【実施例1】
【0009】
以下に、樹脂被覆鋼管の被覆剥離装置1の好適実施例について図面を参照しながら説明する。
この樹脂被覆鋼管の被覆剥離装置1は、樹脂被覆鋼管10に外嵌する筒状の保持部材3と、該保持部材3を樹脂被覆鋼管10の外周に沿って回転させる回転操作手段5とからなっている。
【0010】
[樹脂被覆鋼管]
樹脂被覆鋼管10は、
図5に例示するように、鋼管10Aの表面に樹脂被覆層11を有するもので、鋼管の外面を、例えば硬質塩化ビニル等で被覆したもの、その他の1種または複数の樹脂を用い、1層または複数層の樹脂層で被覆された鋼管からなっている。
【0011】
[保持部材]
保持部材3は、樹脂被覆鋼管10の外周面に沿って隙間なく外嵌して樹脂被覆鋼管10を固定するための筒体からなっている。
図示例では、保持部材3は円筒形状からなっているが、樹脂被覆鋼管10を保持する中空部を形成する内周面2(2A、2B)が樹脂被覆鋼管10の外周面に沿う断面円形状となっていればよく、保持部材3の全体形状は角筒形状や、その他任意の立体形状であってもよい。
【0012】
[雄ねじ部]
前記保持部材3の内周面2の先端側で、保持部材3の軸線を中心にした周方向に、環状に連続し、または間欠して螺旋状に延びる1または複数条の雄ねじ部4が突設されている(
図1、
図2、
図4参照)。
そして、保持部材3の内周面2は樹脂被覆鋼管10の外周面と接する径に設定されており、雄ねじ部4は、樹脂被覆層11に食い込むが鋼管本体とは衝合しない突出長に設定されていることが好ましい。
【0013】
[構成片]
本実施例では、保持部材3は軸線に沿って略二等分された一対の構成片3A、3Bからなっており、該構成片3A、3Bは一端側でそれぞれヒンジ片HがピンP1、P2によって枢着されている。
前記構成片3A、3Bは、内周面が樹脂被覆鋼管10の外周面に略隙間無く沿うように断面半円弧状に形成されている。
【0014】
各構成片3A、3Bには、構成片3A、3Bを固定して筒状に形成するための一対の固定部6として一対の固定用構成部6A、6Bが形成されている。
一対の固定用構成部6A、6Bは、一方をネジ孔のみとし、他方を前記ネジ孔と整合するネジ孔に螺合した長いネジとする構成でもよいが、本実施例では、前記特許第5584892号と同様に、一方の固定用構成部6Aが、一方の構成片3Bに形成した保持部材3の軸方向に延びる凹溝にピンP3で枢着したチャンネル状の係合片62と、該係合片62に螺合して保持部材3の軸方向に延びる頭部63を有するネジ64とから構成されている(
図3、
図7参照)。
【0015】
また、他方の固定用構成部6Bを、前記ネジ64の頭部を係止する段部66を設けた溝65としている(
図4参照)。
そして、前記構成片3A、3Bをヒンジ片Hを介して円筒状に整合し、構成片3Aの前記係合片62を横倒して外周面から突出しないように、凹溝61内に没入させ、同時に横倒するネジ64を対向する構成片3Bの溝65内に没入させる(
図3参照)。
【0016】
この際にネジ64の頭部は溝65の段部66に掛止められるので、掛け止められた状態でネジ64を締め付けることで前記構成片3A、3Bを相互に緊締して固定し、筒状の保持部材3に組み立てることができる。
この保持部材3は、樹脂被覆鋼管10の所望位置でその外周に固定される。
【0017】
本実施例では、一方の構成片3Aの内周面2Aの基端側で左右両端側に2個所、他方の構成片3Bの内周面2Bの基端側で中央に1個所の合計3個所に雄ねじ部4が突設されており、構成片3A、3Bを筒状に組み合わせた際の保持部材3の内周面2に等間隔(120度間隔)に配置されている。
そして、上記3個所の雄ねじ部4の歯は、螺旋状に連続するねじの歯と整合するようにその線上に形成されている。
図示例では、保持部材3は二等分された場合を例示したが、3つ以上の分割構成片を組み合わせる構造でもよく、また分割構成片は、等分された構成でなくてもよい。
【0018】
[切削台部]
前記一方の構成片3Aの先端には、樹脂被覆鋼管10の樹脂被覆層11を切除するバイト等の切削刃Cを備えた切削台部7を固定している。
該切削台部7の切削刃Cには、樹脂被覆鋼管10の軸心方向に向かって刃先の深度を上下に調整する深度調整部8を設けている。
深度調整部8は、切削台部7に支持された切削刃Cの刃先を上下に昇降して所望位置で固定するものであればよく、切削刃を固定した部材の全体を昇降させる構造でも切削刃だけを昇降させる構造でもよい。
図示例では、切削台部7の上部に形成された調整ネジ9を回すことで切削刃Cを固定した部分を垂直に押し下げる構造となっているが、その他、公知の構成を用いることができる。
