(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-82914(P2016-82914A)
(43)【公開日】2016年5月19日
(54)【発明の名称】草刈り機
(51)【国際特許分類】
A01D 34/68 20060101AFI20160415BHJP
【FI】
A01D34/68 C
A01D34/68 A
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-217838(P2014-217838)
(22)【出願日】2014年10月24日
(71)【出願人】
【識別番号】514271718
【氏名又は名称】田中 利明
(74)【代理人】
【識別番号】100083792
【弁理士】
【氏名又は名称】羽村 行弘
(72)【発明者】
【氏名】田中 利明
【テーマコード(参考)】
2B083
【Fターム(参考)】
2B083AA02
2B083BA02
2B083CA07
2B083CA14
2B083CA28
2B083FA06
2B083GA02
2B083HA51
(57)【要約】 (修正有)
【課題】草刈り時に振り方向に面する半分で刈った草を確実にとどめ、後ろ側に回り込み難くして回転刃には絡み込ませないようにした草刈り機を提供する。
【解決手段】吊り紐2又は吊り紐2に設けたフック3を係止させる受け具4及び操作ハンドル5を備えた中空のシャフト6を設け、該シャフトの基端部に駆動機、先端部に前記駆動機7に連繋した軸棒9の先端ギアを介して互いに逆方向の回転を受ける2つの従動ギアを内装したギアボックス14を有する円形上板15を設け、該円形上板の下面に互いに逆方向に回転する上回転刃と下回転刃とを刃部が前記円形上板の外周からはみ出すように設け、該下回転刃に一体回転する接地回転板を設けてなり、前記円形上板15の上面に前記シャフトの延長方向に草をとどめる草受け板26を設け、該草受け板の先端側及び基端側に刈った草を被包する凹曲部27、27′を設けた。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吊り紐又は吊り紐に設けたフックを係止させる受け具及び操作ハンドルを備えた中空のシャフトを設け、該シャフトの基端部に駆動機、先端部に前記駆動機に連繋した軸棒の先端ギアを介して互いに逆方向の回転を受ける2つの従動ギアを内装したギアボックスを有する円形上板を設け、該円形上板の下面に互いに逆方向に回転する上回転刃と下回転刃とを刃部が前記円形上板の外周からはみ出すように設け、該下回転刃と一体回転する接地回転板を設けてなり、前記円形上板の上面に前記シャフトの延長方向に沿って刈った草を受け止める草受け板を設け、該草受け板の先端側及び基端側に刈った草を被包する凹曲部を設けたことを特徴とする草刈り機。
【請求項2】
前記草受け板が、基端側の凹曲部の下部外縁に刈った草を凹曲部に導くガイド板を設けたことを特徴とする請求項1に記載の草刈り機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吊り紐で身体の脇に密着して設置し、身体中心に回転刃を振って草刈りを行うことのできる草刈り機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、この種の草刈り機は、草刈りにあたり身体中心に回転刃を振るもので、振る方向の前面にある半分の刃で草を刈るが、振る方向の後ろ側の半分は草刈りには寄与しないばかりでなく、刈った草が絡まることがあり、かかる場合には絡んだ草により回転刃を止めてしまうことも起こり得る。したがって、草刈り機では、回転刃を草刈り方向に振るときに刈られた草が、草刈りには寄与しない後ろ側の刃に回り込まないようにすることが重要である。そこで、振り方向の前面にある半分の刃で刈った草を、回転刃の上面にとどめるようにした草刈り機が提案されている(特開2003−143919号公報)。この草刈り機は刈った草を回転刃の上面にとどめられる点では、刈った草が後ろ側の刃に絡むことが少なくなるといえる。
【特許文献1】特願2003−143919号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記特許文献1の草刈り機では、刈られた草の大半をとどめることはでできず、振り方向の後ろ側に回ってしまうことが多く、刈った草が回転刃に絡んで、回転刃を止めてしまうことが多くなっていた。
【0004】
