特開2016-75713(P2016-75713A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ マグヌッソン、ロバートの特許一覧 ▶ ワウロ、デブラ ディ.の特許一覧

特開2016-75713角度ダイバーシチ、スペクトルダイバーシチ、モードダイバーシチ、及び偏光ダイバーシチを用いて高精度検出を小型構成で行なう導波モード共振センサ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-75713(P2016-75713A)
(43)【公開日】2016年5月12日
(54)【発明の名称】角度ダイバーシチ、スペクトルダイバーシチ、モードダイバーシチ、及び偏光ダイバーシチを用いて高精度検出を小型構成で行なう導波モード共振センサ
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/552 20140101AFI20160408BHJP
   G01N 21/41 20060101ALI20160408BHJP
【FI】
   G01N21/552
   G01N21/41 102
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2016-23781(P2016-23781)
(22)【出願日】2016年2月10日
(62)【分割の表示】特願2014-101591(P2014-101591)の分割
【原出願日】2007年9月7日
(31)【優先権主張番号】60/825,066
(32)【優先日】2006年9月8日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】11/656,612
(32)【優先日】2007年1月22日
(33)【優先権主張国】US
(71)【出願人】
【識別番号】509065883
【氏名又は名称】マグヌッソン、ロバート
【氏名又は名称原語表記】MAGNUSSON,Robert
(71)【出願人】
【識別番号】509065894
【氏名又は名称】ワウロ、デブラ ディ.
【氏名又は名称原語表記】WAWRO,Debra D.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】マグヌッソン、ロバート
(72)【発明者】
【氏名】ワウロ、デブラ ディ.
【テーマコード(参考)】
2G059
【Fターム(参考)】
2G059AA02
2G059BB06
2G059BB12
2G059CC13
2G059CC16
2G059CC17
2G059CC19
2G059DD12
2G059DD13
2G059EE01
2G059EE02
2G059EE12
2G059GG01
2G059GG02
2G059GG04
2G059HH01
2G059JJ03
2G059JJ11
2G059JJ17
2G059JJ19
2G059JJ22
2G059KK04
2G059MM04
(57)【要約】
【課題】導波モード共振(GMR)センサアセンブリ及びシステムを提供すること。
【解決手段】GMRセンサは、一以上の漏洩モードでまたはその付近で動作するように構成される導波路構造と、光源から導波路構造への入力光を受信して一以上の漏洩TE共振モード及びTM共振モードを生じさせる手段と、そしてTE共振及びTM共振の各共振の位相、波形、及び/又は振幅の内の一以上のパラメータの変化を検出して前記導波路構造の、または導波路構造にじかに接触する外部環境の第1物理状態と第2物理状態との区別を可能にする手段と、を含む。
【選択図】図14
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一以上の漏洩モードでまたはその付近で動作するように構成される導波路構造と、
光源から導波路構造への入力光を受信して一以上の漏洩TE共振モード及びTM共振モードを生じさせる手段と、
TE共振及びTM共振の各共振の位相、波形、振幅の内の一以上のパラメータの変化を検出して、前記導波路構造またはその直近環境の第1物理状態と第2物理状態とを区別可能にする手段と、
を備えるGMRセンサアセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(優先権)
本出願は、1999年11月5日出願の仮特許出願第60/163,705号の優先権を主張するものであり、当該仮特許出願の全文を本明細書において参照することにより、当該仮特許出願の全文が特許権の一部放棄を伴うことなく本明細書に特に組み込まれる。本出願はまた、1999年11月6日出願の仮特許出願第60/164,089号の優先権を主張するものであり、当該仮特許出願の全文を本明細書において参照することにより、当該仮特許出願の全文が特許権の一部放棄を伴うことなく本明細書に特に組み込まれる。本出願は更に、2006年9月8日出願の仮特許出願第60/825,066号の優先権を主張するものであり、当該仮特許出願の全文を本明細書において参照することにより、当該仮特許出願の全文が特許権の一部放棄を伴うことなく本明細書に特に組み込まれる。本出願は更に、仮特許出願第60/163,705号及び第60/164,089号の優先権を主張した2000年11月6日出願の米国特許出願第09/707,435号の優先権を主張するものであり、当該米国特許出願の全文を本明細書において参照することにより、当該米国特許出願の全文が特許権の一部放棄を伴うことなく本明細書に特に組み込まれる。
【0002】
(開示の背景)
(発明の分野)
本開示は、共振漏洩モードで周期構造の中で動作する光センサを提供するものであり、周期構造では、角度ダイバーシチ、スペクトルダイバーシチ、モードダイバーシチ、及び偏波ダイバーシチを有利に適用して高精度検出を小型システム構成で行なう。このようにして得られ、かつ数値モデルにフィッティングされる相互参照データセットによって精度及び確度が高くなって、非常に広範囲の用途において検出動作の信頼性が向上する。
【背景技術】
【0003】
(関連技術の説明)
バイオ検出及び化学検出用の非常に多くの光センサが開発され市販され、そして研究文献に公開されている。例示的なデバイスとして、表面プラズモン共振センサ、MEMS加工カンチレバーセンサ、共振ミラー、ブラッグ格子センサ、導波路センサ、干渉導波路センサ、エリプソメトリー及び格子を適用したセンサを挙げることができる。これらのデバイスのうち表面プラズモン共振(SPR)センサは、コンセプト、機能、及び性能の点で大幅に異なるものの、本開示の主題である導波モード共振(GMR)センサに最も類似している。GMRセンサ及びSPRセンサは共に、タグ不要の生化学的検出能を備える。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
