(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-88692(P2016-88692A)
(43)【公開日】2016年5月23日
(54)【発明の名称】振動機トラフと上部シュートとのシール構造
(51)【国際特許分類】
B65G 27/08 20060101AFI20160418BHJP
F16J 3/04 20060101ALI20160418BHJP
F16J 15/52 20060101ALI20160418BHJP
B65G 11/00 20060101ALI20160418BHJP
【FI】
B65G27/08
F16J3/04 B
F16J15/52 Z
B65G11/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-225063(P2014-225063)
(22)【出願日】2014年11月5日
(71)【出願人】
【識別番号】000191009
【氏名又は名称】新東工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001977
【氏名又は名称】特許業務法人 関根・山本特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大野 泰嗣
【テーマコード(参考)】
3F011
3F037
3J043
3J045
【Fターム(参考)】
3F011BA02
3F011BB02
3F011BC03
3F037AA00
3F037BA03
3F037CA08
3F037CB04
3J043AA11
3J043CA12
3J043CB13
3J043DA06
3J043DA10
3J045AA14
3J045BA02
3J045CA10
3J045CB16
3J045DA03
3J045EA10
(57)【要約】
【課題】安価なゴム板を使用しながら、ゴム板の垂れ下がりや反力増加による不具合がなく、長期間にわたってシール性を確保できる振動機トラフと上部シュートとのシール構造を提供する。
【解決手段】振動機トラフに、中空屈曲部を持つゴム板からなるシールの基部を、ゴム板と当たる角部を面取りした押え板により固定し、この中空屈曲部を上部シュートに弾性的に当接させた。ゴム板は成形品であってもよく、その内部に圧縮空気や弾性材料を充填することもできる。
【選択図】
図2a
【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動機トラフに、中空屈曲部を持つゴム板からなるシールの基部を、ゴム板と当たる角部を面取りした押え板により固定し、この中空屈曲部を上部シュートに弾性的に当接させたことを特徴とする振動機トラフと上部シュートとのシール構造。
【請求項2】
上部シュートが側面から張出したフランジ部を備えたものであり、中空屈曲部を上部シュートの側面とこのフランジ部の下部とに弾性的に当接させたことを特徴とする請求項1記載の振動機トラフと上部シュートとのシール構造。
【請求項3】
上部シュートが側面から張出したフランジ部を備えたものであり、中空屈曲部をこのフランジ部の下部のみに弾性的に当接させたことを特徴とする請求項1記載の振動機トラフと上部シュートとのシール構造。
【請求項4】
中空屈曲部を持つゴム板からなるシールが、ゴムの成形品であることを特徴とする請求項1記載の振動機トラフと上部シュートとのシール構造。
【請求項5】
中空屈曲部の内部に、圧縮空気を充填したことを特徴とする請求項4記載の振動機トラフと上部シュートとのシール構造。
【請求項6】
中空屈曲部の内部に、弾性材料を充填したことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の振動機トラフと上部シュートとのシール構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動機の振動により発生する粉塵が上部シュート(ホッパ)との隙間から吹き漏れることを防止する振動機トラフと上部シュートとのシール構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば鋳物砂の搬送には、特許文献1に示されるような振動コンベヤが用いられている。また鋳造品と鋳物砂とを分離するためにも、振動機が使用されている。このような振動機は上部シュート(ホッパ)を備えており、上部シュートから鋳物砂等を振動機トラフに供給する構造となっている。このため振動機トラフと上部シュートとの間を適切にシールしないと、振動機の振動により発生する粉塵の吹き漏れが発生する。
【0003】
そこで従来から
図4aに示すように、振動機トラフ51と上部シュート52との間をシールするために、振動機トラフ51の上縁53にゴム板54を取付け、その先端を上部シュート52の側面に弾性的に押し当てる構造が用いられている。また
