【解決手段】冷凍サイクル回路30と、室内膨張弁10及び主回路膨張弁22の間に設けられた分岐部31とインジェクションポート1aとの間を接続するインジェクション回路40と、インジェクション回路40に設けられたインジェクション回路膨張弁21と、分岐部31及び主回路膨張弁22の間を流れる冷媒とインジェクション回路膨張弁21で減圧された冷媒との熱交換を行う内部熱交換器20と、室外機制御装置18と、を備え、室外機制御装置18は、主回路膨張弁22の開度Aと、インジェクション回路膨張弁21の開度Cと、係数Bと、冷凍サイクル回路30の冷媒循環量Grとが、関係式A+C=B×Grを満たすように主回路膨張弁22の開度Aを制御する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
実施の形態1.
本発明の実施の形態1に係る空気調和機について説明する。
図1は、本実施の形態に係る空気調和機の概略構成を示す冷媒回路図である。
図1に示すように、空気調和機は、例えば室外に設置される室外機7と、例えば室内に設置される室内機13と、を有している。また、空気調和機は、冷媒を循環させる冷凍サイクル回路30(主回路)を有している。冷凍サイクル回路30は、暖房運転時の流れにおいて、圧縮機1、四方弁2、室内熱交換器11、室内膨張弁10(第1の減圧装置の一例)、主回路膨張弁22(第2の減圧装置の一例)及び室外熱交換器3が冷媒配管を介して順次環状に接続された構成を有している。
【0018】
圧縮機1は、吸入した低圧冷媒を圧縮し、高圧冷媒として吐出する流体機械である。本例の圧縮機1は、インジェクションポート1aを有している。これにより、圧縮機1は、圧縮行程途中の圧縮室内にインジェクションポート1aを介して中圧の気液二相冷媒を注入することが可能な構造となっている。ここで、中圧とは、冷凍サイクル回路30の高圧側圧力(例えば、凝縮圧力)よりも低く、低圧側圧力(例えば、蒸発圧力)よりも高い圧力のことである。四方弁2は、暖房運転時と冷房運転時とで冷凍サイクル回路30内の冷媒の流れ方向を切り替えるものである。暖房運転とは、室内熱交換器11に高温高圧の冷媒を供給する運転のことであり、冷房運転とは、室内熱交換器11に低温低圧の冷媒を供給する運転のことである。
【0019】
室内熱交換器11は、暖房運転時には凝縮器として機能し、冷房運転時には蒸発器として機能する熱交換器である。室内熱交換器11では、内部を流通する冷媒と、後述する室内送風機12により送風される空気との熱交換が行われる。室内膨張弁10は、少なくとも暖房運転時の流れにおいて、室内熱交換器11で凝縮した液冷媒を減圧膨張させるものである。本例では、室内膨張弁10として、後述する室内機制御装置19の制御により開度を連続的に調節可能な電子式リニア膨張弁が用いられている。
【0020】
主回路膨張弁22は、少なくとも暖房運転時の流れにおいて、室内膨張弁10を通過した液冷媒又は二相冷媒を減圧膨張させるものである。本例では、主回路膨張弁22として、後述する室外機制御装置18の制御により開度を連続的に調節可能な電子式リニア膨張弁が用いられている。室外熱交換器3は、暖房運転時には蒸発器として機能し、冷房運転時には凝縮器として機能する熱交換器である。室外熱交換器3では、内部を流通する冷媒と、後述する室外送風機4により送風される空気(外気)との熱交換が行われる。
【0021】
冷凍サイクル回路30の圧縮機1、四方弁2、主回路膨張弁22及び室外熱交換器3は、室外機7に収容されている。また、室外機7には、室外熱交換器3に空気を送風する室外送風機4が設けられている。冷凍サイクル回路30の室内熱交換器11及び室内膨張弁10は、室内機13に収容されている。また、室内機13には、室内熱交換器11に空気を送風する室内送風機12が設けられている。室外機7と室内機13との間は、冷凍サイクル回路30の冷媒配管の一部である複数本の延長配管(本例では、液側延長配管8、ガス側延長配管9)を介して接続されている。室外機7内の冷凍サイクル回路30において、四方弁2とガス側延長配管9との間には、ガス側延長配管接続用バルブ6が設けられている。また、室外機7内の冷凍サイクル回路30において、主回路膨張弁22と液側延長配管8との間には、液側延長配管接続用バルブ5が設けられている。
