転動面23が、第1円錐面231及び第2円錐面232を有し、第1転動体31が第1円錐面231に接触し、第2転動体32が第2円錐面232に接触している。このため、第1転動体31及び第2転動体32は、変速比に応じて回転数が小さくなれば、回転トルクが大きくなる。このため、無段変速機の効率を向上させることができる。
【0066】
また、本実施の形態による無段変速機100は、遊星ローラ20に接触する第1転動体31の接触部31Cの形状を、支持ピン21の傾きを変化させたときの第1円錐面231の母線の包絡線に一致させている。同様にして、遊星ローラ20に接触する第2転動体32の接触部32Cの形状を、支持ピン21の傾きを変化させたときの第2円錐面232の母線の包絡線に一致させている。このため、支持ピン21の傾きが変化しても、第1転動体31及び第2転動体32が遊星ローラ20の転動面23に接触している状態を維持することができる。従って、転動面23として第1円錐面231及び第2円錐面232を有する遊星ローラ20を採用することができる。
【0067】
また、本実施の形態によれば、径方向外側から遊星ローラ20に接触する第1転動体31を入力側とし、径方向外側から遊星ローラ20に接触する第2転動体32を出力側として動作する無段変速機100を実現することができる。なお、入力側と出力側とを入れ替え可能であることは言うまでもない。
【0068】
なお、本実施の形態では、遊星ローラ20が、第1円錐面231及び第2円錐面232を含む場合の例について説明したが、本発明は、このような構成のみに限定されない。例えば、遊星ローラ20は、環状形状の凹部230が設けられた球であってもよい。この場合、凹部230より上方の球面に第1転動体31が接触し、凹部230より下方の球面に第2転動体32が接触する。
【0069】
実施の形態2.
実施の形態1では、遊星ローラ20が、円環状の凹部230を有する場合について説明した。これに対し、本実施の形態では、遊星ローラ20が、円環状の凸部233を有する場合について説明する。
【0070】
図7は、本発明の実施の形態2による無段変速機101の要部についての一構成例を示した図であり、遊星ローラ20及びその周辺に配置された構成要素のみが示されている。本実施の形態による無段変速機101は、
図1の無段変速機100と比べれば、遊星ローラ20及び第3転動体33の形状が異なっている。なお、その他の構成は、
図1の無段変速機100(実施の形態1)の場合と同様であるため、重複する説明を省略する。
【0071】
遊星ローラ20の転動面23は、円環形状の凸部233と、凸部233よりも軸方向下方の第1円錐面231と、凸部233よりも軸方向上方の第2円錐面232とにより構成される。凸部233は、第3転動体33が接触する転動面である。凸部233は、遊星ローラ20の外周面を突出させた断面を有し、当該断面は円弧で構成される。また、凸部233は、支持ピン21の長手方向の略中央に配置され、支持ピン21を中心とする円環形状を有する。
【0072】
第3転動体33は、遊星ローラ20に対し、主軸Jの径方向内側から接触する。第3転動体33は、遊星ローラ20の凸部233が接触する接触部33Cを有する。当該接触部33Cは、径方向内方に向かって窪ませた円弧形状の断面を有する。つまり、接触部33Cの内面に遊星ローラ20の凸部233が接触する。
【0073】
本実施の形態によれば、実施の形態1の場合と同様にして、第3転動体33を軸方向に移動させ、支持ピン21の傾きを変化させることにより、無段変速機101の変速比を変化させることができる。
【0074】
実施の形態3.