本発明は、上記課題を解決するもので、その目的とするところは、草刈り時に振り方向に面する半分で刈った草を確実にとどめ、後ろ側に回り込み難くするとともに、後ろ側の回転刃には絡み込まないようにした草刈り機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明に係る草刈り機は、吊り紐又は吊り紐に設けたフックを係止させる受け具及び操作ハンドルを備えた中空のシャフトを設け、該シャフトの基端部に駆動機、先端部に前記駆動機に連繋した軸棒の先端ギアを介して互いに逆方向の回転を受ける2つの従動ギアを内装したギアボックスを有する円形上板を設け、該円形上板の下面に互いに逆方向に回転する上回転刃と下回転刃とを刃部が前記円形上板の外周からはみ出すように設け、該下回転刃に一体回転する接地回転板を設けてなり、前記円形上板の上面に前記シャフトの長さ方向に沿って刈った草を受け止める草受け板を設け、該草受け板の先端側及び基端側に刈った草を被包する凹曲部を設け、刈った草が後ろ側に回り込まないように構成した。
【0006】
また、請求項2に係る草刈り機は前記草受け板が基端側の凹曲部の下部外縁に、刈った草を凹曲部に導くガイド板を設け、刈った草を草受け板に確実にガイドさせるように構成した。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、地面すれすれに草刈りしても小石などを飛散させず、多くの子供や大人が遊んでいる公園や運動場で安全安心して草刈りができるとともに、刈った草は円形上板上の草受け板でとどめられ、草を後ろ側に逃がさないから、後方の回転刃に絡せることがない。また、刃主体の左右の移動を繰り返しながら草刈り作業をするときに刈られた草は、いったん草受け板でとどめられ、ターン場所に畝状に集められるようになるから、いちいち熊手などを使って片付ることが不要になるなど各種の優れた効果を奏するものである。
【0008】
また、請求項2に係る発明によれば、ガイド板により刈った草を草受け板の基端側の両端凹曲部へ確実にガイドできるようにし、刈られた草が後ろ側に逃げることを規制できるという優れた効果を奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
次に、本発明の実施の態様について図面を参照して説明する。
図1は本願草刈り機の一部切欠斜視図、
図2は刃主体の構成を概略的に示す拡大断面図、
図3は上回転刃と下回転刃を重ねて示した拡大斜視図、
図4はビスとビス孔との関係を示す係合時の平面図、
図5は円形上板とその上面に固定した草受け板とを示す平面図、
図6は本願草刈り機の操作時を正面側から見た状態の斜視図である。
【0010】
本願草刈り機1は、
図1の如く、吊り紐2に設けたフック3を係止させる受け具4及び操作ハンドル5を備えた中空のシャフト6を有している。前記吊り紐2は、本願草刈り機1を身体に支えるためのもので、前記シャフト6の受け具4を設けた個 所に最初から一体的に取付けておくこともある。前記操作ハンドル5は前記シャフト6にジョイント具5′を介して鹿の角状にせり上がった両端にはグリップ部5″、5″が備えられている。
【0011】
前記シャフト6の基端部には駆動機7が、また、シャフト6の先端部には刃主体8が設けられている。該刃主体8は、前記シャフト6の基端部に取付けた駆動機7に連繋され、シャフト6内を縦通した軸棒9の先端ギア10に、
図2の如く、歯合した中継ギア11と同軸のべベルギア12を介して互いに逆方向に回転する2つの従動ギア13、13′を内装したギアボックス14を有する円形上板15を備えている。
【0012】
前記駆動機7としては小型のガソリンエンジンの使用が好ましいが、出力的に満足が得られるならば他の動力源(図示せず)を使用してもよい。また、前記駆動機7の回転速度や馬力は、前記グリップ部5″、5″握っている一方の手指(例えば親指)の操作で調整できるようにするとよい。
【0013】
前記円形上板15の下側には円形ケース16がビス止めされている。該円形ケース16内には、ケース内上ギア18とケース内下ギア18′が回転自在に設けられ、前記ギアボックス14内の従動ギア13、13′にそれぞれ連繋して互いに逆方向に水平方向に回転する上駆動ギア17と下駆動ギア17′に噛み合っている。前記ケース内上ギア18には第一回転体19が連繋し、ケース内下ギア18′には第二回転体19′がそれぞれ連繋回転(互いに逆方向)できるようになっている。
【0014】
前記第一回転体19及び第二回転体19′のそれぞれの下面には、複数個のピン20が円形状に配置され、該ピン20に対向して、
図3の如く、上回転刃22及び下回転刃23にそれぞれピン孔21が設けられている。しかして、下回転刃23の下面には接地回転板24を重ねるが、該接地回転板24にもピン孔が設けられている。該接地回転板24は前記刃主体8を地面に接して操作できるようにしている。
