(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-92279(P2016-92279A)
(43)【公開日】2016年5月23日
(54)【発明の名称】酸素分子レーザ発振器
(51)【国際特許分類】
H01S 3/095 20060101AFI20160418BHJP
【FI】
H01S3/095
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-226797(P2014-226797)
(22)【出願日】2014年11月7日
(71)【出願人】
【識別番号】507351702
【氏名又は名称】武久 究
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(74)【代理人】
【識別番号】100129953
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 康弘
(72)【発明者】
【氏名】武久 究
【テーマコード(参考)】
5F172
【Fターム(参考)】
5F172AD04
5F172EE26
5F172NQ43
5F172NQ44
(57)【要約】
【課題】酸素分子レーザ発振器から取り出されるレーザ光を大気伝送する際の、減衰を低減することができる酸素分子レーザ発振器を提供すること。
【解決手段】本発明の一態様にかかる酸素分子レーザ発振器は、全反射鏡103と出力鏡102とを備えた共振器111と、共振器11間に配置されたエタロン104と、を備えたものである。波長選択素子としては、エタロン104を用いることができる。あるいは、波長選択素子として、分散プリズムを用いることも可能である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
全反射鏡と出力鏡とを備えた共振器と、
前記共振器間に配置された波長選択素子と、を備えた酸素分子レーザ発振器。
【請求項2】
前記波長選択素子がエタロンを有していることを特徴とする請求項1の酸素分子レーザ発振器。
【請求項3】
前記波長選択素子が分散プリズムを有していることを特徴とする請求項1の酸素分子レーザ発振器。
【請求項4】
前記波長選択素子によって、一重項励起酸素分子から基底状態の酸素分子への遷移におけるPブランチの波長においてレーザ発振させることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の酸素分子レーザ発振器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸素分子レーザ発振器に関する。
【背景技術】
【0002】
過酸化水素水(H
2O
2)と水酸化カリウム(KOH)または水酸化ナトリウム(NaOH)の混合溶液(BHP溶液と呼ばれる。BHPはBasic Hydrogen Peroxideの略である。)と、塩素ガス(Cl
2)との化学反応によって一重項の励起状酸素分子(通常、O
2(
1Δ
g)と示される。また、以下、励起酸素と呼ぶ。)を生成できることが知られており、O
2(
1Δ
g)のエネルギーをヨウ素原子(I)に移乗させる(すなわち基底状態のI(
2P
1/2)から励起状態のI(
2P
3/2)を生成する)ことでレーザ動作するヨウ素レーザ(一般にCOILと呼ばれている。COILは、Chemical Oxygen Iodine Laserの略である。)は、波長1.315ミクロンでレーザ発振する高出力レーザとして広く知られている。なお、ヨウ素レーザに関しては、非特許文献1〜5において説明されている。
【0003】
一方、ヨウ素レーザのように、励起酸素のエネルギーをヨウ素に移乗させてレーザ発振させる理由の一つとしては、励起酸素を直接レーザ発振させることが困難だと考えられてきたからである。その理由としては、励起酸素の自然放出寿命が極めて長いため、自然放出寿命に反比例する利得(ゲイン)が極めて低くなるからである。
【0004】
しかし、ゲインが低くなることは、レーザ発振が不可能ということではなく、レーザ発振しにくいだけである。そこで、ゲイン長を十分長くすればレーザ発振できると考えられ、励起酸素のレーザ発振を目指した実験も含めて理論考察された非特許文献6によると、レーザ発振の可能性が示されている。さらに、酸素分子レーザを発振させるのに適した励起酸素発生器に関しては、非特許文献7において示されている。
【0005】
ところで酸素分子レーザ発振器からの発振スペクトルに関する報告は見当たらないが、レーザ遷移に関する上準位と下準位における各回転準位からの発振可能ラインの中で、最も強いラインのみでレーザ発振すると考えられる。つまり、非特許文献5に示されている自然放出光のスペクトル(
図7参照)であるPブランチ、Qブランチ、及びRブランチの3つの遷移において最も強いQブランチのピーク波長のみに集中してレーザ発振すると推定される。なお、
図7は、非特許文献5のFigure 12であり、自然放出光のスペクトルを示している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Stephen C. Hurlick, et al., “COIL technology development at Boeing,” Proceedings of SPIE Vol. 4631, 101-115 (2002).
