(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-83900(P2016-83900A)
(43)【公開日】2016年5月19日
(54)【発明の名称】コンクリートブロック型枠
(51)【国際特許分類】
B28B 7/34 20060101AFI20160415BHJP
【FI】
B28B7/34 H
B28B7/34 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-219553(P2014-219553)
(22)【出願日】2014年10月28日
(71)【出願人】
【識別番号】509237066
【氏名又は名称】梶原 謙太郎
(71)【出願人】
【識別番号】391024984
【氏名又は名称】水工技研株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100093285
【弁理士】
【氏名又は名称】久保山 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100182567
【弁理士】
【氏名又は名称】遠坂 啓太
(72)【発明者】
【氏名】梶原 謙太郎
【テーマコード(参考)】
4G053
【Fターム(参考)】
4G053AA07
4G053BB17
4G053CA02
4G053CA22
4G053EB03
(57)【要約】
【課題】肉厚の薄い部分、逆勾配部、複数の有底穴などを有する複雑な形状であって、脱型時に大きな付着力が発生するコンクリートブロックを容易に製造可能なコンクリートブロック型枠を提供する。
【解決手段】型枠1は、表面1A以外の5つ面(正面1B,右側面1C,左側面1D,背面及び底面)が平面をなす略直方体形状の器具である。表面1A側に、コンクリートを打設するための凹状開口部2が設けられ、凹状開口部2内に打設されたコンクリートとの接触領域となる凹状開口部2の内面1Gを含む型枠1全体が半硬質発泡ポリウレタンで形成されている。型枠1を形成する半硬質発泡ポリウレタンは互いに連通した多数の微細気泡が集合した連続気泡構造を有するインテグラルスキンフォームであり、コンクリートと接触する内面1Gを形成するスキン層3と、その内側に位置するコア層4とを備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともコンクリートとの接触領域及び型枠の基盤が半硬質発泡ポリウレタンで形成されたコンクリートブロック型枠。
【請求項2】
前記半硬質発泡ポリウレタンが連続気泡構造を有する請求項1記載のコンクリートブロック型枠。
【請求項3】
前記半硬質発泡ポリウレタンが、コンクリートとの接触面を形成するスキン層と、前記スキン層より内側に位置するコア層と、を備えたインテグラルスキンフォームである請求項1または2記載のコンクリートブロック型枠。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、河川の堤防や海岸などの浸食を防止する護岸構造物や道路法面保護工などを構築するためのコンクリートブロックを形成するための型枠に関する。
【背景技術】
【0002】
建設資材として広く使用されているコンクリートブロックの製造工程において使用される型枠については、型枠の耐久性や転用性、製造したコンクリートブロックの寸法保持性、あるいは、コンクリートの物性を考慮して、鉄製の型枠が用いられることが主流であった。一方、現在においては、その一部に、表面の意匠性の向上やコスト削減などの目的で樹脂製の型枠が利用されている場合もある。
【0003】
このように、コンクリートブロック型枠については、従来、様々なものが提案されているが、本発明に関連するものとして、例えば、特許文献1に記載された「コンクリートブロック成型用型枠」、特許文献2に記載された「コンクリート用化粧型枠」あるいは特許文献3に記載された「コンクリートブロック成形用樹脂型枠」などがある(以下、「コンクリートブロック型枠」と総称する。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−214403号公報
【特許文献2】特開2008−156916号公報
【特許文献3】特開平10−34633号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1〜3に記載されたコンクリートブロック型枠はいずれも、その一部が合成樹脂によって形成されたものであり、それぞれの用途に適した長所を有しているが、型枠全体としては硬質なものであることから、複雑な形状を有するコンクリートブロック、即ち、有底穴が多く存在し、脱型時に大きな付着力が発生するような形状を有するコンクリートブロック製造用の型枠として使用するには限界がある。
