【解決手段】光コネクタは、他のコネクタと所定の接続方向に沿って接続される光コネクタである。この光コネクタは、他のコネクタに接続されるガイドピンが挿通される挿通孔を有するフェルールと、フェルールにおける他のコネクタの反対側において挿通孔に挿通されたガイドピンを保持する保持穴21を備えたピンキーパー20とを備えている。ピンキーパー20は、保持穴21が形成された一対の側部22と、一対の側部22の端部間を接続する底部23とを有する。保持穴21は、互いに対向する側部22の内側面を切り欠いた形状となっている。
他のコネクタに接続されるピンが挿通される挿通孔を有するフェルールを備え、前記ピンの接続によって前記他のコネクタと接続される光コネクタに設けられるピンキーパーであって、
前記フェルールにおける前記他のコネクタの反対側において前記挿通孔に挿通された前記ピンを保持する保持穴と、
前記保持穴が形成された一対の側部と、
一対の前記側部の端部間を接続する底部と、を備え、
前記保持穴は、互いに対向する前記側部の内側面を切り欠いた形状となっている、
ピンキーパー。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[本発明の実施形態の説明]
最初に、本発明の実施形態の内容を列記して説明する。(1)本発明の一側面に係る光コネクタは、他のコネクタと所定の接続方向に沿って接続される光コネクタであって、他のコネクタに接続されるピンが挿通される挿通孔を有するフェルールと、フェルールにおける他のコネクタの反対側において挿通孔に挿通されたピンを保持する保持穴を有するピンキーパーと、を備え、ピンキーパーは、保持穴が形成された一対の側部と、一対の側部の端部間を接続する底部と、を有し、保持穴は、互いに対向する側部の内側面を切り欠いた形状となっている。
【0013】
本発明の一側面に係る光コネクタでは、ピンキーパーが2つの側部と底部とを有しており、2つの側部の内側面に保持穴が形成されている。この保持穴は、ピンキーパーの側部の内側面を切り欠いた形状となっている。よって、2つの側部を開くように広げると、側部が撓んで保持穴が広がることとなり、この状態でピンを保持穴に挿入させることができる。また、ピンが保持穴に挿入されて保持された状態において上記同様に2つの側部を開くように広げると、保持穴が広がるのでピンを保持穴から引き抜くことができる。このように、2つの側部を開くように広げることによって、フェルールの挿通孔に挿通されたピンの保持及びその解除を行うことができる。従って、フェルールに対するピンの着脱を行うことができる。
【0014】
(2)上記の光コネクタにおいて、側部における保持穴の外側の厚みは、底部の厚みよりも薄くてもよい。この場合、2つの側部を開くように広げたときに、保持穴の外側の部分を撓ませ易くすることができ、保持穴の拡張を容易に行うことができる。従って、ピンキーパーの保持穴に対するピンの挿抜を容易に行うことができるので、フェルールに対するピンの着脱を容易に行うことができる。
【0015】
(3)上記の光コネクタにおいて、フェルール及びピンキーパーを収容するハウジングを備え、ハウジングは、一対の側部間を広げる拡張部材を内部に挿入させる第1開口を有しており、一対の側部は、拡張部材が第1開口から挿入されて各側部の内側に当接することによって、押し広げられてもよい。この場合、ハウジングの第1開口から拡張部材を内部に挿入し、拡張部材を各側部の内側に当接させて保持穴を拡張させることにより、保持穴に対するピンの挿抜を行うことができる。
【0016】
(4)上記の光コネクタにおいて、拡張部材は、ピンキーパーをハウジングの内側に押さえつける押さえ部を有しており、ハウジングは、押さえ部を内部に挿入させる第2開口を第1開口の反対側に有してもよい。この場合、押さえ部を第2開口からハウジングの内部に挿入し、押さえ部によって反対側からピンキーパーを押さえつけた状態で、拡張部材により保持穴を拡張させることができる。このように保持穴の拡張時に押さえ部で反対側からピンキーパーを押さえつけることにより、拡張時におけるピンキーパーの移動を抑制することができる。従って、ピンキーパーの位置を安定させた状態で保持穴の拡張を行うことができるので、保持穴に対するピンの挿抜を容易に行うことができる。
