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  • 特開2016073307-パフ分布の調節 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-73307(P2016-73307A)
(43)【公開日】2016年5月12日
(54)【発明の名称】パフ分布の調節
(51)【国際特許分類】
   A24F 47/00 20060101AFI20160408BHJP
【FI】
   A24F47/00
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
【外国語出願】
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-248857(P2015-248857)
(22)【出願日】2015年12月21日
(62)【分割の表示】特願2012-533694(P2012-533694)の分割
【原出願日】2010年10月15日
(31)【優先権主張番号】0918129.8
(32)【優先日】2009年10月16日
(33)【優先権主張国】GB
(71)【出願人】
【識別番号】500252844
【氏名又は名称】ブリティッシュ アメリカン タバコ (インヴェストメンツ) リミテッド
【氏名又は名称原語表記】BRITISH AMERICAN TOBACCO (INVESTMENTS) LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100103285
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 順之
(74)【代理人】
【識別番号】100183782
【弁理士】
【氏名又は名称】轟木 哲
(72)【発明者】
【氏名】ウッドコック、ドミニク
(72)【発明者】
【氏名】マーフィ、ジェイムズ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】カプセル化されたエアロゾル発生剤を含む熱によって燃焼しない製品に関し、カプセル化によって使用中に、発生剤の放出を調節する効果を有する製品を提供する。
【解決手段】このカプセル化は、熱によって燃焼しない製品の使用中のエアロゾル発生剤の放出のタイミングを調節し、パフ発生量のより良好な調節を可能にする。いくつかのエアロゾル発生剤の場合、カプセル化することによって発生剤の安定性を増し、及び/または製品内での発生剤の移行を防ぐことができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カプセル化されたエアロゾル発生剤を含む、熱によって燃焼しない製品。
【請求項2】
製品の使用中のエアロゾル発生剤が、パフ毎に所望の量の総粒状物質が生成されるように放出されるように調節されることを特徴とする、請求項1記載の製品。
【請求項3】
エアロゾル発生剤が異なる融点を有する2つ以上の異なるバリヤー材を用いてカプセル化されることを特徴とする、請求項1または2記載の製品。
【請求項4】
エアロゾル発生剤が、異なる厚みのバリヤー材によってカプセル化され、そのバリヤー材の厚みによって、製品の使用中のエアロゾル発生剤がいつ放出されるか決まることを特徴とする、請求項1乃至3いずれか1項記載の製品。
【請求項5】
熱によって燃焼しない製品内のカプセル化されたエアロゾル発生剤の分布によって、製品の使用中のエアロゾル発生剤の放出のタイミングを調節することを特徴とする、請求項1乃至4いずれか1項記載の製品。
【請求項6】
エアロゾル発生剤が、ソルビトール、グリセロール、及びプロピレングリコールまたはトリエチレングリコールなどのグリコール類などのポリオール、一価アルコール類、高沸点炭化水素類、乳酸などの酸類、ジアセチン、トリアセチン、トリエチルシトレートまたはイソプロピルミリステートなどのエステル類、及びステアリン酸メチル、ドデカン二酸ジメチル及びテトラデカン二酸ジメチルなどの脂肪族カルボン酸エステル類などの非ポリオール、であることを特徴とする、請求項1乃至5いずれか1項記載の製品。
【請求項7】
