(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-81680(P2016-81680A)
(43)【公開日】2016年5月16日
(54)【発明の名称】磁性部品の端子台、およびこの端子台を成形する金型装置
(51)【国際特許分類】
H01R 9/16 20060101AFI20160411BHJP
H01R 43/24 20060101ALI20160411BHJP
【FI】
H01R9/16
H01R43/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-210983(P2014-210983)
(22)【出願日】2014年10月15日
(71)【出願人】
【識別番号】000107804
【氏名又は名称】スミダコーポレーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097984
【弁理士】
【氏名又は名称】川野 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100092897
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 正悟
(74)【代理人】
【識別番号】100157417
【弁理士】
【氏名又は名称】並木 敏章
(72)【発明者】
【氏名】氏家 直樹
【テーマコード(参考)】
5E063
5E086
【Fターム(参考)】
5E063JB03
5E063JB10
5E063XA01
5E086CC47
5E086DD10
5E086LL10
5E086LL20
(57)【要約】
【課題】モールド成形により端子台を形成する場合において、バリが発生しにくく、寸法精度を緩和することができ、さらに、金型の短寿命化を避けることができるとともに、端子台全体として、コンパクト化の要求にも対応し得る磁性部品の端子台、およびこの端子台を成形する金型装置を提供する。
【解決手段】クリップ端子12の軸部14を端子台本体16により保持してなる端子台20であって、クリップ端子12は、相手側端子部と電気的接続を行うコネクタ部18と、軸部14とを、互いに直交させて全体としてL字形状に一体形成してなる。端子台本体16には、コネクタ部突出側において一段低くなる段部16aが設けられて、このコネクタ部突出側が、他の方向よりも、軸部14を上下の長い範囲に亘って露出するように構成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状ボビン周りに巻回されたコイルが接続され、相手側端子部との電気的接続を行う導電性端子部と、該ボビンの鍔部に配設されて該導電性端子部の軸部を保持する端子台本体とを備えた磁性部品の端子台において、
該導電性端子部は、前記相手側端子部との接続構造を有するコネクタ部が、前記軸部と、直交する方向に突出し全体としてL字形状に形成されてなり、
前記導電性端子部と前記端子台本体とは、該端子台本体が、前記コネクタ部突出側において一段低くなるように段差が設けられて、このコネクタ部突出側が、このコネクタ部突出側以外の他側よりも、前記軸部を上下の長い範囲に亘って露出するように、モールド成形を用いて一体的に形成されてなることを特徴とする磁性部品の端子台。
【請求項2】
前記軸部の前記露出する部分が、前記コネクタ部の下端面と前記軸部の表面とにより形成される角部、およびこの角部に続く平面部を含むことを特徴とする請求項1に記載の磁性部品の端子台。
【請求項3】
前記角部にRがつけられていることを特徴とする請求項2に記載の磁性部品の端子台。
【請求項4】
前記コネクタ部は、それぞれ、互いに離れる方向に弾性変形して、対応する相手側端子部を互いの間に挟む一対の挟み片を備えていることを特徴とする請求項1〜3のうちいずれか1項に記載の磁性部品の端子台。
【請求項5】
一方側にコネクタ部を突出させた導電性端子部が所定位置に挿入された状態で、該導電性端子部の周りに注入された樹脂剤を成形する、少なくとも前記コネクタ部の突出方向と平行な方向に往復動するスライド金型部材と、該突出方向に直交する方向に移動する金型入れ子部材とを組み合わせた構造を備え、該スライド金型部材の往復動により、このスライド金型部材と該金型入れ子部材の間に前記樹脂剤を挟んで、請求項1〜4のうちいずれか1項記載の磁性部品の端子台をモールド成形により形成するように構成されてなることを特徴とする金型装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、車載用のソレノイド等の磁性部品の端子台、およびこの端子台を成形する金型装置に関し、詳しくは、クリップ端子等の導電性端子を支持してなる磁性部品の端子台、およびこの端子台を成形する金型装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車載用のソレノイド等の端子部としては、ボビンに巻回されたコイルを接続されるクリップ端子と、ボビンに取り付けられ、このクリップ端子の軸部を支持する軸固定部とからなるものが、従来より知られている(特許文献1を参照)。
