【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の吸着剤は、ケイ酸バリウムを含むものである。ケイ酸バリウムは結晶質のものであるか、又は非晶質のものである。ケイ酸バリウムが結晶質のものである場合、該ケイ酸バリウムは、BaSiO
3・H
2OのXRD回折ピークを示すものである。BaSiO
3・H
2OのXRD回折ピークには、主たるピークとして、2θ=23.5°、2θ=24.2°、2θ=26.5°、2θ=30.0°、2θ=33.9°、2θ=49.7°にピークが観察される。最強ピークは2θ=23.5°である。ケイ酸バリウムが非晶質のものである場合には、XRD回折測定において非晶質ケイ酸バリウムのハローピークが観察される。
【0013】
前記のXRD回折ピークは、本発明の吸着剤を測定対象とした粉末X線法によって測定される。測定条件は次のとおりとする。すなわち、測定機器として装置名:D8 ADVANCE、メーカー:Bruker AXSを用いる。測定条件は、ターゲットCu−Kα、管電圧40kV、管電流40mA、走査速度0.1°/secに設定してX線回折測定を行った。
【0014】
本発明においては、吸着剤中にケイ酸バリウムが含まれていることによって、カルシウムが共存している場合であってもその影響をほとんど受けずに、水中に含まれるストロンチウムを選択的に吸着除去できるという有利な効果が奏される。特に塩濃度の高い水中、例えば海水中に含まれるストロンチウムを選択的に吸着除去できる。このような有利な効果が奏される理由は次のとおりであると本発明者は考えている。本発明の吸着剤が、ストロンチウムを含む水、例えば海水と接触すると、吸着剤中に含まれているケイ酸バリウムの表面に存在するBaが、海水中の硫酸イオン(SO
4−)と反応する。この反応によって水難溶性の化合物である硫酸バリウムが生成する。生成した硫酸バリウムは、ケイ酸バリウムの表面に沈積される。これとともに、ケイ酸バリウムからBaイオンが抜けた空隙に、Srイオンが選択的に吸着されると考えられる。
【0015】
本発明者の検討の結果、ケイ酸バリウムに含まれる、硫酸イオンと反応可能なBa成分は、比表面積が大きい方が多くなることが判明した。つまり、ストロンチウムの選択的吸着能は、小さい比表面積のケイ酸バリウムよりも、大きい比表面積のケイ酸バリウムの方が高くなることが判明した。
【0016】
すなわち、本発明の吸着剤は、そのBET比表面積が大きいことが特徴の一つである。具体的には、BET比表面積が15m
2/g以上50m
2/g以下であることが好ましく、20m
2/g以上50m
2/g以下であることが更に好ましく、22m
2/g以上40m
2/g以下であることが一層好ましい。この範囲のBET比表面積を有する本発明の吸着剤は、ストロンチウムの選択的吸着性能及び吸着速度が非常に良好なものとなる。BET比表面積は、島津製作所製のFlowsorb II2300(商品名)を用いてBET1点法にて測定する。使用ガスは、窒素ヘリウム混合ガス(窒素30vol%)とする。
【0017】
BaSiO
3・H
2Oで表されるケイ酸バリウムにおいては、BaO含有率が理論上71.9質量%であるところ、本発明の吸着剤に含まれるケイ酸バリウムは、BaO含有率が50質量%以上、特に52%以上、とりわけ55質量%以上であることが好ましい。BaO成分は海水中の硫酸イオンと結合して、水難溶性の物質である硫酸バリウムを生成するものである。したがってBaO成分が多いほど、ケイ酸バリウムは、海水中の硫酸イオンとの反応性に優れたものになる。しかし、BaO含有率が高くなりすぎると、ストロンチウム吸着後に吸着剤が脆くなる傾向がある。そこで、BaO含有率の上限値を好ましくは70質量%以下、更に好ましくは68質量%以下とすることにより、本発明の吸着剤は耐久性に優れ、かつストロンチウムの選択的吸着性能も高いものとなる。ケイ酸バリウム中のBaO含有率を上述の値以上にするためには、例えば後述する方法でケイ酸バリウムを合成すればよい。なお、前記の有効BaO成分の量とは、ケイ酸バリウム中のBaOの量から、ケイ酸バリウムに由来しないBaOの量を減じた値のことである。
