特開2016-82986(P2016-82986A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ザ ステート オブ クイーンズランド アクティング スルー ザ ディパートメント オブ アグリカルチャー アンド フィッシャリーズの特許一覧

<>
  • 特開2016082986-植物系電解液組成物 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-82986(P2016-82986A)
(43)【公開日】2016年5月19日
(54)【発明の名称】植物系電解液組成物
(51)【国際特許分類】
   A23L 5/00 20160101AFI20160415BHJP
   A23L 2/52 20060101ALI20160415BHJP
   A23L 2/02 20060101ALI20160415BHJP
   A23L 2/38 20060101ALI20160415BHJP
   A23L 19/00 20160101ALI20160415BHJP
【FI】
   A23L1/00 K
   A23L2/00 F
   A23L2/02 E
   A23L2/02 A
   A23L2/02 C
   A23L2/38 C
   A23L1/212 Z
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-26276(P2016-26276)
(22)【出願日】2016年2月15日
(62)【分割の表示】特願2013-509402(P2013-509402)の分割
【原出願日】2011年5月10日
(31)【優先権主張番号】2010902013
(32)【優先日】2010年5月11日
(33)【優先権主張国】AU
(71)【出願人】
【識別番号】512292119
【氏名又は名称】ザ ステート オブ クイーンズランド アクティング スルー ザ ディパートメント オブ アグリカルチャー アンド フィッシャリーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】特許業務法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スタンリー,ロジャー,アンソニー
(72)【発明者】
【氏名】ウィジェシンゲ,バンデュパラ
(72)【発明者】
【氏名】メレディ,コダンダ,ラム,レディ
【テーマコード(参考)】
4B016
4B017
4B035
【Fターム(参考)】
4B016LC07
4B016LG01
4B016LG06
4B016LG16
4B016LK04
4B016LK20
4B016LP02
4B016LP06
4B016LP13
4B017LC03
4B017LG04
4B017LG06
4B017LG20
4B017LK08
4B017LL07
4B017LP01
4B017LP02
4B017LP18
4B035LC06
4B035LG31
4B035LG32
4B035LK19
4B035LP06
4B035LP22
4B035LP23
(57)【要約】
【課題】炭水化物分・糖分が少ないまたは実質ゼロで、電解質分がナトリウムに対しカリウムが富んでいる消費用の植物系(天然ベース)電解液組成物、ならびに、これを調製するための方法を得る。
【解決手段】本発明は、特に、種々の植物系電解液組成物、その調製方法、およびその使用方法に関連する。ある実施態様においては、ナトリウムに対してカリウムが多い植物由来の電解質分と、約6%重量/体積より少ない植物由来の炭水化物分と、を含む植物系電解液組成物に関わる。他の実施形態においては、植物系電解液組成物を個人に投与することにより、個人の水分補給のため、個人の脱水症状もしくは水分過剰を防止するため、または個人のカリウム欠乏を予防もしくは治療するための方法に関わる。電解液組成物は、サトウキビ汁、テンサイ汁、サトウモロコシ汁、パームシロップ、メープル樹液、野菜汁、または果汁から調製することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カリウムを約0.050%から0.200%重量/体積、ナトリウムを約0.000%から0.050%重量/体積含む植物由来の電解質分と、
約6%重量/体積より少ない植物由来の炭水化物分と、
を含み、前記電解液組成物は、サトウキビ汁、テンサイ汁、サトウモロコシ汁、パームシロップ、メープル樹液、野菜汁、および果汁からなる群のうちの少なくともひとつから調製される、消費可能な植物系電解液組成物。
【請求項2】
請求項1の消費可能な植物系電解液組成物であって、
該電解液組成物の炭水化物分が約0〜2%w/vである組成物。
【請求項3】
請求項1または請求項2のいずれか1項の消費可能な植物系電解液組成物であって、
該電解液組成物がカリウムを約0.064%〜0.109%w/v含む組成物。
【請求項4】
先行する請求項のいずれか1項の消費可能な植物系電解液組成物であって、
該電解液組成物がナトリウムを約0.002%から0.030%w/v含む組成物。
【請求項5】
先行する請求項のいずれか1項の消費可能な植物系電解液組成物であって、
前記電解液組成物が、低モル重量のフェノール系酸化防止剤成分を含む組成物。
【請求項6】
先行する請求項のいずれか1項の消費可能な植物系電解液組成物であって、
前記電解液組成物が、約0.000%から0.200%までの低モル重量のフェノール系酸化防止剤を含む組成物。
【請求項7】
先行する請求項のいずれか1項の消費可能な植物系電解液組成物であって、
該電解液組成物が、約0.006%〜0.062%w/vの低含有量のフェノール系酸化防止剤を含む組成物。
【請求項8】
