特開2016-87864(P2016-87864A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-87864(P2016-87864A)
(43)【公開日】2016年5月23日
(54)【発明の名称】熱変色性筆記具
(51)【国際特許分類】
   B43K 29/02 20060101AFI20160418BHJP
   B43K 24/08 20060101ALI20160418BHJP
【FI】
   B43K29/02 D
   B43K24/08 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-222508(P2014-222508)
(22)【出願日】2014年10月31日
(71)【出願人】
【識別番号】303022891
【氏名又は名称】株式会社パイロットコーポレーション
(72)【発明者】
【氏名】栗田 哲宏
【テーマコード(参考)】
2C353
【Fターム(参考)】
2C353HA01
2C353HA09
2C353HC04
2C353HG03
(57)【要約】
【課題】ノック体に設けた弾性材料からなる摩擦部材9が、摩擦時に変形したり揺れ動き難くすると共に、摩擦時においてノック体10が前進することによる誤作動が発生し難い構造の熱変色性筆記具1を得る。
【解決手段】固定カム12の上方に軸筒4の後端開口4aから突出する突出部12cを形成し、摩擦部材9の側面の一部を膨出させて紙面等に接触させる摩擦部9eを形成し、摩擦部材9に貫通孔9aを形成して該貫通孔9aに突出部12cを挿着させて一体とし、且つ筆記体5のペン先6を軸筒4の内部に収容した状態で摩擦部材9の前端部9fの外側面を該軸筒4の後端部3aの内側面に近接させる構造とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸筒の後端開口から突出する弾性材料からなる摩擦部材を有したノック体を操作することにより、前記軸筒内に配設した固定カムを前進させると共に当該軸筒内に配設した回転カムを回動させ、前記軸筒の内部に収容した筆記体のペン先が該軸筒の前端孔より突出した状態となる熱変色性筆記具であって、前記固定カムの上方に前記軸筒の後端開口から突出する突出部を形成し、前記摩擦部材の側面の一部を膨出させて紙面等に接触させる摩擦部を形成し、前記摩擦部材に貫通孔を形成して該貫通孔に前記突出部を挿着させて一体とし、且つ筆記体のペン先を前記軸筒の内部に収容した状態で前記摩擦部材の前端部の外側面を該軸筒の後端部の内側面に近接させる構造としたことを特徴とする熱変色性筆記具。
【請求項2】
前記摩擦部材の貫通孔を前記軸筒の軸心に沿って形成すると共に、前記固定カムに形成した突出部の後端に前記摩擦部材の後端面より露出する鍔部を形成したことを特徴とする請求項1に記載の熱変色性筆記具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱変色性筆記具に関し、詳細には、軸筒の後端開口から突出する弾性材料からなる摩擦部材を有したノック体を操作することにより、軸筒内に配設した固定カムを前進させると共に当該軸筒内に配設した回転カムを回動させ、軸筒の内部に収容した筆記体のペン先が該軸筒の前端孔より突出した状態となる熱変色性筆記具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1および特許文献2には、ペン先から熱変色性インキを吐出可能な筆記体を、軸筒内に前後方向へ移動可能に収容させ、軸筒後方のノック体を前方へ押動することにより、軸筒内に配設したコイルスプリングの弾発力に抗して、筆記体のペン先を軸筒の前端孔から突出させる熱変色性筆記具が開示されている。
特許文献1の熱変色性筆記具では、ノック体を弾性材料から一体で形成して外面に摩擦部を形成しており、特許文献2の熱変色性筆記具では、ノック体の外面に弾性材料からなる摩擦部を外皮として形成している。特許文献1および特許文献2の熱変色性筆記具は、弾性材料からなるノック体の摩擦部で熱変色性インキにより紙面等に形成された筆跡を摩擦して、その際に生じる摩擦熱により前記熱変色性インキの筆跡を熱変色させるものである。
このようなことから、ノック体に摩擦部を設けた熱変色性筆記具においては、摩擦を行いやすくするために、ノック体に設けた摩擦部が摩擦時に変形したり揺れ動かないようにすることが求められている。
また特許文献3の熱変色性筆記具では、摩擦時における摩擦部を設けたノック体の前後方向の移動を阻止するために、ペン先を軸筒の前端開口から突出させた状態において、ノック体である摩擦体に設けた係合部を軸筒に設けた被係合部に係合させる構造としてある。したがって、摩擦を行う際には摩擦体の係合部を軸筒に被係合部に係合させる動作が必要であり、さらに摩擦時は、軸筒の前端開口から突出したペン先が使用者の顔側に位置することから気をつけて摩擦を行う必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−156826号公報
【特許文献2】特開2011−230474号公報