【0018】
上述したBaO成分は、蛍光X線を用い、次の方法によって測定される。すなわち、蛍光X線分析装置として、リガク社製 ZSX100eを用いた。測定条件は、管球:Rh(4kW)、雰囲気:真空、分析窓材:Be(厚み30μm)、測定モード:SQX分析(EZスキャン)、測定径:30mmφとして全元素測定を行った。測定結果は酸化物換算で表示された。
【0019】
ケイ酸バリウムにおけるBaO成分の割合は上述のとおりが好ましいところ、ケイ酸バリウムにおけるBaO/SiO
2のモル比は0.6以上0.7以下であることが好ましく、0.62以上0.69以下であることが更に好ましく、0.63以上0.68以下であることが一層好ましい。BaO/SiO
2のモル比をこの範囲内に設定することによって、ストロンチウムの選択的吸着性能が一層向上する。ケイ酸バリウムにおけるBaO/SiO
2のモル比を上述の値以上にするためには、例えば後述する方法でケイ酸バリウムを合成すればよい。BaO/SiO
2のモル比を算出するためのSiO
2の定量は、前述したBaO成分と同様に蛍光X線で行うことができる。
【0020】
本発明の吸着剤に含まれるケイ酸バリウムは、それが結晶質である場合には、結晶性が高いことも特徴の一つである。詳細には、上述の方法で本発明の吸着剤についてX線回折測定を行って得られた結晶化度の値が40%以上であることが好ましく、45%以上であることが更に好ましい。結晶化度の上限値に特に制限はなく、高ければ高いほど好ましいが、結晶化度の値が70%程度に高ければ、本発明の効果は充分に奏される。結晶化度は、本発明の吸着剤について、上述の条件下に行ったX線回折測定における2θ=15°以上55°以下の範囲における結晶相のピークと非晶質相からのハローの分離を行い、結晶化度=C/(C+A)から算出する。式中、Cは結晶相からの散乱強度を表し、Aは非晶質相からの散乱強度を表す。
【0021】
一方、本発明の吸着剤に含まれるケイ酸バリウムが非晶質である場合には、XRD回折測定を行ったときに非晶質ケイ酸バリウムのハローピークが2θ=20〜35°の範囲で観察される(後述する
図1及び
図3参照)。
【0022】
本発明の吸着剤に含まれるケイ酸バリウムは、それが結晶質である場合には、その結晶化度が上述のとおりであることに加え、BaSiO
3・H
2OのXRD回折パターンにおける2θ=23.5°付近に観察される最強ピークの強度(すなわちピーク高さ)が750counts以上、特に1000counts以上であることが好ましい。このような回折強度を有するケイ酸バリウムは、そのBET比表面積や結晶化度が上述のとおりであることと相まって、ストロンチウムの選択的吸着能が非常に高いものとなる。ケイ酸バリウムの回折強度は、上述した粉末X線法によって測定される。
【0023】
更に、本発明の吸着剤に含まれるケイ酸バリウムは、それが結晶質である場合には、BaSiO
3・H
2OのXRD回折パターンにおける最強ピークである2θ=23.5°でのピーク強度(counts)と半値幅W(°)との比であるH/Wの値が1500以上であることが好ましく、2000以上であることが更に好ましい。H/Wの値の上限値は100000以下であることが好ましく、80000以下であることが更に好ましい。このようなH/Wの値を有するケイ酸バリウムは、そのBET比表面積や結晶化度が上述のとおりであることと相まって、ストロンチウムの選択的吸着能が非常に高いものとなる。H/Wの値は、上述した粉末X線法によって測定される。
【0024】
先に述べた結晶化度と関連して、本発明の吸着剤に含まれるケイ酸バリウムは、それが結晶質である場合には、その結晶子径が60nm以上110nm以下であることが好ましく、70nm以上90nm以下であることが更に好ましい。この範囲の結晶子径を有するケイ酸バリウムはその結晶性が高くなり、硫酸イオンと反応可能なBa成分が多くなる。
【0025】