実施の形態1では、モータを有しない無段変速機100について説明した。これに対し、本実施の形態では、モータを有する無段変速機102について説明する。
【0075】
図8は、本発明の実施の形態3による無段変速機102の一構成例を示した図である。本実施の形態による無段変速機102は、
図1の無段変速機100と比べれば、モータ6を有する点が異なっている。なお、その他の構成は、
図1の無段変速機100(実施の形態1)の場合と同様であるため、重複する説明を省略する。
【0076】
モータ6は、第2転動体下支持部321とスプロケット50の間に設けられ、第1転動体円筒部312を回転駆動する。モータ6は、モータ静止部及びモータ回転部により構成される。モータ静止部は、モータ支持部51を介して、ドロップアウト11に支持される。つまり、モータ静止部は、シャフト10に固定されている。一方、モータ回転部は、主軸Jを中心として回転可能に支持される。
【0077】
モータ回転部は、ロータ62及びマグネット63を有する。ロータ62は、径方向に延びる円板形状を有し、第1転動体円筒部312に固定されている。マグネット63は、ロータ62の上面及び下面に取り付けられている。
【0078】
モータ静止部は、ハウジング60及びステータ61を有する。ハウジング60は、モータ蓋部601、モータ底部602及びモータ円筒部603を有する。モータ蓋部601及びモータ底部602は、いずれも径方向に延びる円板形状を有し、軸受64を介して、第1転動体円筒部312に支持される。また、モータ蓋部601は、ロータ62よりも軸方向上方に配置され、モータ底部602は、ロータ62よりも軸方向下方に配置されている。モータ円筒部603は、円筒形状を有し、モータ蓋部601の径方向外端と、モータ底部602の径方向外端とを繋いでいる。ステータ61は、モータ蓋部601の下面及びモータ底部602の上面に取り付けられた電機子であり、マグネット63と対向する。
【0079】
モータ6は、ステータ61に駆動電流を供給することにより、ステータ61とマグネット63との間に周方向のトルクが発生し、シャフト10に対し、第1転動体円筒部312を相対回転させることができる。
【0080】
本実施の形態によれば、プロスケットに付加される駆動トルクを補助するためのモータを有する無段変速機において、複雑な変速機構を採用することなく、部品点数を削減することができる。
【0081】
実施の形態4.
図9は、本発明の実施の形態4による無段変速機103の一構成例を示した図であり、主軸Jを含む平面で切断したときの断面が示されている。
【0082】
無段変速機103は、第1シャフト15、第2シャフト16、遊星ローラ20、第1転動体31、第2転動体32、第3転動体33及び歯車機構70を有している。以下、これらの各部品について詳しく説明する。なお、
図1の無段変速機100と同一の構成部分については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0083】
[第1シャフト15・第2シャフト16]
第1シャフト15及び第2シャフト16は、いずれも軸方向(上下方向)に延びる略円柱状の部材であり、主軸Jを中心として互いに同軸に配置されている。第1シャフト15は、第2シャフト16の下方に配置されている。また、第1シャフト15及び第2シャフト16は、第2転動体32を介して、相対回転可能に連結されている。
【0084】
[遊星ローラ20]
遊星ローラ20及び支持ピン21は、
図1の無段変速機100の場合と同一である。遊星ローラ支持部22は、第1シャフト15及び第2シャフト16に対し、相対回転可能に支持される。遊星ローラ支持部22は、上支持部22u、下支持部22d及び固定ピン22pにより構成される。上支持部22uは、環状形状を有し、軸受47を介して、シャフト15に支持される。下支持部22dは、上支持部22uと同軸の環状形状を有し、上支持部22uよりも軸方向下方に配置され、シャフト15が貫通する貫通孔22hを有する。固定ピン22pは、軸方向に延びる形状を有し、周方向において遊星ローラ20とは異なる位置に配置される。固定ピン22pの上端は、上支持部22uに連結され、固定ピン22pの下端は、下支持部22dに連結される。つまり、下支持部22dは、固定ピン22pを介して、上支持部22uに固定されている。上支持部22u及び下支持部22dは、周方向における遊星ローラ20に対応する位置に、ガイド部22gをそれぞれ有する。
【0085】
[第1転動体31]
第1転動体31は、無段変速機103のハウジングであり、遊星ローラ20、第2転動体32、第3転動体33及び歯車機構70を収容する。第1転動体31は、第1シャフト15及び第2シャフト16を相対回転可能に支持し、遊星ローラ20に対し、主軸Jの径方向外側から接触する。
【0086】
第1転動体31は、主軸Jを中心とする環状形状を有する。より具体的には、第1転動体31は、第1転動体環状部311、第1転動体上支持部313、第1転動体下支持部314及び第1転動体円筒部315により構成される。
【0087】
第1転動体上支持部313は、径方向に延びる略円板形状を有し、遊星ローラ20よりも軸方向上方に配置される。また、第1転動体上支持部313は、軸受45Aを介して、第2転動体円筒部325を支持する。
【0088】
