【解決手段】アキューム装置20は、フィルム150が巻き掛けられるローラ22と、ローラ22の両端部をそれぞれ支持する一対のベース部とを備え、ベース部とともにローラ22が移動されることによりフィルム150の搬送経路長を変更することによってフィルム150を貯留または放出するものである。そして、ローラ22は、ベース部に対して揺動可能に設けられ、フィルム150に張力を印加するように構成されている。
フィルムが巻き掛けられるローラと、前記ローラの両端部をそれぞれ支持する一対のベース部とを備え、前記ベース部とともに前記ローラが移動されることにより前記フィルムの搬送経路長を変更することによって前記フィルムを貯留または放出するアキューム装置であって、
前記ローラは、前記ベース部に対して揺動可能に設けられ、前記フィルムに張力を印加するように構成されていることを特徴とするアキューム装置。
【背景技術】
【0002】
従来、フィルムなどの被搬送物の搬送経路に設けられるアキューム装置が知られている。アキューム装置は、たとえば、上流側から供給される被搬送物を巻き取る巻芯の交換時に、その上流側から供給される被搬送物を一時的に貯留するように構成されている。これにより、上流側から供給される被搬送物の搬送を停止することなく、巻芯を交換することが可能になる。具体的には、アキューム装置は、被搬送物が巻き掛けられるローラを備え、そのローラが移動されることにより被搬送物の搬送経路長を変更することによって被搬送物を貯留または放出するようになっている。
【0003】
また、従来では、被搬送物の搬送経路に設けられるダンサー装置も知られている。ダンサー装置は、たとえば、上流側から供給され、巻芯に巻き取られる被搬送物の張力を制御するために設けられている。具体的には、ダンサー装置は、被搬送物が巻き掛けられるローラと、そのローラを揺動可能に支持するアームと、そのアームに所定の圧力を加える加圧装置とを備える。そして、巻芯の回転速度をローラの位置に応じて補正することにより、ローラによって印加される被搬送物の張力を一定に保つことが可能である。
【0004】
そして、アキューム装置とダンサー装置とを備える供給装置が特許文献1に開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1のように、アキューム装置に加えてダンサー装置が設けられている場合には、被搬送物の搬送経路が長くなるので、張力の制御が不安定になりやすく、また、ローラの数が増加するので、メカロス(摩擦抵抗)が増加するという問題点がある。
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、張力制御の安定化を図るとともに、メカロスを低減することが可能なアキューム装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によるアキューム装置は、フィルムが巻き掛けられるローラと、ローラの両端部をそれぞれ支持する一対のベース部とを備え、ベース部とともにローラが移動されることによりフィルムの搬送経路長を変更することによってフィルムを貯留または放出するものである。そして、ローラは、ベース部に対して揺動可能に設けられ、フィルムに張力を印加するように構成されている。
【0009】
このように構成することによって、アキューム用のローラをダンサーローラとして機能させることにより、ダンサーローラを別途設ける必要がない。これにより、専用のダンサーローラが設けられる場合に比べて、フィルムの搬送経路が短くなるので、フィルムの張力制御の安定化を図るとともに、ローラの数が減少するので、メカロスを低減することができる。
【0010】
上記アキューム装置において、好ましくは、一対のベース部にそれぞれ設けられる一対のリンク機構を備え、リンク機構は、ベース部に対してローラを揺動可能に支持するように構成され、ベース部は、垂直方向に昇降するように構成されており、ローラの下半分にフィルムが接触され、一対のリンク機構の間には、一対のリンク機構を連結する連結部材が設けられ、連結部材は、ローラの上方に配置されている。
【0011】
この場合において、好ましくは、一対のベース部をそれぞれ支持する一対のシャフトを備え、シャフトは、垂直方向に昇降するように構成されるとともに、ベース部が下端に設けられている。
【発明の効果】
【0012】
本発明のアキューム装置によれば、張力制御の安定化を図るとともに、メカロスを低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0015】
−構成−
まず、
図1〜
図4を参照して、本実施形態による巻取装置100の構成について説明する。
【0016】
巻取装置100は、上流側から供給される帯状のフィルム150を巻き取るように構成されている。具体的には、巻取装置100は、
図1および
図2に示すように、巻芯10と、アキューム装置20と、搬送ローラ30とを備えている。
【0017】
巻芯10は、上流側から供給されるフィルム150を巻き取るために設けられている。この巻芯10は、駆動回転するように構成され、タッチローラ11によりフィルム150が押し付けられている。また、巻芯10は、たとえばターレット機構(図示省略)に着脱可能に装着されている。そして、巻芯10によるフィルム150の巻き取りを停止した状態で、巻き取りを行っていた巻芯10を新しい巻芯10に交換可能になっている。
【0018】
アキューム装置20は、巻芯10の上流側に配置され、巻芯10の交換時にフィルム150を一時的に貯留するために設けられている。これにより、上流側から供給されるフィルム150の搬送を停止することなく、巻芯10を交換することが可能である。このアキューム装置20は、フィルム150の搬送経路長を変更することにより、フィルム150を貯留または放出するようになっている。
