【課題を解決するための手段】
【0011】
〔発明の開示〕
本発明者らは、ヒトLAG−3またはその誘導体を、転移性乳癌(MBC)または転移性腎細胞癌(MRCC)などの極めて悪性の腫瘍を有する患者に接種したところ、ヒトLAG−3またはその誘導体が単球依存性の強力な免疫力を生じさせるという結果を、全く予想外に、見出した。
【0012】
上記のように生じた免疫は、血中の単球数の著しい増加によって確認できる。
【0013】
上記の結果は、免疫療法または化学免疫療法を受けている患者に対して、LAG−3またはその誘導体を複数回にわたって投与することによって得られた。
【0014】
単球への結合および単球の活性に続いて単球が増加することは予測し得ないため、上記の結果は驚くべきものである。単球は造血細胞が分化した結果のものであり、増殖することはできない。そして、単球は、寿命がくるまで、単球として血中に存在するか、あるいは、他のサイトカインの影響を受けながらマクロファージまたは樹状細胞へ分化する。つまり、以下の推測に限定されるものではないが、作用機序として、骨髄中の造血前駆細胞(前単球段階よりも前の状態)へと伝達される増殖シグナル、成熟し循環している単球の半減期もしくは滞在時間の増加が考えられる。
【0015】
すなわち、本発明は、単球数の増加を促す感染症治療用または癌治療用の医薬を製造するための、単球媒介免疫応答を引き起こす組換えLAG−3タンパク質またはその誘導体の使用に関する。
【0016】
本発明においては、「LAG−3の誘導体」とは、MHCクラスII分子に結合するというLAG−3の特性を有していればよく、LAG−3の変異体、変種および断片が含まれる。
【0017】
つまり、以下のようなLAG−3の形態が用いられ得る:
・全LAG−3タンパク質、
・LAG−3の可溶性ポリペプチド断片であり、4つの免疫グロブリン細胞外ドメインのうち少なくとも1つを有するLAG−3の可溶性ポリペプチド断片。すなわち、フランス特許出願番号FR9000126に開示されているLAG−3配列の23番目のアミノ酸から448番目のアミノ酸までの細胞外領域を含んでいるLAG−3の可溶性部分、
・第1および第2のドメインの実質的に全てからなるLAG−3断片;
・第1および第2のドメインの実質的に全てもしくは4つのドメインの全てからなるLAG−3断片(例えば、国際公開WO95/30750)、
・D1およびD2細胞外ドメインを含み、以下の置換からなる可溶性LAG−3の変異体またはその断片:
*以下のいずれかの位置におけるアミノ酸の置換:
ARGがGLUに置換されている73位のアミノ酸、
ARGがALAまたはGLUに置換されている75位のアミノ酸、
ARGがGLUに置換されている76位のアミノ酸、
もしくはこれらのうち2つ以上の組合せによるアミノ酸の置換、
*以下のいずれかの位置におけるアミノ酸の置換:
ASPがALAに置換されている30位のアミノ酸、
HISがALAに置換されている56位のアミノ酸、
TYFがPHEに置換されている77位のアミノ酸、
ARGがALAに置換されている88位のアミノ酸、
ARGがALAに置換されている103位のアミノ酸、
ASPがGLUに置換されている109位のアミノ酸、
ARGがALAに置換されている115位のアミノ酸、
もしくは54位のアミノ酸と66位のアミノ酸の間の領域の欠失、
もしくはこれらのうち2つ以上の組合せによるアミノ酸の置換。
【0018】
これらの突然変異体は、HUARD et. al. (Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 11: 5744-5749, 1997)に開示されている。
・D1、D2、D3を含有する可溶性52kDaタンパク質を含んでなるLAG−3の生理学的変種。
・ヒトIgG1 Fcに融合したhLAG−3の細胞外ドメインをコードするプラスミドを形質移入したチャイニーズハムスター卵巣細胞において生成される200kDA二量体である、組換え可溶性ヒトLAG−3lg融合タンパク質(IMP321)。
【0019】
本発明において、「医薬」とは、組換えLAG−3タンパク質またはその誘導体の効果的な複数回投与単位を意味する。
【0020】