バリヤー材が、アルギン酸塩、デキストラン、マルトデキストリン、シクロデキストリン及びペクチンなどの多糖類、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース及びセルロースエーテル類などのセルロース系バリヤー材、ゼラチン、アラビアゴム、ガッチゴム、トラガカントゴム、カラヤ、イナゴマメ、アカシアゴム、グアー、マルメロ種子及びキサンタンゴムなどのゴム、寒天、アガロース、カラギーナン、フコイダン及びフルセラランなどのゲル、またはそれらの混合物、であることを特徴とする、請求項1乃至6いずれか1項記載の製品。
【請求項8】
エアロゾル発生剤が、粒状の担体材料によって担持され、カプセル化するバリヤー材がエアロゾル発生剤を担持する担体材料に適用されることを特徴とする、請求項1乃至7いずれか1項記載の製品。
【請求項9】
エアロゾル発生剤が、パフ毎に実質的に一定の量の総粒状物質を送出するように、熱によって燃焼しない製品の使用中に放出されることを特徴とする、請求項1乃至8いずれか1項記載の製品。
【請求項10】
エアロゾル発生剤が、パフ毎に徐々に増加する量の総粒状物質を送出するように、熱によって燃焼しない製品の使用中に放出されることを特徴とする、請求項1乃至8いずれか1項記載の製品。
【請求項11】
製品のパフ分布を調節するために、熱によって燃焼しない製品内でカプセル化されたエアロゾル発生剤の使用。
【請求項12】
熱によって燃焼しない製品内にカプセル化されたエアロゾル発生剤を組み入れることによって、燃焼しない製品のパフ分布を調節する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、「熱によって燃焼しない(heat not burn)」製品に組み入れるためのカプセル化された希釈剤に関する。
【背景技術】
【0002】
非燃焼型喫煙品と呼ばれることもある熱によって燃焼しない製品が、紙巻きタバコなどの従来の喫煙品と代替が可能な喫煙品として開発されている。その基本原理は、製品がタバコを加熱して、低沸点成分の揮発を引き起こすが、タバコまたは揮発物の熱分解または燃焼を避ける(タバコの多少の炭化が通常の使用の間に起こり得るが)というものである。この揮発によって、蒸気が生成され、これが製品を通して引き込まれ、その後エアロゾル状に凝縮され、ユーザーに吸引される。揮発した成分は水、ニコチン、保湿剤及び軽い揮発物を包含する。
【0003】
本発明は、特に、熱源と、例えばタバコロッドのようなエアロゾルを生成する部分とを含み、そこから特定の成分が使用時に気化される、加熱によって燃焼しない製品に関する。そのような製品において、熱源は、炭素質材料の固体の押し出し成形品であってもよく、これは、点火され、揮発のための熱を提供し、点火した後にくすぶり、熱を発生し続ける。点火熱源と接触して燃焼えないようにするために、製品のこの部分を例えばガラス繊維、ガラス繊維を含有した紙シート、セラミック、または内面を金属箔で覆った紙シートなどの、不燃性の材料によって囲んでもよい。また熱によって燃焼しない製品は、熱源に隣接したエアロゾル発生部分を含む。この発生部分は通常、従来の紙巻きタバコのタバコロッドの外観に類似した円筒形である。これは使用時に揮発する成分を含む。この発生部分は、タバコを含んでもよく、さらに、熱源に隣接した気化チャンバー(例えば、タバコ及びエアロゾル発生剤を含んでいる)及び製品の吸い口側端部の方のさらに下流に位置する冷却チャンバー(例えば、裁断された再生タバコシートを含んでいる)を含む、異なる機能を有する別個のセクションを含む場合もある。フィルターまたは吸い口が通常、製品の吸い口側端部に位置し、これは、例えばセルロースアセテートを含んでいてもよい。
【0004】
これら熱によって燃焼しない製品は、例えばプロピレングリコール(PG)及びグリセロールなどのエアロゾル発生剤を含む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
熱によって燃焼しない製品の主要な目的の1つは、従来の喫煙品の代替品として消費者から支持を得ることである。この消費者からの支持を得る1つの方法は、熱によって燃焼しない製品が喫煙品に似た感覚を作り出すことにある(他の手段によって支持を得ることが可能である、またはこれとは別に他の手段で支持を得ることが可能であるということが認識されているが)。
【0006】
