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特開2016-92389圧電セラミック積層体、積層型圧電素子及びこれを含む圧電振動モジュール
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-92389(P2016-92389A)
(43)【公開日】2016年5月23日
(54)【発明の名称】圧電セラミック積層体、積層型圧電素子及びこれを含む圧電振動モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01L 41/083 20060101AFI20160418BHJP
   H01L 41/187 20060101ALI20160418BHJP
   H01L 41/047 20060101ALI20160418BHJP
   H01L 41/09 20060101ALI20160418BHJP
   H01L 41/43 20130101ALI20160418BHJP
   B06B 1/06 20060101ALI20160418BHJP
【FI】
   H01L41/083
   H01L41/187
   H01L41/047
   H01L41/09
   H01L41/43
   B06B1/06 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-40867(P2015-40867)
(22)【出願日】2015年3月3日
(31)【優先権主張番号】10-2014-0148371
(32)【優先日】2014年10月29日
(33)【優先権主張国】KR
(71)【出願人】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ−メカニックス カンパニーリミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ボーム−ソック キム
(72)【発明者】
【氏名】キュン−ロック キム
(72)【発明者】
【氏名】セウン−ホ リー
(72)【発明者】
【氏名】ジュン−ウーク セオ
(72)【発明者】
【氏名】フイ−スン パク
【テーマコード(参考)】
5D107
【Fターム(参考)】
5D107AA01
5D107CC04
5D107CC09
(57)【要約】      (修正有)
【課題】圧電セラミックの表面が未焼結となることを防止する圧電セラミック積層体、積層型圧電素子及びこれを含む圧電振動モジュールを提供する。
【解決手段】圧電セラミック積層体100は、複数の圧電セラミック層1が積層されて形成される活性部10と、活性部10の上部及び下部に形成され、活性部10をカバーするカバー部20と、圧電セラミック層1及びカバー部20にそれぞれ添加される焼結添加剤と、を含み、カバー部20に添加された焼結添加剤のカバー部20に対する重量比(wt%)が圧電セラミック層1に添加された焼結添加剤の圧電セラミック層1に対する重量比(wt%)よりも大きい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の圧電セラミック層が積層され形成される活性部と、
前記活性部の上部及び下部に形成され、前記活性部をカバーするカバー部と、
前記圧電セラミック層及び前記カバー部にそれぞれ添加される焼結添加剤と、を含み、
前記カバー部に添加された前記焼結添加剤の前記カバー部に対する重量比(wt%)が、前記圧電セラミック層に添加された前記焼結添加剤の前記圧電セラミック層に対する重量比(wt%)よりも大きい圧電セラミック積層体。
【請求項2】
前記カバー部に添加された前記焼結添加剤の前記カバー部に対する重量比(wt%)が、0.5wt%超過2wt%未満である請求項1に記載の圧電セラミック積層体。
【請求項3】
前記圧電セラミック層に添加された前記焼結添加剤の前記圧電セラミック層に対する重量比(wt%)が、0.2wt%以上0.5wt%以下である請求項1または2に記載の圧電セラミック積層体。
【請求項4】
前記焼結添加剤が、
酸化鉄(Fe)、酸化亜鉛(ZnO)及びビスマス鉄酸化物(BiFeO)のうちの少なくともいずれか1種を含む請求項1に記載の圧電セラミック積層体。
