特開2016-7685(P2016-7685A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-7685(P2016-7685A)
(43)【公開日】2016年1月18日
(54)【発明の名称】回転切削工具の減衰装置
(51)【国際特許分類】
   B23C 9/00 20060101AFI20151215BHJP
【FI】
   B23C9/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-131491(P2014-131491)
(22)【出願日】2014年6月26日
(71)【出願人】
【識別番号】000152675
【氏名又は名称】コマツNTC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097755
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 勉
(72)【発明者】
【氏名】中島 啓
【テーマコード(参考)】
3C022
【Fターム(参考)】
3C022QQ03
(57)【要約】
【課題】回転切削工具の回転負荷の増大を招いたり、粘弾性体の早期摩耗を招いたりすることなく、回転切削工具のびびり振動を抑制することができる回転切削工具の減衰装置を提供する。
【解決手段】加工ヘッド2のスピンドル3に工具ホルダ4を介して取り付けられるエンドミル1の振動を減衰する減衰装置10であって、エンドミル1の外周側を補助的に支持可能なアーム部材11と、エンドミル1の回転時にそのエンドミル1の外周面と滑り合って接触する摺動部材18と、アーム部材11と摺動部材18との間に介在される粘弾性体17とを備え、エンドミル1の切削時の振動を、摺動部材18を介して粘弾性体17へと伝達して減衰するようにする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工ヘッドのスピンドルに工具ホルダを介して取り付けられる回転切削工具の振動を減衰する回転切削工具の減衰装置であって、
回転切削工具の外周側を補助的に支持可能なアーム部材と、
回転切削工具の回転時にその回転切削工具の外周面と滑り合って接触する摺動部材と、
前記アーム部材と摺動部材との間に介在される粘弾性体とを備え、
回転切削工具の切削時の振動を、前記摺動部材を介して前記粘弾性体へと伝達して減衰するようにしたことを特徴とする回転切削工具の減衰装置。
【請求項2】
前記アーム部材が、加工ヘッド側から回転切削工具に向けて突き出す突出位置と、工具ホルダから後方の加工ヘッド側に退避される退避位置とに切替可能とされる請求項1に記載の回転切削工具の減衰装置。
【請求項3】
前記アーム部材は、前記工具ホルダに軸受を介して回転切削工具の回転を許容するように取り付けられるハウジングから回転切削工具に向けて延設される請求項1に記載の回転切削工具の減衰装置。
【請求項4】
前記アーム部材と粘弾性体との間に、重みを付加する錘が介設される請求項1〜3のいずれかに記載の回転切削工具の減衰装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばエンドミルのような回転切削工具の振動を減衰する減衰装置に関し、特に、クランクシャフトの加工に使用される比較的長尺のエンドミルの振動を減衰するのに用いられて好適な回転切削工具の減衰装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図8には、クランクシャフトの一例として直列2気筒内燃機関に用いられるクランクシャフト100が示されている。クランクシャフト100は、2つのクランクピン101と、これらクランクピン101の両端に配置された合計3つのクランクジャーナル102と、クランクピン101とクランクジャーナル102とを連結するクランクアーム103と、クランクアーム103に一体的に形成されたカウンタウェイト104とを有している。
【0003】
従来、クランクシャフトの加工は、クランクシャフトミラーと呼ばれる専用機を用いて行われていたが、汎用性のあるマシニングセンタまたはフライス盤を用いて加工することが望まれていた。例えば、マシニングセンタを用いてクランクピン101を加工するためには、クランクアーム103およびカウンタウェイト104に干渉しないように長尺状のエンドミル200を用いる必要がある。そして、クランクシャフト100を回転させて、エンドミル200がクランクピン101の外周面に略直交するようにクランクピン101の回転に追随させる。
