【実施例】
【0018】
汚染物質のモデル化合物として、National Institute of Standards and Technology(NIST)から入手したStandard Reference Materials(SRM)1975を用いて評価を行った。SRM1975の詳細については、NISTのウェブサイトより入手可能である。
【0019】
<実施例1>
汚染物質による表皮細胞の細胞傷害に対する緩和作用
1、試験の概要
汚染物質曝露による表皮細胞の細胞傷害に対する、各種パントテン酸およびその誘導体の緩和作用を評価した。
2、実験方法
表皮細胞に対して表1に記載の試料およびSRM1975を添加し、24時間培養した。その後、表皮細胞の生存率をMTT法により検出し、各試料の緩和作用を、試料およびSRM1975未処理細胞に対する生存率で評価した。
【0020】
3、結果
結果を表1に示した。SRM1975未処理での表皮細胞の生存率を比較対象として、各種パントテン酸及びその誘導体0.06〜0.50mmol/LとSRM1975の混合物を処理した表皮細胞の生存率は、SRM1975のみ(各種パントテン酸及びその誘導体が0.00mmol/L)を処理した表皮細胞の生存率に比べて、有意に細胞生存率が向上した。つまり、いずれのパントテン酸およびその誘導体においても、SRM1975処理による細胞傷害に対する緩和作用が認められた。パントテン酸およびその誘導体の中でも、特にジカルボエトキシパントテン酸エチルはその作用が顕著であった。
【0021】
【表1】
【0022】
<実施例2>
汚染物質による表皮細胞のCYP1過剰誘導に対する抑制作用
1、試験の概要
汚染物質曝露による表皮細胞のCYP1過剰誘導に対する、各種パントテン酸およびその誘導体の抑制作用を評価した。
2、実験方法
表皮細胞に対して表2に記載の試料およびSRM1975を添加し、24時間培養した。その後、Realtime RT−PCR法(Applied Biosystem社)により、CYP1の遺伝子発現を評価した。なお、内部標準物質としてCyclophillinを用い、ΔΔCT法(実験医学別冊 原理からよくわかるリアルタイムPCR実験ガイド、株式会社羊土社、p.34〜38)により解析を行った。各試料のCYP1誘導抑制作用を、試料およびSRM1975未処理細胞に対する発現比で評価した。
3、結果
結果を表2に示した。いずれのパントテン酸およびその誘導体においても、SRM1975処理によるCYP1に対する誘導抑制作用が認められた。
【0023】
【表2】
【0024】
<実施例3>
表皮細胞での汚染物質を代謝物による免疫細胞での免疫過剰応答を抑制作用
1、試験の概要
汚染物質曝露による表皮細胞のCYP1代謝物による免疫細胞での免疫過剰応答に対する、ジカルボエトキシパントテン酸エチルの抑制作用を評価した。
【0025】
2、実験方法
3次元培養表皮モデルに対して表3および表4に記載の試料およびSRM1975を添加し、48時間培養した。その後、3次元培養表皮モデルの生存率をアラマーブルー法(Invitrogen社)により検出し、各試料の3次元培養表皮モデルにおける細胞傷害緩和作用を、試料およびSRM1975未処理モデルに対する生存率で評価した。
さらにこの時、試料およびSRM1975を添加し、3次元培養表皮モデルを48時間培養した培養上清を回収し、この培養上清中に免疫細胞(THP−1)を分散させ、24時間培養した。培養後の免疫細胞は、フローサイトメトリー法によりCD86を陽性細胞の数を測定した。同時に、内部標準としてMouse IgGを、また免疫細胞の生存率はPI法により測定した。
【0026】
3、結果
3次元培養表皮モデルの生存率の結果を表3に示した。SRM1975未処理での3次元培養表皮モデルの生存率を比較対象として、ジカルボエトキシパントテン酸エチル2%とSRM1975の混合物を処理した3次元培養表皮モデルの生存率は、SRM1975のみ(ジカルボエトキシパントテン酸エチル0%)を処理した3次元培養表皮モデルの生存率に比べて、細胞生存率が向上した。つまり、3次元培養表皮モデルにおいても表皮細胞同様に、SRM1975処理による細胞傷害に対するジカルボエトキシパントテン酸エチルの緩和作用が認められた。
【0027】
さらに、CYP1代謝物によるCD86過剰誘導抑制作用の結果を表4に示した。SRM1975未処理での3次元培養表皮モデルの培養上清を処理した免疫細胞のCD86を比較対象として、ジカルボエトキシパントテン酸エチル2%とSRM1975の混合物を処理した3次元培養表皮モデルの培養上清を処理した免疫細胞のCD86は、SRM1975のみ(ジカルボエトキシパントテン酸エチル0%)を処理した3次元培養表皮モデルで過剰に誘導されたCD86が有意に減少した。つまり、免疫細胞において、SRM1975処理によるCD86過剰誘導に対するジカルボエトキシパントテン酸エチルの抑制作用が認められた。