【請求項5】
前記焼結添加剤が、酸化鉄(Fe)を含む請求項1に記載の圧電セラミック積層体。
【請求項6】
前記圧電セラミック層及び前記カバー部が、
同じ組成の圧電セラミック粉末を用いて形成される請求項1に記載の圧電セラミック積層体。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の圧電セラミック積層体と、
前記活性部と前記カバー部との間、及び隣接する前記圧電セラミック層間にそれぞれ形成される内部電極層と、
前記活性部の外部に形成される外部電極部と、
前記外部電極部に接続され、前記内部電極層に電荷を印加するために前記圧電セラミック積層体の内部に形成され、隣接する前記内部電極層と交互に接続するビアホールと、
を含む積層型圧電素子。
【請求項8】
前記内部電極層が、
パラジウム(Pd)−銀(Ag)の合金を含む請求項7に記載の積層型圧電素子。
【請求項9】
前記パラジウム−銀の合金は、
パラジウムの含量が0wt%超過10wt%以下である請求項8に記載の積層型圧電素子。
【請求項10】
請求項7から9のいずれか1項に記載の積層型圧電素子と、
前記積層型圧電素子の横方向の伸縮により縦方向変位が生じるように、前記圧電素子に結合される振動板と、
前記振動板で発生する縦方向変位による振動力を増加させる質量体と、
前記積層型圧電素子に電源を供給するために前記積層型圧電素子に結合される基板と、
を含む圧電振動モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電セラミック積層体、積層型圧電素子及びこれを含む圧電振動モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
圧電セラミックに電圧を印加すると電場が形成され、圧電セラミックの内部にダイポール(dipole)が発生する。ダイポールにより圧電セラミックの機械的変位を生じることができる。このような圧電セラミックを用いた電子部品を圧電素子と言う。
【0003】
圧電セラミックの変位は、形成される電場に比例して増加するので、圧電素子の変位を増加させるためには、より高い電圧を印加する必要がある。
【0004】
圧電素子の動作電圧を増加させることは、回路的に問題を生じさせることがある。このため、一般の圧電素子の場合は、圧電セラミックを多層に積層し、圧電セラミック層の間に内部電極を形成することにより、電極間の厚さを薄くする方法を採用している。つまり、電極間の厚さを薄くすることにより、同じ電圧であってもより大きな電場を形成させ、圧電素子の変位を増加させることができる。
【0005】
このような積層型圧電素子を、同時焼成する方法で製造する場合は、圧電素子の内部電極として圧電セラミックの焼結温度よりも融点の高い、高価のものを使用しなければならないという問題点がある。
【0006】
したがって、一般の積層型圧電素子を製造する場合には、低温焼結用圧電セラミックを使用し、焼結密度を増加できる焼結添加剤を添加することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】日本公開特許公報第2012−9661号 (2012.01.12.公開)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、圧電セラミックの表面が未焼結となることを防止するために、圧電セラミック積層体に添加される焼結添加剤の重量比(wt%)を圧電セラミック積層体の位置に応じて調整する。
【0009】
具体的に、圧電セラミック積層体のカバー部に対する焼結添加剤の重量比(wt%)を、圧電セラミック層に対する焼結添加剤の重量比(wt%)より大きくする。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施例に係る圧電セラミック積層体の断面及び圧電セラミック積層体の位置に応じる焼結添加剤の濃度を示す図である。
図2】本発明の一実施例に係る圧電セラミック積層体に焼結添加剤として使用する酸化鉄(Fe)の濃度に応じる焼結密度を示す図である。
図3】本発明の一実施例に係る圧電セラミック積層体に焼結添加剤として使用する酸化鉄(Fe)の濃度に応じる圧電特性を示す図である。