【0017】
(5)上記の光コネクタにおいて、ハウジングの外周部の少なくとも一部を覆うアウターハウジングを更に有し、アウターハウジングは、ハウジングの第1開口を外部に露出させる開口部を有してもよい。この場合、アウターハウジングの開口部から拡張部材を内部に挿入することによって保持穴を拡張させることができる。
【0018】
(6)上記の光コネクタにおいて、ハウジングの外周部の少なくとも一部を覆うアウターハウジングを更に有し、アウターハウジングは、ハウジングの第2開口を外部に露出させる開口部を有してもよい。この場合、アウターハウジングの開口部から押さえ部を内部に挿入することによってピンキーパーを押さえつけることができる。
【0019】
(7)上記の光コネクタにおいて、接続方向における一方側から見たピンキーパーの形状は、接続方向における他方側から見たピンキーパーの形状と同一であってもよい。このように接続方向における表裏のピンキーパーの形状が同一である場合、ピンキーパーの表裏を気にせずにピンキーパーを光コネクタに搭載することができる。従って、ピンキーパーの搭載を容易に行うことができる。
【0020】
(8)本発明の一側面に係るピンキーパーは、他のコネクタに接続されるピンが挿通される挿通孔を有するフェルールを備え、ピンの接続によって他のコネクタと接続される光コネクタに設けられるピンキーパーであって、フェルールにおける他のコネクタの反対側において挿通孔に挿通されたピンを保持する保持穴と、保持穴が形成された一対の側部と、一対の側部の端部間を接続する底部と、を備え、保持穴は、互いに対向する側部の内側面を切り欠いた形状となっている。
【0021】
本発明の一側面に係るピンキーパーでは、2つの側部と底部とが設けられており、2つの側部の内側面に保持穴が形成されている。この保持穴は、ピンキーパーの側部の内側面を切り欠いた形状となっている。よって、前述した光コネクタと同様、2つの側部を開くように広げると側部が撓んで保持穴が広がることとなり、この状態でピンを保持穴に挿抜させることができる。従って、フェルールに対するピンの着脱を行うことができる。
【0022】
(9)本発明の一側面に係るピン挿入用治具は、前述した光コネクタにおいて、ピンをフェルールの挿通孔に挿入させるピン挿入用治具であって、ピンを挟み込む挟み部と、挟み部の外側に設けられ、ピンの挿入時にハウジングの外側に乗り上げて挟み部を開くことによって、ピンの挿入と共にピンの挟み込みを解除する乗り上げ部と、を備えている。
【0023】
本発明の一側面に係るピン挿入用治具は、ピンを挟み込む挟み部と、ピンの挿入時にハウジングに乗り上げることによってピンの挟み込みを解除する乗り上げ部とを備えている。従って、ピンの挿入時に乗り上げ部がハウジングの外側に乗り上げることによって挟み込みを解除させることができるので、ピンの挿入をスムーズに行うことができる。
【0024】
[本発明の実施形態の詳細]
本発明の実施形態に係る光コネクタ、ピンキーパー及びピン挿入用治具の具体例を図面を参照しつつ説明する。なお、本発明は、これらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。以下の説明では、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0025】
図1は、本実施形態に係る光コネクタ1を示す斜視図である。
図2は、光コネクタ1の縦断面図である。光コネクタ1は、例えばMPOコネクタであり、外部の光アダプタに接続されるコネクタである。
【0026】
図1及び
図2に示されるように、光コネクタ1は、光コネクタ1の一端に位置する矩形状のフェルール2と、フェルール2を覆うインナーハウジング(ハウジング)3と、インナーハウジング3の一部を覆う第1アウターハウジング(アウターハウジング)4及び第2アウターハウジング5と、インナーハウジング3に接続されたブーツ6とを外観構成として具備している。光コネクタ1の内部には、コイルバネ7、リアハウジング8、カシメリング9、フェルールバネ10及びピンキーパー20が設けられている。
