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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-73556(P2016-73556A)
(43)【公開日】2016年5月12日
(54)【発明の名称】血液浄化装置及びプライミング方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/34 20060101AFI20160408BHJP
   A61M 1/14 20060101ALI20160408BHJP
【FI】
   A61M1/34 500
   A61M1/14 560
   A61M1/34 503
   A61M1/14 551
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-207456(P2014-207456)
(22)【出願日】2014年10月8日
(71)【出願人】
【識別番号】000138037
【氏名又は名称】株式会社メテク
(71)【出願人】
【識別番号】507365204
【氏名又は名称】旭化成メディカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】加藤 陽子
(72)【発明者】
【氏名】張 亮
(72)【発明者】
【氏名】川嶋 理人
【テーマコード(参考)】
4C077
【Fターム(参考)】
4C077AA05
4C077BB01
4C077BB02
4C077DD07
4C077EE01
4C077EE02
4C077EE03
4C077EE04
4C077GG02
4C077HH02
4C077HH15
4C077JJ02
4C077KK25
4C077KK27
(57)【要約】
【課題】透析液供給回路に単一故障を想定して複数のフィルタを配置しつつ、高流量の透析液を流すことができる血液浄化装置を提供する。
【解決手段】血液浄化装置1は、血液浄化膜30を備えた血液浄化器20と、採血部21の血液を血液浄化器20の血液浄化膜30の一次側に送り当該血液浄化膜30の一次側から返血部23に戻す血液回路10と、透析液を血液浄化膜30の二次側に供給する透析液供給回路91と、透析液を血液浄化膜30の二次側から排出する透析液排出回路92と、を有する。透析液供給回路91は、二つのフィルタ110、111を備えた第1の流路112と、第1の流路112よりも少ない数のフィルタ110を備えた第2の流路113と、を有し、第1の流路112と第2の流路113を切り替え可能に構成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液浄化膜を備えた血液浄化器と、
採血部の血液を前記血液浄化器の血液浄化膜の一次側に送り当該血液浄化器の血液浄化膜の一次側から返血部に戻す血液回路と、
透析液を前記血液浄化器の血液浄化膜の二次側に供給する透析液供給回路と、
透析液を前記血液浄化器の血液浄化膜の二次側から排出する透析液排出回路と、を有し、
前記透析液供給回路は、複数のフィルタを備えた第1の流路と、前記第1の流路よりも少ない数のフィルタを備えた第2の流路と、を有し、前記第1の流路と前記第2の流路を切り替え可能に構成されている、血液浄化装置。
【請求項2】
前記血液浄化器の血液浄化膜の二次側に供給された透析液の一部または全部を前記血液浄化膜を通じて一次側に供給する逆濾過処理を行う場合には、前記第1の流路を通じて透析液を前記血液浄化器に供給し、前記逆濾過処理を行わない場合には、前記第2の流路を通じて透析液を前記血液浄化器に供給するように、前記第1の流路と前記第2の流路を切り替える切り替え手段を有する、請求項1に記載の血液浄化装置。
【請求項3】
前記第1の流路における前記複数のフィルタの下流側と前記血液回路とを接続する補液回路をさらに有し、
前記透析液供給回路は、前記第1の流路を通じて透析液を前記補液回路に供給可能に構成されている、請求項1又は2に記載の血液浄化装置。
【請求項4】
前記補液回路と前記透析液排出回路とを接続する接続回路をさらに有し、
前記補液回路の前記第1の流路との接続と前記透析液排出回路との接続とが切り替え可能に構成されている、請求項3に記載の血液浄化装置。
【請求項5】