表面プラズモン(SP)という用語は、電磁界によって誘起される電荷密度振動であり、導体と誘電体との界面(例えば、金/ガラス界面)で起こり得る電荷密度振動を指す。SPモードは、平行偏光されたTM偏光光(TM偏光とは、入射面に対して平行な電界ベクトルを有する光を指す)によって共振励起することができるが、TE偏光光とは共振励起することができない(TE偏光とは、入射面の法線方向に向いているTEベクトルを有する光を指す)。位相整合は、金属化回折格子を用いることにより、またはプリズム結合におけるような高屈折率材料による全内部反射を使用することにより、または導波する光のエバネッセント場を利用することにより起こる。SPR表面波が励起されると、特定の波長帯域で吸収極小が発生する。これらのセンサに関する角度感度及びスペクトル感度は非常に高いが、分解能は広い共振線幅(〜50nm)、及びセンサ応答の信号対雑音比によって制限される。更に、センサの動作ダイナミックレンジが広いほど、センサ感度は普通低くなる。検出を行なうために物理的に使用することができるのは単一の偏光(TM)だけなので、1回の測定で屈折率の変化と厚さの変化を同時に分解することはできない。これは、結合動態がセンサ表面の厚さ変化を含み、背景屈折率が検体濃度によって変化し得るような化学センサ用途において特に重要となる。本明細書において提供される本開示によって現在の技術の制約の幾つかを解決することができる。
【0005】
マグヌッソンらは、共振器構造のパラメータの変化を調整することができる導波モード共振フィルタを発見した。よって、層厚の変化によって生じる、または周囲媒質中のまたはデバイス層中の屈折率の変化によって生じるスペクトル変化または角度変化を使用してこれらの変化を検出することができる。ワウロらは、新規のGMRセンサ形態だけでなく、光ファイバに組み込んだときのこれらのセンサ形態の新規の適用可能性を発見した。種々の用途計画におけるGMRセンサの更に別の態様もある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、反射モード(すなわち、帯域阻止フィルタ)または透過モード(すなわち、帯域通過フィルタ)で動作するタグ不要の共振センサを提供し、この場合、整形された角度スペクトルに対応する光がGMRセンサ素子を照明する。これらのスペクトルは、1次検出器アレイまたはCCDマトリクス、或いは他の検出器群を直接照明する受信信号光に関して注目される入射角度範囲を同時にカバーする。生体分子が付着すると、あるいは注目する他の変化が検出領域に生じると、比較的狭いこれらの反射または透過角度スペクトルの位置が検出器マトリクス内で変化して、注目する分子イベントの定量測定値が得られる。更に、異なるTE偏光応答及びTM偏光応答をすると共振が生じるので、入力光の偏光状態を切り替える操作を適用して検出動作の精度を高める、または更に別のパラメータを、2つのTE/TM共振データを取得することにより測定することができる。更に、必要に応じて、入力光のスペクトル調整を一連の離散波長を利用して行なうことができるので、検出器群における測定スペクトルの位置を空間的にシフトさせて、測定の精度を更に向上させることができる。最後に、複数の漏洩型の導波路モードを用いて複数の共振ピークでセンサを動作させることにより、測定精度を更に向上させることもできる。
【0007】
これらの動作モダリティ(角度、スペクトル、モード、及び偏光)は、種々の組み合わせで必要に応じて使用することができる。センサ群は、最小限の試薬量しか必要としない小型かつ高密度のプラットフォームに配置することができる。従って、本開示において説明されるように、本アプローチは、実用上のセンサシステムにおいて非常に多くの有利な態様で高精度測定用途に使用することができる。
【0008】
本開示の使用及び実施を、この技術分野の当業者が理解し易くなるようにするために、本明細書に添付される多くの図を参照して、本発明が明瞭になり、かつ分かり易くなるようにしている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】バイオセンサの表面での生体分子結合イベントの例を示す。
図2】例示的なバクテリア検出の様子を模式的に示す。
図3】ゼロ次条件及び漏洩モード共振励起が明確に定義された状態の共振フォトニック結晶導波路構造による回折を説明している。
図4】誘電体共振素子に関する実測と理論との比較を示す。
図5図4の素子に関連する、共振時の漏洩モードの電場プロファイルを示す。
図6】極大点での図5における漏洩モードに関連する電磁定在波パターンの計算による瞬時「スナップショット」を示す。
図7】TE偏光及びTM偏光ダイバーシチを用いる導波モード共振屈折率センサを示し、そして計算による応答を求める場合の構造を描いている。
図8図7の例に対応する広いダイナミックレンジで検出を行なう場合の該当するTE偏光共振波長シフトを示す。
図9】空気中における厚さ検出の様子を示す。
図10】シラン化学リンカー(左下)で修飾されるTE偏光(左上)素子表面に対応する空気中での測定GMRセンサスペクトル応答を示す。走査型電子顕微鏡(SEM)(右上)だけでなく、素子モデル(左下)も示される。
図11A】サブミクロン格子コンタクト印刷法を示す図。
図11B】光学接着媒質に印刷された520−nm周期の格子コンタクトの電子顕微鏡写真を示す。
図12】生体材料の異なる付加厚さ(dbio)に対応してGMRセンサに関して計算されるTE偏光角度応答を示す。
図13図12の応答に対応するTM偏光応答を示す。
図14】2つの偏光を検出するために提案される共振センサシステムを模式的に描いている。LEDまたはLD、或いはVCSELのような光源からの発散ビームがセンサに種々の角度で同時に入射する。
図15】発散入力ビームを用いる例示的なGMRセンサ形態、及び偏光−発散検出を用いる関連する検出器を示す。
図16図15に詳細に示すGMR−センサ/検出器ユニットに組み込まれるマイクロウェル群から成る任意サイズのN×Mアレイを模式的に描いている。
図17】TEピーク(または極小点)及びTMピーク(または極小点)を有する光が、マイクロウェルの壁での反射を利用する検出器アレイに誘導される透過モードにおける偏光検出を説明している。
図18】GMRセンサ偏光ダイバーシチを実験的に使用して、シラン被覆センサ表面へのビオチン結合を定量化する様子を示す。分子付着イベントは時間の関数としてモニタリングされる。TE偏光及びTM偏光の両方に関する結果が示される。
図19】帯域通過フィルタ特性が実現することにより、GMRセンサが透過モードで動作することができるような例示的な素子構造を示す。この素子は、シリコン・オン・インシュレータ(SOI)材料システムの中に実現することができる。