先行する請求項のいずれか1項の消費可能な植物系電解液組成物であって、
該電解液組成物が、低含有量の有機酸成分を含む組成物。
【請求項9】
先行する請求項のいずれか1項の消費可能な植物系電解液組成物であって、
該電解液組成物が、約0.01%から1.60%w/vの有機酸を含む組成物。
【請求項10】
先行する請求項のいずれか1項の消費可能な植物系電解液組成物であって、
該電解液組成物が、約0.11%から0.21%w/vの有機酸を含む組成物。
【請求項11】
先行する請求項のいずれか1項の消費可能な植物系電解液組成物であって、
該電解液組成物がサトウキビ汁から調製される組成物。
【請求項12】
請求項1から請求項10までのいずれか1項の消費可能な植物系電解液組成物であって、
該電解液組成物が果汁から調製される組成物。
【請求項13】
請求項1から請求項10までのいずれか1項の消費可能な植物系電解液組成物であって、
該電解液組成物がテンサイ汁から調製される組成物。
【請求項14】
請求項12の消費可能な植物系電解液組成物であって、
該電解液組成物がリンゴ果汁から調製される組成物。
【請求項15】
請求項1の消費可能な植物系電解液組成物であって、
該電解液組成物が、凡そK+を0.064〜0.109%w/v、Na+を0.002〜0.030%w/v、Mg2+を0.02〜0.10%w/v、0.5〜2.0%w/vの炭水化物を含む組成物。
【請求項16】
請求項1の消費可能な植物系電解液組成物であって、
前記電解液組成物は、凡そK+を0.05から0.100%w/v、Na+を0.002から0.010%w/v、Mg2+を0.002から0.010%w/v、0.5から6.0%w/vの炭水化物を含む組成物。
【請求項17】
先行する請求項のいずれか1項の植物系電解液組成物の濃縮液。
【請求項18】
請求項1から請求項16までのいずれか1項の植物系電解液組成物または請求項17の濃縮液から調製された飲料。
【請求項19】
個人の水分補給のため、個人の脱水症状もしくは水分過剰を防止するため、または個人のカリウム欠乏を予防もしくは治療するための方法であって、
請求項1から請求項16までのいずれか1項の組成物、請求項17の濃縮液、または請求項18項の飲料製品を個人に投与するステップを有する方法。
【請求項20】
医薬の調製において、個人の水分補給のため、個人の脱水症状もしくは水分過剰を防止するため、または個人のカリウム欠乏を予防もしくは治療するための、請求項1から請求項16までのいずれか1項の組成物、請求項17の濃縮液、または請求項18の飲料の使用。
【請求項21】
植物系電解液組成物を調製する方法であって、
少なくとも1種類の植物からの実質液体の抽出物を処理して、請求項1から請求項16までのいずれか1項の植物系電解液組成物を製造するステップを有する方法。
【請求項22】
請求項21に従って調製した植物系電解液組成物を濃縮するステップを有する、
濃縮液の形態の植物系電解液組成物を調製する方法。
【請求項23】
請求項21に従って調製した植物系電解液組成物、または請求項22に従って調製した濃縮液に、他の材料を少なくとも1つ混合して飲料を製造するステップを有する、
植物系電解液組成物またはその濃縮液から飲料を調製する方法。
【請求項24】
消費可能な植物系電解液組成物を調製する方法であって、
(1)精密濾過や限外濾過するステップを使用して、植物からの実質液体の抽出物を清澄化するステップと、
(2)ナノ濾過するステップを使用して、清澄化した実質液体の抽出物の炭水化物分を低減し、カリウムを約0.050%から0.200%重量/体積、ナトリウムを約0.000%から0.050%重量/体積含む電解質分と、約6%重量/体積未満の炭水化物分とを含む植物系電解液組成物を製造するステップとを有し、
該電解液組成物は、サトウキビ汁、テンサイ汁、サトウモロコシ汁、パームシロップ、メープル樹液、野菜汁、および果汁からなる群のうちの少なくともひとつから調製され、さらに必要に応じて
(3)煮沸または逆浸透濾過のステップを使用して、ステップ2の電解液組成物の濃縮液を調製するステップと、
を有する方法。
【請求項25】
消費可能なサトウキビ系電解液組成物を調製する方法であって、
(1)精密濾過または限外濾過するステップを使用して、搾ったままの、または清澄化したサトウキビ汁を清澄化するステップと、
(2)ナノ濾過するステップを使用して清澄汁の炭水化物分を低減し、カリウムを約0.050%から0.200%重量/体積、ナトリウムを約0.000%から0.050%重量/体積含む電解質分と、約6%重量/体積未満の炭水化物分とを含むサトウキビ系電解液組成物を製造するステップとを有し、
該電解液組成物は、サトウキビ汁、テンサイ汁、サトウモロコシ汁、パームシロップ、メープル樹液、野菜汁、および果汁からなる群のうちの少なくともひとつから調製され、さらに必要に応じて
(3)煮沸または逆浸透濾過のステップを使用して、ステップ2の電解液組成物の濃縮液を製造するステップと、
を有する方法。
【請求項26】
膜濾過技術を用いた植物からの実質液体の抽出物から飲料を製造するための方法であって、
前記飲料は植物樹液を再現し、前記実質液体の抽出物は、サトウキビ汁、テンサイ汁、サトウモロコシ汁、パームシロップ、メープル樹液、野菜汁、および果汁からなる群のうちの少なくともひとつから選択され、
(1)前記植物からの実質液体の抽出物を清澄化するステップと、
(2)糖類および有機酸の一部、好ましくは全部または大部分を前記実質液体の抽出物から除去するが、カリウムを含む一価イオンの大部分を前記実質液体の抽出物中に残すのに適した細孔径をもつように選択した膜を用い、前記実質液体の抽出物がカリウムを約0.050%から0.200%重量/体積、ナトリウムを約0.000%から0.050%重量/体積含む電解質分と、約6%重量/体積より少ない植物由来の炭水化物分とを含むようにするステップと、