第1転動体下支持部314は、径方向に延びる略円板形状を有し、遊星ローラ20よりも軸方向下方に配置される。また、第1転動体下支持部314は、軸受45Bを介して、第1シャフト15を支持する。
【0089】
第1転動体円筒部315は、円筒形状を有し、第1転動体上支持部313の径方向外端及び第1転動体下支持部314の径方向外端を繋いでいる。
【0090】
第1転動体環状部311は、環状形状を有し、第1転動体円筒部315の内周面に沿って軸方向上方に延びる。第1転動体環状部311の下端は、調圧カム31Aを介して、第1転動体下支持部314に支持される。第1転動体環状部311は、その上端近傍の内周面に遊星ローラ20に接触する接触部31Cを有する。当該接触部31Cは、遊星ローラ20の第1円錐面231に対し、主軸Jの径方向外側から接触する。調圧カム31Aは、主軸Jを中心とする回転トルクを利用して、軸方向の付勢力を発生する。このため、第1転動体環状部311は、遊星ローラ20の転動面23に押しつけられ、適切な接触圧が確保される。
【0091】
[第2転動体32]
第2転動体32は、第2シャフト16に固定され、遊星ローラ20に対し、主軸Jの径方向外側から接触する。また、第2転動体32は、主軸Jを中心とする環状形状を有する。より具体的には、第2転動体32は、第2転動体支持部324、第2転動体環状部323及び第2転動体円筒部325により構成される。
【0092】
第2転動体支持部324は、径方向に延びる略円板形状を有する。
【0093】
第2転動体環状部323は、環状形状を有し、第2転動体支持部324の径方向外端から軸方向下方に延びる。第2転動体環状部323の上端は、調圧カム32Aを介して、第2転動体支持部324に支持される。第2転動体環状部323は、その下端近傍の内周面に遊星ローラ20に接触する接触部32Cを有する。当該接触部32Cは、遊星ローラ20の第2円錐面232に対し、主軸Jの径方向外側から接触する。調圧カム32Aは、主軸Jを中心とする回転トルクを利用して、軸方向の付勢力を発生する。このため、第2転動体環状部323は、遊星ローラ20の転動面23に押しつけられ、適切な接触圧が確保される。
【0094】
第2転動体円筒部325は、円筒形状を有し、第2転動体支持部324の径方向内端から軸方向上方へ延びる。第2転動体円筒部325内には、軸方向上側から第2シャフト16が圧入され、軸方向下側から第1シャフト15が嵌合される。第1シャフト15は、軸受48を介して、第2転動体支持部324に支持される。つまり、第2転動体円筒部325は、第2シャフト16に対し固定され、第1シャフト15に対し相対回転可能に支持される。
【0095】
[第3転動体33]
第3転動体33は、第1シャフト15に対し、軸方向に相対移動可能に支持され、遊星ローラ20に対し、主軸Jの径方向内側から接触する。また、第3転動体33は、主軸Jを中心とする環状形状を有する。より具体的には、第3転動体33は、第3転動体支持部330及び第3転動体円筒部331により構成される。
【0096】
第3転動体支持部330は、径方向に延びる略円板形状を有する。第3転動体支持部330は、その外周面上に、遊星ローラ20に接触する接触部33Cを有する。当該接触部33Cは、遊星ローラ20の凹部230の内面に対し、主軸Jの径方向内側から接触する。当該接触部33Cは、主軸Jを含む断面において、径方向外方に向かって凸となる円弧形状を有する。
【0097】
第3転動体円筒部331は、円筒形状を有し、第3転動体支持部330の径方向内端から軸方向下方に延びる。第3転動体円筒部331は、その内部に第1シャフト15が配置され、第1シャフト15に対してスプライン嵌合されている。このため、第3転動体33は、第1シャフト15に対し、相対回転することはできないが、軸方向に相対移動することができる。
【0098】
[歯車機構70]
歯車機構70は、軸受46を介して第3転動体円筒部331に支持される。歯車機構70は、図示しない外部の駆動源により駆動され、第3転動体33を軸方向に移動させる。例えば、歯車機構70としてラックアンドピニオンを採用すれば、駆動源の回転動作を利用して、第3転動体33を軸方向に移動させることができる。
【0099】
[無段変速機103の動作]
次に、無段変速機103の動作について説明する。無段変速機103では、第1転動体31が固定され、第1シャフト15が入力側、第2シャフト16が出力側として用いられる。第3転動体33は、第1シャフト15とともに回転する。第3転動体33の回転トルクは、遊星ローラ20を介して、第2転動体32に伝達される。その結果、第2シャフト16が、第2転動体32とともに回転する。
【0100】
図1の無段変速機100の場合(実施の形態1)と同様、第1転動体31及び第2転動体32の相対的な回転数の比が、シャフト10に対する支持ピン21の傾斜角に応じて変化する。従って、支持ピン21の傾きを変化させることにより、無段変速機103の変速比を変化させることができる。
【0101】
本実施の形態によれば、第1転動体31が固定され、径方向内側から遊星ローラ20に接触する第3転動体33を入力側とし、径方向外側から遊星ローラ20に接触する第2転動体32を出力側とする無段変速機において、変速比にゼロを含む正逆転が可能になり、かつ、複雑な変速機構を採用することなく、部品点数を削減することができる。
【0102】
実施の形態5.