図4】本発明の一実施例に係る積層型圧電素子を示す断面図である。
図5】本発明の一実施例に係る積層型圧電素子の第1内部電極層及び第2内部電極層を示す平面図である。
図6】本発明の一実施例に係る圧電振動モジュールを示す図である。
図7】本発明の一実施例に係る圧電セラミック積層体の製造方法を示す工程図である。
図8】本発明の一実施例に係る積層型圧電素子の製造方法を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本願で用いた用語は、ただ特定の実施例を説明するために用いたものであって、本発明を限定するものではない。単数の表現は、文の中で明らかに表現しない限り、複数の表現を含む。本出願で、「含む」または「有する」などの用語は、明細書上に記載された特徴、数字、段階、動作、構成要素、部品またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定するものであって、一つまたはそれ以上の他の特徴や数字、段階、動作、構成要素、部品またはこれらを組み合わせたものの存在または付加可能性を予め排除するものではないと理解しなくてはならない。
【0012】
また、「結合」とは、各構成要素の間の接触関係において、各構成要素の間に物理的に直接接触する場合のみを意味することではなく、他の構成が各構成要素の間に介在され、その他の構成に構成要素がそれぞれ接触している場合まで包括する概念として使用する。
【0013】
以下に、本発明に係る圧電セラミック積層体、積層型圧電素子及びこれを含む圧電振動モジュールの実施例を添付図面に基づいて詳細に説明し、添付図面に基づいて説明するに当たって、同一または対応する構成要素には同一の図面符号を付し、これに対する重複説明は省略する。
【0014】
先ず、本発明の一実施例に係る圧電セラミック積層体を説明する。
【0015】
図1は、本発明の一実施例に係る圧電セラミック積層体の断面及び圧電セラミック積層体の位置に応じる焼結添加剤の濃度を示す図である。図2は、本発明の一実施例に係る圧電セラミック積層体に焼結添加剤として使用する酸化鉄(Fe)の濃度に応じる焼結密度を示す図である。図3は、本発明の一実施例に係る圧電セラミック積層体に焼結添加剤として使用する酸化鉄(Fe)の濃度に応じる圧電特性を示す図である。
【0016】
図1ないし図3に示すように、本発明の一実施例に係る圧電セラミック積層体100は、活性部10と、カバー部20と、焼結添加剤とを含む。
【0017】
活性部10は、複数の圧電セラミック層1が積層されて形成される。活性部10は、外部から電界が印加される場合、機械的変位が生じることができる。
【0018】
圧電セラミック層1は、圧電セラミック粉末と焼結添加剤などとを混合してスラリー(Slurry)を調製した後、ドクターブレードなどを用いて形成することができる。
【0019】
圧電セラミック粉末は、チタン酸ジルコン酸鉛(Lead zirconate titanate、以下、PZTと称する)を主成分とすることができる。すなわち、リラクサ(relaxor)の添加された、PNN−PZT系圧電セラミック粉末、PMN−PZT系圧電セラミック粉末またはPNN−PMN−PZT系圧電セラミック粉末であることができる。また、圧電セラミック粉末は、鉛が含まれていない無鉛系圧電セラミック粉末であることもできる。
【0020】
リラクサは、PZTの焼結温度を低減するために、または要求される範囲の圧電特性を実現するために添加することができる。
【0021】
圧電セラミック粉末は、酸化鉛(PbO)などのような原料を秤量した後、所望する組成となるように計算して原料を配合し、1次ボールミリングを行い、仮焼及び粉砕して製造することができる。
【0022】
カバー部20は、活性部10の上部及び下部に形成され、活性部10をカバーする。すなわち、カバー部20は、活性部10の上部及び下部をカバーし、外部の熱または衝撃などから活性部10を保護する。
【0023】
カバー部20は、活性部10と同時焼成するために、活性部10の圧電セラミック層1と同じく、セラミック材料を用いて形成することができる。
【0024】
カバー部20は、カバー部20と活性部10との間の熱膨脹率の差及び機械的結合などを考慮して、上述した圧電セラミック層1に使用された圧電セラミック粉末を用いて形成することができる。