【0019】
アキューム装置20は、ガイドローラ21aおよび21bと、それらの間に配置されるローラ22とを含んでいる。ガイドローラ21a、21bおよびローラ22は、従動回転するように構成されるとともに、フィルム150が巻き掛けられている。
【0020】
ガイドローラ21aは、巻芯10とローラ22との間に配置され、ガイドローラ21bは、搬送ローラ30とローラ22との間に配置されている。なお、ガイドローラ21aおよび21bは、所定の位置に固定的に配置されている。
【0021】
ローラ22は、垂直方向に昇降可能に設けられており、ガイドローラ21aおよび21bの間の搬送経路長を変更するために設けられている。また、ローラ22は、ガイドローラ21aおよび21bよりも下方に配置されており、ローラ22の下半分にフィルム150が接触されている。
【0022】
また、アキューム装置20は、ローラ22の軸方向の端部を支持するリンク機構23と、リンク機構23が設けられるベース部24(
図3参照)と、ベース部24を昇降させる昇降機構25(
図3参照)とを含んでいる。リンク機構23、ベース部24および昇降機構25は、ローラ22の軸方向の両端にそれぞれ設けられている。すなわち、一対のリンク機構23、ベース部24および昇降機構25がローラ22を挟んで対向するように配置されている。なお、
図1および
図2では、見やすさを考慮して、一対のリンク機構23のうちの一方のみを示すとともに、ベース部24および昇降機構25の図示を省略している。
【0023】
リンク機構23は、ベース部24に対してローラ22を揺動可能に支持するように構成され、ローラ22をダンサーローラとして機能させるために設けられている。このリンク機構23は、ベース部24に設けられたアーム23aおよび23bと、アーム23aおよび23bを連結するロッド23cとを有する。
【0024】
アーム23aは、回動軸C1を中心にして回動可能に設けられ、ローラ22の端部を回転可能に支持するように構成されている。なお、回動軸C1およびローラ22はほぼ同じ高さ位置に配置されており、アーム23aによって支持されるローラ22がほぼ上下方向に揺動可能になっている。
【0025】
アーム23bは、アーム23aの上方に配置され、回動軸C2を中心にして回動可能に設けられている。このアーム23bには、バランスウェイト26が設けられるとともに、加圧装置27が設けられている。なお、バランスウェイト26および加圧装置27は、一対のアーム23bの両方に設けられていてもよいし、一対のアーム23bのいずれか一方のみに設けられていてもよい。
【0026】
バランスウェイト26は、ローラ22の荷重を打ち消すために設けられている。すなわち、バランスウェイト26は、ローラ22の荷重によってフィルム150に張力が印加されるのを抑制するために設けられている。このバランスウェイト26は、回動軸C2に対してロッド23cが連結される側とは反対側に配置されている。
【0027】
加圧装置27は、たとえばエアシリンダであり、ローラ22によってフィルム150に張力を印加するために設けられている。この加圧装置27は、回動軸C2に対してロッド23cが連結される側に配置されている。加圧装置27の出力は、アーム23b、ロッド23cおよびアーム23aを介してローラ22に伝達され、そのローラ22によりフィルム150に張力が印加されるようになっている。
【0028】
また、一対のアーム23bの間には、一対のアーム23bを連結する連結部材28が設けられている。これにより、一対のリンク機構23が同期した状態で連動するようになっている。連結部材28は、フィルム150の幅方向においてそのフィルム150と対応する位置に配置されるとともに、ローラ22と対応する位置の上方に配置されている。このため、連結部材28は、ガイドローラ21aおよびローラ22間のフィルム150と、ガイドローラ21bおよびローラ22間のフィルム150との間に挟み込まれるように配置されている。
【0029】
ベース部24は、リンク機構23を介してローラ22を支持するとともに、垂直方向に昇降可能に設けられている。このベース部24が昇降されることにより、フィルム150の搬送経路長が変更されるようになっている。
【0030】
昇降機構25は、
図3および
図4に示すように、ベース部24を支持するシャフト25aと、シャフト25aを垂直方向に昇降させるための回転部材25bおよびモータ25cとを有する。
【0031】
シャフト25aには、下端にベース部24が設けられている。シャフト25aの外周面には、螺旋状の溝(図示省略)が形成されている。回転部材25bは、サイドフレーム40の内側における所定の位置に固定的に配置されており、その位置でモータ25cにより回転されるようになっている。回転部材25bは、シャフト25aが挿入される挿入孔251bを有する。挿入孔251bの内周面には、螺旋状の溝(図示省略)が形成されており、挿入孔251bの内周面とシャフト25aの外周面とが螺合している。これにより、モータ25cにより回転部材25bが回転された場合に、シャフト25aが垂直方向に昇降されるようになっている。
【0032】
搬送ローラ30は、
図1および
図2に示すように、アキューム装置20の上流側に配置され、駆動回転するように構成されている。この搬送ローラ30には、ピンチローラ31によってフィルム150が押し付けられている。そして、搬送ローラ30は、上流側から供給されるフィルム150を、アキューム装置20を介して巻芯10に送るようになっている。
【0033】
−動作−
次に、
図1および
図2を参照して、本実施形態による巻取装置100の動作について説明する。