前記の結晶子径は、上述した粉末X線法によって測定される。具体的には、粉末X線法で求められた回折ピークの半値幅に基づき、シェラー法によって算出することができ、D=K×λ/(β×cosθ)[D:結晶子径(nm)、λ:測定X線波長(nm)、β:結晶の大きさによる回折線の広がり(ラジアン)、θ:回折線のブラッグ角(ラジアン)、K:定数(βとDの定数で異なる)]の式を用いて算出した。シェラー法に基づく結晶子径の算出においては、X線源として装置名:D8 ADVANCE、メーカー:Bruker AXS線を用い、測定条件:ターゲットCu−Kα、管電圧40kV、管電流40mA、走査速度0.1°/sec、により、X線回折測定を行い、23<2θ<24に存在する回折ピークを用いた。
【0026】
本発明で使用するケイ酸バリウムには、後述する本発明の吸着剤の製造方法において、原料で用いるケイ酸の可溶性アルカリ金属塩に起因してアルカリ金属が不純物として含まれることがある。あるいは、ケイ酸バリウムの製造の過程で副生する炭酸バリウムが不純物として含まれることがある。これらの不純物は、本発明の効果を損なわない範囲でケイ酸バリウム中に含有されていても差し支えない。
【0027】
次に、本発明の吸着剤の好適な製造方法について説明する。本製造方法においては、水酸化バリウムとケイ酸の可溶性アルカリ金属塩とを反応させる工程によってケイ酸バリウムを生成させることが望ましい。こうすることで、得られるケイ酸バリウムの比表面積を充分に大きくすることができる。これに対して水酸化バリウム以外の可溶性バリウム塩、例えば塩化バリウムや硝酸バリウムを使用した場合は、得られるケイ酸バリウムの比表面積を充分に大きくすることが容易でなく、その結果、得られる吸着剤のストロンチウム吸着能力を充分に高くすることが容易でない。
【0028】
水酸化バリウムと反応させるケイ酸の可溶性アルカリ金属塩としては、各種ケイ酸ソーダ(JIS1号、2号、3号)、メタケイ酸ソーダ、ケイ酸カリ、ケイ酸リチウムなどが挙げられる。これらの物質は1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのうち、ケイ酸ソーダを用いることが最も一般的であり、また安価なので経済的にも有利である。
【0029】
水酸化バリウムと、ケイ酸の可溶性アルカリ金属塩との仕込み配合比率は、反応終了後の母液中にBaイオンを残留させずに、仕込んだ水酸化バリウムを全量反応に関与させるような比率に設定することが重要である。反応終了後の母液中にBaイオンが残留した場合は、その分ケイ酸バリウム中のBaO成分の含有量が少なくなってしまうので注意を要する。このような理由から、水酸化バリウムと、ケイ酸の可溶性アルカリ金属塩との好ましい配合比率は、水酸化バリウム1モルに対してケイ酸の可溶性アルカリ金属塩を、SiO
2換算で1.2モル以上2.5モル以下に設定することが好ましく、1.5モル以上2.0モル以下に設定することが更に好ましい。ケイ酸の可溶性アルカリ金属塩の配合比率を1.2モル以上にすることで、反応後の母液中にBaイオンが残留しにくくなり、ケイ酸バリウム中のBaO成分の割合を高くすることができる。一方、ケイ酸の可溶性アルカリ金属塩の配合比率を2.5モル以下にすることで、反応後の母液中にSiが過剰に残留することを効果的に防止できるので、該母液の処理を容易に行うことができる。
【0030】
水酸化バリウムと、ケイ酸の可溶性アルカリ金属塩との反応は、これらそれぞれを水溶液の状態となし、両水溶液を混合することで行うことが好ましい。この場合、水酸化バリウム水溶液中に、ケイ酸の可溶性アルカリ金属塩の水溶液を一括又は逐次添加してもよい。この反対に、ケイ酸の可溶性アルカリ金属塩の水溶液中に、水酸化バリウムの水溶液を一括又は逐次添加してもよい。あるいは、水酸化バリウム水溶液と、ケイ酸の可溶性アルカリ金属塩の水溶液とを同時に混合してもよい。
【0031】
