特開2016-77853(P2016-77853A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-77853(P2016-77853A)
(43)【公開日】2016年5月16日
(54)【発明の名称】義肢および義肢作成方法
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/54 20060101AFI20160411BHJP
【FI】
   A61F2/54
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-1030(P2015-1030)
(22)【出願日】2015年1月6日
(31)【優先権主張番号】特願2014-212183(P2014-212183)
(32)【優先日】2014年10月17日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】591099588
【氏名又は名称】明伸興産株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000191353
【氏名又は名称】新明工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074273
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 英夫
(72)【発明者】
【氏名】城山 吉隆
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 和彦
【テーマコード(参考)】
4C097
【Fターム(参考)】
4C097AA11
4C097AA30
4C097BB09
4C097CC04
4C097CC08
4C097TA02
(57)【要約】
【課題】簡単に製造可能であると共に装着感がよく、かつ、装着時の外観が健常な状態と酷似しており、使用者の精神的な苦痛を軽減することができる義肢および義肢作成方法を提供する。
【解決手段】
欠損が生じた人体の断端2の立体形状を三次元計測手段3によって計測し、かつ、健常な人体5の立体形状を三次元計測手段3によって計測し、前記断端2に嵌合する義肢ソケット部11Aと健常な人体5の三次元形状を再現する義肢11の立体モデルデータ7を情報処理装置8の演算処理により算出し、この立体モデルデータ7に従った立体形状の硬質素材による立体モデル10を三次元造形手段9によって造形し、この立体モデル10を用いて軟質素材による義肢11を形成する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
三次元計測手段によって計測した人体の断端の立体形状に合わせて形成され、この断端に嵌合する形状の義肢ソケット部を備えると共に、三次元計測手段によって計測した健常な人体の立体形状に形成され、同三次元計測手段によって計測した色を再現した表面を有するように、三次元造形手段によって造形したものであることを特徴とする義肢。
【請求項2】
前記健常な人体の立体形状および色は、義肢の使用者本人の欠損が生じていない側の肢体を計測し、情報処理装置を用いて鏡像に変換して形成したものである請求項1に記載の義肢。
【請求項3】
前記義肢ソケット部を用いて前記断端に固定されると共に人間の肢体の動きに近い動作を可能とする骨格ロボット部を有し、骨格ロボット部の表面に嵌合する骨格ロボット収容部を形成してある請求項1または請求項2に記載の義肢。
【請求項4】
欠損が生じた人体の断端の立体形状を三次元計測手段によって計測し、かつ、
健常な人体の立体形状を三次元計測手段によって計測し、
前記断端に嵌合する義肢ソケット部と健常な人体の三次元形状を再現する義肢の立体モデルデータを情報処理装置の演算処理により算出し、
この立体モデルデータに従った立体形状の硬質素材による立体モデルを三次元造形手段によって造形し、
この立体モデルを用いて軟質素材による義肢を形成することを特徴とする義肢作成方法。
【請求項5】
欠損が生じた人体の断端の立体形状を三次元計測手段によって計測し、かつ、
健常な人体の立体形状および色を三次元計測手段によって計測し、
前記断端に嵌合する義肢ソケット部と健常な人体の三次元形状および色を再現する義肢の立体モデルデータを情報処理装置の演算処理により算出し、
この立体モデルデータに従った立体形状および色の義肢を三次元造形手段によって造形することを特徴とする義肢作成方法。