(3)必要に応じて、逆浸透膜と煮沸の一方または両方により前記実質液体の抽出物を濃縮して、実質液体の抽出物の濃縮液を作るステップと、
を有する方法。
【請求項27】
植物のミネラル、糖類、および酸化防止剤の含有量において植物樹液を再現する消費可能な植物汁由来の飲料製品であって、
前記製品がカリウムを約0.050%から0.200%重量/体積、ナトリウムを約0.000%から0.050%重量/体積含む電解質分と、約6%重量/体積より少ない植物由来の炭水化物分とを含み、
前記製品がサトウキビ汁、テンサイ汁、サトウモロコシ汁、パームシロップ、メープル樹液、野菜汁、および果汁からなる群のうちの少なくともひとつから調製される製品。
【請求項28】
膜分離技術による植物からの実質液体の抽出物から調製した消費可能な植物系電解液組成物であって、前記消費可能な植物系電解液組成物が、
カリウムを約0.050%から0.200%重量/体積、ナトリウムを約0.000%から0.050%重量/体積含む植物由来の電解質分と、
約6%重量/体積未満、好ましくは0〜2%重量/体積の濃度の植物由来の炭水化物と、を含み、
前記電解液組成物がサトウキビ汁、テンサイ汁、サトウモロコシ汁、パームシロップ、メープル樹液、野菜汁、および果汁からなる群のうちの少なくともひとつから調製され、
前記植物系電解液組成物が、前記植物からの実質液体の抽出物に由来する約80%重量/体積より大きい濃度のカリウム、より好ましくは前記植物からの実質液体の抽出物に由来する約95%重量/体積より大きい濃度のカリウムを含む組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に植物系電解液組成物とその調製方法に関連する。ある実施態様においては、本発明は、大半の市販の植物汁飲料製品と比較して、電解質分がナトリウムに対してカリウムが多く、炭水化物分の少ない、サトウキビから調製した天然電解液組成物に関連する。
【背景技術】
【0002】
飲料製品を摂取すると、発汗や排泄で失われた水分およびミネラル(塩類・電解質)が補給される。普通の水や天然水はミネラル分が少ないため、このようなミネラルが十分には補給されない。また、喉の渇きを潤す能力に関しても限定的であり、水の摂取量を満たすことにおいては他の飲料製品に比べて低い効果しか得られないことがある。
【0003】
電解質飲料製品を摂取すると、発汗や胃腸下痢のために失われた塩類(ミネラル・電解質)が補給される。塩類は筋肉と神経が機能するのに不可欠である。市販の電解質飲料製品は、従来、ブドウ糖やその他の成分とともに主にナトリウム塩を用いて配合され、汗や血漿の成分に似せているとともに、運動後の疲労回復に役立つと考えられている栄養素を提供する。この「化学物質の混合物」は主にナトリウム塩ベースであるが、大半の人々にとってナトリウム塩の摂取量は既に食事勧告を大幅に超えている。調理や加工食品で使用されることに起因する過剰なナトリウム摂取は血圧上昇の留意すべきかつ一般的な原因であり、そのレベルを低減するために食事勧告がなされている。
【0004】
市販の栄養ドリンク製品は、カフェインや他の興奮剤を添加することにより支援することができる、運動している筋肉に炭水化物エネルギーのブーストを与えるために配合されている。水分補給中に高濃度の糖類を摂取すると、運動で失われたもの以上の正味エネルギー摂取量になる可能性がある。
【0005】
市販の液汁(juice)飲料製品は、天然の補給液として販売されている。大半の液汁は自然にナトリウム塩が少なくカリウム塩が多いが、通常は炭水化物が6〜12%重量/体積含まれており、ヒトの血漿に比べて高浸透性である。水分補給に液汁を使用すると、その天然の糖分に起因してエネルギー摂取量の増大と体重の増加につながる可能性がある。果汁はさらに、有機酸が糖類によって味覚的に相殺されることに起因して、低pHと酸性の性質を有している。酸性の果汁は、胃腸の調子を悪化させて、胃の不調や口と喉の炎症を引き起こす可能性がある。また酸性の性質は、歯のエナメル質の侵食に寄与する可能性がある。
【発明の概要】
【0006】
本発明の目的は、炭水化物分・糖分が少ないまたは実質ゼロで、電解質分がナトリウムに対しカリウムが富んでいる消費用の植物系(天然ベース)電解液組成物、ならびに、これを調製するための方法を得ることである。本発明の別の目的は、有用なまたは商業的な選択肢を公衆に提供することである。
【0007】
本発明の第1の観点によれば、植物系電解液組成物が得られる。この組成物は、
ナトリウムに対してカリウムが多い植物由来の電解質分と、
約6%重量/体積より少ない植物由来の炭水化物分と、
を含む。
【0008】
好ましくは、電解液組成物の炭水化物分は、約6%重量/体積(w/v)未満、約5%w/v未満、4%w/v未満、3%w/v未満であり、さらに好ましくは約0から2%w/v(とはいえ他の割合も想定できる)とし、市販の液汁飲料製品と比べて成分が大幅に少なくなるようにする。しかし炭水化物の含有量は、植物系電解液組成物を調製する元となる植物の種類や、その調製方法によって異なる。
【0009】
電解液組成物は、好ましくは約0.050%から0.200%w/v、より好ましくは約0.060%から0.130%w/v、さらに好ましくは約0.064%から0.109%w/vのカリウム分を含む(とはいえ他の割合の範囲も想定できる)ものとし、電解質が使用目的に対して十分な量であり、市販の電解質飲料製品よりも高い含有量となるようにする。しかしカリウムの含有量は、植物系電解液組成物を調製する元となる植物の種類や、その調製方法によって異なる。
【0010】
