【課題】ベーパの発生を抑制することで燃料の吐出及び燃圧不全の発生を抑制し、内燃機関を備える乗り物、農機具、発電機等の安定した運転を可能とするポンプ及び燃料噴射装置を提供する。
【解決手段】ポンプ30は、ポンプ室35eを画定するポンプ本体31と、偏心カム41aの回転に応じて往復動することで、ポンプ室35e内に吸引した燃料をインジェクタに送出するプランジャ35aと、外部からの回転トルクが入力される入力部分31cとを備える。入力部分31cは、回転部材に接続された接手部材38に連結された偏心カム41aと、接手部材38を軸支するボス部32gと、接手部材38の軸方向の動きを規制するブッシュ32dと、を備える。
前記伝達部材は、回転するインナーケーブルと回転しないアウターケーブルとを有するロータリーケーブルと、前記インナーケーブルと前記カムとを連結して前記軸受部に外周を支持される接手部材と、前記アウターケーブルと前記軸受部の外周とを接続する接続部材と、を備え、
前記アウターケーブルと前記接続部材とを覆うカバーを備えることを特徴とする請求項1又は2に記載のポンプ。
前記入力部は、リコイルスターターが取り付けられた前記クランクシャフト、又は前記クランクシャフトに伴って動作する前記バランサシャフト、前記カムシャフト若しくは前記ガバナから前記カムへ回転トルクを伝達する前記伝達部材に接続されていることを特徴とする請求項6に記載のポンプ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された従来のポンプは、ポンプを動作させるためのモータを必要としていたため高コストとなっていた。更に、そのポンプを使用する燃料噴射装置は、モータを動作させるためのバッテリを必要としていたため高コストとなっていた。
【0005】
また、手動式の始動装置(リコイルスターター)が搭載されたエンジンは、発電装置及びバッテリを搭載していないモデルも存在する。そのような発電装置及びバッテリを搭載していないモデルに、低燃費、低排ガス、始動性向上を目的としたFI(フューエルインジェクション、電子制御による燃料噴射)化を実施する場合には、FIシステムを動作させるための発電装置を新たに取り付けるようにしていたためコストがかかっていた。特に、FIシステムに必要な総電力のうち、高圧ポンプを駆動させるための電力の占める割合は大きかった。
【0006】
そこで、エンジン動作に伴って回転する部材の回転動力を利用してポンプを駆動しようとすると、エンジンの燃焼室の近傍にポンプを配置しなければならず、その環境温度はエンジン温度程度まで上昇することとなる。
この程度まで環境温度が高くなると、特に、燃料供給通路及びポンプの低圧部にベーパが発生しやすくなる。そして、ポンプがこのベーパを吸入すると、吐出不全、燃圧不全が発生し、安定した運転が困難になる。また、エンジンの再始動時にポンプがベーパを吸入することにより、始動困難となることがある。
【0007】
そして、ベーパは、低圧で高温である程発生しやすい。このベーパの発生を抑制するため、低圧部を備えるポンプが環境温度の低い場所に配置されることが望ましい。ここで、エンジンヘッドの上部に排気管が配置されるタイプのエンジンの場合、ポンプの使用環境温度は、排気管からの熱を受けることにより高温になる。このため、ヘッドの上部に配置されたポンプを避けて排気管を配置すると、エンジン全高が大きくなることがある。
【0008】
また、汎用発電機用エンジン等は、静音性を得るため、エンジン本体を防音庫に格納する場合もある。この場合、特にエンジンの使用環境温度が高くなり、高温環境時の安定性や再始動性に難があった。また、上記のように、エンジン全高が大きくなると、防音庫等にエンジンを収納できなくなる恐れがあった。
【0009】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ベーパの発生を抑制することで燃料の吐出不全及び燃圧不全の発生を抑制し、内燃機関を備える乗り物、農機具、発電機等の安定した運転を可能とするポンプ及び燃料噴射装置を提供することにある。その他の目的は、モータによらずとも安定して燃料を噴射可能であり、低コストなポンプ及び燃料噴射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題は、本発明に係るポンプによれば、エンジンの吸気管内又は燃焼室内に燃料を噴射するインジェクタに、タンクから前記燃料を送出するポンプであって、ポンプ室を画定するポンプ本体と、前記エンジンの動作に応じて回転する回転部材の回転トルクが入力される入力部と、前記ポンプ室内に吸引した燃料を加圧して前記インジェクタに送出する往復部材と、を備え、前記入力部は、前記回転部材に接続された伝達部材に連結され回転トルクを伝達されて前記往復部材を往復動させるカムと、前記伝達部材を軸支する軸受部と、前記伝達部材の軸方向の動きを規制する押さえ部と、を有することにより解決される。
【0011】