【請求項6】
前記三次元計測手段による計測は採型対象の周りに配置した三次元計測手段を用いて、採型対象に対する三次元計測手段の位置情報、計測方向情報および距離情報を採型測定情報として取得し、採型対象に対する複数の位置において前記採型計測情報を取得することにより、採型対象の立体形状の採型を行う請求項4または請求項5に記載の義肢作成方法。
【請求項7】
健常な人体の表面の立体形状および色は、人体の一部を欠損した使用者本人の欠損が生じていない側の肢体を計測し、前記情報処理装置を用いて鏡像に変換することにより計測する請求項4〜請求項6のいずれかに記載の義肢作成方法。
【請求項8】
前記義肢ソケット部を用いて前記端部に固定されると共に人間の肢体の動きに近い動作を可能とする骨格ロボット部を形成し、義肢に骨格ロボット部の表面に嵌合する内面部を形成する請求項4〜請求項7のいずれかに記載の義肢作成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、義肢および義肢作成方法に関するものであり、より詳細には失われた肉体の一部を代替することにより特に外見を回復して使用者の精神的な苦痛を軽減することができる義肢および義肢作成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、事故や病気、戦争などによって肢体の一部を失った場合に、その失った肢体を補うために代替物として義肢を装着することが行なわれる。とりわけ、四肢の一部を失うと生活に支障が発生する場合があるが、義肢を用いることにより不便をある程度軽減することができる。
【0003】
一般的に、義肢は義肢装具士などの専門家が豊富な経験と勘によって手作業で行なう必要があった。義肢の形成には、まず、欠損が生じた肢体の採寸・彩色を行い、肢体の断端部分の採型を行い、これらに伴って義肢のモデルを作成し、柔軟性を有する樹脂によって義肢を形成し、義肢に色づけして、調整する必要がある。とりわけ、残存する肢体の断端との接合部分に義肢ソケットを形成するが、この部分は断端付近を包み込むように支える必要があるため、断端の立体的な形状を正確に採型するためには、石膏を満たした容器内に断端を挿入した状態で石膏を凝固させることが行なわれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−299679号公報
【特許文献2】特開2012−187426号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記義肢装具士は、厚生労働大臣の免許を受けて、医師の処方の下に、義肢及び装具の装着部位の採寸・採型、製作及び身体への適合を行う専門家であり、義肢の製作には使用者が義肢装具士のもとに出向して前記石膏による採型などの作業を行なう必要があるだけでなく、一般的に高額の費用が必要となることは避けられなかった。つまり、義肢を作成するときには使用者の負担が大きくならざるを得なかった。
【0006】
また、使用者の傷が完治していないときには前記石膏によってその断端の採型を行うことはできないという問題がある。加えて、使用者にアレルギーがある場合にも石膏による採型が行えないという問題がある。とりわけ、使用者が子供である場合、採型のため石膏が固まるまで断端を動かさないことが難しいという問題がある。さらには、石膏に押さえつけられた断端は圧力を受けることにより変形するので、正確な採型が行えないという問題もあった。
【0007】
そこで、引用文献1では義肢ソケットの形成の際に人体や型の形状を計測するための計測手段を用いることにより、専門的な技術や経験がなくても肢体の断端に適合する義肢ソケットを製造することができるようにしてあり、義肢の装着感を向上させることができる。それでも、前記義肢ソケットによって肢体に取り付けられる義肢の形状および色などに現れる質感は、既に失われている部分のものであるから、失われた後からその部分の採型を行うことはできなかった。
【0008】
とりわけ、使用者が成長期の子供である場合、成長に伴って義肢を大きくする必要があるが、失われた部分の義肢の形状を従来の石膏による採型では得ることができないため、現在の状態を予測しながら義肢を作成する必要があり、ある程度推測に基づく義肢の作成を行なう必要があった。それゆえ、現在においても義肢装具士による手作業の修正加工によって義肢の形状や色などの質感を調整する必要があり、義肢の製作が高価にならざるを得ないため、子供の成長に合わせて再々義肢の作り直しを行なうことはできないという問題があった。
