【解決手段】 画像表示素子からの光を、スクリーンに投射像として結像させるレンズ光学系2を備える投射レンズ鏡筒100において、投射レンズ鏡筒100の温度変化により生じる光学特性の変化に起因した投射像の画質の低下を抑えるために補正の対象とする光学特性が互いに異なる少なくとも2つ以上のレンズ群5,8をそれぞれ光軸Xに沿って移動させ、補正の対象とする光学特性の補正を行う補正機構39,40を備えること。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態に係る投射レンズ鏡筒100について、図面を参照しながら説明する。
【0016】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る投射レンズ鏡筒100の構成を説明するための図である。
図1は、投射レンズ鏡筒100の光軸Xを含む断面のうち、光軸Xの片側の断面の概略の構成を示す図である。
図1において、投射レンズ鏡筒100の右方から左方に向けて、図示外の画像表示素子からの光が進行し、投射レンズ鏡筒100から左方に出射する。投射レンズ鏡筒100から出射した光は、図示外のスクリーンに投射される。
【0017】
以下の説明において、投射レンズ鏡筒100を通過する光の進行方向を前方(前側)、その反対方向を後方(後側)として説明する。なお、
図1を含め、以下に説明する各図において、図面を判り易くするため、必要に応じて断面部のハッチングを省略している。
【0018】
(投射レンズ鏡筒100の概略の構成)
投射レンズ鏡筒100は、レンズ光学系2と、鏡筒3とを有する。レンズ光学系2は、前方から順に、第1レンズ群4と、第2レンズ群5と、第3レンズ群6と、第4レンズ群7と、第5レンズ群8とを有する。第1レンズ群4、第3レンズ群6および第4レンズ群7は、固定レンズである。第2レンズ群5および第5レンズ群8は可動レンズである。なお、図に示される各レンズ群の構成は簡略化されていて、実際のレンズ光学系2は、要求される光学特性に応じた適宜の構成とする。
【0019】
第2レンズ群5は、次の3つの目的で移動させられる。1つ目は、投射レンズ鏡筒100の組立工程の中の一工程である調整工程において、投射レンズ鏡筒100が所定の光学特性に設定されるように、第2レンズ群5の位置決めを行うための移動である。2つ目は、投射レンズ鏡筒100により投射像をスクリーンに結像させる際に、結像のピント調整を行うための移動である。3つ目は、投射レンズ鏡筒100により投射像をスクリーンに投射させている際に、投射レンズ鏡筒100の温度が上昇することにより悪化する像面湾曲を補正するための移動である。
【0020】
第5レンズ群8は、投射レンズ鏡筒100により投射像をスクリーンに投射させている際に、投射レンズ鏡筒100の温度が上昇することにより変化するバックフォーカスのずれを補正するために移動させられる。
【0021】
鏡筒3は、フランジ部9と、固定筒10と、直進案内筒11と、第1カム筒12と、第2カム筒13と、回転環14等とを有する。フランジ部9は、図示外の投射表示装置の筐体15に対して投射レンズ鏡筒100を取り付ける取付部として機能する。固定筒10は、フランジ部9に対して、ビス16により固定される。直進案内筒11、第1カム筒12、第2カム筒13、回転環14等は、固定筒10に対して取り付けられる。第1カム筒12および回転環14は、固定筒10の外周に配置される。直進案内筒11は、固定筒10の内周に配置される。第2カム筒13は、直進案内筒11の内周に配置される。
【0022】
(第1レンズ群4の保持構造)
第1レンズ群4は、第1レンズ群保持枠17に保持される。第1レンズ群保持枠17は、固定筒10の前端部に取り付けられ、ビス18により固定される。したがって、第1レンズ群保持枠17に保持される第1レンズ群4は、固定筒10に対して固定されている。
【0023】
(第2レンズ群5の保持構造)
図1に加えて、
図2を参照しながら第2レンズ群5の保持構造について説明する。
図2は、投射レンズ鏡筒100の第2レンズ群5の保持構造部分を拡大して示す図である。
【0024】
第2レンズ群5は、第2レンズ群保持枠19に保持されている。第2レンズ群5は、第2レンズ群保持枠19および外周筒20を介して第2カム筒13に取り付けられている。第2レンズ群保持枠19の前端部には、前方に突出するピン19Aが備えられている。外周筒20の前端部には、内側(光軸Xの側)に突出するフランジ部20Aが形成されている。フランジ部20Aには、ピン19Aを前後方向に移動可能にガイドする孔部20Bが形成されている。つまり、第2レンズ群保持枠19は、ピン19Aを孔部20Bに挿入させることで、前後方向に移動可能にガイドされた状態で外周筒20に連結されている。ピン19Aは、コイルバネ19Bのコイル内に通され、コイルバネ19Bは、フランジ部20Aに反力を取って第2レンズ群保持枠19を後方に付勢している。
【0025】
第2レンズ群保持枠19と第2レンズ群保持枠19の外周に配置される外周筒20との間には、熱変形枠41が配置されている。第2レンズ群保持枠19の前端部には、外周側(光軸Xから離れる側)に突出するフランジ部19Cが形成されている。また、外周筒20の後端部には内側に突出するフランジ部20Cが形成されている。
