【解決手段】膝サポータは、膝とその周辺を覆う伸縮自在の筒状の本体部(11)を備え、本体部(11)は、ベース部(20)と、ベース部(20)よりも伸縮性の低い複数の部位(21〜25)とを有し、ベース部(20)が複数の部位(21〜25)間を覆うように形成され、複数の部位(21〜25)は、膝の内側(52)に配置され且つ本体部(11)の軸方向に沿う第1の部位(21)と、膝の膝蓋骨(57)を避けて配置された複数の帯部を有し且つ複数の帯部を膝の外側(51)で交差又は接続させた第2の部位(22)とを含み、第2の部位(22)の端部を第1の部位(21)に連通又は隣接させる。
前記複数の部位は、前記膝の後側に配置され且つ前記膝の下側の内側腓腹筋に対向する第4の部位(24)を含んでいることを特徴とする、請求項1又は2に記載の膝サポータ。
前記複数の部位は、前記本体部(11)の周方向に沿う周方向帯部(25a)と、前記本体部(11)の軸方向に沿って延びる軸方向帯部(25b)とを有する第5の部位(25)を含んでいることを特徴とする、請求項1から3の何れか1つに記載の膝サポータ。
膝サポータを構成する生地がカットボス加工を有し、当該膝サポータを構成する生地に編み足した2口編みの編組織からなる生地を表地とし、当該膝サポータを構成する生地を裏地とする2重編地であって、カットボス加工の際に挿入する添え糸のカット端部の集合により形成される凸状部を皮膚接触面の反対側に設けるように膝サポータを構成する生地を裏返すことを特徴とする、請求項1から4の何れか1つに記載の膝サポータ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来の膝サポータは、適度の着圧性を有し、しかも締めすぎることなく、膝の屈伸運動を楽に行えるようにすることを技術課題としている。歩行時に体重をかけた方の脚の膝が内側から外側へ開く、いわゆる膝の内反(O脚のような状態)を矯正することに関し、何らの考慮もなされていない。
【0006】
従来の膝サポータは、膝の中心に襷状のX字型部の交差部が位置するため、膝が外側へ流れたときはX字型部の弾性力で膝を内側へ牽引し、膝が内側へ流れたときはX字型部の弾性力で膝を外側へ牽引することができるものの、これら2つの牽引力が相殺されることから、膝の内反の矯正用として従来の膝サポータを用いた場合、膝を内側へ牽引する力が弱く、膝の内反の矯正をさせることができなかった。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、膝の内反を矯正して歩行時に膝が内側から外側へ開かないようにする膝サポータを提供することにある。また、膝の内反の矯正用として膝サポーターを構成する生地がカットボス加工を有する場合、カットボス加工の際に用いる添え糸のカット端部の集合により形成される凸状部が皮膚接触面側に設けられることが多い。そのため、肌面にカットボス加工の凸状部が直接接触して着心地が良くないことがある。そこで、本発明の目的は、膝の内反の矯正に加えて着心地を改良した膝サポータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、膝サポータを前提とする。この膝サポータは、膝とその周辺を覆う伸縮自在の筒状の本体部(11)を備え、前記本体部(11)は、ベース部(20)と、前記ベース部(20)よりも伸縮性の低い複数の部位とを有し、前記ベース部(20)が前記複数の部位間を覆うように形成され、前記複数の部位は、前記膝の内側(52)に配置され且つ前記本体部(11)の軸方向に沿う第1の部位(21)と、前記膝の膝蓋骨(57)を避けて配置された複数の帯部を有し且つ前記複数の帯部を前記膝の外側(51)のみで交差又は接続させた第2の部位(22)とを含み、前記第2の部位(22)の端部が前記第1の部位(21)に連通又は隣接している。
【0009】
また、第2の発明は、第1の発明において、前記複数の部位は、前記膝の前側に配置され且つ前記膝の上側の内側広筋に対向する第3の部位(23)を含んでいる。
【0010】
また、第3の発明は、第1又は第2の発明において、前記複数の部位は、前記膝の後側に配置され且つ前記膝の下側の内側腓腹筋に対向する第4の部位(24)を含んでいる。
【0011】