前記第1の流路と前記第2の流路の一部のフィルタが共通している、請求項1〜4のいずれかに記載の血液浄化装置。
【請求項6】
前記共通のフィルタは、他のフィルタよりも上流側に設けられている、請求項5に記載の血液浄化装置。
【請求項7】
最も上流のフィルタに供給される透析液の流量が700mL/min未満の場合には、透析液を前記第1の流路に流通させ、前記流量が700mL/min以上の場合には、透析液を前記第2の流路を流通させる、請求項1〜6のいずれかに記載の血液浄化装置。
【請求項8】
血液浄化装置のプライミングを行う方法であって、
血液回路の採血部と返血部を接続し血液回路を環状にした状態で、透析液供給回路において透析液をフィルタを通して血液浄化器の血液浄化膜の二次側に供給し、当該透析液を前記血液浄化膜を通じて一次側に流出させ、当該一次側を含む血液回路の透析液を透析液排出回路に排出する工程を有し、
前記工程の透析液供給回路において透析液が通過するフィルタの数が、血液浄化処理時の透析液供給回路において透析液が通過するフィルタの数よりも多くなっている、プライミング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液浄化装置及びプライミング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば血液透析などの血液浄化治療を行う血液浄化装置は、中空糸膜などの血液浄化膜を有する血液浄化器を備えている。血液浄化装置は、血液ポンプにより患者の血液を血液浄化器に送り血液浄化器から患者に戻す血液回路と、透析液を血液浄化器の血液浄化膜の二次側に供給する透析液供給回路と、透析液を血液浄化器の血液浄化膜の二次側から排出する透析液排出回路を備えている。この血液浄化装置では、血液回路において血液を体外循環させ、血液浄化器において血液浄化膜の一次側を流れる血液から、血液浄化膜の二次側を流れる透析液内に血液中の不要成分を排出して血液を浄化している(特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5431199号公報
【特許文献2】特許第5399218号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述の血液浄化装置において、透析液供給回路の透析液を、治療前に回路を洗浄するためのプライミング液や、治療中に行う患者への補液として、血液浄化膜を介して血液回路に供給することが考えられている(逆濾過処理)。かかる場合、透析液が血液回路から患者の体内に入る可能性があるため、血液浄化器に通じる透析液供給回路に、透析液を浄化するためのフィルタを単一故障を想定して、バクアップのために複数配置することを考えている。
【0005】
しかしながら、透析液供給回路に複数のフィルタを配置した場合、当該回路の圧力損失が大きくなるため、通常の透析治療時に高流量の透析液を血液浄化器に供給できない恐れがある。
【0006】
本出願はかかる点に鑑みてなされたものであり、透析液供給回路に単一故障を想定して複数のフィルタを配置しつつ、高流量の透析液を流すことができる血液浄化装置及びプライミング方法を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明には、血液浄化膜を備えた血液浄化器と、採血部の血液を前記血液浄化器の血液浄化膜の一次側に送り当該血液浄化器の血液浄化膜の一次側から返血部に戻す血液回路と、透析液を前記血液浄化器の血液浄化膜の二次側に供給する透析液供給回路と、透析液を前記血液浄化器の血液浄化膜の二次側から排出する透析液排出回路と、を有し、前記透析液供給回路は、複数のフィルタを備えた第1の流路と、前記第1の流路よりも少ない数のフィルタを備えた第2の流路と、を有し、前記第1の流路と前記第2の流路を切り替え可能に構成されている、血液浄化装置が含まれる。
【0008】
上記血液浄化装置は、前記血液浄化器の血液浄化膜の二次側に供給された透析液の一部または全部を前記血液浄化膜を通じて一次側に供給する逆濾過処理を行う場合には、前記第1の流路を通じて透析液を前記血液浄化器に供給し、前記逆濾過処理を行わない場合には、前記第2の流路を通じて透析液を前記血液浄化器に供給するように、前記第1の流路と前記第2の流路を切り替える切り替え手段を有していてもよい。