本発明において、「組換えLAG−3タンパク質またはその誘導体の効果的な複数回投与単位」とは、少なくとも12週間、好ましくは少なくとも24週間にわたって1週間〜数週間ごとに1回、13日±2日の無投与期間をあけて、組換えLAG−3タンパク質またはその誘導体の1回の投与単位を投与できるような調剤を意味している。効果的には、投与は、2週間おきのスケジュールである。
【0021】
本発明において、「組換えLAG−3タンパク質またはその誘導体の1回の投与単位」とは、組換えLAG−3タンパク質またはその誘導体を、0.25〜30mg、好ましくは1〜6.25mg、さらに好ましくは6〜30mgの範囲で、例えば1.25mgの組換えLAG−3タンパク質またはその誘導体を、投与を必要としている肥満度指数(体重/身長
2)が18〜30kg/m
2の患者に対して、投与できるような調剤を意味している。
【0022】
上記組換えLAG−3またはその誘導体の投与形態は、特に限定されるものではなく、例えば、可溶形態で全身性に接種される。たとえば、皮下注射、筋肉注射または静脈注射によって接種され、好ましくは皮下注射によって接種される。
【0023】
上記組換えLAG−3またはその誘導体はまた、抗癌もしくは抗感染症の免疫治療特性または化学治療特性を有する化合物とともに調剤され得る。
【0024】
本発明において、「化合物とともに投与する」とは、上記化合物の投与の前に、上記化合物の投与と同時に、あるいは、上記化合物の投与の後に、上記組換えLAG−3またはその誘導体を投与することを指す。
【0025】
本発明において、「抗癌もしくは抗感染症の化学治療特性を有する化合物」とは、例えば、タキサン(パクリタキセル、ドセタキセル)、ゲムシタビンおよびアントラサイクリン(ドキソルビシン)からなる群より選択される化学療法薬剤、またはリバビリンなどの抗ウイルス薬である。
【0026】
本発明に係る一実施形態において、組換えLAG−3タンパク質またはその誘導体は、抗癌もしくは抗感染症の化学治療特性を有する細胞障害性化合物の最初の投与の後に、患者へ投与される。
【0027】
効果的な方法としては、抗癌もしくは抗感染症の化学治療特性を有する細胞障害性化合物を投与してから12時間から96時間後に、組換えLAG−3タンパク質またはその誘導体を患者へ投与する。
【0028】
別の実施形態としては、組換えLAG−3タンパク質またはその誘導体を、抗癌もしくは抗感染症の化学治療特性を有する化合物の最初の投与から1日あるいは2日後に、患者へ投与する。
【0029】
また、本発明に係る別の実施形態としては、組換えLAG−3タンパク質またはその誘導体と、抗癌もしくは抗感染症の化学治療特性を有する細胞障害性化合物とを、同時に、別々に、あるいは連続して投与する。
【0030】
本実施形態において、効果的な方法としては、組換えLAG−3タンパク質またはその誘導体を、少なくとも6回(例えば、7回、10回、12回、もしくはそれ以上)投与する。
【0031】
また、本実施形態において、効果的な方法としては、組換えLAG−3タンパク質またはその誘導体を2週間おきに投与する。
【0032】
また、効果的な方法としては、組換えLAG−3タンパク質またはその誘導体を、0.25mgから30mgの投与単位で、ひいては6mgから30mg、さらには8mgから25mg、特に12mgから20mgの投与単位で投与を行なうことが好ましい。
【0033】
本発明において、「抗癌もしくは抗感染症の免疫治療特性を有する化合物」とは、例えば、ADCC(抗体依存性細胞障害作用)によって腫瘍細胞を殺傷する治療抗体と当該治療抗体の混合物とからなる群より選択される化合物であり、好ましくは、リツキシマブ、セツキシマブ、エドレコロマブおよびトラスツズマブからなる群より選択される化合物である。
【0034】
本発明に係る一実施形態において、組換えLAG−3タンパク質またはその誘導体および治療抗体は、同時に、別々に、あるいは続けて患者に投与される。
【0035】
本発明に係る一実施形態において、効果的な方法としては、治療抗体が投与されたのと同じ日に、組換えLAG−3タンパク質またはその誘導体を患者に投与する。
【0036】
また、本発明は、同時に、別々に、もしくは連続して使用するための、組換えLAG−3タンパク質またはその誘導体と治療抗体とを含んでなる部品のキット、つまり組合せ調製物(combinedpreparation)に関するものである。
【0037】
効果的には、この部品のキットは、組換えLAG−3タンパク質またはその誘導体と、リツキシマブ、セツキシマブ、エドレコロマブおよびトラスツズマブからなる群より選択される治療抗体とを含んでいる。