従来の喫煙品の喫煙感覚の見方として、「パフ分布(puff profile)」と呼ばれ、また、「パフ毎のパフ分布(puff per puff profile)」とも言われているものがある。これは、喫煙品が消費される際の、パフ毎の総粒状物質の送出量(mg/cig)である。従来の紙巻きタバコの総粒状物質(TPM)送出量は、最初の数パフの間は比較的少ないが、最後のパフまでの間に徐々に増加する傾向がある。このことは、煙の濃度(strength)が徐々に増しているという感覚を喫煙者に与える。
【0007】
これとは対照的に、熱によって燃焼しない製品の場合、そのパフ分布は、最初の数パフで急激に増加するまで非常に弱く始まる傾向がある。その後TPM送出量は、製品が消費し終えるまで減少する。これは、主にこれらの製品が最適な温度に到達するまでに数パフかかり、製品が最適温度に到達した後、エアロゾルを大量に発生させるからである。しかしながら、パフによる送出量は、PGなどの利用可能なエアロゾル発生剤が、使用中に沸騰して使い果たされてしまった時、急速に減少する可能性がある。その結果、このような熱によって燃焼しない製品は、従来の紙巻きタバコと比較した時、製品の使い終わりに近づくにつれて、その喫煙感覚特性が損なわれていく傾向があるという、不都合を有することが知られている(図1参照)。
【課題を解決するための手段】
【0008】
したがって、本発明は、例えば、従来の喫煙品のパフ分布により類似した分布を生じさせるために、熱によって燃焼しない製品のパフ分布を改良することを目的とする。
【0009】
エアロゾル発生剤は、熱によって燃焼しない製品の使用中に気化するが、いくつかの発生剤のより低い温度での気化が製品の保管中に問題を引き起こす可能性があることが分かっている。具体的には、いくつかのエアロゾル発生剤は、保管中に移行(migrate)し、その後大気中に、または例えば周囲を取り囲むペーパーラッパーなどの製品の他の部分と相互作用して失われる可能性がある。このことはまた、発生剤自体によってまたは発生剤の相互作用によって放出された化合物によって、製品の汚染または製品に染みを付ける可能性がある。従って、エアロゾル発生剤を熱によって燃焼しない製品の中で必要とされるまで移行しないようにすることが望ましい。
【0010】
さらに、エアロゾル発生剤が熱によって燃焼しない製品に組み入れられる時、それらの気化、ひいてはそれらの製品のパフ分布への影響を調節する方法はこれまでなかった。
【0011】
本発明は、熱によって燃焼しない製品の性能を向上させ、エアロゾル発生剤の放出を調節することによって上述の問題を克服しようとするものである。
【0012】
本発明の第1の態様では、カプセル化されたエアロゾル発生剤を含む、熱によって燃焼しない製品が供される。
【0013】
本発明の第2の態様では、製品のパフ分布を調節するために熱によって燃焼しない製品においてカプセル化されたエアロゾル発生剤が利用される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】紙巻きタバコのパフ毎の総粒状物質の送出量を、熱によって燃焼しない製品であるEclipse(登録商標)(R.J.Reynols社製)のものと比較し、両者ともに3つの異なる喫煙形態において行ったものを示すグラフである。
図2】紙巻きタバコのパフ毎の希釈剤の送出量を、熱によって燃焼しない製品であるEclipse(登録商標)(R.J.Reynols社製)のものと比較したものを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明による熱によって燃焼しない製品は、カプセル化されたエアロゾル発生剤を含み、このカプセル化は、この製品の使用中に、発生剤の放出を調節する効果を有する。好ましい実施態様においてカプセル化は、熱によって燃焼しない製品の使用の際にエアロゾル発生剤の放出のタイミングを調節するためのものであり、エアロゾル発生剤を確実に緩やかにそして持続的に放出し、したがってパフ量をより良好に調節することができる。いくつかのエアロゾル発生剤については、カプセル化することによって発生剤の安定性を増し、及び/または製品内での発生剤の移行を防ぐ場合がある。
【0016】