【0004】
しかしながら、このような長尺状のエンドミル200を用いて切削加工を行うと、切削加工時に受ける切削抵抗により工具に所謂びびり振動が生じ、加工面の品質が低下するという問題があった。
【0005】
このような問題を解決し得るものとして、粘弾性体を介して剛性体を切削工具のシャンクに当接させることにより、切削時のびびり振動を抑制するようにしたものが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第5131826号公報
【0007】
ところで、特許文献1に記載のものでは、粘弾性体が切削工具のシャンクに直接接触されている。
このため、切削工具が例えば旋盤で使用されるバイトのように工具それ自体は固定されるようなものに対しては特許文献1に係る技術を問題なく適用することができるが、切削工具それ自体が回転される例えばエンドミルのような回転切削工具に対して特許文献1に係る技術を適用した場合、粘弾性に対する回転切削工具の相対回転によって両者間に大きな摩擦力が生じるため、回転切削工具の回転負荷の増大を招いたり、粘弾性体の早期摩耗を招いたりするという問題点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前述のような問題点に鑑みてなされたもので、回転切削工具の回転負荷の増大を招いたり、粘弾性体の早期摩耗を招いたりすることなく、回転切削工具のびびり振動を抑制することができる回転切削工具の減衰装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明による回転切削工具の減衰装置は、
加工ヘッドのスピンドルに工具ホルダを介して取り付けられる回転切削工具の振動を減衰する回転切削工具の減衰装置であって、
回転切削工具の外周側を補助的に支持可能なアーム部材と、
回転切削工具の回転時にその回転切削工具の外周面と滑り合って接触する摺動部材と、
前記アーム部材と摺動部材との間に介在される粘弾性体とを備え、
回転切削工具の切削時の振動を、前記摺動部材を介して前記粘弾性体へと伝達して減衰するようにしたことを特徴とするものである(第1発明)。
【0010】
本発明において、前記アーム部材が、加工ヘッド側から回転切削工具に向けて突き出す突出位置と、工具ホルダから後方の加工ヘッド側に退避される退避位置とに切替可能とされる(第2発明)。
【0011】
本発明において、前記アーム部材は、前記工具ホルダに軸受を介して回転切削工具の回転を許容するように取り付けられるハウジングから回転切削工具に向けて延設される(第3発明)。
【0012】
本発明において、前記アーム部材と粘弾性体との間に、重みを付加する錘が介設されるのが好ましい(第4発明)。
【発明の効果】
【0013】
本発明の回転切削工具の減衰装置によれば、回転切削工具の回転時にその回転切削工具の外周面と滑り合って接触する摺動部材が設けられ、回転切削工具の切削時のびびり振動を、その摺動部材を介して粘弾性体へと伝達して減衰するようにされているので、回転切削工具の回転負荷の増大を招いたり、粘弾性体の早期摩耗を招いたりすることなく、回転切削工具のびびり振動を抑制することができる。
【0014】
また、第2発明の回転切削工具の減衰装置によれば、アーム部材が、加工ヘッド側から回転切削工具に向けて突き出す突出位置と、少なくとも工具ホルダから後方の加工ヘッド側に退避される退避位置とに切替可能とされるので、切削加工時に突出位置としたアーム部材を、工具交換時に退避位置とすることができる。これにより、例えばATC(自動工具交換装置)を用いて工具交換する際に、アーム部材とATCとの干渉を確実に回避することができる。
【0015】
また、第3発明の回転切削工具の減衰装置によれば、工具ホルダに軸受を介して回転切削工具の回転を許容するように取り付けられるハウジングから回転切削工具に向けてアーム部材が延設されるので、例えばATCを用いて工具交換する際に、特別な操作をすることなくアーム部材とATCとの干渉を確実に回避することができ、工具交換を速やかに行うことができる。
【0016】
また、第4発明の回転切削工具の減衰装置によれば、アーム部材と粘弾性体との間に、重みを付加する錘が介設されるので、回転切削工具のびびり振動をより効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1の実施形態に係る回転切削工具の減衰装置が適用されたマシニングセンタの要部斜視図である。