【0009】
ところで、引用文献2には人間の手に近い動作範囲を得ることができる義手が記載されており、これによって失った機能の回復をある程度得ることができる。ところが、このような義手は人間の手と比較して、その外見が大いに異なるため、使用者の精神的な苦痛を軽減することはできないという問題がある。
【0010】
本発明は上述の事柄を考慮に入れてなされたものであり、簡単に製造可能であると共に装着感がよく、かつ、装着時の外観が健常な状態と酷似しており、使用者の精神的な苦痛を軽減することができる義肢および義肢作成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するため、第1発明は、三次元計測手段によって計測した人体の断端の立体形状に合わせて形成され、この断端に嵌合する形状の義肢ソケット部を備えると共に、三次元計測手段によって計測した健常な人体の立体形状に形成され、同三次元計測手段によって計測した色を再現した表面を有するように、三次元造形手段によって造形したものであることを特徴とする義肢を提供する。
【0012】
前記義肢は三次元計測手段によって計測した断端の立体形状に合わせて形成された義肢ソケットを備えることにより使用者の断端にストレス無く密着するように嵌合し、心地よい装着感を得ることができる。また、義肢の立体形状および色は三次元計測手段を用いて計測された健常な人体の立体形状に形成され、同三次元計測手段によって計測した色を再現した表面は健常な人体と酷似しているため、この義肢を装着する使用者の精神的な苦痛を大いに軽減することができる。
【0013】
三次元計測手段による測定と三次元造形手段による造形の組み合わせによって形成される義肢は従来のように特殊技能を有する義肢装具士の手を煩わせることなく行なうことができるので製造コストを可能な限り引き下げながら、高精度に形成することができる。
【0014】
なお、前記三次元計測手段は例えば走査線状に対象物の距離と色を計測して取り込む三次元スキャナであることが考えられ、三次元造形手段は平面上に種々の合成樹脂を積層して形成する積層造形法によって造形するもの、基材を切削して形成する切削造形法によって造形するもの、光硬化樹脂を用いて光によって形成するものなどが考えられる。又、三
次元スキャナだけでなく、CTやMRIや写真のデータを変換してもよい。
【0015】
前記健常な人体の立体形状および色は、義肢の使用者本人の欠損が生じていない側の肢体を計測し、情報処理装置を用いて鏡像に変換して形成したものである場合(請求項2)には、欠損の生じた使用者の肢体の立体形状や色を計測できなくても、使用者自身の身体的な特徴に合わせた義肢の造形を極めて容易に行なうことができ、使用者にとって全く違和感のない義肢であるから、その使用にあたって使用者の精神的な苦痛がない。
【0016】
前記義肢ソケット部を用いて前記断端に固定されると共に人間の肢体の動きに近い動作を可能とする骨格ロボット部を有し、骨格ロボット部の表面に嵌合する骨格ロボット収容部を形成してある場合(請求項3)には、義肢としての見栄えのみならず、能動的な機能を得ることができ、この義手を用いて何らかの作業を行なうことが可能となる。
【0017】
なお、前記骨格ロボット部は、筋肉の収縮に使用される神経電流を感知するセンサと、この神経電流に伴って駆動されるアクチュエータとを備えるものであることが好ましいが、他にも残存する断端の動きをリンクやワイヤー等を用いて伝達して動作させるものなど種々の構成が考えられる。
【0018】
第2発明は、欠損が生じた人体の断端の立体形状を三次元計測手段によって計測し、かつ、健常な人体の立体形状を三次元計測手段によって計測し、前記断端に嵌合する義肢ソケット部と健常な人体の三次元形状を再現する義肢の立体モデルデータを情報処理装置の演算処理により算出し、この立体モデルデータに従った立体形状の硬質素材による立体モデルを三次元造形手段によって造形し、この立体モデルを用いて軟質素材による義肢を形成することを特徴とする義肢作成方法を提供する。(請求項4)
【0019】
前記義肢作成方法によれば、人体の断端の立体形状と健常な人体の立体形状を三次元計測手段を用いて計測するので、情報処理装置はより正確な立体形状の立体モデルデータを容易に作成することができ、この立体モデルデータに従って三次元造形手段によって義肢を造形することにより、良好な装着感と人体に酷似した形状の義肢を造形することができる。
【0020】