上記構成によれば、回転部材とカムとを伝達部材によって接続し、カムによって往復部材を往復動させることで、伝達部材によってモータによらずにポンプを動作させることができ、ポンプを動作させるためのモータが不要となるため低コストとなる。更に、伝達部材によって、エンジンシリンダ等の高温部から離してポンプを配置することができ、ベーパの発生しやすいポンプ低圧部が高温になることを回避でき、ベーパの発生を抑制することができる。
【0012】
また、前記軸受部は、前記伝達部材の軸方向一端を軸受しており、前記軸受部における前記伝達部材の前記軸方向の長さが前記軸受部の内径に対して2倍以上であると好ましい。
上記構成によれば、軸受部と伝達部材との接触面積を大きくして伝達部材の横振れを抑制することができることにより、安定したタイミングで燃料をインジェクタに送出することが可能となる。
【0013】
また、前記軸受部は、ブッシュを介して前記伝達部材を軸支すると好ましい。
上記構成によれば、ブッシュによって伝達部材の円滑な回転を維持しつつ、伝達部材の横振れを抑制することができ、安定したタイミングで燃料をインジェクタに送出することが可能となる。
【0014】
更に、前記軸受部と前記伝達部材との間にシールが取り付けられていると好ましい。
上記構成によれば、シールによって軸受部と伝達部材との間に塵埃が侵入することを防止でき、伝達部材の円滑な回転を維持して、安定したタイミングで燃料をインジェクタに送出することが可能となる。
【0015】
また、前記伝達部材は、回転するインナーケーブルと回転しないアウターケーブルとを有するロータリーケーブルと、前記インナーケーブルと前記カムとを連結して前記軸受部に外周を支持される接手部材と、前記アウターケーブルと前記軸受部の外周とを接続する接続部材と、を備え、前記アウターケーブルと前記接続部材とを覆うカバーを備えると好ましい。
上記構成によれば、カバーによって、接続部材と伝達部材との間、及びアウターケーブルとインナーケーブルとの間に塵埃が侵入することを防止でき、伝達部材の円滑な回転を維持して、安定したタイミングで燃料をインジェクタに送出することが可能となる。
【0016】
また、前記回転部材は、クランクシャフト、バランサシャフト、カムシャフト又はガバナであり、前記入力部は、前記クランクシャフト、前記バランサシャフト、前記カムシャフト又は前記ガバナから前記カムへ回転トルクを伝達する前記伝達部材に接続されていると好ましい。
上記構成によれば、エンジンに設けられた既存の回転部材にてポンプを駆動できることにより部品点数の増加を抑え、低コスト化、省資源化に寄与することができる。
【0017】
更に、前記入力部は、リコイルスターターが取り付けられた前記クランクシャフト、又は前記クランクシャフトに伴って動作する前記バランサシャフト、前記カムシャフト若しくは前記ガバナから前記カムへ回転トルクを伝達する前記伝達部材に接続されていると好ましい。
上記構成によれば、リコイルスターターによってエンジンを動作させる際に、クランクシャフト、バランサシャフト、カムシャフト又はガバナに接続された伝達部材によって機械的にポンプが動作するため、リコイル時の発電によってECUが立ち上がり、モータが動作してポンプを駆動させる場合と比べて、リコイル時の燃料昇圧が早くなり、始動に至るまでのリコイル回数を減らすことができる。
【0018】
また、前記入力部は、かさ歯車又はウォームギヤを含んで構成される前記伝達部材に接続されていてもよい。
上記構成によれば、ロータリーケーブルと回転部材とのトルク伝達を、かさ歯車又はウォームギヤによって回転トルク方向を変えることによって、エンジンの形状に合わせてロータリーケーブルを配置することが可能となり、ポンプを任意の位置に配置でき設計自由度を高めることができる。
【0019】
また、前記課題は、本発明に係る燃料噴射装置によれば、前記ポンプと、前記ポンプに接続された前記インジェクタと、前記回転部材と前記入力部とに接続された前記伝達部材と、を備えることにより解決される。
上記構成によれば、回転部材とカムとを伝達部材によって接続し、カムによって往復部材を往復動させるようにし、伝達部材によってモータによらずにポンプを動作させることができ、ポンプを動作させるためのモータ及びモータを動作させるためのバッテリが不要となるため低コストとなる。更に、伝達部材によって、エンジンシリンダ等の高温部から離してポンプを配置することができ、ベーパの発生しやすいポンプ低圧部が高温になることを回避でき、ベーパの発生を抑制することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係るポンプによれば、ポンプを動作させるためのモータが不要となるため低コストとなり、更に、ベーパの発生を抑制することができる。
また、本発明によれば、安定したタイミングで燃料をインジェクタに送出することが可能となる。
また、本発明によれば、部品点数の増加を抑え、低コスト化、省資源化に寄与することができる。
また、ポンプの配置の自由度を向上させることができる。
また、リコイル時の燃料昇圧が早くなり、始動に至るまでのリコイル回数を減らすことができる。
また、エンジンの形状に合わせてロータリーケーブルを配置することが可能となり、ポンプを任意の位置に配置でき設計自由度を高めることができる。
