【解決手段】原料化合物の糖構造の4位と6位のヒドロキシル基に環状の保護基を導入した上で、いわゆる光延反応を利用して糖構造とフェノール構造の間を環化することにより、比較的温和な条件で、チャフロサイド類を収率良く製造することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
チャフロサイド類を製造する方法として、例えば特許文献2に記載されているような硫酸化C−配糖体を経由する方法が提案されているが、この方法では100℃以上の高温が必要であり、また収率も改善の余地を残すものであった。
即ち、本発明は、比較的温和な条件で、チャフロサイド類をより収率良く製造することができる方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、原料化合物の糖構造の4位と6位のヒドロキシル基に環状の保護基を導入した上で、いわゆる光延反応を利用して糖構造とフェノール構造の間を環化することにより、比較的温和な条件で、チャフロサイド類を収率良く製造することができることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
即ち、本発明は以下の通りである。
<1> 下記式(A)又は(B)で表されるチャフロサイド類の製造方法であって、
下記式(1−1)、(1−2A)、又は(1−2B)で表される化合物を準備する第1工程、及び前記化合物に対して光延反応により下記反応式(2)で表される反応を行う第2工程を含むことを特徴とする、チャフロサイド類の製造方法。
【化2】
(式(A)及び(B)中、R’はそれぞれ独立して水素原子又はヒドロキシル基の保護基を、kは1〜3の整数を表す。)
【化3】
(式(1−1)、(1−2A)、及び(1−2B)中、R’はそれぞれ独立して水素原子又はヒドロキシル基の保護基を、R
1はハロゲン原子、又は酸素原子若しくはハロゲン原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の炭化水素基を、Aは下記式(I)、(II)、(III)、又は(IV)で表される構造を、kは1〜3の整数を表す。)
【化4】
(反応式(2)中、R’は水素原子又はヒドロキシル基の保護基を、Aは下記式(I)、(II)、(III)、又は(IV)で表される構造を表す。)
【化5】
(式(I)〜(IV)中、R
2はそれぞれ独立して水素原子、又は窒素原子、酸素原子、若しくはハロゲン原子を含んでいてもよい炭素数1〜10の炭化水素基を、mは1〜3の整数を表す。)
<2> 前記第1工程が、下記式(r0)、(r1)、(r2A)、又は(r2B)で表される化合物に対して下記反応式(1)で表される反応を行うことを含むものである、請求項1に記載のチャフロサイド類の製造方法。
【化6】
(式(r0)、(r1)、(r2A)、及び(r2B)中、R’はそれぞれ独立して水素原子又はヒドロキシル基の保護基を、R
1はハロゲン原子、又は酸素原子若しくはハロゲン原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の炭化水素基を、Xはハロゲン原子を、kは1
〜3の整数を表す。)
【化7】
(反応式(1)中、R’はそれぞれ独立して水素原子又はヒドロキシル基の保護基を、R
3はそれぞれ独立して炭素数1〜10の炭化水素基を、Zは酸素原子又は硫黄原子を、Aは前記式(I)、(II)、(III)、又は(IV)で表される構造を表す。)
<3> 前記下記式(r0)、(r1)、(r2A)、又は(r2B)で表される化合物が、下記式で表されるイソビテキシン又はビテキシンである、請求項2に記載のチャフロサイド類の製造方法。
【化8】
【発明の効果】
【0009】
本発明により、比較的温和な条件で、チャフロサイド類を収率良く製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について説明するが、本発明の技術的範囲は、以下の具体的な実施形態にのみ限定されるものではない。
【0011】
<チャフロサイド類の製造方法>
本発明の一態様であるチャフロサイド類の製造方法(以下、「本発明の製造方法」と略す場合がある。)は、下記式(A)又は(B)で表されるチャフロサイド類を製造する方法であり、下記式(1−1)、(1−2A)、又は(1−2B)で表される化合物を準備する第1工程、及び前記化合物に対して光延反応により下記反応式(2)で表される反応を行う第2工程を含むことを特徴とする。
【化9】
(式(A)及び(B)中、R’はそれぞれ独立して水素原子又はヒドロキシル基の保護基を、kは1〜3の整数を表す。)
【化10】
(式(1−1)、(1−2A)、及び(1−2B)中、R’はそれぞれ独立して水素原子又はヒドロキシル基の保護基を、R