なお、本明細書における硬質素材とはJISK6253に基づいたデュロメータを用いた計測を行なうときに硬度数十度以上の硬さを有する素材を意味し、例えば、硬質樹脂を意味する。一方、軟質素材とは硬度数十度以下の硬さを有する素材を意味し、例えば、ゴムやシリコーンなどの軟質樹脂を意味する。
【0021】
軟質素材による義肢は、前記立体モデルから立体形状を写し取る型を形成し、この型に軟質素材として例えば使用者の肌の色に合わせて着色された樹脂を流し込んで硬化させることによって形成することができる。一旦硬質素材による立体モデルを作成してから、シリコーンなどの軟質素材による義肢を作成する方法は従来より慣れ親しんできた方法であるから、仮に立体モデルの造形から後の行程を義肢装具士が行なうとしても特別な技能を必要とせずに極めて容易に義肢を作成するができる。
【0022】
第3発明は、欠損が生じた人体の断端の立体形状を三次元計測手段によって計測し、かつ、健常な人体の立体形状および色を三次元計測手段によって計測し、前記断端に嵌合する義肢ソケット部と健常な人体の三次元形状および色を再現する義肢の立体モデルデータを情報処理装置の演算処理により算出し、この立体モデルデータに従った立体形状および色の軟質素材による義肢を三次元造形手段によって造形することを特徴とする義肢作成方法を提供する。(請求項5)
【0023】
前記義肢作成方法によれば、人体の断端の立体形状と健常な人体の立体形状および色を三次元計測手段を用いて計測するので、情報処理装置はより正確な立体形状および色の立体モデルデータを容易に作成することができ、この立体モデルデータに従って三次元造形手段によって義肢を造形することにより、良好な装着感と人体に酷似した形状および色の義肢を造形することができる。
【0024】
前記第2発明および第3発明の義肢作成方法によれば、前記断端の三次元計測から義肢の造形までの工程に、従来専門家の手作業による特殊な加工を行っていたような工程をなくすことができるので、義肢の製造コストを引き下げることができ、それだけ、義肢を頻繁に作り直すことができる。とりわけ、使用者が成長期の若者である場合などには、成長にあわせて義肢の大きさを徐々に大きくすることも可能であり、それだけ、使用者の精神的な負担を軽減できる。
【0025】
また、従来のように石膏を用いた採型を行なう必要がないので、石膏が固まる時間を待つ必要がなく、石膏アレルギーを持つ使用者も容易に義肢を作成できる。加えて、治療が完了していない状態でも、断端の採型を行なうことができ、圧力が加わっていない状態の断端の形状を採型できるので、より正確な断端の形状を採型できる。なお、前記断端の立体形状は使用者本人の断端の立体形状を採型する必要があるが、健常な人体の立体形状はほぼ同じ大きさの肢体を持つ別人のものであってもよく、予め、幾らかの基本的な人体の各肢体の三次形状を計測して集めたライブラリを形成し、立体モデルデータを作成する際にライブラリに登録されている立体形状の中から選択して行なってもよい。
【0026】
前記三次元計測手段は例えば走査線状に対象物の距離と色を計測して取り込む三次元スキャナであることが考えられ、三次元造形手段は平面上に種々の合成樹脂を積層して形成する積層造形法によって造形するもの、基材を切削して形成する切削造形法によって造形するもの、光硬化樹脂を用いて光によって形成するものなどが考えられる。なお、三次元計測手段および三次元造形手段の解像度は年々向上するものであるから、基本的な義肢作成方法は同じでも、三次元計測手段および三次元造形手段の性能向上に伴って、年々よりリアルな義肢を製造することが可能となる。
【0027】
前記三次元計測手段による計測は採型対象の周りに配置した三次元計測手段を用いて、採型対象に対する三次元計測手段の位置情報、計測方向情報および距離情報を採型測定情報として取得し、採型対象に対する複数の位置において前記採型計測情報を取得することにより、採型対象の立体形状の採型を行う場合(請求項6)には、使用者の断端などの採型対象に対して三次元計測手段を動かすことによりその立体形状を採型する、いわゆるハンディタイプの三次元計測手段であるから、使用者は手軽にその断端の採型を行なうことができる。つまり、使用者は従来のように石膏を用いた採型を行なうために専門家のもとに赴いて採型を行なう必要がないので、それだけ使用者に掛ける負担を軽減できる。
【0028】