図5に示すように、振動機トラフ51と上部シュート52との間を帆布55によりつないでシールすることも行われている。さらに
図6に示すように、振動機トラフ51と上部シュート52に丸棒56を溶接し、ゴム板57の両端をC形に成形されたゴム部材58によって丸棒56、56に取付けた構造も用いられている。
【0004】
しかし
図4のシール構造では、ゴム板54が薄すぎると
図4bのようにゴム板54が自重により垂れ下がり、ゴム板54と上部シュート52との間に隙間が生じ、その隙間から発塵するおそれがある。逆に
図4cのようにゴム板54が厚すぎると、ゴム板54の反力により振動機の加振力を上部シュート52に強力に伝えるため、振動モータを使用せず偏心軸を使用して機械的に振動を発生する振動機の駆動部や、上部シュート52の取付部を破損してしまう可能性があった。
【0005】
また
図5のシール構造では、帆布55を取付けている押え板59、振動機トラフ51、上部シュート52等が帆布55と擦れ合うため、あるいは帆布55自体が擦れ合うため、長期間使用すると帆布55に穴あきが生じ、発塵する場合があった。さらに
図6のシール構造は複雑であり、C形に成形されたゴム部材58を少量購入しようとするとコスト高になり、多品種少量生産に適用しにくいという欠点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実公昭34−8852号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って本発明の目的は上記した従来の問題点を解決して、安価なゴム板を使用しながら、ゴム板の垂れ下がりや反力増加による不具合がなく、長期間にわたってシール性を確保できる振動機トラフと上部シュートとのシール構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するためになされた本発明の振動機トラフと上部シュートとのシール構造は、振動機トラフに、中空屈曲部を持つゴム板からなるシールの基部を、ゴム板と当たる角部を面取りした押え板により固定し、この中空屈曲部を上部シュートに弾性的に当接させたことを特徴とするものである。
【0009】
なお請求項2のように、上部シュートが側面から張出したフランジ部を備えたものであり、中空屈曲部を上部シュートの側面とこのフランジ部の下部とに弾性的に当接させた構造とすることができる。あるいは請求項3のように、中空屈曲部をこのフランジ部の下部のみに弾性的に当接させた構造とすることもできる。
【0010】
さらに、請求項4のように中空屈曲部を持つゴム板からなるシールをゴムの成形品とすることができ、請求項5のように中空屈曲部の内部に圧縮空気を充填したり、請求項6のように、中空屈曲部の内部に弾性材料を充填したりすることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の振動機トラフと上部シュートとのシール構造は、振動機トラフに、中空屈曲部を持つゴム板からなるシールの基部をゴム板と当たる角部を面取りした押え板により固定し、この中空屈曲部を上部シュートに弾性的に当接させた構造であるから、中空屈曲部の弾性を利用して常に適切な押付力を維持することができ、かつ
図4のような線接触ではなく面接触となるため、長期間にわたり安定したシール性を確保することができる。また過大な反力が生ずることもないため、振動機の駆動部や、上部シュートの取付部を破損してしまうこともない。さらに安価なゴム板を使用しているため、低コストで製作可能である。
【0012】
なお、中空屈曲部を上部シュートの側面とこのフランジ部の下部とに弾性的に当接させた構造とすれば、2カ所で接触させることができるため、シール性の向上を図ることができる。
【0013】
また中空屈曲部を持つゴム板からなるシールをゴムの成形品とし、その内部に圧縮空気を充填したり弾性材料を充填したりすれば、上部シュートへの押付力を適正に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1a】振動機トラフと上部シュートとの取り合い関係を示す正面図である。
【
図1b】振動機トラフと上部シュートとの取り合い関係を示す側面断面図である。
【
図2a】本発明の第1の実施形態を示す側面断面図である。
【
図2b】本発明の第2の実施形態を示す側面断面図である。
【
図2c】本発明の第3の実施形態を示す側面断面図である。
【
図2d】中空屈曲部を持つゴム板からなるシールの拡大側面断面図である。
【
図3】中空屈曲部を持つゴム板からなるシールをゴムの成形品とした場合の側面断面図である。
【
図4b】従来例の問題点を説明する側面断面図である。
【
