(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-74001(P2016-74001A)
(43)【公開日】2016年5月12日
(54)【発明の名称】パイプ材のレーザ切断加工方法及びスパッタ付着防止治具
(51)【国際特許分類】
B23K 26/38 20140101AFI20160408BHJP
B23K 26/70 20140101ALI20160408BHJP
【FI】
B23K26/38 B
B23K26/70
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-206226(P2014-206226)
(22)【出願日】2014年10月7日
(71)【出願人】
【識別番号】390014672
【氏名又は名称】株式会社アマダホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100100712
【弁理士】
【氏名又は名称】岩▲崎▼ 幸邦
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 治也
【テーマコード(参考)】
4E168
【Fターム(参考)】
4E168AD07
4E168CB07
4E168HA05
4E168HA09
(57)【要約】
【課題】内面にスパッタ等が付着することのないパイプ材のレーザ切断加工方法及びスパッタ付着防止治具を提供する。
【解決手段】パイプ材のレーザ切断加工方法であって、パイプ材P1において対向した内面F2へのレーザビームLBの照射を防止し、又は内面F2へのスパッタの付着を抑制するために、前記パイプ材P1において対向する内面F2の間に位置し、かつ前記パイプ材P1の内部空間を複数の空間11A〜11Dに区画すると共に前記パイプ材P1の内部との接触部を先鋭に形成してあるスパッタ付着防止治具1を、前記パイプ材P1においてレーザ加工を行う範囲の全長に亘ってパイプ材内に配置し、前記スパッタ付着防止治具1を長手方向に移動することなく前記パイプ材P1をレーザ加工ヘッド9に対して相対的に回動してレーザ切断加工を行う。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パイプ材のレーザ切断加工方法であって、パイプ材において対向した内面へのレーザビームの照射を防止し、又は内面へのスパッタの付着を抑制するために、前記パイプ材において対向する内面の間に位置し、かつ前記パイプ材の内部空間を複数の空間に区画すると共に前記パイプ材の内部との接触部を先鋭に形成してあるスパッタ付着防止治具を、前記パイプ材においてレーザ加工を行う範囲の全長に亘ってパイプ材内に配置し、前記スパッタ付着防止治具を長手方向に移動することなく前記パイプ材をレーザ加工ヘッドに対して相対的に回動してレーザ切断加工を行うことを特徴とするパイプ材のレーザ切断加工方法。
【請求項2】
レーザ切断加工を行うパイプ材内に配置されるスパッタ付着防止治具であって、前記パイプ材において対向する内面の間に配置されて前記パイプ材の内部空間を複数の空間に区画すると共に前記パイプ材内の内部との接触部を先鋭に形成してあることを特徴とするスパッタ付着防止治具。
【請求項3】
請求項2に記載のスパッタ付着防止治具において、当該スパッタ付着防止治具は、前記パイプ材の内部と接触する両側縁部に、先端部を先鋭に形成した複数の突出部を適宜間隔に備えた複数枚の適宜形状の板材を組合せた構成であることを特徴とするスパッタ付着防止治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば丸パイプや角パイプなどのパイプ材のレーザ切断加工方法及びそのレーザ切断加工方法に用いるスパッタ付着防止治具に係り、さらに詳細には、パイプ材において対向した内面へのレーザ光の照射を防止でき、また対向した内面へのスパッタの付着を抑制することができるパイプ材のレーザ切断加工方法及びスパッタ付着防止治具に関する。
【背景技術】
【0002】
丸パイプや角パイプなどのパイプ材のレーザ切断加工を行うとき、パイプ材の外表面から内部へ貫通したレーザビームがレーザ加工位置に対向した内面へ照射されることがあると共に、レーザ加工時に生じたスパッタが対向した前記内面に付着することがある。そこで、パイプ材が丸パイプである場合には、レーザ切断加工の対象となるパイプ材内に小径のパイプ材を配置することが行われている(例えば特許文献1,2参照)。
【0003】
また、角パイプの内部に、当該角パイプにおける角部内側へ冷却媒体を噴出する冷却媒体供給ヘッドを角パイプの長手方向へ移動自在に挿入することも提案されている(例えば特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−237679号公報