【0027】
以下では、説明の便宜上、「前」、「後」、「上」、「下」、「左」及び「右」と方向を定めて説明を行う。インナーハウジング3とブーツ6との接続方向を前後方向、すなわち、ブーツ6からインナーハウジング3を見た方向を前、その反対方向を後とする。また、フェルール2の前面の長手方向を左右方向、フェルール2の前面の短手方向を上下方向とする。これらの方向は単に説明の便宜上のものであって、本発明の範囲を限定するものではない。
【0028】
フェルール2は、後方側に拡張部2aを備えた箱状となっている。フェルール2の内部には、前後方向に延びる複数のファイバ孔が形成されており、各ファイバ孔には、ブーツ6の後方から挿入されるファイバコードを構成する光ファイバのそれぞれが挿入される。フェルール2の拡張部2aの前面2bは、インナーハウジング3に当接される当接面となっている。
【0029】
フェルール2は、光コネクタ1に他のコネクタのフェルール(以下、相手方フェルールという)が接続されるときに当接される接続面2cと、相手方フェルールの位置決めを行うガイドピンP(
図10参照)が挿入される2個の挿通孔2dとを備えている。このガイドピンP及び挿通孔2dは、相手方フェルールの位置決めを行う位置決め部として機能する。2個の挿通孔2dは、左右方向に並んで配置されている。
【0030】
フェルール2とリアハウジング8との間には、フェルール2を前方に付勢するフェルールバネ10と、フェルール2の挿通孔2dに前方から挿通されたガイドピンPを保持するピンキーパー20とが設けられている。ピンキーパー20は、インナーハウジング3の内部に収容されており、フェルール2の後方且つフェルールバネ10の前方に設けられている。ピンキーパー20はガイドピンPを保持する2個の保持穴21を備えており、2個の保持穴21は左右方向に並ぶように設けられている。ピンキーパー20の構成については後に詳述する。
【0031】
インナーハウジング3は、後方側に拡張部3aを備えた段付き角筒状となっている。インナーハウジング3の外面には、外部の光アダプタのラッチが係合される左右一対の係合穴3bと、第1アウターハウジング4を前方に付勢するコイルバネ7を収容する溝3cとが設けられている。係合穴3bは、インナーハウジング3の表面に設けられている。係合穴3bは例えばインナーハウジング3の外面において台形状に形成されており、各係合穴3bに光アダプタのラッチが嵌合することによって、光アダプタに光コネクタ1が前後方向に係合され、光アダプタに光コネクタ1が装着される。また、溝3cは前後方向に延在しており、溝3cには前後方向に伸縮可能となったコイルバネ7が収容される。
【0032】
インナーハウジング3の内部には、フェルール2及びリアハウジング8の前側部分が収容されている。インナーハウジング3の内側面は段付き状となっており、インナーハウジング3の内側には、フェルール2が当接する当接面3dが設けられている。当接面3dには、フェルールバネ10によって前方に付勢されたフェルール2の拡張部2aの前面2bが当接されている。
【0033】
第1アウターハウジング4は、インナーハウジング3の外側において前後方向に移動自在に取り付けられている。第1アウターハウジング4は筒状を呈しており、第1アウターハウジング4の断面は長方形の短辺が外側に膨らむように湾曲した形状となっている。第1アウターハウジング4の後部には、第2アウターハウジング5に係合される4個の爪部4aが設けられている。各爪部4aは、後方に所定長さだけ延在した形状となっている。第1アウターハウジング4は、その左側に上下一対の爪部4aを備えると共に、右側にも上下一対の爪部4aを備えている。
【0034】
第2アウターハウジング5は、第1アウターハウジング4の後方において第1アウターハウジング4に対して前後方向に移動自在となっている。第2アウターハウジング5は、第1アウターハウジング4と別体となっている。第2アウターハウジング5は、筒状を呈している。第2アウターハウジング5の断面は、長方形の短辺が外側に膨らむように湾曲した形状となっており、例えば第1アウターハウジング4の断面と同一形状とすることができる。
【0035】