【0015】
前記ピン孔21は、前記ピン20の頭部が通過できる大円部21aと、前記ピン20の軸部が入る小円部21bとが連続した形状になっており、結合に際し、まず、ピン20の頭部を大円部21aに通してから小円部21bに向けてずらすことにより結合する(
図4参照)。すなわち、ピン孔21を有する上回転刃22、下回転刃23及び接地回転板24の順で前記ピン20に結合する。なお、前記接地回転板24を前記ピン20に結合した後、ピン20の頭部に、縮小方向に付勢した拡開バネリング25を係止させると前記接地回転板24が抜けないように固定される。
【0016】
前記円形上板15の上面には、前記刃主体8により刈られた草を受け止めるための草受け板26が設けられている。該草受け板26は、前記シャフト6の延長上の位置、すなわち、円形上板15の上面を、草刈り方向(実線矢印)Aに面する半分と、逆向き方向(破線矢印)Bに面する半分とを折半する位置に設けられている。勿論、逆向き方向(破線矢印)Bでも、往きに刈り残した草を仕上げる意味で刈るというテクニックもある。
【0017】
前記草受け板26の先端側及び基端側の両端部には、刈った草を被包する凹曲部27、27′がある。該凹曲部27、27′は、刈った草が丈長のときは幹部をつかむ役目を果たし、丈が短小のときは掻き集める役目を果たすもので、草受け板26より後ろ側に刈った草を逃がさないために有効である。この草受け板26の高さHは、5〜15cmに設定するのが好ましい。5cmより低いと丈の長い草には対応できないし、15cm以上であると重心の関係で扱い難くなる。
【0018】
前記草受け板26の凹曲部27、27′の最外端Kは、上回転刃22及び下回転刃23のそれぞれの刃部22′、23′の外端を通る想像円Sと同じか、若干内側になっていることが好ましい。前記想像円Sの外側では刃部22′、23′にて刈られない草を凹曲部27、27′でつかむことになり、前記想像円Sの内側であり過ぎると刈った草が草受け板26の後ろ側に逃れが易くなるからである。
【0019】
前記草受け板26の基端側の凹曲部27′の下部外縁には、刃部22′、23′により刈られた草を凹曲部27′に導くガイド板28がやや下向きに設けられている。これは刈った草を、草受け板26ないし凹曲部27′に確実に導くためである。このガイド板28は草受け板26の先端側には設けられていないが、これは上回転刃22の回転方向との関係である。
【0020】
前記円形上板15の周辺部15aは、上回転刃22の刃部22′の基部に向かって円弧状に被っている(図面上は角形)。これは円形上板15の周辺部15aと上回転刃22の刃部22′との隙間を可能な限り小さくして草刈りする側でも後方側でも刈った草が刃に絡むことがないようにしている。なお、前記シャフト6の刃主体8寄りには刈った草などがシャフト6に沿って上昇させないための保護板29が設けられている。
【0021】
次に、本願草刈り機1の作用について説明する。まず、作業者は、シャフト6の先端部に設けた刃主体8を仰向けに反転させ、第一回転体19及び第二回転体19′を露出させる。この第一回転体19及び第二回転体19′のそれぞれに配置した複数のピン20にピン孔21を介して上回転刃22を結合し、その後、下回転刃23及び接地回転板24を結合させる。最後に拡開バネリング25で抜けないように固定する。
【0022】
次いで、シャフト6の基端部に設けた駆動機(ガソリンエンジン)7を始動(エンジンを掛ける)させてから、作業者をして、吊り紐2を襷掛けにし、その吊り紐2のフック3をシャフト6に設けた受け具4に係止させて本願草刈り機1を脇に抱えるように密着させる。しかる後、操作ハンドル5のグリップ部5″、5″を両手で握ると、シャフト6の先端部の刃主体8を操作(振る)する草刈り態勢ができる。
【0023】
次に、草刈り作業に移るが、操作ハンドル5のアクセル操作により駆動機(ガソリンエンジン)7の回転数をMAXまで上げ、操作ハンドル5により身体中心にシャフト6の先端部の刃主体8を、
図6の実線矢印Aの如く、振る。刃主体8の回転数をMAXまで上げることにより草を刈るときの「刃」への負担を軽減すると共に、草刈りスピードが断然アップする。
【0024】
この刃主体8の振りは、下回転刃23と一体回転している接地回転板24を地面に接触させて行うために楽に行える。その上、上回転刃22及び下回転刃23の2枚刃であるため、小石や小枝などがあってもこれらを飛散させないから、例えば、公園や校庭での草刈り作業の近くに子供や大人がいても支障なく行える。
【0025】
また、作業者が刃主体8を、