【特許文献2】特開平9−155584号公報
【特許文献3】特開2010−75959号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1の
図1に示されているように、レーザ切断加工を行う丸パイプ内に小径のパイプを単に配置した構成においては、小径のパイプ外周面にスパッタが付着し、レーザ切断加工対象の丸パイプに対して相対的に転動回転するものであるから、小径のパイプ外周に不均一に付着したスパッタに起因して、丸パイプの回転時に振動を生じ易い、という問題がある。また、例えば矩形状の角パイプに対しては対応が難しいものである。
【0006】
また、特許文献2に記載されているように、レーザ切断加工される丸パイプ内にスパッタ付着防止用部材を挿通し、このスパッタ付着防止用部材の両端部を支持部材によって支持する構成においては、パイプ材が短い場合であっても長いスパッタ付着防止用部材が必要であると共に支持部材が必要であり、構成の簡素化を図ることが難しいものである。また、例えば矩形状の角パイプに対しては対応が難しいものである。
【0007】
特許文献3に記載の構成においては、冷却媒体を噴出するために、角パイプ内に長手方向に移動自在に挿入した冷却媒体供給ヘッドとホースとをロータリージョイントでもって接続する必要があり、構成の簡素化を図る上において問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前述のごとき問題に鑑みてなされたもので、パイプ材のレーザ切断加工方法であって、パイプ材において対向した内面へのレーザビームの照射を防止し、又は内面へのスパッタの付着を抑制するために、前記パイプ材において対向する内面の間に位置し、かつ前記パイプ材の内部空間を複数の空間に区画すると共に前記パイプ材の内部との接触部を先鋭に形成してあるスパッタ付着防止治具を、前記パイプ材においてレーザ加工を行う範囲の全長に亘ってパイプ材内に配置し、前記スパッタ付着防止治具を長手方向に移動することなく前記パイプ材をレーザ加工ヘッドに対して相対的に回動してレーザ切断加工を行うことを特徴とするものである。
【0009】
また、レーザ切断加工を行うパイプ材内に配置されるスパッタ付着防止治具であって、前記パイプ材において対向する内面の間に配置されて前記パイプ材の内部空間を複数の空間に区画すると共に前記パイプ材内の内部との接触部を先鋭に形成してあることを特徴とするものである。
【0010】
また、前記スパッタ付着防止治具において、当該スパッタ付着防止治具は、前記パイプ材の内部と接触する両側縁部に、先端部を先鋭に形成した複数の突出部を適宜間隔に備えた複数枚の適宜形状の板材を組合せた構成であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、パイプ材における内部空間を複数の空間に区画すると共にパイプ材の対向した内面間に位置し、かつパイプ材の内部と接触する接触部を先鋭に形成したスパッタ付着防止具を、パイプ材内に配置してレーザ切断加工を行うものである。したがって、パイプ材の外表面から内部へ貫通したレーザビームが、レーザ加工位置に対向した内面へ照射されることが防止されると共に、パイプ材内へ飛散したスパッタがレーザ加工位置に対向した内面に付着することが防止できる。
【0012】
また、スパッタ付着防止具がパイプ材の内部と接触する部分は先鋭に形成してあるので、レーザ加工時に、前記スパッタ付着防止具がパイプ材内に溶着するようなことはないものである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態に係るスパッタ付着防止治具の構成を示す斜視説明図である。
【
図2】スパッタ付着防止治具を構成する板材の説明図である。
【
図3】パイプ材内にスパッタ付着防止治具を配置した場合の説明図である。
【
図4】パイプ材内に別構成のスパッタ付着防止治具を配置した場合の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を用いて本発明の実施形態に係るスパッタ付着防止治具について説明するに、スパッタ付着防止治具1は、
図1に示すように、複数の板材3A,3BをX字形状に組合せて構成してある。より詳細には、前記板材3A,3Bは同一形状であって、
図2に示すように、当該板材3A,3Bの幅方向の中央部に、一端側から長手方向の中央部に至るスリット5が形成してある。そして、
図1に示すように、互の板材3A,3Bのスリット5が噛合うように咬合することによって、X字形状に組合せてある。前記スパッタ付着防止治具1をパイプ材(