【0025】
焼結添加剤は、圧電セラミック層1及びカバー部20にそれぞれ添加される。
【0026】
通常焼結添加剤は、セラミックの焼結を助けるためにセラミックに添加するものであって、相対的に低い融点を有するので、焼結時に液状を形成し、液状を介した物質の移動を促進することができる。このため、比較的に低温であってもセラミックの焼結密度を高めることができる。
【0027】
ここで、カバー部20に添加された焼結添加剤の、カバー部20に対する重量比(wt%)は、圧電セラミック層1に添加された焼結添加剤の圧電セラミック層1に対する重量比(wt%)よりも大きい。
【0028】
一般的に、成形体(green body)を焼結して焼結体を形成するとき、焼結添加剤が成形体の表面で揮発してしまうことがあった。これにより、焼結体の表面には未焼結状態となる現象が発生することがある。
【0029】
したがって、本実施例に係る圧電セラミック積層体においては、表面に該当するカバー部20に対する焼結添加剤の重量比を相対的に増加させる。
【0030】
カバー部20及び圧電セラミック層1に焼結添加剤を添加するとき、カバー部20に対する焼結添加剤の重量比(wt%)が圧電セラミック層1に対する焼結添加剤の重量比(wt%)よりも大きくなるように調整することができる。その調整方法は本発明とは無関係であるが、簡単に説明すると、焼結時に、カバー部20から揮発する焼結添加剤の量を考慮してカバー部20に添加する焼結添加剤の量を調整すればよい。
【0031】
焼結添加剤は、通常化合物であり、焼結時に化学反応によって本来の化学結合が破壊されたりする。したがって、カバー部20に添加された焼結添加剤のカバー部20に対する重量比(wt%)とは、焼結後にカバー部20に存在する焼結添加剤の陽イオンの重量比(wt%)を意味することができる。圧電セラミック層1に添加された焼結添加剤の圧電セラミック層1に対する重量比(wt%)も同じく意味解釈され得る。
【0032】
このように、本実施例に係る圧電セラミック積層体100は、カバー部20に添加する焼結添加剤の量を相対的に増加させることによりカバー部20が未焼結となることを防止することができる。
【0033】
また、カバー部20が未焼結により圧電セラミック積層体100に歪み(warpage)現象が発生したり、活性部10が外部の衝撃に露出されたりすることを防止することができる。これにより、圧電機能の低下を防止することができる。
【0034】
焼結添加剤は、酸化鉄(Fe)、酸化亜鉛(ZnO)及びビスマス鉄酸化物(BiFeO)のうちの少なくとも1種を含む。
【0035】
カバー部20に添加された焼結添加剤のカバー部20に対する重量比(wt%)は、0.5wt%超過2wt%未満である。
【0036】
図2を参照すると、カバー部20に酸化鉄(Fe)を焼結添加剤として添加し、同じ温度及び時間の条件下で焼結を行った場合、カバー部20の焼結密度は、カバー部20に対する酸化鉄(Fe)の重量比(wt%)が2wt%を超過するときに急激に低減する。すなわち、酸化鉄(Fe)のカバー部20に対する重量比(wt%)が2wt%を超過すると、カバー部20の焼結密度が低減して未焼結現象が発生することになる。
【0037】
カバー部20に添加する焼結添加剤の重量比を制限することにより、カバー部20の未焼結を防止することができ、活性部10をより効率的に保護することができる。
【0038】
圧電セラミック層1に添加する焼結添加剤の圧電セラミック層1に対する重量比(wt%)は、0.2wt%以上0.5wt%以下である。
【0039】
図3を参照すると、焼結体の圧電特性は、成形体に添加された酸化鉄(Fe)の重量比(wt%)に応じて変化する。
【0040】
図3の焼結体は、PNN−PZT系圧電セラミック粉末と、焼結添加剤として酸化鉄(Fe)、酸化鉛(PbO)及び酸化銅(CuO)とを用いて成形体を形成した後に焼結したものである。
【0041】
酸化鉄の重量比(wt%)が0.2wt%未満である場合及び0.5wt%を超過する場合は、室温における圧電歪定数(d31)及び抗電場(coercive field、E)がそれぞれ低減することが分かる。
【0042】