水酸化バリウム水溶液の濃度は、水酸化バリウムの溶解度との関係から、3質量%以上15質量%以下に設定することが好ましい。水酸化バリウム水溶液の濃度を3質量%以上に設定することで、反応液が過度に希薄になることが防止され、それによって製造設備(反応タンク)が過度に大容量となることが防止される。製造設備が過度に大容量となると、設備効率の低下の一因となる場合がある。一方、水酸化バリウム水溶液の濃度を過度に高くすると、水酸化バリウムの溶解度が充分に高いとは言えないことに起因して、その析出沈殿を防止するために水酸化バリウム水溶液の濃度を高めに保持する必要がある。水酸化バリウム水溶液の温度を高めに保持すると、そのことに起因して炭酸バリウムが副生するおそれがある。これに対して、水酸化バリウム水溶液の濃度を15質量%以下に設定することで、水酸化バリウムの水溶液の温度を高めに保持する必要がなくなる。その結果、炭酸バリウムの副生を効果的に防止できる。
【0032】
ケイ酸の可溶性アルカリ金属塩の水溶液の濃度に関しては、SiO
2濃度に換算して10質量%以上20質量%に設定することが好ましい。この水溶液の濃度をSiO
2換算で10質量%以上に設定することで、反応液が過度に希薄になることが防止され、それによって製造設備(反応タンク)が過度に大容量となることが防止される。一方、この水溶液の濃度を20質量%以下に設定することで、局部的な不均一の反応が生じることを効果的に防止できる。
【0033】
水酸化バリウム水溶液と、ケイ酸の可溶性アルカリ金属塩の水溶液との反応温度は、5℃以上100℃以下の広い範囲で設定することができる。特に反応温度を5℃以上60℃未満に設定することによって、非晶質のケイ酸バリウムを生成させることができる。一方、反応温度を60℃以上100℃以下に設定することによって、結晶質のケイ酸バリウムを生成させることができる。具体的には反応温度を60℃以上に設定することで、ケイ酸バリウムの結晶化を充分に行わせることができる。一方、反応温度を100℃以下に設定することで、目的とする吸着剤におけるストロンチウムの選択的吸着性能の低下を効果的に抑制することができる。
【0034】
反応時間は、反応温度が上述の範囲内であることを条件として、1時間以上3時間以下に設定すれば充分である。3時間以上反応時間を長くしても、吸着剤のストロンチウム吸着性能に有意な差異は生じにくい。
【0035】
反応終了後、反応液を常法に従い、ろ過及びリパルプ洗浄を繰り返して付着する遊離アルカリを洗浄する。引き続き固形分を乾燥させ、更に必要に応じて粉砕する。このようにしてケイ酸バリウムを含む吸着剤が得られる。
【0036】
得られた吸着剤はそのままの状態で用いることができるが、これを造粒して造粒体とすると取り扱い性等の点で有利となる。造粒を行うには、例えば撹拌混合造粒、転動造粒、押し出し造粒、破砕造粒、流動層造粒、噴霧乾燥造粒(スプレードライ)、圧縮造粒等を採用することができる。造粒の過程において必要に応じ、結合剤成分や溶媒を添加してもよい。結合剤成分としては、例えばシリカゾル、アルミナゾル、ジルコニアゾルなどの無機バインダー;ベントナイト、カオリナイトなどの粘土系バインダー;カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどのセルロース系バインダー;ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキサイドなどの高分子バインダーなどを用いることができる。これらの結合剤成分は1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。造粒された吸着剤に占める結合剤成分の割合は1質量%以上30質量%以下であることが好ましく、2質量%以上20質量%以下であることが更に好ましい。溶媒としては、各種の水性溶媒や有機溶媒を用いることができる。
【0037】
造粒装置によって造粒された造粒体は、これ乾燥させ、必要に応じて焼成した後、粒度調整を行って吸着剤として使用に供する。造粒体の形状や大きさは、該造粒体を吸着容器や充填塔に充填した状態で、ストロンチウムを含む処理水を通水するのに適応するように適宜調整することが好ましい。造粒体の大きさに関しては、JIS Z8801規格による標準フルイによって測定された粒径が好ましくは200μm以上1000μm以下であり、更に好ましくは300μm以上600μm以下である。この範囲の粒径を有する造粒体からなる吸着剤を用いると、例えば該吸着剤を吸着塔に充填した場合に、目詰まりが起こりにくくなるという利点がある。