図20】生体材料の異なる付加厚さに関して計算される透過型SOI共振センサスペクトルを示す。センサは、図19に示すように、入射波、反射波(R)、及び透過波(T)を含む空気の中で動作する。入射波は、この例ではTM偏光される。センサ構造は図19に示される。
図21】直接透過モードで行なわれる検出動作に関連するセンサ/検出器構造を示す。
図22図21に示すGMRセンサレイアウトのようなGMRセンサレイアウトに関連して、生体材料の異なる付加厚さに対して計算されるTE角度応答を示す。
図23】変化する入力波長に対して、図21のGMRセンサ構造に関して計算されるTE角度応答を示して、波長ダイバーシチ(wavelength diversity)を示す。この計算では、dbio=100nmである。発散入力ビームは、注目する角度範囲に自動的に対応する。
図24】異なる生体層厚さに対して、図19に模式的に示すGMR帯域通過型センサに関して計算されるTM角度応答を示す。発散入力ビームは、注目する角度範囲に自動的に対応する。パラメータは図19に示すパラメータと同じであり、そして入力波長はこの例では、□=1.5436□mに設定される。
図25】直接偏光を利用した検出を行なう場合のコンパクトレイアウトにおける検出動作に関連するセンサ/検出器構造を示す。検出器アレイ上のTEモード共振及びTMモード共振に関連する零(または、ピーク)の位置が破線矢印によって模式的に示される。
図26】マイクロ流体バイオセンシングシステムまたはマイクロ流体化学検出システムにおいて流路を横切って行なわれる直接透過モードでの検出動作に関連するセンサ/検出器構造を示す。
図27】単一光源からの光の平面波入力をレンズアレイによって波面整形して、可動部分を持たない角度指定可能なGMRセンサアレイを実現するHTSプラットフォームを示す。
図28】単一光源からの光の入力をレンズアレイによって波面整形して、角度指定可能なGMRセンサアレイをマイクロ流体環境において実現するHTSプラットフォームを示す。
図29】プラスティック媒質またはガラス媒質に、インプリンティング法及び成形法によって作製されるGMRセンサアレイを示す。
図30】シリコン・オン・インシュレータ材料システムに作製されるGMRセンサアレイを示す。
図31】生体材料の異なる付加厚さ(dbio)に対応するGMRマルチモードセンサに関して計算されるTE反射率角度応答を示す。
図32図31のマルチモードセンサに対応する計算による角度透過率スペクトルを示す。
図33】マルチモード共振特性を示す法線入射□=0の場合の図31における素子パラメータに対応する計算による透過率スペクトルを示す。このマルチモードバイオセンサは、図示の波長範囲における漏洩モードTE0,TE1,及びTE2を利用して動作する。最高感度はこの例示的な事例では、TE2モードによって得られる。
図34】光スプリッタ及び光ファイバ伝送を利用する単一光源システムを示す。
図35】抗体に結合する化学検体または生物学的検体を検出する無標識の導波モード共振センサシステムの単一チャネルを模式的に示す。
図36】光ファイバアレイを利用して光伝送を行なう反射構造を示す。
図37】走査型線光源を用いる反射型センサシステムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(背景)
本願発明者らによって、共振導波路格子の屈折率及び/又は厚さを変化させることにより、共振導波路格子の共振周波数を変化させる、または調整することができることが提案されている。本願発明者らは、このアイデアをバイオセンサに適用することができることを発見した。というのは、接着する生体層の蓄積をリアルタイムに、化学タグを使用することなく、該当する共振周波数シフトを分光計で追跡調査することによりモニタリングすることができるからである。従って、検体と当該検体に対して指定された受容体との間の会合速度を定量化することができる。実際、会合、解離、及び再生を含む結合サイクル全体の特性を記録することができる。同様に、周囲媒質の屈折率の小さな変化、または導波路格子層群の内のいずれかの導波路格子層の小さな変化を測定することができる。このようにして非常に高い感度の新種のバイオセンサまたは化学センサが実用化されている。このセンサ技術は医療診断、薬剤開発、産業プロセス制御、ゲノミクス、環境モニタリング、及び自国の保安に広く適用することができる。
【0011】
いくぶん細部に亘って一の例示的な使用に対処するには、高性能でタグ不要なフォトニック結晶GMRセンサが薬剤開発用途におけるプロセス制御を向上させるために非常に有望である。この方法は、このセンサ技術が提供することができる検出精度が高くなるので特に有用であり、薬剤開発及び薬剤スクリーニングのプロセスを向上させる。この産業分野では、何百万もの異なる化合物を迅速かつ正確にスクリーニングして、どの化合物が特定のタンパク質と結合するかまたは目的反応を阻害するかについて判断する必要がある。ハイスループットスクリーニング(HTS)の目的は、見込みのない化合物を、開発コストが更に発生する前に除外することにある。現在のHTS技術では通常、蛍光タグまたは放射化学タグが生物活性の指標として使用される。指標−化合物結合複合体に起因して、或る場合には、全く新規のアッセイを、新規の指標技術または反応化学を利用して細心の注意を払って設計する必要がある。標識化を必要とせず、広範囲の種類の材料を選択的に、リアルタイムに、アッセイ開発(容易に利用可能な抗体−抗原、核酸、及び他の高選択性の生体材料を使用する)を最小限に抑えながらスクリーニングすることのできる画期的なセンサ技術が益々必要となっている。スクリーニング変数(温度、及び周囲の流体の変化等)による誤差を小さくする機能だけでなく、結合動態を簡単なアレイ構造によってリアルタイムにモニタリングする機能は、望ましい他の機能である。本明細書に開示されるような高精度GMRセンサによる方法は、ハイスループットスクリーニング用途におけるこれらのニーズを満たすことができる。
【0012】
このセンサは、共振漏洩モードが入射光波によって励起される周期構造誘電体導波路(フォトニック結晶とも表記される)を含む。広帯域入射光は狭スペクトル帯域で高効率で反射され、狭スペクトル帯域の中心波長は、センサ素子の表面で発生する化学反応に対して非常に高い感度を示す。センサ表面上の生物化学層との標的検体の相互作用によって、測定可能なスペクトルシフトが生じ、このスペクトルシフトによって、結合イベントを、処理タグまたは外部タグの追加なしで直接特定することができる。図1に示すように、(抗体のような)生体関連物質選択層をセンサ表面に固定して、動作中の特異性を付与することができる。ナノスケール(<0.1オングストローム)から数ミクロン程度のサイズへの厚さ変化に対する感度を持つセンサ構造が解析されている。従って、同じセンサ技術を使用して小分子薬剤(<1nm)やタンパク質(<10nm)だけでなく、図2に模式的に示すような大きいバクテリア検体(>1μm)に関する結合イベントを検出することができる。高分解能(狭い明瞭な共振ピークを利用して得られる)及び高感度(表面に局在化した漏洩モードに関連する)によってイベントを正確に検出する確率を高くすることができる。更に、両方の主偏光状態は、生体材料結合イベントを正確に検出するための独立した共振ピークを持つ。この機能によって、センサ表面に生じる平均厚さ変化と平均密度変化とを区別する機能が実現する。従って、目的とする化学結合イベント(分子立体配座変化を含む)に対するセンサ共振応答は、未結合材料がセンサ表面に定着する現象とは区別することができ、誤って陽性と判定することを低減することができる。