【非特許文献2】Masamori Endo, “History of COIL development in Japan: 1982-2002,” Proceedings of SPIE Vol. 4631, 116-127 (2002).
【非特許文献3】Edward A. Duff and Keith A. Truesdell, “Chemical oxygen iodine laser (COIL) technology and development,” Proceedings of SPIE Vol. 5414, 52-68 (2004).
【非特許文献4】Jarmila Kodymova, “COIL--Chemical Oxygen Iodine Laser: advances in development and applications,” Proceedings of SPIE Vol. 5958, 595818 (2005).
【非特許文献5】Stephen C. Hurlock,“COIL technology development at Boeing,” Proceedings of SPIE Vol. 4631 (2002).
【非特許文献6】Masamori Endo, et al.,“Chemically Pumped O2(a-X) Laser,” Applied Physics B, Vol. 56, 71-78 (1993).
【非特許文献7】K. Takehisa, “ New concepts of realizing a chemical oxygen laser,” Proceedings of SPIE Vol. 9251 (2014).
【非特許文献8】K. M. Smith and D. A. Newnham,“Near-infrared absorption cross section and integrated absorption intensities of molecular oxygen,” Journal of Geophysical Research, Vol. 105, 7383-7396 (2000).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
酸素分子レーザが発振したとしても、取り出されるレーザ光は、一重項励起状態の酸素分子(O
2(
1Δ
g))から基底状態の酸素分子(O
2(
3Σ
g))への遷移エネルギーに相当する光子エネルギーを有するため、大気中を長距離伝搬させると、大気中に含まれる基底状態の酸素分子によって吸収されやすい。すなわち大気伝搬させるとレーザ光が吸収減衰を受けることから、特に10キロ以上の長距離を効率良く伝搬させることが困難であった。
【0008】
具体的には、上記非特許文献8において、酸素分子による近赤外光の吸収断面積が示されており、これによると酸素が75%、窒素が25%含まれる気体中を約513m伝送させると、吸収が最も強い波長での透過率は約59%になると説明されている。そこで、このデータから算出される吸収係数を用いると、1気圧の大気(酸素21%、窒素79%の混合気体と仮定した場合)中を例えば10km伝送させると、透過率は約5.8%、すなわち約94%も減衰してしまうことになる。
【0009】
本発明の目的は、酸素分子レーザ発振器から取り出されるレーザ光を大気伝送する際の、減衰を低減することができる酸素分子レーザ発振器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、本発明の酸素分子レーザ発振器では、共振器間に波長選択素子を配置したものである。波長選択素子としては、エタロン、ピンホール、あるいはプリズムなどが該当する。これに対して、一般に波長選択素子として広く利用される回折格子は、挿入損失が大きいことから、ゲインの低い酸素分子レーザ発振器に対しては不適切である。
【0011】