【0006】
例えば、地面に沿って複数配列して護岸構造物を形成するために使用されるコンクリートブロックは、流体力に対する抵抗のため、大型の重量物であることが多く、そのほとんどは、表面粗度や意匠性の向上のため、凹凸や模様が付けられている。そのため、大きな付着力が発生し、特許文献1〜3に記載されたコンクリートブロック型枠で製造するのは困難である。また、特許文献1〜3に記載されたコンクリートブロック型枠は、肉厚の薄い部分や逆勾配部を有するコンクリートブロックを製造することも困難である。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、肉厚の薄い部分、逆勾配部、複数の有底穴などを有する複雑な形状であって、脱型時に大きな付着力が発生するコンクリートブロックを容易に製造可能なコンクリートブロック型枠を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のコンクリートブロック型枠は、少なくともコンクリートとの接触領域及び型枠の基盤が半硬質発泡ポリウレタンで形成されたことを特徴とする。ここで、「型枠の基盤」とは、ポリウレタン製型枠の内部やコンクリートとの接触面の反対側をいい、「半硬質」とは、スポンジのような軟質フォーム材よりも圧縮硬度が高く、ゴム弾性を示すものをいう。
【0009】
このような構成とすれば、当該コンクリートブロック型枠において、コンクリートとの接触領域が柔軟性(弾性変形性)を有するとともに、型枠全体も柔軟性(弾性変形性)を有するものとなる。このため、離型の際に、型枠を変形させてコンクリートブロックを取り出すことが可能となるので、コンクリートブロックに割れや欠けが発生せず、作業者への負荷も軽減できる。従って、肉厚の薄い部分、逆勾配部、多くの有底穴などを有する複雑な形状で、脱型時に大きな付着力が発生するコンクリートブロックを容易に製造することができる。また、コンクリートとの接触領域を構成する半硬質の発泡ポリウレタンは離型剤の透液性及び保持性を有するため、離型作業を容易化することができる。
【0010】
また、前記半硬質発泡ポリウレタンが連続気泡構造を有することが望ましい。
【0011】
さらに、前記半硬質発泡ポリウレタンが、コンクリートとの接触面を形成するスキン層と、前記スキン層より内側に位置するコア層とを備えたインテグラルスキンフォームであることが望ましい。また、必要に応じて、当該コンクリートブロック型枠の内外に、鋼材などによる補強材を組み込むこともできる。
【0012】
インテグラルスキンフォームについては、例えば、「三栄ポリウレタン株式会社」あるいは「BASF INOAC ポリウレタン株式会社」の製品などが好適であるが、これらに限定するものではない。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、肉厚の薄い部分、逆勾配部、多くの有底穴などを有する複雑な形状で、脱型時に大きな付着力が発生するコンクリートブロックを容易に製造可能なコンクリートブロック型枠を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態であるコンクリートブロック型枠を示す斜視図である。
【
図2】
図1中の矢線X方向から見たコンクリートブロック型枠の斜視図である。
【
図3】
図1に示すコンクリートブロック型枠を底面側から見た斜視図である。
【
図4】
図1に示すコンクリートブロック型枠で製造したコンクリートブロックを示す斜視図である。
【
図5】
図4に示すコンクリートブロックの底面側の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、
図1〜
図3に基づいて、本発明の実施形態であるコンクリートブロック型枠1(以下、型枠1と略記する。)について説明する。
【0016】
図1〜
図3に示す型枠1は、
図4,
図5に示すコンクリートブロック100を製造するためのものである。型枠1は、表面1A以外の5つ面(正面1B,右側面1C,左側面1D,背面1E及び底面1F)が平面をなす略直方体形状の器具である。表面1A側には、ブロック材料であるコンクリートを打設するための凹状開口部2が設けられ、凹状開口部2内に打設されたコンクリートとの接触領域となる凹状開口部2の内面1G及び型枠1の基盤が半硬質発泡ポリウレタンで形成されている。ここで、型枠1の基盤とは、型枠1の内部やコンクリートとの接触面の反対側をいう。
【0017】