【0028】
【表3】
【0029】
【表4】
【0030】
以下に、本発明の汚染防止剤を配合した汚染防止用化粧用及び汚染防止用皮膚外用剤の応用例を示す。配合量は質量%である。実施例4〜10は、いずれも実施例1〜3に記載の評価方法により、汚染物質曝露による表皮細胞傷害の抑制効果が確認された。
【0031】
<実施例4>
汚染防止用化粧水
ジカルボエトキシパントテン酸エチル 0.01(質量%)
スクワラン 0.20
モノラウリン酸デカグリセリル 2.00
ヒアルロン酸ナトリウム 0.20
1,3−ブチレングリコール 3.00
エチルアルコール 10.00
防腐剤 適量
香料 適量
精製水 残部
(調製方法)50℃で均一になるまで混合し、室温まで冷却後、調製を終了する。
【0032】
<実施例5>
汚染防止用乳液
油相 ジカルボエトキシパントテン酸エチル 0.3(質量%)
パントテノール 0.3
d−δ−トコフェロール 0.1
スクワラン 5.0
2−エチルヘキサン酸セチル 5.0
ジメチルポリシロキサン(100mPa・s) 0.5
パルミチン酸セチル 0.5
ベヘニルアルコール 1.5
ステアリン酸 0.5
親油型モノステアリン酸グリセリル 1.0
モノステアリン酸POE(20)ソルビタン 1.0
テトラオレイン酸POE(40)ソルビタン 1.5
水相 プロピレングリコール 7.0
キサンタンガム 0.1
防腐剤 適量
精製水 残部
(調製方法)油相、水相をそれぞれ80℃で均一に溶解する。油相を撹拌しながら水相を添加し、均一になるまで撹拌後、室温まで冷却し、調製を終了する。
【0033】
<実施例6>
汚染防止用クリーム
油相 ジカルボエトキシパントテン酸エチル 0.5(質量%)
スクワラン 3.0
べヘニルアルコール 4.0
ワセリン 3.0
流動パラフィン 15.0
水相 モノステアリン酸POE(20)ソルビタン 3.0
1,3−ブチレングリコール 3.0
防腐剤 適量
香料 適量
精製水 残部
(調製方法)油相、水相をそれぞれ80℃で均一に溶解する。油相を撹拌しながら水相を添加し、均一になるまで撹拌後、室温まで冷却し、調製を終了する。
【0034】
<実施例7>
汚染防止用美容液
油相 パントテノール 0.1(質量%)
スクワラン 1.0
べヘニルアルコール 4.0
ワセリン 3.0
流動パラフィン 15.0
水相 モノステアリン酸POE(20)ソルビタン 3.0
モノラウリン酸デカグリセリル 1.0
キサンタンガム 0.1
1,3−ブチレングリコール 10.0
防腐剤 適量
香料 適量
精製水 残部
(調製方法)水中油型乳化組成物の製法の常法に従い調製した。
【0035】
<実施例8>
汚染防止用美容オイル
ジカルボエトキシパントテン酸エチル 3.0(質量%)
ミリスチン酸イソセチル 10.0
ホホバ油 5.0
天然ビタミンE 0.1
スクワラン 残部
(調製方法)全ての成分を加温し、均一になるまで混合し、調製した。
【0036】
<実施例9>
汚染防止用サンスクリーンクリーム
油相 ジカルボエトキシパントテン酸エチル 0.5(質量%)
パントテノール 0.5
流動パラフィン 7.0
デカメチルシクロペンタシロキサン 3.0
セチルアルコール 4.0
縮合リシノール酸ヘキサグリセリル 0.5
POE(20)セチルエーテル 1.0
パラメトキシ桂皮酸オクチル 7.0
粉体相 酸化チタン 3.0
水相 セチル硫酸ナトリウム 1.0
ステアロイルメチルタウリンナトリウム 0.3
1,3−ブチレングリコール 5.0
キサンタンガム 0.3
防腐剤 適量
精製水 残部
(調製方法)油相、水相をそれぞれ80℃で均一に溶解する。粉体相を油相中に添加した後、油相を撹拌しながら水相を添加し、均一になるまで撹拌後、室温まで冷却し、調製を終了する。
【0037】
<実施例10>
汚染防止用頭皮美容液
油相 ジカルボエトキシパントテン酸エチル 0.5(質量%)
パントテノール 0.5
リン酸セチル 0.7
セタノール 0.5
ホホバ種子油 3.5
ラウリン酸メチルヘプチル 2.0
水相 アルギニン 0.55
1,3−ブチレングリコール 5.0
フェノキシエタノール 0.4
カルボマー 0.2
防腐剤 適量
精製水 残部
(調製方法)油相、水相をそれぞれ80℃で均一に溶解する。油相を撹拌しながら水相を添加し、均一になるまで撹拌後、室温まで冷却し、調製を終了する