特開2016-73280(P2016-73280A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-73280(P2016-73280A)
(43)【公開日】2016年5月12日
(54)【発明の名称】乾燥バナナ
(51)【国際特許分類】
   A23L 19/00 20160101AFI20160408BHJP
   A23B 7/02 20060101ALI20160408BHJP
【FI】
   A23L1/212 A
   A23B7/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-198408(P2015-198408)
(22)【出願日】2015年10月6日
(31)【優先権主張番号】特願2014-205859(P2014-205859)
(32)【優先日】2014年10月6日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】591193381
【氏名又は名称】株式会社スターレーン
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100128783
【弁理士】
【氏名又は名称】井出 真
(74)【代理人】
【識別番号】100128473
【弁理士】
【氏名又は名称】須澤 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100160886
【弁理士】
【氏名又は名称】久松 洋輔
(74)【代理人】
【識別番号】100180699
【弁理士】
【氏名又は名称】成瀬 渓
(72)【発明者】
【氏名】辻 良二
【テーマコード(参考)】
4B016
4B169
【Fターム(参考)】
4B016LC03
4B016LE03
4B016LG01
4B016LP08
4B169BA01
4B169BA05
4B169HA13
(57)【要約】
【課題】漂白剤や変色防止剤等の添加物を使用しなくとも、バナナ本来の色がより保たれている乾燥バナナを提供する。
【解決手段】本発明は、追熟等により熟したバナナの可食部分(果肉部分)を乾燥させることにより得られる乾燥バナナ食品であって、バナナがサバ、カルダバ、ジャイアントカルダバ、ダリアンまたはバナップル(登録商標)であることを特徴とする、乾燥バナナ食品およびその製造方法に関する。本発明によれば、果肉部分を乾燥させた乾燥バナナにおいて、黒変によりその商品価値が損なわれるのを抑えることができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熟したバナナの可食部分を乾燥させることにより得られる乾燥バナナ食品の製造方法であって、
サバ、カルダバ、ジャイアントカルダバ、ダリアンおよびバナップル(登録商標、以下同じ)からなる群から1種または2種以上選択されるバナナの可食部分を乾燥させることを含む、乾燥バナナ食品の製造方法。
【請求項2】
乾燥処理に供される前記バナナがサバ、ダリアン、またはこれらの混合物である請求項1に記載の乾燥バナナ食品の製造方法。
【請求項3】
熟した前記バナナの可食部分を、乾燥させた可食部分の重量が乾燥前の25質量%以上65質量%以下となるまで乾燥させる請求項1または2に記載の乾燥バナナ食品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、追熟等させたバナナを加熱することなく乾燥させることにより得られる乾燥バナナに関し、特に、漂白剤や変色防止剤等の添加物を使用しなくとも変色(黒変または褐変等)が抑制されている乾燥バナナ食品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、果物を乾燥機や天日干しにより乾燥することにより得られる乾燥果実(ドライフルーツ)が知られている。近年は健康志向の観点などから、洋菓子などに代わる食品として、ドライフルーツの人気が高まっている。
【0003】