1はハロゲン原子、又は酸素原子若しくはハロゲン原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の炭化水素基を、Aは下記式(I)、(II)、(III)、又は(IV)で表される構造を、kは1〜3の整数を表す。)
【化11】
(反応式(2)中、R’は水素原子又はヒドロキシル基の保護基を、Aは下記式(I)、(II)、(III)、又は(IV)で表される構造を表す。)
【化12】
(式(I)〜(IV)中、R
2はそれぞれ独立して水素原子、又は窒素原子、酸素原子、若しくはハロゲン原子を含んでいてもよい炭素数1〜10の炭化水素基を、mは1〜3の整数を表す。)
【0012】
本発明者らは、チャフロサイド類におけるオキソラン構造(酸素原子を含む五員環構造)を形成するために、原料化合物の糖構造の4位と6位のヒドロキシル基に保護基を導入した上で、いわゆる光延反応を利用して糖構造とフェノール構造の間を環化することにより、温和な条件で、非常に収率良く生成物が得られることを確認している。特に炭酸エステルやアセタール等を利用して糖構造の4位と6位のヒドロキシル基に環状の保護基を導入すると、光延反応に対して非常に安定な保護基として作用するとともに、保護基を導入する反応自体が非常に効率良く進むため、結果、最終生成物であるチャフロサイド類をより収率良く製造することに繋がることを見出したのである。
なお、反応式(2)の反応物は、第1工程で準備した化合物の部分構造を意味し、反応式(2)の波線の先は、式(1−1)、(1−2A)、又は(1−2B)で表される化合物に応じた構造であることを表している。
また、式(I)〜(IV)の波線の先も、式(1−1)、(1−2A)、又は(1−2B)で表される化合物に応じた構造であることを表している。
加えて、「光延反応」とは、アゾ化合物、ホスフィン等を利用し、ヒドロキシル基を活性化して求核置換反応を進める公知の化学反応を意味するものとする。
【0013】
(チャフロサイド類)
本発明の製造方法は、式(A)又は(B)で表されるチャフロサイド類を製造する方法であるが、チャフロサイドA及びチャフロサイドBを製造するために特に有効である。
【化13】
【0014】
(第1工程)
本発明の製造方法は、下記式(1−1)、(1−2A)、又は(1−2B)で表される
化合物(以下、「式(1−1)等で表される化合物」と略す場合がある。)を準備する第1工程を含むことを特徴とするが、準備する化合物は、式(1−1)、(1−2A)、又は(1−2B)で表されるものであれば、具体的な種類は特に限定されず、目的に合わせて適宜選択することができる。
【化14】
(式(1−1)、(1−2A)、及び(1−2B)中、R’はそれぞれ独立して水素原子又はヒドロキシル基の保護基を、R
1はハロゲン原子、又は酸素原子若しくはハロゲン原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の炭化水素基を、Aは下記式(I)、(II)、(III)、又は(IV)で表される構造を、kは1〜3の整数を表す。)
【0015】
R’は、水素原子又はヒドロキシル基の保護基を表しているが、保護基の種類は特に限定されず、ヒドロキシル基の保護基として公知のものを適宜選択することができる。具体的には、メチル基、ベンジル基、p−メトキシベンジル基、tert−ブチル基、テトラヒドロピラン等のエーテル系保護基;アセチル基、ピバロイル基、ベンゾイル基等のアシル系保護基;トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、tert−ブチルジフェニルシリル基等のシリルエーテル系保護基;トシル基等のスルホン酸エステル系保護基、等が挙げられる。
【0016】
R
1はハロゲン原子、又は酸素原子若しくはハロゲン原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の炭化水素基を表しているが、「酸素原子若しくはハロゲン原子を含んでいてもよい」とは、ヒドロキシル基(−OH)、クロロ基(−Cl)等の酸素原子若しくはハロゲン原子を含む官能基を含んでいてもよいことを意味するほか、エーテル基(−O−)等の酸素原子を含む連結基を炭素骨格の内部又は末端に含んでいてもよいことを意味する。従って、「酸素原子若しくはハロゲン原子を含んでいてもよい」炭化水素基には、例えば−CH
2−CH
2−OHのようにヒドロキシル基を含んでいる炭素数2の炭化水素基、−CH
2−O−CH
3のようにエーテル基を炭素骨格の内部に含んでいる炭素数2の炭化水素基、及び−O−CH
2−CH
3のようにエーテル基を炭素骨格の末端に含んでいる炭素数2の炭化水素基等が含まれる。
R
