【解決手段】ブラシ保持機構100は、モータのコミテータに摺動接触するカーボンブラシ30と、カーボンブラシ30を収容するブラシホルダ31と、カーボンブラシ30とともにブラシホルダ31に収容される規制部材56と、を備える。規制部材56は、カーボンブラシ30をコミテータに向けて摺動可能に保持するとともに、カーボンブラシ30をブラシホルダ31の内壁に対してコミテータの周方向に付勢するように構成されている。
前記第2板部は、前記連結部から該第2板部の先端に向かって幅が徐々に狭くなる領域を有することを特徴とする請求項3乃至5のいずれか1項に記載のブラシ保持機構。
前記第2板部は、ブラシを挟んだ規制部材がホルダに挿入される際に、ホルダに設けられたガイド部に当接しながら摺動する被ガイド部が先端に設けられていることを特徴とする請求項3乃至6のいずれか1項に記載のブラシ保持機構。
ブラシを挟んだ規制部材をホルダに挿入した際に、規制部材がホルダから抜け落ちないように、ホルダの一部と係止する係止部を更に有することを特徴とする請求項3乃至7のいずれか1項に記載のブラシ保持機構。
前記ホルダは、前記第1板部または前記第2板部と対向する側面に、前記係止部が干渉せずに移動できるスリットが、前記ブラシが挿入される側の開口縁部から途中まで形成されており、
前記係止部は、前記スリットの終端部で係止されるように構成されていることを特徴とする請求項8に記載のブラシ保持機構。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施の形態に係るブラシ保持機構は、モータのコミテータに摺動接触するブラシと、ブラシを収容するホルダと、ブラシとともにホルダに挿入される規制部材と、を備えている。規制部材は、ブラシをコミテータに向けて摺動可能に保持するとともに、ブラシをホルダの内壁に対してコミテータの周方向に付勢するように構成されている。
【0012】
この実施の形態によると、ホルダ内におけるブラシをホルダの内壁に対してコミテータの周方向に向けて付勢できる。そのため、コミテータとブラシが摺動接触する際にコミテータの周方向に係る力によって振動することが抑制され、ノイズの低減やブラシの長寿命化等に寄与する。
【0013】
規制部材は、導電性材料で構成されていてもよい。また、規制部材およびホルダは、ブラシに給電する給電経路として構成されている。これにより、規制部材およびホルダを経由してブラシに安定的な給電が可能となる。
【0014】
規制部材は、ブラシを保持(収容)するホルダ内におけるブラシの移動を規制するとともに、ブラシの対向する一対の側面を両側から挟むような形状で構成されていてもよい。また、規制部材は、一対の側面の一方と接する第1板部と、一対の側面の他方から離間する第2板部と、第1板部の基部と第2板部の基部とを連結する連結部と、を有してもよい。第2板部は、ブラシを挟んだ規制部材がホルダに挿入された場合に該ホルダの内壁に当接することで撓むように構成されており、撓んだ第2板部の復元力によって、ブラシをホルダの他の内壁に向けて付勢するよう構成されていてもよい。これにより、ホルダ内におけるブラシをホルダの内壁に向けて付勢できるため、ホルダ内におけるブラシの移動、特にホルダの内壁と交差する方向の移動を規制できる。
【0015】
規制部材は、導電性の金属部材を加工したものであり、第1板部は、ホルダと接触する給電部を有してもよい。第2板部は、バネ部を有してもよい。これにより、簡易な構成で第2板部を撓ませることができる。また、ホルダから第1板部の給電部を介してブラシに給電することができる。ここで、給電部は、第1板部の一部を凸状に加工した形状であってもよい。また、規制部材は、板状の金属部材を所定形状で打ち抜き、曲げ加工やプレス加工で所望の形状にしてもよい。
【0016】
連結部は、規制部材をブラシに固定する固定部であってもよい。これにより、規制部材をブラシに固定してから、規制部材と一緒にホルダに挿入できるため、組み立て作業性を向上できる。
【0017】
第2板部は、連結部から該第2板部の先端に向かって幅が徐々に狭くなる領域を有してもよい。これにより、第2板部の復元力(弾性力)を弱めることが可能となり、コミテータに向けてのブラシの摺動を妨げずに、適切な付勢力によってブラシをホルダの内壁に向けて付勢できる。
【0018】