【0009】
上記血液浄化装置は、前記第1の流路における前記複数のフィルタの下流側と前記血液回路とを接続する補液回路をさらに有し、前記透析液供給回路は、前記第1の流路を通じて透析液を前記補液回路に供給可能に構成されていてもよい。
【0010】
上記血液浄化装置は、前記補液回路と前記透析液排出回路とを接続する接続回路をさらに有し、前記補液回路の前記第1の流路との接続と前記透析液排出回路との接続とが切り替え可能に構成されていてもよい。
【0011】
前記第1の流路と前記第2の流路の一部のフィルタが共通していてもよい。
【0012】
前記共通のフィルタは、他のフィルタよりも上流側に設けられていてもよい。
【0013】
最も上流のフィルタに供給される透析液の流量が700mL/min未満の場合には、透析液を前記第1の流路に流通させ、前記流量が700mL/min以上の場合には、透析液を前記第2の流路を流通させるようにしてもよい。
【0014】
別の観点による本発明には、血液浄化装置のプライミングを行う方法であって、血液回路の採血部と返血部を接続し血液回路を環状にした状態で、透析液供給回路において透析液をフィルタを通して血液浄化器の血液浄化膜の二次側に供給し、当該透析液を前記血液浄化膜を通じて一次側に流出させ、当該一次側を含む血液回路の透析液を透析液排出回路に排出する工程を有し、前記工程の透析液供給回路において透析液が通過するフィルタの数が、血液浄化処理時の透析液供給回路において透析液が通過するフィルタの数よりも多くなっている、プライミング方法が含まれる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、透析液供給回路に単一故障を想定して複数のフィルタを配置しつつ、高流量の透析液を流すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】血液浄化装置の構成の概略を示す説明図である。
図2】プライミング時の血液浄化装置の状態を示す説明図である。
図3】血液浄化処理時の血液浄化装置の状態を示す説明図である。
図4】他の血液浄化処理時の血液浄化装置の状態を示す説明図である。
図5】第2の透析液供給回路の他の構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明の好ましい実施の形態の一例について説明する。なお、図面の上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。図面の寸法比率は、図示の比率に限定されるものではない。さらに、以下の実施の形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をその実施の形態のみに限定する趣旨ではない。また、本発明は、その要旨を逸脱しない限り、さまざまな変形が可能である。
【0018】
図1は、本実施の形態に係る血液浄化装置1の構成の概略を示す説明図である。血液浄化装置1は、例えば血液回路10と、透析液回路11と、補液・プライミング回路12と、制御装置13を有している。
【0019】
血液回路10は、例えば採血部21と血液浄化器20とを接続する採血回路22と、血液浄化器20と返血部23とを接続する返血回路24を有している。
【0020】
血液浄化器20は、円柱状のモジュール内に中空糸膜などからなる血液浄化膜30を有している。血液浄化器20は、血液浄化膜30の一次側(血液側)に通じる入口部20a及び出口部20bと、血液浄化膜30の二次側(透析液側)に通じる入口部20c及び出口部20dを有している。
【0021】
採血回路22は、軟質のチューブで構成され、血液浄化器20の入口部20aに接続されている。採血回路22には、血液ポンプ40とドリップチャンバ41が設けられている。血液ポンプ40には、例えば正・逆回転可能なものが用いられている。血液ポンプ40には、例えば流量範囲が0〜600mL/min程度で、1回転当たり約10mL程度のチュービングポンプが用いられる。
【0022】
返血回路24は、例えば軟質のチューブで構成され、血液浄化器20の出口部20bに接続されている。返血回路24には、例えばドリップチャンバや圧力センサ(図示せず)が設けられている。
【0023】
採血部21と返血部23は、例えば互いに連結可能であり、血液回路10を閉鎖された循環回路にすることができる。