エアロゾル発生剤は、加熱するとエアロゾルを発生する物質である。エアロゾル発生剤は、例えば、ポリオールエアロゾル発生剤または非ポリオールエアロゾル発生剤でもよい。発生剤は、室温で固体または液体であってもよく、室温では液体であることが好ましい。適当なポリオールとしては、ソルビトール、グリセロール、及びプロピレングリコールやトリエチレングリコールなどのグリコール類などが挙げられる。適当な非ポリオールとしては、一価アルコール類、高沸点炭化水素類、乳酸などの酸類、及びジアセチン、トリアセチン、トリエチルシトレートまたはイソプロピルミリステートなどのエステル類などが挙げられる。ステアリン酸メチル、ドデカン二酸ジメチル及びテトラデカン二酸ジメチルなどの脂肪族カルボン酸エステル類もまた、エアロゾル発生剤として用いることができる。いくつかのエアロゾル発生剤を組み合わせてもよく、それらは同じまたは異なる割合で組み合わせられる。ポリエチレングリコール及びグリセロールが特に好ましく、これに対し、トリアセチンは安定化させることがより難しく、また製品内での移行を防ぐためにカプセル化する必要がある。
【0017】
周囲条件下でエアロゾル発生剤の安定性または移行に影響を及ぼすいくつかの要因がある。これらの要因は、疎水性または親水性、粘性、室温での飽和蒸気圧、沸点、分子構造(例えば水素結合またはファンデルワールス力など)及びエアロゾル発生剤と支持体との吸収/吸着相互作用などが挙げられる。いくつかのエアロゾル発生剤は、他の発生剤より移行の問題を被るものがあり、例えばトリアセチン、イソプロピルミリステート及びトリエチルシトレートは、特に移行する傾向があり、したがって、本発明のカプセル化による不動化することによって利益を受ける。
【0018】
関連する別の要因としては、エアロゾル発生剤の添加量がある。例えば、もしグリセロールなどのエアロゾル発生剤が大量に組み込まれている場合、移行の問題が顕著になる可能性がある。
【0019】
本発明におけるエアロゾル発生剤の添加量は、発生剤によって変わる場合がある。エアロゾル発生剤は、エアロゾル発生部の重量の95%までの量を封入してもよい。
【0020】
また本発明の製品は、カプセル化されていないエアロゾル発生剤を含んでもよいが、そのようなカプセル化されていないエアロゾル発生剤は、保管中に安定状態を維持するグリセロールなどの発生剤のみからなることが好ましい。
【0021】
カプセル化されたエアロゾル発生剤は、バリヤー材内にカプセル化され、そのバリヤー材は、熱によって燃焼しない製品の保管中に移行を妨げるだけではなく、使用中に発生剤の放出を調節することができる。
【0022】
バリヤー材(以下、カプセル化材料ともいう)は、室温よりも高くしかし使用中の熱によって燃焼しない製品内部の到達温度と同じかそれよりも低い温度でエアロゾル発生剤を放出するために溶融、分解、反応、崩壊、膨張または変形してもよい。本発明の実施態様において、バリヤー材は50℃、好ましくは60℃、70℃、80℃または90℃より高い温度で、相当な量のエアロゾル発生剤を放出する。エアロゾル発生剤が放出されるためにかかる時間は、バリヤー材の厚さによってさらに調節することができる。
【0023】
バリヤー材は、例えば、多糖類またはセルロース系バリヤー材、ゼラチン、ゴム、ゲル、ワックスまたはそれらの混合物であってもよい。好適な多糖類としては、アルギン酸塩、デキストラン、マルトデキストリン、シクロデキストリン及びペクチンなどが挙げられる。適当なセルロース系材料としては、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース及びセルロースエーテル類などが挙げられる。好適なゴムとしては、アラビアゴム、ガッチゴム、トラガカントゴム、カラヤ、イナゴマメ、アカシアゴム、グアー、マルメロ種子及びキサンタンゴムなどが挙げられる。適当なゲルとしては、寒天、アガロース、カラギーナン、フコイダン及びフルセラランなどが挙げられる。好適なワックス類としては、カルナバ蝋などが挙げられる。
【0024】
本発明の好ましい実施態様において、バリヤー材は多糖類を含む。アルギン酸塩が、そのカプセル化性能により特に好ましい。アルギン酸塩は、例えば、アルギン酸の塩、エステル化されたアルギン酸塩またはアルギン酸グリセリルであってもよい。アルギン酸の塩としては、アルギン酸アンモニウム、アルギン酸トリエタノールアミン、及びアルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、アルギン酸カルシウム及びアルギン酸マグネシウムなどの、I族またはII族の金属イオンのアルギン酸塩、などが挙げられる。エステル化されたアルギン酸塩としては、アルギン酸プロピレングリコール、アルギン酸グリセリルなどが挙げられる。
