特開2016-81815(P2016-81815A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特開2016-81815X線イメージ管の制御方法およびX線イメージ管装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-81815(P2016-81815A)
(43)【公開日】2016年5月16日
(54)【発明の名称】X線イメージ管の制御方法およびX線イメージ管装置
(51)【国際特許分類】
   H01J 31/50 20060101AFI20160411BHJP
   A61B 6/00 20060101ALI20160411BHJP
【FI】
   H01J31/50 A
   A61B6/00 300P
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-213936(P2014-213936)
(22)【出願日】2014年10月20日
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】503382542
【氏名又は名称】東芝電子管デバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100062764
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 襄
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】君島 隆之
(72)【発明者】
【氏名】高橋 淳一
【テーマコード(参考)】
4C093
5C037
【Fターム(参考)】
4C093AA01
4C093CA37
4C093EB03
5C037GG01
5C037GG03
5C037GG05
5C037GH08
5C037GH10
5C037GJ03
(57)【要約】
【課題】大線量のX線の入射に対応できるX線イメージ管の制御方法を提供する。
【解決手段】入射するX線を電子に変換する入力面、入力面に対向し電子を可視光に変換して可視光像を結像する出力面、および入力面と出力面との間で電子を加速および集束する電極を有するX線イメージ管13の制御方法である。X線イメージ管13に入射するX線の入射線量が所定値内にある場合には電極に所定の電圧を印加する。X線イメージ管13に入射するX線の入射線量が所定値を越える場合には電極に印加する電圧を所定の電圧よりも下げる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射するX線を電子に変換する入力面、この入力面に対向し前記電子を可視光に変換して可視光像を結像する出力面、および前記入力面と前記出力面との間で前記電子を加速および集束する電極を有するX線イメージ管の制御方法であって、
前記X線イメージ管に入射するX線の入射線量が所定値内にある場合には前記電極に所定の電圧を印加し、前記X線イメージ管に入射するX線の入射線量が前記所定値を越える場合には前記電極に印加する電圧を前記所定の電圧よりも下げる
ことを特徴とするX線イメージ管の制御方法。
【請求項2】
入射するX線を電子に変換する入力面、この入力面に対向し前記電子を可視光に変換して可視光像を結像する出力面、および前記入力面と前記出力面との間で前記電子を加速および集束する電極を有するX線イメージ管の制御方法であって、
前記出力面に結像される前記可視光像の輝度が前記可視光像を撮像する撮像装置の飽和露光量となる値よりも低い所定値内にある場合には前記電極に所定の電圧を印加し、前記出力面に結像される前記可視光像の輝度が前記所定値を越える場合には前記電極に印加する電圧を前記所定の電圧よりも下げる
ことを特徴とするX線イメージ管の制御方法。
【請求項3】
前記X線イメージ管の前記電極は、前記電子を加速する加速電極および前記電子を集束する集束電極を有しており、
前記加速電極に印加する加速電圧および前記集束電極に印加する集束電圧の両方を制御する
ことを特徴とする請求項1または2記載のX線イメージ管の制御方法。
【請求項4】
入射するX線を電子に変換する入力面、この入力面に対向し前記電子を可視光に変換して可視光像を結像する出力面、および前記入力面と前記出力面との間で前記電子を加速および集束する電極を有するX線イメージ管と、
前記X線イメージ管に入射するX線の入射線量が所定値内にある場合には前記電極に所定の電圧を印加し、前記X線イメージ管に入射するX線の入射線量が前記所定値を越える場合には前記電極に印加する電圧を前記所定の電圧よりも下げる制御装置と
を具備することを特徴とするX線イメージ管装置。
【請求項5】
入射するX線を電子に変換する入力面、この入力面に対向し前記電子を可視光に変換して可視光像を結像する出力面、および前記入力面と前記出力面との間で前記電子を加速および集束する電極を有するX線イメージ管と、
前記出力面に結像される前記可視光像の輝度が前記可視光像を撮像する撮像装置の飽和露光量となる値よりも低い所定値内にある場合には前記電極に所定の電圧を印加し、前記出力面に結像される前記可視光像の輝度が前記所定値を越える場合には前記電極に印加する電圧を前記所定の電圧よりも下げる制御装置と
を具備することを特徴とするX線イメージ管装置。
【請求項6】
前記X線イメージ管の前記電極は、前記電子を加速する加速電極および前記電子を集束する集束電極を有し、
前記制御装置は、前記加速電極に印加する加速電圧および前記集束電極に印加する集束電圧の両方を制御する