【0024】
透析液回路11は、例えば定量ポンプ70を備えている。定量ポンプ70は、一定容積の本体内で変位自在は隔壁80を有している。定量ポンプ70内は、隔壁80によって透析液供給室81と透析液排出室82に分けられている。
【0025】
透析液回路11は、例えば図示しない透析液供給源から定量ポンプ70の透析液供給室81に通じる第1の透析液供給回路90と、定量ポンプ70の透析液供給室81から血液浄化器20の二次側の入口部20cに通じる第2の透析液供給回路91を有している。また透析液回路11は、血液浄化器20の二次側の出口部20dから定量ポンプ70の透析液排出室82に通じる第1の透析液排出回路92と、定量ポンプ70の透析液排出室82から装置外部に通じる第2の透析液排出回路93を有している。これらの第1の透析液供給回路90、第2の透析液供給回路91、第1の透析液排出回路92及び第2の透析液排出回路93は、例えば軟質のチューブにより構成されている。
【0026】
第1の透析液供給回路90には、例えば上流側から順に透析液供給ポンプ100や開閉バルブ101が設けられている。透析液供給ポンプ100には、例えば流量範囲が0〜1500mL/min程度で吐出圧により流量変動するギアポンプが用いられる。
【0027】
第2の透析液供給回路91は、複数、例えば二つのフィルタ110、111を有する第1の流路112と、第1の流路112よりも少ない数の例えば一つのフィルタ110を有する第2の流路113を備えている。第1の流路112と第2の流路113の最上流のフィルタ110は共通している。すなわち、第1の流路112は、定量ポンプ70から第1のフィルタ110を通り、さらに第2のフィルタ111を通って血液浄化器20に通じており、第2の流路113は、定量ポンプ70から第1のフィルタ110を通り、直接血液浄化器20に通じている。
【0028】
フィルタ110、111は、例えば中空糸モジュールであり、透析液に含まれるエンドトキシンなどの不要物質を除去し、透析液を浄化できる。
【0029】
第1のフィルタ110と定量ポンプ70との間には、開閉バルブ114が設けられている。第1の流路112における第1のフィルタ110と血液浄化器20との間には、開閉バルブ115が設けられ、第2の流路113における第2のフィルタ111と血液浄化器20との間には、開閉バルブ116が設けられている。これらの開閉バルブ115、116が、切り替え装置を構成し、第1の流路112と第2の流路113を切り替え可能にしている。第1の流路112の開閉バルブ115の下流側と第2の流路113の開閉バルブ116の下流側は、合流し共通の流路を通じて血液浄化器20に接続されている。
【0030】
第1の透析液排出回路92には、例えば上流側から順に開閉バルブ120、排液ポンプ122及び開閉バルブ123が設けられている。
【0031】
第2の透析液排出回路93には、例えば開閉バルブ130が設けられている。
【0032】
透析液回路11は、第1の透析液排出回路92と第2の透析液排出回路93とを定量ポンプ70を介さずに直接接続する除水回路140を有している。除水回路140は、例えば除水ポンプ141を備えた第1の回路142と、開閉バルブ143を備えた第2の回路144を有している。第1の回路142と第2の回路144は、並列的に接続されている。除水ポンプ141には、例えば流量範囲が0〜90mL/min程度で、1ストローク当たり0.5〜1.0mL程度のピストンポンプが用いられる。
【0033】
補液・プライミング回路12は、第1の流路112における第2のフィルタ111と開閉バルブ115との間から採血回路22のドリップチャンバ41に通じる補液回路150と、補液回路150と第1の透析液排出回路92とを接続する接続回路151を備えている。補液回路150と接続回路151は、例えば軟質のチューブにより構成されている。
【0034】
補液回路150には、正・逆回転可能な補液ポンプ160が設けられている。補液ポンプ160には、例えば流量範囲が0〜600mL/min程度で、1回転当たり10mL程度のチュービングポンプが用いられる。また補液回路150には、開閉バルブ161が設けられている。
【0035】