低損失の波長選択素子を用いることで、一重項励起酸素分子から基底状態に遷移する各回転準位の中で、Pブランチ、あるいはRブランチの遷移に相当する波長でレーザ発振させることができる。これらのブランチでは、非特許文献8に示されているグラフ(
図8に示す。)から判るように、吸収のピークの吸収係数は、Qブランチの吸収のピークの吸収係数よりも大幅に小さい。従って、基底状態の酸素分子が含まれた大気中を伝搬させる間の減衰を大幅に低減できる。
【0012】
なお、Pブランチ、Qブランチ、及びRブランチとは、レーザ遷移の上準位と下準位に回転微細構造を有する場合、上準位に対する全角運動量の量子数から、下準位に対する全角運動量子数を差し引いた値で遷移を区別したものである。Pブランチでは、この値は−1、Qブランチでは0、Rブランチでは+1と決められている。したがって、上準位の回転準位が同じ場合、遷移波長は、Pブランチ、Qブランチ、Rブランチとで異なり、この順に短くなっていく(つまり光子エネルギーは増えていく)。なお、以上に関しては、分光学の分野で広く知られている。
【0013】
例えば、Pブランチのピークの吸収係数はQブランチのピークの吸収係数の約1/3となっているため、例えば大気中を10km伝送させると、透過率は約40%になる。その結果、Qブランチの場合の7倍ものパワーを伝送できることになる。
【0014】
ただし、PブランチやRブランチのレーザ遷移に対する利得係数は、上準位(すなわちO
2(
1Δ
g))の回転準位が同じ場合、Qブランチにおける利得係数より小さくなってしまう。これは
図7に示されたように自然放出光の強度がPブランチやRブランチでは、Qブランチより小さいことからも容易に推測される。
【0015】
しかしながら、発振して取り出されるレーザ光のエネルギーは、基本的にゲインの大小には関係なく、上準位であるO
2(
1Δ
g)の総数に比例するものである。したがって、Pブランチ、あるいはRブランチでレーザ発振させる場合に、共振器中の損失に比べてゲインが十分大きくなるようにゲイン長を長くすることで、Qブランチでレーザ発振させる場合に比べて、ほぼ同等のレーザエネルギーを得ることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、酸素分子レーザ発振器から取り出されるレーザ光を大気伝送する際の、減衰を低減することができる酸素分子レーザ発振器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施形態1にかかる酸素分子レーザ発生器100の構成を示す断面図である。
【
図2】酸素分子レーザ発生器100の共振器内のレーザ光LA10のビームプロファイルを示す説明図である。
【
図3】酸素分子レーザ発生器100で用いられるエタロン104の特性図である。
【
図4】伝送距離とパワー比率との関係を示すグラフである。
【
図5】実施形態2にかかる酸素分子レーザ発生器200の構成を示す断面図である。
【
図7】O
2(
1Δ
g)からの自然放出光のスペクトルであり、非特許文献5で示されたグラフである。
【
図8】基底状態の酸素分子の吸収断面積の波長依存性を示すグラフであり、非特許文献8で示されたグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本実施の形態の具体的構成について図面を参照して説明する。以下の説明は、本発明の好適な実施の形態を示すものであって、本発明の範囲が以下の実施の形態に限定されるものではない。以下の説明において、同一の符号が付されたものは実質的に同様の内容を示している。
【0019】
以下、本実施の形態の具体的構成について図面を参照して説明する。以下の説明は、本発明の好適な実施の形態を示すものであって、本発明の範囲が以下の実施の形態に限定されるものではない。以下の説明において、同一の符号が付されたものは実質的に同様の内容を示している。
【0020】
実施形態1.