第2板部は、ブラシを挟んだ規制部材がホルダに挿入される際に、ホルダに設けられたガイド部に当接しながら摺動する被ガイド部が先端に設けられていてもよい。これにより、ブラシを挟んだ規制部材をホルダに挿入する際の作業性を向上できる。
【0019】
ブラシを挟んだ規制部材をホルダに挿入した際に、規制部材がホルダから抜け落ちないように、ホルダの一部と係止する係止部を更に有してもよい。これにより、ホルダに一度挿入されたブラシが再度抜け落ちることを防止できる。
【0020】
ホルダは、ブラシが挿入される側の開口縁部に、第2板部の被ガイド部をガイドするガイド部が形成されていてもよい。ガイド部は、第2板部が撓んでいない状態で被ガイド部が当接するように開口縁部から外側に向かって広がるように斜めに形成されていてもよい。これにより、ブラシを挟んだ規制部材を作業者が撓ませることなく、容易にホルダに挿入することができる。
【0021】
ホルダは、第1板部または第2板部と対向する側面に、係止部が干渉せずに移動できるスリットが、ブラシが挿入される側の開口縁部から途中まで形成されていてもよい。係止部は、スリットの終端部で係止されるように構成されていてもよい。これにより、ホルダに一度挿入されたブラシが再度抜け落ちることを防止できる。
【0022】
ブラシをコミテータに向けて付勢する弾性部材を更に備えてもよい。弾性部材は、ブラシのコミテータと接触する先端部と反対側の後端部の中央部を付勢するように構成されていてもよい。これにより、弾性部材は、ブラシの摺動方向に近い角度でブラシの後端部を付勢できる。
【0023】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。また、以下に述べる構成は例示であり、本発明の範囲を何ら限定するものではない。
【0024】
(直流モータ)
はじめに、直流モータ(以下、適宜「モータ」という。)の概略構成を説明する。
図1は、実施の形態に係る直流モータの正面図である。
図2は、直流モータの分解斜視図である。
図3は、
図1のA−A矢視断面図である。なお、
図1〜
図3に示すモータの構成は、あくまでも例示であり、本実施の形態に係る電機子の構成がこれに限られるものではない。
【0025】
図1および
図2に示すように、モータ10は、筒状のハウジング12の内部に回転子14が収容されて構成されている。ハウジング12は、有底筒状の金属ケース16と、筒状の樹脂製のブラシハウジング18とを組み付けて構成される。金属ケース16は、磁気回路を形成するヨークとしても機能し、その内周面には筒状の界磁マグネット(単に「マグネット」という)20が固定され、共に固定子を構成している。本実施の形態に係るマグネット20は2極であるが、極数や配置はこれに限られない。金属ケース16の底部中央にはボス部17が外方にやや突出するように形成され、後述する軸受を収容している。
【0026】
回転子14は、回転軸となるシャフト22の一端側半部に、電機子24、コミテータ26、検出用マグネット28等が設けられて構成される。ブラシハウジング18には、コミテータ26に対向配置される一対のカーボンブラシ30が配設されている。ブラシハウジング18には、図示しない電装品と電気的に接続するためのコネクタ32が着脱可能に取り付けられる。
【0027】
ブラシハウジング18は、コネクタ32を取り付けたブラシハウジング組立て体の状態で金属ケース16に挿入されるようにして組み付けられる。金属ケース16の開口端近傍の側面には切り欠き部34,35が設けられており、ブラシハウジング組立体を組み付ける際にコネクタ32およびブラシハウジング18の所定箇所が切り欠き部34,35の各基端部にそれぞれ係止されることにより適切な位置決めがなされる。
【0028】
このようにブラシハウジング組立体を組み付けた後、金属ケース16の開口部をエンドプレート36により封止する。エンドプレート36は、金属ケース16の開口部とほぼ同形状の外形を有し、その開口部に挿通嵌合される。エンドプレート36は、金属ケース16内に挿入された後にエンドプレート36の開口端が内方に加締められることにより、金属ケース16に対して固定される。エンドプレート36の周縁部には互いに反対側に延出する一対のフランジ部38が設けられ、各フランジ部38が電装品への取付け部を形成している。
【0029】