【0034】
まず、
図1に示すように、巻取装置100には、上流側からフィルム150が供給される。そして、定常運転時には、そのフィルム150は、搬送ローラ30によりアキューム装置20を介して巻芯10に送られ、巻芯10により巻き取られる。なお、搬送ローラ30および巻芯10は駆動回転される。
【0035】
ここで、加圧装置27によりローラ22を介してフィルム150に所定の張力が印加されている。そして、巻芯10の回転速度は、搬送ローラ30の回転速度に応じて設定されるとともに、ローラ22の位置に応じてフィードバック制御される。具体的には、入出力速度差(搬送ローラ30の表面速度と巻芯10に巻き取られた巻径の表面速度との差)が発生し、ローラ22が所定の位置から変位した場合に、そのローラ22の変位を打ち消すように、巻芯10の回転速度が制御される。これにより、ローラ22がほぼ所定の位置に維持されるとともに、ローラ22によってフィルム150に印加される張力を一定に保つことが可能である。
【0036】
次に、巻芯10の交換時には、巻芯10によるフィルム150の巻き取りが停止される。そして、
図2に示すように、アキューム装置20のローラ22が下方に移動することにより、上流側から供給されるフィルム150がアキューム装置20に貯留される。これにより、巻芯10によるフィルム150の巻き取りが停止されても、上流側から供給されるフィルム150の搬送速度を一定のままにすることが可能である。なお、ローラ22(ベース部24)の下方への移動速度は、たとえば、搬送ローラ30の回転速度に基づいて設定されるとともに、ローラ22の位置に応じて補正される。これにより、供給されるフィルム150の長さ分だけ搬送経路が長くなることによりフィルム150が貯留されるとともに、フィルム150に印加される張力が一定に保たれる。
【0037】
その後、巻き取りを行っていた巻芯10が新しい巻芯10に交換されると、その新しい巻芯10によりフィルム150が巻き取られる。なお、新しい巻芯10による巻き取りの再開後には、その巻芯10の回転速度(巻取速度)が定常運転時に比べて高く設定されることにより、アキューム装置20に貯留されていたフィルム150が放出される。このとき、アキューム装置20では、ローラ22が上方に移動される。
【0038】
そして、貯留されていたフィルム150が全て放出されると、定常運転に移行される。すなわち、新しい巻芯10の回転速度は、搬送ローラ30の回転速度をローラ22の位置で補正した値に設定される。
【0039】
−効果−
本実施形態では、上記のように、アキューム用のローラ22をダンサーローラとして機能させることによって、ダンサーローラを別途設ける必要がない。これにより、専用のダンサーローラが設けられる場合に比べて、フィルム150の搬送経路が短くなるので、フィルム150の張力制御の安定化を図るとともに、ローラの数が減少するので、メカロスを低減することができる。
【0040】
また、本実施形態では、一対のリンク機構23を連結するための連結部材28を、ローラ22と対応する位置の上方に配置することによって、フィルム150を各ローラに架け渡す架渡作業を行う際に、ローラ22と連結部材28との間にフィルム150を通す必要がないので、架渡作業を行いやすくすることができる。
【0041】
また、本実施形態では、垂直方向に昇降するシャフト25aの下端にベース部24を設けることによって、ローラ22とともにシャフト25aが昇降するので、ローラ22にフィルム150を架け渡すときに、シャフト25aが邪魔になりにくいので、架渡作業を行いやすくすることができる。これに対して、ローラが固定されたレールに沿って昇降される場合には、ローラにフィルムを架け渡すときに、そのレールが邪魔になりやすいという不都合がある。
【0042】
また、本実施形態では、バランスウェイト26を設けることによって、ローラ22が昇降したときに、慣性によりローラ22が揺動するのを抑制することができる。このため、フィルム150に印加される張力が変動するのを抑制することができる。
【0043】
−他の実施形態−
なお、今回開示した実施形態は、すべての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。したがって、本発明の技術的範囲は、上記した実施形態のみによって解釈されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、本発明の技術的範囲には、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0044】
たとえば、本実施形態では、巻芯10の交換時にフィルム150を一時的に貯留するアキューム装置20に本発明を適用する例を示したが、これに限らず、原反の交換時にフィルムを一時的に放出するアキューム装置に本発明を適用してもよい。また、搬送経路内においてフィルムが間欠搬送される場合に、その上流側または下流側に設置されるアキューム装置に本発明を適用してもよい。
【0045】
また、本実施形態では、アキューム装置20に昇降するローラ22が1つだけ設けられる例を示したが、これに限らず、アキューム装置に昇降するローラが複数設けられていてもよい。
【0046】
また、本実施形態では、ローラ22の荷重を打ち消すためにバランスウェイト26が設けられる例を示したが、これに限らず、ローラの荷重を打ち消すためにエアシリンダなどの加圧装置(図示省略)が設けられていてもよい。
【0047】
また、本実施形態では、一対のアーム23bを連結する連結部材28が設けられる例を示したが、これに限らず、一対のロッド23cを連結する連結部材(図示省略)が設けられていてもよい。