以下、本発明の実施の形態を
図1に基づいて説明する。
図1は本発明の酸素分子レーザ発生器100構成を示す断面図である。酸素分子レーザ発振器100では、気密性を有するハウジング101内において、出力鏡102と全反射鏡103とで共振器111が構成されている。そして、共振器111間にエタロン104が配置されている。すなわち、出力鏡102と全反射鏡103との間に、波長選択素子となるエタロン104が配置されている。したがって、出力鏡102から全反射鏡103に向かう光、及び全反射鏡103から出力鏡102に向かう光は、エタロン104を通過する。
【0021】
レーザ発振させる場合、開閉バルブ109を開き、(図示されていない)真空ポンプで矢印108のように、ハウジング101内をあらかじめ真空排気しておく。排気が終わったら開閉バルブ109を閉じ、励起酸素発生器107から励起酸素分子を発生させる。例えば、励起酸素発生器107には、BHP溶液と塩素ガスが供給されている。BHP溶液は、過酸化水素水(H
2O
2)と水酸化カリウム溶液(KOH)の混合溶液である。励起酸素発生器107では、BHP溶液と、塩素ガス(Cl
2)とが反応する。これにより、多数の矢印で示したように、一重項励起酸素分子(O
2(
1Δ
g))が発生し、ハウジング101内に満たされる。
【0022】
共振器111中で往復する光が発振閾値を越すと、共振器111間ではレーザ光LA10が発生する。そして、レーザ光LA11が出力鏡102から外部に取り出される。その際に共振器111間にはエタロン104が挿入されている。エタロン104は波長選択素子であり、所定の波長の光を通過する。このため、発振波長は発振可能な多数の遷移ラインの中から選べるようになっている。ここではPブランチでレーザ発振するようになっている。
【0023】
エタロン104は出力鏡102に近い位置に配置されている。この理由を以下に説明する。レーザ光LA10のビームプロファイルを強調して描いた
図2に示すように、本実施形態では、出力鏡102は平面鏡であり、全反射鏡103は凹面鏡だからである。つまり出力鏡102に対して、発振するレーザ光は垂直入射するからであり、出力鏡102の近傍でのレーザ光LA10は、平行なビームになっている。その結果、エタロン104を通過するレーザ光LA10もほぼ平行なビームになることから、エタロン104において最も透過率が高くなる波長(すなわち選択波長)が、レーザ光LA10のビーム断面内全てにおいて等しくなるからである。このように、エタロン104と出力鏡102との距離は、エタロン104と全反射鏡103との距離よりも小さくなっている。
【0024】
なお、上記のようにQブランチで最もレーザ発振しやすくなっている。QブランチとPブランチとでは、非特許文献5にも示されているが、1〜2nmの波長差が存在する。そこでエタロン104は、ギャップ間が0.5mmのエアギャップ式になっている。その結果、エタロン104の透過率カーブの周期(FSRと呼ばれる数値)は約1.6nmとなる。このことから、Qブランチでの発振を抑制して、Pブランチのみでレーザ発振させることができる。あるいは、Qブランチでの発振を抑制して、Rブランチのみでレーザ発振させるようにしてもよい。この場合、Rブランチでの波長に、エタロン104の選択波長を一致させる。
【0025】
エタロン104は、例えば、平行配置された一対の基板を有している。エタロン104の基板のラフネスが波長633nmの約1/50である。またエタロン104の内側面はノーコートになっているため反射率は約4%である。その結果、
図3に示すような透過率特性を有するようになる。そこで、エタロン104は、発振させるPブランチの波長において透過率がピーク値になるように、設置する傾きによって調整する。
【0026】
図3に示されたように、エタロン104では、透過率が極大値となる波長から、0.5nm離れるだけで透過率は90%を下回る。酸素分子レーザ発振器はゲインが1%/m以下と他の一般的なレーザに比べて非常に低いことから、損失が10%もあればレーザ発振しない。したがって、Pブランチから波長1nm以上離れたQブランチでは発振しないようになる。なお、エタロン104の内側面をノーコートにした理由としては、反射膜をコーティングする場合に比べて表面のダメージ閾値が大幅に高くなるからである。
【0027】
本発明によれば、酸素分子に対して最も吸収が強いQブランチ以外のブランチにおいてレーザ発振できる。このことから、以下に説明するように、伝搬距離が長くなるほど効果が大きくなる。例えばPブランチでレーザ発振させる場合、
図7に示されたように、Qブランチでの吸収断面積の約1/3の吸収断面積である。吸収断面積が1/3になると伝送パワーは3倍になる訳ではなく、伝送距離が増える程、伝送できるパワー比率は指数関数的に高くなる。具体的には、Qブランチで発振させる場合のレーザ光のパワーに対するPブランチで発振させる場合のレーザ光のパワー比率を計算すると、
図4に示したようになり、例えば30km伝送させると400倍もの高いパワーを伝送できることになる。この構成によれば、大気伝送におけるレーザ光の減衰を低減することができる。
【0028】
実施形態2.