1が炭化水素基である場合、その炭素数は、好ましくは2以上、より好ましくは3以上であり、好ましくは15以下、より好ましくは10以下、さらに好ましくは6以下である。なお、炭化水素基は、直鎖状の飽和炭化水素基に限られず、分岐構造を有していても、不飽和結合を有していてもよい。
R
1が炭化水素基である場合、炭化水素基に含まれる官能基としては、ヒドロキシル基(−OH)、メトキシ基(−OCH
3)、エトキシ基(−OC
2H
5)、カルボニル基(−CO−)、アルデヒド基(−CHO)、カルボキシル基(−COOH)、クロロ基(−Cl)、ブロモ基(−Br)、ヨード基(−I)等が挙げられる。
具体的なR
1として、下記式で表される構造が挙げられる。
【化15】
【0017】
Aは下記式(I)、(II)、(III)、又は(IV)で表される構造を表している。
【化16】
(式(I)〜(IV)中、R
2はそれぞれ独立して水素原子、又は窒素原子、酸素原子、若しくはハロゲン原子を含んでいてもよい炭素数1〜10の炭化水素基を、mは1〜3の整数を表す。)
【0018】
R
2はそれぞれ独立して水素原子、又は窒素原子、酸素原子、若しくはハロゲン原子を含んでいてもよい炭素数1〜10の炭化水素基を表しているが、「窒素原子、酸素原子、若しくはハロゲン原子を含んでいてもよい」とは、ニトロ基(−NO
2)、アルデヒド基(−CHO)、クロロ基(−Cl)等の窒素原子、酸素原子、若しくはハロゲン原子を含む官能基を含んでいてもよいことを意味するほか、エーテル基(−O−)等の酸素原子を含む連結基を炭素骨格の内部又は末端に含んでいてもよいことを意味する。
R
2が炭化水素基である場合、その炭素数は、好ましくは8以下、より好ましくは6以下である。なお、炭化水素基は、直鎖状の飽和炭化水素基に限られず、分岐構造を有していても、不飽和結合を有していてもよい。特にA中のフェニル基等と共役した構造であることが好ましい。
R
2が炭化水素基である場合、炭化水素基に含まれる官能基としては、ニトロ基(−NO
2)、メトキシ基(−OCH
3)、エトキシ基(−OC
2H
5)、アルデヒド基(−CHO)、フルオロ基(−F)等が挙げられる。
【0019】
第1工程における式(1−1)等で表される化合物の準備方法は、特に限定されず、式(1−1)等で表される化合物を入手しても、或いは式(1−1)等で表される化合物を自ら調製してもよい。
また、式(1−1)等で表される化合物の調製方法も、特に限定されず、公知の原料化合物を用い、公知の合成方法を適宜組み合わせて調製することができるが、下記反応式(1)で表される反応を含む調製方法であることが好ましい。
なお、反応式(1)の反応物は、糖構造を有する化合物(以下、「原料化合物」と略す場合がある。)を意味し、反応式(1)の波線の先は特に限定されないことを意味する。また、反応式(1)のR
3Z−A−ZR
3は、糖構造の4位と6位のヒドロキシル基に保護基を導入するための化合物(以下、「保護化合物」と略す場合がある。)を意味しており、反応式(1)で表される反応は、酸触媒存在下で糖構造の4位と6位のヒドロキシル基に環状の保護基を導入する反応であることを表している。
また、保護化合物として、R
3−CH(OMe)
2を導入すること及びベンジルアルデ
ヒドを常法に従い反応させベンジル基を導入することもできる。
【化17】
(反応式(1)中、R’はそれぞれ独立して水素原子又はヒドロキシル基の保護基を、R
3はそれぞれ独立して炭素数1〜10の炭化水素基を、Zは酸素原子又は硫黄原子を、Aは前記式(I)、(II)、(III)、又は(IV)で表される構造を表す。)
【0020】
反応式(1)で表される反応に使用する原料化合物、保護化合物、酸触媒、及び溶媒の種類、使用量、並びに反応条件等は、特に限定されず、公知のものを適宜採用することができる。
原料化合物としては、下記式(r0)、(r1)、(r2A)、又は(r2B)で表される化合物が挙げられる。
【化18】
(式(r0)、(r1)、(r2A)、及び(r2B)中、R’はそれぞれ独立して水素原子又はヒドロキシル基の保護基を、R
1はハロゲン原子、又は酸素原子若しくはハロゲン原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の炭化水素基を、Xはハロゲン原子を、kは1〜3の整数を表す。)
具体的な原料化合物としては、下記式で表されるイソビテキシン又はビテキシンであることが特に好ましい。イソビテキシン又はビテキシンは、入手し易く、保護基(例えば、4位と6位のヒドロキシル基以外のヒドロキシル基の保護)の導入や脱保護を行わなくてもチャフロサイド類を製造できるため、非常に効率的にチャフロサイド類を製造することができる。
【化19】
【0021】
保護化合物としては、下記式(pi)、(pii)、(piii)、又は(piv)で表される化合物が挙げられる。