このような需要の高まりから様々な果物についてドライフルーツの製造、販売が行われているが、バナナに関しては、現時点において、他の果物と比較してあまり出回っていない。その大きな理由の1つとして、キャベンディッシュ種などの一般的なバナナは、乾燥処理のために皮を剥いて果肉を空気にさらすと、急速に変色(黒変、または褐変等。以下、変色を黒変とも称す)が進行してしまうことが挙げられる。乾燥処理が行われたバナナは当該黒変が著しく進んでおり、バナナ本来の色が失われていて、その商品価値が大きく損なわれている。
【0004】
そのため、乾燥バナナにおいて、バナナ果肉部分の黒変を抑制するための二酸化硫黄等の漂白剤や変色防止剤(例えば特許文献1)などの添加物の使用が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平07−289163号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、添加物を使用したりすると、バナナ本来の風味が損なわれてしまうため、好ましくない。
【0007】
本発明はこのような事情に基づきなされたものであり、漂白剤や変色防止剤等の添加物を使用しなくとも、変色が抑制されている乾燥バナナ食品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は鋭意研究の結果、サバ、カルダバ、ジャイアントカルダバ、ダリアンまたはバナップル(登録商標、以下同じ)を乾燥させたときに、他のバナナ(キャベンディッシュなどの主として生食用に用いられているバナナや後述するBゲノムを有する他のバナナ)と比較して変色が少ないことを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明の要旨は、以下のとおりである。
[1] 熟したバナナの可食部分を乾燥させることにより得られる乾燥バナナ食品の製造方法であって、
サバ、カルダバ、ジャイアントカルダバ、ダリアンおよびバナップル(登録商標、以下同じ)からなる群から1種または2種以上選択されるバナナの可食部分を乾燥させることを含む、乾燥バナナ食品の製造方法。
[2] 乾燥処理に供される前記バナナがサバ、ダリアン、またはこれらの混合物である請求項1に記載の乾燥バナナ食品の製造方法。
[3] 熟した前記バナナの可食部分を、乾燥させた可食部分の重量が乾燥前の25質量%以上65質量%以下となるまで乾燥させる[1]または[2]に記載の乾燥バナナ食品の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、漂白剤や変色防止剤等の添加物を使用しなくとも、変色が抑制されている乾燥バナナ食品を提供することを目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例および比較例の乾燥バナナ食品の色の様子を示す写真である。
図2】実施例および比較例の乾燥バナナ食品の色の様子を示す写真である。
図3】実施例および比較例の乾燥バナナ食品の色の様子を示す写真である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
次に、本発明の1つの実施形態について説明する。
本実施形態は、熟したバナナの可食部分を乾燥させることにより得られる、非加熱の乾燥バナナ食品に関する。
なお、本明細書において、非加熱とは焼く、蒸す、煮る、揚げるとの処理を行っていないものをいい、水分の割合を減少させることを目的とする乾燥処理は加熱処理には含まれない。すなわち、本実施形態の乾燥バナナは、油で揚げられているバナナチップスなどとは食品として区別される概念である。
【0012】
以下、具体的に本実施形態に係る乾燥バナナ食品(以下、単に乾燥バナナとも称す)について説明する。
本実施形態に係る乾燥バナナにおいて、材料となるバナナは、サバ、カルダバ、ジャイアントカルダバ、ダリアンおよびバナップルからなる群から1種または2種以上選択される。これらのバナナはBゲノムをゲノム構成中に含むバナナである。
現在栽培されているバナナは、バナナの原種の1つであるMusa Acuminataに由来するAゲノム、または同じくバナナの原種の1つであるMusa Balbisianaに由来するBゲノムのうち少なくともいずれかを有するゲノム構成である。Bゲノムを有するゲノム構成のバナナとは、上述のMusa Balbisianaに由来するBゲノムをゲノム構成中に含むバナナであり、例えばAAB、ABB、BBBなどのゲノム構成を有するバナナをいう。Bゲノムを有するゲノム構成のバナナは、例えばフィリピンなどにおいて栽培されており、皮を剥いてそのまま食べるという用途は極めて少なく、主に加熱調理用として用いられている。