【0025】
1つの実施態様において、バリヤー材はアルギン酸ナトリウム及び/またはアルギン酸カルシウムである。アルギン酸カルシウムは、アルギン酸ナトリウムよりも周囲温度においてエアロゾル発生剤の移行の抑止により効果的であるが、アルギン酸ナトリウムよりもより高い温度においてエアロゾル発生剤を放出する場合がある。
【0026】
本発明の1つの実施態様において、アカシアゴムがトリアセチンをカプセル化するためのバリヤー材として供される。
【0027】
いくつかの実施態様において、カプセル化されたエアロゾル発生剤を2つ以上のカプセル化材料を用いて、例えば別個の層にカプセル化してもよい。
【0028】
エアロゾル発生剤を所望のタイミングで放出するために、種々のカプセル化材料を用いてもよく、また種々のカプセル化法を使用してもよい。例えば、熱によって燃焼しない製品を点火するとすぐにエアロゾル発生剤を放出するようにするために、エアロゾル発生部分は、例えばグリセロールなどの安定したエアロゾル発生剤を、カプセル化されていない形態で、タバコに直接適用された状態で、含んでもよい。その後まもなく放出されるようにするために比較的低融点のバリヤー材、薄いバリヤー層及び/またはバリヤー材をエアロゾル発生剤と混合することによって製せられたバリヤーを用いてカプセル化されたエアロゾル発生剤を供して、製品のエアロゾル発生部分の温度が上昇し始めた時に、エアロゾルがすぐに放出されるようにしてもよい。最後に、更なるエアロゾル発生剤が、遅れて放出されるようにしてもよく、発生剤を比較的高融点のバリヤー材または比較的厚いバリヤー層によってカプセル化することができ、及び/またはバリヤーが適切に破壊されるまで放出が遅れるようにバリヤー材によってエアロゾル発生剤が完全に取り囲まれる。
【0029】
本発明のいくつかの実施態様において、バリヤー材は、エアロゾル発生剤を担持する粒状の担体材料(粒状の吸着剤など)に適用される。このバリヤー材の適用は、当業者に知られている、またはここに記載の、製造工程中にエアロゾル発生剤が完全に失われることのないあらゆる好適な方法で行ってもよい。そのような方法には、例えば、噴霧乾燥、共押出、顆粒化(prilling)などを含む。実質的にエアロゾル発生剤がバリヤー材に適用される工程により失われないことが好ましい。実施態様において、バリヤー材またはその前駆物質は粒状担体材料に噴霧される。
【0030】
例えば、エアロゾル発生剤を担持する粒状担体材料に、アルギン酸ナトリウム水溶液を噴霧し、乾燥させて表面にアルギン酸ナトリウムの水溶性フィルムを形成することができる。これとは別に、粒状担体材料に、アルギン酸ナトリウムを噴霧し、その後カルシウムイオン源で処理して、アルギン酸カルシウムで被覆した水不溶性のフィルムまたはゲルを形成することができる。いくつかの実施態様において、カルシウムイオンは天然に存在しているものであってもよい。
【0031】
得られた製品において、個々のエアロゾル発生剤−担持粒子は、バリヤー材で囲んでもよく、発生剤の移行は周囲条件下でさらに妨げられる。これとは別に、発生剤は担体に適用される前にバリヤー材と組み合わせてもよく、これによって、得られる製品において、バリヤー材は発生剤との均一な混合物中に留まる。さらにこれとは別に、発生剤は、担体に適用される前にバリヤー材で予めカプセル化してもよい(担体と密に接触しないように)。これらの方法の1つまたはあらゆる組み合わせを、本発明において用いることができる。
【0032】
特に好ましい実施態様において、エアロゾル発生剤のカプセル化に用いられたバリヤー材は、温度に依存してエアロゾル発生剤を放出する。これは、熱によって燃焼しない製品の通常の使用時に所定の温度に晒された際にカプセル化された発生剤を放出するような融点を有するバリヤー材を用いることによって達成できる。
【0033】