健常な人体の表面の立体形状および色は、人体の一部を欠損した使用者本人の欠損が生じていない側の肢体を計測し、前記情報処理装置を用いて鏡像に変換することにより計測する場合(請求項7)には、既に失っている肢体の立体形状を、義肢の使用者の健常な側の肢体の立体形状の鏡像によって得ることができるので、使用者自身の身体的な特徴に合わせた義肢の造形を極めて容易に行なうことができ、使用者にとって全く違和感のない義肢であるから、その使用にあたって使用者の精神的な苦痛がない。なお、情報処理装置にとって鏡像の作成は3次元情報の何れかの座標情報を正負逆転するだけであるから極めて容易に行なうことができる演算処理である。
【0029】
前記義肢ソケット部を用いて前記端部に固定されると共に人間の肢体の動きに近い動作を可能とする骨格ロボット部を形成し、義肢に骨格ロボット部の表面に嵌合する内面部を形成する場合(請求項8)には、義肢としての見栄えのみならず、能動的な機能を有する義肢を容易に形成することができ、使用者はこの義手を用いて何らかの作業を行なうことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の第1実施形態に係る義肢作成方法の例を示す図である。
図2】第2実施形態に係る義肢作成方法の例を示す図である。
図3】第3実施形態の義肢の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図1を用いて、本発明の第1実施形態に係る義肢作成方法を説明する。図1(A)は例えば右手の指に欠損が生じた人体1の断端2の採型を行なう行程を示す図であり、3は断端2の形状を採型するための三次元計測手段の一例であるハンディータイプの三次元スキャナ、4は前記計測したデータをまとめて三次元の採型情報を求める採型処理部である。
【0032】
前記三次元スキャナ3は複数の撮像部3A,3B,3Cと複数の発光部3Dを有し、採型対象としての断端2に向けて断端2の周囲の複数の方向から撮像した画像を用いて捜査線状に距離情報を算出するものであり、この三次元計測手段3の位置情報、計測方向情報および距離情報からなる採型計測情報を取得し、採型処理部4に入力することにより、断端2の立体形状の採型を行なうものである。
【0033】
本実施形態の場合、ハンディータイプの三次元スキャナ3を用いているので、使用者の人体1を動かさなくても三次元計測手段3を動かしてあらゆる方向から断端2の立体形状を採型できるので、義肢の使用者は特別な施設に赴くまでもなく、居ながらにして断端2の採型を行なうことができ、それだけ手軽に義手を作成することができる。
【0034】
図1(B)は健常な人体5の立体形状を三次元計測手段によって計測する行程を示す図であり、この人体5は前記断端2をもつ義肢の使用者本人の健常な側の肢体である。なお、三次元スキャナ3および採型処理部4は図1(A)と同じものを用いることができる。なお、前記断端2の立体形状および健常な人体5の立体形状の情報は何れも後述する演算処理部に転送される。
【0035】
図1(C)は前記断端2に嵌合する義肢ソケット部7Aと健常な人体5の三次元形状を再現する義肢の立体モデルデータ7を演算処理により求める行程を示す図であり、これらは情報処理装置8によって実行される義肢作成プログラムによって算出される。とりわけ、健全な人体5の三次元形状は義肢使用者本人の健常な側の肢体(本例の場合は左手)の鏡像であるから、この鏡像を基に形成される右手の義肢を装着すると左右対称の立体形状となるので、見栄えが良く、使用者の精神的苦痛を必要最小限に抑えることができる。
【0036】
また、情報処理装置8の画面を用いて形成される義肢の立体モデルデータ7を確認するので、使用者は立体モデルデータ7の段階で義肢の出来映えを確認し、調整することも可能である。
【0037】
図1(D)は前記立体モデルデータ7に従った立体形状の義肢の立体モデル10を形成する行程を示す図である。9は三次元造形手段の一例として、走査線方向に樹脂素材を噴射し、紫外線の照射などによって硬化させ、平面状に積層することにより立体形状を造形する3Dプリンタであり、本実施形態の3Dプリンタ9は、例えばABS樹脂などの硬質樹脂を用いて立体モデル10を形成する。
【0038】
この立体モデル10は義肢の立体形状に形成されるものであるから、立体モデル10を用いて従来の成型方法を用いて容易に軟質樹脂からなる義肢11を形成することができる。
【0039】
図1(E)は形成された立体モデル10を用いて義肢11を形成するための型12を形成する行程を示す図である。型12は例えば石膏などを用いて形成され、その上端に義肢11を形成するための樹脂として例えばシリコーンを流入するための流入口12Aと、この流入孔12Aと対面となる下端に、空気抜き孔12B、12Cとを形成してある。なお、10Aは使用者の断端2にちょうど嵌合する形状に形成された義肢ソケット部である。