【0022】
また、空気調和機は、インジェクションポート1aを介して圧縮機1の圧縮室内に中圧の二相冷媒を注入するインジェクション回路40を有している。インジェクション回路40は、室内膨張弁10と主回路膨張弁22との間(本例では、液側延長配管接続用バルブ5と主回路膨張弁22との間)に位置する分岐部31で冷凍サイクル回路30から分岐し、当該分岐部31と圧縮機1のインジェクションポート1aとの間を接続している。インジェクション回路40には、インジェクション回路膨張弁21が設けられている。本例では、インジェクション回路膨張弁21として、後述する室外機制御装置18の制御により開度を連続的に調節可能な電子式リニア膨張弁が用いられている。
【0023】
さらに、空気調和機は、冷凍サイクル回路30のうち分岐部31と主回路膨張弁22との間を流れる冷媒と、インジェクション回路40のインジェクション回路膨張弁21で減圧された冷媒(インジェクション回路膨張弁21とインジェクションポート1aとの間を流れる冷媒)と、の熱交換を行う内部熱交換器20を有している。本例の内部熱交換器20は、内管の内部に形成された内側流路と、内管と外管との間に形成された外側流路と、を備えた二重管熱交換器である。例えば内側流路には、インジェクション回路膨張弁21で減圧された中圧又は低圧の冷媒が流通する。
【0024】
空気調和機は、冷凍サイクル回路30の凝縮器側の冷媒の圧力(吐出圧力)Pd[kgf/cm
2G(ゲージ圧)]を検出する高圧センサー14と、吸入側の冷媒の圧力(吸入圧力)Ps[kgf/cm
2G]を検出する低圧センサー15と、圧縮機1から吐出される冷媒の温度(吐出温度)Td[℃]として、圧縮機1のシェルの温度を検出する圧縮機シェル温度センサー16と、を有している。飽和凝縮温度Ct[℃]は、圧力Pdに対応する飽和温度から導出できる。また、空気調和機は、暖房運転時において室内熱交換器11から流出する冷媒の温度(室内熱交換器出口温度)Tcoutとして、室内熱交換器11の出口配管の温度を検出する室内熱交換器出口温度センサー17を室内機13に有する。圧縮機シェル温度センサー16及び室内熱交換器出口温度センサー17等の温度センサーとしては、サーミスタを用いることができる。
【0025】
空気調和機は、室外機7の制御を行う室外機制御装置18(制御部の一例)と、室内機13の制御を行う室内機制御装置19と、を有している。室外機制御装置18及び室内機制御装置19のそれぞれは、CPU、ROM、RAM、タイマー、I/Oポート等を備えたマイクロコンピュータを有している。室外機制御装置18は、高圧センサー14、低圧センサー15及び圧縮機シェル温度センサー16から受信した検出情報等に基づき、圧縮機1、インジェクション回路膨張弁21及び主回路膨張弁22等を含む各種アクチュエータの動作制御を行う。室内機制御装置19は、室内熱交換器出口温度センサー17から受信した検出情報等に基づき、室内膨張弁10を含む各種アクチュエータの動作制御を行う。また、室内機制御装置19は、室外機制御装置18と通信を行い、各種センサーの検出情報等を相互に共有する。
【0026】
図2は、本実施の形態に係る空気調和機における暖房運転時の運転状態の例を示すモリエル線図である。
図2では、インジェクション回路40を介して中圧の二相冷媒が圧縮機1に注入されるインジェクションが行われている状態を示している。室内膨張弁10、インジェクション回路膨張弁21及び主回路膨張弁22の動作制御の例については後述する。
【0027】