【0003】
このようなクリップ端子は、通常、弾性を有する1対の把持爪により、対応する外部部品の導電性端子を把持するようになっており、これによりソレノイドコイルと外部部品の導電性端子とを電気的に接続することができる。
このような磁性部品の端子部を組み立てる際には、各クリップ端子の軸部を軸固定部に締結具により取り付けたり、軸部を軸固定部の凹部に嵌入させたりして固定するようになっている。
【0004】
しかし、このようにして各クリップ端子の軸部を軸固定部に締結具を用いて取り付けた場合には、端子部組立作業が煩雑となる。また、軸部を軸固定部の凹部に嵌入させて固定した場合には、把持爪に力が加わるとクリップ端子が軸固定部から抜けてしまう虞があり、また、軸部の軸固定部への挿入深さによってクリップ端子の高さ位置にバラつきが生じる虞がある。
このような問題を回避する方策として、クリップ端子を金型内に配置した状態で樹脂剤を金型内に注入するモールド成形(オーバーモールド成形、インサート成形;以下同じ)により端子部を一体的に形成する手法が考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014−43915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述したようなモールド成形により端子部を形成する場合に、具体的に端子部をどのような形態とすれば、近時のニーズに対応し得るか、という点について検討することが肝要である。
【0007】
例えば、
図6の比較例1に示すように、端子台本体116の上面部116bと下側の把持爪118aの下端面との距離が小さ過ぎると、特に、下側の把持爪118aの下端面から軸部114に移行する移行部112aにRが設けられている場合には、成形によるバリが発生しやすくなり、寸法精度がより厳しくなり、また、金型の寿命が短くなる等の問題が発生し好ましくないので、端子台本体116の上面部116bと下側の把持爪118aの下端面との距離を大きくとることが望まれる。
【0008】
しかしながら、近年、特に車載用電子部品等については、コンパクト化に対する要請が強く、端子台本体216の上面部216bと下側の把持爪218aの下端面との距離を長くすべく、クリップ端子212を端子台本体216から引き上げること(
図7の比較例2を参照)は、現実的な解決手法とは言えない。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、モールド成形により端子台を形成する場合において、バリが発生しにくく、寸法精度を緩和することができ、さらに、金型の短寿命化を避けることができるとともに、端子台全体として、コンパクト化の要求にも対応し得る磁性部品の端子台、およびこの端子台を成形する金型装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明に係る、磁性部品の端子台および金型装置は、以下の特徴を備えている。
本発明に係る磁性部品の端子台は、
筒状ボビン周りに巻回されたコイルが接続され、相手側端子部との電気的接続を行う導電性端子部と、該ボビンの鍔部に配設されて該導電性端子部の軸部を保持する端子台本体とを備えた磁性部品の端子台において、
該導電性端子部は、前記相手側端子部との接続構造を有するコネクタ部が、前記軸部と、直交する方向に突出し全体としてL字形状に形成されてなり、
前記導電性端子部と前記端子台本体とは、該端子台本体が、前記コネクタ部突出側において一段低くなるように段差が設けられて、このコネクタ部突出側が、このコネクタ部突出側以外の他側よりも、前記軸部を上下の長い範囲に亘って露出するように、モールド成形を用いて一体的に形成されてなることを特徴とするものである。
【0011】
この場合において、前記軸部の前記露出する部分が、前記コネクタ部の下端面と前記軸部の表面とにより形成される角部、およびこの角部に続く平面部を含むことが好ましい。
また、本発明に係る磁性部品の端子台は、前記角部にRがつけられている場合に、より効果的である。
また、前記コネクタ部は、それぞれ、互いに離れる方向に弾性変形して、対応する前記相手側端子部を互いの間に挟む一対の挟み片を備えていることが好ましい。
【0012】
さらに、本発明に係る金型装置は、
一方側にコネクタ部を突出させた導電性端子部が所定位置に挿入された状態で、該導電性端子部の周りに注入された樹脂剤を成形する、少なくとも前記コネクタ部の突出方向と平行な方向に往復動するスライド金型部材と、該突出方向に直交する方向に移動する金型入れ子部材とを組み合わせた構造を備え、該スライド金型部材の往復動により、このスライド金型部材と該金型入れ子部材の間に前記樹脂剤を挟んで、請求項1〜4のうちいずれか1項記載の磁性部品の端子台をモールド成形により形成するように構成されてなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る磁性部品の端子台によれば、モールド成形により、端子台本体が、コネクタ部突出側において一段低くなるように段差が設けられ、これによって、導電性端子部の軸部の直線部分(正確には平面部分:以下同じ)が、コネクタ部突出側において、上下の長い範囲に亘って露出するように形成される。