第2アウターハウジング5には、ブーツ6の前端部とリアハウジング8とが収容される。第2アウターハウジング5は、第1アウターハウジング4の爪部4aが係合される4個のスリット5aを備えており、各スリット5aは第2アウターハウジング5の前端から所定長さだけ後方に延在している。第2アウターハウジング5は、その左側に上下一対のスリット5aを備えると共に、右側にも上下一対のスリット5aを備えている。
【0036】
第2アウターハウジング5は、ブーツ6の前端部が入り込む切り欠き部5cを備えている。切り欠き部5cは、例えば上下一対に設けられている。切り欠き部5cは第2アウターハウジング5の後端面5fから前方向に切り欠かれて形成されており、第2アウターハウジング5の切り欠き部5cが設けられる平坦状の側面5dは、外側が角張ったC字状を呈している。
【0037】
第2アウターハウジング5の内側には、インナーハウジング3の後端3fが前方から当接する段差部5eが設けられている。段差部5eは、第2アウターハウジング5の内面から内側に突出している。第2アウターハウジング5を前方に移動させて段差部5eの前面がインナーハウジング3の後端3fに後方から当接することにより、第2アウターハウジング5とインナーハウジング3とは共に前進する。
【0038】
リアハウジング8は、インナーハウジング3の後側に挿入される筒状の挿入部8aと、挿入部8aの後側でカシメリング9と係合される円筒部8bとを備えている。挿入部8aは、円筒部8bの前端で拡張された形状となっており、挿入部8aの前端がインナーハウジング3に当接した状態でリアハウジング8はインナーハウジング3に係合されている。リアハウジング8の円筒部8bの外周面には凹凸部8cが形成されている。
【0039】
カシメリング9は、その前側が拡径された段付き円筒状を呈している。カシメリング9は、後方から前方に向かうに従って段付き状に拡径されている。カシメリング9は、その前側に位置する大径部9aと、大径部9aの後側に位置する小径部9bとを備えている。カシメリング9は、リアハウジング8と前後方向に係合し、円筒部8bの外周面とカシメリング9の内周面との間に光ファイバコードを構成する抗張力繊維や外被等が挟まれて固定される。また、カシメリング9の内部には、光ファイバコードを構成する各光ファイバが保持されている。
【0040】
ブーツ6は、前後方向に延在する円筒状を呈している。ブーツ6は、リアハウジング8の円筒部8bとカシメリング9とを収容した状態でカシメリング9に装着されている。ブーツ6は、光ファイバコードに急激な曲げが生じないように光ファイバコードを保護する。ブーツ6の前端は、リアハウジング8の挿入部8aの後端に突き当てられており、この突き当てられた部分からブーツ6は後方に延在している。ブーツ6におけるカシメリング9を収容する部分よりも後側は、後方に向かうに従って徐々に縮径されている。また、ブーツ6の後側の縮径されている部分には、ブーツ6の周方向に延びる長穴状の貫通孔6aが複数形成されている。
【0041】
ところで、上述したような光コネクタでは、通信需要の高まりにより伝送レートが10Gbpsを超え40Gbpsや100Gbpsの伝送速度が実現されており、10Gbpsから40Gbps又は100Gbpsへのアップグレードが望まれている。ここで、光コネクタにおいて、ガイドピンがフェルールの接続面から突出した状態がオスであり、挿通孔が接続面に露出した状態がメスであるが、上記のアップグレードに伴いオスとメスとの切り替えを行わなければならない場合がある。
【0042】
そこで、本実施形態に係る光コネクタ1では、ガイドピンPが接続面2cから突出した状態と、挿通孔2dが接続面2cに露出した状態とを切り替えることが可能となっており、オスとメスとの切り替えを、光コネクタを分解したり光ファイバコードから取り外したりせずに、自在に行うことができる。この切り替えは、フェルール2及びピンキーパー20に対するガイドピンPの挿抜を行うことによって実現される。以下では、フェルール2及びピンキーパー20とそれらの周辺の構成について詳細に説明する。
【0043】
図3及び