暖房運転時において圧縮機1で圧縮された高温高圧のガス冷媒(
図2の点A)は、四方弁2及びガス側延長配管9等を通って室内熱交換器11に流入する。暖房運転時には、室内熱交換器11は凝縮器として機能する。すなわち、室内熱交換器11では、内部を流通するガス冷媒と、室内送風機12により送風される空気(室内空気)との熱交換が行われ、冷媒の凝縮熱が送風空気に放熱される。これにより、室内熱交換器11に流入した冷媒は、凝縮して高圧の液冷媒となる(
図2の点B)。また、室内送風機12により送風される空気は、冷媒の放熱作用によって加熱され、温風となる。室内熱交換器11で凝縮した高圧の液冷媒は、室内膨張弁10に流入し、減圧されて中圧の液冷媒となる(
図2の点C)。室内膨張弁10から流出した中圧の液冷媒は、液側延長配管8を通過して圧力損失により減圧され、液冷媒又は二相冷媒として室外機7に流入する(
図2の点D)。液側延長配管8内の冷媒は、ほぼ全体が液相となる。
【0028】
室外機7に流入した液冷媒又は二相冷媒は、室外機7内の冷媒配管の圧力損失により減圧され、二相冷媒として分岐部31に到達する(
図2の点E)。分岐部31では、一部の二相冷媒がインジェクション回路40に分流し、残りの二相冷媒は内部熱交換器20(本例では、外側流路)に流入する。内部熱交換器20の外側流路に流入した二相冷媒は、インジェクション回路40に分流して低温となった二相冷媒との熱交換により比エンタルピーを低下させ、液冷媒となる(
図2の点F)。
【0029】
この液冷媒は、主回路膨張弁22で減圧されて低圧の二相冷媒となる(
図2の点G)。低圧の二相冷媒は、室外熱交換器3に流入する。暖房運転時には、室外熱交換器3は蒸発器として機能する。すなわち、室外熱交換器3では、内部を流通する冷媒と、室外送風機4により送風される空気(外気)との熱交換が行われ、冷媒の蒸発熱が送風空気から吸熱される。これにより、室外熱交換器3に流入した冷媒は、蒸発して低圧のガス冷媒となる(
図2の点H)。低圧のガス冷媒は、四方弁2を通って圧縮機1に吸入され、圧縮機1で圧縮される。
【0030】
一方、インジェクション回路40に分流した二相冷媒は、インジェクション回路膨張弁21で減圧され、内部熱交換器20(本例では、内側流路)に流入する(
図2の点I)。内部熱交換器20の内側流路に流入した二相冷媒は、外側流路を流通する高温の二相冷媒との熱交換により比エンタルピーを増大させ、乾き度の高い二相冷媒となる(
図2の点J)。
【0031】
圧縮機1の圧縮室には、低圧のガス冷媒(
図2の点H)が圧縮される圧縮行程の途中(
図2の点K)で、インジェクション回路40を介して二相冷媒が注入される(
図2のα部)。これにより、圧縮途中のガス冷媒と注入された二相冷媒とが混合される(
図2の点L)。混合された冷媒は、圧縮機1で高温高圧に圧縮される(
図2の点A)。暖房運転では、これらのサイクルが繰り返される。
【0032】
次に、暖房運転時における各種アクチュエータの動作制御の例について説明する。室内膨張弁10は、室内機制御装置19又は室外機制御装置18の制御により、室内熱交換器11で実際に確保されるサブクールSC[deg]が予め設定される所望の値SCm[deg]に近づくように開閉動作を行う。サブクールSCは、飽和凝縮温度Ctから室内熱交換器出口温度Tcoutを減算することにより求められる。室内機制御装置19又は室外機制御装置18は、サブクールSCと所望の値SCmとの差に基づいて、室内膨張弁10の開度を制御する。
【0033】
インジェクション回路膨張弁21は、室外機制御装置18の制御により、通常時(インジェクション開始条件が成立していないとき)には全閉状態(開度C=0)に維持される。インジェクション開始条件が成立した場合には、インジェクション回路膨張弁21は、室外機制御装置18の制御により開状態(0<開度C≦1)となる。インジェクション回路膨張弁21が開状態になると、インジェクション回路40を介して中圧の二相冷媒が圧縮機1に注入されるインジェクションが開始される。インジェクション開始条件としては、例えば、外気温度が予め設定された所定値よりも低いこと、圧力Pdが予め設定された所定値よりも低いこと、圧縮機1の運転開始からの経過時間が予め設定された所定時間以上になったこと、等の条件が挙げられる。