【0014】
このように、導電性端子部の軸部の直線部分が、コネクタ部突出側において、上下の長い範囲に亘って露出するように構成されているので、モールド成形時に軸部の直線部分に対して、スライド金型の対応部分を確実に密着させながら押圧することが可能となる。すなわち、上下の長い範囲に亘って軸部の直線部分にスライド金型を押し当てることができるので、樹脂のバリ等が発生しにくくなり、管理する寸法精度を緩和することができ、さらに金型の短寿命化を避けることができる。
【0015】
しかも、コネクタ部突出側以外の方向においては、コネクタ部の下方把持部の下端部から前記軸部に移行する角部領域が問題となる虞がなく、軸部の露出は最小限で良いことから、導電性端子部の軸部を端子台本体から上方に引き上げなくともよいので、端子台全体として、コンパクト化の要求にも対応することができる。
【0016】
なお、コネクタ部の下方把持部の下端部から前記軸部に移行する角部にRがつけられているときには、この導電性端子部のR部を、金型の対応R部と、確実に一致させることが難しいので、上述したような本発明の効果は、より有効なものとなる。
【0017】
また、本発明に係る金型によれば、少なくとも前記コネクタ部突出方向と平行な方向に往復動するスライド金型部材を用いて、上述したいずれかの磁性部品の端子台をモールド成形するように構成されているので、バリが発生しにくく、寸法精度をより緩和することが可能となり、また、金型の短寿命化を避けることができるとともに、端子台全体として、コンパクト化の要求にも対応することができ、製造時の労力およびコストの軽減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施例に係る磁性部品の端子台を示す前側から見た斜視図である。
【
図2】本発明の実施例に係る磁性部品の端子台を示す後側から見た斜視図である。
【
図3】本発明の実施例に係る磁性部品の端子台を示す側面図である。
【
図4】
図1〜
図3の端子台を成形する金型の一部を示す概略図((A)は比較例1、(B)は実施例)である。
【
図5】
図4の金型を用いて成形された端子台の形状を示す概略図((A)は比較例1、(B)は実施例)である。
【
図6】比較例1に係る磁性部品の端子台を示す前側斜視図である。
【
図7】比較例2に係る磁性部品の端子台を示す前側斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る磁性部品の端子台および金型の実施例について、上記図面を参照しながら詳細に説明する。
なお、本実施例は、磁性部品として車載用ソレノイドを例に挙げて説明するものであり、この車載用ソレノイドに外部からの電力を供給するための端子部(
図1〜3に示す端子台20)に関するものである。具体的には、例えば、自動変速機の油圧制御を行うためのスプールバルブを駆動するリニアソレノイドに適用するものであるが、他の車載用ソレノイドに適用してもよいし、車載用ソレノイド以外の他の磁性部品に適用してもよい。
【0020】
〈端子台の構成〉
本発明の一実施例に係る磁性部品の端子台20は、
図1〜3に示すように、クリップ端子12と端子台本体16とからなる。
クリップ端子12は、円筒状のボビン(コイルが巻回されたもの:以下同じ)10の周りに巻回されたコイル10cの端部が接続され(接続部は端子台本体16内であり、図示されていない)、外部の所定の導体との電気的接続を行うコネクタ部18と、端子台本体16に挿入される前記軸部とを、互いに直交する方向に配し全体としてL字形状に一体形成されてなる。
【0021】
また、コネクタ部18の下側の把持爪18aの下端面から軸部14表面へ移行する角部(移行部12a)には、Rがつけられている。
この移行部12aにRがつけられているのは、以下の理由による。すなわち、このようなクリップ端子12はプレス成形により打ち抜かれて形成されるが、この打ち抜き作業時に、角部にRをつけていないと、クリップ端子のプレス金型のR部にダレが発生し易くなることから、そのため、この角部(移行部12a)にRをつけ、なだらかなカーブを設けて、ピンポイントで力が加わらないように形成している。
【0022】
なお、ボビン10は、例えば車載用ソレノイドに係るコイル巻回用のボビンであって、中心部分に貫通孔である中央孔10aが設けられており、外部からコイル10cに供給される電流に応じて、可動鉄芯がこの中央孔10aに吸い寄せられ、いわゆる、pullソレノイドとして機能する。
【0023】
また、端子台本体16は、上記コネクタ部18の突出側(前側)において、一段低くなるように段部16aが設けられ、軸部14の平面部14aが、コネクタ部18の突出側(前側)において、上下の所定範囲に亘って露出するように形成されている。