エンドプレート36の中央にはボス部39が外方にやや突出するように形成され、リング状であって潤滑用のオイルを含浸したいわゆるオイルレスメタルからなる滑り軸受37が圧入されている。ボス部39の底部にはその滑り軸受37と同軸状に挿通孔が設けられている。シャフト22の他端側半部は、この挿通孔を貫通して外部に露出し、図示しないギア等を介して駆動対象に接続される。
【0030】
図3に示すように、金属ケース16、ブラシハウジング18、およびコネクタ32に囲まれるようにしてハウジング12の内部空間が形成される。エンドプレート36のボス部39には上述した滑り軸受37が圧入され、シャフト22の挿通孔40近傍の部分を回転自在に軸支している。一方、金属ケース16のボス部17には、滑り軸受であって外形形状が球形である球形滑り軸受41が同軸状に内挿嵌合された有底筒状の軸受ホルダ42が配置されている。球形滑り軸受41は、シャフト22の一端部に圧入されている。軸受ホルダ42の底部中央には断面三角形状の凸部43が設けられ、ボス部17の底部に設けられた同形状の凹部44に嵌合することで、その軸線周りの回動が阻止されている。
【0031】
電機子24は、シャフト22に圧入されたコア46と、コア46に巻回された巻線48を含んで構成されており、コア46の外周面がマグネット20の内周面と所定のクリアランス(磁気ギャップ)をあけて対向配置されている。
【0032】
シャフト22における電機子24と滑り軸受37との間には、電機子24側から順にコミテータ26、検出用マグネット28、ブッシュ50が並設されている。コミテータ26は、円筒状をなし、コネクタ32が金属ケース16に組み付けられた際にカーボンブラシ30に対向配置される位置にてシャフト22に圧入されている。ブラシハウジング18には筒状のブラシホルダ31が固定されており、カーボンブラシ30は、このブラシホルダ31に内挿されて支持されている。
【0033】
検出用マグネット28は、コミテータ26よりも外径がやや小さな円筒状をなし、コミテータ26に軸線方向に当接するようにシャフト22に挿通されている。コネクタ32の下面にはホール素子52が配設されており、コネクタ32が金属ケース16に組み付けられた際には、そのホール素子52が検出用マグネット28に対向配置される。検出用マグネット28がコミテータ26よりもやや小さく構成されることで、シャフト22が他端側からブラシハウジング18に挿通される際に検出用マグネット28がカーボンブラシ30に干渉するのが防止される。また、検出用マグネット28をコミテータ26よりも小さな範囲で大きくすることで、ホール素子52に近接配置できるようにされている。
【0034】
検出用マグネット28は、回転に伴ってその外周面にN極とS極とが交互に現れるように2極に着磁されており、ホール素子52がその検出用マグネット28の回転に伴う磁極の切り替わり(境界)を検出してパルス信号を出力する。所定期間におけるそのパルス信号の数を取得することにより、モータ10の回転数を検出することができる。なお、本実施の形態では検出用マグネット28を2極着磁としたが、例えば4極着磁等その他の偶数極数に設定してもよい。
【0035】
検出用マグネット28のブッシュ50との対向面には、断面四角形状の凹部54が設けられている。一方、ブッシュ50は、その凹部54と相補形状の外形を有する段付柱状をなしている。ブッシュ50は、その先端部を凹部54に嵌合させるようにシャフト22に圧入されており、その結果、検出用マグネット28のシャフト22に対する回転が防止されている。ブッシュ50は、鉄などの磁性材料からなり、検出用マグネット28の磁力を安定化させるバックヨークとしても機能する。
【0036】
(ブラシハウジング)
図4は、本実施の形態に係るブラシハウジングの要部を示す上面図である。
図5は、本実施の形態に係るブラシハウジングの要部を示す斜視図である。
図6は、
図5と異なる方向から見たブラシハウジングの要部を示す斜視図である。
図4乃至
図6では、ブラシハウジングの一部を示している。
【0037】
図4に示すように、ブラシハウジング18は有底筒状をなし、金属ケース16と同様に四角形状の断面の角部が湾曲状に形成されている。ブラシハウジング18の中央にはその軸線方向にシャフト22を挿通可能な円孔が形成されており、その周囲に各種機能部品がスペースを有効利用するよう最適配置されている。