図4に示されるように、本実施形態に係るピンキーパー20は、U字状に形成されている。ピンキーパー20は、互いに平行に並ぶ一対の側部22と、一対の側部22の端部間を接続する底部23とを備えている。また、前述した保持穴21は、互いに対向する側部22の内側面22aを切り欠いた形状となっている。保持穴21の入口側端部及び出口側端部にはテーパ面21aが設けられており、このテーパ面21aによってスムーズにガイドピンPを保持穴21に挿入させることが可能となる。
【0044】
ピンキーパー20における一対の側部22は、後述する拡張部材30(
図6参照)によって、互いに離れる方向Dに撓ませて開くことが可能となっている。第1アウターハウジング4には拡張部材30を内部に挿入させる切り欠き(開口部)4bが形成されており、インナーハウジング3には拡張部材30を内部に挿入させる2個の第1開口3gが形成されている。第1アウターハウジング4における切り欠き4bの反対側には、切り欠き4bと同様の切り欠き(開口部)4cが形成されている。また、インナーハウジング3における第1開口3gの反対側には、拡張部材30の押さえ部31を内部に挿入させる2個の第2開口3hが形成されている。
【0045】
図4及び
図5に示されるように、ピンキーパー20は表裏対称な形状となっており、光コネクタ1に搭載された状態において、前側から見たピンキーパー20の形状と後側から見たピンキーパー20の形状とは同一となっている。また、ピンキーパー20の側部22は、底部23の反対側の端部でピンキーパー20の内側に突出する突出部22bと、内側面22aに形成された切り欠き部22cと、側部22の外側面22dに形成された凹部22eとを備えている。
【0046】
突出部22bは、側部22の上端面22fからピンキーパー20の内側に傾斜するテーパ面22gを備えており、このテーパ面22gに拡張部材30が上から当接することによって一対の側部22が方向Dに広げられる。また、側部22の切り欠き部22cの内側には前述した保持穴21が形成されている。一対の側部22が方向Dに広げられると、側部22の上側が撓んで切り欠き部22cが広がることにより保持穴21も広げられる。
【0047】
外側面22dに形成された凹部22eは、保持穴21の外側に形成されている。この凹部22eが保持穴21及び切り欠き部22cと横方向に並べられることにより、側部22における保持穴21の外側の部分に括れが形成されている。この括れ部分の厚みT1は、底部23の厚みT2よりも薄くなっている。
【0048】
次に、一対の側部22を方向Dに広げる拡張部材30について
図6を参照して説明する。
図6に示されるように、拡張部材30は、上述した押さえ部31の他に、2個の楕円状の第1ベース32と、2個の第1ベース32を接続する直線状の第2ベース33と、2個の第1ベース32のうちの一方に設けられた2個の拡張部34とを備えている。
【0049】
押さえ部31は2個設けられている。押さえ部31は、2個の第1ベース32のうちの他方に設けられている。また、拡張部材30は可撓性材料で構成されており第2ベース33は第1ベース32よりも細くなっている。更に、第2ベース33は、第1ベース32よりも薄くなっている。従って、押さえ部31と拡張部34とを対面させるように第2ベース33を曲げることによって、拡張部材30をU字状に曲げることが可能となる。
【0050】
押さえ部31は、第1ベース32に接続される下段部31aと下段部31aの上部に位置する上段部31bとを備えており、下段部31a及び上段部31bによって階段状に形成されている。また、2個の押さえ部31は、第1ベース32に直交する基準線Lに対して互いに対称となるように配置されている。
【0051】
第1ベース32は、押さえ部31又は拡張部34が設けられる第1面32aと、その反対側に位置する第2面32bとを備えている。第2面32bには、曲線状に窪んだ凹部32cが設けられている。この凹部32cによって拡張部材30が持ちやすい形状となっており、例えば2本の指を各凹部32cに接触させて、簡単に第2ベース33をU字状に曲げることが可能となっている。
【0052】