また、第4の発明は、第1から第3の何れか1つの発明において、前記本体部(11)の軸方向両端に配置され且つ前記本体部(11)の周方向に沿う周方向帯部(25a)と、前記本体部(11)の軸方向に沿って延びて前記周方向帯部(25a)同士を連通させた軸方向帯部(25b)とを有する第5の部位(25)を含んでいる。
【0012】
さらに、第5の発明は、第1から第4の何れか1つの発明において、膝サポータを構成する生地がカットボス加工を有し、当該膝サポータを構成する生地に編み足した2口編みの編組織からなる生地を表地とし、当該膝サポータを構成する生地を裏地とする2重編地であって、カットボス加工の際に用いる添え糸のカット端部の集合により形成される凸状部を皮膚接触面の反対側に設けるように膝サポータを構成する生地を裏返したものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、第2の部位において、複数の帯部の端部を膝の内側に位置する第1の部位に連通又は隣接させ、複数の帯部を膝の外側のみで交差又は接続させるようにしたので、膝サポータの着用時の本体部の伸長によって複数の帯部に生じる収縮力を利用して、膝を外側から内側へ牽引することができる。また、複数の帯部は膝の外側のみで交差又は接続され、膝の内側では交差又は接続されないので、膝を内側から外側へ牽引する力は働かない。これにより、上述の従来の膝サポータとは違い、膝を外側から内側へ牽引する力を十分に確保することができる。
【0014】
以上より、本発明の膝サポータであれば、膝の内反を矯正して歩行時に膝が内側から外側へ開かないようにすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態に係る膝サポータを図面に基づいて詳細に説明する。この膝サポータは、例えば変形性膝関節症の患者に着用させるものである。尚、以下に説明する一実施形態は例示であり、本発明が一実施形態に限定されるものではない。
【0017】
一実施形態の一対の膝サポータ(10a,10b)は、左脚用と右脚用とからなる。左脚用及び右脚用は左右対称である。以下、左脚用の膝サポータ(10a)について説明し、右脚用の膝サポータ(10b)の説明は省略する。
【0018】
一実施形態の膝サポータ(10a)は、筒状の本体部(11)と、本体部(11)の軸方向両端縁の全周に亘って取り付けられた環状の締付部(12,13)とを有する。一方の締付部(12)には、ストレッチ性のテープ素材が縫製されている。このテープ素材の内面にはナノファイバーが組織されている。このナノファイバーによって着用者の肌面に当たる表面積が増すことにより、テープ素材の摩擦抵抗力を増加させることができる。尚、テープ素材は、ナノファイバーに代えてシリコンをコーティングさせてもよい。シリコンコーティングの場合でも、テープ素材の摩擦抵抗力を増加させることができる。
【0019】
他方の締付部(13)には、ウエルト部が設けられている。このウエルト部の糸使いは、例えば、3口編みからなり、第1コース(C1)はSCYで編成し、第2コース(C2)はDCYを挿通し、第3コース(C3)はSCYを編成し、インレイ編みで編成する。
【0020】
ところが、後記するように、本体部(11)はカットボス編みの編組織を有しているので、カットボス加工の際に挿入する添え糸のカット端部の集合により形成される凸状部が皮膚接触面側に設けられると、肌面にカットボス加工の凸状部が直接接触して着心地が良くない。そこで、カットボス加工の凸状部を皮膚接触面の反対側に設けると、着心地を改善することができる。しかし、カットボス加工の凸状部が表面に現れると外観品位を損ねてしまう。着心地を改善するとともに外観品位を損ねないようにするためには、
図1に示すウエルト部側の締付部(13)の下に続けて
図8に示す2口編みの編組織を編み足し、この編み足した部分をウエルト部で折り返して表地とし、
図1に示す生地を裏地とする2重編地とし、さらに、
図9に斜線で示すカットボス加工の凸状部が皮膚接触面の反対側にくるように、
図1に示す生地を裏返す。その結果、カットボス加工の凸状部が皮膚に接触しないので着心地を改善することができるとともに、カットボス加工の凸状部が表面に現れないので外観品位を損ねることもない。しかも、表地と裏地からなる2重編地とすることで、保温性を向上することができる。2口編みの糸使いとしては、例えば、第1コース(C1)はSCYで編成し、第3コース(C3)はSCYで編成し、交編編みで編成することができる。