【化20】
(式(pi)〜(piv)中、R
2はそれぞれ独立して水素原子、又は窒素原子、酸素原子、若しくはハロゲン原子を含んでいてもよい炭素数1〜10の炭化水素基を、R
3はそれぞれ独立して炭素数1〜10の炭化水素基を、Zは酸素原子又は硫黄原子を、mは1〜3の整数を表す。)
なお、R
3はそれぞれ独立して炭素数1〜10の炭化水素基を表しているが、R
3の炭素数は、好ましくは8以下、より好ましくは6以下、さらに好ましくは4以下である。
具体的な保護化合物としては、下記式で表されるベンズアルデヒドジメチルアセタールであることが特に好ましい。
【化21】
【0022】
反応式(1)で表される反応における保護化合物の使用量は、原料化合物に対して(物質量換算)、通常0.01倍以上、好ましくは0.1倍以上、より好ましく1倍以上であり、通常100倍以下、好ましくは50倍以下、より好ましくは5倍以下である。上記範囲内であると、収率良く反応を進めやすくなる。
【0023】
酸触媒としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘプタン酸等のアルカン酸;クロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、フルオロ酢酸、ジフルオロ酢酸等のハロゲン化アルカン酸;安息香酸等のアリールカルボン酸;メタンスルホン酸等のアルキルスルホン酸;パラトルエンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸ピリジニウム(PPTS)、ベンゼンスルホン酸等のアリールスルホン酸、塩酸、硫酸等の無機酸が挙げられる。
具体的な酸触媒としては、パラトルエンスルホン酸ピリジニウム(PPTS)が特に好
ましい。
【0024】
反応式(1)で表される反応における酸触媒の使用量は、原料化合物が十分溶解可能な量であればよく、原料化合物に対して(物質量換算)、通常1倍以上、好ましくは5倍以上であり、通常1000倍以下、好ましくは100倍以下である。上記範囲内であると、収率良く反応を進めやすくなる。
【0025】
反応式(1)で表される反応における溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;ヘキサン、ペンタン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;ジエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、シクロペンチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒;塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン等の脂肪族ハロゲン化炭化水素系溶媒;クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ベンゾトリフルオリド等の芳香族ハロゲン化炭化水素類系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒;N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N、N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒が挙げられる。
具体的な溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)が特に好ましい。
【0026】
反応式(1)で表される反応の反応温度は、通常0℃以上、好ましくは0℃以上であり、通常100℃以下、好ましくは70℃以下である。
反応式(1)で表される反応の反応時間は、通常5分以上、好ましくは10分以上、より好ましくは30分以上であり、通常48時間以下、好ましくは5時間以下、より好ましくは3時間以下である。
【0027】
(第2工程)
本発明の製造方法は、第1工程で準備したに対して光延反応により下記反応式(2)で表される反応を行う第2工程を含むことを特徴とする。
【化22】
(反応式(2)中、R’は水素原子又はヒドロキシル基の保護基を、Aは下記式(I)、(II)、(III)、又は(IV)で表される構造を表す。)
【0028】
第2工程における光延反応は、使用する試薬及び溶媒の種類、使用量、並びに反応条件等は、特に限定されず、公知のものを適宜採用することができる。
光延反応に使用する試薬としては、ホスホラン(単独)、アゾ化合物とホスフィンの組み合わせ等が挙げられる。
ホスホランとしては、(シアノメチレン)トリメチルホスホラン、(シアノメチレン)トリブチルホスホラン等が挙げられる。