【0024】
また、クリップ端子12の各コネクタ部18は、それぞれ、互いに離れる方向に弾性変形して、対応する所定の導体を互いの間に挟む一対の把持爪(挟み片)18a、18bを備えている。
【0025】
これら一対の把持爪18a、18bの先端部には、互いに対向する位置に凸部18cが設けられており、コネクタ部18の先端部において、対応する相手側端子を弾性力をもって容易に把持することができるようになっている。
ここで、対応する相手側端子とは、ボビン10に電流を供給するための導電性端子であり、コネクタ部18は、種々の形状の相手側端子と簡易かつ確実に結合することができる。
本実施例においては、このクリップ端子12と端子台本体16とが、モールド成形を用いて一体的に形成されるようになっている。
【0026】
このように、本発明の実施例に係る端子台によれば、モールド成形を用いて形成されるので、従来のように、端子台本体16とクリップ端子12を締結したり、端子台本体16内にクリップ端子12を、嵌入する処理を行ったりして、クリップ端子12を端子台本体16に固定する処理が不要となり、また、両者の相対的な位置関係を確実に維持することが可能となる。これにより、迅速かつ高精度に端子台を作成することが可能となる。
【0027】
〈金型装置の構成〉
図4(B)に示すように、本発明の実施例に係る金型30は、端子設置/樹脂注入部32と、この端子設置/樹脂注入部33の左右方向に往復動を行なうスライド金型34aと、金型入れ子(上型34cが上下動するのに対して下型34dは固定とされ、モールド成形時には、図示する位置において互いに当接した状態とされる。)34bを備えている。
【0028】
金型30内の端子設置/樹脂注入部33において、クリップ端子12の軸部14の根元部14bが、ボビン10の上部に続く軸固定部32に嵌入された状態で設置され、その周りに樹脂剤が注入され、端子設置/樹脂注入部33までスライド金型34aがスライドしてきて、左右方向には固定とされていると金型入れ子34bとの間に挟持するようにして、クリップ端子12と端子台本体16とのモールド成形が行なわれる。
なお、ボビン10についての成形処理については
図4(B)に明確に示されていないが、この端子台20のモールド成形に先立って行われる。すなわち、下型に、コイル10cが巻回されたボビン10全体を収納し、この収納されたボビン10の周りの外表面に樹脂剤がオーバーコートされるような処理が行われる。
【0029】
〈本実施例の特徴構成〉
ところで、本実施例のようにモールド成形を用いて端子台本体16とクリップ端子12とを一体的にモールド成形すると、多くの利点を享受し得る。その一方、本実施例のように、コネクタ部18の下側の把持爪18aの下端面から軸部14表面へ移行する角部(移行部12a)に、Rがつけられている場合において、
図6の比較例1に示すように(
図6に示す各部材は、対応する
図1に示す部材の符号に100を加えた符号を付して表されている。
図4(A)および
図5(A)において同じ。)、端子台本体116の上面部116bと下側の把持爪118aの下端面との距離が小さ過ぎると、成形によってバリが発生しやすく、寸法精度がより厳しくなり、また、金型の寿命が短くなる等の問題が発生し好ましくない。
【0030】
しかし、
図7に示す比較例2のように(
図7に示す各部材については、対応する
図1に示す部材の符号に200を加えた符号を付して表されている。)、端子台本体216の上面部216bと下側の把持爪218aの下端面との距離を大きくするために、クリップ端子212全体を端子台本体216から引き上げた状態とすると、端子台220全体の背高が大きくなり、部品のコンパクト化の要請に反することになる。
【0031】
そこで、本実施例においては、
図1〜
図3に示すように、端子台本体16の前側(コネクタ部18が向く方向)が一段低くなる段部16aを設け、軸部14の前側においてのみ、上下の所定長に亘って平面部14aが露出するように構成している。
【0032】
すなわち、この前側には、下側の把持爪18aの下端面から軸部14の表面へ移行するRをつけた移行部12aのみならず、その移行部12aに続く平面部14aが露出する形状とされており、モールド成形時において、軸部14が、移行部12aと平面部14aの広い範囲に亘ってスライド金型34aと接触し、この軸部14を端子設置/樹脂注入部33に注入された樹脂剤とともに押圧する。
【0033】
また、軸部14は、移行部12aのみならず、平面的に延びる平面部14aにおいても、スライド金型34aに密着して広い範囲で押圧されるため、移行部12aのみの狭い範囲で押圧していた比較例1、2と比べて、成形時のバリが発生しにくくなり、また、移行部12aのRの部分ではなく平面部14aの平面を基準として金型を設計すればよくなるので、寸法精度を大幅に緩和することができる。
【0034】