【0013】
GMRセンサ技術は非常に用途が広い。個別センサ、またはアレイ中のセンサ素子に関連する生体分子反応は、角度スペクトル、波長スペクトル、及び偏光を含む種々の光の特性を使用して同時に測定することができる。更に、GMR素子自体は、異なる偏光に共振する現象を、単一の漏洩モードに起因する、すなわちTE基本モードに起因する単一のピークに示すように、または複数の漏洩モード、例えばTE,TE,及びTEモードで生じる複数のピークに示すように設計することができる。このような複数のモードは、センサ設計を正しく行なうことにより、注目する角度スペクトル領域及び波長スペクトル領域内で励起することができるようにする。共振モードの電磁場構造は、センサが検出領域のエバネッセント減衰波によって動作する、または検出領域全体が漏洩モードになるバルクモードセンサとして動作するように構成することができる。実際、特定の動作漏洩モードは、光測定による相互作用を最大にして検出感度を高めるように選択することができる。例えば、特定の構成では、TEモードでの動作によって、TEモードよりも優れた結果が得られる。このように概括される検出方法によって、分子イベントについて収集される情報の量及び信頼性が、他の手段で収集される情報の量及び信頼性よりも大きくなる。
【0014】
このセンサコンセプトは、材料、動作波長、及び設計構成の点から広範囲に適用できる。異なる生化学種を検出するには、感作表面層を化学的に改質するのみで済むことから、このコンセプトは多くの機能を発揮する。空気環境下及び液体環境下の両方で操作可能である。材料選択に柔軟性があるので、環境に優しい誘電体をセンサ素子の作製に選択することができる。適用可能な材料として、ポリマー、半導体、ガラス、金属、及び誘電体を挙げることができる。
【0015】
(導波モード共振効果)
図3は、薄膜導波路格子(フォトニック結晶スラブ)及び入射面波の相互作用を示す。周期Λが短くなると、図3(b)のようにゼロ次成分(zero−order regime)が得られるようになるまで、高次数の伝搬波はますます遮断される。この構造が適切な導波路を含む場合、この時点で減衰しているまたは遮断されている1次モード波は、漏洩モードとカップリングすることにより共振を誘発することができる。実際には、ゼロ次のモード波は好ましい場合が多いが、これは、図3(a)の回折波のように高次数の回折波が伝搬する際にエネルギーが浪費されないからである。
【0016】
導波路層及び周期構造素子(フォトニック結晶)を含むこのような薄膜構造は、正しい条件の下では導波モード共振(GMR)効果を示す。入射波が周期構造素子によって図3(c)に示す漏洩導波モードと位相整合する場合、入射波は、図3(c)に示すように特定の反射方向に反射率Rで再放出されるが、これは、入射波が導波路に沿って伝搬し、そして直接反射波と増幅的に干渉するからである。逆にまた等価的に、図3(c)における順方向で直接透過される波(透過率T)の方向における再放出漏洩モードの位相は、導波されない直接T波から□ラジアンだけずれるので、透過光が消光される。
【0017】
(帯域阻止フィルタ実験例)
図4は、誘電体導波モード共振素子の測定スペクトル反射率と計算スペクトル反射率を示す。この素子、低次数の側帯波を含む狭帯域で反射される注目スペクトルを持つ帯域阻止フィルタとして機能する。理論計算上では、平面波が入射する場合に100%のピーク効率が予測されるが、実際には、当該平面波は材料損失、散乱損失、入射ビーム発散、及び横方向素子サイズのような種々の要因によって減衰し、ここで実験により得られるピーク効率は90%である。この共振素子は、HfO層(約210nm)及びSiO層(約135nm)を溶融シリカ基板(直径1インチ)の上に堆積させることにより作製された。SiO格子は、一連のプロセスによって得られ、これらのプロセスでは、フォトレジストマスク格子(□=446nmの周期)のホログラフィック転写をAr+UVレーザ(□=364nm)を用いてロイドミラー干渉光学系の中で行ない、現像を行ない、約10nmのクロムマスク層をフォトレジスト格子の上に堆積させ、フォトレジスト格子をリフトオフし、そして次に、SiO層をCFで反応性イオンエッチングする。SEM(走査型電子顕微鏡)によって明らかになる表面粗さがピーク効率の低下の原因になる。
【0018】
(漏洩モードフィールド構造)
伝搬する電磁波の反射/透過特性の他に、局在化及び電磁場強度増大を含む共振周期構造格子の近接場特性がセンサ用途において注目されている。図4の例示的な作製構造に関連する計算による近接場パターンを図5に示す。厳密な結合波解析(PCWA)によって得られる数値結果が、近接場に関連する相対的な電磁場強度及び電磁場空間分布に関する定量情報を提供する。図5に示すように、ゼロ次のS波(Sはゼロ次の電場を指す)は、ほぼ同じ(close to unity)反射波振幅をもって伝搬し、単位振幅の入射波との干渉によって示される定在波パターンを生成する。従って、共振を起こすと、エネルギーのほとんどは元に戻る方向に反射される。同時に、S及びS−1で示される1次のエバネッセント回折波がこの例では、反対方向に伝搬する漏洩モードを構成する。この特定のセンサでは、最大電磁場値は均質層の中に位置し、この場合、エバネッセント減衰波が図5に明瞭に表示されるように、基板及び被覆層の中にまで徐々に伝搬する。図6は、反対方向に伝搬するS−1波及びS+1波によって所定の時点で形成される定在波パターンを示す。S±1空間高調波は局在波に対応するので、これらの空間高調波は、共振が起こるときに非常に強くなることができる。格子変調(Δε=n−n)の大きさによって変わるが、層内の電磁場振幅は、局在強度I〜Sの大きな増加を表わす入射波振幅に対して約10倍〜1000倍の大きさとなり得る。Sの最大振幅は変調強度にほぼ逆比例する。Sの最大振幅は変調強度にほぼ逆比例する。一般的に、変調が小さいということは、ライン幅Δλが狭く、かつ共振器QファクタQ=λ/Δλが大きいことを意味する。
【0019】
(例示的なセンサ応答及び感度)