【特許文献3】特開2011−37087号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明では、ノック体に設けた弾性材料からなる摩擦部材が、摩擦時に変形したり揺れ動き難くすると共に、摩擦時においてノック体が前進することによる誤作動が発生し難い構造の熱変色性筆記具を得ることを目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、
「1.軸筒の後端開口から突出する弾性材料からなる摩擦部材を有したノック体を操作することにより、前記軸筒内に配設した固定カムを前進させると共に当該軸筒内に配設した回転カムを回動させ、前記軸筒の内部に収容した筆記体のペン先が該軸筒の前端孔より突出した状態となる熱変色性筆記具であって、前記固定カムの上方に前記軸筒の後端開口から突出する突出部を形成し、前記摩擦部材の側面の一部を膨出させて紙面等に接触させる摩擦部を形成し、前記摩擦部材に貫通孔を形成して該貫通孔に前記突出部を挿着させて一体とし、且つ筆記体のペン先を前記軸筒の内部に収容した状態で前記摩擦部材の前端部の外側面を該軸筒の後端部の内側面に近接させる構造としたことを特徴とする熱変色性筆記具。
2.前記摩擦部材の貫通孔を前記軸筒の軸心に沿って形成すると共に、前記固定カムに形成した突出部の後端に前記摩擦部材の後端面より露出する鍔部を形成したことを特徴とする前記1項に記載の熱変色性筆記具。」である。
【0006】
摩擦部材を成形する弾性材料は、弾性を有する樹脂(ゴム、エラストマー)が挙げられ、例えば、シリコーン樹脂、SBS樹脂(スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体)、SEBS樹脂(スチレン−エチレン−ブタジエン−スチレン共重合体)、フッ素系樹脂、クロロプレン樹脂、ニトリル樹脂、ポリエステル系樹脂、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)等が挙げられる。尚、前記摩擦部材を成形する弾性材料は、高摩耗性の弾性材料(例えば、消しゴム等)よりも、摩擦時に消しカスが生じない低摩耗性の弾性材料が好ましい。また、固定カムは突出部によって弾性材料で形成された摩擦部材を支持させるために、硬質樹脂や金属など硬質材料で形成すればよい。
また摩擦部材の側面に形成する摩擦部は、摩擦部材の外周に沿ってフランジ状に形成したり、摩擦部材の外周に複数の凸部を放射状に形成してもよい。
【0007】
本発明における摩擦部材の前端部と軸筒の後端部との隙間の関係は、摩擦部材を有したノック体を軸心に沿って押動した際には前進させることができ、且つ摩擦部材の摩擦部を紙面等に接触させて摩擦させる際には、軸筒が斜めに傾斜することでノック体が軸筒に対して傾いて、摩擦部材の前端部の外側面が軸筒の後端部の内側面に当接してノック体の前進が防止されるようにすることが肝要である。
また、摩擦部材の貫通孔を軸筒の軸心に沿って形成すると共に、固定カムに形成した突出部の後端に、摩擦部材の後端面より露出する鍔部を形成する場合には、鍔部が摩擦部材の貫通孔を挿通できるようにすると共に、当該鍔部と突出部の根元に形成した固定カムの段部とで摩擦部材の前後を挟持できるように形成することが好ましい。尚、鍔部の後端面は、平坦形状や円弧形状などノック操作の際に使用者の指が痛くならない形状に形成することが好ましい。
さらに、固定カムの段部に摩擦部材の前端面にくい込む突起を形成することにより、摩擦時に摩擦部材が回転してしまうことを防止できる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の熱変色性筆記具によれば、ノック体に設けた摩擦部材の外側面が軸筒の後端開口と固定カムに設けた突出部とで支持されるので、摩擦時において摩擦部材が変形したり揺れ動くことを防止し、筆記体のペン先を前記軸筒の内部に収容した状態で摩擦を行う際にも、ノック体の前進による誤作動が生じ難いものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施例のボールペンにおける筆記体のペン先を軸筒の内部に収容した状態を示した断面図である。
図2】本実施例のボールペンにおける筆記体のペン先を軸筒の前端開口より突出させた状態を示した断面図である。
図3】本実施例のボールペンの要部を示した分解図である。
図4】本実施例のボールペンで筆記を行っている状態を示した斜視図である。
図5】本実施例のボールペンで摩擦を行っている状態を示した斜視図である。
図6】摩擦を行っている状態の要部を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に図面を参照しながら、本実施例の熱変色性筆記具について説明を行う。尚、本実施例では、熱変色性筆記具としてボールペンについての説明を行うが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。また、図中の同じ部材、同じ部品については、同じ符号としてある。図中においてペン先がある側を前方とし反対側を後方として表現する。
【実施例】
【0011】
図1図3を用いて、本実施例のボールペン構造について説明を行う。