ことを特徴とする請求項4または5記載のX線イメージ管装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、大線量のX線の入射に対応したX線イメージ管の制御方法およびX線イメージ管装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、X線イメージ管では、入力面(光電面)に入射したX線を電子に変換し、入射面と出射面との間にある加速電極および集束電極に電圧を印加して電子を加速・集束し、出力面で電子を可視光に変換して可視光像を結像している。出力面に結像される可視光像をCCD等の撮像素子を用いた撮像装置で撮像し、撮像された映像を基に検査・診断等を行っている。
【0003】
医療用においては、通常の検査・診断の他に、大線量のX線を被写体に照射して検査・診断を行う場合がある。
【0004】
この場合には、X線イメージ管に入射するX線の入射線量が増大するため、その影響からX線イメージ管の出力面に結像される可視光像の輝度が撮像装置の撮像素子の飽和露光量に達してしまい、撮像装置で撮像された映像が全体的に最大輝度となって、いわゆるハレーションのような映像となり、検査・診断が困難になってしまう。そのため、X線イメージ管の出力面と撮像装置との間にND(Neutral Density)フィルタを配置し、X線イメージ管の出力面の輝度を下げて撮像装置の露光の飽和を防いでいる。
【0005】
しかしながら、NDフィルタは、使用の有無を切り換える機構を必要とする。X線イメージ管は、例えば検診車等のように振動のきつい条件で使用されることも多く、NDフィルタの使用の有無を切り換える機構には機械的な耐久性が求められ、開発期間の長期化、高コスト化を招く。
【0006】
さらに、NDフィルタは、決まった値の輝度低下しか行えないため、被写体の違いや、X線源およびX線イメージ管の経時劣化等の変化には追従できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−192574号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
NDフィルタを用いずに、大線量のX線の入射に対応できるX線イメージ管が望まれている。
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、大線量のX線の入射に対応できるX線イメージ管の制御方法およびX線イメージ管装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本実施形態は、入射するX線を電子に変換する入力面、入力面に対向し電子を可視光に変換して可視光像を結像する出力面、および入力面と出力面との間で電子を加速および集束する電極を有するX線イメージ管の制御方法である。X線イメージ管に入射するX線の入射線量が所定値内にある場合には電極に所定の電圧を印加する。X線イメージ管に入射するX線の入射線量が所定値を越える場合には電極に印加する電圧を所定の電圧よりも下げる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1の実施形態を示すX線イメージ管を用いたX線検査装置の構成図である。
図2】同上X線イメージ管の断面図である。
図3】同上X線イメージ管へのX線の入射線量と撮像装置が出力する映像の輝度との関係を示すグラフである。
図4】同上X線イメージ管へのX線の入射線量と電極に印加する電圧との関係を示すグラフである。
図5】比較例を示し、X線イメージ管へのX線の入射線量と撮像装置が出力する映像の輝度との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、第1の実施形態を、図1ないし図5を参照して説明する。
【0013】
図1にX線検査装置10を示し、X線検査装置10は、被写体11に対してX線を照射するX線発生装置12、被写体11を透過したX線像を可視光像に変換するX線イメージ管13、X線イメージ管13から出力される可視光像を撮像する撮像装置14、X線発生装置12およびX線イメージ管13および撮像装置14を制御する制御装置15、および撮像装置14で撮像された映像を表示する表示装置16を備えている。なお、X線イメージ管13、撮像装置14および制御装置15等によってX線イメージ管装置17が構成されている。
【0014】
そして、X線発生装置12は、X線を発生するX線発生部19、およびX線発生部19を制御するX線制御部20を備えている。X線発生装置12は、制御装置15からの制御信号によりX線を発生し、X線を被写体11に照射するように構成されている。
【0015】
また、図2に示すように、X線イメージ管13は、真空外囲器23を備え、真空外囲器23のX線の入射側には入力窓24が形成され、入力窓24に対して反対側には出力窓25が形成されている。真空外囲器23内には、入力窓24の内側にX線を電子に変換して放出する光電面を有する入力面26が設けられ、出力窓25の内側に電子を可視光像に変換して出力する出力面27が設けられている。出力面27に結像された可視光像は出力窓25を透過する。
【0016】
入力面26から出力面27に向かって進行する電子の進路に沿って、電子を加速、集束する電子レンズ28が配設されている。この電子レンズ28は、入力面26に負の電圧を加えるカソード電極Kや出力面27に高い正の電圧を加える加速電極としてのアノード電極A、これらカソード電極Kとアノード電極Aとの間の集束電極としての複数のグリッド電極G1,G2,G3等の複数の電極29で構成されている。
【0017】
真空外囲器23は管容器30に収容される。管容器30には各電極29に電圧を印加する高電圧電源31や出力面27に結像された可視光像を撮像する撮像装置14が配置され、X線イメージ管13が形成されている。
【0018】
また、図1において、撮像装置14は、例えばCCD等の撮像素子を用いたカメラを備えている。撮像装置14は、X線イメージ管13の出力面27に結像された可視光像を撮像し、映像信号を制御装置15に出力する。
【0019】