【0021】
しかし、単に2口編みの編組織を表地とするだけでは膝及びその近傍各部の位置が分かりにくい。そこで、
図1のウエルト部側の締付部(13)の下に続けて2口編みの編組織を編み足すとき、締付部(13)の下端部を線対称の中心として
図9に斜線で示すカットボス加工部を折り返した場合に、カットボス加工部の縁に対して線対称に相当する2口編みの編組織の部分の糸使いを2口編みとし、例えば、第1コース(C1)はSCYで編成し、第3コース(C3)はSCYとウーリーナイロンを添え糸とし、カットボス編みで編成し、交編編みで編成することが好ましい。そこで、
図1に示すウエルト部側の締付部(13)の下に続けて
図8に示す2口編みの編組織を編み足し、この編み足した部分をウエルト部で折り返して表地とし、
図1に示す生地を裏地とし、さらに、
図9に斜線で示すカットボス加工の凸状部が皮膚接触面の反対側にくるように、
図1に示す生地を裏返すことによって、
図1に示す生地のカットボス加工の凸状部と編み足した生地のカットボス加工の凸状部とが編み足した生地で覆われて表面に現れないので外観品位を損ねることがない。しかも、編み足した生地のカットボス編みにより、編みパターンが分かり、かつ表面外観に優れているという効果がある。
【0022】
膝サポータ(10a)を着用するに際し、テープ素材側の締付部(12)が上側となり且つウエルト部側の締付部(13)が下側となるようにすれば、着用者の運動に伴う膝サポータ(10a)のずり落ちが上側の締付部(12)によって防止され、着用者の運動に伴う膝サポータ(10a)のずり上がりが下側の締付部(13)によって防止される。
【0023】
ここで、SCYとはポリウレタン弾性糸芯糸にウーリーナイロン糸又はフィラメント糸をシングルカバリングした糸をいう。DCYとはポリウレタン弾性糸芯糸にウーリーナイロン糸又はフィラメント糸をダブルカバリングした糸をいう。インレイ編とは、編地にポリウレタン弾性糸を挿入して編成することをいう。
【0024】
膝サポータ(10a)の本体部(11)は、伸びやすい部分と伸びにくい部分とを有する。これらの部分の伸縮力の強弱は、編成で引き揃えて編み込む糸を減らしたり、他の部分より編成する口数を増加したり、伸びにくい糸をカットボス編で部分的に組織し編成される。
【0025】
ここで、カットボス編とは、地糸の上に別の糸を重ねて編成する場合に、地糸からなる編地の部分的な領域に別の糸を編み込んで編成することを総称していう。機能的には、本体部(11)の部分的な補強を目的とする場合と本体部(11)のデザインを目的とする場合がある。一実施形態の場合は、部分的な生地弾性の補強を主な目的としている。
【0026】
尚、本体部(11)全体を伸びやすい経編生地で縫製し、伸びにくくしたい部分に別の生地をあて、上から縫製する方法でも得られる。更に別の方法では厚い伸縮性生地を縫製し、伸びやすくしたい部分を溶解するなどして生地の力を弱め、伸縮力の強弱を設けることもできる。
【0027】
膝サポータ(10a)の本体部(11)は、
図1及び
図2に示すように、ベース部(20)と第1から第5の部位(21〜25)とを有する。ベース部(20)は、第1から第5の部位(21〜25)間を覆うように形成されている。また、第1から第5の部位(21〜25)は、ベース部(20)よりも伸縮性の低い編地で形成されている。膝サポータ(10a)の着用の際に本体部(11)が伸長したとき、第1から第5の部位(21〜25)には、ベース部(20)よりも強い収縮力が帯部の長さ方向に作用する。この強い収縮力により、第1から第5の部位(21〜25)はベース部(20)よりも強い力で膝又はその周辺を締め付ける。
【0028】