【0038】
すなわち、ブラシハウジング18の
図4の左右下方の角部には、周方向に90度をなすように一対の筒状のブラシホルダ31がベースプレート33を介して固定されている。そして、ブラシホルダ31とベースプレート33とで形成された筒状の内部空間にカーボンブラシ30が摺動可能に収容されている。ブラシホルダ31は、導電性金属からなる断面四角形状の長尺筒状部を有しており、ブラシハウジング18の軸中心からその半径方向に沿って延びるように配設されている。ブラシホルダ31の形状の詳細については後述する。
【0039】
カーボンブラシ30は、長方形状の断面を有する長尺角柱状をなし、ブラシホルダ31に摺動可能に内挿され支持されている。それにより、金属ケース16、回転子14、ブラシハウジング組立体が組み付けられた際には、カーボンブラシ30が、ブラシハウジング18の角部とコミテータ26の軸中心とをつなぐ線上に延びるように配置されるようになる。
【0040】
ブラシホルダ31と側面部との間のスペースには、ねじりバネ70が配設されている。ねじりバネ70は、その巻回部71がブラシハウジング18の側面部に近接配置されたボス部68に挿通されて支持され、その巻回部71から延出する一端部72がカーボンブラシ30の後端部に当接される。巻回部71から延出する他端部73は、ブラシホルダ31の一部に係止されている。ねじりバネ70は、その巻回部71にて付勢力を蓄積し、一端部72がその付勢力をカーボンブラシ30に伝達してコミテータ26側に付勢する。
【0041】
(ブラシ保持機構)
図7は、本実施の形態に係るブラシ保持機構を示す斜視図である。
図8は、ベースプレートおよびねじりバネを備えた本実施の形態に係るブラシ保持機構を示す斜視図である。本実施の形態に係るブラシ保持機構100は、モータ10のコミテータ26に摺動接触する柱状のカーボンブラシ30と、カーボンブラシ30を収容するブラシホルダ31と、後述する規制部材56と、カーボンブラシ30をコミテータ26に向けて付勢するねじりバネ70と、ブラシホルダ31の足が挿入されるベースプレート33と、を備える。これにより、ブラシホルダ31内におけるカーボンブラシ30の所定方向の移動、特にブラシホルダ31の内壁と交差する方向の移動を規制できる。
【0042】
弾性部材であるねじりバネ70は、カーボンブラシ30のコミテータ26と接触する先端部30aと反対側の後端部30bの中央部30b1を付勢するように、形状や配置が設定されている。これにより、ねじりバネ70は、カーボンブラシ30の摺動方向Xに近い方向でカーボンブラシ30の後端部30bを付勢できる。
【0043】
(規制部材)
図9は、本実施の形態に係る規制部材の斜視図である。
図10は、
図9とは異なる方向から見た規制部材の斜視図である。
図11(a)は、
図9に示す規制部材をB1方向から見た側面図、
図11(b)は、
図9に示す規制部材をB2方向から見た側面図である。
図12(a)は、
図9に示す規制部材をB3方向から見た上面図、
図12(b)は、
図9に示す規制部材をB4方向から見た正面図である。
【0044】
本実施の形態に規制部材56は、カーボンブラシ30を収容するブラシホルダ31内におけるカーボンブラシ30の移動を規制する部材である。規制部材56は、カーボンブラシ30の対向する一対の側面を両側から挟むような形状で構成されており、一対の側面の一方と接する第1板部58と、一対の側面の他方から離間する第2板部60と、第1板部58の基部58aと第2板部60の基部60aとを連結する連結部62と、を有する。第2板部60は、外力によって撓むような形状に加工されており、バネ性を持たせた板バネ部として機能する。これにより、簡易な構成で第2板部60の一部を撓ませることができる。また、第2板部60には後述するブラシホルダのガイド部によりガイドされる被ガイド部60bが形成されている。
【0045】
規制部材56は、導電性の金属部材を加工したものである。例えば、規制部材56は、板状の金属部材を所定形状で打ち抜き、曲げ加工やプレス加工で所望の形状にすることで製造される。あるいは、所定形状の複数の部材を溶接や接着で一部材としてもよい。第1板部58は、ブラシホルダ31と接触する給電部58bを有している。給電部58bは、第1板部58の一部がプレス加工等により外側に凸状に突出するように形成された部分である。