図4c】従来例の他の問題点を説明する側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明の実施形態を説明する。
図1aは振動機トラフと上部シュートとの取り合い関係を示す正面図、
図1bはその側面断面図である。これらの図において、1は振動機である振動コンベヤであり、2はその上方に設けられた上部シュート(ホッパ)である。振動コンベヤ1の上部には粉粒体を搬送する振動機トラフ3が設けられ、下側にはカウンターウエイト4が設けられている。振動コンベヤ1とカウンターウエイト4とは、複数の平行リンク5とスプリング6とによって接続されている。
【0016】
カウンターウエイト4には偏心軸7の両端を支持する軸受8が設けられており、偏心軸7の偏心部を板バネ9を介して振動機トラフ3に接続している。偏心軸7を軸の端部に取付けたVプーリ10、Vベルト11、Vプーリ12を介してモータ13で回転させることにより、振動機トラフ3を振動させる。振動の方向は搬送物を持ち上げる方向であり、鋳物砂等の粉粒体は振動機トラフ3上を搬送されることとなる。
【0017】
図1bに示すように、上部シュート2の下端は振動機トラフ3の上部開口部に差し込まれるように設置されている。
図1bでは上部シュート2の下端と振動機トラフ3との間をシールするために
図4aに示した平板状のゴム板54を取付けた状態が示されているが、本発明では以下の
図2〜
図3に示す構造のシールが用いられる。
【0018】
図2aは本発明の第1の実施形態を示す側面断面図である。14aは第1の実施形態で用いられるシールである。このシール14aは帯状のゴム板15を長手方向に二つ折りにし、中空屈曲部16を形成したものである。このシール14aの重ね合わせた基部が、押え板22により振動機トラフ3の上縁に固定されている。
図2dに示すように、押え板22はゴム板15と当たる角部22aを円弧状に面取りし、ゴム板15の損傷を防止した構造となっている。
【0019】
図2aに示すように、上部シュート2は側面から張出したフランジ部18を備えたものであり、シール14aの中空屈曲部16を上部シュート2の側面17とこのフランジ部18の下部との双方に弾性的に当接させた構造となっている。このようなシール構造を採用すれば、中空屈曲部16は二ヵ所で上部シュート2に当接し、しかも当接部は面接触となる。このため確実なシール性を確保することができる。このためシール不良による発塵のおそれがない。またこのシール14aは安価なゴム板15を二つ折りにすることにより製作できるので、低コストである。
【0020】
図2bは本発明の第2の実施形態を示す側面断面図である。この実施形態ではフランジ部18はなく、シール14bの中空屈曲部16を上部シュート2の側面17のみに弾性的に当接させた構造となっている。また
図2cに示す第3の実施形態のように、シール14cの中空屈曲部16を上部シュート2のフランジ部18の下面のみに、弾性的に当接させる構造としてもよい。これらの第2、第3の実施形態では上部シュート2との当接部は片側のみであるが、第1の実施形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。
【0021】
図3に示す第4の実施形態では、中空屈曲部16を持つゴム板からなるシール14dが、ゴムの一体成形品19となっている。この一体成形品19も帯状のゴム板を長手方向に二つ折りにし、中空屈曲部16を形成した形状であるが、中空屈曲部16の長手方向の両端部が封止されている。このシール14dはそのままで、上記した実施形態と同様に用いることができる。しかし、中空部20に圧縮空気を充填することができる構造となっているため、圧縮空気圧を調整することによって上部シュート2への当接力を自由に調整することができる利点がある。
【0022】
このほか、中空部20に反発性のある弾性材料を充填することによっても、上部シュート2への当接力を自由に調整することができる。反発性のある弾性材料としてはゴムのほか、ウレタンの発泡成形体等を用いることもできる。なおこのような弾性材料の充填は、実施形態1、2、3のようなゴム板15を折り曲げた空隙21に対して行うことも可能である。
【0023】
以上に説明したように、本発明の振動機トラフと上部シュートとのシール構造は、安価でありながら長期間にわたってシール性を確保することができるものである。
【符号の説明】
【0024】
1 振動機である振動コンベヤ
2 上部シュート(ホッパ)
3 振動機トラフ
4 カウンターウエイト
5 平行リンク
6 スプリング
7 偏心軸
8 軸受
9 板バネ
10 Vプーリ
11 Vベルト
12 Vプーリ
13 モータ
14a 14b 14c 14d シール
15 ゴム板
16 中空屈曲部
17 側面
18 フランジ部
19 一体成形品
20 中空部
21 空隙
22 押え板
22a 角部