【0026】
熱変形枠41は、前端をフランジ部19Cに当接させ、また、後端をフランジ部20Cに当接された状態で、第2レンズ群保持枠19と外周筒20との間に配置されている。上述したように、第2レンズ群保持枠19は、コイルバネ19Bにより後方に付勢されている。したがって、熱変形枠41は、第2レンズ群保持枠19のフランジ部19Cと外周筒20のフランジ部20Cとの間に後方へ付勢された状態で挟持されている。
【0027】
熱変形枠41は、たとえば、鏡筒3を構成する他の部材よりも線膨張係数が大きなPOM(ポリオキシメチレン)等の材料で形成されている。鏡筒3を構成する固定筒10、直進案内筒11、第1カム筒12、第2カム筒13および回転環14は、POMに比べて線膨張係数が小さなアルミ等の材質で形成されている。
【0028】
外周筒20には、第1カムフォロア21が備えられている(
図1参照)。第1カムフォロア21は、第2カム筒13に形成される第2カム溝22および直進案内筒11に形成される直進案内溝23に係合している。
【0029】
直進案内筒11と回転環14とは、カムフォロア24を介して一体に連結されている。カムフォロア24は、固定筒10に形成される溝25に挿通されている。溝25は、固定筒10を内周と外周とに貫通し、光軸Xの周方向に平行な溝である。したがって、直進案内筒11および回転環14は、カムフォロア24を溝25にガイドさせて、光軸Xの周方向に沿って回転することができる。なお、直進案内筒11および回転環14の周方向への回転は、投射レンズ鏡筒100の組立工程内の調整工程で行われるものであり、調整工程が終わった後、ピン37により回転環14は固定筒10に対して固定される。
【0030】
第2カム筒13の前端部には、第2カムフォロア26が備えられている。第2カムフォロア26は、固定筒10に形成される直進案内溝27および第1カム筒12に形成される第2カム溝28に係合している。
【0031】
固定筒10には、外周に突出するカムフォロア29が備えられている。第1カム筒12には、カムフォロア29が挿通される溝30が形成されている。溝30は、第1カム筒12を内周と外周とに貫通し、光軸Xの周方向に平行な溝である。したがって、第1カム筒12は、溝30をカムフォロア29にガイドさせることにより光軸Xの周方向に沿って回転させることができる。
【0032】
第1カム筒12の外周には、飾り環31が備えられ、飾り環31は、ビス32により第1カム筒12と一体に連結されている。したがって、投射レンズ鏡筒100のユーザー(操作者)が飾り環31を光軸Xの周方向に回転させると、第1カム筒12も飾り環31と一体に回転する。
【0033】
(第3レンズ群6の保持構造)
第3レンズ群6は、第3レンズ群保持枠33に保持される。第3レンズ群保持枠33は、固定筒10に取り付けられ、ビス34により固定される。したがって、第3レンズ群保持枠33に保持される第3レンズ群6は、固定筒10に対して固定されている。
【0034】
(第4レンズ群7の保持構造)
図1に加えて、
図3を参照しながら第4レンズ群7の保持構造について説明する。
図3は、投射レンズ鏡筒100の第4レンズ群7の保持構造部分を拡大して示す図である。
【0035】
第4レンズ群7は、第4レンズ群保持枠35に保持される。第4レンズ群保持枠35は、固定筒10に取り付けられている。第4レンズ群保持枠35の前端部には外側(光軸Xから離れる側)に突出するフランジ部35Aが形成されている。フランジ部35Aがビス36により固定筒10に固定され、第4レンズ群保持枠35は固定筒10に対して固定された状態で取り付けられている。したがって、第3レンズ群保持枠33に保持される第4レンズ群7は、固定筒10に対して固定されている。
【0036】
(第5レンズ群8の保持構造)
図1に加えて、
図3を参照しながら第5レンズ群8の保持構造について説明する。
図3は、投射レンズ鏡筒100の第2レンズ群5の保持構造部分を拡大して示す図である。
【0037】
第5レンズ群8は、第5レンズ群保持枠38に保持され、第5レンズ群保持枠38および第4レンズ群保持枠35を介して固定筒10に取り付けられている。第5レンズ群保持枠38の前端部には、前方に突出するピン37が備えられている。
【0038】
フランジ部35Aには、ピン37を前後方向に移動可能にガイドする孔部35Bが形成されている。つまり、第5レンズ群保持枠38は、ピン37を孔部35Bに挿入し、前後方向に移動可能にガイドされた状態で第4レンズ群保持枠35に連結されている。ピン37は、コイルバネ37Aのコイル内に通され、コイルバネ37Aは、フランジ部35Aに反力を取って第5レンズ群保持枠38を後方に付勢している。
【0039】
第4レンズ群保持枠35と第5レンズ群保持枠38との間には、熱変形枠42が配置されている。第4レンズ群保持枠35の後端部には、前方に面を向ける段面35Cが形成されている。熱変形枠42は、前端をフランジ部38Aに当接させ、また、後端を段面35Cに当接された状態で、第4レンズ群保持枠35と第5レンズ群保持枠38との間に配置されている。第5レンズ群保持枠38は、コイルバネ37Aにより後方に付勢されている。したがって、熱変形枠42は、第5レンズ群保持枠38のフランジ部38Aと第4レンズ群保持枠35の段面35Cとの間に後方へ付勢された状態で挟持されている。