【0038】
好ましくは、本発明に係る部品のキットは、組換えLAG−3タンパク質またはその誘導体とリツキシマブとを含む。
【0039】
本発明に係る部品のキットにおいて、組換えLAG−3タンパク質またはその誘導体と治療抗体とが、両成分の間で生じる相乗的な細胞障害効果によって、1つの機能単位を形成する。この効果は、両成分が個別に投与された際には得ることができない。そのため、この効果は新たな複合効果である。
【0040】
本発明は、また、同時に、別々に、もしくは連続して使用するための、組換えLAG−3タンパク質またはその誘導体と、抗癌もしくは抗感染症の化学治療特性を有する化合物とを含んでなる部品のキット、つまり、組合せ調製物に関するものである。
【0041】
効果的には、この部品のキットは、組換えLAG−3タンパク質またはその誘導体と、タキサン(パクリタキセル、ドセタキセル)、ゲムシタビンおよびアントラサイクリン(ドキソルビシン)からなる群より選択される抗癌もしくは抗感染症の化学治療特性を有する化合物とを含んでいる。
【0042】
さらに、本発明は、単球媒介免疫応答に関連する病態の治療方法に関するものであり、上記のように規定される医薬を、その医薬を必要とする患者に投与する工程を含む。
【0043】
本発明において、「単球媒介免疫応答に関連する病態」とは、ウイルス感染症、寄生虫感染症、細菌感染症、および癌を指すものである。
【0044】
本発明に係るその他の利点は、以下に記載の実施例および添付図面で明白になるであろう。
例えば、本願発明は以下の項目を提供する。
(項目1)
単球数の増加を促す感染症治療用または癌治療用の医薬を製造するための、単球媒介免疫応答を引き起こす組換えLAG−3タンパク質またはその誘導体の使用。
(項目2)
上記医薬が、組換えLAG−3タンパク質またはその誘導体の効果的な複数回投与単位からなることを特徴とする項目1に記載の使用。
(項目3)
組換えLAG−3タンパク質またはその誘導体の上記複数回投与単位が、少なくとも12週間、好ましくは少なくとも24週間にわたって1週間〜数週間ごとに1回、13日±2日の無投与期間をあけて1回の投与単位を投与できるように調剤されていることを特徴とする項目2に記載の使用。
(項目4)
組換えLAG−3タンパク質またはその誘導体の上記1回の投与単位が、投与を必要としている肥満度指数(体重/身長2)が18〜30kg/m2の患者に対して、0.25〜30mg、好ましくは6〜30mgの範囲で、組換えLAG−3タンパク質またはその誘導体を皮下投与または静脈投与できるように調剤されていることを特徴とする項目2
または3に記載の使用。
(項目5)
組換えLAG−3タンパク質またはその誘導体の上記投与単位が、抗癌もしくは抗感染症の免疫治療特性または化学治療特性を有する化合物とともに投与できるように調剤されていることを特徴とする項目2〜4のいずれか1項に記載の使用。
(項目6)
組換えLAG−3タンパク質またはその誘導体の1回の投与単位が、0.25〜30mg、好ましくは6〜30mgの組換えLAG−3タンパク質またはその誘導体を含んでなることを特徴とする項目5に記載の使用。
(項目7)
上記化合物が、化学療法薬剤からなる群より選択されることを特徴とする項目5また
は6に記載の使用。
(項目8)
上記化学療法薬剤が、パクリタキセルおよびドセタキセルなどのタキサン、ドキソルビシンなどのアントラサイクリン、ならびにゲムシタビンからなる群より選択されることを特徴とする項目7に記載の使用。
(項目9)
上記化合物が、ADCC(抗体依存性細胞障害作用)によって腫瘍細胞を殺傷する治療抗体と、該治療抗体の混合物とからなる群より選択されることを特徴とする項目5また
は6に記載の使用。
(項目10)
上記治療抗体が、リツキシマブ、セツキシマブ、エドレコロマブおよびトラスツズマブからなる群より選択されることを特徴とする項目9に記載の使用。
(項目11)
同時に、別々に、または連続して使用するための、組換えLAG−3タンパク質またはその誘導体と、項目9または10に記載の治療抗体とを含む、部品のキット。
(項目12)
同時に、別々に、または連続して使用するための、組換えLAG−3タンパク質またはその誘導体と、項目7または8に記載の抗癌性の化学治療特性を有する化合物とを含む
、部品のキット。