【0034】
インジェクションが開始された後におけるインジェクション回路膨張弁21の開度Cは、吐出スーパーヒートSHdに基づいて制御される。具体的には、インジェクションが開始された後におけるインジェクション回路膨張弁21の開度Cは、吐出スーパーヒートSHdがc≦SHd≦dとなるようにフィードバック制御される。すなわち、インジェクション回路膨張弁21の開度Cは、後述する主回路膨張弁22の開度Aの関係式A+C=B×Grを用いることなく、開度Aとは独立して決定される。吐出スーパーヒートSHdは、吐出温度Tdから飽和凝縮温度Ctを減算することにより求められる。c[deg]及びd[deg]は、予め設定された所望の吐出スーパーヒートSHdの範囲の下限値及び上限値である。
【0035】
主回路膨張弁22の開度は、暖房運転時の膨張行程において上流側の膨張弁となる室内膨張弁10での減圧量a[kgf/cm
2]と、下流側の膨張弁となる主回路膨張弁22での減圧量b[kgf/cm
2]とが、予め設定されたx:yという絞り比率を保つように制御される。減圧量aは、より正確には、室内熱交換器11から流出した冷媒の圧力と、液側延長配管8に流入する冷媒の圧力と、の圧力差である。減圧量bは、より正確には、室内膨張弁10を通過した冷媒の圧力と、室外熱交換器3に流入する冷媒の圧力と、の圧力差である。絞り比率x:yは任意に設定することができるが、
図2に示したように、減圧量aを小さめに設定し、減圧量bを大きめに設定することが望ましい。こうすることにより、液側延長配管8内に液単相の冷媒をより多く存在させることができる。結果として、暖房運転時には、余剰冷媒を液側延長配管8内に多く蓄えることができる。
【0036】
具体的には、主回路膨張弁22の開度A(0≦開度A≦1)は、A+C=B×Grという関係式に基づいて導出される。ここで、Cはインジェクション回路膨張弁21の開度であり、B[開度/(kg/h)]は後述する係数であり、Gr[kg/h]は冷媒循環量である。なお、インジェクションが行われていないときには開度Cが0であるため、主回路膨張弁22の開度Aは、実質的にはA=B×Grという関係式に基づいて導出される。
【0037】
室内膨張弁10を通過した後の減圧量bは、インジェクションを行っていないとき、すなわちインジェクション回路膨張弁21の開度Cが0であるときには、b=(Gr/27.1/A)
2/ρsとなる。ここで、Gr[kg/h]は冷媒循環量であり、Aは主回路膨張弁22の開度であり、ρs[kg/m
3]は圧縮機1の吸入ガス密度である。インジェクション回路膨張弁21と主回路膨張弁22とは並列に設けられているため、インジェクションを行っているとき、すなわちインジェクション回路膨張弁21の開度Cが0よりも大きいときには、減圧量bは、b=(Gr/27.1/(A+C))
2/ρsとなる。したがって、インジェクションを行っているときの主回路膨張弁22の開度Aは、インジェクションを行っていないときの関係式A=B×Grの左辺をA+Cとした関係式により、適切に導出できる。
【0038】
係数Bは、絞り比率x:yを保つために必要な単位冷媒循環量あたりの主回路膨張弁22の開度を表している。係数Bは、吐出圧力Pdと吸入圧力Psとの圧力差ΔPに基づいて、実験式により決定される。
図3は、本実施の形態における係数Bと圧力差ΔPとの関係を示すグラフである。グラフの横軸は圧力差ΔP[kgf/cm
2](=Pd[kgf/cm
2G]−Ps[kgf/cm
2G])を表しており、縦軸は係数B[開度/(kg/h)]を表している。
