【解決手段】多数の単位シート200が積層された積層型コアであって、単位シート200は、金属板210と、金属板210の上面及び下面のうちのいずれか一つに形成された絶縁層220と、絶縁層220上に形成された炭素層230とを含む。絶縁層220は、酸化マグネシウム(MgO)、シリカ(SiO2)、ジルコニア(ZrO2)及びアルミナ(Al2O3)のうちのいずれか一つのセラミックナノ粒子を含む。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好適な実施の形態は図面を参考にして詳細に説明する。次に示される各実施の形態は当業者にとって本発明の思想が十分に伝達されることができるようにするために例として挙げられるものである。従って、本発明は以下示している各実施の形態に限定されることなく他の形態で具体化されることができる。そして、図面において、装置の大きさ及び厚さなどは便宜上誇張して表現されることができる。明細書全体に渡って同一の参照符号は同一の構成要素を示している。
【0013】
本明細書で使われた用語は、実施形態を説明するためのものであって、本発明を制限しようとするものではない。本明細書において、単数形は文句で特別に言及しない限り複数形も含む。明細書で使われる「含む」とは、言及された構成要素、ステップ、動作及び/又は素子は、一つ以上の他の構成要素、ステップ、動作及び/又は素子の存在または追加を排除しないことに理解されたい。
【0015】
本発明の実施形態による積層型コアは、単位シートが複数積層された形態を有する。該単位シートは、金属板と、該金属板の上面及び下面のうちのいずれか一つに形成された絶縁層と、該絶縁層上に形成された炭素層とを含むことができる。
【0016】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施の形態の一つによる高密度回路基板の構成及び形成方法について詳述する。
【0017】
図1は本発明の実施形態に係る積層型コアの斜視図で、
図2は本発明の実施形態に係る積層型コアを構成する単位シートの断面図である。ご参考として、図面の構成要素は必ず縮尺に応じて描かれたことではなく、例えば、本発明の理解のために図面の一部構成要素の大きさは他の構成要素に比べて誇張されることがある。
【0018】
図1及び
図2を参照して、積層型コア100は、単位シート200が垂直に複数積層されて形成される。
図1に示すように、積層型コア100は中空部300の形成された円柱状を有するが、特にこれに限定されるものではない。
【0019】
積層型コア100を構成する単位シート200は、金属板210と、絶縁層220と、炭素層230とを含むことができる。単位シート200は、金属板210の上面及び下面のうちのいずれか一つに絶縁層220がコーティングされ、絶縁層220上に炭素層230が形成された構造を有するが、一例として、リング状であってもよい。このリング状は、閉ループ形態だけでなく、一部が開放された開ループ形態であってもよい。
【0020】
金属板210は、メットグラス(metglas:登録商標)等の軟磁性金属リボンを板状に加工して製造される。金属板210をなす軟磁性金属は、一般に、インダクタ(inductor)のコアまたは変圧器(transformer)のコア等に用いられる。
【0021】
積層型コア100が、絶縁層220なしに金属板210だけで構成された単位シート200を積層して形成される場合、積層型コア100に巻かれたコイルに電流が印加されたとき、各単位シート200に生成される渦電流(Eddy current)が周辺の単位シートに影響を与えてしまい、渦電流による損失が大きくなる。
【0022】
そのため、これを抑制するための方法として、金属板210の上面及び下面のうちのいずれか一つに絶縁層220をコーティングした単位シート200を製作し、これを積層して積層型コア100を製作することによって、電流印加時に各単位シート200に発生した渦電流が周辺の単位シートへと伝達されることを防止することができる。
【0023】
絶縁層220は、5nm〜100nmの大きさを有するセラミックナノ粒子221を含んで形成され得る。
【0024】
セラミックナノ粒子221には、金属酸化物である酸化マグネシウム(MgO)、シリカ(SiO
2)、ジルコニア(ZrO
2)、アルミナ(Al
2O
3)のうちのいずれかが挙げられるが、特にこれに限定されるものではない。
【0025】
また、絶縁層220の密度(density)を高くして絶縁効果を向上させることができるが、金属板210への絶縁層220のコーティングの際に、相対的に直径の大きいナノ粒子221と直径の小さいナノ粒子221とを混合して用いてもよい。
【0026】
しかしながら、絶縁層220を構成するセラミックナノ粒子221は、強い吸湿性を有し、金属板210に塗布されて大気中に露出すると、水分を吸収するため、ハイドロオキサイド(hydroxide)に変換されて絶縁性が低下することがある。絶縁層220の絶縁性が低下すると、単位シート200の絶縁性が低下し、これによって積層型コア100の渦電流損失が大きくなることになる。
【0027】