【実施例】
【0038】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。特に断らない限り、「%」は「質量%」を意味する。
【0039】
〔実施例1〕
0.1モルの水酸化バリウムを500mLのビーカーに仕込み、そこに350mLのイオン交換水を加えた。液を50℃に加熱して水酸化バリウムを溶解させた。溶液中のBa(OH)
2の濃度は4.9%であった。
この操作とは別に、3号ケイ酸ソーダ(SiO
2分に換算して濃度28.5%)0.2モルを100mLビーカーに仕込み、そこに58mLのイオン交換水を加えて希釈した。溶液中のSiO
2濃度は12%であった。
水酸化バリウム水溶液を撹拌しながら、そこにケイ酸ソーダ希釈液を約1分間にわたり連続して添加した。添加終了後、1時間にわたり撹拌を継続して反応を行った。この間、液の温度を40℃に保持した。反応によって液中に固体のケイ酸バリウムが生成した。反応終了後、常法に従い、ろ過及びリパルプ洗浄を繰り返し、引き続き乾燥及び粉砕して、目的とする非晶質のケイ酸バリウムを得た。得られたケイ酸バリウムについて、上述の方法でBET比表面積、BaO成分含有率、及び組成比を測定した。その結果を以下の表1に示す。更に、ケイ酸バリウムのXRDチャートを
図1に示す。
図1に示すとおり、得られたケイ酸バリウムのXRDチャートでは明確なケイ酸バリウムの回折ピークは観察されなかった。また、副生物である炭酸バリウムの鋭いピークが観察された。
【0040】
〔実施例2〕
実施例1と同様にしてBa(OH)
2の濃度が4.9%である350mLの水酸化バリウム水溶液を調製した。
この操作とは別に、3号ケイ酸ソーダ(SiO
2分に換算して濃度28.5%)0.3モルを200mLビーカーに仕込み、そこに87mLのイオン交換水を加えて希釈した。溶液中のSiO
2濃度は12%であった。
水酸化バリウム水溶液を撹拌しながら、そこにケイ酸ソーダ希釈液を約2分間にわたり連続して添加した。その後は液の温度を70℃とした以外は実施例1と同様にして、目的とする結晶質ケイ酸バリウムを得た。得られたケイ酸バリウムについて、上述の方法でBET比表面積、BaO成分含有率、組成比、結晶化度、結晶子径、並びにピーク強度(2θ=23.5°)、そのピーク強度での半値全幅(FWHM)及びそのピーク強度H(cps)と半値幅W(°)との比H/Wを測定した。その結果を以下の表1に示す。更に、ケイ酸バリウムのXRDチャートを
図2に示す。
図2に示すとおり、得られたケイ酸バリウムのXRDチャートでは明確なケイ酸バリウムの回折ピークが観察された。また、副生物である炭酸バリウムの鋭いピークも観察された。
【0041】
〔比較例1〕
本比較例は、ケイ酸バリウムの製造の出発原料として、水酸化バリウムではなく塩化バリウムを用いた例である。
0.1モルの塩化バリウムを500mLのビーカーに仕込み、そこに350mLのイオン交換水を加えて溶解させた。溶液中のBaCl
2の濃度は5.9%であった。
この操作とは別に、3号ケイ酸ソーダ(SiO
2分に換算して濃度28.5%)0.1モルを100mLビーカーに仕込み、そこに29mLのイオン交換水を加えて希釈した。溶液中のSiO
2濃度は12%であった。
塩化バリウム水溶液を撹拌しながら、そこにケイ酸ソーダ希釈液を約1分間にわたり連続して添加した。添加終了後、1時間にわたり撹拌を継続して反応を行った。この間、液の温度を常温に保持した。反応によって液中に固体のケイ酸バリウムが生成した。反応終了後、常法に従い、ろ過及びリパルプ洗浄を繰り返し、引き続き乾燥及び粉砕した。得られたケイ酸バリウムについて、実施例1と同様の測定を行った。その結果を以下の表1に示す。
【0042】
〔比較例2〕
本比較例は、ケイ酸バリウムの製造の出発原料として、水酸化バリウムではなく硝酸バリウムを用いた例である。
0.1モルの硝酸バリウムを500mLのビーカーに仕込み、そこに350mLのイオン交換水を加えて溶解させた。溶液中のBa(NO
3)
2の濃度は5.7%であった。