また、ポンプの高温環境時の吐出不全、燃圧不全が改善され、高温環境時において、動作性が良好となり再始動性が向上する。
また、本発明に係る燃料噴射装置によれば、ポンプを動作させるためのモータ及びモータを動作させるためのバッテリが不要となるため低コストとなり、更に、ベーパの発生を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本願発明の実施形態に係るポンプ及び燃料噴射装置について、図面を参照して説明する。
燃料噴射装置10は、内燃機関の吸気管又は燃焼室内に導入された空気に燃料を噴射する装置である。この燃料噴射装置10は、
図1に示すように、燃料を蓄えるタンク11と、図示せぬエンジンの吸気管内又は燃焼室内に燃料を噴射するインジェクタ20と、
図2,
図3に示すポンプ30と、ポンプ30を駆動する駆動源Dと、駆動源Dとポンプ30とを接続するロータリーケーブル40(本願発明に係る伝達部材の一部に相当する。)とから構成される。
ここで、
図1は、燃料噴射装置10の構成図、
図2は、ポンプ30を示す斜視図、
図3は、
図2に示されたポンプ30のIII−III断面を示す図である。
【0023】
まず、
図1を参照して燃料噴射装置10の全体構成から説明する。本実施形態に係る燃料噴射装置10は、ポンプ30を駆動する駆動源Dが図示せぬエンジンとともに回転する後述するクランクシャフト61、バランサシャフト60、ガバナ65、又は図示せぬカムシャフト(本願発明に係る回転部材に相当し、以下、クランクシャフト61等という。)であること、及びクランクシャフト61等から可撓性を有するロータリーケーブル40及びカム機構41を介してポンプ30に動力が伝達されることを特徴する。
ポンプ30に動力が伝達されて、後述するプランジャ35a等が動作することで、タンク11から供給される燃料がインジェクタ接続口体33bを介してインジェクタ20に供給され、その燃料がエンジンの吸気管や燃焼室内に吐出されることとなる。
【0024】
次に、
図2及び
図3を参照して、ポンプ30について説明する。なお、以下の説明において、回転トルクが入力される後述の入力部分31c以外は、特許文献1に開示されたポンプと同様の構成を有しているため、その詳細な説明を省略して概要のみを説明する。
ポンプ30は、燃料の吸入及び吸入した燃料の圧縮が行われる本体部分31aと、本体部分31aを塞ぐ蓋部分31bと、燃料を圧縮するための回転トルクが入力される入力部分31c(本願発明に係る入力部に相当する。)との3つの部分から主に構成される。
ポンプ30は、機能的には、燃料を圧縮するプランジャ式ポンプ部35と、燃料の圧縮をサポートするダイヤフラム式ポンプ部36と、圧縮後の燃料の圧力を調整するプレッシャレギュレータ50とから構成される。
【0025】
まず、ポンプ30の入力部分31cについて説明する。入力部分31cは、後述するクランクシャフト61等からロータリーケーブル40を介して回転トルクが入力される部分である。
入力部分31cは、カム機構41と、ポンプ本体31の一部を構成しカム機構41を覆う入力部本体32と、入力部本体32に固定されて接手部材38を固定するボス付き押さえ32aと、から主に構成される。
【0026】
カム機構41は、接手部材38から入力される回転トルクを固定具37及びプランジャ35aの往復動の荷重に変換するものであり、偏心カム41aと、これを覆うカム受け部材41bとから構成される。
【0027】
接手部材38は、本願発明に係る伝達部材の一部に相当し、ロータリーケーブル40に接続される受け穴38eを有する入力軸38aと、筒状のブッシュ32dにスラスト方向を支持される他よりも大径に形成されたフランジ38bと、偏心カム41aに差し込まれて嵌合する嵌合軸38cとから主に構成される。接手部材38は、ボス付き押さえ32aによって、入力部本体32に回転可能に支持されている。
【0028】
ボス付き押さえ32aは、入力部本体32の断面円形状の凹部である嵌合溝32eに嵌合する大径筒部32fと、大径筒部32fの外径よりも小径に形成された外径を有してポンプ30の外方へ突出する筒状のボス部32gと、を備える。
【0029】
詳細には、大径筒部32fは、その周面に取り付けられたOリング32cによって、入力部本体32の断面円形状の凹部である嵌合溝32eに嵌合している。そして、大径筒部32fにおける中心軸を通る中空部32iを形成する内面は、筒状のブッシュ32dの外面と略一致し、フランジ38bの外径よりも若干大きい内径で形成されており、接手部材38の軸方向の動きを規制するように形成されている。
【0030】
ボス部32gには、中心軸を通る中空部32jが形成されており、ボス部32gにおける中空部32jを形成する内面は、入力軸38aの外面と略一致するように形成されている。すなわちボス部32gにおける中空部32jを形成する内面は、入力軸38aに対する軸受部として機能する。ボス部32gからは入力軸38aが外方に突出するように形成されている。
【0031】