接続回路151は、補液回路150の補液ポンプ160と開閉バルブ161との間から第1の透析液排出回路92に通じている。接続回路151には、開閉バルブ170が設けられている。本実施の形態では、開閉バルブ161と開閉バルブ170が、補液回路150の第1の流路112との接続と第1の透析液排出回路92との接続とを切り替え可能とし、切り替え装置を構成している。
【0036】
制御装置13は、例えば血液透析装置1の全体の動作を制御するコンピュータであり、例えばポンプ40、100、122、141、160、バルブ101、114、115、116、120、123、130、143、161、170等の動作を制御して、後述のプライミングや血液浄化処理を実行するように血液浄化装置1を作動させることができる。例えば制御装置13は、プログラムを実行して、血液浄化器20の血液浄化膜30の二次側に供給された透析液の一部または全部を血液浄化膜30を通じて一次側に供給する逆濾過処理を行う場合には、開閉バルブ115、116を制御して、第1の流路112を通じて透析液を血液浄化器20に供給し、逆濾過処理を行わない場合には、開閉バルブ115、116を制御して、第2の流路113を通じて透析液を血液浄化器20に供給するように、第1の流路112と第2の流路113を切り替える。本実施の形態では、例えば開閉バルブ115、116及び制御装置13が切り替え手段を構成している。
【0037】
次に、以上のように構成された血液浄化装置1で行われる、逆濾過処理であるプライミングについて説明する。
【0038】
プライミングでは、図2に示すように血液回路10において採血部21と返血部23が接続され、透析液回路11において開閉バルブ114、115、120、123、170が開放され、開閉バルブ101、116、130、143、161が閉鎖される。送液ポンプ122が作動し、補液ポンプ160が逆回転方向(第1の透析液排出回路92の方向)に作動し、血液ポンプ40が正回転方向(血液浄化器20の方向)に作動する。これにより、定量ポンプ70の透析液供給室81の透析液が、第2の透析液供給回路91の第1の流路112を通り、血液浄化器20の血液浄化膜30の二次側に供給される。すなわち、透析液は、第1のフィルタ110と第2のフィルタ111の2つのフィルタを通って血液浄化膜30の二次側に供給される。血液浄化膜30の二次側に供給された透析液は、一部が送液ポンプ122により直接第1の透析液排出回路92に流れ込み、定量ポンプ70の透析液排出室82に排出される。また、血液浄化膜30の二次側の残りの透析液は、補液ポンプ160により生じる血液回路10側の陰圧により、血液浄化膜30の一次側に流れ込み(逆濾過処理)、血液ポンプ40で分流され血液回路10内を流れる。血液回路10の透析液は、補液ポンプ160により補液回路150に流れ込み、接続回路151を通って第1の透析液排出回路92に流れ込み、定量ポンプ70の透析液排出室82に排出される。こうして、血液回路10、透析液回路11及び補液・プライミング回路12内が新しい透析液によって置換及び洗浄され、またこれらの回路内の気泡が除去される。
【0039】
次に、血液浄化装置1で行われる、逆濾過処理を行わない血液浄化処理について説明する。
【0040】
先ず、図3に示すように採血部21と返血部23に不図示の穿刺針が接続され、患者に穿刺される。次に、透析液回路11の開閉バルブ114、116、120、123、161が開放され、開閉バルブ101、115、130、143、151が閉鎖される。送液ポンプ122が作動し、補液ポンプ160が正回転方向(血液回路10の方向)に作動し、血液ポンプ40が正回転方向(血液浄化器20の方向)に作動する。これにより、血液回路10では、患者の血液が採血回路22を通じて血液浄化器20の血液浄化膜30の一次側に送られ、血液浄化膜30の一次側を通過した血液が返血回路24を通じて患者に戻される。
【0041】
透析液回路11では、定量ポンプ70の透析液供給室81の透析液が第2の透析液供給回路91の第2の流路113を通じて血液浄化器20の血液浄化膜30の二次側に供給される。すなわち、第2の透析液供給回路91の透析液は、第1のフィルタ110のみを通って血液浄化膜30の二次側に供給される。血液浄化膜30の二次側を通過した透析液は、第1の透析液排出回路92を通じて定量ポンプ70の透析液排出室82に排出される。なお、定量ポンプ70では、隔壁80が移動し、透析液供給室81の透析液がなくなると、開閉バルブ101、130が開放され、開閉バルブ114、123が閉鎖され、透析液供給ポンプ100により、新しい透析液が第1の透析液供給回路90を通じて透析液供給室81に補充される。この際、透析液排出室82の透析液は、第2の透析液排出回路93を通じて排出される。