図1は本実施例のボールペンにおける筆記体のペン先を軸筒の内部に収容した状態を示した断面図である。図2は本実施例のボールペンにおける筆記体のペン先を軸筒の前端開口より突出させた状態を示した断面図である。図3は本実施例のボールペンの要部を示した分解図である。
ボールペン1は、前軸2と後軸3とを螺合して形成した軸筒4内に、レフィル5を収容してある。レフィル5は、ボールペンチップをペン先6とし、ペン先6の後方にインキ収容筒7を装着してあり、軸筒4内に配したコイルスプリング8にて後方へ弾発され、軸筒4の後端開口4aから突出した摩擦部材9を有したノック体10を前方へ押動するように操作することによって、軸筒4の前端開口4bからペン先6を出没させることができる構造である。
【0012】
軸筒4の内部には、従来構造の回転カム機構が設けられており、後軸3の後端部3aの内壁面には複数のカム溝11を形成してあり、前方に山型状の凹凸部12aを形成し、外周面に前記カム溝11に係合する複数の突起12bを有した固定カム12を配設し、固定カム12の前方に、前記カム溝11に係合する複数のカム突起13aを外周面に周状に形成し、前記固定カム部12の凹凸部12aに噛合う噛合部13bを有した回転カム13を配設してあり、カム突起13aはカム溝11に係止して回転カム13はカム溝11に沿って前後に移動可能としてある。
固定カム12の後方には、軸筒4の軸心に沿って摩擦部材9に形成した貫通孔9aに挿着させる突出部12cを形成してあり、摩擦部材9の前端面9bを、固定カム12の突出部12cの根元に形成した段部12dに当接させ、摩擦部材9の後端面9cを、固定カム12の突出部12cの後端に形成した鍔部12eに当接させ、摩擦部材9の前後を挟持してある。また本実施例では、固定カム12の段部12dに、摩擦部材9の前端面9bにくい込む円錐状の突起12fを形成してあり摩擦部材9の回転を防止してある。また摩擦部材9の後方の外側面9dには、断面半円状で円環状に膨出させた摩擦部9eを形成しており、紙面等に接触させて摩擦できるようにしてある。
【0013】
本実施例のボールペン1は、図1に示した状態のノック体10を前方へ押動するように操作することで、固定カム12の前進に伴い回転カム13のカム突起13aがカム溝11の前端に移動し、固定カム12の凹凸部12aの傾斜により回転カム13のカム突起13aのカム斜面13cがカム溝11のカム斜面11aを滑り、レフィル5を介してコイルスプリング8で後方へ弾発された回転カム13のカム突起13aが複数のカム溝11間に形成された係合部11bに係合して、ペン先6を軸筒4の前端開口4bから突出させた状態で維持することができ、図2に示した状態のノック体10を再度前方へ押動するように操作することで、回転カム13のカム突起13aとカム溝11間の係合部11bの係合状態を解除して、回転カム13のカム突起13aと固定カム12の突起12bをカム溝11の後方へ後退させ、図1に示した状態のようにペン先6を軸筒4の内部に収容させることができる。
【0014】
尚、ノック体10を前方へ押動する際には、使用者は摩擦部材9の後端面9cと共に固定カム12の鍔部12eにも触れるが、本実施例の鍔部12eの後端面12gは平坦形状に形成してあるため、ノック操作の際に使用者の指が痛くなることはなかった。
【0015】
図4に示すように、本実施例のボールペン1は、軸筒4の前端開口4bから突出させたペン先6で紙面100に熱変色性インキの筆跡101を形成することができた。
【0016】
次に、図5および図6を用いて、本実施例のボールペンで摩擦を行う状態についての説明を行う。図5は本実施例のボールペンで摩擦を行っている状態を示した斜視図であり、図6は摩擦を行っている状態の要部を示した断面図である。図6に示すように、本実施例のボールペン1は、摩擦時において摩擦部材9の摩擦部9eが紙面100に接した際に、
摩擦部材9の前端部9fの外側面9dが後軸3の後端部3aの内側面3bに当接してノック体10の前進が防止される構造となっている。尚、本実施例では、摩擦部材9の後端面9cより固定カム12の鍔部12eが露出していることから、使用者が必然的に軸筒4を紙面100に対して傾斜させて摩擦部材9を接触することとなり、ノック体10が前進することによる誤作動が発生することなく、また使用者の顔側に向かって軸筒4の前端開口4bからペン先6が突出することも防止できた。
【0017】
また図5に示したように、摩擦部材9の摩擦部9eで摩擦を行う際には、摩擦部材9に回転する方向の力も加わるが、前述の通り本実施例の固定カム12の段部12dに、摩擦部材9の前端面9bにくい込む円錐状の突起12fを形成したことから、摩擦部材9の不要な回転を防止することができた。
【符号の説明】
【0018】
1…ボールペン、2…前軸、
3…後軸、3a…後端部、3b…内側面、
4…軸筒、4a…後端開口、4b…前端開口、
5…レフィル、6…ペン先、
7…インキ収容筒、8…コイルスプリング、
9…摩擦部材、
9a…貫通孔、9b…前端面、9c…後端面、
9d…外側面、9e…摩擦部、9f…前端部、
10…ノック体、
11…カム溝、11a…カム斜面、11b…係合部、
12…固定カム、12a…凹凸部、12b…突起、
12c…突出部、12d…段部、12e…鍔部、
12f…突起、12g…後端面、
13…回転カム、13a…カム突起、13b…噛合部、
13c…カム斜面、
100…紙面、101…筆跡。
図1
図2
図3
図4
図5
図6