鍔部32hは、入力部本体32における嵌合溝32eの外側周縁に密着した状態で、タッピングスクリュー32bによって入力部本体32に固定されている。接手部材38は、ブッシュ32dによって回転可能に支持されて、ボス付き押さえ32aの嵌合溝32eへの固定に伴って入力部本体32に取り付けられている。
【0032】
このように構成された接手部材38は、本発明に係る押さえ部に相当するブッシュ32dによって、スラスト方向の移動が制限され、軸方向の振れが抑えられることとなる。更に、接手部材38は、ボス部32gにおける中空部32jを形成する内面により軸支されることで、接手部材38の横振れが抑えられることとなる。ここで、接手部材38の入力軸38aの側面との接触面積を大きくして接手部材38の横振れをさらに抑制するために、中空部32jの軸心方向の長さをその直径に対して2倍以上にすることが望ましい。
【0033】
本体部分31aは、プランジャ式ポンプ部35を備え、入力部分31cとの間にダイヤフラム式ポンプ部36、蓋部分31bとの間にプレッシャレギュレータ50を備える。
プランジャ式ポンプ部35においては、偏心カム41aが回動することで、固定具37が往復動し、これに固定されたプランジャ35aがスリーブ35b内を往復動することとなる。このプランジャ35aは、本発明に係る往復部材に相当する。プランジャ35aの往復動に応じて、吸入バルブ35cがタンク11から吸込用接続口体33aを介してポンプ室35e内に燃料を吸入して、吐出バルブ35dがポンプ室35e内の燃料をインジェクタ20へ吐き出すこととなる。
また、ダイヤフラム式ポンプ部36は、不足するプランジャ式ポンプ部35のポンプ室35eへの吸い込み機能を高めるためのものである。また、プレッシャレギュレータ50は、インジェクタ20へ供給する燃料を所定圧に保つ機能を有する。
【0034】
蓋部分31bは、本体部分31aを覆って、タンク11から燃料をポンプ30に導入するための吸込用接続口体33aと、インジェクタ20へ供給する燃料の所定圧を越えた部分についての余剰の燃料をタンク11に戻すための
図1に示すリターン用接続口体33cを備える。
【0035】
上記構成によるポンプ30によって、ロータリーケーブル40から入力される回転トルクに応じて、タンク11から燃料が吸入され、吸入された燃料が所定の圧力まで昇圧されて、インジェクタ20へ供給されることとなる。
【0036】
次に、バランサシャフト60等の回転トルクをポンプ30に伝えるための各種構成について、
図4及び
図5(A)及び
図5(B)を参照して説明する。
【0037】
ここで、
図4は、ロータリーケーブル40とバランサシャフト60との接合部を示す断面図、
図5(A)は、ロータリーケーブル40とバランサシャフト60との他の例に係る接合部を示す上面図であり、
図5(B)は、断面図である。
図4に示すロータリーケーブル40は、一端を、接手部材42を介してバランサシャフト60に接続されて、他端を、
図3に示す接手部材38を介してカム機構41と当接可能にポンプ30の入力部本体32に取り付けられている。
【0038】
詳細に説明すると、バランサシャフト60の一端部には、受け穴60aがバランサシャフト60の回転軸と略同軸の延長上に形成されている。
接手部材42は、本願発明に係る伝達部材の一部に相当し、受け穴60aと略等しい断面を有して棒状の形状を成し、その一端が受け穴60aに挿入され、回転が同期するように固定ピン60bによって固定されている。接手部材42は、クランクケース44を貫通し、クランクケース44に取り付けられたシール44aによって回転可能に支持されている。クランクケース44の外部に露出した接手部材42の他端には、断面方形の受け穴42aが、軸方向に延びる中心線上でありバランサシャフト60の回転軸と略同軸の延長上に形成されている。
【0039】
クランクケース44における接手部材42が貫通する突出部分の周囲にはネジ部40dが形成されている。
ロータリーケーブル40は、インナーケーブル40aが接手部材42の受け穴42aに挿入された状態で、鍔つきのアウターケーブル40bに係合するフレアナット40cがネジ部40dにねじ込まれることで、接手部材42ひいてはバランサシャフト60に接続されることとなる。
【0040】
このように、バランサシャフト60の回転トルクを、バランサシャフト60の延長上に配置したロータリーケーブル40によって直線的に取り出すようにすることで、ロータリーケーブル40の振れを抑制して、効率的にバランサシャフト60から回転トルクが取り出されることとなる。
【0041】
図5(A)及び
図5(B)に示すロータリーケーブル40は、バランサシャフト60の軸方向に対して直交する方向に配設されるように、一端を、かさ歯車45a,46aを有する接手部材45,46を介してバランサシャフト60に接続されている。
【0042】
詳細に説明すると、接手部材45は、本願発明に係る伝達部材の一部に相当し、その一端側が受け穴60aと略等しい断面を有して棒状の形状を成し、他端にかさ歯車45aを有する。接手部材45の一端が受け穴60aに挿入され、回転が同期するように固定ピン60bによって固定されている。そして、接手部材45は、略L字型の接手カバー47に取り付けられたシール44aによって回転可能に支持されている。なお、接手カバー47は、クランクケース44にOリング47bによって嵌められて取り付けられている。