【0040】
熱変形枠42も熱変形枠41と同様に、鏡筒3を構成する他の部材よりも線膨張係数が大きな材料として、たとえば、POMにより形成されている。
【0041】
(第2レンズ群5の移動)
第2レンズ群5の移動について、投射レンズ鏡筒100の組立工程で行われる調整のための移動と、投射レンズ鏡筒100により投射像をスクリーンに結像させる際のピント調整を行うための移動とについて説明する。
【0042】
組立工程の調整工程時の移動は、回転環14を回転させることにより行うことができる。第2カム筒13が光軸Xの周りに回転してしまわないように治具等を用いて回転止めした状態で、回転環14を回転させる。このとき回転環14にカムフォロア24を介して一体に連結されている直進案内筒11も一緒に回転する。
【0043】
直進案内筒11が回転すると、直進案内溝23が光軸Xの周方向に移動し、直進案内溝23に係合する第1カムフォロア21を周方向に移動せる。これにより、第2カム溝22に係合する第1カムフォロア21は、第2カム溝22のガイドを受けて第2カム溝22に形状に沿って前後に移動される。つまり、回転環14を回転させると、第1カムフォロア21が備えられている外周筒20は第2カム溝22の形状に従って前後に移動される。そして、外周筒20に第2レンズ群保持枠19を介して保持されている第2レンズ群5も外周筒20と共に第2カム溝22に沿って前後に移動する。調整工程時の第2レンズ群5の調整が終わった後、回転環14は、ピン37により固定筒10に対して固定される。
【0044】
ピント調整時の移動は、第1カム筒12に固定される飾り環31を回転させることで行うことができる。飾り環31を回転させると第1カム筒12が回転させられる。第1カム筒12が回転すると、光軸Xの周方向への移動を直進案内溝27により規制された第2カムフォロア26は、第2カム溝28の形状に沿って前後に移動する。つまり、第2カムフォロア26が備えられる第2カム筒13が、第2カム溝28の形状に沿って前後に移動する。
【0045】
第2カム筒13が前後に移動すると、第2カム筒13に形成される第2カム溝22も前後に移動する。第2カム溝22には、第1カムフォロア21が係合している。したがって、第2カム溝22が前後に移動すると第1カムフォロア21も前後に移動し、第1カムフォロア21が備えられる外周筒20も移動する。そして、外周筒20に連結される第2レンズ群保持枠19も外周筒20と共に移動し、第2レンズ群保持枠19に保持される第2レンズ群5が移動する。つまり、飾り環31を回転すると、第2レンズ群5が第2カム溝28の形状に従って前後に移動する。
【0046】
(補正機構39,40)
投射レンズ鏡筒100には、補正機構39および補正機構40が備えられている。補正機構39は、第2レンズ群5に備えられ、主に、投射レンズ鏡筒100の温度の上昇に伴い悪化する像面湾曲を補正する機能を有する。また、補正機構40は、第5レンズ群8に備えられ、主に、投射レンズ鏡筒100の温度の上昇に伴い変化するバックフォーカスを補正する機能を有する。
【0047】
(補正機構39)
補正機構39は、第2レンズ群保持枠19と、外周筒20と、ピン19Aと、コイルバネ19Bと、熱変形枠41等を有する。投射レンズ鏡筒100が加熱され温度が高くなると、温度の高さに応じて熱変形枠41は前後方向に膨張し、コイルバネ19Bの付勢力に抗して第2レンズ群保持枠19を前方に移動させる。この第2レンズ群保持枠19の移動により第2レンズ群5が移動し、主に像面湾曲の補正が行われる。熱変形枠41の線膨張係数や体積等は、補正機構39の補正量が投射レンズ鏡筒100の温度に対する像面湾曲の必要な補正量に一致するように設定する。
【0048】
(補正機構40)
補正機構40は、第4レンズ群保持枠35と、第5レンズ群保持枠38と、ピン37と、コイルバネ37Aと、熱変形枠42等を有する。投射レンズ鏡筒100が加熱され温度が高くなると、温度の高さに応じて熱変形枠42の前後方向に膨張し、コイルバネ37Aの付勢力に抗して第5レンズ群保持枠38を前方に移動させる。この第4レンズ群保持枠35の移動により第2レンズ群5が移動し、主にバックフォーカスの補正が行われる。熱変形枠42の線膨張係数や体積等は、補正機構40の補正量が投射レンズ鏡筒100の温度に対するバックフォーカスの必要な補正量に一致するように設定する。
【0049】
(第1の実施の形態の主な効果)
第1の実施の形態に係る投射レンズ鏡筒100は、図示外の画像表示素子からの光を、図示外のスクリーンに投射像として結像させるレンズ光学系2を備える。第2レンズ群5と第5レンズ群8とは、投射レンズ鏡筒100の温度変化により生じる光学特性の変化に起因した投射像の画質の低下を抑えるために補正の対象とする光学特性(以下、「補正要素」と記載する。)が互いに異なっている。投射レンズ鏡筒100の第2レンズ群5は、像面湾曲補正用レンズ群であり、他のレンズ群に比べて像面湾曲の補正を効果的に行えるレンズ群である。一方、第5レンズ群8は、バックフォーカス補正用レンズ群であり、他のレンズ群に比べてバックフォーカスの補正を効果的に行えるレンズ群である。そして、投射レンズ鏡筒100は、第2レンズ群5に補正機構39を備え、さらに、第5レンズ群8にも補正機構40を備える。