電解液組成物は低レベルのナトリウムを含み、好ましくは約0.000%から0.050%w/v、より好ましくは約0.001%から0.030%w/v、さらに好ましくは約0.007%から0.030%のw/vのナトリウム分を含む(とはいえ他の割合の範囲も想定できる)ものとし、市販の高ナトリウム製品が原因で発生する問題を最小限に抑えるか避けることができるようにする。しかしナトリウムの含有量は、植物系電解液組成物を調製する元となる植物の種類や、その調製方法によって異なる。
【0011】
電解液組成物は低分子量のフェノール系酸化防止剤を含み、約0.000%から0.200%w/v、より好ましくは約0.002%から0.133%w/vの、さらにより好ましくは約0.006%から0.062%w/vのフェノール系酸化防止剤を含む(とはいえ他の割合も想定できる)ものとする。このことは飲料製品の形態によっては有用である。しかしフェノール系酸化防止剤の含有量は、植物系電解液組成物を調製する元となる植物の種類や、その調製方法によって異なる。
【0012】
電解液組成物は有機酸成分を少なくすることで、酸性状態となって糖類やその他の特定の添加剤によってマスクする必要が生じ得るのを避けることができる。電解液組成物は、好ましくは約0.01%から1.60%w/vの低有機酸成分を含み、より好ましくは約0.05%から0.50%w/vの、さらにより好ましくは約0.11%から0.21%w/vを有する(とはいえ他の割合範囲も想定できる)ものとする。しかし有機酸の含有量は、植物系電解液組成物を調製する元となる植物の種類や、その調製方法によって異なる。
【0013】
典型的なサトウキビベースの電解液組成物は、例えば、Kを0.064から0.109%w/v、Naを0.002から0.030%w/v、Mg2+を0.002から0.010%w/v、炭水化物(主に単糖類であるブドウ糖と果糖)を0.5〜2.0%w/v含むことができる。
【0014】
典型的なリンゴ果汁ベースの電解液組成物は、例えば、Kを0.05から0.100%w/v、Naを0.002から0.020%w/v、Mg2+を0.002から0.010%w/v、炭水化物(主に単糖類であるブドウ糖と果糖)を0.5から5.0%w/v含むことができる。
【0015】
植物系電解液組成物は、任意の適切な種類の植物からの実質液体の抽出物から調製することができる。「植物からの実質液体の抽出物」という用語は、植物からの液体の抽出物、実質液体の抽出物、液化した抽出物、実質液化した抽出物のいずれか1つまたはその組み合わせである抽出物であって、懸濁する粒子状の物質を含む場合と含まない場合のいずれもあり得ると本明細書では理解すべきである。この用語は、植物由来の水、樹液、植物汁、シロップ、その他の粘性、非粘性の液体、および植物の一部の液化物を包含することを意図するが、これらに限定するものではない。
【0016】
実質液体の抽出物は、例えばサトウキビ汁、テンサイ汁、サトウモロコシ汁、パームシロップ、メープル樹液、ニンジン汁などの野菜汁、リンゴやオレンジ汁などの果汁とすることができる。植物は、通常砂糖の製造に使用される種類のもの、例えばサトウキビ、テンサイとするのが好ましく、サトウキビとするのがより好ましい。
【0017】
電解液組成物は、任意の適切な最終的な形態に加工することができる。この形態は、(さらさらした、または粘性のある)液体、ゼラチン状、または固体の形態とすることができる。組成物は、例えば、飲料製品/飲料、濃縮液、他の飲料製品への添加剤、ゲル、粉末、発泡性粉末、顆粒、カプセル剤、錠剤、として配合することができる。
【0018】
電解質から作られた乾燥製品または濃縮製品の場合、組成比は除去した水に比例して変化するであろう。
【0019】
好ましい実施態様では、組成物は、水分補給飲料製品または浸透性・低浸透性の電解質補給飲料製品(たとえば選手用)やカリウムの摂取源として配合される。
【0020】
飲料製品は、例えばアルコール飲料、ミネラルウォーター、ソーダ水、炭酸水、トニックウォーター、シロップの形態とすることが可能である。電解液組成物は、アルコールや、蒸留水、脱イオン水を含む様々な種類の水と混合することができる。
【0021】
組成物は、その形態によっては、次の種類の材料のうち少なくとも一つ以上をさらに含むことができる。活性剤(生物活性を含む)、栄養素、栄養補助食品、興奮剤、甘味剤、香味剤、着色剤、結合剤、乳化剤、緩衝剤、崩壊剤、吸収促進剤、滑沢剤、流動促進剤、流動調整剤、粘度調整剤、希釈剤、防腐剤。
【0022】
例えば、組成物は、次の種類の材料のうち少なくとも1つまたは複数を含むことができる。アミノ酸、ビタミン、ミネラル、追加の電解質、タンパク質(例えば、カゼインカルシウム、乳清タンパク質、乳清タンパク質単離物、大豆タンパク、カゼイン加水分解物、食肉タンパク質、酵母濃縮物)、カフェインや他の刺激物、食物繊維。
【0023】
本発明の第2の観点によれば、濃縮形態の第1の観点による植物系電解液組成物が得られる。
【0024】
電解液組成物は、貯蔵および輸送用の濃縮液として適したものにするため、糖分によって例えば5〜40倍(好ましくは約20倍)に濃縮することができる。この濃縮液は、好ましくは、すぐに消費できる(ready−to−consume)飲料製品へと容易に還元させることができ、用途の必要に応じて、浸透性、低浸透性、高浸透性にすることができる。
【0025】
本発明の第3の観点によると、第1の観点による植物系電解液組成物または第2の観点による濃縮液から調製される飲料製品が得られる。
【0026】
この飲料製品は、例えば個人の水分補給のためや、個人の脱水症状・水分過剰を防止するために用いることができる。この飲料製品は、電解質補給飲料製品またはカリウムの栄養源となりうる。
【0027】
ゲータレード(Gatorade)(登録商標)は、選手がスポーツに参加した後、体内の電解質を取り戻すためや脱水症状を避けるために飲む市販の飲料製品の一例である(とはいえこの飲料製品は、ナトリウムが比較的多い点および天然ベースではないという点で本発明とは異なるが)。