【0042】
こうして、血液浄化器20では、血液浄化膜30の一次側に血液が流れ、二次側に透析液が流れることで、血液浄化膜30を介して血液中の老廃物が透析液側に排出され、血液が浄化される。
【0043】
また定量ポンプ70の一部の透析液は、第1の流路112側に流れ込み、第1のフィルタ110と第2のフィルタ111を通過し、補液ポンプ160により補液回路150を通って血液回路10に供給される。これにより、患者に補液が行われる。
【0044】
さらに除水回路140では、除水ポンプ141が作動し、開閉バルブ143が閉鎖され、第1の透析液排出回路92の一部の透析液が除水回路140を通じて定量ポンプ70を介さずに第2の透析液排出回路93に排出される。このときの除水回路140を通る透析液の量は、血液から除水される患者の除水量に応じて調整される。
【0045】
本実施の形態によれば、第2の透析液供給回路91は、二つのフィルタ110、111を備えた第1の流路112と、第1の流路112よりも少ない数の一つフィルタ110を備えた第2の流路113と、を有し、第1の流路112と第2の流路113を切り替え可能としたので、透析液が患者の体内に入る可能性がある血液回路10側に血液浄化器20の血液浄化膜30を介して透析液を供給する場合に、バックアップとなる複数のフィルタのある第1の流路112を用いて透析液を流し、透析液を血液浄化膜30を介して血液回路10側に供給しない場合に、フィルタの数が少なく圧力損失が小さい第2の流路113を用いて透析液を流すことができる。よって、第2の透析液供給回路91に単一故障を想定して複数のフィルタ110、111を配置しつつ、高流量の透析液を流すことができる。
【0046】
本実施の形態では、血液浄化装置1は、血液浄化器20の血液浄化膜30の二次側に供給された透析液の一部または全部を血液浄化膜30を通じて一次側に供給する逆濾過処理であるプライミング時には、第1の流路112を通じて透析液を血液浄化器20に供給し、逆濾過処理を行わない透析処理時には、第2の流路113を通じて透析液を血液浄化器20に供給するように、第1の流路112と第2の流路113を切り替える切り替え手段を有している。このため、フィルタのバックアップが必要な逆濾過処理と、フィルタのバックアップが不要な逆濾過処理を行わない場合とで、第1の流路112と第2の流路113の切り替えを適切に行うことができる。
【0047】
血液浄化装置1は、第1の流路112における複数のフィルタ110、111の下流側と血液回路10とを接続する補液回路150を有し、第2の透析液供給回路91は、透析液を第1の流路112を通じて補液回路150に供給可能に構成されているので、血液回路10に血液浄化膜30を介さずに補液として供給される透析液を複数のフィルタ110、111に通すことができる。よって、血液浄化膜30を介さずに血液回路10に供給される補液についても、単一故障を想定した回路を用いることができる。
【0048】
血液浄化装置1は、補液回路150と第1の透析液排出回路92とを接続する接続回路151を有し、補液回路150の第1の流路112との接続と第1の透析液排出回路92との接続とが切り替え可能に構成されているので、血液回路10の透析液を補液回路150を介して第1の透析液排出回路92に排出することができる。よって、逆濾過処理を用いたプライミングを適切に行うことができる。
【0049】
また、第1の流路112と第2の流路113の第1のフィルタ110が共通しているので、第2の透析液供給回路91に二つの流路112、113を設けても、フィルタの数の増加を抑制できる。
【0050】
また、共通のフィルタ110が他のフィルタ111よりも上流側に設けられているので、例えば第1の流路112と第2の流路113に透析液を同時に流し、それぞれを流れた透析液を用途に応じて別の回路に流すことができる。つまり、本実施の形態のように、透析処理時に、一つのフィルタを通過した透析液を血液浄化器20に供給しつつ、二つのフィルタを通過した透析液を補液として血液回路10に供給することができる。