【0050】
上述のように第2レンズ群5と第5レンズ群8とにそれぞれ補正機構を備えることにより、第2レンズ群5と第5レンズ群8とをそれぞれ個別に光軸Xに沿って移動でき、補正要素として、像面湾曲およびバックフォーカスの補正を行うことができる。また、投射レンズ鏡筒100は、他のレンズ群に比べて像面湾曲の補正を効果的に行うことができる第2レンズ群5に補正機構39を備え、また、他のレンズ群に比べてバックフォーカスの補正を効果的に行うことができる第5レンズ群8に補正機構40を備えている。
【0051】
このように、補正を行いたい補正要素の補正を効果的に行うことができるレンズ群に、個別に補正機構を備えることで、投射レンズ鏡筒100の温度が上昇したときに生じる光学特性の変化を効果的に補正することができる。これに対し、仮に、一つのレンズ群で一つの補正要素だけを補正の対象とした場合には、一つの補正要素の補正により他の補正要素が大きくなってしまう虞がある。投射レンズ鏡筒100は、補正要素の対象となるレンズ群毎に補正機構を備えるため、補正要素を効果的に補正できる。
【0052】
(第2の実施の形態)
図4は、本発明の第2の実施の形態に係る投射レンズ鏡筒200の構成を説明するための図であり、投射レンズ鏡筒200の光軸Xを含む断面のうち、光軸Xの片側の断面の概略の構成を示す図である。前後方向については、
図1と同様であり、投射レンズ鏡筒100と同様の構成部分については、同一の符号を付し、説明を省略または簡略化する。
【0053】
(投射レンズ鏡筒200の概略の構成)
投射レンズ鏡筒200は、レンズ光学系202と鏡筒203とを有する。レンズ光学系202は、前方から順に、第1レンズ群204と、第2レンズ群205と、第3レンズ群206と、第4レンズ群207と、第5レンズ群208と、第6レンズ群209とを有する。第1レンズ群204、第3レンズ群206および第6レンズ群209は、固定レンズである。第2レンズ群205、第4レンズ群207および第5レンズ群208は可動レンズである。なお、図に示される各レンズ群の構成は簡略化されていて、実際のレンズ光学系202は、要求される光学特性に応じた適宜の構成とする。
【0054】
第2レンズ群205は、2つの目的で移動させられる。1つ目は、投射レンズ鏡筒200の組立工程の中の一工程である調整工程において、投射レンズ鏡筒200が所定の光学特性に設定されるように、第2レンズ群205の位置決めを行うための移動である。2つ目は、投射レンズ鏡筒200により投射像をスクリーンに結像させる際に、結像のピント調整を行うための移動である。
【0055】
第4レンズ群207は、投射レンズ鏡筒200により投射像をスクリーンに投射させている際に、投射レンズ鏡筒200の温度が上昇することにより変化するバックフォーカスのずれを補正するために移動させられる。第5レンズ群208は、投射レンズ鏡筒200により投射像をスクリーンに投射させている際に、投射レンズ鏡筒200の温度が上昇することにより悪化する像面湾曲を補正するために移動させられる。
【0056】
第2レンズ群205は、第2レンズ群保持枠19に保持されている。第2レンズ群保持枠19には、第2カム筒13に形成される第2カム溝22および直進案内筒11に形成される直進案内溝23に係合す第1カムフォロア21が備えられている。したがって、第2レンズ群205は、組立工程の調整工程時に、回転環14を回転操作することで移動でき、これにより、投射レンズ鏡筒200を所定の光学特性に設定することができる。
【0057】
第4レンズ群207には、補正機構216が備えられている。補正機構216は、主に、投射レンズ鏡筒200の温度上昇により変化するバックフォーカスのずれを補正する機能を有する。補正機構216は、第4レンズ群保持枠210と、熱変形枠211等を有する。第4レンズ群207は、第4レンズ群保持枠210に保持されている。第4レンズ群保持枠210には、熱変形枠211が一体に取り付けられている。第4レンズ群保持枠210は、熱変形枠211の後端側に取り付けられ、熱変形枠211の前端部は、ビス212により第3レンズ群保持枠33に対して取り付けられている。熱変形枠211は、第3レンズ群保持枠33に対して固定されている。
【0058】
投射レンズ鏡筒200が加熱され温度が高くなると、温度の高さに応じて熱変形枠211は前後方向に膨張し、第4レンズ群207を後方に移動させる。この第4レンズ群207の移動により第4レンズ群207が移動し、主にバックフォーカスの補正が行われる。熱変形枠211の線膨張係数や体積等は、補正機構216の補正量が投射レンズ鏡筒200の温度に対するバックフォーカスの必要な補正量に一致するように設定する。
【0059】