液体環境における使用のために設計される単層センサに関して計算されるスペクトル応答を図7に示す。このセンサは、Siを用いて作製されることができ、回折層を形成するためのプラズマエッチングによりパターニングされることができる。1次元共振導波路格子構造はTE偏光入射波(用紙面の法線方向の電気ベクトル)及びTM偏光入射波に対応する個別の反射率ピークを有する。計算によれば、この構造によって、分光計の分解能を0.01nmとすると、3×10−5屈折率単位(RIU)の平均屈折率変化を分解可能であると判明している。ほぼ直線的な波長シフトが、格子構造(n=n=1.3〜1.8)と接触する媒質の広範囲の屈折率変化に対して維持されて(図8)、この格子構造を広いダイナミックレンジを有する汎用センサとすることができる。バイオセンサの感度は、検出対象の特定量の材料に関して測定される応答(ピーク波長シフトのような)として定義される。この測定応答は、検出対象の検体に対する達成可能な最大感度を示す。センサ分解能には、分光装置分解能、パワーメータ精度、生体に対し高い選択性を示す物質の応答、及びピーク形状またはライン幅のような実際の要素上の制約が含まれる。ライン幅は反射ピーク応答の半値全幅(FWHM)である。ライン幅は分光センサの精度に影響を与えるが、これは、ラインが狭くなることによって通常、波長シフトの分解能を高くすることができるからであり、導波路格子を用いた共振センサは通常、構造によって制御することができる約1nmのレベルの狭いライン幅を有する。実際の材料及び波長に関する図9の計算結果が示すように、共振センサは非常に小さい屈折率変化をモニタリングすることができるとともに、センサ表面での厚さ変化を検出するために使用することもできる。
【0020】
(例示的なセンサ結果)
図10に例示されるように、バイオセンシング用途にGMRセンサ技術を使用する手法は、法線入射で照明される2層共振素子を利用する空気中でのタンパク質結合分析を利用して研究されている。この場合、まずクリーンな格子表面を3%アミノプロピルトリメトキシシラン(Sigma社製)を含むメタノール溶液で処理してアミン基で化学修飾する(図10の左上に示す)。次に、当該素子をウシ血清アルブミン(BSA,100mg/ml,Sigma社製)溶液中で洗浄する。そして堆積した38nm厚さのBSA層が、6.4nmの反射共振ピークスペクトルシフトを生じる(図10の左下に示す)。BSA付着の前後で反射率が約90%に維持されたことから、センサ表面上の生体材料層に起因して最小の信号劣化しか生じていないことに注目されたい。
【0021】
(コンタクト印刷による共振センサ素子の作製)
これまで説明してきた方法の他に、光学ポリマーに所望のサブミクロン格子パターンを転写するコスト効率の高いコンタクト印刷法が非常に有用である。シリコーン格子スタンプを使用することにより、格子をUV硬化型光学接着剤の薄膜層に転写することができる(図11(a))。次に、導波路層を格子の上側表面に、Siまたは他の適切な媒質から成る薄膜層をスパッタリングで形成することにより堆積させる。別の方法として、格子を高屈折率のスピン塗布TiOポリマー膜で被覆して、高品質の共振センサ素子を形成する。コンタクト印刷された格子の例を図11(b)に示す。
【0022】
(デュアルモードTE/TM偏光GMRセンサ)
センサに対する生体層の付着によるTE共振シフト及びTM共振シフトを同時に検出することにより、検出動作の精度を著しく向上させることができる。これにより、全ての生体層の特性、すなわち、屈折率及び厚さを正確に求めることができる。図12及び13は、両方の偏光に関して角度に対する共振シフトの関係を示す計算結果を示す。実際、素子を正しく設計することにより実現するTE/TMモード共振の適切な角度分離を行なうことにより、2つの信号を、図14に示すような1次元検出器アレイ上で発散照明光を用いて同時に検出することができ、この場合、発散照明光は、発光ダイオード(LED,フィルタリングすることによりスペクトルを狭くすることができる)、または垂直共振器型面発光レーザ(VCSEL)、または注目する角度範囲に自動的に対応する□=850nmのレーザダイオード(LD)によって放出される。この例では、調査光ビームが溶融シリカまたはプラスティックシート(屈折率n)のようなカバー媒質を通って入射する。注目する光分布が反射ピークとして検出器上に現われる。この例は、均質層及び周期層の両方として機能する高屈折率ポリマー材料を使用する様子を示す。この構造は、例えばシリコーン鋳型を使用して、格子を、支持ウェハにスピン塗布される市販のTiOリッチの熱硬化型またはUV硬化型ポリマー媒質の中に形成することにより作製することができる。別の構成として、高屈折率導波路層を支持ウェハに堆積させることができ、そして周期層を支持ウェハの上面に成形することができる。
【0023】
図15は、本発明の一実施形態を生体分子検出に適用する様子を示す。非偏光光によってTEモード共振ピーク及びTMモード共振ピークが検出器アレイ上でまたは検出器マトリクス上で得られるが、信号対雑音(S/N)比は、図15に示すような複数の偏光状態の間で切り替えを行ない、そして偏光切り替えによって時間軸上で同期させた個別のTE信号及びTM信号に関して検出器を走査することにより高めることができる。また、S/N比を更に高くするために、光源にビーム整形素子を配設することにより、光分布をセンサ上に最適な態様で形成することができる。実際、或る用途では、波面を発散させる方法ではなく収束させる方法を使用することが望ましい。このようなビーム整形は、例えば適切なホログラフィック光学素子または回折光学素子を用いて行なうことができる。これにより、任意の振幅及び位相分布を持つ波面を生成することができる。図16は、図15の素子をマルチウェルシステムに使用する様子を示す。製薬分野では、マイクロウェルプレートを使用して、薬剤化合物のスクリーニングを効率的に行ない、このスクリーニングでは、このシステム形態を有利に展開することができる。図17は更に別の構成を示し、この構成では、この場合、検出器マトリクスがウェルの上に位置し、そしてTEモード共振及びTMモード共振に関連する透過率零(または、透過率ピーク)が測定される。生体層がセンサに付着すると、検出器上の零の位置がシフトすることにより、結合イベントの定量化が可能になる。この例では、入射波が或る角度で入射し、そして信号の取り出しは、マイクロウェルの壁による反射を利用して行なわれる。
【0024】
予備実験によれば、この技術には偏光ダイバーシチ機能(polarization diversity feature)があることが判明しており、この偏光ダイバーシチ機能によって、各偏光(TE及びTM)に関して個別の共振ピークシフトが得られるので、上に議論したように検出を高精度で行なう手段が得られる。図18は、GMRバイオセンサ用途に関する例示的な結果を示す。
【0025】
(帯域通過GMRセンサ)