凹状開口部2内には、コンクリートブロック100の有底穴17、凹溝21などを形成するための凸状部5,6や、凸部22を形成するための穴部7などが形成されている。脱型方向から見ると、凸部6は逆勾配部となっており、穴部7はアンダーカット部となっている。
【0018】
型枠1を形成する半硬質発泡ポリウレタンは、互いに連通した多数の微細気泡が集合した連続気泡構造を有するインテグラルスキンフォームであり、コンクリートとの接触面(内面1G)を形成するスキン層3と、スキン層3より内側に位置するコア層4とを備えている。スキン層3の表面(内面1G)は鏡面に近い平滑面をなし、コア層4より硬質である。コア層4はスキン層3より軟質であり、クッション性を有している。本実施形態の型枠1は、「三栄ポリウレタン株式会社」のインテグラルスキンフォームで製作しているが、これに限定するものではない。
【0019】
スキン層3は一定の耐久性があり、コア層4はクッション性があるので、凹状開口部2に打設されたコンクリートを必要以上に拘束しない。このため、肉厚の薄い部分や複雑な形状の部分を有するコンクリートブロックを脱型するときに、コンクリートブロックに悪影響を及ぼさない(割れや欠けなどが発生しない)。また、型枠1は、その全体が柔軟性(弾性変形性)有しているので、肉厚の薄い部分、逆勾配部、多くの有底穴などを有する複雑な形状で、脱型時に大きな付着力が発生するコンクリートブロックであっても比較的容易に脱型可能である。
【0020】
スキン層3は若干の透液性を有し、コア層4は連続気泡構造を有することにより、凹状開口部2の内面1Gに塗布された脱型剤がスキン層3からコア層4に染み込んで保持されるので、脱型時にも十分な剥離効果を維持することができる。また、型枠1の重量は、従来の金属製型枠と比較すると1/10〜1/16程度であるため、作業性や運搬性なども向上する。型枠1自体の製造方法については限定しないが、型枠1を製作するための金型を予め製作しておけば、型枠1の製造期間を大幅に短縮することができる。
【0021】
前述したように、
図4,5に示すコンクリートブロック100は、
図1〜
図3に示す型枠1を用いて製造されたものである。コンクリートブロック100は、地面に沿って複数配列して護岸構造物を形成するための建設資材であって、互いに平行をなす二対の周面部13,14(15,16)を有する四角形で平板形状の本体部10と、本体部10の一方の周面部13に設けられた凸状の第一連結部11と、本体部10の他方の周面部14に第一連結部11とファスナ状に係合可能な形状に設けられた凸状の第二連結部12a,12bと、本体部10にその表面10a側に開口した状態に設けられた複数の有底穴17と、を備えている。
【0022】
コンクリートブロック100の第一連結部11と、同形の他のコンクリートブロック100の第二連結部12a,12bとを交互にファスナ状に係合させて配列したとき、第一連結部11と第二連結部12a,12bとの分離を阻止する凹凸嵌合機構として、第一連結部11に凹溝21が設けられ、第二連結部12に凹溝21内に嵌入可能な凸部22が設けられている。凹溝21は、本体部10の表面10a側に開口する断面半円形状をなし、凸部22は円柱状をなしている。凹溝21及び凸部22は、複数のコンクリートブロック100を配列したときに第一連結部11と第二連結部12とが隣接する領域に設けられている。
【0023】
凹溝21は、その長手方向が周面部13と平行をなすような状態で第一連結部11の両側に設けられている。凸部22は、その軸心方向が周面部14と平行をなすような状態で、周面部14の中央に位置する第二連結部12aの両側と、周面部15,16寄りに位置する第二連結部12bの中央寄りの片側に突設されている。
【0024】
コンクリートブロック100は、肉厚の薄い部分、逆勾配部、多くの有底穴17などを有する複雑な形状で、脱型時に大きな付着力が発生するものであるが、型枠1を使用することにより容易に製造することができる。
【0025】
なお、
図1〜
図3に基づいて説明した型枠1は本発明の一例を示すものであり、型枠1を用いて製造されるコンクリートブロック100も一例を示すものであり、本発明のコンクリートブロック型枠は前述した型枠1に限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明のコンクリートブロック型枠は、コンクリートブロックの製造業の分野において広く利用することができる。
【符号の説明】
【0027】
1 コンクリートブロック型枠
1A 表面
1B 正面
1C 右側面
1D 左側面
1E 背面
1F 底面
2 凹状開口部
3 スキン層
4 コア層
5,6 凸状部
7 穴部