図3に示すように、係数Bは、圧力差ΔPの二次式B=e×ΔP
2+f×ΔP+gで表される。ここで、e、f及びgは定数である。
【0039】
冷媒循環量Grは、圧縮機1のストロークボリュームvst[cc]、圧縮機1の運転周波数fz[rps]、圧縮機1の吸入ガス密度ρs[kg/m
3]及び圧縮機1の体積効率ηv(無次元数)を用い、Gr=vst×fz×3600×10
−6×ρs×ηvで導出することができる。吸入ガス密度ρsは、吸入圧力Psからおおよその値が求められる。
【0040】
図4及び
図5は、室外機制御装置18で実行される暖房運転処理の一例を示すフローチャートである。この暖房運転処理は、室内機13(例えば、室内機制御装置19)からの暖房運転指令を受信したときに開始されるものである。ここで、初期状態では、インジェクション回路膨張弁21の開度Cは0(閉状態)であるものとする。
【0041】
まず、ステップS1では、暖房運転を開始する。例えば、室外機制御装置18は、室内熱交換器11に高温高圧の冷媒が供給されるように四方弁2の流路を切り替える制御を行う。また、室外機制御装置18は、タイマーをリセットして時間の計測を開始する。
【0042】
次に、関係式Gr=vst×fz×3600×10
−6×ρs×ηvに基づいて、冷凍サイクル回路30の冷媒循環量Grを導出する(ステップS2)。
【0043】
次に、関係式A=B×Grに基づいて主回路膨張弁22の開度Aを導出し、主回路膨張弁22の開度を開度Aにする通常制御を実行する(ステップS3)。ここで、ステップS3では、関係式A+C=B×Grに基づいて開度Aを導出してもよい。ステップS3の時点ではインジェクション回路膨張弁21の開度Cが0であるため、関係式A=B×Gr及び関係式A+C=B×Grのいずれに基づいても同一の開度Aが導出される。
【0044】
次に、上述のインジェクション開始条件が成立しているか否かを判定する(ステップS4)。インジェクション開始条件が成立していると判定した場合にはステップS5に進み、インジェクション開始条件が成立していないと判定した場合にはステップS2に戻る。
【0045】
ステップS5の初回処理(暖房運転処理開始後の1回目の処理)では、インジェクション回路膨張弁21を予め設定された所定開度まで開く制御を行う。ステップS5の2回目以降の処理では、インジェクション回路膨張弁21の開度をそのまま維持する。
【0046】
次に、吐出圧力Pdに基づき飽和凝縮温度Ctを導出する(ステップS6)。
【0047】
次に、関係式SHd=Td−Ctに基づいて、吐出スーパーヒートSHdを導出する(ステップS7)。
【0048】
次に、吐出スーパーヒートSHdがc≦SHd≦dの関係を満たすか否かを判定する(ステップS8)。吐出スーパーヒートSHdがc≦SHd≦dの関係を満たすと判定した場合にはステップS12に進み、吐出スーパーヒートSHdがc≦SHd≦dの関係を満たさないと判定した場合にはステップS9に進む。
【0049】
ステップS9では、吐出スーパーヒートSHdがSHd<cの関係を満たすか否かを判定する。吐出スーパーヒートSHdがSHd<cの関係を満たすと判定した場合にはステップS11に進み、吐出スーパーヒートSHdがSHd<cの関係を満たさないと判定した場合(すなわち、SHd>dの場合)にはステップS10に進む。
【0050】
ステップS10では、インジェクション回路膨張弁21の開度Cを所定量増加させる処理を行う。すなわち、SHd>dの場合には、インジェクション回路膨張弁21の開度Cを所定量増加させる。増加後の開度Cの情報は、RAMの記憶領域に記憶される。その後、ステップS12に進む。
【0051】
ステップS11では、インジェクション回路膨張弁21の開度Cを所定量減少させる処理を行う。すなわち、SHd<cの場合には、インジェクション回路膨張弁21の開度Cを所定量減少させる。減少後の開度Cの情報は、RAMの記憶領域に記憶される。その後、ステップS12に進む。