【0028】
本発明の第4の観点によれば、個人の水分補給のためや個人の脱水症状・水分過剰を防止するため、あるいは個人のカリウム欠乏を予防・治療するための方法が得られる。この方法は、本発明の第1の観点の組成物、第2の観点による濃縮液、あるいは第3の観点による飲料製品が個人に投与するステップを含む。
【0029】
本発明の第5の観点によれば、個人の水分補給のため、個人の脱水症や水分過剰を防止するため、個人のカリウム欠乏を防止または治療するための医薬の調製における、本発明の第1の観点による組成物、第2の観点による濃縮液、第3の観点による飲料製品の使用が得られる。
【0030】
本発明の第6の観点によれば、植物系電解液組成物を調製する方法が得られる。この方法は、本発明の第1の観点による植物からの実質液体の抽出物を処理して植物系電解液組成物を製造するステップを含む。
【0031】
本発明の第7の観点によれば、濃縮形態の植物系電解液組成物を調製する方法が得られる。この方法は、本発明の第6の観点に従って調製した植物系電解液組成物を処理して、本発明の第2の観点による濃縮液を製造するステップを含む。
【0032】
本発明の第8の観点によれば、植物系電解液組成物またはその濃縮液から飲料製品を調製する方法が得られる。この方法は、本発明の第6の観点によって調製された植物系電解液組成物または第7の観点によって調製された濃縮液に、少なくとも一つの他の成分を混合して飲料製品を製造するステップを含む。
【0033】
処理ステップは、任意の適切なタイプのものを1つ以上使用することができる。例えば、石灰処理、清澄化、濾過、煮沸のステップを使用することができる。必要であれば、初期の工場での破砕、清浄、脱色、結晶化、および回復(recovery)のような更なるステップを使用することもできる。
【0034】
膜分離技術を使用して、孔径の異なる膜を選択することにより、炭水化物分を除去して低減しつつミネラル・塩類・電解質の大部分を残すのが好ましい。膜プロセスを行うことで、初期の炭水化物分を約0〜6%w/vまで、最適には0〜2%w/vまで低減する一方で、電解液組成物中のカリウム濃度は約60%w/vより大きく、好ましくは約80%w/vより大きい濃度をもたらすことが好ましい。
【0035】
精密濾過や限外濾過を使用して、例えば実質液体の抽出物を清澄化することができる。
【0036】
ナノ濾過(ポリマー、セラミック、金属膜)を使用して、例えば電解質分から少なくとも一部の炭水化物分を分離することができる。
【0037】
ナノ濾過(ポリマー、セラミック、金属膜)を使用して、例えば電解質分から少なくとも一部の有機酸成分を分離することができる。
【0038】
煮沸と濾過(逆浸透等)の一方または両方の工程を使用して、例えば濃縮液を調製することができる。
【0039】
サトウキビ汁を使用する場合は、80℃で液汁を簡単に熱処理して微生物と酵素活性を制御し、続いて炭水化物分を少なくするのに先立ち、粗く濾過することができる。また、石灰で清澄化した液汁を使用することもできる。
【0040】
本発明の第9の観点によれば、サトウキビ系電解液組成物を調製する方法が得られる。この方法のステップは、
1、精密濾過や限外濾過するステップを使用して、新たな、または清澄化したサトウキビ汁を清澄化することと、
2、ナノ濾過するステップを使用して清澄汁の炭水化物分を低減し、ナトリウムに対してカリウムの多い電解質分と、約6%重量/容積未満の炭水化物分とを含むサトウキビ系電解液組成物を製造することと、必要に応じて、
3、煮沸または逆浸透濾過するステップを使用してステップ2の電解液組成物の濃縮液を調製することと、を含む。
【0041】
本発明の第10の(より一般的な)観点によれば、植物系電解液組成物が得られる。この方法のステップは、
1、精密濾過や限外濾過するステップを使用して、植物からの実質液体の抽出物を清澄化することと、
2、ナノ濾過するステップを使用して、清澄化した実質液体の抽出物の炭水化物分を低減し、ナトリウムに対してカリウムの多い電解質分と、約6%重量/体積未満の炭水化物分とを含む植物系電解液組成物を製造することと、必要に応じて、
3、煮沸または逆浸透濾過するステップを使用して、ステップ2の電解液組成物の濃縮液を調製することと、を含む。
【0042】
本発明の第11の観点によれば、植物からの実質液体の抽出物から膜濾過技術を用いて飲料製品を製造するための方法であって、飲料製品は植物の樹液を再現するものが得られる。この方法のステップは、
1、植物からの実質液体の抽出物を清澄化することと、
2、糖類および有機酸の一部、好ましくは全部または大部分を実質液体の抽出物から除去するが、カリウムを含む一価のイオンの大部分を実質液体の抽出物中に残すのに適した細孔径を有するように選択した膜を使用することと、そして、
3、必要に応じて、逆浸透膜と煮沸の一方または両方により実質液体の抽出物を濃縮して、実質液体の抽出物の濃縮液を作ることと、を含む。
【0043】
本発明の第12の観点によれば、ミネラル、糖類、酸化防止剤の含有量に関して植物の樹液を再現する植物汁由来の飲料製品が得られる。
【0044】
本発明の第13の観点によれば、膜分離技術による植物からの実質液体の抽出物から調製した植物系電解液組成物が得られる。この植物系電解液組成物は、
1、ナトリウムに対してカリウムが多い植物由来の電解質分と、
2、約6%重量/体積未満、好ましくは0から2%重量/体積の植物由来の炭水化物分と、を含み、
この植物系電解液組成物は、植物からの実質液体の抽出物に由来する約80%重量/体積の濃度のカリウム、より好ましくは植物からの実質液体の抽出物に由来する約95%重量/体積より大きい濃度のカリウムを含む。
【0045】