【0043】
接手部材46は、本願発明に係る伝達部材の一部に相当し、その一端にかさ歯車46aを有し、その他端側が棒状の形状を成している。接手部材46は、接手部材45に直交する向きに配されて接手カバー47に回転可能に支持されており、かさ歯車46aがかさ歯車45aに噛合するように配置されている。
接手部材46の他端には、断面方形の受け穴46bが、軸方向に延びる中心線上でありバランサシャフト60の回転軸と略直交する軸方向に形成されている。
【0044】
接手カバー47における接手部材46が貫通する突出部分の周囲にはネジ部47aが形成されている。
ロータリーケーブル40は、インナーケーブル40aが接手部材46の受け穴46bに挿入された状態で、鍔つきのアウターケーブル40bに係合するフレアナット40cがネジ部47aにねじ込まれることで、接手部材46,45ひいてはバランサシャフト60に接続されることとなる。
【0045】
上記構成に係るかさ歯車45a,46aを有する接手部材45,46によれば、バランサシャフト60の軸方向に対して直交する方向にロータリーケーブル40を引き出すことができる。このため、ロータリーケーブル40に接続されるポンプ30の配置の自由度を高めて、高温環境下をポンプ30が配置されることを避けることができる。
【0046】
上記ロータリーケーブル40のインナーケーブル40aは端部の断面方形状から成るものとして説明したが、回転トルクを伝達できればその形状は限定されない。
そこで、他のインナーケーブル55,56,57の端部形状について、
図6〜
図8を参照して説明する。ここで、
図6(A)は、インナーケーブル55の端部の側面図、
図6(B)は、
図6(A)のVIB-VIB断面を示す図であり、インナーケーブル40aのケーブル本体55aの断面を示す図、
図6(C)は、
図6(A)のVIC-VIC断面を示す図であり、接続端部55bの断面を示す図、
図7(A)は、インナーケーブル56の端部の側面図、
図7(B)は、インナーケーブル56の接続端部56bを軸方向から示す図、
図7(C)は、他の例に係るインナーケーブル56の端部を軸方向から示す図、
図8(A)は、インナーケーブル57の端部の側面図、
図8(B)は、インナーケーブル57の端部を軸方向から示す図、
図8(C)は、他の例に係るインナーケーブル57の端部を軸方向から示す図である。
【0047】
図6(A)に示すインナーケーブル55は、
図6(B)に示すように、円形状の断面を有するケーブル本体55aと、
図6(C)に示すように、正方形状の断面を有する接続端部55bとから形成されている。このように、接続端部55bが正方形状の断面を有して形成されていることで、断面方形の受け穴46bに嵌められて、回転することによって回転動力を接手部材46に伝達することが可能となる。
【0048】
図7(A),
図7(B)に示すインナーケーブル56は、ケーブル本体56aの先端に接続端部56bが接続されて成るものである。接続端部56bは、軸方向外側に突出する断面凸状を成して所定の厚さをもって形成されている。
このように、接続端部56bが断面凸状に形成されており、更に、接続端部56bに適合する形状に形成された接手部材42,46が接続端部56bに接続されれば、接手部材42,46からの回転トルクが接続端部56bに伝わることとなる。
具体的には、接手部材42,46における接続端部56bに適合する形状とは、すりわり状の受け穴42a,46bを有する形状であって、そのすりわりが、凸状の断面における突出部の幅と等しいか若干大きい程度の幅で形成された形状である。
なお、接続端部56bの凸状と、接手部材42,46のすりわり状とは、相互に逆の形状を成す関係であってもよい。この場合、接続端部56cは、
図7(C)のように、断面凹状を成して所定の厚さをもって形成されたものとなる。
【0049】
図8(A),
図8(B)に示すインナーケーブル57は、ケーブル本体57aの先端に接続端部57bが接続されて成るものである。接続端部57bは、略円柱状に形成されて、先端に二方取り形状を有する。
このように、接続端部57bが略円柱状を成して二方取り形状に形成されており、更に、接続端部57bに適合する形状に形成された接手部材42,46が接続端部57bに接続されれば、接手部材42,46からの回転トルクが接続端部57bに伝わることとなる。
具体的には、接手部材42,46における接続端部57bに適合する形状とは、すりわり状の受け穴42a,46bを有する形状であって、そのすりわりが、接続端部57bの二方取り形状の対向する面間幅と等しいか若干大きい程度の幅で形成された形状である。
なお、接続端部57bの二方取り形状と、接手部材42,46のすりわり状とは、相互に逆の形状を成す関係であってもよい。この場合、接続端部57cは、
図8(C)のように、すりわり状に形成されたものとなる。
【0050】