そのため、絶縁層220上に炭素層230を形成することによって、絶縁層220に含まれたセラミックナノ粒子221が大気中に露出して水分を吸収することを防止し、これによってセラミックナノ粒子221がハイドロオキサイドに変換されて絶縁性が低下することを防止することができる。即ち、炭素層230の形成によって絶縁層220の絶縁性の低下を防止することによって、窮極的に積層型コア100の渦電流損失を最小化することができる。
【0028】
炭素層230は、絶縁層220コーティング時に用いられる分散剤に含まれている炭素成分によって構成され、有機化合物としてC−C、C−H、COOHなどの形態で結合して存在し得る。
【0029】
炭素層230は、金属板210及び絶縁層220に比べて相対的に薄い厚さを有する。
【0031】
図3は、本発明の実施形態に係る積層型コアの製造方法を示す工程図である。
【0032】
本発明の実施形態に係る積層型コアの製造方法は、次の通り構成される。金属板を準備するステップ(S310)と、セラミックナノ粉末を分散剤と共にエタノールに溶解してコーティング液を製造するステップ(S320)と、前記金属板に前記コーティング液を塗布するステップ(S330)と、前記コーティング液が塗布された金属板を乾燥及び熱処理して絶縁層及び該絶縁層上に炭素層が形成された単位シートを製作するステップ(S340)と、前記単位シートを積層するステップ(S350)とを含む。
【0033】
前記金属板を準備するステップ(S310)では、メットグラス(metglas:登録商標)等の軟磁性金属リボンを板状に加工した軟磁性金属板を準備する。この軟磁性金属リボンは、磁化または、磁性の除去が容易なので、軟磁性金属リボンで製造された電子部品は電力損失が低く、高周波数で温度上昇が低く、電気エネルギーから磁気エネルギーへの変換が容易であるという長所がある。
【0034】
金属板210が準備されると、これと別に、セラミックナノ粉末を分散剤(Methoxy propanol acetate + Phosphated polyester)と共にエタノールに溶解してナノゾル形態のコーティング液を製造する(S320)。このステップは、金属板210の上面及び下面のうちのいずれか一つに絶縁体コーティング層を形成するためのコーティング液を製造するステップである。前記分散剤に含まれた炭素成分は、後に絶縁層上に炭素層を形成する材料になる。
【0035】
コーティング液が製造されると、準備した金属板210の上面及び下面のうちのいずれか一つに前記コーティング液を塗布し(S330)、コーティング液が塗布された金属板210を乾燥及び熱処理して絶縁層220を形成することによって単位シートを製作する(S340)。
【0036】
金属板210の上面及び下面のうちのいずれか一つに絶縁層220を形成して単位シート200を製作する方法には、ディッピング(dipping)による方法、スピンコーティング(spin coating)による方法などが挙げられる。
【0037】
ディッピング(dipping)による方法は、金属板210をコーティング液に漬けることによって絶縁層220を形成する方法であって、ディッピングの回数及び時間を調節して絶縁層220の厚さを調節することができる。金属板210をコーティング液に漬ければ、金属板210の全面が絶縁層220によってコーティングされるため、ディッピングによる方法は、金属板210の上面及び下面のうちのうちのいずれか一面を除いた外周面の絶縁層220を除去するステップをさらに含んでもよい。
【0038】
また、スピンコーティングによる方法は、スピンコーティング機を用いて高速で金属板210を回転させてコーティング液を金属板210に塗布することによって、絶縁層220を形成する方法であって、1分間当たりの回転数(rpm)と塗布されるコーティング液の量とを調節して絶縁層220の厚さを調節することができる。
【0039】
このように形成された絶縁層220は、5nm〜100nmの大きさを有するセラミックナノ粒子221を含むことができる。セラミックナノ粒子221には、金属酸化物である酸化マグネシウム(MgO)、シリカ(SiO
2)、ジルコニア(ZrO
2)、アルミナ(Al
2O
3)のうちのいずれか一つが挙げられるが、特にこれに限定されるものではない。
【0040】
絶縁層220を形成するための熱処理の際に、セラミックナノ粉末と共に添加された分散剤に含まれている炭素の一部は、熱処理工程中に大気中の酸素と結合して一酸化炭素(CO)または二酸化炭素(CO
2)の形態で揮発することがある。しかし、C−C、C−H及びCOOHなどの形態で結合された有機化合物は揮発することなく残っている。また、主な絶縁体として用いられるセラミックナノ粉末より比重が低いため、絶縁層220の上層部に集まって炭素層230を形成することがある。
【0041】
炭素層230は、還元の雰囲気にて1〜48時間、100〜300℃で熱処理することによって、その厚さを調節することができる。この炭素層230は、絶縁層220上に形成され、絶縁層220に含まれるセラミックナノ粒子221が大気中に露出して水分を吸収することを防止し、これによってセラミックナノ粒子221がハイドロオキサイド(hydroxide)に変換され、絶縁性が低下することを防止することができる。
【0042】