熱によって燃焼しない製品を使用している間全体に亘ってエアロゾル発生剤の放出を調節するために、カプセル化されたエアロゾル発生剤は、エアロゾル発生剤を同時に全て放出するより、徐々に放出することが好ましい。本発明の1つの実施態様において、これは異なる融点を有する2つ以上のバリヤー材を用いることによって達成される。低融点の材料から製せられたカプセルが、それらがカプセル化しているエアロゾル発生剤を、それより高融点の材料から製せられたカプセルがカプセル化しているエアロゾル発生剤を放出するよりも前に、放出する。別の実施態様において、バリヤー材は異なる厚さの壁を有するカプセルを形成するために用いられ、厚い壁は、薄い壁よりも、融解しエアロゾル発生剤を放出するのに時間が掛かる。そのような実施態様において、1つ以上の異なるカプセル化材料を用いてもよい。またさらに別の実施態様において、製品内部のカプセル化されたエアロゾル発生剤の配置も、放出のタイミングを調節するのに役立ち、特に、熱によって燃焼しない製品の長さに沿って温度勾配が生じる傾向がある場合に有用である。製品のタバコロッドに沿ってカプセル化された発生剤を位置決めすることにより、調節されるエアロゾル発生剤の放出のタイミングを調節できるようになり、製品を使用している間全体に亘って分散して放出され、熱源により近接して位置したカプセル化された発生剤が最初に放出され、製品の口側端部に最も近接して位置したカプセル化された発生剤が後で放出されるように調節される。
【0034】
また別の方法では、カプセル化材料は脆弱なものを使用し、さらにエアロゾル発生剤の放出は、放出量を増やすために1つ以上のカプセルを押しつぶして破壊しなければならない消費者によって手動で調節される。これにより消費者は、製品のパフ分布全体に亘って調節することができる。
【0035】
熱によって燃焼しない製品内においてカプセル化されたエアロゾル発生剤をこのように使用することにより、喫煙機関(smoke engine)において測定された時に、あらゆる所望のパフ分布でも達成することができる。したがって、熱によって燃焼しない製品は、パフ毎に発生剤の放出量が徐々に増加する従来の紙巻きタバコのパフ分布を模倣するように設計することができる。これとは別に、パフ分布は、より均一になるように設計して、製品の消費を通して一定量が放出されるようにすることも可能である。
【0036】
本発明のいくつかの実施態様において、更なる成分、例えば他の希釈剤及び/または風味剤を、エアロゾル発生剤と共にカプセル化してもよい。そのような更なる成分はまた、若しくはそれとは別に、別のカプセルによって熱によって燃焼しない製品に包含してもよい。
【0037】
エアロゾル発生剤と共に放出される風味剤を組み入れることは、風味の減少がユーザーによって知覚されることが、放出されているエアロゾル発生剤の減少を伴い、これが製品が消費し終わることを示すので、特に消費者の興味を引くことになるかもしれない。
【0038】
本発明の好ましい実施態様において、熱によって燃焼しない製品は、熱源と、タバコを含む個別のセクションで構成されているエアロゾル発生部分を含む。いくつかの実施態様において、個別のセクションは異なる量のカプセル化されたエアロゾル発生剤または異なる種類のカプセル化されたエアロゾル発生剤を含む。例えば、熱源に近いセクションよりも、製品の吸い口側端部に近いセクションにカプセル化された材料がより多く存在していてもよい。これとは別に、エアロゾル発生剤の性質及び/またはバリヤー材の性質を製品のエアロゾル発生部分の異なるセクションにおいて変えて、製品を使用している間、エアロゾル発生剤の放出の調節に寄与するようにしてもよい。
【0039】
熱により燃焼しない製品の種々の部分間(例えば、隣接したタバコセクション間)のエアロゾル発生剤の移行は、カプセル化によって妨げられ、これは、例えばトリアセチンなどの比較的不安定なエアロゾル発生剤を用いたときでさえ、確実に製品が、予測可能で再現性のある結果を生じさせることに役立つ。
【0040】
上述の詳細な説明は、特定の種類の熱によって燃焼しない製品にカプセル化されたエアロゾル発生剤を組み入れることについて焦点を当てているが、別の種類の熱によって燃焼しない製品に組み入れることにも適している。
【実施例】
【0041】