図2】同減衰装置が適用されたマシニングセンタを用いてクランクピンを加工する様子を図1のA矢印方向から見た図である。
図3】同減衰装置の変形例を説明する図(1)である。
図4】同減衰装置の変形例を説明する図(2)である。
図5】本発明の第2の実施形態に係る回転切削工具の減衰装置が適用されたマシニングセンタの要部斜視図である。
図6図5のB−B線断面図である。
図7】同減衰装置が適用されたマシニングセンタを用いてクランクピンを加工する様子を示す斜視図である。
図8】従来の長尺状のエンドミルを用いてクランクピンを加工する様子を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明による回転切削工具の減衰装置の具体的な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、以下に述べる各実施形態は、クランクシャフトのクランクピンを切削するエンドミルに対して本発明の回転切削工具の減衰装置が適用された例である。
【0019】
〔第1の実施形態〕
図1には、本発明の第1の実施形態に係る回転切削工具の減衰装置が適用されたマシニングセンタの要部斜視図が示されている。また、図2には、同減衰装置が適用されたマシニングセンタを用いてクランクピンを加工する様子を図1のA矢印方向から見た図が示されている。
【0020】
図1において、回転切削工具としてのエンドミル1は、マシニングセンタの加工ヘッド2の内部に回転自在に支承されるスピンドル3に工具ホルダ4を介して取り付けられている。
そして、工具ホルダ4の下方において、加工ヘッド2からエンドミル1へと架け渡されるように回転切削工具の減衰装置10(以下、単に「減衰装置10」と称する。)が配設されている。
【0021】
<工具ホルダの説明>
工具ホルダ4は、スピンドル3に着脱可能なシャンク部4aとエンドミル1を挟持するチャック部4bとがATC把持部4cを介して一体的に連結されてなり、ATC把持部4cの外周面に形成された断面略Vの字状の環状V溝5に図示されない自動工具交換装置(ATC)の工具交換アームが係合してスピンドル3に対する工具ホルダ4の抜き差しにより、工具交換が行われるようになっている。
【0022】
<減衰装置の説明>
減衰装置10は、エンドミル1の外周側を補助的に支持可能なアーム部材11を備えている。
アーム部材11は、加工ヘッド2の先端部下面に固定されたブラケット12に基端部がピン13によって枢支される一方で、先端側がエンドミル1の刃部1aの手前の下方位置に向けて延びる棒状部材よりなり、ピン13を中心として上下方向に回動自在で、図1中実線で示されるように、加工ヘッド2側からエンドミル1に向けて突き出す突出位置と、同図中二点鎖線で示されるように、工具ホルダ4から後方の加工ヘッド2側に退避される退避位置との間で揺動可能とされている。
なお、図示されないエアシリンダや電動モータ等のアクチュエータを駆動源とする揺動機構により、アーム部材11が突出位置と退避位置との間で揺動駆動されて、アーム部材11の突出位置と退避位置との切替が行われる。
【0023】
アーム部材11の先端部には、先端機能部15が配設されている。先端機能部15は、アーム部材11の先端に固着され、エンドミル1の外周面に向けて平坦な取付面を有する直方体状の取付ブロック16を備えている。取付ブロック16は、重みを付加する錘の役目も兼ねるもので、この取付ブロック16の取付面には、平板状の粘弾性体17を介して摺動部材18が固着され、エンドミル1の回転時に摺動部材18がそのエンドミル1の外周面と滑り合って接触するようになっている。
【0024】
ここで、粘弾性体17とは、ばね要素と減衰要素とを有するものであり、非線形なばね定数を有するものである。つまり、荷重を加えることによって粘弾性体17を変形させた場合、粘弾性体17のばね定数は荷重の大きさによって変化することになる。粘弾性体17としては例えばゴム等が挙げられる。
また、摺動部材18としては、例えば潤滑油を含浸させて自己潤滑性を持たせた銅系合金等の材料からなるものや、ポリアセタール(POM)やポリアミド(PA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の樹脂系の材料からなるものなどが挙げられる。
【0025】