拡張部34は、押さえ部31と同様、下段部34aと上段部34bとを備えており階段状に形成されている。第1ベース32の第1面32aに対する下段部34aの高さは、押さえ部31の下段部31aの高さと同程度である。また、第1面32aに対する上段部34bの高さは、押さえ部31の上段部31bの高さよりも高くなっている。これにより、拡張部34を第1アウターハウジング4及びインナーハウジング3の内部に一層深く入り込ませることが可能となる。
【0053】
以上のように構成される拡張部材30を用いてピンキーパー20にガイドピンPを挿入させる方法について
図7及び
図8を参照して説明する。
図7は保持穴21を広げている状態、
図8は広げた保持穴21にガイドピンPを挿入させた後の状態、をそれぞれ示している。
【0054】
図7に示されるように、第1アウターハウジング4の切り欠き4c及びインナーハウジング3の第2開口3hに、拡張部材30の押さえ部31を挿入する。このように第1アウターハウジング4及びインナーハウジング3の内部に押さえ部31を挿入することによって、インナーハウジング3の内側でピンキーパー20を押さえつける。なお、押さえ部31の挿入時には、押さえ部31の下段部31aの頂面がインナーハウジング3の表面に当接する。このように、押さえ部31を二段構成として下段部31aの頂面をインナーハウジング3の表面に当接させることにより、押さえ部31の過剰挿入を阻止することができる。
【0055】
上記のように押さえ部31を挿入させた状態において、拡張部材30をU字状に曲げ、第1アウターハウジング4の切り欠き4b及びインナーハウジング3の第1開口3gに拡張部材30の拡張部34を挿入する。挿入された拡張部34は、まずピンキーパー20の側部22のテーパ面22gに当接する。そして拡張部34を更に挿入させると、拡張部34がテーパ面22gを乗り越えると共に各側部22が撓み押し広げられる。このように側部22を撓ませ押し広げることにより保持穴21を拡張させる。この状態で、
図8に示されるように、保持穴21にガイドピンPを挿入させる。
【0056】
保持穴21へのガイドピンPの挿入は、例えば
図9(a)〜
図9(c)に示されるピン挿入用治具40を用いて行う。以下ではピン挿入用治具40について説明する。ピン挿入用治具40は、矩形状の本体部41と、本体部41から互いに同一方向に延びる4本のアーム部42と、アーム部42の先端側で内側に突出する挟み部43と、各アーム部42の先端に位置する乗り上げ部44とを備えている。
【0057】
本体部41は、予めガイドピンPが挿入される穴41aを備えている。この穴41aはアーム部42が延びる方向の反対方向に凹んで形成されているので、穴41aにガイドピンPを挿入させるとガイドピンPはアーム部42と同一方向に延在する。4本のアーム部42のうち2本のアーム部42は本体部41の上面41bから延びており、他の2本のアーム部42は本体部41の下面41cから延びている。ここで、上面41bから延びる2本のアーム部42の平面視における位置と、下面41cから延びる2本のアーム部42の平面視における位置とは一致している。また、これら2本のアーム部42間の距離K1は、フェルール2における2個の挿通孔2d間の距離に対応している。
【0058】
挟み部43は上下一対のアーム部42のそれぞれから内側に突出した形状となっており、上下一対の挟み部43の先端間距離K2はガイドピンPの外径よりも若干短い程度となっている。これにより、上下一対の挟み部43の先端間でガイドピンPを挟み込むことができ、挟み部43によって、本体部41の穴41aに挿入されたガイドピンPを保持することが可能となる。なお、ガイドピンPの表面には凹部P1(
図10(b)参照)が設けられ、この凹部P1を挟み部43で挟み込むことができるので、ガイドピンPは挟み易い形状とされている。
【0059】
乗り上げ部44は、挟み部43の外側に設けられている。乗り上げ部44は、各アーム部42の先端で内側に斜めに延びるテーパ面44aと、乗り上げ部44の先端に位置して丸みを帯びた頂部44bと、頂部44bから挟み部43に向かって斜めに延びるテーパ面44cとを備えている。上下に並ぶ頂部44b間の距離K3は、インナーハウジング3の上下方向の高さよりも若干長い程度となっている。
【0060】
次に、ピン挿入用治具40を用いてガイドピンPをフェルール2の挿通孔2dに挿入させる方法について