第5レンズ群208には、補正機構217が備えられている。補正機構217は、主に、投射レンズ鏡筒200の温度上昇により悪化する像面湾曲を補正するために第5レンズ群208を移動する。補正機構217は、第5レンズ群保持枠214と、熱変形枠215と、外周筒214A等を有する。
【0060】
熱変形枠215と外周筒214Aとは、熱変形枠211の外周に配置されている。第5レンズ群208は、第5レンズ群保持枠214に保持されている。第5レンズ群保持枠214は、第6レンズ群保持枠213の内周に、前後方向に移動可能にガイドされた状態で保持されている。熱変形枠215は、第5レンズ群保持枠214の前側に配置されている。熱変形枠215の前側には外周筒214Aが配置されている。外周筒214Aの前端部は、第6レンズ群保持枠213の前端部に取り付けられ、ビス219により固定されている。
【0061】
第6レンズ群保持枠213には、第5レンズ群保持枠214の後端面と対向する位置に前方に面を向ける段面213Aが形成されている。段面213Aと第5レンズ群保持枠214の後端面との間には、波ワッシャー214Bが備えられている。波ワッシャー214Bは、第6レンズ群保持枠213の段面213Aに反力を取って第5レンズ群保持枠214を前方に付勢している。したがって、熱変形枠215は、第6レンズ群保持枠213と外周筒214Aとの間に前方へ付勢された状態で挟持されている。
【0062】
投射レンズ鏡筒200が加熱され温度が高くなると、温度の高さに応じて熱変形枠215は前後方向に膨張し、波ワッシャー214Bの付勢力に抗して第5レンズ群208を後方に移動させる。この第5レンズ群208の移動により第5レンズ群208が移動し、主に像面湾曲の補正が行われる。熱変形枠215の線膨張係数や体積等は、補正機構217の補正量が投射レンズ鏡筒200の温度に対する像面湾曲の必要な補正量に一致するように設定する。なお、熱変形枠211および熱変形枠215は、POM等の鏡筒303を構成する他の部材よりも線膨張係数が大きな材料で形成されている。
【0063】
(第2の実施の形態の主な効果)
第2の実施の形態に係る投射レンズ鏡筒200は、図示外の画像表示素子からの光を、図示外のスクリーンに投射像として結像させるレンズ光学系202を備える。第4レンズ群207と第5レンズ群208とは、投射レンズ鏡筒200の温度変化により生じる光学特性の変化に起因した投射像の画質の低下を抑えるために補正の対象とする光学特性(補正要素)が互いに異なっている。
【0064】
投射レンズ鏡筒200の第4レンズ群207は、バックフォーカス補正用レンズ群であり、他のレンズ群に比べてバックフォーカスの補正を効果的に行えるレンズ群である。一方、第5レンズ群208は、像面湾曲補正用レンズ群であり、他のレンズ群に比べて像面湾曲の補正を効果的に行えるレンズ群である。そして、投射レンズ鏡筒200は、第4レンズ群207に補正機構216を備え、さらに、第5レンズ群208にも補正機構217を備える。
【0065】
上述のように第4レンズ群207と第5レンズ群208とにそれぞれ補正機構を備えることにより、第4レンズ群207と第5レンズ群208とをそれぞれ個別に光軸Xに沿って移動でき、補正要素としての像面湾曲およびバックフォーカスの補正を行うことができる。また、投射レンズ鏡筒200は、他のレンズ群に比べてバックフォーカスの補正を効果的に行うことができる第4レンズ群207に補正機構216を備え、また、他のレンズ群に比べて像面湾曲の補正を効果的に行うことができる第5レンズ群208に補正機構217を備えている。このように、補正を行いたい補正要素の補正を効果的に行うことができるレンズ群に、個別に補正機構を備えることで、投射レンズ鏡筒200の温度が上昇したときに生じる光学特性の変化を効果的に補正することができる。これに対し、仮に、一つのレンズ群で一つの補正要素だけを補正の対象とした場合には、一つの補正要素の補正により他の補正要素が大きくなってしまう虞がある。投射レンズ鏡筒200は、補正要素の対象となるレンズ群毎に補正機構を備えるため、補正要素を効果的に補正できる。
【0066】
(第3の実施の形態)
図5は、本発明の第3の実施の形態に係る投射レンズ鏡筒300の構成を説明するための図であり、投射レンズ鏡筒300の光軸Xを含む断面のうち、光軸Xの片側の断面の概略の構成を示す図である。前後方向については、
図1と同様であり、投射レンズ鏡筒100と同様の構成部分については、同一の符号を付し、説明を省略または簡略化する。
【0067】
(投射レンズ鏡筒300の概略の構成)
投射レンズ鏡筒300は、レンズ光学系302と鏡筒303とを有する。レンズ光学系302は、前方から順に、第1レンズ群304と、第2レンズ群305と、第3レンズ群306と、第4レンズ群307と、第5レンズ群308とを有する。第1レンズ群304、第4レンズ群307および第5レンズ群308は、固定レンズである。第2レンズ群305、第3レンズ群306は可動レンズである。なお、図に示される各レンズ群の構成は簡略化されていて、実際のレンズ光学系302は、要求される光学特性に応じた適宜の構成とする。
【0068】
第2レンズ群305は、投射レンズ鏡筒300により投射像をスクリーンに投射させている際に、投射レンズ鏡筒300の温度が上昇することにより変化するバックフォーカスのずれを補正するための移動を行う。