サバ、カルダバ、ジャイアントカルダバ、ダリアンおよびバナップルからなる群から選択される1種または2種以上のバナナを乾燥させた乾燥バナナは、他のバナナ(キャベンディッシュなどの主として生食用に用いられているバナナやBゲノムを有する他のバナナ)と比較して変色が少ない。なお、より変色を抑える観点から、本実施形態において乾燥処理に供されるバナナは、サバ、ダリアン、またはこれらの混合物(サバの可食部分とダリアンの可食部分が混ざったもの)であることが好ましい。
【0013】
本実施形態においては、上述の1種または2種以上のバナナの可食部分を、乾燥バナナを作るために用いることができる。熟したバナナとしては特に限定されず、例えば、果肉が皮に覆われた状態で中央部が黄色で両端が青いもの、全体が黄色で黒斑がないもの、全体が黄色で黒斑が生じているものなど、任意のものが利用可能である。
【0014】
当該熟したバナナは例えば追熟により得ることができる。
追熟に用いるバナナについて、その収穫時期などについても特に限定されず一般的なものを用いることができ、例えば開花後に結実した青いバナナを収穫したものを用いることができる。
追熟の方法については特に限定されず、単に保存することによって追熟させたもののほか、バナナ追熟加工室内でエチレンガスを導入して追熟させたものであってもよい。
追熟の一例として、例えば、未追熟状態の青バナナを温度の下限値を16℃として1日間〜14日間保管し、可食部分である皮の内側の果肉の糖度が20度以上となるまで追熟させることが好ましい。これにより果皮が黄色く変色し、果肉が軟化する。特に、差圧式バナナ追熟加工室内で強制通風、温度・湿度管理環境下でエチレンガスを使用し追熟させたものが最も好ましい。
【0015】
本実施形態においては、追熟等により熟したバナナの可食部分である果肉を乾燥させ、乾燥バナナを得る。
例えば、熟したバナナの果肉をホールのまま、もしくは必要に応じてカット等を行い、乾燥させる。バナナの果肉は、例えば乾燥の前に皮を剥いて得てもよいほか、例えば既に皮が除かれて冷凍保存されていたものなどを用いるようにしてもよい。また、カット等を行った後の形状についても特に限定されない。
乾燥方法は自然乾燥、人工乾燥のいずれでもよく、特に限定されない。自然乾燥法としては陰干し、天日干し等を挙げることができ、また、人工乾燥法としては熱風乾燥、低温乾燥、加圧乾燥、減圧乾燥等を挙げることができる。
乾燥の程度については商品として販売する際の形態などを考慮して適宜設定でき、特に限定されないが、例えば乾燥させた果肉の重量が乾燥前の65質量%以下、好ましくは25質量%以上65質量%以下、より好ましくは25質量%以上50質量%以下となるまで乾燥させることが挙げられる。
また、果肉をカットする場合、その方法や得られる形状、大きさなどは特に限定されず、当業者が適宜設定することができる。
【0016】
このようにして得られた乾燥バナナは、他の果物のドライフルーツ同様、そのまま食することができる。このほか、他の形態で食することもでき、例えば、細断したり、粉状としたりして他の食品と混合などしてもよい。混合される食品は特に限定されず、様々な食品に混合することができるが、その一例としては、グラノーラ、コーンフレークなどのシリアル食品、牛乳、アイスクリーム、ヨーグルトなどの乳製品、パン、ケーキ、パンケーキ、スコーン、クッキーなどの小麦を原料とする加工食品、サラダ、ジャム、カレーなどを挙げることができる。
【0017】
以上、本実施形態によれば、漂白剤や変色防止剤等の添加物を使用しなくとも変色が抑制された乾燥バナナを提供することができる。
すなわち、材料としてサバ、カルダバ、ジャイアントカルダバ、ダリアンおよびバナップルからなる群から選択される1種または2種以上のバナナを使用していることにより、他のバナナ、例えばAAAのゲノム構成であるキャベンディッシュやBゲノムを有する上記5種以外の他のバナナなどを用いた場合と比較して、黒変が抑えられ、バナナ果肉本来の色がより保たれた乾燥バナナを得ることができる。
また、本実施形態においては、漂白剤や変色防止剤等を使用しなくとも上記のとおり変色が抑えられた乾燥バナナを得ることができるので、これらを使用した場合と比較してバナナの風味などもより維持された乾燥バナナを得ることができる。