圧電歪定数及び抗電場の強さは、その値が大きいほど圧電体として用いることが適する。したがって、本実施例では圧電セラミック層1に添加する焼結添加剤の圧電セラミック層1に対する重量比(wt%)を0.2wt%以上0.5wt%以下に制限する。
【0043】
圧電セラミック層1に添加する焼結添加剤の重量比を制限することにより、圧電機能を発揮する活性部10の圧電機能をより向上させることができる。
【0044】
焼結添加剤は、圧電セラミック層1に添加する第1焼結添加剤とカバー部20に添加する第2焼結添加剤とに分けることができ、第1及び第2焼結添加剤は、それぞれ酸化鉄(Fe)を含む。
【0045】
第1焼結添加剤は、圧電セラミック層1に添加され、第2焼結添加剤は、カバー部20に添加される。第1焼結添加剤と第2焼結添加剤は、互いに共通の物質を使用し、ただその割合を異にすることで分けられてもよく、異なる種類の物質を用いることで分けられてもよい。但し、第1及び第2焼結添加剤のそれぞれは共通に酸化鉄を含む。
【0046】
上述したように、カバー部20及び圧電セラミック層1における焼結添加剤の重量比(wt%)は、焼結添加剤を構成する陽イオンの重量比(wt%)として解釈できるが、第1及び第2焼結添加剤が共通に酸化鉄を含むので、重量比(wt%)を容易に比較することができる。
【0047】
圧電セラミック層1及びカバー部20は、同じ組成の圧電セラミック粉末を用いて形成することができる。同じ組成の圧電セラミック粉末を母材にして圧電セラミック層1とカバー部20とを形成する場合、活性部10とカバー部20との熱膨脹率の差を低減でき、機械的結合力を向上できる。
【0048】
以下、本発明の一実施例に係る積層型圧電素子を説明する。
【0049】
図4は、本発明の一実施例に係る積層型圧電素子を示す断面図であり、図5は、本発明の一実施例に係る積層型圧電素子の第1内部電極層及び第2内部電極層を示す平面図である。
【0050】
図4及び図5に示すように、本発明の一実施例に係る積層型圧電素子1000は、圧電セラミック積層体100、内部電極層2、外部電極部200及びビアホール3を含む。
【0051】
圧電セラミック積層体100については上述したので、詳細な説明は省略する。
【0052】
内部電極層2は、活性部10とカバー部20との間、及び隣接する圧電セラミック層1間にそれぞれ形成される。すなわち、内部電極層2は、活性部10を形成するすべての圧電セラミック層1それぞれの上面及び下面に形成されることができる。
【0053】
内部電極層2は、導電性物質を含む。
【0054】
ここで、導電性物質としては、圧電セラミック積層体100と内部電極層2とを同時焼成するために圧電セラミック層1の焼結温度よりも高い融点を有する単一金属または金属合金を用いることができる。例として、Pd、Pt、Ru、Ir、Au、Ni、Mo、W、Al、Ta、Ag及びTiからなる群から選択される少なくとも1種の金属または、Pd、Pt、Ru、Sr、La、Ir、Au、Ni、Co、Mo、W、Al、Ta及びTiからなる群から選択される少なくとも1種の金属の導電性酸化物または導電性窒化物で形成されることができる。
【0055】
また、内部電極層2は、パラジウム(Pd)−銀(Ag)の合金を含むことができ、パラジウム(Pd)−銀(Ag)の合金におけるパラジウムの含量は、0 wt%超過10wt%以下であることができる。
【0056】
外部電極部200は、活性部10の外部に形成される。外部電極部200は、活性部10の外部に形成され、後述するビアホール3により内部電極層2と電気的に接続することができる。外部電極部200は、隣接する内部電極層2に互いに異なる電荷を印加するように、互いに異なる極性を有する少なくても1対以上で構成されることができる。
【0057】
図4には、外部電極部200が上端部に位置するカバー部20の上面に形成されているが、必要によって、カバー部20の内部または下端部に位置するカバー部20の下面に形成されることも可能である。また、図4には、左側が正極、右側が負極になっているが、その逆も可能である。
【0058】
ビアホール3は外部電極部200に接続されて内部電極層2に電荷を印加するように圧電セラミック積層体100の内部に形成され、隣接する内部電極層2と交互に接続される。内部電極層2は、パターニングによりいずれか1つのビアホール3にのみ接続されることができる。