【0069】
第3レンズ群306は、次の3つの目的で移動させることができる。1つ目は、投射レンズ鏡筒300の組立工程の中の一工程である調整工程において、投射レンズ鏡筒300が所定の光学特性に設定されるように、第3レンズ群306の位置決めを行うための移動である。2つ目は、投射レンズ鏡筒300により投射像をスクリーンに結像させる際に、結像のピント調整を行うための移動である。3つ目は、投射レンズ鏡筒300により投射像をスクリーンに投射させている際に、投射レンズ鏡筒300の温度が上昇することにより悪化する像面湾曲を補正するための移動である。
【0070】
第2レンズ群305には、補正機構312が備えられている。補正機構312は、主に、投射レンズ鏡筒300の温度上昇により変化するバックフォーカスのずれを補正する機能を有する。補正機構312は、第2レンズ群保持枠309と、熱変形枠311等を有する。第2レンズ群305は、第2レンズ群保持枠309に保持されている。第2レンズ群保持枠309は、第1レンズ群保持枠17に取り付けられている。第2レンズ群保持枠309の前端部には、後方に突出するピン310が備えられている。第1レンズ群保持枠17の後端部には内側に突出するフランジ部17Aが備えられている。フランジ部17Aには、ピン310を前後方向に移動可能にガイドする孔部17Bが形成されている。つまり、第2レンズ群保持枠309は、ピン310を孔部17Bに挿入し、前後方向に移動可能にガイドされた状態で第1レンズ群保持枠17に連結されている。ピン310は、コイルバネ310Aのコイル内に通され、コイルバネ310Aは、フランジ部17Aに反力を取って第2レンズ群保持枠309を前方に付勢している。
【0071】
第1レンズ群保持枠17と第2レンズ群保持枠309と間には、熱変形枠311が配置されている。熱変形枠311は、前端を第1レンズ群保持枠17の後端面に当接させ、また、後端を第2レンズ群保持枠309に当接されている。第2レンズ群保持枠309は、コイルバネ310Aにより前方に付勢されている。したがって、熱変形枠311は、第2レンズ群保持枠309と第1レンズ群保持枠17との間に前方へ付勢された状態で挟持されている。なお、熱変形枠311は、POM等の鏡筒303を構成する他の部材よりも線膨張係数が大きな材料で形成されている。
【0072】
投射レンズ鏡筒300が加熱され温度が高くなると、温度の高さに応じて熱変形枠311は前後方向に膨張し、第2レンズ群保持枠309を後方に移動させる。この第2レンズ群保持枠309の移動により第2レンズ群305が移動し、主にバックフォーカスの補正が行われる。熱変形枠311の線膨張係数や体積等は、補正機構312の補正量が投射レンズ鏡筒300の温度に対するバックフォーカスの必要な補正量に一致するように設定する。
【0073】
第3レンズ群306には、補正機構39が備えられている。この補正機構39により、投射レンズ鏡筒300の温度上昇により悪化する像面湾曲を補正するように第3レンズ群306が移動される。
【0074】
(第3の実施の形態の主な効果)
第3の実施の形態に係る投射レンズ鏡筒300は、図示外の画像表示素子からの光を、図示外のスクリーンに投射像として結像させるレンズ光学系302を備える。第2レンズ群305と第3レンズ群306とは、投射レンズ鏡筒300の温度変化による光学特性の変化に起因した投射像の画質の低下を抑えるために補正の対象とする光学特性(以下、「補正要素」と記載する。)が互いに異なっている。投射レンズ鏡筒300の第2レンズ群305は、バックフォーカス補正用レンズ群であり、他のレンズ群に比べてバックフォーカスの補正を効果的に行えるレンズ群である。一方、第3レンズ群306は、像面湾曲補正用レンズ群であり、他のレンズ群に比べて像面湾曲の補正を効果的に行えるレンズ群である。そして、投射レンズ鏡筒300は、第2レンズ群305に補正機構312を備え、さらに、第3レンズ群306にも補正機構39を備える。
【0075】
上述のように第2レンズ群305と第3レンズ群306とにそれぞれ補正機構を備えることにより、第2レンズ群305と第3レンズ群306とをそれぞれ個別に光軸Xに沿って移動でき、補正要素としての像面湾曲およびバックフォーカスの補正を行うことができる。また、投射レンズ鏡筒300は、他のレンズ群に比べてバックフォーカスの補正を効果的に行うことができる第2レンズ群305に補正機構312を備え、また、他のレンズ群に比べて像面湾曲の補正を効果的に行うことができる第3レンズ群306に補正機構39を備えている。このように、補正を行いたい補正要素の補正を効果的に行うことができるレンズ群に、個別に補正機構を備えることで、投射レンズ鏡筒300の温度が上昇したときに生じる光学特性の変化を効果的に補正することができる。これに対し、仮に、一つのレンズ群で一つの補正要素だけを補正の対象とした場合には、一つの補正要素の補正により他の補正要素が大きくなってしまう虞がある。投射レンズ鏡筒300は、補正要素の対象となるレンズ群毎に補正機構を備えるため、補正要素を効果的に補正できる。
【0076】