トリアセチン(煙を希釈するものとして広く知られている化合物)を、噴霧乾燥技術を用いてアカシアゴム内にカプセル化し、平均粒子径(D)53μmの微粉を得た。得られたカプセルを、さらに低粘度のアルギン酸ナトリウムで流動層技術を用いて被覆した。その後得られた粒子を塩化カルシウムで処理し、アルギン酸塩を架橋し、そのバリヤー特性を向上させた。得られたカプセルは、平均粒子径(D)が610μm、タップ密度が410g/リットル、及びトリアセチン含有量が17重量%であった。これらのカプセルを、カプセル1とした。
【0042】
カプセル化されたトリアセチンの第2のバッチを、別の方法で製した。トリアセチンを、噴射冷却(顆粒化)技術を用いてカルナバ蝋内にカプセル化した。カプセルは、平均粒子径(D)が438μm、トリアセチン含有量が20.4重量%であった。これらのカプセルを、カプセル2とした。
【0043】
Eclipseシガレット(R.J.Reynols社製)は、「熱によって燃焼しない」製品であり、炭素からなるプラグの燃焼による熱を利用し、煙の希釈剤(グリセロール)を蒸発させ、吸入用の煙のようなエアロゾルを形成する。Eclipseシガレット内には、希釈剤を多く含む点火側端部の可燃性炭素に近接したセクションと、希釈剤を含んでいない口側端部の第2のセクションといった2つの明確に異なる種類のタバコがある。Eclipseシガレットからの煙の大半は、グリセロールで構成されている。
【0044】
Eclipseシガレットを用い、窓部をタバコのラッパーを介して前方のタバコセクションまで切り開いて形成し、約130mgのタバコを取り除いた。そのタバコを約235mgのカプセル1と置き換えた。タバコラッパーの窓部を、その後タバコラッパーを折り返すことによって閉じ、含有物を接着剤と従来のシガレットペーパーを用いて密封した。第2の窓部を、タバコラッパーを介して後方のタバコセクション(口側端部に最も近い)まで切り開き、約150mgのタバコを取り除いた。そのタバコを約196mgのカプセル6と置き換えた。タバコラッパーの窓部を、その後タバコラッパーを折り返すことによって閉じ、含有物を接着剤と従来のシガレットペーパーを用いて密封した。
【0045】
15本のシガレットをカプセルを用いて調製し、ボルグワルト(Borgwaldt)RM20D喫煙機関(smoking engine)によって、非常に強い喫煙形態(先端の換気を遮断し、30秒おきに、55mLのパフを2秒間で行う)で、喫煙を行った。総粒状物質は、パフ毎にケンブリッジフィルターパッド(Cambridge Filter Pads)に集められた。フィルターパッドをトリアセチンについて分析した。
【0046】
比較のために未変性のEclipseシガレットをパフ毎に同じ喫煙形態下で喫煙し、フィルターパッドをグリセロールについて分析した。
【0047】
その結果(図2に示す)は、変性されていないシガレットからのグリセロールが1回目のパフから主流煙に入り、2回目のパフの後急激に増加していることを示す。一方、カプセル化されたトリアセチンは、4回目のパフまで実質的な量が主流煙に入っておらず、さらに、煙に放出される割合は、グリセロールと比較すると少ない。このことは、主流煙への希釈剤の放出が調節されたことを示している。
図1
図2
【手続補正書】
【提出日】2015年12月22日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カプセル化されたエアロゾル発生剤を含む、熱によって燃焼しない製品であって、製品の使用中のエアロゾル発生剤の放出が、パフ毎に所望の量の総粒状物質が生成されるように異なるカプセル化材料または異なるカプセル化法を用いて調節される、
前記エアロゾル発生剤が、ソルビトール、グリセロール、プロピレングリコール、トリエチレングリコール、乳酸、ジアセチン、トリアセチン、トリエチルシトレート、イソプロピルミリステート、ステアリン酸メチル、ドデカン二酸ジメチル及びテトラデカン二酸ジメチルから選択され、
前記カプセル化されたエアロゾル発生剤が多糖類またはセルロース系バリヤー材、ゼラチン、ゴム、ワックスまたはこれらの混合物であるバリヤー材を用いてカプセル化されることを特徴とする製品。
【請求項2】
バリヤー材が、アルギン酸塩、デキストラン、マルトデキストリン、シクロデキストリン、ペクチン、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、セルロースエーテル、アラビアゴム、ガッチゴム、トラガカントゴム、カラヤ、イナゴマメ、アカシアゴム、グアー、マルメロ種子及びキサンタンゴム、寒天、アガロース、カラギーナン、フコイダン及びフルセララン、カルナバ蝋またはそれらの混合物、であることを特徴とする、請求項記載の製品。