上記実施の形態では、遊星ローラ20に対し、第1転動体31及び第2転動体32が径方向外側から接触し、第3転動体33が径方向内側から接触する無段変速機100〜103の例について説明した。これに対し、実施の形態では、遊星ローラ20に対し、第1転動体31及び第2転動体32が径方向内側から接触し、第3転動体33が径方向外側から接触する無段変速機104について説明する。
【0103】
図10は、本発明の実施の形態5による無段変速機104の一構成例を示した図であり、主軸Jを含む平面で切断したときの断面が示されている。
【0104】
無段変速機104は、第1シャフト15、第2シャフト16、遊星ローラ20、第1転動体31、第2転動体32、第3転動体33、調整レバー71及びハウジング8を有している。以下、これらの各部品について詳しく説明する。なお、
図1の無段変速機100と同一の構成部分については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0105】
[第1シャフト15/第2シャフト16]
第1シャフト15及び第2シャフト16は、いずれも軸方向(上下方向)に延びる略円柱状の部材であり、主軸Jを中心として互いに同軸に配置されている。第1シャフト15は、第2シャフト16の下方に配置されている。第1シャフト15は、軸受46Aを介して、ハウジング8に支持され、第2シャフト16は、軸受46Bを介して、ハウジング8に支持される。
【0106】
[遊星ローラ支持部22]
遊星ローラ支持部22は、ハウジング8に固定されている。遊星ローラ支持部22を構成する一対のガイド部22gは、例えば、同心に配置された円弧形状を有し、支持ピン21の両端は、これらのガイド部22gに沿って移動自在に支持される。ガイド部22gは、ハウジング下支持部80の上面及びハウジング上支持部81の下面にそれぞれ固定されている。
【0107】
[第1転動体31]
第1転動体31は、第1シャフト15に係合され、遊星ローラ20に対し、主軸Jの径方向内側から接触する。また、第1転動体31は、主軸Jを中心とする環状形状を有する。より具体的には、第1転動体31は、第1転動体支持部310及び第1転動体環状部311により構成される。
【0108】
第1転動体支持部310は、径方向に延びる略円板形状を有し、第1シャフト15に固定される。
【0109】
第1転動体環状部311は、環状形状を有し、第1転動体支持部310の軸方向上方に配置される。第1転動体環状部311の下端は、調圧カム31Aを介して、第1転動体支持部310に支持される。第1転動体環状部311は、その上端近傍の外周面に遊星ローラ20に接触する接触部31Cを有する。当該接触部31Cは、遊星ローラ20の第1円錐面231に対し、主軸Jの径方向内側から接触する。調圧カム31Aは、主軸Jを中心とする回転トルクを利用して、当該回転トルクに比例する軸方向の付勢力を発生する。このため、第1転動体環状部311は、遊星ローラ20の転動面23に押しつけられ、過不足のない適切な接触圧が確保される。
【0110】
[第2転動体32]
第2転動体32は、第2シャフト16に係合され、遊星ローラ20に対し、主軸Jの径方向内側から接触する。また、第2転動体32は、主軸Jを中心とする環状形状を有する。より具体的には、第2転動体32は、第2転動体支持部324及び第2転動体環状部323により構成される。
【0111】
第2転動体支持部324は、径方向に延びる略円板形状を有し、第2シャフト16に固定される。
【0112】