【実施例】
【0018】
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明する。なお、本発明はこれに限定されるものではない。
【0019】
[実施例1]
追熟加工後のサバ種のバナナ可食部分の皮を剥き、厚さ5mm〜7mmにカットし、市販の網の上に一枚ずつ並べ、室内に保管した。そのまま5日間乾燥させ、乾燥バナナを作成した。乾燥させた果肉の重量は乾燥前の約35質量%になるよう加工した。
【0020】
[実施例2〜5]
材料となるバナナについてカルダバ種(実施例2)、ジャイアントカルダバ種(実施例3)、ダリアン種(実施例4)、バナップル(実施例5)を用いたほかは、実施例1と同様に乾燥バナナを作成した。実施例2〜5についても、乾燥させた果肉の重量は乾燥前の約35質量%になるよう加工した。
【0021】
[比較例1]
材料となるバナナについてキャベンディッシュ種を用いたほかは、実施例1と同様に乾燥バナナを作成した。
【0022】
なお、実施例、比較例に用いたバナナについては、追熟施設にて、24時間エチレンガス処理後、20〜22度の温度で7日間追熟加工を実施することにより追熟を行った。
【0023】
[色調の評価1]
実施例1と比較例1の乾燥バナナの写真を図1に示す。当該写真から、実施例1の乾燥バナナにおいて、バナナの果肉本来の色がより保たれていることが理解できる。また、実施例2〜5の乾燥バナナの外観も実施例1とほぼ同様であった。
また、6名のパネラーによっての官能評価により、実施例および比較例の乾燥バナナについて、色調、香りおよび肉質の評価を行った。
【0024】
【表1】
【0025】
表1からも理解できるとおり、実施例1〜5の乾燥バナナにおいて、比較例1の乾燥バナナと比較して、黒変が抑えられ、乾燥前のバナナの色がより保たれていることが理解できる。
【0026】
[実施例6]
上記条件で追熟加工後のサバ種バナナの可食部分の皮を剥いた後、厚さ約5cmにカットした。ついで、市販の網に並べ、20℃の恒温器内で乾燥させた。
【0027】
[比較例2]
バナナをキャベンディッシュ種としたほかは、実施例6と同様の方法で乾燥バナナを製造した。
【0028】
[色調の評価2]
試験開始(乾燥開始)から0、2、4日目において、色、香り、肉質について、以下の基準に基づき官能評価を行った。なお、当該官能評価は一般財団法人マイコトキシン検査協会において行った。
評価基準
色:黄色であること(良好)、褐変し黒ずんだ場合はその程度を記載する。
香り:バナナ由来の香りであること(良好又は不良)
肉質:乾燥以外の変化がないこと(良好又は不良)
実施例6の結果を表2に、比較例2の結果を表3に示す。
【0029】
【表2】
【0030】
【表3】
【0031】
表2、3からも理解できるとおり、実施例6の乾燥バナナにおいて、比較例2の乾燥バナナと比較して、乾燥前のバナナの色がより保たれていることが理解できる。
【0032】
[実施例7〜9、比較例3]
実施例として、サバ(実施例7)、ダリアン(実施例8)、カルダバ(実施例9)を用いた。また、対照としてキャベンディッシュ(比較例3)を用いた。追熟加工後の各バナナの可食部分を実施例1と同様にカットし、実施例1と同様の方法で乾燥処理に供した。実施例7〜9、比較例3について、果肉の重量はいずれも乾燥前の約35質量%であった。
【0033】
[色調の評価3]
試験開始(乾燥開始)から0日目の写真を図2に、また、5日目の写真を図3に示す。また、試験開始前と試験開始から5日後の実施例7〜9、比較例3の各1つのサンプルについて、無作為にそのサンプル中から4か所を選び、色彩色差計(ミノルタカメラ株式会社 CT-210)を用いてL値(明度、数値が高いほど明るい)を測定した。結果を表4(試験開始前)、表5(試験開始から5日後)に示す。
【0034】
【表4】
【0035】
【表5】
【0036】
図2および3、表4および5から理解できるように、実施例7〜9に係る乾燥バナナにおいては比較例3の乾燥バナナと比較して変色が抑制されており、特にサバを用いた実施例7の乾燥バナナおよびダリアンを用いた実施例8の乾燥バナナにおいては大きく変色が抑えられていることが理解できる。
図1
図2
図3