前述した投射レンズ鏡筒100は、像面湾曲の補正を効果的に行うことができる第2レンズ群5に補正機構39を備えている。一般に、レンズ光学系は焦点距離が短くなるほど、投射像に像面湾曲が発生し易くなる。しかしながら、投射レンズ鏡筒100のように、像面湾曲を補正できる第2レンズ群5に補正機構39を備えることで、投射レンズ鏡筒100を短焦点とし広角のレンズ構成とした場合にも像面湾曲を効果的に補正することができる。
【0077】
投射レンズ鏡筒100においては、第2レンズ群5が像面湾曲の補正を効果的に行うことができるレンズ群であり、第5レンズ群8がバックフォーカスの補正を効果的に行うことができるレンズ群であるが、これは一例である。つまり、どのレンズ群に補正機構を備えるかは、投射レンズ鏡筒100の構成と特性に応じて、対象とする補正要素を効果的に補正できるレンズ群に適宜に補正機構を備える。
【0078】
投射レンズ鏡筒200,300においても同様に、像面湾曲を補正できるレンズ群(投射レンズ鏡筒200において第5レンズ群208。投射レンズ鏡筒300において第3レンズ群306)に補正機構(投射レンズ鏡筒200において補正機構217。投射レンズ鏡筒300においてに補正機構39。)を備えることで、投射レンズ鏡筒200,300を短焦点とし広角のレンズ構成とした場合に発生し易い像面湾曲を効果的に補正できる。
【0079】
投射レンズ鏡筒200においては、第5レンズ群208が像面湾曲の補正を効果的に行うことができるレンズ群であり、第4レンズ群207がバックフォーカスの補正を効果的に行うことができるレンズ群である。また、投射レンズ鏡筒300においては、第3レンズ群306が像面湾曲の補正を効果的に行うことができるレンズ群であり、第2レンズ群305がバックフォーカスの補正を効果的に行うことができるレンズ群である。これらは一例である。つまり、どのレンズ群に補正機構を備えるかは、投射レンズ鏡筒200,300の構成と特性に応じて、対象とする補正要素を効果的に補正できるレンズ群に適宜に補正機構を備える。
【0080】
投射レンズ鏡筒100,200,300は、補正する補正要素を、像面湾曲およびバックフォーカスとしているが、補正要素はこれに限らず、レンズ光学系2,202,302の光学特性に応じて、他の補正要素(球面収差、コマ収差、非点収差、歪曲)の組み合わせとすることもできる。補正要素の組み合わせの数は、3以上としてもよく、各補正要素を効果的に補正できるレンズ群に対して補正機構を備えることで、効果的に補正を行うことができる。
【0081】
投射レンズ鏡筒100に示す第2レンズ群5および投射レンズ鏡筒300に示す第3レンズ群306は、
図6に概略の構成が示されるように、互いに間隔(空間S)を開けて配置される2のレンズ50Aとレンズ50Bとを有し、投射レンズ鏡筒100,300のレンズ光学系2,302は、レンズ50Aとレンズ50Bと間に形成される空間S内に中間像を形成する構成としてもよい。
【0082】
図6では、レンズ群を構成するレンズは2枚とされているが、2枚に限らず3枚あるいはそれ以上の枚数であってもよい。投射レンズ鏡筒100,300は、間隔を開けて隣接するレンズ間に、中間像を形成する構成とすることができる。
【0083】
投射レンズ鏡筒100の第2レンズ群5は、焦点調節を行うために移動されるレンズ群であると共に、像面湾曲を補正できる像面湾曲補正用レンズであり、補正機構39が備えられている。また、投射レンズ鏡筒300の第3レンズ群306も、焦点調節を行うために移動されるレンズ群であると共に、像面湾曲を補正できる像面湾曲補正用レンズであり、補正機構39が備えられている。つまり、投射レンズ鏡筒100,300は、焦点調節を行うために移動されるレンズ群である第2レンズ群5(投射レンズ鏡筒100)および第3レンズ群306(投射レンズ鏡筒300)を像面湾曲補正用レンズ群とし、補正機構39により移動する構成となっている。
【0084】
投射レンズ鏡筒100,300が上述のように焦点調節を行うために移動されるレンズ群を像面湾曲補正用レンズ群とすることで、像面湾曲の補正を効果的に行うことができる。
【0085】
焦点調節を行うために移動されるレンズ群を像面湾曲補正用レンズ群とし、像面湾曲補正用レンズ群を構成するレンズとレンズとの間に中間像を形成する構成とした場合には、
図6に示されるように、中間像が形成されるレンズ間の空間Sを密閉する構成とすることが好ましい。空間S内に塵埃が存在するとレンズ面上に塵埃が付着する場合が在る。空間Sを構成するレンズのレンズ面上に中間像が結像した場合に、レンズ面上に付着した塵埃が焦げたり、あるいは焦げた塵埃によりレンズ面が汚染されたりすることがある。また、空間S内の塵埃がスクリーン上の投射像に映りこんでしまうことがある。
【0086】
したがって、空間Sに塵埃が入り込まないように、空間Sは密閉されていることが好ましい。光軸Xの周囲を第2レンズ群保持枠19で囲み、前後をレンズ50Aとレンズ50Bとで塞ぐ構成とすることにより、空間Sは密閉される。
【0087】
投射レンズ鏡筒100の像面湾曲補正用レンズ群である第2レンズ群5は、バックフォーカス補正用レンズ群である第4レンズ群7よりもスクリーン側、すなわち前方に配置されている。