透過型センサ素子、または帯域通過共振センサ素子は種々の媒質の中に作製することができ、これらの媒質として、シリコン・オン・インシュレータ(SOI)、シリコン・オン・サファイア(SOS)、及び直接転写型熱硬化性ポリマーまたはUV硬化性ポリマーを挙げることができる。周期層の形成は、従来の方法を利用して行なうことができ、これらの方法として、電子ビーム描写及びエッチング法、ホログラフィック干渉法、及び予め成形された原版(マスター)を利用するナノ転写リソグラフィ技術を挙げることができる。この実施形態を明示するために、図19は、例示的なSOI構造の中に構成される透過型センサを示す。図20は、厚さdbioの生体分子層がセンサ表面に付着したときのセンサの応答を示す。透過率ピークは、当該ピークのスペクトル位置を高感度で変える。このプロットを、例えば反射モードで動作する図12〜14のセンサと比較する必要がある。生体材料がセンサの表面に付着すると、共振波長はほぼ、付着材料1nm当たり、約1.6nmのスペクトルシフトの割合でシフトする。この性能をこの事例において達成する特定のプロファイルの形に注目されたい。
【0026】
(平板小型構成のコンパクトGMRセンサ及びアレイ状センサシステム)
作製を容易にし、かつコストを下げるために、我々は次に、上に提示した本発明の実施形態を平板状のシステム機構として実施した構造を開示する。センサは透過モードで動作するものとする。従って、光は、媒質と接触するセンサに入射し、この媒質とセンサとの相互作用に注目する。光は媒質を通過して検出器に到達し、検出器上で、透過光強度の最小値が測定される(帯域阻止フィルタ)、または強度の最大値が測定される(帯域通過フィルタ)。これらの光分布の位置の空間シフトによって生体分子結合反応の重要な特徴を定量化することができる。
【0027】
図21は、レーザダイオード(LD)、発光ダイオード(LED)、または垂直共振器型面発光レーザ(VCSEL)からの発散ビームを利用して調査を行なう単一のセンサに関するこのコンセプトを示す。偏光ビーム整形機能またはライン狭幅化(line−narrowing)機能を光源に必要に応じて搭載することができる。検出器は、図示のように、検出ボリュームの反対側に配置される。図22は、帯域阻止モードで動作することにより反射率ピーク、及びピークに付随する透過率極小を生じるGMRセンサに対応する検出器マトリクスの上の計算による強度分布(信号)を示す。入力波長はこの例では850nmである。2つの極小点が、センサ表面の法線に対して対称な角度位置に現われるが、これは、光が法線方向に入射するときの共振波長が、光が法線方向以外の方向に入射するときの共振波長とは異なるからである。2つの極小点を同時に使用して、検出動作の精度を、2つの角度シフトが得られるので高めることができる。図22では、付着生体層の厚さがdbio=0の場合、極小点がθ約6度に現われるのに対し、dbio=100nmの場合、角度の共振がこの事例では、θ約5度で見られる。図23は、波長が分散する様子を示している。すなわち、入力波長を離散的な一連の波長に調整することにより、追加データポイント群を収集して、データ分析の精度、及び数値モデルへのフィッティングの精度を高めることができる。波長が変化すると、共振角度及びセンサ上の光分布も変化する。更に、波長によって検出器上の極小点の位置を制御して、センサアレイの各GMRセンサピクセルに専用に利用される検出領域の大きさを指定するための柔軟性を提供する。
【0028】
図20に関連して説明したように、我々は、透過ピークを持つように動作する帯域通過フィルタのような多くの共振フィルタを設計してきた。図21の構造のような構造に対応するこの事例では、強度極大点(極小点ではなく)が検出器アレイ上に現われる。このような透過素子は、シリコンのような高屈折率媒質の中に特に効果的に構成することができる。図24は、帯域通過フィルタを用いた角度発散バイオセンシング(angularly diverse biosensing)の様子を示す。波長を、素子が透過ピークを、摂動のない表面に対して維持するように設定することにより、超高感度構造が得られる。透過率角度スペクトルの最も急峻な変化は、生体層の付着による性能低下によって、図24に示すように、センサが帯域通過状態から帯域阻止状態に、法線入射時に変化するので生じる。従って、ナノメートル未満の生体膜が付着することによって、出力側の検出器における簡単な強度変化によって直接測定することができる。検出器マトリクスによって受信される順方向透過光分布の形状は、図24に明瞭に示されるように、生体層の厚さに対して高感度に変化する。
【0029】
更に別の偏光発散光の形態が図25に模式的に示され、この場合、4つの極小点(またはピーク)を同時にモニタリングしてバイオセンシングの精度を高める。図26は、マイクロ流体システムにおける検出に適用することができる実施形態を示す。
【0030】
生物学的標的及び薬剤標的の数が益々増大する状況において、化学的活動を大量かつ並列に分析する新規の手段を創造する必要が益々高まっている。同時に、最小量の試薬をアッセイ装置に分注することによりHTS費用を減らす必要がある。従って、この産業分野における開発はナノリットル規模の液体分注に向かって進められている。ここに開示されるGMRセンサ技術は、これらの要求を満たすように適合させることができる。上に示し、かつ説明した平板状の透過型機構によってマルチチャネルセンサシステムの開発が可能になる。下限が5〜10□mのレベルのピクセル群を備える既存の、そして開発中のCCD及びCMOS検出器マトリクス技術によって、強度分布及びこれらの分布の変化を高精度に測定することができる。ナノ転写技術及び高精度薄膜形成方法によって、不可欠なGMRセンサアレイの作製が可能になる。成形法は、比較的大きなパターンをこれらのアレイに設定し、そして転写するために適用することができる。
【0031】
図27は、本開示に示される本発明の実施形態によるパラレルバイオセンシング機能を備えるシステムを示す。マイクロウェルプレートに埋め込まれるGMRセンサ群は、入射面波を球形波または円筒波に、図に示すような適切に設計される回折マイクロレンズアレイまたは屈折マイクロレンズアレイによって変換することにより生成される角度スペクトルによって特定される。上のようにして取り付けられる検出器アレイは信号を受信して、高精度なバイオセンシングを行なう。図28は同様の動作を示し、この場合、センサ群は、マイクロ流体アセンブリの流路内の誘導流によって刺激される。尚、図28からは、実際のマイクロ流体デバイスに関連する複雑な流路構造及び詳細は省略されている。
【0032】