【0019】
[回転操作手段]
保持手段3には、該保持部材3の軸線、即ち、保持部材3に固定されて保持手段3の軸線と一致する樹脂被覆鋼管10の軸線を中心に樹脂被覆鋼管10の外周面に沿って環状に回転するための回転操作手段5が設けられている。
回転操作手段5は、本実施例の場合、保持部材3の外周面に形成された環状溝31に沿って摺動し回転する回転部材5Aと、該回転部材5Aに連動可能に連結された逆転防止用の歯止め部5Bとからなっている。
【0020】
保持部材3には、厚み方向の中途位置に、該保持部材3の軸線を中心に外周に沿って凹設された1つの連続する環状溝31が形成されている。
該環状溝31には、環状溝31に沿って摺動し、保持部材3のまわりを一周する回転部材5Aが設けられている。
【0021】
保持部材3の外周で、前記環状溝31と平行に並んでラチェット状の歯部32が環状に形成されている。
一方、前記回転部材5Aには、歯止め部5Bが連結されている。
該歯止め部5Bは、回転部材5Aの正回転によって歯止め部5Bの先端の爪部がラチェット状の歯部32の直角に立ち上がる面に規制されて保持部材3と一体的になり、逆回転によって保持部材3とは別に回転部材5Aにのみ連動し、歯止め部5Bの爪部が歯部32の徐々に隆起する傾斜面に倣って移動して逆方向に空転するラチェット構造からなっている。
【0022】
即ち、歯止め部5Bは、先端の爪部が下向きに付勢されて昇降自在に取り付けられており、回転部材5Aの回転と連動し、正回転時には、歯止め部5Bの爪部が前記歯部32の略直角に立ち上がる面32Aに衝合して規制され、回転部材5Aを保持部材3と一体的に回転させる。
そして、回転部材5Aが逆回転しようとする場合には、歯部32の傾斜する面32Bに沿ってガイドされて上昇して歯部32を乗り越えて、保持部材3とは連動せずに逆方向に回転する(
図6参照)。
【0023】
本実施例では、上記環状溝31とラチェット状の歯部32とは、前記構成片3A、3Bにそれぞれ分割した状態で形成されており、構成片3A、3Bの組立て時に、それぞれ一連に整合して連続する環状溝31や環状に並んだラチェット状の歯部32となるように配置されている。
また、前記固定部6とヒンジ片Hは、前記環状溝31と歯部32の間に介設しないことが望ましく、本実施例では、環状溝31と歯部32が隣接し、該歯部の外側に配置されている。
【0024】
本実施例では、回転部材5Aは、下端に環状溝31を摺動する断面円弧状の摺動面が形成されており、上部には、長尺の操作レバー50を螺合等で連結するための連結部51が形成されている。
操作レバー50を用いることで、回転部材5Aの回転が容易となる。
【0025】
[使用法]
上記構成からなるので、まず樹脂被覆鋼管10を図示しない固定手段で固定する。
次いで、固定された樹脂被覆鋼管10の被剥離個所の先端に保持部材3の基端が揃うように構成片3A、3Bで樹脂被覆鋼管10を外嵌し固定部6で固定する。
これにより、保持部材3の中空部3Aで樹脂被覆鋼管10を固定し、保持部材3の基端に形成された雄ねじ部4が、樹脂被覆鋼管10の被剥離部の先端の樹脂被覆層11に食い込ませる。
【0026】
次いで、回転部材5Aを操作レバー50で正回転方向に動かすと、歯止め部5Bが保持部材3の外周に形成されたラチェット状の歯部32の垂直面側に掛け止められて、保持部材3を樹脂被覆鋼管10の軸線を中心に回転させることができる。
この保持部材3の回転により、前記雄ねじ部4が樹脂被覆層11にねじに沿った螺旋状に進行するので、保持部材3を螺進させることができる。
【0027】
上記保持部材3の螺進によって、保持部材3の基端に設けた切削刃Cで樹脂被覆層11を切削して鋼管から剥離する。
また、前記操作レバー50を逆回転させると、歯止め部5Bが保持部材3の外周に形成されたラチェット状の歯部32の徐々に隆起する傾斜面に倣って空転するので、保持部材3を逆戻り方向には回転させない(
図6参照)。
【0028】
上記実施例で、雄ねじ部4は、螺旋状の雄ねじを、部分的に3個所だけ残して平行する複数のねじ部としたが、前述のように1連の雄ねじでもよいし、複数に分かれて離間するねじ部としてもよい。
また、保持部材3の回転操作手段5は、本実施例ではラチェット構造を用いたが、保持部材3を回転するものであればよく、例えば複数の操作レバーを連結したり、その他公知の回転手段を用いることができる。
その他、この発明は、その要旨に変更しない範囲で種々設計変更しうること勿論である。