【0059】
図5を参照して、内部電極層2とビアホール3との交互の接続関係を説明する。
【0060】
第1圧電セラミック層1aの上面に第1内部電極層2aが形成され、第2圧電セラミック層1bの上部に第2内部電極層2bが形成される。
【0061】
第1内部電極層2aには、負電荷を供給する外部電極部200と電気的に接続されないように、負電荷を供給する外部電極部200と接続しているビアホール3aとは断絶されるパターンが形成されている。また、第2内部電極層2bには、正電荷を供給する外部電極部200に電気的に接続されないように、正電荷を供給する外部電極部200と接続しているビアホール3bとは断絶されるパターンが形成されている。第2内部電極層2bの下部に形成される第3内部電極層2cなども上述した方式のパターンが形成されている。
【0062】
したがって、第1内部電極層2a、第3内部電極層2c及び第5内部電極層2eには、正電荷を供給する外部電極部200と接続されているビアホール3bを介して正電荷が印加され、第2内部電極層2b及び第4内部電極層2dには、負電荷を供給する外部電極部200に接続されているビアホール3aを介して負電荷が印加される。
【0063】
このようにすることで、隣接した内部電極層2a、2bには、互いに異なる電荷が印加されることができる。
【0064】
図4には、圧電セラミック層1が4層積層され、内部電極層2が5層積層された構造を示しているが、これは一つの例示に過ぎず、必要な圧電特性に合わせて様々に変更することができる。
【0065】
また、上述したように、外部電極部200の極性を異にすることも可能であり、第2内部電極層2b 及び第4内部電極層2dに正電荷が印加されることも本発明の範囲に属する。同じく、内部電極層2がいずれかのビアホール3a、3bと断絶されるためのパターンは、様々な形状に変更することができる。
【0066】
一方、本発明に係る積層型圧電素子1000は、上述したように、外部の電荷を用いて機械的変位を生じるだけでなく、外力により発生した機械的変位により電荷を発生させる積層型圧電素子1000としても用いることができる。この場合には、外部電極部200が外部の電荷を積層型圧電素子1000に導く部材ではなく、積層型圧電素子1000の内部で発生した電荷を外部へ排出する部材として使用されることができる。
【0067】
以下、本発明の一実施例に係る圧電振動モジュールを説明する。
【0068】
図6は、本発明の一実施例に係る圧電振動モジュールを示す図面である。
【0069】
図6に示すように、本発明の一実施例に係る圧電振動モジュール5000は、積層型圧電素子1000と、振動板2000と、質量体3000と、基板4000とを含む。
【0070】
積層型圧電素子1000については、上述したので詳細な説明は省略する。
【0071】
振動板2000は、積層型圧電素子1000の横方向の伸縮により縦方向変位が生じるように積層型圧電素子1000に結合される。積層型圧電素子1000は、ボンディング方式またはソルダリング方式により振動板2000の一面に結合される。
【0072】
振動板2000は、電源を印加することにより引張及び圧縮変形を繰り返す積層型圧電素子1000と一体に変形するように、サス(Sus)のような弾性力を備えた金属材質を含むことができる。
【0073】
振動板2000と積層型圧電素子1000とがボンディング方式により結合された場合は、接着部材の硬化により発生し得るベンディング(Bending)現象を防止するために、振動板2000は、積層型圧電素子1000の熱膨脹係数と類似の材質であるインバー(Invar)を含むことができる。
【0074】
質量体3000は、振動板2000で発生する縦方向変位による振動力を増加させる。
【0075】
振動力を最大化するために、質量体3000は、積層型圧電素子1000の引張及び圧縮変形に応じて変位が最大に生じる振動板2000の最大変位箇所に質量体3000の中央部が結合されるようにすることができる。
【0076】
質量体3000は、金属(Steel)材質から構成できるが、同じ体積であっても相対的に密度の高いタングステンを含むことができる。
【0077】