本体部(11)のベース部(20)は、伸びやすさが求められながらも、脚を包み込むサポート力が必要であり、さらには膝サポータ(10a)であるため、膝関節を曲げるときに、前面では生地が伸びる必要があり、ずり下がらないために低い応力で伸びなければならない。一方で裏側については膝関節を曲げるときに、縦方向に生地が収縮される部分で、編地の分量が少なくなる編成組織である。編地の分量が多い場合は、編地が襞状に重なって横方向に多数のしわが出来る。このしわは膝の裏側の皮膚に食い込んで痛みを生じる。より編地の分量を少なくするために編成するには、2本の糸を引き揃えて編成し、その部分だけ編み込む糸を1本だけにして減らす場合もある。糸使いは、例えば、3口編みからなり、第1コース(C1)はSCYで編成し、第2コース(C2)はDCYを挿通し、第3コース(C3)はSCYを編成し、インレイ編みで編成する。
【0029】
〈第1の部位〉
第1の部位(21)は、本体部(11)の軸方向に沿って真っ直ぐに伸びる帯状に形成されている。第1の部位(21)は、着用者の脚の内側に配置されている。第1の部位(21)は、本体部(11)の軸方向両端に亘って形成されている。第1の部位(21)は、膝サポータ(10a)の着用の際に本体部(11)が伸長したとき、第1の部位(21)の長さ方向に強い収縮力が作用し、ベース部(20)よりも硬くなっている。この硬い第1の部位(21)が、膝の内側(52)の安定性を増す役割を担っている。
【0030】
第1の部位(21)の組織の糸使いは、例えば、3口編みからなり、第1コース(C1)はSCYとウーリーナイロン糸を添え糸とし、カットボス編みで編成し、第2コース(C2)はDCYを挿通し、第3コース(C3)はSCYとウーリーナイロン糸を添え糸とし、カットボス編みで編成し、インレイ編みで編成する。
【0031】
〈第2の部位〉
第2の部位(22)は、X字状及びU字状の帯部(22a,22b)で構成されている。X字状の帯部(22a)は膝の膝蓋骨(57)を避けて配置されている。このX字状の帯部(22a)は2つの帯部(A1,A2)を膝の外側(51)で交差させることにより構成されている。
【0032】
X字状の帯部(22a)を構成する2つの帯部(A1,A2)は、脚の前側と後側とに亘って形成されている。2つの帯部の一方(A1)は、その上端が第1の部位(21)の上部に連通して下端が第1の部位(21)の下部に隣接している。2つの帯部の他方(A2)は、その上端が第3の部位(23)に隣接して下端が第4の部位(24)に隣接している。ここで、後述するが、X字状の帯部(22a)は、第3及び第4の部位(23,24)と同じ編地で編成されている。したがって、上述の2つの帯部の他方(A2)は、その上端が第3の部位(23)を通じて実質的に第1の部位(21)の上部に隣接して、その下端が第4の部位(24)を通じて実質的に第1の部位(21)の下部に隣接している。このように、第2の部位(22)のX字状の帯部(22a)は、その端部が第1の部位(21)に連通又は隣接している。
【0033】
第2の部位(22)のU字状の帯部(22b)は、その内側に膝の膝蓋骨(57)が位置するように配置されている。U字状の帯部(22b)は、膝の前側に位置する2つのJ字状の帯部(B1,B2)を膝の外側(51)で接続させることにより構成されている。U字状の帯部(22b)は、その両端が第1の部位(21)に隣接している。
【0034】
膝サポータ(10a)の着用の際に本体部(11)が伸長したとき、第2の部位(22)のX字状又はU字状の帯部(21a,22b)の収縮力によって、膝を外側から内側へ押圧して第1の部位(21)に押し付けることにより、膝の内反を矯正して歩行時に膝が内側から外側へ開かないようにすることができる。
【0035】
第2の部位(22)のX字状の帯部(22a)の組織の糸使いは、例えば、3口編みからなり、第1コース(C1)はSCYとウーリーナイロン糸を添え糸とし、カットボス編みで編成し、第2コース(C2)はDCYを挿通し、第3コース(C3)はSCYとウーリーナイロン糸を添え糸とし、カットボス編みで編成し、インレイ編みで編成する。
【0036】
第2の部位(22)のU字状の帯部(22b)の組織の糸使いは、例えば、3口編みからなり、第1コース(C1)はSCYで編成し、第2コース(C2)はDCYを挿通し、第3コース(C3)はSCYとウーリーナイロンを添え糸とし、カットボス編みで編成し、インレイ編みで編成する。
【0037】
〈第3及び第4の部位〉