第2転動体環状部323は、環状形状を有し、第2転動体支持部324の軸方向下方に配置される。第2転動体環状部323の上端は、調圧カム32Aを介して、第2転動体支持部324に支持される。第2転動体環状部323は、その下端近傍の外周面に遊星ローラ20に接触する接触部32Cを有する。当該接触部32Cは、遊星ローラ20の第2円錐面232に対し、主軸Jの径方向内側から接触する。調圧カム32Aは、主軸Jを中心とする回転トルクを利用して、当該回転トルクに比例する軸方向の付勢力を発生する。このため、第2転動体環状部323は、遊星ローラ20の転動面23に押しつけられ、適切な接触圧が確保される。
【0113】
[第3転動体33]
第3転動体33は、ハウジング8に対し、軸方向に相対移動可能に支持され、遊星ローラ20に対し、主軸Jの径方向外側から接触する。また、第3転動体33は、主軸Jを中心とする環状形状を有する。
【0114】
第3転動体33の内周面には、遊星ローラ20に接触する接触部33Cを有する。当該接触部33Cは、遊星ローラ20の凹部230の内面に対し、主軸Jの径方向外側から接触する。当該接触部33Cは、主軸Jを含む断面において、径方向内方に向かって凸となる円弧形状を有する。
【0115】
[調整レバー71]
調整レバー71は、径方向に延びる形状を有し、第3転動体33の上下端面を挟むように構成される。このため、第3転動体33は、調整レバー71に対し、相対回転可能に支持されつつ、軸方向の位置が調整レバー71によって規制される。調整レバー71は、ハウジング円筒部82の貫通孔72を通り、径方向外端は、ハウジング8の外側に位置する。調整レバー71は、人が操作する操作子であってもよいし、駆動源により軸方向に駆動されるものであってもよい。
【0116】
[ハウジング8]
ハウジング8は、遊星ローラ20、第1転動体31、第2転動体32及び第3転動体33を収容する。ハウジング8は、ハウジング下支持部80、ハウジング上支持部81、ハウジング円筒部82、ハウジング下円筒部83及びハウジング上円筒部84により構成される。
【0117】
ハウジング下支持部80及びハウジング上支持部81は、いずれも径方向に延びる略円板形状を有する。ハウジング下支持部80は、遊星ローラ20よりも軸方向下方に配置され、ハウジング上支持部81は、遊星ローラ20よりも軸方向上方に配置される。ハウジング円筒部82は、遊星ローラ20及び第3転動体33を収容する円筒形状を有し、ハウジング下支持部80の径方向外端と、ハウジング上支持部81の径方向外端とを繋いでいる。また、ハウジング円筒部82は、調整レバー71のための貫通孔72を有する。ハウジング下円筒部83は、円筒形状を有し、ハウジング下支持部80の径方向内端から軸方向下方に延びる。ハウジング上円筒部84は、円筒形状を有し、ハウジング上支持部81の径方向内端から軸方向上方に延びる。
【0118】
[無段変速機104の動作]
次に、無段変速機104の動作について説明する。ハウジング8が固定され、第1シャフト15が入力側、第2シャフト16が出力側として用いられる。第1転動体31は、第1シャフト15とともに回転する。第1転動体31の回転トルクは、遊星ローラ20を介して、第2転動体32に伝達される。その結果、第2シャフト16が、第2転動体32とともに回転する。
【0119】
図1の無段変速機100の場合(実施の形態1)と同様、第1転動体31及び第2転動体32の相対的な回転数の比が、シャフト10に対する支持ピン21の傾斜角に応じて変化する。従って、調整レバー71を軸方向に移動させ、支持ピン21の傾きを変化させることにより、無段変速機103の変速比を変化させることができる。
【0120】
本実施の形態によれば、遊星ローラ20に対し、第1転動体31及び第2転動体32が径方向内側から接触し、第3転動体33が径方向外側から接触する無段変速機において、複雑な変速機構を採用することなく、変速比範囲を大きくすることができ、高効率化することができ、部品点数を大幅に削減することができる。