【0052】
ステップS12では、関係式ΔP=Pd−Psに基づいて圧力差ΔPを演算する。
【0053】
次に、関係式B=e×ΔP
2+f×ΔP+gに基づいて係数Bを演算する(ステップS13)。
【0054】
次に、関係式Gr=vst×fz×3600×10
−6×ρs×ηvに基づいて、冷凍サイクル回路30の冷媒循環量Grを再度導出する(ステップS14)。
【0055】
次に、関係式A+C=B×Grに基づいて、主回路膨張弁22の開度Aを再度導出し、主回路膨張弁22の開度を新たな開度Aにする制御を行う(ステップS15)。
【0056】
次に、室内機13(例えば、室内機制御装置19)からの暖房運転指令が継続しているか否かを判定する(ステップS16)。暖房運転指令が継続していると判定した場合にはステップS17に進み、暖房運転指令が継続していないと判定した場合には暖房運転処理を終了する。
【0057】
ステップS17では、タイマーがリセットされてからの経過時間が予め設定された時間hを越えたか否かを判定する。経過時間が時間hを越えたと判定した場合には、タイマーをリセットし、ステップS4に戻る。経過時間が時間hを越えていないと判定した場合には、経過時間が時間hを越えるまで待機する。
【0058】
図6は、本実施の形態の第1変形例に係る空気調和機の概略構成を示す冷媒回路図である。
図6に示すように、本変形例では、
図1に示した構成と異なり、室内機13に室内膨張弁10が設けられていない。本変形例では、室外機7及び室内機13とは別体で膨張弁格納キット25(減圧装置収容部の一例)が設けられており、膨張弁格納キット25内に収容された膨張弁23が室内膨張弁10の代わりに用いられる。
【0059】
また、膨張弁格納キット25には、膨張弁23を制御する制御装置24が設けられている。制御装置24は、CPU、ROM、RAM、タイマー、I/Oポート等を備えたマイクロコンピュータを有している。制御装置24は、室内機制御装置19及び室外機制御装置18と通信を行い、各種センサーの検出情報等を相互に共有する。膨張弁23は、制御装置24の制御により、室内熱交換器11で実際に確保されるサブクールSCが所望の値SCmに近づくように開閉動作を行う。
【0060】
膨張弁格納キット25と室内機13との間は、冷凍サイクル回路30の冷媒配管の一部である液側延長配管26及びガス側延長配管27を介して接続されている。また、膨張弁格納キット25と室外機7との間は、冷凍サイクル回路30の冷媒配管の一部である液側延長配管28及びガス側延長配管29を介して接続されている。
【0061】
図7は、本実施の形態の第2変形例に係る空気調和機の概略構成を示す冷媒回路図である。
図7に示すように、本変形例では、複数台の室内機13−1、13−2、・・・、13−nが設けられたマルチ型の空気調和機を例示している。各室内機13−1、13−2、・・・、13−nのそれぞれは、
図1に示した室内機13と同様の構成を有している。各室内機13−1、13−2、・・・、13−nのそれぞれに設けられた室内熱交換器11及び室内膨張弁10は、冷凍サイクル回路30において互いに並列に接続されている。本変形例においても、
図1に示した構成と同様に各種アクチュエータが制御される。
【0062】
図8は、本実施の形態の第3変形例に係る空気調和機の概略構成を示す冷媒回路図である。
図8に示すように、本変形例では、複数台の室内機13−1、13−2、・・・、13−nが設けられたマルチ型の空気調和機を例示している。各室内機13−1、13−2、・・・、13−nのそれぞれは、
図6に示した室内機13と同様の構成を有している。各室内機13−1、13−2、・・・、13−nのそれぞれに設けられた室内熱交換器11は、冷凍サイクル回路30において互いに並列に接続されている。
【0063】