本発明者らは、膜技術によって液汁から糖類が濃縮していく間、植物が液体と養分とを根から葉へと通して保管・輸送するように、液体の形態である植物の樹液に似た流れが生じ得ることを発見した。本発明者らは、製造プロセスをコントロールすることで、液汁からの糖類の割合は小さくしつつ、ミネラル・電解質・塩類のほとんど、そして重要なものとしてカリウム分のほとんどを回収することができることを見出した。
【0046】
また、本発明者らは、電解液組成物やその濃縮液が水分補給飲料、すなわち電解質補給飲料のための良いベースとなることを見出した。電解質補給飲料は、酸味が少なく、明瞭でわずかに塩味があり、甘さのないものであることがある。これを摂取すると、液体の必要性にまつわる口やのどの乾燥感をうまくコントロールすることができるという、喉の渇きを潤す優れた感覚を得ることができる。このことは、ナトリウムに対するカリウムのミネラル塩比が高く、等張すなわち低濃度であることと相まって、水分補給と水分過剰の防止とに対して有効となる。水分過剰は、水分を過剰に摂取することによって電解質の正常なバランスが限界の外に押しやられたときに発生する。水分過剰は、スポーツ選手が脱水症状を避けるために、水分や実質的に低浸透性である電解質スポーツ飲料を過剰に飲んだときなどに起こり得る。結果、水分が過剰で塩類が不充分となり、混乱や発作を起こしたりすることがある。
【0047】
電解液組成物は、膜を使用して、炭水化物(糖類)を物理的に分離し、カリウムなどの小さなイオン電解質や、植物樹液の成分と似た他のマイナーな細胞成分を残すことによって得ることができる。電解液組成物中に残すブドウ糖、果糖を含む天然の糖類の量は、孔径の異なる膜を選択することによって約0〜6%w/v(好ましくは2%w/v)の間で変化させることができる。得られた電解液組成物は、糖分によって5倍から40倍程度に濃縮し、貯蔵や輸送に適する澄んだ濃縮液を得ることができる。濃縮液は還元していつでも飲める(ready−to−drink)製品にすることができる。
【0048】
飲料製品は、炭水化物が少なくカリウムの多い天然アイソトニック水分補給飲料製品とすることもできる。これは、水(電解質ゼロ)、液汁(糖類が多い)、電解質配合飲料(化学物質を混合して製造)の代わりとなる。本発明者らの知る限りでは、液汁から膜を用いて糖類と酸を除去することにより植物樹液のような製品を得ることや、そのような製品を飲料や高カリウム電解質補給製品として用いるための公に利用可能な先行情報はない。
【0049】
喉の渇きを制御するメカニズムは、水やその他の飲み物がもつ喉の渇きを潤す性質とともに、広範囲に研究されてきた。渇きを潤す効果は現在のところ主観的で予期しない観測である一方で、この効果は科学的に測定することができる。しかし、糖類と酸が枯渇した液汁や植物の樹液がもつ喉の渇きを潤す性質に着目するような言及は、文献にはないようである。このような製品の優れた渇きを潤す特性を示す先行文献はないようであり、糖類が少なく酸が少ない製品がこの効果を生じることは知られているにしても、果汁についてはそうではない。高カリウム電解質分との関係で喉の渇きを潤す潜在的なメカニズムに関する議論はなかった。同様に、メカニズムはよく理解されているものの、天然電解質の製品を用いて水分過剰を予防する研究はなかった。治療は、血漿電解質を正常な細胞が機能するのに必要な範囲にもって来るために、塩類と利尿薬の一方または両方を供給することからなる。天然電解液組成物であれば問題が発生するのを防ぐことができるであろう。
【0050】
高ナトリウムの影響と、健康のレベル、特に血圧低下を減少させる必要性は広く一般的となっている。低ナトリウム、高カリウムの摂取を促進するために作られている液汁以外の市販飲料製品や生鮮食品は発見されていない。
【0051】
本発明の第1から第12までの観点は、(特徴が互いに互換性がないという条件で)「発明の開示」の見出しが付いた節のいずれかの箇所、または「発明の好ましい実施態様」の節で説明されているように、1つ以上の特徴を有することができると理解すべきである。
【0052】
本発明を容易に理解して実施できるようにするため、その好ましい実施態様を、図を参照しながら、あくまでも例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0053】
図1図1は、出発原料としてサトウキビ汁を使ってサトウキビ系電解液組成物およびその濃縮液を調製することを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0054】
サトウキビ汁とリンゴ果汁からの電解液組成物およびその濃縮液の調製は以下に例示するが、砂糖の製造に用いられる他の植物原料、例えばテンサイ、サトウモロコシ、パームシロップ、メープル樹液、ニンジン汁などの野菜汁、オレンジなどの果汁(ただしココナッツ水やココナッツ果汁を除く)を使用することができる。
【0055】
しかしながら、上述したように、それぞれの電解液組成物の実際の電解質、糖類/炭水化物、フラボノイド/フェノール系酸化防止剤、および有機酸の含有量は、最終的には、植物系電解液組成物を調製する元となる植物の種類や、その調製方法によって異なる。
【0056】
例1−サトウキビ系電解液組成物およびその濃縮液の調製
【0057】
この例では、出発原料としてサトウキビ汁を使ってサトウキビ系電解液組成物およびその濃縮液を調製することについて説明する。プロセスの概略を図1に示す。
【0058】
下記の表1に、サトウキビ汁の固形分ベースでの典型的な組成を示す(Walford S (1996) Composition of cane juice. Proceedings of the SouthAfrican Sugar Technologists' Association 70, 265-266.)