【0088】
このように、像面湾曲補正用レンズ群である第2レンズ群5を前方にバックフォーカス補正用レンズ群である第4レンズ群7を後方に配置することで、第2レンズ群5の補正の影響がバックフォーカスの変化に影響し難く、また、第4レンズ群7の補正の影響が像面湾曲の変化に影響し難いものとすることができる。
【0089】
投射レンズ鏡筒100は、絞り43よりも画像表示素子側、すなわち後方に配置されるレンズ群である第5レンズ群8に補正機構40が備えられている。また、投射レンズ鏡筒200は、絞り218よりも画像表示素子側、すなわち後方に配置されるレンズ群である第4レンズ群207に補正機構216が備えられ、また、同じく絞り218よりも後方に配置されるレンズ群である第5レンズ群208に補正機構217が備えられている。
【0090】
絞り43,218は、画像表示素子からの光の一部を遮光する。そのため、絞り43,218より後方に配置されるレンズ群は、遮光された光により加熱され易い。また、投射表示装置の筺体15内部に設置される光源部や制御回路も使用時には発熱する。これらの加熱により、絞り43,218より後方に配置されるレンズ群は光学特性が変化してしまい易い。したがって、投射レンズ鏡筒100においては絞り43よりも後方に配置されるレンズ群である第5レンズ群8に補正機構40を備えることで、第5レンズ群8の光学特性の変化を補正することができる。この補正によりレンズ光学系2全体の光学性能の変化を抑えることができ、投射像の画質劣化を低減させることができる。また、投射レンズ鏡筒200においては絞り218よりも後方に配置されるレンズ群である第4レンズ群207に補正機構216を備え、加えて、第5レンズ群208にも補正機構217を備えることで、第4レンズ群207および第5レンズ群208の光学特性の変化を補正することができる。この補正によりレンズ光学系202全体の光学性能の変化を抑えることができ、投射像の画質劣化を低減させることができる。
【0091】
また、投射レンズ鏡筒200は、絞り218に隣接する第4レンズ群207に補正機構216が備えられている。第4レンズ群207は、絞り218より後方に配置されるレンズ群のうちで最も絞り218に近いため、加熱される絞り218の熱の影響を最も受け、光学特性が極めて変化してしまい易い。したがって、絞り218に隣接する第4レンズ群207に補正機構216を備えることで、第4レンズ群207の光学特性の変化を補正することができる。この補正によりレンズ光学系202全体の光学性能の変化を抑えることができ、投射像の画質劣化を低減させることができる。
【0092】
投射レンズ鏡筒100の絞り43は、図以外の投射表示装置の筐体15内に配置されている。筐体15内は、光源部や制御回路自体の発熱や画像表示素子からの光と絞り43の加熱で高温になり易い。そのため、絞り43が筐体15内に配置される場合には、絞り43よりも後方のレンズ群である第5レンズ群8に補正機構40を備えることで第5レンズ群8の光学特性の変化を補正することができる。この補正によりレンズ光学系2全体の光学性能の変化を抑えることができ、投射画像の画質の劣化を低減させることができる。
【0093】
また、投射レンズ鏡筒200の絞り218も、図示以外の投射表示装置の筐体15内に配置されている。そのため、絞り218が筐体15内に配置される場合には、絞り218よりも後方のレンズ群である第4レンズ群207に補正機構216を備え、また、第5レンズ群208に補正機構217を備えることで第4レンズ群207および第5レンズ群208の光学特性の変化を補正することができる。この補正によりレンズ光学系202全体の光学性能の変化を抑えることができ、投射画像の画質の劣化を低減させることができる。
【0094】
投射レンズ鏡筒100は、絞り43に隣接する第3レンズ群6よりもスクリーン側、すなわち前方であって、筐体15の外側に配置される第2レンズ群5に補正機構39が備えられている。筐体15内は、筐体15の遮熱により外部の温度変化を受け難いため、投射表示装置の使用時における筐体15の温度を予測し易く、光学特性の変化も予測し易い。そのため、筐体15内に配置されるレンズ光学系2については、予測される温度に応じた光学特性となるように光学設計を行うことで、投射画像の画質劣化を低減させることができる場合もある。これに対し、筐体15の外側であって、絞り43に対して第3レンズ群6を挟んで配置される第2レンズ群5は、筐体15の外側の温度変化に追従し易いため、光学特性の変化を予測し難い。したがって、第2レンズ群5に補正機構39を備えることで、筐体15の外側の温度変化に応じてレンズ光学系2全体の光学特性を補正することができる。
【0095】
投射レンズ鏡筒300は、絞り313に隣接する第4レンズ群307よりもスクリーン側、すなわち前方であって、筐体15の外側に配置される第2レンズ群305に補正機構312を備え、また、第3レンズ群306に補正機構39を備えている。このように筐体15の外側に配置される第2レンズ群305と第3レンズ群306に補正機構312,39を備えることで、筐体15の外側の温度変化に応じてレンズ光学系302全体の光学特性を補正することができる。