また、アーム部材11、取付ブロック16、粘弾性体17および摺動部材18の幅寸法(代表として、取付ブロック16の幅寸法を図2において記号「D1」として表す。)は、エンドミル1の外径寸法D2と同等または若干小さくされている(D1≦D2)。これにより、エンドミル1よりも幅方向に突出するものがないので、アーム部材11を突出位置として摺動部材18をエンドミル1の外周面に接触させたとしても、アーム部材11、取付ブロック16、粘弾性体17および摺動部材18のいずれもクランクアーム103やカウンタウェイト104に干渉することがなく、後述する減衰動作を支障なく行うことができる。
【0026】
以上に述べたように構成される減衰装置10において、クランクシャフト(ワーク)100のクランクピン101の切削を行うにあたり、アーム部材11を突出位置として摺動部材18をエンドミル1の外周面に接触させる。そして、スピンドル3の回転駆動により、エンドミル1をその軸線回りに回転させるとともに、クランクシャフト100を回転させ、エンドミル1の刃部1aがクランクピン101の外周面に略直交するようにクランクピン101の回転に追随させながら刃部1aをクランクピン101に接触させて切削する。
このような長尺状のエンドミル1を用いて切削加工を行うと、切削加工時に受ける切削抵抗によってびびり振動が生じる。びびり振動は、摺動部材18を介して粘弾性体17へと伝達され、該粘弾性体17にて減衰される。
【0027】
<作用効果の説明>
第1の実施形態の減衰装置10によれば、エンドミル1の回転時にそのエンドミル1の外周面と滑り合って接触する摺動部材18が設けられ、エンドミル1の切削時のびびり振動を摺動部材18を介して粘弾性体17へと伝達して減衰するようにされているので、エンドミル1の回転負荷の増大を招いたり、粘弾性体17の早期摩耗を招いたりすることなく、エンドミル1のびびり振動を抑制することができる。
また、アーム部材11が突出位置と退避位置とに切替可能とされるので、切削加工時に突出位置としたアーム部材11を、工具交換時に退避位置とすることができる。これにより、ATC(自動工具交換装置)を用いて工具交換する際に、アーム部材11や先端機能部15とATCとの干渉を確実に回避することができる。
また、錘の役目を兼ねる取付ブロック15の重みの付加により、先端機能部15の慣性質量が増すので、エンドミル1のびびり振動をより効果的に抑制することができる。
【0028】
〔第1の実施形態の変形例の説明〕
なお、第1の実施形態においては、加工ヘッド2とエンドミル1との間の下側に減衰装置10を設けた例を示したが、図3に示されるように、加工ヘッド2とエンドミル1との間の上側に減衰装置10´を設けても良く、図4に示されるように、加工ヘッド2とエンドミル1との間の上側および下側の両方に減衰装置10,10´を設けても良い。
【0029】
〔第2の実施形態〕
図5には、本発明の第2の実施形態に係る回転切削工具の減衰装置が適用されたマシニングセンタの要部斜視図が示されている。また、図6には、図5のB−B線断面図が、図7には、同減衰装置が適用されたマシニングセンタを用いてクランクピンを加工する様子を示す斜視図が、それぞれ示されている。
なお、第2の実施形態において、第1の実施形態と同一または同様のものについては、図に同一符号を付すに留めてその詳細な説明を省略することとし、以下においては、第2の実施形態に特有の部分を中心に説明することとする。
【0030】
図5に示されるように、本実施形態においては、マシニングセンタの加工ヘッド2にサポート機能付回転切削工具20が装着されている。このサポート機能付回転切削工具20は、エンドミル1、工具ホルダ4および工具補助支持体21により構成されている。
【0031】
<工具補助支持体の説明>
図6に示されるように、工具補助支持体21は、エンドミル1の切削時のびびり振動を抑制する減衰装置30を具備してエンドミル1を補助的に支持するものであり、工具ホルダ4におけるチャック部4bの外周面に軸受22を介して装着されるハウジング23を備えている。なお、ハウジング23の外周面の一部には、外周側に突出する突出部23aが形成され、突出部23aには、回り止めピン24が後方に突出するように植設され、該回り止めピン24が、加工ヘッド2の回り止め部25に係合し、加工ヘッド2に対するハウジング23の回転が防止されるようになっている。
【0032】
<減衰装置の説明>
減衰装置30は、ハウジング23からエンドミル1の刃部1aの手前の上方および下方位置に向けて延設される一対のアーム部材31を備えている。これらアーム部材31は、エンドミル1の軸線を挟んで180°の位置に配されている。
【0033】