【表1】
【0059】
工場で前濾過処理されたサトウキビ汁(基本的には表1に記載した通り)を、孔径0.1μmの膜を用いて精密濾過し、あらゆる微細な粒状物質を除去した。
【0060】
次に、精密濾過した液汁200リットルを、特定の細孔径を有するナノ濾過(NF)膜にかけ、炭水化物分に対して電解質分が多く、この電解質分がナトリウムに対してカリウムの多い電解液組成物の部分を得た。炭水化物分/糖分と大きな分子のほとんどは保持液部分として透過液部分から分離された(すなわち透過液部分=電解液組成物)。
【0061】
精密濾過した液汁供給液200Lのうち約30%(61.9L)が、等倍濃度(single strength)の電解液、すなわち前記電解液組成物として分離回収されたが、最適化することでさらに多くを透過液部分に回収することもできる。保持液は必要に応じて精製工場に戻して糖類を精製することもできる。
【0062】
電解液組成物(等倍濃度の電解液)は、逆浸透(RO)膜を使用して3.2Lとなるまでほぼ20倍に濃縮した。
【0063】
典型的な非濃縮電解液組成物は次の通りである。Kが0.064から0.109%w/v、Naが0.002から0.030%w/v、Mg2+が0.002から0.010%w/v、炭水化物/糖類(主に単糖類)が0.5から2.0%w/v。この組成物は、低分子量のフェノール系酸化防止剤もある程度含んでおり、濃縮して黄色っぽい色の安定した清澄シロップを得ることができる。この組成物は、有機酸を大きく欠いている。
【0064】
濃縮液および希釈した同等物の製品の栄養表示を下記の表2に示す。
【表2】
【0065】
異なる成分と非濃縮電解液組成物を混合することにより調製された、可能な2つの水分補給飲料製品は、表3および表4に記載されている。
【表3】

【表4】
【0066】
例2 − サトウキビ系濃縮電解液の調製
【0067】
この例では、出発物質として清澄化したサトウキビ汁を使ってサトウキビ系濃縮電解液を調製することについて説明する。
【0068】
サトウキビ濃縮電解液は、砂糖工場で清澄サトウキビ汁を100ミクロンのステンレス鋼ストレーナで濾過して得た。全糖類約10.9%w/wの清澄汁を二段階の膜処理で使用して、サトウキビ濃縮電解液(サトウキビ植物樹液濃縮物)を得た。
【0069】
濾過の最初のステップは、ナノ濾過(nanofiltration、NF)膜を用い、作動圧35バール(3.5MPa)、温度40℃にて行った。液汁の約375キロ、覆いの付いたステンレスタンクに入れて、40℃まで加熱した。液汁は、このタンクから、容量約20kgの高圧膜濾過ユニットの供給液タンクへポンプで送った。供給液は濾過が進行する間頻繁に新たな液汁で満たし、その一方で、Brix値が約25に達したとして保持液の一部(濃縮供給液)を一定の間隔で供給液タンクから取り除いた。
【0070】
糖類(<1.5%w/w)とミネラル(一価塩)分が非常に少なく、供給液のそれとほとんど等しいNFの透過液部分が、連続的に分離された。試行の終わりには、総供給液の約55%が糖類の少ない透過液として、45%以下の糖類の多い部分がNFの保持液として分離された。
【0071】
清澄汁と同様に糖分とミネラル分の少ないNFの透過液部分は、等倍濃度の天然電解液であると考えられる。等倍濃度の電解液(single strength electrolyte、SSE)は、ジャケット付きステンレス鋼のタンクで約40℃に加熱し、ステージ2の濾過の逆浸透(RO)膜を取り付けた膜ユニットにポンプで送った。SSEは、作動圧35バール、温度40℃で、20倍まで濃縮した。ステージ2で得られた透過液は、Brix値がゼロの水のみであった。濾過が進行する間、供給液タンクは新たなSSEで連続的に満たした。このプロセスは、電解質の濃度がSSEの20倍程度に上昇するまで実施した。
【0072】
下記の表5は、サトウキビ濃縮電解液の典型的な組成を示している。
【表5】
【0073】
例3 − リンゴ果汁ベースの濃縮電解液の調製
【0074】
この例では、出発物質としてリンゴ果汁濃縮液を使用して、リンゴ果汁ベースの濃縮電解液を調製することにいて説明する。
【0075】
Brix値約70の市販のリンゴ果汁濃縮液を7回RO水で希釈し、等倍濃度のリンゴ果汁を得た。約7.9%重量の全糖類を有するこの等倍濃度の果汁を、リンゴ電解液を得るための供給液として使用した。
【0076】
例2で説明したものと同様の二段階の膜濾過プロセスを用いて、リンゴ濃縮電解液を得た。
【0077】
ステップ1として、リンゴ果汁供給液を40℃に加熱し、ナノ濾過膜を用いて濾過した。NFの透過液は、サトウキビ汁透過液と異なり、全糖類が約4%であることが見出された。これは、リンゴ果汁に存在する糖類が(サトウキビ汁にあるようなショ糖ではなく)主に果糖やブドウ糖などの単糖類であり、簡単にはNF膜を透過しないためである。このケースでは、透過液と保持液が70:30の比で分離された。
【0078】
サトウキビ汁透過液と比べて糖濃度が相対的に高く、ミネラル濃度がリンゴ果汁供給液と等しいNFの透過液を、ステップ2の膜濾過へと供給した。ステップ2では逆浸透膜を用いて、ステップ1で得られた等倍濃度の電解液を濃縮した。このケースでは、電解質の濃度は約3.5倍しか増加せず、供給液の糖類濃度は既に約4倍あった。
【0079】
下記の表6は、リンゴ果汁濃縮電解液の典型的な組成を示す。
【表6】
【0080】
実施例2の清澄サトウキビ汁は、元の液汁供給液が100ml当たり88mgであるのに対して、NFの透過液(SSE)が100mlAAEの滴定酸度あたり38mgを有していたことを示しており、総酸度が半分以上低下したことを示す。しかし、リンゴ果汁については、NFの透過液が液汁供給液で100ml当たり148mgと比べて100ml当たり153mgMAEだった。総酸度は低下しなかった。
【0081】
これはサトウキビ汁が、トリカルボン酸でありまたクエン酸生成における異性体である、分子量(MW)174のアコニット酸を主に含んでいるためである。リンゴ果汁は、ジカルボン酸である分子量134のリンゴ酸を主に含んでいる。アコニット酸の分子サイズが大きいことにより、NF膜による高い除去率が得られる結果となる。したがって総酸度の低下は、リンゴ果汁ではなく、サトウキビ汁やブドウ(酒石酸)・オレンジ(クエン酸)果汁に適用するのがよい。
【0082】