【0046】
(ブラシ)
図13(a)は、本実施の形態に係るカーボンブラシの斜視図、
図13(b)は、
図13(a)とは異なる方向から見たカーボンブラシの斜視図である。
図14(a)は、
図13(a)に示すカーボンブラシをC1方向から見た側面図、
図14(b)は、
図13(b)に示すカーボンブラシをC2方向から見た上面図である。
【0047】
図13および
図14に示すように、カーボンブラシ30は、全体が略直方体で柱状である。カーボンブラシ30は、例えば、カーボンの粉末を圧縮成形し、加熱することで製造される。本実施の形態に係るカーボンブラシ30は、先端部30aに近い側の幅W1が広く、後端部30bに近い側の幅W2が狭くなっている。
【0048】
後端部30bに近い幅の狭い領域R1は、規制部材56が装着される。領域R1の側面30cは、規制部材56が装着された状態で規制部材56の第1板部58と接する。後端部30bの中央部30b1には、ねじりバネ70の一端部72が付勢する凹溝30eが幅方向に形成されている。凹溝30eの上下には、装着された規制部材56が上下方向にずれないように、連結部62と係合する一対の突条部30fが形成されている。
【0049】
(ブラシホルダ)
図15(a)は、本実施の形態に係るブラシホルダの斜視図、
図15(b)は、
図15(a)とは異なる方向から見たブラシホルダの斜視図である。
図16(a)は、
図15(a)に示すブラシホルダをD1方向から見た上面図、
図16(b)は、
図15(a)に示すブラシホルダをD2方向から見た側面図、
図16(c)は、
図15(a)に示すブラシホルダをD3方向から見た側面図である。
【0050】
ブラシホルダ31は、例えば、導電部材である銅や真鍮等の板状の導電部材を所定形状に打ち抜き、曲げ加工で形成される。ブラシホルダ31は、ベースプレート33に挿入される3つの脚部31a1〜31a3を有する。また、ブラシホルダ31は、カーボンブラシ30が挿入される側の開口部31bの縁部に、規制部材56の第2板部60の被ガイド部60b(
図9乃至
図12参照)をガイドするガイド部31cが形成されている。また、ガイド部31cは、第2板部60が撓んでいない状態で被ガイド部60bが当接するように開口部31bの縁部から外側に向かって広がるように斜めに形成されている。
【0051】
また、ブラシホルダ31は、規制部材56の第1板部58と対向する側面31dに、規制部材56の係止部58cが干渉せずに移動できるスリット31eが形成されている。スリット31eは、開口部31bから反対側の開口部に向けて途中まで形成されている。本実施の形態に係るブラシホルダ31は、側面31dの一部が脚部31a1,31a2を兼ねており、側面31dと対向する側面31fの一部が脚部31a3を兼ねている。前述のガイド部31cは、側面31fの縁部から形成されている。
【0052】
また、ブラシホルダ31は、側面31dと側面31fとを連結している上面31gを有している。上面31gには、ねじりバネ70の他端部73が係止される鉤状の係止部31hが設けられている。
【0053】
(ブラシ保持機構)
次に、カーボンブラシ30、ブラシホルダ31および規制部材56を用いたブラシ保持機構について説明する。
図17(a)は、カーボンブラシに規制部材を装着した状態を示す斜視図、
図17(b)は、
図17(a)と異なる方向から見た斜視図である。
図18は、
図17(a)のブラシホルダおよび規制部材をE1方向から見た上面図である。
【0054】
規制部材56をカーボンブラシ30に装着される際に、連結部62がカーボンブラシ30の後端部30bに嵌合することで、規制部材56がカーボンブラシ30に固定される。つまり、連結部62は固定部として機能する。これにより、規制部材56をカーボンブラシ30に固定してから、カーボンブラシ30を規制部材56と一緒にブラシホルダ31に挿入できるため、組み立て作業性を向上できる。
【0055】
規制部材56の第1板部58は、自由端の先端58dが外側に折れ曲がって形成されている。これにより、カーボンブラシ30に規制部材56を装着する際に、第1板部58によってカーボンブラシ30が削れることを抑制できる。
【0056】
図19は、規制部材が装着されたカーボンブラシをブラシホルダに挿入する状態を説明するための上面図である。