セラミックナノ粒子221は強い吸湿性を有し、金属板210に塗布されて大気中に露出すると、水分を吸収するため、ハイドロオキサイドに変換されて絶縁性が低下する。そのため、炭素層230の形成によって絶縁層220の絶縁性の低下を防止し、これによって積層型コア100の渦電流損失を最小化することができる。
【0043】
最後に、製作された単位シート200を垂直に複数積層することによって(S350)、積層型コア100を製作する。
【0044】
上記のような方法で製作された積層型コア100にコイルを巻き取る方法によって、インダクタまたは変圧器を製造することができる。本発明の一実施形態による積層型コア100を用いたインダクタまたは変圧器の場合、渦電流損失が低減され、高い効率を具現することができる。
【0045】
<比較例1>
金属板上に絶縁層がコーティングされていない積層型コアの製造
【0046】
1)金属板を準備する。
2)前記金属板を150個積層して積層型コアを製作する。
3)前記積層型コアのコア損失値(kW/m
3)をB−Hアナライザーを用いて測定する。
【0047】
<比較例2>
金属板上に絶縁層がコーティングされている積層型コアの製造
【0048】
1)金属板を準備する。
2)酸化マグネシウム(MgO)ナノ粉末を分散剤(Methoxy propanol acetate + Phosphated polyester)と共に99.9%のエタノールに溶解し、ナノゾル形態のコーティング液を製造する。
3)前記コーティング液を前記金属板にディッピング(dipping)方法によって塗布する。
4)塗布後、200℃にて10分間真空中で乾燥させ、600℃にて60分間熱処理して、絶縁層と該絶縁層上に炭素層とが形成された単位シートを製作する。
5)前記単位シートを99%のエタノールに入れ、200℃にて48時間熱処理して、絶縁層が形成されている単位シートを製作する。
6)前記絶縁層の形成された単位シートを150個積層して積層型コアを製作する。
7)前記積層型コアのコア損失値(kW/m
3)をB−Hアナライザー装置を用いて測定する。
【0049】
<実施例>
金属板上に絶縁層がコーティングされ、該絶縁層上に炭素層が形成された積層型コアの製造
【0050】
1)金属板を準備する。
2)酸化マグネシウム(MgO)ナノ粉末を分散剤(Methoxy propanol acetate + Phosphated polyester)と共に99.9%のエタノールに溶解して、ナノゾル形態のコーティング液を製造する。
3)前記コーティング液を前記金属板にディッピング(dipping)方法によって塗布する。
4)塗布後、200℃にて10分間真空中に乾燥させ、600℃にて60分間熱処理して、絶縁層と該絶縁層上に炭素層とが形成された単位シートを製作する。
5)前記単位シートを150個積層して積層型コアを製作する。
6)前記積層型コアのコア損失値(kW/m
3)をB−Hアナライザー装置を用いて測定する。
【0051】
前述の過程を通じて、金属板上に絶縁層がコーティングされなかったとき(比較例1)、金属板上に絶縁層がコーティングされたとき(比較例2)、及び金属板上に絶縁層がコーティングされ、該絶縁層上に炭素層が形成されたとき(実施例)に測定された、積層型コアのコア損失値(kW/m
3)は、下記の表1及び
図4の通りである。
【0053】
図4は、本発明の比較例及び実施例により測定されたコア損失値(kW/m
3)を示すグラフである。
【0054】
表1及び
図4を参照して、積層型コアのコア損失値(ヒステリシス損失値及び渦電流損失値の和)は、金属板に絶縁層をコーティングしたとき(335kW/m
3)の方が、絶縁層をコーティングしなかったとき(362kW/m
3)より約27kW/m
3低減され、絶縁層をコーティングすることに加えて、当該絶縁層上に炭素層を形成したとき(289kW/m
3)の方が、絶縁層をコーティングしただけのとき(335kW/m3)よりコア損失値(kW/m
3)がさらに約46kW/m
3低減されることが認められる。
【0055】
従って、積層型コア100のコア損失を最小化し、透磁率を最大化するためには、積層型コア100に用いられる単位シート200の金属板210を絶縁層220でコーティングすることが望ましく、コーティングの際に絶縁層220上に炭素層230を形成することがさらに望ましい。
【0056】
図5aは、本発明の実施形態に係る単位シートの断面SEM写真で、
図5bは
図5a中の部分Aを拡大して示すSEM写真である。
【0057】
図5a及び
図5bを参照して、積層型コア100に用いられる単位シート200に示すように、単位シート200は金属板210の上面及び下面のうちのいずれか一つに絶縁層220がコーティングされ、絶縁層220を拡大してみると、絶縁層220上に炭素層230が形成されていることを目視で確認することができる。
【0058】
前述のように、積層型コア100に用いられる単位シート200の金属板210に絶縁層220がコーティングされ、絶縁層220上に炭素層230が形成されることによって、炭素層230が絶縁層220の絶縁性の低下を防止し、積層型コア100のコア損失を最小化することができる。
【0059】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。