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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-92404(P2016-92404A)
(43)【公開日】2016年5月23日
(54)【発明の名称】チップ電子部品及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01F 17/04 20060101AFI20160418BHJP
   H01F 27/29 20060101ALI20160418BHJP
   H01F 27/02 20060101ALI20160418BHJP
【FI】
   H01F17/04 F
   H01F15/10 C
   H01F15/10 F
   H01F15/02 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-196149(P2015-196149)
(22)【出願日】2015年10月1日
(31)【優先権主張番号】10-2014-0152057
(32)【優先日】2014年11月4日
(33)【優先権主張国】KR
(71)【出願人】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ−メカニックス カンパニーリミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ヤン、ユン ヤン
(72)【発明者】
【氏名】チョイ、ヨウン キュ
(72)【発明者】
【氏名】キム、ヒエ アー
(72)【発明者】
【氏名】カン、ドゥ ウォン
(72)【発明者】
【氏名】カン、ミ ジュン
【テーマコード(参考)】
5E070
【Fターム(参考)】
5E070AA01
5E070AB01
5E070AB10
5E070BB03
5E070DA13
5E070DA20
(57)【要約】
【課題】本発明は、チップ電子部品及びその製造方法に関する。
【解決手段】本発明は、金属磁性体粉末を含む磁性体本体と、上記磁性体本体の内部に埋設された内部コイル部と、上記磁性体本体の上面及び下面のうち少なくとも1つに配置されためっき滲み防止層と、を含み、上記めっき滲み防止層は粒径が0.1μm〜10μmの金属磁性体粉末を含むチップ電子部品に関する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属磁性体粉末を含む磁性体本体と、
前記磁性体本体の内部に埋設された内部コイル部と、
前記磁性体本体の上面及び下面のうち少なくとも1つに配置されためっき滲み防止層と、を含み、
前記めっき滲み防止層は粒径が0.1μm〜10μmの金属磁性体粉末を含む、チップ電子部品。
【請求項2】
前記磁性体本体の厚さをt、前記めっき滲み防止層の厚さをtとすると、t/tが0.25以下である、請求項1に記載のチップ電子部品。
【請求項3】
前記めっき滲み防止層の厚さは5μm〜20μmである、請求項1または2に記載のチップ電子部品。
【請求項4】
前記めっき滲み防止層の絶縁抵抗は700MΩ以上である、請求項1から3のいずれか1項に記載のチップ電子部品。
【請求項5】
前記めっき滲み防止層は熱硬化性樹脂をさらに含み、
前記めっき滲み防止層は前記熱硬化性樹脂を15wt%〜30wt%含む、請求項1から4のいずれか1項に記載のチップ電子部品。
【請求項6】
前記めっき滲み防止層の透磁率は15H/m〜30H/mである、請求項1から5のいずれか1項に記載のチップ電子部品。
【請求項7】
前記めっき滲み防止層の表面粗さは0.5μm未満である、請求項1から6のいずれか1項に記載のチップ電子部品。
【請求項8】
前記磁性体本体は、第1金属磁性体粉末及び前記第1金属磁性体粉末より平均粒径の小さい第2金属磁性体粉末を含み、
前記第1金属磁性体粉末は粒径が10μm〜50μmであり、前記第2金属磁性体粉末は粒径が0.5μm〜6μmである、請求項1から7のいずれか1項に記載のチップ電子部品。
【請求項9】
前記第1金属磁性体粉末及び前記第2金属磁性体粉末は8:2〜5:5の重量比で混合される、請求項8に記載のチップ電子部品。
【請求項10】
前記磁性体本体の透磁率は31H/m〜50H/mである、請求項1から9のいずれか1項に記載のチップ電子部品。
【請求項11】
前記内部コイル部の端部と連結されるように前記磁性体本体の外側に配置された外部電極をさらに含み、
前記外部電極は、電極層及び前記電極層上に形成されためっき層を含む、請求項1から10のいずれか1項に記載のチップ電子部品。
【請求項12】
前記めっき層は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)及びスズ(Sn)からなる群より選択される何れか1つを含む、請求項11に記載のチップ電子部品。
【請求項13】
金属磁性体粉末を含む磁性体本体と、