その後は比較例1と同様の操作を行い、ケイ酸バリウムを得た。得られたケイ酸バリウムについて、実施例1と同様の測定を行った。その結果を以下の表1に示す。
【0043】
〔比較例3〕
本比較例は、ケイ酸バリウムの製造の出発原料として、水酸化バリウムではなく塩化バリウムを用いた例である。
0.1モルの塩化バリウムを500mLのビーカーに仕込み、そこに350mLのイオン交換水を加えて溶解させた。溶液中のBaCl
2の濃度は5.9%であった。
この操作とは別に、3号ケイ酸ソーダ(SiO
2分に換算して濃度28.5%)0.2モルを100mLビーカーに仕込み、そこに58mLのイオン交換水を加えて希釈した。溶液中のSiO
2濃度は12%であった。
塩化バリウム水溶液を撹拌しながら、そこにケイ酸ソーダ希釈液を約1分間にわたり連続して添加して反応を行わせた。添加終了後、1時間にわたり撹拌を継続した。この間、液の温度を常温に保持した。反応によって液中に固体のケイ酸バリウムが生成した。反応終了後、常法に従い、ろ過及びリパルプ洗浄を繰り返し、引き続き乾燥及び粉砕した。得られたケイ酸バリウムについて、実施例1と同様の測定を行った。その結果を以下の表1に示す。
【0044】
〔実施例3〕
実施例1と同様にしてBa(OH)
2の濃度が4.9%である350mLの水酸化バリウム水溶液を調製した。
この操作とは別に、3号ケイ酸ソーダ(SiO
2分に換算して濃度28.5%)0.15モルを100mLビーカーに仕込み、そこに43mLのイオン交換水を加えて希釈した。溶液中のSiO
2濃度は12%であった。
その後は実施例1と同様にして、目的とする非晶質ケイ酸バリウムを得た。得られたケイ酸バリウムについて、実施例1と同様の測定を行った。その結果を以下の表1に示す。更に、ケイ酸バリウムのXRDチャートを
図3に示す。
図3に示すとおり、得られたケイ酸バリウムのXRDチャートでは明確なケイ酸バリウムの回折ピークは観察されなかった。また、副生物である炭酸バリウムの鋭いピークが観察された。
【0045】
〔比較例4〕
本比較例は、ケイ酸バリウムの製造の出発原料として、ケイ酸ソーダではなくシリカを用いた例である。
0.1モルの水酸化バリウムを500mLのビーカーに仕込み、そこに350mLのイオン交換水を加えた。液を80℃に加熱して水酸化バリウムを溶解させた。溶液中のBa(OH)
2の濃度は4.9%であった。
この水酸化バリウム水溶液に6.0gのシリカ((株)トクヤマ製のトクシール(登録商標)U)を添加して分散させた。分散スラリーを100℃で3時間撹拌を行い、反応を継続した。その後は実施例1と同様にしてケイ酸バリウムを得た。得られたケイ酸バリウムについて、実施例1と同様の測定を行った。その結果を以下の表1に示す。
【0046】
〔実施例4〕
0.1モルの水酸化バリウムを500mLのビーカーに仕込み、そこに350mLのイオン交換水を加えた。液を50℃に加熱して水酸化バリウムを溶解させた。溶液中のBa(OH)
2の濃度は4.9%であった。
この操作とは別に、3号ケイ酸ソーダ(SiO
2分に換算して濃度28.5%)0.2モルを100mLビーカーに仕込み、そこに58mLのイオン交換水を加えて希釈した。溶液中のSiO
2濃度は12%であった。
水酸化バリウム水溶液を撹拌しながら、そこにケイ酸ソーダ希釈液を約1分間にわたり連続して添加した。添加終了後、1時間にわたり撹拌を継続して反応を行った。この間、液の温度を70℃に保持した。反応によって液中に固体のケイ酸バリウムが生成した。反応終了後、常法に従い、ろ過及びリパルプ洗浄を繰り返し、引き続き乾燥及び粉砕して、目的とする結晶質ケイ酸バリウムを得た。得られたケイ酸バリウムについて、実施例2と同様の測定を行った。その結果を以下の表1に示す。更に、得られたケイ酸バリウムのXRDチャートを
図4に示す。
図4に示すとおり、得られたケイ酸バリウムのXRDチャートでは明確なケイ酸バリウムの回折ピークが観察された。また、副生物である炭酸バリウムの鋭いピークも観察された。
【0047】
〔比較例5〕
本比較例は、実施例1においてケイ酸ソーダの仕込み量を減量した例である。