実用的でコスト効率の高いGMRアレイはガラス媒質またはプラスティック媒質の中に作製することができる。一例を示すと、プラスティック基板上の所定の焦点距離及び直径を持つ回折または屈折レンズアレイは幾つかのベンダーから安価に購入することができる。レンズアレイの反対側の基板の空いている方の側に、高屈折率のスピン塗布TiOポリマー膜を塗布する。次に、格子パターンを、特殊設計シリコーンスタンプで、図11において述べた適切な周期を持つように転写することにより、GMRセンサが得られる。次に、異なる溶液を分離し、そして相互汚染を回避するためのスピルウォール(こぼれた液が外へ流出しないように設けた壁)、成形法により設けることができる。別の構成として、高屈折率薄膜をまず、基板の上に堆積させ、この場合、この薄膜の上には、格子パターンが引き続き形成される。結果として得られるGMRアレイを図29に示す。図30は、SOIの中に形成されて既存のシリコン系微細加工法の利点を生かした概念的なGMRアレイを示す。
【0033】
(マルチモードGMRセンサ)
検出精度を高めるための更に別のアプローチでは、動作共振漏洩モードの数を増やすことにより、より多くのスペクトルを検出及び高精度カーブフィッティングに適用する。従って、複数の導波路モードが存在することに起因する複数の共振ピークを生成し、そしてモニタリングすることができる。これらの複数のモードによって、高精度検出に利用することができる異なるスペクトル軌跡が得られる。図31は、側壁への付着が生じないと仮定した場合に、図の説明文に指定されるパラメータを持つ2重層GMRセンサのTE偏光応答を示す。入力波長が固定される場合、反射率スペクトルは、異なる漏洩モードで生じる幾つかの共振ピークを示す。生体層が付着すると、スペクトルは、図31に示すように、角度スペクトルの測定可能な変化を示す応答スペクトルとして現われる。このスペクトルは、例えば図16の構造に関する反射率スペクトルとしてモニタリングされる。図32は、例えば図27のシステムにおいてモニタリングされる該当する透過率スペクトルを示す。図33は、法線入射時のこのセンサの波長スペクトルを示し、3つの漏洩モードが図示のスペクトル帯域に含まれる様子を示す。電磁場のこのセンサ内部での特定の分布によって、TEモードでの動作が最高の感度を示す、すなわち図31〜33に示すように、付着厚さ単位当たり最大の角度シフト及びスペクトルシフトを示す。
【0034】
次に、図34,35,及び36を参照し、最初にこれらの図の内の図34を参照すると、ファイバ結合光伝送をGMRセンサプラットフォームにおいて用いるセンサ/検出器構造が示される。図1は、光スプリッタ及び光ファイバ伝送を利用する単一光源システムを示す。単一光源からの光は“M”個のチャネルに分波され(光スプリッタによって)、そしてセンサアレイに光ファイバを通って入射する。各ファイバから出て行く光は、高密度または外部レンズ/DOEによって整形され、そして自由空間内でセンサ素子に入射する。別の構成として、光ファイバから出て行く発散光は、ビーム整形素子を使用することなくセンサ素子に直接入射させることができる。光ファイバは、当該ファイバの開口数または他の特性に基づいて、システム設計の一部として選択することができる。偏光素子または偏光維持ファイバをシステムに使用することにより、センサ素子に入射する偏光状態(群)を制御することができる。入射波長は調整することができるので、角度調整及びスペクトル調整の両方を単一のシステムにおいて行なうことができる。
【0035】
システムは透過システムとして構成することができ、透過システムでは、センサアレイを透過する光は、図示のように、アレイの内、入射光とは反対の側の検出器マトリクスで検出される。システムは反射システムとして構成することもでき、反射システムでは、光はアレイに或る角度で入射し、そしてアレイによって反射されるビームは、アレイの内、入射光と同じ側に配置される検出器マトリクスで検出される。
【0036】
図35は、抗体に結合した化学的検体または生物学的検体を検出する無標識の導波モード共振センサシステムのシングルチャネル模式図を示す。抗体は“Y”として描かれ、そして抗体は“Y”のカップの中の球として描かれている。抗体は、検出対象の検体または検体群に基づいて選択する必要がある。或る実施形態では、ウシの血清抗体、ラマの血清抗体、またはアルパカの血清抗体が使用されるが、本発明はこれらの抗体には制限されない。
【0037】
動作状態では、ファイバ結合レーザダイオードからの発散ビームはセンサに連続的な角度範囲で入射する。結合イベントがセンサ表面で生じると(検体が抗体と結合することによって)、共振ピーク変化を入射角の関数として追跡することができる。共振は、入力光のTE偏光状態及びTM偏光状態に対応する異なる角度で生じるので、高精度の相互参照の検出が可能になる。
【0038】
図36はマルチチャネルアレイを示す。マルチチャネルアレイは、光伝送のために光ファイバアレイを利用する反射構造を有する。光ファイバアレイでセンサアレイを走査することもできる(反射または透過のいずれかに関して)。
【0039】
例えば、M×Nセンサアレイをスクリーニングするために、Mファイバアレイで、N行のセンサ素子群の底面を走査することができる。走査は、(a)ファイバアレイ+検出器アレイを、センサプレートを横断するように移動させることにより、または(b)センサプレートを、ファイバアレイ+検出器マトリクスを横断するように移動させることにより行なうことができる。
【0040】
図37は、走査型線光源を用いるセンサ/検出器構造を示す。図37は反射型センサを示しているが、当該センサは、検出素子をアレイプレートの内、入射光とは反対の側に配置することにより透過型センサとして構成することもできる。
【0041】
光源は単一波長(または、波長選択可能な)光源とすることができ、この光源からの光は、ライン集光素子(例えば、円筒レンズ)で整形される。ライン集光光で、M×NセンサアレイのM個のセンサ素子を同時に照明する。反射応答は、M行の検出器マトリクス群(行に並んだCCD検出素子群のような)で測定される。線光源及び検出素子アセンブリで、センサプレートの底面を走査することにより、M×Nセンサアレイを効率的に読み出すことができる。注記:ライン集光素子は、ビーム整形素子としても機能する(すなわち、発散する、収束する、またはいずれかの構成の波面とすることができる)。
【0042】
以下の追加実施形態も企図されている。
入力光の一以上の漏洩モードでまたはその付近で動作するように構成される導波路構造と、そして少なくともM×N個のセンサ素子群を含むセンサアレイを有するTE共振検出器及びTM共振検出器と、を備えるGMRセンサアセンブリ。
【0043】
更に、照明光を整形する反射レンズを備え、かつ上述の節76に定義されるGMRセンサアセンブリ。
更に、照明光を整形する反射レンズアレイを備え、かつ上述の節76に定義されるGMRセンサアセンブリ。
【0044】
更に、照明光を整形する回折レンズを備え、かつ上述の節76に定義されるGMRセンサアセンブリ。