また、スライド金型34aが、軸部14の、移行部12aと平面部14aの広い範囲に亘って突き当てられることになるので、移行部12aのみの狭い範囲で突き当てられていた比較例1、2のものと比べると、突き当たる際の押圧力が分散し、金型の長寿命化を図ることができる。
【0035】
上述したことを、
図4および
図5を用いて説明する。比較例1を示す
図4(A)と、実施例を示す
図4(B)とを比較すると、比較例1では端子設置/樹脂注入部133が単純な矩形状をなしているために、スライド金型134aが、上方のRつき角部(クリップ端子112の移行部112aに対応する)のみでクリップ端子112に突き当てられる状態となっている。これに対して、本実施例においては、端子設置/樹脂注入部33において、図中左上方の角部に段差が設けられるように切り欠かれた形状とされているために、スライド金型34aが、図中右上方のRつき角部およびそれに続く先端平面部(クリップ端子12の移行部12aおよび平面部14aに対応する)の広い領域でクリップ端子12に突き当てられる状態となっている。
【0036】
このため、スライド金型34aが、クリップ端子12に突き当てられる領域の高さ(面積)は、両者において大きく異なる。
【0037】
図5は、この両者の差を示すものである。比較例1を示す
図5(A)と、実施例を示す
図5(B)とを比較すると、スライド金型34a、134aが、クリップ端子12、112に突き当てられる領域の高さは、比較例1ではPとなり、一方、実施例ではQとなる。Pに対してQは、例えば2倍程度となり(対比面積も同様)、また、本実施例においては、スライド金型34aが、軸部14の平面部14aにおいても突き当てられているので、上述したように、バリが発生しにくい、寸法精度を緩和することができる、金型の長寿命化を図ることができる、等の種々の有用な効果を奏することができる。
【0038】
また、上述した前側以外の3方向においては、上述したような段部16aは設けられておらず、ボビン10の上面部10aから下側の把持爪18aの下端面までの距離は、比較例1と同様とされているので、前述した
図7に示す比較例2のように、端子台20全体としてコンパクト化の要請に反する虞もない。
【0039】
〈変更態様〉
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明は上述の実施例に態様が限定されるものではなく、種々に態様を変更することが可能である。
【0040】
例えば、上述の実施例においては、導電性端子としてクリップ端子を用いているが、導電性端子としてはこれに限られるものではなく、例えば、コイルの絡げ端子等の他の入出力端子を用いるようにしてもよい。
【0041】
また、上述の実施例においては、クリップ端子のコネクタ部形状として把持爪を2つ対向させたものを用いているが、このコネクタ部形状としては、軸部に対して直交する方向に延び、このコネクタ部の下端面と軸部とが略直交して角部が形成されるような形状を構成するものであれば、種々の形状をとり得る。また、この角部にRがついている場合に特に有効であるが、本発明の磁性部品の端子台としては、必ずしも角部にRがついていることを要しない。
【0042】
また、コネクタ部の数としては、上述した実施例に示すように2つに限られるものではなく、1つであってもよいし、3つ以上の数であってもよい。
また、端子台本体の形状としても上述した実施例に記載のものに限られるものではなく、要は、導電性端子の前側(コネクタ部の突出する方向)に段差が設けられて、この段差によって、導電性端子の前側部分が上下に大きく露出するように構成されるものであればよい。例えば、段差は端子台の幅方向の広い範囲に亘って設けずともよく、導電性端子の軸部の対応部分をスリット状に狭い幅で切り欠くようにしてこの軸部を上下方向に露出させるようにしてもよい。
【0043】
また、本発明の金型としても、上記実施例のものに限られるものではなく、種々の態様の変更が可能である。例えば、上述した端子台の変更態様に対応させるように、端子台の軸部対応部分をスリット状に切り欠いてこの軸部を上下方向に露出させるように成形し得るスライド金型形状を備えるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0044】
10、110、210 ボビン(巻回コイルつき)
10a、110a、210a 中央孔
10b、110b、210b 鍔部
10c、110c、210c コイル
12、112、212 クリップ端子
12a、112a、212a 移行部
14、114、214 軸部
14a 平面部
14b、 114b 根元部
16、116、216 端子台本体
16a 段部
16b、116b、216b 上面部
18、118、218 コネクタ部(導電性端子部)
18a、18b、118a、118b、218a、218b 把持爪
18c、118c、218c 凸部
20、120、220 端子台
30、130 金型
32、132 軸固定部
33、133 端子設置/樹脂注入部
34a、134a スライド金型
34b、134b 金型入れ子
34c、134c 上型
34d、134d 下型