前記磁性体本体の内部に埋設された内部コイル部と、
前記磁性体本体の上面及び下面のうち少なくとも1つに配置された高絶縁抵抗層と、を含み、
前記高絶縁抵抗層は絶縁抵抗が700MΩ以上である、チップ電子部品。
【請求項14】
前記高絶縁抵抗層は粒径が0.1μm〜10μmの金属磁性体粉末を含む、請求項13に記載のチップ電子部品。
【請求項15】
前記磁性体本体の厚さをt、前記高絶縁抵抗層の厚さをtとすると、t/tが0.25以下である、請求項13または14に記載のチップ電子部品。
【請求項16】
内部コイル部を形成する段階と、
前記内部コイル部の上部及び下部に金属磁性体粉末を含む第1磁性体シートを積層して磁性体本体を形成する段階と、
前記磁性体本体の上面及び下面のうち少なくとも1つに金属磁性体粉末を含む第2磁性体シートを積層してめっき滲み防止層を形成する段階と、を含み、
前記第2磁性体シートは粒径が0.1μm〜10μmの金属磁性体粉末を含む、チップ電子部品の製造方法。
【請求項17】
前記第2磁性体シートは前記第1磁性体シートより高い絶縁抵抗を有する、請求項16に記載のチップ電子部品の製造方法。
【請求項18】
前記第1磁性体シートは、第1金属磁性体粉末及び前記第1金属磁性体粉末より平均粒径の小さい第2金属磁性体粉末を含み、
前記第1金属磁性体粉末は粒径が10μm〜50μmであり、前記第2金属磁性体粉末は粒径が0.5μm〜6μmである、請求項16または17に記載のチップ電子部品の製造方法。
【請求項19】
前記めっき滲み防止層が形成された前記磁性体本体の外側に前記内部コイル部の端部と連結されるように外部電極を形成する段階をさらに含み、
前記外部電極を形成する段階は、
前記磁性体本体の表面に電極層を形成し、前記電極層上にめっき層を形成する、請求項16から18のいずれか1項に記載のチップ電子部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チップ電子部品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
チップ電子部品の一つであるインダクタ(inductor)は、抵抗、キャパシタとともに電子回路をなしてノイズ(Noise)を除去する代表的な受動素子である。
【0003】
薄膜型インダクタは、めっきにより内部コイル部を形成した後、磁性体粉末及び樹脂を混合した磁性体粉末−樹脂複合体を硬化して磁性体本体を製造し、磁性体本体の外側に外部電極を形成することで製造する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−166455号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、外部電極を形成する際にチップ電子部品の表面に発生するめっき滲みを改善したチップ電子部品及びその製造方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態は、金属磁性体粉末を含む磁性体本体と、上記磁性体本体の内部に埋設された内部コイル部と、上記磁性体本体の上面及び下面のうち少なくとも1つに配置されためっき滲み防止層と、を含み、上記めっき滲み防止層は、粒径が0.1μm〜10μmである金属磁性体粉末を含むチップ電子部品を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によると、外部電極を形成する際にチップ電子部品の表面に発生するめっき滲みを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態によるチップ電子部品の内部コイル部が示された概略斜視図である。
図2図1のI−I'線による断面図である。
図3図1のII−II'線による断面図である。
図4図2の「A」部分の一実施形態を拡大して示した概略図である。
図5図2の「A」部分の他の実施形態を拡大して示した概略図である。
図6】本発明の一実施形態によるチップ電子部品の製造工程を示す工程図である。
図7a】本発明の一実施形態によるチップ電子部品の製造工程を順に説明するものである。
図7b】本発明の一実施形態によるチップ電子部品の製造工程を順に説明するものである。
図7c】本発明の一実施形態によるチップ電子部品の製造工程を順に説明するものである。
図7d】本発明の一実施形態によるチップ電子部品の製造工程を順に説明するものである。
図7e】本発明の一実施形態によるチップ電子部品の製造工程を順に説明するものである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下では、添付の図面を参照し、本発明の好ましい実施形態について説明する。しかし、本発明の実施形態は様々な他の形態に変形されることができ、本発明の範囲は以下で説明する実施形態に限定されない。また、本発明の実施形態は、当該技術分野で平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。図面における要素の形状及び大きさなどはより明確な説明のために誇張されることがある。