なお、上記構成においては、ロータリーケーブル40を、接手部材42又は接手部材45,46を介してバランサシャフト60に接続する例に説明したが、エンジンの動作に伴って回転する部材であれば、バランサシャフト60に限らず、クランクシャフト61、図示せぬカムシャフトに接続して、これらのいずれかを駆動源Dとするようにしてもよい。その他、駆動源Dとしてのガバナ65から動力を得る変形例について次に説明する。
【0051】
<回転トルクを取り出す構成に係る変形例>
次に、ガバナ65からの回転トルクをポンプ30に伝えるための各種変形例に係る構成について、
図9〜
図12を参照して説明する。なお、以下において、上記実施形態又はそれぞれの構成と同一の機能を有する部材については同一符号を付し重複する説明を排除して、その相違点を明確にする。
図9は、ポンプ30の駆動源Dとしてガバナ65を用いる例であって、回転支持軸65c、これに平行な伝動シャフト66bのそれぞれの周りに回転する歯車を介して回転トルクをガバナ65から取り出す構成を説明する図、
図10は、かさ歯車を介して回転トルクをガバナ65から取り出す構成を説明する図、
図11(A)は、ウォーム49a介して回転トルクをガバナ65から取り出す構成を説明する図、
図11(B)は、
図11(A)の側面図、
図12は、ウォーム49aを介して回転トルクをガバナ65から取り出す他の構成を説明する図である。
【0052】
図9に示す変形例においては、クランクシャフト61の回転速度を調整するガバナ65の回転軸に平行な方向にロータリーケーブル40をクランクケース44から引き出す構成から成り、ガバナ65、ガバナ65が有するガバナ歯車65bに噛合して回転する接手部材66、及びロータリーケーブル40を介してポンプ30を回転駆動する構成である。
【0053】
クランクシャフト61は、クランクケース44にシール44fによって回転可能に支持されている。そして、クランクシャフト61には、その軸周りに回転する歯車61aが一体的に形成されており、この歯車61aがガバナ65の周面に形成されたガバナ歯車65aに噛合している。
ガバナ65は、クランクケース44の受け穴44cに固定された回転支持軸65cによって回転可能に支持されており、クランクシャフト61の回転に伴って回転する。ガバナ65には、ガバナ歯車65aとは別に、ガバナ歯車65bがクランクケース44側に形成されている。このガバナ歯車65bが、接手部材66の周面に形成されて隣接して設けられた接手歯車66aに噛合している。
【0054】
接手部材66は、本願発明に係る伝達部材の一部に相当し、ガバナ65及びロータリーケーブル40に接続される部材であり、接手歯車66aと、接手歯車66aの中央から接手歯車66aの厚さ方向に延在する棒状の伝動シャフト66bとから構成される。伝動シャフト66bは、クランクシャフト61及び回転支持軸65cと平行に延在してクランクケース44の通し穴44dを貫通しており、クランクケース44にシール44eによって回転可能に支持されている。伝動シャフト66bには、インナーケーブル40aに係合する断面方形状の受け穴66cが形成されている。受け穴66cは、クランクケース44の外側にある端部側から軸方向に形成されている。そして、クランクケース44における伝動シャフト66bが貫通する突出部分の周囲にはネジ部44gが形成されている。
【0055】
ロータリーケーブル40は、インナーケーブル40aが接手部材66の受け穴66cに挿入された状態で、鍔つきのアウターケーブル40bに係合するフレアナット40cがネジ部44gにねじ込まれることで、接手部材66ひいてはガバナ65に接続されることとなる。
特に、ガバナ65は、クランクシャフト61に形成された歯車61aに噛合する関係上、クランクシャフト61の中心からその径方向におけるクランクケース44の壁側に配置されている。
このため、ロータリーケーブル40によってガバナ65から回転トルクを取り出すようにすることで、クランクケース44の壁側に出力部を設ける際に、ロータリーケーブル40の長さを短くすることができる。
【0056】
図10に示す変形例においては、
図9に示す変形例と異なり、ガバナ65の回転軸に直交する方向にロータリーケーブル40をクランクケース44から引き出す構成から成り、ガバナ65、ガバナ65が有するかさ歯車65dに噛合して回転する接手部材48、及びロータリーケーブル40を介してポンプ30を回転駆動する構成である。
【0057】
図9に示す変形例と異なり、ガバナ65には、ガバナ歯車65aとは別に、かさ歯車65dがガバナ歯車65aに隣接する部分に形成されている。具体的には、かさ歯車65dは、回転支持軸65cのクランクケース44の受け穴44cに固定されている部分からクランクケース44の内側に離れるにつれて大径を成すように、回転支持軸65cに対して斜めに形成されている。
このかさ歯車65dが、接手部材48の周面に形成されたかさ歯車48bに噛合している。
【0058】
接手部材48は、本願発明に係る伝達部材の一部に相当し、ガバナ65及びロータリーケーブル40に接続される部材であり、かさ歯車48bと、かさ歯車48bの中央からかさ歯車48bの厚さ方向に延在する棒状の伝動シャフト48aとから構成される。伝動シャフト48aは、クランクシャフト61及び回転支持軸65cと直交する方向に延在するように配設されている。