【0040】
従って、流入孔12Aから肌色に調整されたシリコーンを流し込むことにより、立体モデル10と同じ形状のシリコーンからなる義肢11を形成することができる。この義肢11は使用者の断端2にちょうど嵌合する義肢ソケット部11Aを備え、かつ、その表面の立体形状は使用者の健常な側の手の形状の鏡像に形成されるので、使用者はこの義肢11の義肢ソケット11Aに断端2を挿入するときに安定した装着感を得ることができ、全く違和感のない外観を得ることができる。
【0041】
上述の実施形態では一旦立体モデル10を形成してから義肢11を形成する例を示しているが、本発明はこの点に限定されるものではない。
【0042】
図2は第2実施形態の義肢作成方法を説明する図である。図2において、図1と同じ符号を付した部分については同一または同等の部分であるから、その詳細な説明を省略する。図2(A)、図2(B)において、3’は採型対象に対してその三次元形状のみならずその表面の色を計測する機能を有する三次元計測手段であり、3A’〜3C’は色情報を合わせて測定可能な撮像部である。
【0043】
本実施形態のように、三次元計測手段3’によって断端2および健常な人体5の立体形状のみならず、その表面の色も計測することにより、形状のみならず色まで合わせて、より実物に近い義肢11を作成することができる。
【0044】
すなわち、図3(C)に示す立体モデルデータ7を作成する場合にも作成される義肢11の色も合わせてモデルを作成し、これを確認することができる。なお、本例の場合、立体モデルデータ7として各部の硬度を設定することも可能であり、義肢ソケット部7Aを構成する素材の硬度を高く設定する子とが可能である。
【0045】
また、図3(D)に示す3Dプリンタ9は前記立体モデルデータ7に合わせて調整された色の樹脂を積層することにより、義肢11を製造することができるものである。また、この3Dプリンタ9によって積層する樹脂を立体モデルデータ7に含まれる硬度情報に合わせて調整することにより、例えば義肢ソケット部7Aの硬度を引き上げて義肢11装着時の安定感を向上させることができる。
【0046】
図3(E)に示す義肢11は使用者の断端2にちょうど密着すると共に他の部分に比べて硬度の高い義肢ソケット部11Aを備え、かつ、健常な左手の立体形状の鏡像であると共にその色に合わせた表面を有する。従って、使用者は快適な装着感を得ると共に健常な状態と見間違えるほどリアルな外観を得ることができるので、その精神的な苦痛を軽減できる。
【0047】
上述の実施形態では断端2の形状のみならず、使用者の健常な側の肢体5の立体形状を三次元計測手段3(または3’)によって計測するのでその形状を使用者に合わせて容易に調整できるが、失った健常な人体の立体形状は予め計測されたものであってもよい。すなわち、使用者が手術などによって肢体の一部を失う場合には、手術前に失う肢体の三次元形状および色を計測して保存してあってもよい。あるいは、複数の基本的な肢体の立体形状をライブラリとして記憶し、情報処理装置8によって立体モデルデータ7を作成するときにライブラリに記憶させた肢体の立体形状を選択して用いるようにしてもよい。
【0048】
図3は上述の義肢11の変形例を示すものである。図3において、図1図2と同じ符号を付した部材は同一または同等の部材であるから、その詳細な説明を省略する。図3に示す義肢20は前記義肢ソケット部11Aを用いて断端2に固定されると共に人体の肢体の動きに近い動作を可能とする骨格ロボット21を有し、かつ、この骨格ロボット21の表面に嵌合する骨格ロボット収容部22を有する。なお、骨格ロボット21の表面形状は情報処理装置8内にライブラリとして記憶させ、選択できるようにすることが好ましい。
【0049】
従って、本実施形態の義肢20は骨格ロボット21によって、使用者の機能障害を補助することができるので装具としての機能も有し、それだけ、使用者の苦痛を軽減できる。また、義肢20に骨格ロボット21の立体形状に合わせた骨格ロボット収容部22を備えるので、義肢20の外観も健常な状態と酷似しており、それだけ使用者の精神的な苦痛も軽減できる。
【符号の説明】
【0050】
2 断端
3,3’ 三次元計測手段
5 健常な人体
7 立体モデルデータ
8 情報処理装置
9 三次元造形手段
10 立体モデル
11,20 義肢
図1
図2
図3