第3及び第4の部位(23,24)は、多角形状に形成されている。第3の部位(23)は膝の前側に位置し且つ膝の上側の内側広筋に対向している。第4の部位(24)は膝の後側に位置し且つ膝の下側の内側腓腹筋に対向している。第3の部位(23)は、内側広筋を脚の前側から圧迫し、膝の伸展を補助する役割を担っている。また、第4の部位(24)は内側腓腹筋を脚の後側から圧迫し、膝の屈曲を補助する役割を担っている。
第3及び第4の部位(23,24)の組織の糸使いは、例えば、3口編みからなり、第1コース(C1)はSCYとウーリーナイロン糸を添え糸とし、カットボス編みで編成し、第2コース(C2)はDCYを挿通し、第3コース(C3)はSCYとウーリーナイロン糸を添え糸とし、カットボス編みで編成し、インレイ編みで編成する。
【0038】
〈第5の部位〉
第5の部位(25)は、本体部(11)の上部及び中間部の構造を強化する目的で用いられている。本体部(11)の周方向に沿う周方向帯部(25a)と、前記本体部(11)の軸方向に沿って延びる軸方向帯部(25b)とを有する。
【0039】
重度の膝関節症では金属や樹脂といった硬質素材で構造強化を行っているが、軽度の膝関節症や膝関節の保護を目的とする実施形態の場合、クオリティー・オブ・ライフの観点から、膝サポータ(10a)の装着時の違和感を抑えつつ、着衣に影響を及ぼさずに、構造強化を行う必要がある。そこで、第5の部位(25)の組織の糸使いは、例えば、3口編みからなり、第1コース(C1)はSCYとウーリーナイロン糸を添え糸とし、カットボス編みで編成し、第2コース(C2)はDCYを挿通し、第3コース(C3)はSCYを編成し、インレイ編みで編成する。
【0040】
本体部(11)において、最も伸びにくいのは第1の部位(21)、第2の部位(22)のX字状の帯部(22a)、第3及び第4の部位(23,24)である。これらよりも伸びやすいのが第5の部位(25)である。第5の部位(25)よりも伸びやすいのが第2の部位(22)のU字状の帯部(22b)である。最も伸びやすいのはベース部(20)である。
【0041】
人の体型に沿った当該サポータの編成編地で得る場合は、組織を変化させるファッショニング装置、給糸時の解除テンションを一定に保つテンション装置、コンピュータ制御によって弾性糸の送りこみ量を制御する積極給糸装置を装備した編機によって編成する必要がある。また、サポータ中の伸びにくい部分の組織は、任意の編地組織、例えば、平編、メッシュ編、フロート編、タック編、タック編とフロート編との組み合わせ、カットボス編等によって編成することができる。一例として、MERZ社、SANTONI社、LONATI社の編機が用いられる。
【0042】
(実施例)
実施例の膝サポータ(10a)の形態は、
図1に示すものと同じである。以下、実施例の膝サポータ(10a)の各部の糸使いについて詳細に説明する。糸使いの説明において、DTとは、10000mで1gの糸の繊度を1DTとする。
【0043】
膝サポータ(10a)の締付部(13)のウエルト部分の糸使いは、
図2に示すように3口編みからなり、第1コース(C1)は、22DTのポリウレタン弾性糸を芯糸に、110DTの24フィラメント単糸を合撚したウーリーナイロン糸をシングルカバリングしたSCYを編成し、第2コース(C2)は285DTのポリウレタン弾性糸芯糸に84DTのウーリーナイロン糸をダブルカバリングしたDCYを挿通し、第3コース(C3)は78DTのポリウレタン弾性糸を芯糸に78DTのウーリーナイロンをシングルカバリングしたSCYを編成し、この順で繰り返し、インレイ編みで編成する。
【0044】
本体部(11)の第5の部位(25)の糸使いは、
図3に示すように3口編みからなり、第1コース(C1)は22DTのポリウレタン弾性糸を芯糸に、110DTの24フィラメント単糸を合撚したウーリーナイロン糸をシングルカバリングしたSCYとウーリーナイロン122DTの24フィラメント双糸3本を添え糸としカットボス編成し、第2コース(C2)は285DTのポリウレタン弾性糸芯糸に84DTのウーリーナイロン糸をダブルカバリングしたDCYを挿通し、第3コース(C3)は78DTのポリウレタン弾性糸を芯糸に78DTのウーリーナイロンをシングルカバリングしたSCYを編成し、この順で繰り返し、インレイ編みで編成する。
【0045】
本体部(11)の第1の部位(21)、第2の部位(22)のX字状の帯部(22a)、第3及び第4の部位(23,24)の糸使いは、