【0010】
チップ電子部品
以下では、本発明の一実施形態によるチップ電子部品を、特に薄膜型インダクタをもって説明するが、必ずしもこれに限定されない。
【0011】
図1は、本発明の一実施形態のチップ電子部品による内部コイル部が示された概略斜視図である。
【0012】
図1を参照すると、チップ電子部品の一例として、電源供給回路の電源ラインに用いられる薄膜型インダクタが開示されている。
【0013】
本発明の一実施形態によるチップ電子部品100は、磁性体本体50と、磁性体本体50の内部に埋設された内部コイル部42、44と、磁性体本体50の上面及び下面に配置されためっき滲み防止層60と、磁性体本体50の外側に配置されて内部コイル部42、44と電気的に連結された外部電極80と、を含む。
【0014】
本発明の一実施形態によるチップ電子部品100は、図1を参照して、「長さ」方向は「L」方向、「幅」方向は「W」方向、「厚さ」方向は「T」方向と定義する。
【0015】
磁性体本体50は、金属磁性体粉末を含む。
【0016】
上記金属磁性体粉末は、Fe、Si、Cr、Al及びNiからなる群より選択される何れか1つ以上を含む合金であってもよく、例えば、Fe−Si−B−Cr系非晶質金属粒子を含んでもよいが、必ずしもこれに限定されない。
【0017】
上記金属磁性体粉末は、エポキシ(epoxy)樹脂またはポリイミド(polyimide)樹脂などの熱硬化性樹脂に分散された形態で含まれてもよい。
【0018】
磁性体本体50に含まれる金属磁性体粉末の充填率を向上させるために粒度の異なる2種以上の金属磁性体粉末を一定の比率で混合して製造することができる。
【0019】
定められた単位体積で高いインダクタンスを得るために高透磁率の粒度の大きい金属磁性体粉末を使用し、当該粒度の大きい金属磁性体粉末に粒度の小さい金属磁性体粉末を混合し充填率を向上させて、高透磁率を確保することができ、高周波数及び高電流での磁性損失(Core Loss)による効率の低下を防止することができる。
【0020】
しかし、このように粒度の大きい金属磁性体粉末と粒度の小さい金属磁性体粉末を混合すると、磁性体本体の表面粗さが大きくなる。特に、個別のチップサイズに切断した磁性体本体を研磨する過程で、磁性体本体の表面に粒度の大きい金属磁性体粉末が突出し、突出した部位の絶縁コーティング層が剥離される。
【0021】
これにより、後に、外部電極のめっき層を形成する際、絶縁コーティング層が剥離された金属磁性体粉末上にもめっき層が形成されるめっき滲み不良が発生するという問題がある。
【0022】
そこで、本発明の一実施形態は、磁性体本体50の上面及び下面のうち少なくとも1つに粒度の小さい微粉からなるめっき滲み防止層60を形成することで、上述した問題を解決することができる。
【0023】
本発明の一実施形態によるめっき滲み防止層60に対する具体的な説明は、後述する。
【0024】
磁性体本体50の内部に配置された絶縁基板20の一面にコイル状のパターンを有する内部コイル部42が形成され、絶縁基板20の反対面にもコイル状のパターンを有する内部コイル部44が形成される。
【0025】
絶縁基板20は、例えば、ポリプロピレングリコール(PPG)基板、フェライト基板または金属系軟磁性基板などで形成される。
【0026】
絶縁基板20の中央部を貫通して孔を形成し、当該孔を金属磁性体粉末で充填してコア部55を形成する。金属磁性体粉末で充填されたコア部55を形成することで、インダクタンスを向上させることができる。
【0027】
内部コイル部42、44はスパイラル(spiral)状にコイルパターンが形成されてもよく、絶縁基板20の一面と反対面とに形成される内部コイル部42、44は絶縁基板20に形成されるビア電極を介して電気的に接続される。
【0028】
内部コイル部42、44及びビア電極は、電気伝導性に優れた金属を含んで形成することができ、例えば、銀(Ag)、パラジウム(Pd)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、金(Au)、銅(Cu)、白金(Pt)またはこれらの合金などで形成されてもよい。
【0029】
絶縁基板20の一面に形成される内部コイル部42の一端部は、磁性体本体50の長さ方向の一端面に露出することができ、絶縁基板20の反対面に形成される内部コイル部44の一端部は、磁性体本体50の長さ方向の他端面に露出することができる。
【0030】
磁性体本体50の長さ方向の両端面に露出する内部コイル部42、44と接続するように、長さ方向の両端面には外部電極80が形成される。
【0031】
外部電極80は、電気伝導性に優れた導電性金属を含んで形成することができ、例えば、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、スズ(Sn)または銀(Ag)などの単独で、またはこれらの合金等で形成してもよい。