図20は、規制部材が装着されたカーボンブラシをブラシホルダに挿入した状態のブラシ保持機構を説明するための模式図である。
図21は、本実施の形態に係るブラシ保持機構の側面図である。
【0057】
図19に示すように、第2板部60は、カーボンブラシ30を挟んだ規制部材56がブラシホルダ31に挿入される際に、ブラシホルダ31に設けられたガイド部31cに当接しながら摺動する被ガイド部60bが先端に設けられている。規制部材56がブラシホルダ31に徐々に挿入されると、被ガイド部60bがガイド部31cにガイドされながら内側に変位することで、第2板部60が徐々に撓むことになる。これにより、カーボンブラシ30を挟んだ規制部材56を作業者が撓ませることなく、容易にブラシホルダ31に挿入することができる。つまり、予め第2板部60を撓ませてブラシホルダ31に挿入する必要がなく、カーボンブラシ30を挟んだ規制部材56をブラシホルダ31に挿入する際の作業性を向上できる。
【0058】
カーボンブラシ30を挟んだ規制部材56をブラシホルダ31の所定の位置まで挿入すると、
図20に示すように、第2板部60は、ブラシホルダ31の内壁31kに当接することで撓むように構成されている。そして、規制部材56は、撓んだ第2板部60の復元力によって、カーボンブラシ30をブラシホルダ31の他の内壁31mに向けて付勢するよう構成されている。
【0059】
このように、本実施の形態に係る規制部材56によると、ブラシホルダ31内におけるカーボンブラシ30をブラシホルダ31の内壁31mに向けて付勢できるため、ブラシホルダ31内におけるカーボンブラシ30の移動、特にブラシホルダ31の内壁31mと交差する方向の移動を規制できる。この際、第1板部58の給電部58bが内壁31mに押しつけられるため、ブラシホルダ31と給電部58bが常に安定して接触することとなり、ベースプレート33からブラシホルダ31、規制部材56を経由してカーボンブラシ30に安定的な給電が可能となる。
【0060】
従来は、カーボンブラシとブラシホルダの接点が不安定なため、ベースプレートとカーボンブラシをピグテール線で接続して安定的な給電を保障していた。このため、ピグテール線を用いた給電が不要となり、ピグテール線の一端をカーボンブラシと接続する工程や、ピグテール線の他端をターミナルまで配線する工程等が不要となり、部品コストや製造コストの低減が可能となる。
【0061】
なお、第2板部60は、
図11(a)に示すように、連結部62から先端の被ガイド部60bに向かって幅が徐々に狭くなる領域を有している。これにより、第2板部60の復元力(弾性力)を弱めることが可能となり、コミテータ26に向けてのカーボンブラシ30の摺動を妨げずに、適切な付勢力によってカーボンブラシ30をブラシホルダ31の内壁31mに向けて付勢できる。なお、内壁31mと接触するのは、第1板部58の一部である給電部58bであるため、接触抵抗を低減できる。
【0062】
また、規制部材56は、カーボンブラシ30を挟んだ状態でブラシホルダ31に挿入された際に、規制部材56がブラシホルダ31から抜け落ちないように、ブラシホルダ31の一部と係止する係止部58cを有している。係止部58cは、
図21に示すように、スリット31eの終端部31e1で係止されるように構成されている。これにより、ブラシホルダ31に一度挿入されたカーボンブラシ30が、そのまま押し込まれて再度抜け落ちることを防止できる。
【0063】
上述のように、本実施の形態に係る規制部材56は、カーボンブラシ30をコミテータ26に向けて摺動可能に保持するとともに、カーボンブラシ30をブラシホルダ31の内壁に対してコミテータの周方向に付勢するように構成されている。これにより、ブラシホルダ31内におけるカーボンブラシ30をブラシホルダ31の内壁に対してコミテータ26の周方向に向けて付勢できる。そのため、コミテータ26とカーボンブラシ30が摺動接触する際にコミテータ26の周方向に係る力によってカーボンブラシ30が振動することが抑制され、ノイズの低減等に寄与する。
【0064】
図22(a)は、本実施の形態に係る規制部材の一つの変形例を示す側面図、
図22(b)は、本実施の形態に係る規制部材の他の変形例を示す側面図である。なお、上述の規制部材と同様の構成については説明を適宜省略する。