更に、入力光の波面の偏光状態、及び波面の波形の特徴を求める手段を備え、かつ上述の節76に定義されるGMRセンサアセンブリ。
【0045】
更に、少なくとも2つの異なる波長を有する入力光を供給する手段を備え、かつ上述の節76に定義されるGMRセンサアセンブリ。
更に、少なくとも第1及び第2の偏光特性を有する入力光を供給する手段を備え、かつ上述の節76に定義されるGMRセンサアセンブリ。
【0046】
更に、少なくとも2つの共振モードを検出する手段を備え、かつ上述の節76に定義されるGMRセンサアセンブリ。
前記導波路構造に隣接する高密度マイクロ流体流路を備え、かつ上述の節76に定義されるGMRセンサアセンブリ。
【0047】
透明媒質と一体化される基板、光調整素子、及びマイクロバイアルを備え、かつ上述の節76に定義されるGMRセンサアセンブリ。
アレイが、半導体、半導体/誘電体複合体、半導体/誘電体/金属複合体、及び誘電体から成る群から選択される高密度媒質に配置される構成であり、かつ上述の節76に定義されるGMRセンサアセンブリ。
【0048】
アレイ状のセンサ素子群が、照明光源から物理的に分離されている構成であり、かつ上述の節76に定義されるGMRセンサアセンブリ。
アレイ状のセンサ素子群が、照明入力光源と一体化される構成であり、かつ上述の節76に定義されるGMRセンサアセンブリ。
【0049】
更に、小型バイオチップの構造の、またはマイクロベンチの構造の読み取り検出器を備え、かつ上述の節76に定義されるGMRセンサアセンブリ。
照明光源からの光がファイバに結合する、または導波路に結合する構成の導波モード共振センサ。
【0050】
導波路または光ファイバが、特定の開口数、偏光維持特性、または材料仕様を有するように或る目的を持って選択される構成の導波モード共振センサ。
照明光源からの光を、ライン集光素子を使用して線状に集光する構成の導波モード共振センサ。
【0051】
照明光源からの光を、円筒レンズを含むライン集光素子を使用して線状に集光する構成の導波モード共振センサ。
照明光源及び検出素子群でセンサアレイを走査する構成の導波モード共振センサ。
【0052】
単一の光源からの光を幾つかのチャネルに光スプリッタを使用して分波する構成の導波モード共振センサ。
光ファイバ/導波路から成るアレイを有する導波モード共振センサを使用して光をセンサ素子アレイに照射する。
【0053】
本発明の一側面に従うGMRセンサアセンブリは、一以上の漏洩モードでまたはその付近で動作するように構成される導波路構造と、光源から導波路構造への入力光を受信して一以上の漏洩TE共振モード及びTM共振モードを生じさせる手段と、TE共振及びTM共振の各共振の位相、波形、振幅の内の一以上のパラメータの変化を検出して、前記導波路構造またはその直近環境の第1物理状態と第2物理状態とを区別可能にする手段とを備える。
【0054】
上述したGMRセンサアセンブリにおいて、前記GMRセンサアセンブリは更に帯域阻止モードで動作するように構成される。
上述したGMRセンサアセンブリは更に帯域通過モードで動作するように構成される。
【0055】
上述したGMRセンサアセンブリは更に入力光が発散光を含む場所で動作するように構成される。
上述したGMRセンサアセンブリは更に、入力光が収束光を含む場所で動作するように構成される。
【0056】
上述したGMRセンサアセンブリは、既知の振幅及び位相特性を持つ入力光の入力波面を成形するビーム整形素子を更に備える。
上述したGMRセンサアセンブリにおいて、入力光の入力波面を生成する照明光源は、発光ダイオード、レーザダイオード、垂直共振器型面発光レーザ、及びフィルタ付きの広帯域光源から成る群から選択される。
【0057】
上述したGMRセンサアセンブリにおいて、導波路構造は、ほぼ無偏光の入力光で動作するように構成される。
上述したGMRセンサアセンブリは、第1の既知の時点で第1の既知の偏光状態を適用し、第2の既知の時点で第2の既知の偏光状態を適用する手段を更に備える。
【0058】
上述したGMRセンサアセンブリにおいて、異なる波長の入力光を導波路構造に選択的に入力する手段を更に備える。
上述したGMRセンサアセンブリにおいて、導波路構造から検出する手段の上に反射されたTE共振及びTM共振を検出するように、検出する手段は配置される。
【0059】
上述したGMRセンサアセンブリにおいて、導波路構造の平面を透過し検出する手段の上に達するTE共振及びTM共振を検出するように、検出する手段は配置される。
上述したGMRセンサアセンブリにおいて、検出する手段は光検出素子群から成るマトリクスである。
【0060】
上述したGMRセンサアセンブリにおいて、センサは一を超える共振漏洩モードで動作するように構成される。
上述したGMRセンサアセンブリは、入力光を回折させるホログラフィック回折素子を更に備える。
【0061】
上述したGMRセンサアセンブリにおいて、入力光は任意の角度で入射されるものであり、検出手段はTE共振及びTM共振を任意の角度で受信する。
入力光の一以上の漏洩モードでまたはその付近で動作するように構成される導波路構造と、少なくともN×M個のセンサ素子を含むセンサアレイを有するTE共振及びTM共振検出器とを備えるGMRセンサアセンブリ。
【0062】
上述したGMRセンサアセンブリにおいて、導波路構造は、入力光の発散ビームを受信するように構成される。
上述したGMRセンサアセンブリにおいて、検出器は、導波路構造の平面の内、入力光とは反対側に配置されて、導波路構造の平面を透過してきた共振信号を受信する。
【0063】
上述したGMRセンサアセンブリにおいて、入力光は既知の振幅及び位相特性を有する。
上述したGMRセンサアセンブリにおいて、導波路構造は、入力光の発散ビームを受信するように構成される。
【0064】
上述したGMRセンサアセンブリにおいて、検出器は、導波路構造の平面の内、入力光と同じ側に配置されて、導波路構造により反射される共振信号を受信する。
上述したGMRセンサアセンブリにおいて、各センサ素子は、発光ダイオード、レーザダイオード、または垂直共振器型面発光レーザから成る群から選択される入力光源によって照明される。
【0065】
上述したGMRセンサアセンブリにおいて、N×M個のセンサ素子は、光整形ポートを通過して入力される単一光源からの光によって照明されるように構成される。
更に、これまでの記述から、種々の変形及び変更を本発明の好適な実施形態に本発明の真の技術思想から逸脱しない限り加えることができることが理解できるであろう。この記述は、例示のためにのみ行なわれるのであって、制限的な意味として捉えられるべきではない。本発明の範囲は次の請求項の文言によってのみ制限されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36
図37