また、制御装置15は、パーソナルコンピュータ等で構成されている。制御装置15は、X線発生装置12、X線イメージ管13および撮像装置14を制御することにより、被写体11のX線撮影を制御する。
【0020】
制御装置15は、X線イメージ管13に入射するX線の入射線量が所定値P(図3参照)よりも少ない場合、すなわちX線イメージ管13の出力面27に結像される可視光像の輝度が所定値Pよりも低い場合には、電極29に所定の電圧を印加し、また、X線イメージ管13に入射するX線の入射線量が所定値Pを越える場合、すなわちX線イメージ管13の出力面27に結像される可視光像の輝度が所定値Pを越える場合には、電極29に印加する電圧を所定の電圧よりも下げる機能を有する。この場合、アノード電極Aに印加する加速電圧およびグリッド電極G1,G2,G3に印加する集束電圧の両方を制御する。そして、所定値Pは、X線イメージ管13の出力面27に結像される可視光像を撮像する撮像装置14の飽和露光量となるよりも低い値である。
【0021】
制御装置15は、X線イメージ管13の出力面27に結像される可視光像の輝度を検出する検出手段34の機能を有している。検出手段34は、X線イメージ管13の出力面27に結像される可視光像の輝度を検出可能な位置に配置された光センサから出力されるセンサ信号に基づいて、あるいは、撮像装置14から出力される映像信号に基づいて、X線イメージ管13の出力面27に結像される可視光像の輝度を検出する。検出手段34によってX線イメージ管13の出力面27に結像される可視光像の輝度を検出できることにより、X線イメージ管13に入射するX線の入射線量や表示装置16に表示される映像の輝度についても間接的に検出できることになる。
【0022】
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0023】
まず、比較例について、図5に、X線イメージ管13へのX線の入射線量と撮像装置14が出力する映像の輝度との関係を示すグラフを示す。
【0024】
X線検査装置10の医療用途においては、通常の検査・診断の他に、大線量のX線を被写体11に照射して検査・診断を行う場合がある。この場合には、X線イメージ管13に入射するX線の入射線量が増大するため、その影響からX線イメージ管13の出力面27に結像される可視光像の輝度が撮像装置14の撮像素子の飽和露光量に達してしまい、撮像装置14で撮像された映像が全体的に最大輝度となって、いわゆるハレーションのような映像となり、検査・診断が困難になってしまう。
【0025】
図5に示すS点は、X線イメージ管13の出力面27に結像される可視光像の輝度が撮像装置14の撮像素子の飽和露光量に達した点である。S点よりもX線イメージ管13に入射するX線の入射線量が多くなっても、撮像装置14で撮像された映像は全体的に最大輝度のままとなる。すなわち、図1に示す実線が平坦になっているところが撮像装置14の撮像素子の飽和露光量に達している状態にある。
【0026】
なお、撮像装置14の撮像素子の飽和露光量に達しても、X線イメージ管13の出力面27に結像される可視光像の輝度は、S点では飽和点に達しておらず、X線イメージ管13に入射するX線の入射線量が多くなるのにしたがって可視光像の輝度も高くなる。
【0027】
それに対し、本実施形態について、図3に、X線イメージ管13へのX線の入射線量と撮像装置14が出力する映像の輝度との関係を示すグラフを示し、図4に、X線イメージ管13へのX線の入射線量と電極29(アノード電極Aおよびグリッド電極G1,G2,G3)に印加する電圧との関係を示すグラフを示す。
【0028】
X線イメージ管13に入射するX線の入射線量が所定値Pよりも少ない場合、すなわちX線イメージ管13の出力面27に結像される可視光像の輝度が所定値Pよりも低い場合には、電極29に一定の電圧V1を印加する。
【0029】
X線イメージ管13に入射するX線の入射線量が所定値Pを越える場合、すなわちX線イメージ管13の出力面27に結像される可視光像の輝度が所定値Pを越える場合には、電極29に印加する電圧を電圧V1よりも下げる。
【0030】
そして、アノード電極Aに印加する加速電圧を下げることにより、X線イメージ管13に入射するX線の入射線量の増加に対して、X線イメージ管13の出力面27に結像される可視光像の輝度が高くなる割合を低くすることができる。これにより、撮像装置14の撮像素子の飽和露光量に達することがなく、撮像装置14で撮像された映像による検査・診断が可能となる。
【0031】
さらに、グリッド電極G1,G2,G3に印加する集束電圧についても、加速電圧と比例して下げることにより、解像度の劣化を防ぐことができる(加速電圧と集束電圧とが比例することは分かっている)。
【0032】
したがって、本実施形態では、X線イメージ管13に入射するX線の入射線量を増加しても、撮像装置14の撮像素子の飽和露光量に達することがなく、撮像装置14で撮像された映像による検査・診断が可能となり、大線量のX線の入射に対応できる。
【0033】
そのため、輝度は無段階に近く制御でき、NDフィルタのような部品や、フィルタ切り替えのための機械的機構も不要であり、信頼性の向上、低コスト化を実現することができる。
【0034】
しかも、アノード電極Aに印加する加速電圧およびグリッド電極G1,G2,G3に印加する集束電圧の両方を制御することにより、撮像装置14で撮像される映像の解像度を保ちながら輝度を調整することができる。
【0035】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0036】
13 X線イメージ管
14 撮像装置
15 制御装置
17 X線イメージ管装置
26 入力面
27 出力面
29 電極
A 加速電極としてのアノード電極
G1,G2,G3 集束電極としての複数のグリッド電極
図1
図2
図3
図4
図5