【0065】
図22(a)に示す規制部材74は、カーボンブラシ30の対向する一対の側面を両側から挟むような形状で構成されており、一対の側面の一方と接する第1板部76と、一対の側面の他方から離間する第2板部78と、第1板部76の基部76aと第2板部78の基部78aとを連結する連結部80と、を有する。第2板部78は、外力によって撓むような形状に加工されており、バネ性を持たせた板バネ部として機能する。これにより、簡易な構成で第2板部78の一部を撓ませることができる。また、第2板部78には前述のブラシホルダ31のガイド部31cによりガイドされる被ガイド部78bが形成されている。第2板部78は、
図11に示す規制部材56と比較して、ブラシホルダ31の内壁と当接する当接部78cが大きい(長い)。そのため、規制部材74が装着されたカーボンブラシ30をブラシホルダ31の内壁に押し付ける際の付勢力を大きくできる。また、カーボンブラシ30がブラシホルダ31内で傾きにくくなる。
【0066】
図22(b)に示す規制部材82は、カーボンブラシ30の対向する一対の側面を両側から挟むような形状で構成されており、一対の側面の一方と接する第1板部84と、一対の側面の他方から離間する第2板部86と、第1板部84の基部84aと第2板部86の基部86aとを連結する連結部88と、を有する。第2板部86は、外力によって撓むような形状に加工されており、バネ性を持たせた板バネ部として機能する。これにより、簡易な構成で第2板部86の一部を撓ませることができる。また、第2板部86には前述のブラシホルダ31のガイド部31cによりガイドされる2つの被ガイド部86bが形成されている。第2板部86は、
図11に示す規制部材56と比較して、ブラシホルダ31の内壁と当接する当接部78cが2つに分かれている。そのため、規制部材82が装着されたカーボンブラシ30がブラシホルダ31内で傾きにくくなる。
【0067】
図23は、本実施の形態の変形例に係るブラシ保持機構におけるブラシホルダの概略構成を示す斜視図である。
図24は、変形例に係る規制部材の一部を示す斜視図である。
図25は、変形例に係る規制部材が装着されたカーボンブラシをブラシホルダに挿入した状態のブラシ保持機構を説明するための模式図である。
【0068】
変形例に係る規制部材は、第1規制部材90および第2規制部材92に分離されている。第1規制部材90は、ブラシホルダ内でのブラシの移動を規制する機能を有する。また、第2規制部材92は、ブラシホルダ31からカーボンブラシ30への給電機能を有する。なお、第2規制部材92については、前述の規制部材74の対応部分とほぼ同じ形状を有している。
【0069】
第1規制部材90は、板状の部材を折り曲げた形状であり、ブラシホルダ31のガイド部31cに固定される固定部90aと、折り曲げ部90bを挟んで固定部90aと反対側にある弾性部90cと、を有する。弾性部90cは、端部にある第1付勢部90dと、弾性部90cの一部を切り起こした第2付勢部90eと、を有する。
【0070】
第2規制部材92を装着したカーボンブラシ30を、第1規制部材90がガイド部31cに固定されたブラシホルダ31の所定の位置まで挿入すると、
図25に示すように、第1付勢部90dおよび第2付勢部90eは、カーボンブラシ30の側面30dに当接することで撓むように構成されている。そして、第1規制部材90は、撓んだ第1付勢部90dや第2付勢部90eの復元力によって、カーボンブラシ30をブラシホルダ31の他の内壁31mに向けて付勢するよう構成されている。この際、カーボンブラシ30に装着された第2規制部材92の給電部58bが内壁31mと接触することで、カーボンブラシ30とブラシホルダ31との安定した導通が実現する。
【0071】
以上、本発明を上述の実施の形態を参照して説明したが、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、実施の形態の構成を適宜組み合わせたものや置換したものについても本発明に含まれるものである。また、当業者の知識に基づいて実施の形態における組合せや処理の順番を適宜組み替えることや各種の設計変更等の変形を実施の形態に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も本発明の範囲に含まれうる。