図10〜
図12を参照して説明する。まず、
図10(b)に示されるように、本体部41の穴41aに後方からガイドピンPを挿入させると共に挟み部43でガイドピンPを上下に挟み込む。そして、乗り上げ部44の頂部44bをインナーハウジング3の上面3j及び下面3kに乗り上げさせる。この状態でガイドピンPの上下位置は挿通孔2dの上下位置と一致する。
【0061】
上記のように頂部44bを乗り上げさせた状態でインナーハウジング3に対してピン挿入用治具40を後方に押し込むと、乗り上げ部44のテーパ面44cが上面3j及び下面3kのそれぞれに乗り上がる。ピン挿入用治具40の押し込みを続けると、挟み部43によるガイドピンPの挟み込みが解除されると共にガイドピンPが前方からフェルール2の挿通孔2dに入り始める。
【0062】
図11(a)及び
図11(b)に示されるように、ピン挿入用治具40の押し込みを続けると、各挟み部43がインナーハウジング3の上面3j及び下面3kのそれぞれに乗り上がると共に、各アーム部42が開くように撓み始める。そして、フェルール2の挿通孔2d内でガイドピンPが後方に入り込んでいくと共に、各挟み部43がインナーハウジング3の上面3j及び下面3kで後方に摺動する。
【0063】
図12(a)及び
図12(b)に示されるように、ピン挿入用治具40の押し込みを更に続けると、ガイドピンPがピンキーパー20の保持穴21に前方から入り込み、保持穴21によってガイドピンPが保持される。このとき、各挟み部43を第1アウターハウジング4上に乗り上げさせて、保持穴21内でガイドピンPを更に後方に押し込むことにより、保持穴21によるガイドピンPの保持が確実なものとなりガイドピンPの挿入が完了する。
【0064】
次に、本実施形態の光コネクタ1、ピンキーパー20及びピン挿入用治具40によって得られる効果について説明する。
【0065】
本実施形態に係る光コネクタ1は、ガイドピンPを保持するピンキーパー20を備えている。このピンキーパー20は2つの側部22と底部23とを有しており、2つの側部22の内側面22aに保持穴21が形成されている。この保持穴21は、ピンキーパー20の側部22の内側面22aを切り欠いて形成されている。よって、2つの側部22を開くように広げると、側部22が撓んで保持穴21が広がることとなり、この状態でガイドピンPを保持穴21に挿入させることができる。
【0066】
また、ガイドピンPが保持穴21に挿入されて保持された状態において上記同様に2つの側部22を開くように広げると、保持穴21が広がるのでガイドピンPを保持穴21から引き抜くことができる。このように、2つの側部22を開くように広げることによって、保持穴21に対するガイドピンPの挿抜を行うことができる。従って、フェルール2に対するガイドピンPの着脱を行うことができる。
【0067】
また、側部22における保持穴21の外側の厚みT1は、底部23の厚みT2よりも薄い。これにより、2つの側部22を開くように広げたときに、保持穴21の外側の部分をより撓ませ易くすることができ、保持穴21の拡張を容易に行うことができる。従って、ピンキーパー20の保持穴21に対するガイドピンPの挿抜を容易に行うことができるので、フェルール2に対するガイドピンPの着脱を容易に行うことができる。更に、側部22が凹部22eを有することにより、側部22における保持穴21の外側のみを薄くすることが可能となるので、側部22の保持穴21より上側の部分のみを広げやすくすることができる。
【0068】
また、インナーハウジング3は、一対の側部22間を拡げる拡張部34(拡張部材30)を内部に挿入させる第1開口3gを有しており、一対の側部22は、拡張部34が第1開口3gから挿入されて各側部22の内側(テーパ面22g)に当接することによって、押し広げられる。このように、インナーハウジング3の第1開口3gから拡張部34を挿入させて保持穴21を拡張させることにより、保持穴21に対するガイドピンPの挿抜を行うことができる。
【0069】