【0059】
上記構成によれば、ガバナ65のかさ歯車48bと接手部材68のかさ歯車65dとの噛合によって、ガバナ65の回転軸である回転支持軸65cに直交する方向にクランクケース44からロータリーケーブル40を引き出すことが可能となる。
【0060】
図11(A)及び
図11(B)に示す変形例においては、他の変形例と異なり、ガバナ65の回転軸に対してねじれの位置にあるロータリーケーブル40をクランクケース44から引き出す構成から成る。具体的には、ガバナ65、ガバナ65が有するガバナ歯車65aに噛合して回転するウォーム49aを有する接手部材49(本願発明に係る伝達部材の一部に相当する。)及びロータリーケーブル40を介してポンプ30を回転駆動する構成である。なお、ガバナ歯車65aとウォーム49aにより本発明に係るウォームギヤを構成している。
【0061】
図9,
図10に示す変形例と異なり、ガバナ65のガバナ歯車65aは、接手部材49にウォーム49aに噛合するものであり、且つ、クランクシャフト61の歯車61aに噛合するものである。そして、ガバナ歯車65aは、平歯車、好ましくははすば歯車によって形成されている。
【0062】
また、
図12に示すように、ガバナ65において、クランクシャフト61の歯車61aに噛合するガバナ歯車65aとは別にクランクケース44側にはすば歯車65eを形成して、これをウォーム49aに噛合させるようにしてもよい。このようにすれば、クランクシャフト61の歯車61aとこれに噛み合うガバナ歯車65aを平歯車とすることでスラスト力が生じることを防ぐことができ、且つ、ウォーム49aに噛合する歯車をはすば歯車65eとして噛み合いを安定させることができる。
【0063】
上記のように、
図11及び
図12に示すウォームギヤを用いる構成によれば、ロータリーケーブル40の回転数を小さくでき、ロータリーケーブル40の振動及び摺動音を低減させ、耐久性を向上させることができる。また、ポンプ30側に設ける図示せぬ増速ギヤとのギヤ比を変更することで、ポンプ30の最大流量、フィード流量を任意に設定することが可能になる。
【0064】
また、クランクシャフト61、ガバナ65の回転支持軸65cに対して、ロータリーケーブル40のクランクケース44からの引き出し方向を直交させたり、ねじれの位置にさせたりすることが可能である。
このため、クランクケース44の上方又は図示せぬエンジン上部に配置しているタンク11近傍に向けてロータリーケーブル40を引き出すことが可能であり、タンク11内にポンプ30を配置する際にロータリーケーブル40を短くすることができる。
また、平行軸及び交差軸の歯車ではない、よりコンパクトなウォームギヤを用いることで、クランクケース44のサイズをコンパクトにすることが可能となる。
【0065】
<軸受構造に係る変形例>
上記のようにロータリーケーブル40によって、クランクシャフト61等から回転トルクを取り出してポンプ30を動作させる構成においては、インナーケーブル40aに接続される接手部材38に横振れが生じる場合がある。この場合、接手部材38に嵌合する偏心カム41aが円滑に回動しなくなり、燃料をインジェクタ20に送出するタイミングが理想的なタイミングでなくなることも考えられる。
【0066】
このような不具合を防ぐため、接手部材38の横振れを防止する軸受構造に係る変形例について、
図13〜
図15を参照して説明する。
ここで、
図13は、ベアリング70によって接手部材38を支持する構成に係るポンプ30の部分拡大断面図、
図14は、円筒形ブッシュ71aによって接手部材38を支持する構成に係るポンプ30の部分拡大断面図、
図15は、フランジブッシュ71bによって接手部材38を支持する構成に係るポンプ30の部分拡大断面図である。
【0067】
図13に示す構成においては、接手部材38には、嵌合軸38cとフランジ38bとの間に嵌合軸38cよりも大径の被支持軸38dが形成されている。この被支持軸38dとボス付き押さえ32aの中空部32iに面する内面との間に、玉軸受であるベアリング70が嵌合している。
このような構成によれば、ベアリング70で被支持軸38dを回転可能に支持でき、被支持軸38dがベアリング70の内面に面接触して支持されることで横振れを防止することができる。
【0068】
また、
図14に示す構成においては、接手部材38の入力軸38aとボス付き押さえ32aのボス部32gの中空部32jに面する内面との間に、含油ブッシュであり無給油軸受である円筒形ブッシュ71aが嵌合している。
そして、円筒形ブッシュ71aは、ボス付き押さえ32aに形成されて中空部32j側に突出する止め部32mによって、嵌合軸38c側への移動が制限されている。詳細には、止め部32mの突出端面は、円筒形ブッシュ71aの厚み部分に重なるように形成されている。
このような構成によれば、ベアリング70を用いるよりも安価で接手部材38を回転可能に支持でき、入力軸38aが円筒形ブッシュ71aの内面に面接触して支持されることで横振れを防止することができる。
【0069】
そして、