【請求項3】
エアロゾル発生剤が異なる融点を有する2つ以上の異なるバリヤー材を用いてカプセル化されることを特徴とする、請求項1または2記載の製品。
【請求項4】
エアロゾル発生剤が、異なる厚みのバリヤー材によってカプセル化され、そのバリヤー材の厚みによって、製品の使用中のエアロゾル発生剤がいつ放出されるかが決まることを特徴とする、請求項1乃至3いずれか1項記載の製品。
【請求項5】
熱によって燃焼しない製品内のカプセル化されたエアロゾル発生剤の分布によって、製品の使用中のエアロゾル発生剤の放出のタイミングを調節することを特徴とする、請求項1乃至4いずれか1項記載の製品。
【請求項6】
エアロゾル発生剤が、粒状の担体材料によって担持され、カプセル化するバリヤー材がエアロゾル発生剤を担持する担体材料に適用されることを特徴とする、請求項1乃至いずれか1項記載の製品。
【請求項7】
エアロゾル発生剤が、パフ毎に実質的に一定の量の総粒状物質を送出するように、熱によって燃焼しない製品の使用中に放出されることを特徴とする、請求項1乃至いずれか1項記載の製品。
【請求項8】
エアロゾル発生剤が、パフ毎に徐々に増加する量の総粒状物質を送出するように、熱によって燃焼しない製品の使用中に放出されることを特徴とする、請求項1乃至いずれか1項記載の製品。
【請求項9】
熱によって燃焼しない製品内でカプセル化されたエアロゾル発生剤の使用であって、該発生剤の放出を調節してパフ毎に所望の量の総粒状物質が生成されるように、発生剤が異なるカプセル化材料または異なるカプセル化法を用いてカプセル化され、
前記エアロゾル発生剤が、ソルビトール、グリセロール、プロピレングリコール、トリエチレングリコール、乳酸、ジアセチン、トリアセチン、トリエチルシトレート、イソプロピルミリステート、ステアリン酸メチル、ドデカン二酸ジメチル及びテトラデカン二酸ジメチルから選択され、
前記カプセル化されたエアロゾル発生剤が多糖類またはセルロース系バリヤー材、ゼラチン、ゴム、ワックスまたはこれらの混合物であるバリヤー材を用いてカプセル化されることを特徴とする使用。
【請求項10】
バリヤー材が、アルギン酸塩、デキストラン、マルトデキストリン、シクロデキストリン、ペクチン、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、セルロースエーテル、アラビアゴム、ガッチゴム、トラガカントゴム、カラヤ、イナゴマメ、アカシアゴム、グアー、マルメロ種子及びキサンタンゴム、寒天、アガロース、カラギーナン、フコイダン及びフルセララン、カルナバ蝋またはそれらの混合物、であることを特徴とする、請求項9記載の使用。
【請求項11】
熱によって燃焼しない製品内にカプセル化されたエアロゾル発生剤を組み入れて該製品内でパフ毎に所望の量の総粒状物質が生成されるように該エアロゾル発生剤の放出を調節する方法であって、発生剤が異なるカプセル化材料または異なるカプセル化法を用いてカプセル化され、
前記エアロゾル発生剤が、ソルビトール、グリセロール、プロピレングリコール、トリエチレングリコール、乳酸、ジアセチン、トリアセチン、トリエチルシトレート、イソプロピルミリステート、ステアリン酸メチル、ドデカン二酸ジメチル及びテトラデカン二酸ジメチルから選択され、
前記カプセル化されたエアロゾル発生剤が多糖類またはセルロース系バリヤー材、ゼラチン、ゴム、ワックスまたはこれらの混合物であるバリヤー材を用いてカプセル化されることを特徴とする方法。
【請求項12】
バリヤー材が、アルギン酸塩、デキストラン、マルトデキストリン、シクロデキストリン、ペクチン、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、セルロースエーテル、アラビアゴム、ガッチゴム、トラガカントゴム、カラヤ、イナゴマメ、アカシアゴム、グアー、マルメロ種子及びキサンタンゴム、寒天、アガロース、カラギーナン、フコイダン及びフルセララン、カルナバ蝋またはそれらの混合物、であることを特徴とする、請求項11記載の方法。
【外国語明細書】
2016073307000001.pdf