【0051】
本実施の形態におけるプライミングでは、第2の透析液供給回路91において透析液が通過するフィルタの数(二つ)が、血液浄化処理時の第2の透析液供給回路91において透析液が通過するフィルタの数(一つ)よりも多くなっているので、逆濾過処理であるプライミングにおいて血液回路10に供給される透析液についてフィルタの単一故障を保障しつつ、血液浄化処理においてフィルタの数が少なく高流量の透析液を確保することができる。
【0052】
上記実施の形態で記載した血液浄化装置1において、最も上流のフィルタに供給される透析液の流量が700mL/min未満の場合には、透析液を第1の流路112に流通させ、前記流量が700mL/min以上の場合には、透析液を第2の流路113を流通させるようにしてもよい。
【0053】
例えば血液浄化処理において、第1のフィルタ110に供給される透析液の流量が700mL/min以上の場合には、上述の図3で示したように透析液回路11の開閉バルブ114、116、120、123、161が開放され、開閉バルブ115、170が閉鎖された状態で、送液ポンプ122、補液ポンプ160が作動する。これにより、定量ポンプ70の透析液供給室81の透析液が第2の透析液供給回路91の第2の流路113を通じて血液浄化器20に供給される。また、一部の透析液は、補液回路150を通じて血液回路10に補液される。かかる例において、血液浄化器20に供給される透析液は、第2の流路113を流れるので、流量低下を起こさずに所望の高流量の透析液が確保される。
【0054】
一方、図4に示すように第1のフィルタ110に供給される透析液の流量が700mL/min未満の場合には、透析液回路11の開閉バルブ114、115、120、123、161が開放され、開閉バルブ116、170が閉鎖された状態で、送液ポンプ122、補液ポンプ160が作動する。これにより、定量ポンプ70の透析液供給室81の透析液が第2の透析液供給回路91の第1の流路112を通じて血液浄化器20に供給される。また、一部の透析液は、補液回路150を通じて血液回路10に補液される。かかる例において、高流量が要求されていない透析液は、第1の流路112を流れるので、フィルタのバックアップの流路に透析液を流すことができる。
【0055】
以上の実施の形態では、第1の流路112のフィルタの数が二つ、第2の流路113のフィルタの数が一つであったが、第1の流路のフィルタの数が第2の流路のフィルタの数よりも多ければ、それらの数は任意に選択できる。また、第1の流路と第2の流路で、第1のフィルタを共用していたが、図5に示すように第2の透析液供給回路91が、フィルタを共用しない並列的な第1の流路112及び第2の流路113を備えていてもよい。
【0056】
以上の実施の形態では、プライミングにおいて逆濾過処理を行っていたが、他の処理で逆濾過処理を行い、かかる場合に透析液を第1の流路112を通じて血液浄化器20に供給してもよい。この逆濾過処理を行う他の処理は、例えば第2の透析液供給回路91から血液浄化膜30を通じて血液回路10に補液を行うものであってもよい。また、本発明において、逆濾過処理を行わない場合であっても、第1の流路112を用いて透析液を血液浄化器20に供給する場合があってもよい。
【0057】
以上の実施の形態で記載した血液浄化装置1の回路構成及び装置構成は、これに限られず、他の構成を有するものであってもよい。血液浄化装置1は、血液透析を行う装置のみならず、持続緩除式血液濾過などを行う装置に適用してもよい。
【0058】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、透析液供給回路に単一故障を想定して複数のフィルタを配置しつつ、高流量の透析液を流す際に有用である。
【符号の説明】
【0060】
1 血液浄化装置
10 血液回路
11 透析液回路
12 補液・プライミング回路
13 制御装置
20 血液浄化器
30 血液浄化膜
40 血液ポンプ
70 定量ポンプ
91 第2の透析液供給回路
92 第1の透析液排出回路
110 第1のフィルタ
111 第2のフィルタ
112 第1の流路
113 第2の流路
115、116 開閉バルブ
150 補液回路
151 接続回路
160 補液ポンプ
図1
図2
図3
図4
図5