アゾ化合物としては、ジエチルアゾジカルボキシレート、ジイソプロピルアゾジカルボキシレート等のジ低級アルキルアゾジカルボキシレート;N,N’−(アゾジカルボニル)ジピペリジン等のヘテロアリールアゾジカルボニルが挙げられる。
ホスフィンとしては、トリフェニルホスフィン等のトリアリールホスフィン;トリn−ブチルホスフィン等のトリ低級アルキルホスフィンが挙げられる。
【0029】
第2工程においてアゾ化合物とホスフィンの組み合わせを使用する場合、アゾ化合物の使用量は、反応物に対して(物質量換算)、通常0.1倍以上、好ましくは0.5倍以上であり、通常5倍以下、好ましくは2倍以下である。上記範囲内であると、収率良く反応を進み、副生成物の量も抑えられる。
また、ホスフィンの使用量は、反応物に対して(物質量換算)、常0.1倍以上、好ましくは0.5倍以上であり、通常5倍以下、好ましくは2倍以下である。上記範囲内であると、収率良く反応を進み、副生成物の量も抑えられる。
【0030】
第2工程における溶媒としては、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶媒が挙げられる。
【0031】
第2工程の反応温度は、通常0℃以上、好ましくは20℃以上であり、好ましくは100℃以下、より好ましくは70℃以下である。
第2工程の反応時間は、通常5分以上、好ましくは1時間以上、より好ましくは5時間以上であり、好ましくは2日以下、より好ましくは1日以下である。
【0032】
本発明の製造方法は、前述した第1工程及び第2工程を含むものであれば、その他については特に限定されず、目的に応じて様々な工程を含んでいてもよい。
例えば、保護基を取り除く脱保護工程、得られた生成物を精製する精製工程等が挙げられる。
【実施例】
【0033】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0034】
<実施例1:チャフロサイドAの製造>
(ベンザルイソビテキシンの準備)
触媒量のパラトルエンスルホン酸ピリジニウム(PPTS)存在下、イソビテキシン(432mg,1mM)とベンズアルデヒドジメチルアセタール(304mg,2mM)の無水N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)溶液(8mL)を撹拌しながら、2時間、50℃に保った。反応液を酢酸エチル(AcOEt)溶液(100mL)に注ぎ、それを飽和食塩水(100mL)で洗浄した。AcOEt溶液を無水硫酸マグネシウム(MgSO
4)で乾燥後、濃縮乾固し、反応成績体をAcOEtで再結晶してベンザルイソビテキシン(収率:>99%)を得た。
【化23】
【0035】
(ベンザルイソビテキシンの光延反応)
ベンザルイソビテキシンとジエチルアゾジカルボキシレート(344mg,2mM)の無水テトラヒドロフラン(THF)溶液(100mL)に、トリフェニルホスフィン(502mg,2mMin無水THF溶液(2mL))を室温にて滴下した。その後、一夜5
0℃にて撹拌した。反応液を減圧下濃縮乾固し、反応成績体をSiO
2(150cc)カラムクロマト(展開溶媒:1)CHCl
31000mL、2)4%CHCl
3−MeOH)で分離、精製し、メタノールで再結晶して針状晶のベンザルチャフロサイドA(収率:>99%)を得た。
【化24】
【0036】
(チャフロサイドAの合成)
ベンズチャフロサイドA(502mg,1mM)を80%酢酸溶液(300mL)中で37℃にて20時間撹拌した。反応溶液を減圧下(40℃以下)濃縮し、適量の酢酸に生成物が溶解している状態にメタノールを添加して、静置した。その後、80℃にて析出物を乾燥し(反応副生成物であるベンズアルデヒドを除去。この段階で純度98%程度)、反応成績体を含水メタノールで再結晶して、約370mgの針状晶のチャフロサイドA(純度:≧99%)を得た。収率は、95%であった。
【化25】
【0037】
<実施例2:チャフロサイドBの製造>
イソビテキシンをビテキシンに置き換えた以外は、実施例1と同様の方法により、ベンザルビテキシン(収率:>99%)を合成し、得られたベンザルビテキシンからベンザルチャフロサイドB(収率:94%)を得て、チャフロサイドB(純度:≧99%)を製造した。
【化26】
【0038】
<比較例1>
ベンザルイソビテキシンをイソビテキシンに置き換えた以外は、実施例1の「光延反応」と同様の方法により、チャフロサイドAを合成した。収率は40%程度であった。
【化27】
【0039】
<比較例2>
ベンザルイソビテキシンをビテキシンに置き換えた以外は、実施例1の「光延反応」と同様の方法により、チャフロサイドBを合成した。収率は40%程度であった。
【化28】