アーム部材31の先端部には、先端機能部32が配設されている。先端機能部32は、アーム部材31の先端に固着され、エンドミル1の外周面に向けて平坦な取付面を有する直方体状の取付ブロック33を備えている。取付ブロック33は、先の取付ブロック15と同様のもので、この取付ブロック33の取付面には、先の粘弾性体17と同様の粘弾性体34を介して先の摺動部材18と同様の摺動部材35が固着され、エンドミル1の回転時に摺動部材35がそのエンドミル1の外周面と滑り合って接触するようになっている。
【0034】
第1の実施形態と同様に、アーム部材31、取付ブロック33、粘弾性体34および摺動部材35の幅寸法(代表として取付ブロック33の幅寸法を図5において記号「D1」として表す。)は、エンドミル1の外径寸法D2と同等または若干小さくされている(D1≦D2)。これにより、アーム部材31、取付ブロック33、粘弾性体34および摺動部材35のいずれもクランクアーム103やカウンタウェイト104に干渉することがなく、後述する減衰動作を支障なく行うことができる。
【0035】
図7に示されるように、クランクピン101の加工時には、エンドミル1の延伸方向(X方向)および一対のアーム部材31が対向する方向(Y方向)に直交するZ方向がクランクピン101の延伸方向に一致するようにサポート機能付回転切削工具20を配置する。
そして、スピンドル3の回転駆動により、エンドミル1をその軸線回りに回転させるとともに、クランクシャフト100を回転させ、エンドミル1の刃部1aがクランクピン101の外周面に略直交するようにクランクピン101の回転に追随させながら刃部1aをクランクピン101に接触させて切削する。
このような長尺状のエンドミル1を用いて切削加工を行うと、切削加工時に受ける切削抵抗によってびびり振動が生じる。びびり振動は、摺動部材35を介して粘弾性体34へと伝達され、該粘弾性体34にて減衰される。
【0036】
<作用効果の説明>
第2の実施形態の減衰装置30によっても、エンドミル1の回転時にそのエンドミル1の外周面と滑り合って接触する摺動部材35が設けられ、エンドミル1の切削時のびびり振動を摺動部材35を介して粘弾性体34へと伝達して減衰するようにされているので、第1の実施形態の減衰装置10と同様の作用効果を得ることができる。
さらに、サポート機能付回転切削工具20において、工具ホルダ4に軸受22を介してエンドミル1の回転を許容するように取り付けられるハウジング23からエンドミル1に向けてアーム部材31が延設されるので、ATCを用いて工具交換する際に、第1の実施形態のように、切削加工時に突出位置としたアーム部材11を退避位置にするといった特別な操作をすることなくアーム部材31とATCとの干渉を確実に回避することができ、サポート機能付回転切削工具20の着脱で工具交換を速やかに行うことができる。
【0037】
以上、本発明の回転切削工具の減衰装置について、複数の実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記実施形態に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【0038】
例えば、第1の実施形態においては、ピン13を中心としてアーム部材11を揺動させることで突出位置と退避位置とを切り換えるようにしたが、加工ヘッド側からアーム部材11を直線移動機構により出し入れすることで突出位置と退避位置とを切り換えるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の回転切削工具の減衰装置は、回転切削工具の回転負荷の増大を招いたり、粘弾性体の早期摩耗を招いたりすることなく、回転切削工具のびびり振動を抑制することができるという特性を有していることから、例えばマシニングセンタやフライス盤などの工作機械においてエンドミルのような長尺状の回転切削工具を用いる際に、その回転切削工具の切削時のびびり振動を抑制する用途に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0040】
1 エンドミル(回転切削工具)
2 加工ヘッド
3 スピンドル
4 工具ホルダ
10,30 減衰装置
11,31 アーム部材
16,33 取付ブロック(錘)
17,34 粘弾性体
18,35 摺動部材
22 軸受
23 ハウジング

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8