図15に示す構成においては、被支持軸38dとブッシュ32dの内面との間に、フランジブッシュ71bが嵌合している。フランジブッシュ71bは、その端部に形成されたフランジ71cが接手部材38のフランジ38b側に位置するように接手部材38に取り付けられている。
このような構成によれば、フランジブッシュ71bで被支持軸38dを回転可能に支持でき、被支持軸38dがフランジブッシュ71bの内面に面接触して支持されることで横振れを防止することができる。
更に、フランジ71cがブッシュ32dに当接可能な位置に配置されて、ブッシュ32dによってフランジブッシュ71bの軸方向の移動が制限される。このため、接手部材38は、フランジブッシュ71bによって安定的に支持されることとなる。
【0070】
<防塵構造に係る変形例>
上記のように、入力部本体32に固定されたボス付き押さえ32aのボス部32gに対して、ボス部32gに接続される接手部材38は、ロータリーケーブル40のインナーケーブル40aとともに相対的に回転する。そして、接手部材38とボス部32gとの間に塵埃が入り込むと、接手部材38の回転が阻害され、接手部材38に嵌合する偏心カム41aが円滑に回動しなくなり、燃料をインジェクタ20に送出するタイミングが理想的なタイミングでなくなることも考えられる。
【0071】
このような不具合を防ぐため、接手部材38とボス部32gとの間の塵埃の侵入を防止する軸受構造に係る変形例について、
図16及び
図17を参照して説明する。
ここで、
図16は、接手部材38とボス部32gとの間に取り付けられた防塵シール71dを備える構成に係るポンプ30の部分拡大断面図、
図17は、フレアナット40cとアウターケーブル40bとに取り付けられた防塵カバー71eを備える構成に係るポンプ30の部分拡大断面図である。
【0072】
図16に示す構成においては、接手部材38の入力軸38aとボス部32gの中空部32jに面する内面との間であって、入力軸38aの端部側でボス部32gの端面までの位置に防塵シール71dが設けられている。
このような構成によれば、ボス部32gの端面側から中空部32jに塵埃が侵入することを防止でき、ボス部32gに対する接手部材38の相対的な回転を円滑に保つことが可能となる。
【0073】
また、
図17に示す構成においては、ロータリーケーブル40を接手部材38に接続するための本発明に係る接続部材としてのフレアナット40cと、ロータリーケーブル40のアウターケーブル40bとを覆うように防塵カバー71eが取り付けられている。フレアナット40cは、接手部材38を覆ってボス部32gのネジ部32kにねじ込まれている。つまり、フレアナット40cがボス部32gにねじ込まれ、且つ、フレアナット40cとアウターケーブル40bとを防塵カバー71eが覆っているため、これらに囲まれる空間が密閉空間となる。
【0074】
このような構成によれば、ボス部32gと接手部材38との間に塵埃が侵入することを防止でき、ボス部32gに対する接手部材38の相対的な回転を円滑に保つことが可能となる。更に、ロータリーケーブル40のインナーケーブル40aとアウターケーブル40bとの間に塵埃が侵入することを防止することができ、アウターケーブル40bに対するインナーケーブル40aの相対的な回転を円滑に保つことが可能となる。
【0075】
上記の実施形態は、本願発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本願発明を限定するものではない。本願発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本願発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
【0076】
例えば、リコイルスターターが搭載された農機具等に、エンジンのクランクシャフト等を駆動源として上記実施形態に係る燃料噴射装置を採用するようにしてもよい。このように、モータを用いてポンプを動作させる場合と比べてリコイル時の燃料昇圧が早くなり、始動に至るまでのリコイル回数を減らすことができる。
更に、ポンプの駆動を機械式にすることで、FIシステムに必要な総電力を小さくでき、発電装置を小型化、低コスト化でき、バッテリレスFIシステムを低コストで実現できる。
【0077】
また、上記のように、可撓性を有するロータリーケーブルを用いて、回転トルクをポンプに伝達する構成はコスト面、ポンプへの接続が容易である点で好ましい。特に、ポンプを、タンクの近傍、送風ファンによる強制空冷風の流路上、又はオイルクーラーから離れた場所等、エンジンの燃焼室近傍を避けて環境温度の低い場所に配設することが可能となる。更には、ポンプをタンク内に配設するようにすれば、リターン配管が不要となる。
そして、クランクシャフト等の動力を伝達するものとしてはロータリーケーブルに限定されない。例えば、リンクと歯車と結合から成る部材を用いて、歯車の噛合によって回転トルクを機械的に伝達するようにしてもよい。
【0078】
また、本発明に係る燃料噴射装置は、自動車、自動二輪の他、農機具、船舶等の内燃機関を備える乗り物、工具等に適用することができる。