次に実施形態2にかかるレーザ発振器について、
図5を用いて説明する。
図5は本実施形態にかかる酸素分子レーザ発振器200の断面を示す構成図である。酸素分子レーザ発振器200では、気密性を有するハウジング201の中に、共振器211を構成する出力鏡202と全反射鏡203とが配置されている。共振器211間には一対の凸レンズ204a、凸レンズ204b、分散プリズム206、及びピンホール板205が配置されている。凸レンズ204a、凸レンズ204b、分散プリズム206、及びピンホール板205が波長選択素子を構成する。すなわち、出力鏡202と全反射鏡203の間に配置された凸レンズ204a、凸レンズ204b、分散プリズム206、及びピンホール板205が波長選択素子として機能する。全反射鏡203は平面鏡になっている。
【0029】
全反射鏡203で反射された光は分散プリズム206によって波長分散する。分散プリズム206からの光は、凸レンズ204bに入射する。凸レンズ204bは、分散プリズム206からの光をピンホール板205に集光する。ピンホール板205には、光を通過させるための穴(ピンホール)が設けられている。したがって、ピンホール板205のピンホールに入射した光は、ピンホール板205を通過して凸レンズ204aに入射する。一方、ピンホール板205のピンホールの外側に入射した光は、ピンホール板205で遮光される。ピンホール板205を通過した光は凸レンズ204aで屈折されて、出力鏡202に入射する。
【0030】
レーザ動作させるには、実施形態1と同様、予め開閉バルブ209を開いて、図示されない真空ポンプによって矢印208の方向に真空排気しておく。また、ハウジング201の下部には、励起酸素発生器207が配置されており、多数の矢印のように一重項励起酸素分子(O
2(
1Δ
g))が発生し、ハウジング201内に満たされる。
【0031】
レーザ発振させた場合、共振器211内部で発生するレーザ光LA20は分散プリズム206で屈折する。分散プリズム206での屈折角は波長依存性を有する。ここではPブランチの遷移波長のレーザ光のみが共振器211間を往復できるようになっている。すなわち、Qブランチ、Rブランチでの遷移波長のレーザ光は、分散プリズム206による屈折角が僅かに異なるため、ピンホール板205の穴(ピンホール)を完全には通過しない。すなわちQブランチとRブランチの波長のレーザ光は共振器211間を往復できない。したがってPブランチのみでレーザ発振するようになる。このように、分散プリズム206、及びピンホール板205等が波長選択素子として機能する。
【0032】
本実施形態の酸素分子レーザ発振器200の特長としては、実施形態1の酸素分子レーザ発振器100に比べると、波長選択素子での損失をさらに低減しやすい。その理由としては、波長選択素子である分散プリズム206に対して、レーザ光LA20はブリュースタ角で入射するため、損失が無視できる。また、レンズ凸204a、204bに関しては、表面に無反射コーティングを施すだけで良いからである。この構成によれば、実施の形態1と同様に、大気伝送におけるレーザ光の減衰を低減することができる。
【0033】
なお、ピンホール板205をレーザ光LA20の光軸方向から見ると、
図6(a)に示されたように丸い穴が空いている金属板を用いているが、あるいは
図6(b)に示したようなスリット形状に穴が空いているスリット板210を替わりに用いても良い。ただしスリットの長手方向は、
図5の紙面に垂直な方向になるように配置する必要がある。このように、分散プリズム206で波長分散された光のうち、所定の波長のみを通過し、所定の波長以外の波長を遮光できる形状を有する遮光部材を用いることができる。
【0034】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明はその目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に、上記の実施形態よる限定は受けない。
【符号の説明】
【0035】
100、200 酸素分子レーザ素発生器
101、201 ハウジング
102、202 出力鏡
103、203 全反射鏡
104 エタロン
107、207 励起酸素発生器
108、208 排気方向
109、209 開閉バルブ
204a、204b 凸レンズ
205 ピンホール板
206 分散プリズム
210 スリット板
LA10、LA20 共振器間で発生するレーザ光
LA11、LA21 取り出されるレーザ光