サトウキビ汁のNFの透過液(SSE)は、10.6%の液汁供給液流に対して全糖類が0.6%あった。対照的に、リンゴ果汁のNFの透過液(SSE)は7.9%の果汁供給液に対して全糖類が4.1%あった。これは、リンゴ果汁が主にブドウ糖と果糖(分子量180)で構成されているのに対し、サトウキビ汁が主にショ糖(分子量360)であるためである。したがってサトウキビ汁には残留した糖類は少ない。
【0083】
要約すると、例示した電解液組成物の利点には以下のようなものが含まれる。
・糖分を低く抑え植物の樹液を再現するとともに、生きた細胞内の液体中の天然成分を反映するミネラルや酸化防止剤とを有する。
・心地よい天然のわずかな塩味があり、強い臭いや異臭がしないため、ストレートで、あるいは香料などの機能を有する材料を配合して消費するのに適している。
・食生活において摂取が不足する栄養素であるカリウムの天然で低カロリーな摂取源となり、これによればジュースを飲むのと比べて糖類の摂取量を低く抑えながら水分補給や栄養補給をすることが可能となる。
・細胞内のミネラルの天然成分に由来する低ナトリウム・高カリウムの成分比を有し、したがって高食物ナトリウムが血圧上昇を引き起こすことにつながるとされている食生活におけるナトリウムの摂取量を制限するために有益である。
・化学薬品を添加せず物理的な分離によって処理することにより、酸成分が少なく、糖類が少なく、わずかに塩味を与えることができ、水分消費を素早く満たす効果がある。
・喉の渇きを潤し、カリウムの多いミネラルバランスとする性質があり、水の過剰摂取に関する問題となり得る水分過剰の対策となる。
【0084】
以上の実施態様は、本発明の原理の例示に過ぎず、当業者は種々の修正や変更が容易に思いつくであろう。本発明は、様々な方法で、その他の実施態様で実行および実施することが可能である。また、本明細書において用いられる用語は説明のためのものであり、限定的なものとみなすべきではないことを理解すべきである。
【0085】
「含む、有する(“comprise”)」という用語や、その変種である“comprises”、“comprising”などは、本明細書中では、述べられている整数を包含することを表すために使用しており、文脈または用法において用語の排他的な解釈が必要となる場合を除き、他のいかなる整数も除外するものではない。
【0086】
この明細書中で先行技術情報を参照しているのは、その情報がオーストラリアや他の場所での一般常識であることを認めるものではない。
図1
【手続補正書】
【提出日】2016年3月16日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
消費可能な植物系電解液組成物を調製する方法であって、
(1)精密濾過または限外濾過の工程を用いて、砂糖製造に用いられる植物からの実質液体の抽出物を清澄化する工程と、
(2)ナノ濾過の工程を用いてこの清澄化された実質液体の抽出物の炭水化物分を低減し、ナノ濾過透過液とナノ濾過保持液とを得て、ナノ濾過透過液を電解質分のカリウムがナトリウムよりも多く炭水化物分が6%重量/体積未満である消費可能な植物系電解液組成物の製造に用い、ナノ濾過保持液を砂糖製造に用いる工程
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1の方法であって、ナノ濾過保持液から砂糖を精製する工程をさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1か2の方法であって、砂糖製造に用いられる植物をサトウキビ、テンサイ、サトウモロコシ、パームシロップ製造に適するパームからなる群から選択したことを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1か2の方法であって、砂糖製造に用いられる植物をサトウキビとしたことを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1か2の方法であって、砂糖製造に用いられる植物をテンサイとしたことを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかの方法であって、電解液組成物の炭水化物分が0%から2%重量/体積であることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかの方法であって、電解液組成物がカリウムを0.050%から0.200%重量/体積、ナトリウムを0.000%から0.050%重量/体積含むことを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1から6のいずれかの方法であって、電解液組成物がカリウムを0.064%から0.109%重量/体積、ナトリウムを0.001%から0.030%重量/体積含むことを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかの方法であって、電解液組成物が低モル重量のフェノール系酸化防止剤を0.000%から0.200%重量/体積、有機酸を0.01%から1.60%重量/体積含むことを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項1から9のいずれかの方法であって、ナノ濾過の工程において、糖類および有機酸の一部、好ましくは全部または大部分を清澄化された実質液体の抽出物から除去するが、カリウムを含む一価イオンの大部分を清澄化された実質液体の抽出物中に残すのに適した細孔径をもつように選択した膜を用いることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項1から10のいずれかの方法であって、ナノ濾過透過液中のカリウムが、植物からの実質液体の抽出物の元のカリウム濃度の80%重量/体積より多いことを特徴とする方法。
【請求項12】
消費可能なサトウキビ系電解液組成物の濃縮液を調製する方法であって、煮沸または逆浸透濾過の工程を用いて、請求項1から11のいずれかの方法で製造した電解液組成物の濃縮液を調製する工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項13】
飲料製品を調製する方法であって、請求項1から11のいずれかの方法で製造した植物系電解液組成物または請求項12の方法で製造した濃縮液に他の材料を少なくとも1つ混合して飲料製品を調製する工程を含むことを特徴とする方法。