【0032】
図2図1のI−I'線による断面図であり、図3図1のII−II'線による断面図である。
【0033】
図2及び図3を参照すると、本発明の一実施形態による磁性体本体50には、第1金属磁性体粉末51と、第1金属磁性体粉末51よりD50の小さい第2金属磁性体粉末52が混在している。
【0034】
50の大きい第1金属磁性体粉末51は高透磁率を実現し、D50の大きい第1金属磁性体粉末51とD50の小さい第2金属磁性体粉末52を混合して充填率を上げて透磁率をさらに向上させ、Q特性を向上させることができる。
【0035】
第1金属磁性体粉末51は、D50が18μm〜22μmであることができ、第2金属磁性体粉末52は、D50が2μm〜4μmであることができる。
【0036】
上記D50は、レーザー回折散乱法を用いた測定装置で粒子径、粒度分布を測定する。
【0037】
第1金属磁性体粉末51の粒径は10μm〜50μmであることができ、第2金属磁性体粉末52の粒径は0.5μm〜6μmであることができる。
【0038】
磁性体本体50には、平均粒径の大きい第1金属磁性体粉末51と、第1金属磁性体粉末51より平均粒径の小さい第2金属磁性体粉末52とが混在している。
【0039】
第1金属磁性体粉末51及び第2金属磁性体粉末52は、8:2〜5:5の重量比で混合されてもよい。
【0040】
第1金属磁性体粉末51及び第2金属磁性体粉末52が上記範囲内の重量比で混合されることにより充填率が向上して透磁率が増加し、インダクタンスが向上することができる。
【0041】
磁性体本体50の透磁率は31H/m〜50H/mであってもよい。
【0042】
磁性体本体50の外側には、内部コイル部42、44の端部と接続する外部電極80が形成される。
【0043】
外部電極80は、導電性ペーストを用いて形成した電極層81と、電極層81上にめっき工程により形成しためっき層82と、を含んでもよい。
【0044】
電極層81は、銅(Cu)、ニッケル(Ni)及び銀(Ag)からなる群より選択される何れか1つ以上の導電性金属と熱硬化性樹脂を含む導電性樹脂層であってもよい。
【0045】
めっき層82は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)及びスズ(Sn)からなる群より選択される何れか1つ以上を含んでもよく、例えば、ニッケル(Ni)層とすず(Sn)層が順に形成されることができる。
【0046】
めっき層82を形成するめっき工程の際、磁性体本体50の表面に露出した粗粉の金属磁性体粉末上にめっき層が形成されるめっき滲み不良が発生する恐れがある。
【0047】
しかし、本発明の一実施形態によると、磁性体本体50の上面及び下面に、微粉の金属磁性体粉末からなって高絶縁抵抗を示す高絶縁抵抗層60を形成するが、これがめっき滲み防止層の役割をすることができる。
【0048】
上記高絶縁抵抗層とめっき滲み防止層は同一の構成要素であり、以下ではめっき滲み防止層に統一して説明する。
【0049】
高透磁率を具現するために粗粉の金属磁性体粉末を使用すると、磁性体本体50の表面に粗粉の金属磁性体粉末が露出し、外部電極のめっき層82を形成するめっき工程時に上記粗粉の金属磁性体粉末の露出部位にめっき層が形成されるという不良が発生する。
【0050】
しかし、本発明の一実施形態は、磁性体本体50の上面及び下面に微粉の金属磁性体粉末からなるめっき滲み防止層60を形成して磁性体本体50の表面の粗さを改善し、粗粉によるめっき滲み現象を改善することができる。
【0051】
めっき滲み防止層60は金属磁性体粉末61を含むため、めっき滲み防止層の形成に伴う磁性体本体の厚さ減少によって生じるインダクタンスの低下を防止することができる。
【0052】
即ち、めっき滲み防止層60は、微粉の金属磁性体粉末61を含むことにより、めっき滲み現象を改善するだけでなく、インダクタンスの形成にも寄与する。
【0053】
磁性体本体50の厚さをt、めっき滲み防止層60の厚さをtとすると、t/tは0.25以下であることができる。
【0054】
/tが0.25を超えると、磁性体本体の厚さが大きく減少するため、インダクタンスが大きく低下する恐れがある。
【0055】
めっき滲み防止層60の厚さは5μm〜20μmであることができる。
【0056】
めっき滲み防止層60の厚さが5μm未満では磁性体本体の表面粗さが十分に改善されず、めっき滲みが発生する恐れがあり、20μmを超えると、磁性体本体の厚さが大きく減少するため、インダクタンスが大きく低下する恐れがある。
【0057】
めっき滲み防止層60の絶縁抵抗は700MΩ以上であることができる。
【0058】
めっき滲み防止層60は微粉の金属磁性体粉末61からなり、700MΩ以上の高い絶縁抵抗を示すことができる。
【0059】