0.1モルの水酸化バリウムを500mLのビーカーに仕込み、そこに350mLのイオン交換水を加えた。液を50℃に加熱して水酸化バリウムを溶解させた。溶液中のBa(OH)
2の濃度は4.9%であった。
この操作とは別に、3号ケイ酸ソーダ(SiO
2分に換算して濃度28.5%)0.1モルを100mLビーカーに仕込み、そこに29mLのイオン交換水を加えて希釈した。溶液中のSiO
2濃度は12%であった。
水酸化バリウム水溶液を撹拌しながら、そこにケイ酸ソーダ希釈液を約1分間にわたり連続して添加した。添加終了後、1時間にわたり撹拌を継続して反応を行った。この間、液の温度を40℃に保持した。反応によって液中に固体のケイ酸バリウムが生成した。反応終了後、常法に従い、ろ過及びリパルプ洗浄を繰り返し、引き続き乾燥及び粉砕して、目的とするケイ酸バリウムを得た。得られたケイ酸バリウムについて、実施例1と同様の測定を行った。その結果を以下の表1に示す。
【0048】
〔実施例5〕
実施例1において、溶液中のBa(OH)
2の濃度が2.85%である水酸化バリウム溶液と、溶液中のSiO
2濃度が6.0%である3号ケイ酸ソーダ溶液を用いた以外は、実施例1と同様にして反応を行い目的とするケイ酸バリウムを得た。得られたケイ酸バリウムについて、実施例1と同様の測定を行った。その結果を以下の表1に示す。
【0049】
〔実施例6〕
0.1モルの水酸化バリウムを1000mLのビーカーに仕込み、そこに568.5gのイオン交換水を加え、全量を600gとし、液を30℃に加熱して水酸化バリウムを溶解させた。溶液中のBa(OH)
2の濃度は2.85%であった。
この操作とは別に、3号ケイ酸ソーダ(SiO
2分に換算して濃度28.5%)0.2モルを200mLビーカーに仕込み、そこにイオン交換水を加えて希釈し全量を200gとした。溶液中のSiO
2濃度は6%であった。
水酸化バリウム水溶液を撹拌しながら、そこにケイ酸ソーダ希釈液を約30分間にわたり連続して添加した。添加終了後、30分間にわたり撹拌を継続して反応を行った。この間、液の温度を30℃に保持した。反応によって液中に固体のケイ酸バリウムが生成した。反応終了後、常法に従い、ろ過及びリパルプ洗浄を繰り返し、引き続き乾燥及び粉砕して、目的とする非晶質ケイ酸バリウムを得た。得られたケイ酸バリウムについて、実施例1と同様の測定を行った。その結果を以下の表1に示す。
【0050】
〔実施例7〕
実施例6において、ケイ酸ソーダ希釈液を撹拌しながら、そこに水酸化バリウム水溶液を約30分間にわたり連続して添加して反応を行わせた以外は実施例6と同様に反応を行い、目的とする非晶質ケイ酸バリウムを得た。得られたケイ酸バリウムについて、実施例1と同様の測定を行った。その結果を以下の表1に示す。
【0051】
【表1】
【0052】
表1に示す結果から明らかなとおり、各実施例で得られたケイ酸バリウムは、BET比表面積が大きく、更にBaO含有率の高いものであることが判る。特に実施例2及び4のケイ酸バリウムは結晶性の高いものであることが判る。
【0053】
〔評価〕
実施例及び比較例で得られたケイ酸バリウムを吸着剤として用い、人工海水中に含まれるストロンチウムの吸着除去性能を評価した。また、人工海水中に含まれるカルシウムの吸着除去性能を評価した(ただし実施例5ないし7を除く)。人工海水としては、富田製薬製の試験研究用人工海水マリンアートSF−1を用いた。この人工海水の組成を表2に示す。この人工海水100mLに0.1gのケイ酸バリウムを入れ、スターラーで1時間撹拌した後、ケイ酸バリウムをろ過し、ろ液についてICPによる元素の定量分析を行った。その結果を以下の表2に示す。
【0054】
【表2】
【0055】
表2に示す結果から明らかなとおり、各実施例で得られたケイ酸バリウムを吸着剤として用いると、75%以上のストロンチウム吸着率を示すことが判る。また5000以上のストロンチウム分配係数を示すことが判る(ただし実施例5ないし7を除く)。このことから、各実施例のケイ酸バリウムが、カルシウムを含有する海水からのストロンチウムの選択的吸着性に優れたものであることが判る。