また、膨張弁格納キット25には、各室内機13−1、13−2、・・・、13−nのそれぞれに対応する複数の膨張弁23が収容されている。複数の膨張弁23は、制御装置24の制御により、それぞれ対応する室内熱交換器11で実際に確保されるサブクールSCが所望の値SCmに近づくように開閉動作を行う。
【0064】
膨張弁格納キット25と各室内機13−1、13−2、・・・、13−nとの間は、液側延長配管26−1、26−2、・・・、26−n及びガス側延長配管27−1、27−2、・・・、27−nを介してそれぞれ接続されている。また、膨張弁格納キット25と室外機7との間は、液側延長配管28及びガス側延長配管29を介して接続されている。本変形例においても、
図1に示した構成と同様に各種アクチュエータが制御される。
【0065】
以上説明したように、本実施の形態に係る空気調和機は、インジェクションポート1aを有する圧縮機1、室内熱交換器11、室内膨張弁10(又は膨張弁23)、主回路膨張弁22、室外熱交換器3が環状に接続された冷凍サイクル回路30と、冷凍サイクル回路30の室内膨張弁10及び主回路膨張弁22の間に設けられた分岐部31とインジェクションポート1aとの間を接続するインジェクション回路40と、インジェクション回路40に設けられたインジェクション回路膨張弁21と、分岐部31及び主回路膨張弁22の間を流れる冷媒とインジェクション回路膨張弁21で減圧された冷媒との熱交換を行う内部熱交換器20と、少なくとも主回路膨張弁22の開度Aを制御する室外機制御装置18と、を備え、冷凍サイクル回路30は、室内熱交換器11が凝縮器として機能し室外熱交換器3が蒸発器として機能する暖房運転が可能であり、室外機制御装置18は、主回路膨張弁22の開度Aと、インジェクション回路膨張弁21の開度Cと、圧縮機1の吐出圧力及び吸入圧力に基づき決定される係数Bと、冷凍サイクル回路30の冷媒循環量Grとが、関係式A+C=B×Grを満たすように主回路膨張弁22の開度Aを制御するものである。
【0066】
この構成によれば、暖房運転時においてインジェクションを行っているときに、主回路膨張弁22の開度Aを適切に制御することができ、室内膨張弁10と分岐部31との間(例えば、液側延長配管8)での液冷媒の比率を高めることができる。このため、暖房運転時において、冷媒配管内により多くの冷媒を蓄えることができる。したがって、冷房運転時の必要冷媒量と暖房運転時の必要冷媒量との差を吸収することができる。これにより、暖房運転時の余剰冷媒による圧縮機1への液バック現象を防ぐことができるため、圧縮機1の信頼性及び耐久性を向上させることができる。
【0067】
また、この構成によれば、室内膨張弁10と分岐部31との間での冷媒の圧力(中圧)を検出する圧力センサーを追加する必要がないため、空気調和機の製造コストを抑えることができる。
【0068】
特に、室内機13が複数台設けられたマルチ型の空気調和機においては、液側延長配管8、28の長さが長くなる場合が多いため、冷房運転時の必要冷媒量と暖房運転時の必要冷媒量との差が大きくなりやすい。したがって、
図7及び
図8に示した構成のように、マルチ型の空気調和機に本実施の形態を適用することによって、より高い効果を得ることができる。
【0069】
また、本実施の形態によれば、暖房運転時の余剰冷媒を冷媒配管内に多く蓄えることが可能になるため、低圧側液溜め(アキュムレータ)の容積を小型化することができ、アキュムレータの形成材料(例えば、鉄)の使用量を削減することができる。
【0070】
その他の実施の形態.
本発明は、上記実施の形態に限らず種々の変形が可能である。
上記実施の形態では、室外機7と室内機13との間が2本の延長配管(液側延長配管8及びガス側延長配管9)を介して接続されているが、室外機7と室内機13との間は3本以上の延長配管を介して接続されていてもよい。
【0071】
また、上記の各実施の形態や変形例は、互いに組み合わせて実施することが可能である。