図4に示すように3口編みからなり、第1コース(C1)は22DTのポリウレタン弾性糸を芯糸に、110DTの24フィラメント単糸を合撚したウーリーナイロン糸をシングルカバリングしたSCYとウーリーナイロン122DTの24フィラメント双糸3本を添え糸としカットボス編成し、第2コース(C2)は285DTのポリウレタン弾性糸芯糸に84DTのウーリーナイロン糸をダブルカバリングしたDCYを挿通し、第3コース(C3)は78DTのポリウレタン弾性糸を芯糸に78DTのウーリーナイロンをシングルカバリングしたSCYとウーリーナイロン56DT4本を引き揃え、添え糸とし、カットボス編みで編成し、この順で繰り返し、インレイ編みで編成する。
【0046】
本体部(11)の第2の部位(22)のU字状の帯部(22b)の糸使いは、
図5に示すように3口編みからなり、第1コース(C1)は22DTのポリウレタン弾性糸を芯糸に、110DTの24フィラメント単糸を合撚したウーリーナイロン糸をシングルカバリングしたSCYで編成し、第2コース(C2)は285DTのポリウレタン弾性糸芯糸に84DTのウーリーナイロン糸をダブルカバリングしたDCYを挿通し、第3コース(C3)は78DTのポリウレタン弾性糸を芯糸に78DTのウーリーナイロンをシングルカバリングしたSCYとウーリーナイロン56DT4本を引き揃え、添え糸とし、カットボス編みで編成し、この順で繰り返し、インレイ編みで編成する。
【0047】
本体部(11)のベース部(20)の糸使いは、
図6に示すように3口編みからなり、第1コース(C1)は、22DTのポリウレタン弾性糸を芯糸に、110DTの24フィラメント単糸を合撚したウーリーナイロン糸をシングルカバリングしたSCYを編成し、第2コース(C2)は285DTのポリウレタン弾性糸芯糸に84DTのウーリーナイロン糸をダブルカバリングしたDCYを挿通し、第3コース(C3)は78DTのポリウレタン弾性糸を芯糸に78DTのウーリーナイロンをシングルカバリングしたSCYを編成し、この順で繰り返し、インレイ編みで編成する。
【0048】
(実施例の試験結果)
図7は、実施例の膝サポータ(10a)を着用した場合と着用しない場合において、患者の歩行周期に対する膝関節の内外反角度の影響を示したグラフである。実線が膝サポータ(10a)を着用して歩行した場合、破線が膝サポータ(10a)を着用しないで歩行した場合を示している。縦軸は内外反角度を示し、その角度が0°より大きい場合には内反角を示し、その角度が0°より小さい場合には外反角を示す。横軸は歩行周期を示している。図中の立脚期とは脚が地面に接地している時期をいい、遊脚期とは脚が地面から離れている時期をいう。
【0049】
図7からわかるように、患者が膝サポータ(10a)を着用せずに歩行した場合、立脚期の初期から中期にかけて膝が内反状態(O脚のような状態)となる。これに対し、患者が膝サポータ(10a)を着用して歩行した場合、立脚期全体を通じて常に膝が外反状態(X脚のような状態)となる。この結果から、膝サポータ(10a)による膝の外反方向への矯正力が認められる。
【0050】
また、立脚期の初期(側方動揺)における膝関節の最大可動量は、膝サポータ(10a)非着用の場合、内反側に4.97°(
図7のθi)であるのに対して、膝サポータ(10a)着用の場合、外反側に1.61°(
図7のθo)である。膝サポータ(10a)の着用により、膝関節の最大可動量が78%減少している。この結果から、膝サポータ(10a)によって膝関節の安定性が向上することがわかった。
【0051】
(その他の実施形態)
実施形態の膝サポータ(10a)は、筒状の本体部(11)に第1から第5の部位(21〜25)を有していたが、これに限定されず、例えば、本体部(11)が第1の部位(21)及び第2の部位(21,22)のみを有していてもよく、また、本体部(11)が第1の部位(21)及び第2の部位(21,22)と、第3から第5の部位(23〜25)のいずれか1つとを有していてもよく、また、本体部(11)が第1の部位(21)及び第2の部位(21,22)と、第3から第5の部位(23〜25)のいずれか2つとを有していてもよい。これらの場合であっても、膝の内反を矯正して歩行時に膝が内側から外側へ開かないようにすることができる。