図6の実線Aの如く、移動させると上回転刃22及び下回転刃23により刈られ草は、円形上板15の上面に設けた草受け板26によりとどめられる。特に、草受け板26の両端部に凹曲部27、27′があるため、刈った草が丈長のときでも短小のときでも刈った草を確実に被包するように受け止めることができる。この草受け板26の高さHが、5〜15cmあると、刈った草が丈長のときでも、短小のときでも確実にとどめることができる。
【0026】
そして、身体中心による捻りが限界になってターン(返す)し、
図6の破線Bの如く、刃主体8を移動させると、前記草受け板26にとどめられた草はターン時の場所に残される。つまり、刃主体8の左右の移動(実線A及び破線B)を繰り返すことにより刈られた草は、ターン場所に畝状に集められることとなるから、熊手などを使って散らばった刈った草を集める作業が不要となる利点がある。
【0027】
本願草刈り機1を用いて都市公園(秋川市草花公園)において、申請許可を得て草刈りテストを行った。広い公園を7日(42時間)掛けて完了した(回転刃を3枚交換した)。畝状に集められた草は回収用袋に詰めて運び出したが、熊手を使った集める作業は不要であった。これに対し、草刈り乗用ハンマーカッターを使って別な公園で同じ日数同じ時間を掛けて草刈りを実施し、散らばった草を熊手で集める作業には40時間/1人を要した。
【0028】
また、前述の如く、刃主体8の回転数がMAXまで上がっていると、刃主体8の返し(
図6の破線矢印B)時に、往きのときに残された産毛のような草も根こそぎ刈り取ることができ、刈り取った後の地表を見て「綺麗」だと感想を述べる近所の住人からの声も多い。
【0029】
本願草刈り機1による草刈りにあたり刃本体8を身体中心に揺動させる時に進行方向に面する半分の刃で草を刈るが、後ろ側の半分の刃は当面草刈りのためには寄与しないとしても継続して回転しているために、進行方向に面したときに草が絡まっていては草刈りに寄与できないばかりでなく回転を止めてしまうことも起こり得るが、刈った草は円形上板上の草受け板で確実にとどめ、後ろ向きに逃がさないので、後ろ側の半分の刃に絡ませることは一切ない。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本願草刈り機では、刈った草を円形上板上の草受け板でとどめ、そのとどめた草を後ろに逃がさないようにしたもので、公園や学校の庭などにおいて草刈り作業を安心安全にして楽に行えるものであり、産業上の利用可能性は高いものである。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図2】刃主体の構成を概略的に示す拡大断面図である。
【
図3】上回転刃と下回転刃を重ねて示した拡大斜視図である。
【
図4】ビスとビス孔との関係を示す係合時の平面図である。
【
図5】円形上板とその上面に固定した草受け板とを示す平面図である。
【
図6】本願草刈り機の操作時を正面側から見た状態の斜視図である。
【符号の説明】
【0032】
1 本願草刈り機
2 吊り紐
3 フック
4 受け具
5 操作ハンドル
5′ ジョイント具
5″ グリップ部
6 中空のシャフト
7 駆動機
8 刃主体
9 軸棒
10 先端ギア
11 中継ギア
12 べベルギア
13,13′ 従動ギア
14 ギアボックス
15 円形上板
16 円形ケース
17 上駆動ギア
17′ 下駆動ギア
18 ケース内上ギア
18′ケース内下ギア
19 第一回転体
19′ 第二回転体
20 ピン
21 ピン孔
22 上回転刃
23 下回転刃
24 接地回転板
25 バネリング
26 草受け板
27、27′ 凹曲部
22′、23′ 刃部
S 想像円
28 ガイド板
29 保護板
【手続補正書】
【提出日】2015年11月20日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吊り紐又は吊り紐に設けたフックを係止させる受け具及び操作ハンドルを備えた中空のシャフトを設け、該シャフトの基端部に駆動機、先端部に前記駆動機に連繋した軸棒の先端ギアを介して互いに逆方向の回転を受ける2つの従動ギアを内装したギアボックスを有する円形上板を設け、該円形上板の下面に互いに逆方向に回転する上回転刃と下回転刃とを刃部が前記円形上板の外周からはみ出すように設け、該下回転刃と一体回転する接地回転板を設けてなる草刈り機において、前記円形上板の上面に前記シャフトの延長方向に沿って刈った草を受け止める草受け板を設け、該草受け板の先端側及び基端側に刈った草を被包する凹曲部を設けたことを特徴とする草刈り機。
【請求項2】
前記草受け板が、基端側の凹曲部の下部外縁に刈った草を凹曲部に導くガイド板を設けたことを特徴とする請求項1に記載の草刈り機。