基板4000は、積層型圧電素子1000に電源を供給するために、積層型圧電素子1000に結合される。積層型圧電素子1000に変形が生じるので基板4000は軟性基板であることができる。
【0078】
以下では、本発明の一実施例に係る圧電セラミック積層体の製造方法を説明する。一方、上述した圧電セラミック積層体100及び積層型圧電素子1000の説明と重複する範囲の説明は省略する。
【0079】
図7は、本発明の一実施例に係る圧電セラミック積層体の製造方法を示す工程図であり、図8は、本発明の一実施例に係る積層型圧電素子の製造方法を示す工程図である。
【0080】
図7を参照すると、本発明の一実施例に係る圧電セラミック積層体100の製造方法は、ステップS10で、第1シート及び第2シートをそれぞれ準備することから始まる。
【0081】
仮焼及び粉砕工程を経た圧電セラミック粉末に第1焼結添加剤などを添加して2次ボールミリングを行い、スラリーを調製してドクターブレードなどを用いて第1シートを形成することができる。第2シートも上述した方法と同じく形成することができるが、但し第2焼結添加剤が添加されることに差がある。
【0082】
その後、ステップS20で、第1シートの上部及び下部に第2シートを積層する。必要によって、第1シートは、複数積層することができ、最上部及び最下部の第1シートに第2シートを積層することができる。また、第2シート上に第1シートを複数積層した後に第2シートを積層することもできる。
【0083】
積層方法は、基準孔などを加工して位置を合わせる方法を採用することができる。
【0084】
次に、ステップS30で、第1シート及び第2シートを焼結して圧電セラミック層1及びカバー部20を形成する。
【0085】
なお、図8を参照して本発明の一実施例に係る積層型圧電素子の製造方法を説明する。
【0086】
図8を参照すると、本発明の一実施例に係る積層型圧電素子1000の製造方法は、ステップS100で、第1シート及び第2シートをそれぞれ準備するステップから始まる。
【0087】
その後、ステップS200で、第1シートにビアホール3を形成する。準備した第1シートにドリルなどを用いて孔を加工し、メッキなどの方法を用いて孔に導電性物質を充填してビアホール3を形成することができる。
【0088】
次に、ステップS300で、ビアホール3の形成された第1シートの上部に内部電極層2を形成する。内部電極層2は、上述した導電性物質を用いて形成することができる。このとき、上述した物質を蒸着させたり、導電性物質をペースト状に製作して印刷したり、シート状に製作した内部電極層2を付着したりする方式などを用いることができる。
【0089】
その後、ステップS400で、上部に内部電極層2の形成された第1シートを、必要によって複数積層して積層体を形成する。
【0090】
次に、ステップS500で、積層体の上部及び下部に第2シートを積層する。このとき、積層体の下部には内部電極層2が形成されていないこともあるので、この場合には積層体の下部に内部電極層2を形成し、その後、第2シートを積層体の上部及び下部に積層することができる。
【0091】
その後、ステップS600で、第2シートの積層された積層体を焼結する。以後、外部電極部200を形成すれば、本発明の一実施例に係る積層型圧電素子1000を製造することができる。
【0092】
以上、本発明の一実施例について説明したが、当該技術分野で通常の知識を有する者であれば特許請求範囲に記載した本発明の思想から逸脱しない範囲内で、構成要素の付加、変更、削除または追加などにより本発明を多様に修正及び変更することができ、これも本発明の権利範囲内に含まれるものと言えよう。
【符号の説明】
【0093】
1 圧電セラミック層
1a 第1圧電セラミック層
1b 第2圧電セラミック層
1c 第3圧電セラミック層
1d 第4圧電セラミック層
2 内部電極層
2a 第1内部電極層
2b 第2内部電極層
2c 第3内部電極層
2d 第4内部電極層
2e 第5内部電極層
3、3a、3b ビアホール
10 活性部
20 カバー部
100 圧電セラミック積層体
200 外部電極部
1000 積層型圧電素子
2000 振動板
3000 質量体
4000 基板
5000 圧電振動モジュール
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8