また、拡張部材30は、ピンキーパー20をインナーハウジング3の内側に押さえつける押さえ部31を有し、インナーハウジング3は、押さえ部31を内部に挿入させる第2開口3hを第1開口3gの反対側に有する。よって、押さえ部31を第2開口3hからインナーハウジング3の内部に挿入し押さえ部31によってピンキーパー20を押さえつけた状態で、拡張部材30により保持穴21を拡張させることができる。
【0070】
上記のように保持穴21の拡張時に押さえ部31でピンキーパー20を押さえつけることにより、拡張時におけるピンキーパー20の移動を抑制することができる。従って、ピンキーパー20の位置を安定させた状態で保持穴21の拡張を行うことができるので、保持穴21に対するガイドピンPの挿抜を容易に行うことができる。
【0071】
また、光コネクタ1は、インナーハウジング3の外周部の少なくとも一部を覆う第1アウターハウジング4を有し、第1アウターハウジング4は、インナーハウジング3の第1開口3gを外部に露出させる切り欠き4bを有する。従って、第1アウターハウジング4の切り欠き4bから拡張部34を内部に挿入することによって保持穴21を拡張させることができる。
【0072】
また、第1アウターハウジング4は、インナーハウジング3の第2開口3hを外部に露出させる切り欠き4cを有する。従って、第1アウターハウジング4の切り欠き4cから押さえ部31を内部に挿入することによってピンキーパー20を押さえつけることができる。
【0073】
また、光コネクタ1において、前側から見たピンキーパー20の形状と後側から見たピンキーパー20の形状とは同一となっている。このように表裏のピンキーパー20の形状が同一であることにより、ピンキーパー20の表裏を気にせずにピンキーパー20を光コネクタ1に搭載することができる。従って、ピンキーパー20の搭載を容易に行うことができる。
【0074】
また、本実施形態に係るピン挿入用治具40は、ガイドピンPをフェルール2の挿通孔2dに挿入させる。ピン挿入用治具40は、ガイドピンPを挟み込む挟み部43と、ガイドピンPの挿入時にインナーハウジング3の外側に乗り上げて挟み部43を開くことによって、ガイドピンPの挿入と共にガイドピンPの挟み込みを解除する乗り上げ部44とを備えている。従って、ガイドピンPの挿入時に乗り上げ部44をインナーハウジング3の外側に乗り上げさせることによって挟み込みを解除させることができるので、ガイドピンPの挿入を接続面2cに触れることなくスムーズに行うことができる。
【0075】
以上、本発明の実施形態について説明したが本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変形が可能である。例えば、本発明に係る光コネクタは、多心用あるいは単心用の各種光コネクタにも幅広く適用できる。また、前述した光コネクタ1は、現地において光ファイバコードに組み付けられる所謂現地付け型の光コネクタであってもよい。
【0076】
また、上記実施形態では、インナーハウジング3と第1アウターハウジング4と第2アウターハウジング5とを備える光コネクタ1について説明した。しかしながら、フェルール2及びピンキーパー20を収容するハウジングの構成は、上記インナーハウジング3、第1アウターハウジング4及び第2アウターハウジング5に限定されず、適宜変更可能である。例えば、第1アウターハウジング4及び第2アウターハウジング5に代えて、一つのアウターハウジングを備えていてもよい。あるいはインナーハウジング3のみを備えるものであってもよい。
【0077】
また、上記実施形態では、第1アウターハウジング4が切り欠き4b,4cを有していたが、切り欠き以外の形状であってもよい。例えば、切り欠き4b,4cに代えて、孔部を有していてもよい。
【0078】
また、上記実施形態では、ピンキーパー20が表裏対称な形状となっている例について説明したが、本発明に係るピンキーパーは表裏対称な形状となっていなくてもよい。また、本発明に係るピンキーパーの形状は、上記実施形態のピンキーパー20の形状に限定されず、適宜変更可能である。
【0079】
更に、上記実施形態では、2個の楕円状の第1ベース32と直線状の第2ベース33とを備えた可撓性の拡張部材30について説明した。しかしながら、拡張部材の形状及び材料は上記に限定されず適宜変更可能である。