図1,2には図示省略)内へ配置したとき、パイプ材の内部と接触する両側部(長手方向の両側部)の接触部7は、
図1,2に示すように、三角形状に形成してあって、その頂部は先鋭な形状に形成してある。
【0015】
したがって、
図3(A)に示すように、角パイプP1内に前記スパッタ付着防止具1を全長に亘って配置すると、スパッタ付着防止治具1における各板材3A,3Bの長手方向の両側は、パイプ材P1の各角部の内側に接触することになる。この際、各板材3A,3Bにおいてパイプ材P1の内側に接触する部分は三角形状の頂部であって先鋭に形成してある。したがって、各板材3A,3Bにおいて角パイプP1における角部の内側に接触する部分は、前記三角形状の頂部であって、各板材3A,3Bにおける板厚方向の両側部、すなわち角部となるものである。よって、前記スパッタ付着防止治具1は、パイプ材P1の内部と点接触となるものである。なお、
図3(B)に示すように、丸パイプP2内にスパッタ付着防止治具1を全長に亘って配置した場合にも、前述と同様に、スパッタ付着防止治具1はパイプ材P2の内部と点接触することになるものである。
【0016】
したがって、レーザ加工機(図示省略)に回転自在に備えたワーククランプ(図示省略)によって、例えばパイプ材P1を挟持し、レーザ加工ヘッド9に対して回転し、かつパイプ材P1に対してレーザ加工ヘッド9を相対的に長手方向へ移動しつつレーザビームLBをパイプ材P1の外周面に照射することにより、パイプ材P1のレーザ切断加工が行われることになる。前述のように、パイプ材P1のレーザ切断加工を行うとき、パイプ材P1内にはスパッタが飛散し、かつレーザビームLBが内部へ照射されることになる。
【0017】
ここで、パイプ材P1内にスパッタ付着防止具1が配置されてない場合には、パイプ材P1の面F1のレーザ切断加工時に内部に飛散されたスパッタは、レーザ加工位置に対向した内面F2に付着する傾向にある。また、前記面F1を貫通したレーザビームLBは前記内面F2に照射される傾向にある。したがって、パイプ材P1を回転して前記内面F2側のレーザ切断加工を行う場合には、レーザ切断精度が低下する傾向にある。
【0018】
ところが、本実施形態においては、前述したように、X字形状に板材3A,3Bを組合せたスパッタ付着防止治具1をパイプ材P1内に配置するものである。上記スパッタ付着防止治具1は、
図3(A),(B)より明らかなように、パイプ材P1において対向する内面の間に配置されるものである。そして、スパッタ付着防止治具1は、パイプ材P1の内部に配置されることにより、パイプ材P1の内部空間を複数の空間に区画する作用をなすものである。
【0019】
したがって、パイプ材P1内にスパッタ付着防止治具1を配置すると、パイプ材P1の内部空間は、複数の空間11A,11B,11C,11Dに区画されるものである。よって、前記面F1のレーザ切断加工時に内部へ飛散するスパッタ及び面F1を貫通したレーザビームLBは区画された空間11Aにおいて受け止められることになるために、対向した内面F2にスパッタが付着することや、貫通したレーザビームLBが照射されることがないものである。
【0020】
前述のごとく、レーザ加工ヘッド9に対してパイプ材P1を相対的に回転してパイプ材P1のレーザ切断加工を行うとき、前記スパッタ付着防止治具1とパイプ材P1の内部との接触位置をレーザ切断加工することがある。この際、スパッタ付着防止治具1がパイプ材P1の内部と点接触しているものであるから、先鋭な接触部がパイプ材P1の内部と接触した部分は、パイプ材P1のレーザ切断加工と同時に溶融除去されて、接触が解除されることになる。したがって、前記接触部分のレーザ切断加工時に生じたスパッタや溶融金属は周辺に移動し易いものである。換言すれば、スパッタ付着防止治具1がパイプ材1の内部に溶着されるようなことはないものである。なお、丸パイプP2の場合においても同様の効果を奏し得るものである。
【0021】
なお、前記スパッタ付着防止治具1は、パイプ材内において、対向する内面の間に位置し、かつパイプ材Pの内部空間を複数の空間に区画する機能を有し、さらに、パイプ材の内面と接触する接触部7を先鋭な形状に形成してあればよいものである。したがって、
図4(A)に示すように、角パイプP1の対角線に沿って1枚の板材3Aを配置することも可能である。また、丸パイプP2の場合にも、1枚の板材3Aのみを配置することも可能である。
【0022】
さらに、複数枚の板材の組合せとしては、
図4(C)に示すように、大略C形状に形成した2枚の板材3Cを互に反対方向に向けて組合せた構成とすることも可能である。
【符号の説明】
【0023】
1 スパッタ付着防止治具
3A,3B 板材
5 スリット
7 接触部
9 レーザ加工ヘッド
11A,11B,11C,11D 空間