めっき滲み防止層60の絶縁抵抗が700MΩ未満ではめっき滲みの抑制効果が不十分で、外部電極のめっき層82を形成するめっき工程時に粗粉の金属磁性体粉末の露出部位にめっき層が形成される恐れがある。
【0060】
図4図2の「A」部分の一実施形態を拡大して示した概略図である。
【0061】
図4を参照すると、めっき滲み防止層60は、粒径が0.1μm〜10μmの微粉の金属磁性体粉末61を含む。
【0062】
めっき滲み防止層60に含まれた金属磁性体粉末61の粒径が0.1μm未満では充填率及び透磁率が減少してインダクタンスが低下することがあり、粒径が10μmを超えると、磁性体本体の表面粗さが十分に改善されずめっき滲みが発生する恐れがある。
【0063】
めっき滲み防止層60は熱硬化性樹脂をさらに含み、金属磁性体粉末61は、エポキシ(epoxy)樹脂またはポリイミド(polyimide)樹脂などの熱硬化性樹脂に分散された状態で含まれてもよい。
【0064】
めっき滲み防止層60は、上記熱硬化性樹脂を15wt%〜30wt%含むことができる。
【0065】
図5は、図2の「A」部分の他の実施形態を拡大して示した概略図である。
【0066】
図5を参照すると、めっき滲み防止層60には平均粒径の異なる微粉の金属磁性体粉末61、61'が混在している。
【0067】
例えば、D50が1.5μm〜3.5μmの金属磁性体粉末61と、これより平均粒径の小さいD50が0.3μm〜1.5μmの金属磁性体粉末61'と、を含んでもよい。
【0068】
このように、D50が異なる微粉の金属磁性体粉末61、61'を混合することにより充填率を向上させることができる。めっき滲み防止層60に含まれる磁性体粉末の充填率を向上させることで、めっき滲み防止層60の形成によるインダクタンスの低下及びDC−Bias特性の低下を減少させることができ、表面粗さを改善し、めっき滲み現象を改善することができる。
【0069】
本発明の一実施形態によるめっき滲み防止層60は、透磁率が15H/m〜30H/mであることができる。
【0070】
また、本発明の一実施形態によるめっき滲み防止層60は、表面粗さが0.5μm未満に具現されることができる。これにより、外部電極のめっき層82の形成時に発生し得るめっき滲み現象を改善することができる。
【0071】
チップ電子部品の製造方法
図6は本発明の一実施形態によるチップ電子部品の製造工程を示す工程図であり、図7a〜図7eは本発明の一実施形態によるチップ電子部品の製造工程を順に説明するものである。
【0072】
図6及び図7aを参照すると、まず、絶縁基板20の一面及び反対面に内部コイル部42、44を形成する。
【0073】
内部コイル部42、44の形成方法としては、電気めっき法が挙げられるが、これに限定されず、内部コイル部42、44は、電気伝導性に優れた金属を含んで形成することができ、例えば、銀(Ag)、パラジウム(Pd)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、金(Au)、銅(Cu)、白金(Pt)またはこれらの合金などを使用することができる。
【0074】
図6及び図7bを参照すると、内部コイル部42、44の上部及び下部に複数の第1磁性体シート50a、50b、50c、50d、50e、50fを積層して磁性体本体50を形成する。
【0075】
第1磁性体シート50a、50b、50c、50d、50e、50fは磁性体粉末、例えば、金属磁性体粉末、バインダー及び溶剤などの有機物を混合してスラリーにし、当該スラリーをドクターブレード法でキャリアフィルム(carrier film)上に数十μmの厚さに塗布した後、乾燥してシート(sheet)状に作製することができる。
【0076】
第1磁性体シート50a、50b、50c、50d、50e、50fは、第1金属磁性体粉末51と、第1金属磁性体粉末51よりD50の小さい第2金属磁性体粉末52とを混合して形成することができる。
【0077】
第1金属磁性体粉末51は、D50が18μm〜22μmであることができ、第2金属磁性体粉末52は、D50が2μm〜4μmであることができる。
【0078】
第1金属磁性体粉末51の粒径は10μm〜50μmであることができ、第2金属磁性体粉末52の粒径は0.5μm〜6μmであることができる。
【0079】
複数の第1磁性体シート50a、50b、50c、50d、50e、50fを積層した後、ラミネート法や静水圧プレス法で圧着し、硬化して磁性体本体50を形成することができる。
【0080】
このとき、個別のチップサイズに切断した磁性体本体を研磨する過程で、磁性体本体の表面に粗粉である第1金属磁性体粉末51が突出し、突出した部位の絶縁コーティング層が剥離される。
【0081】
これにより、外部電極のめっき層を形成する際、絶縁コーティング層が剥離された金属磁性体粉末上にめっき層が形成されるめっき滲み不良が発生する。
【0082】
図6及び図7cを参照すると、磁性体本体50の上面及び下面のうち少なくとも1つに第2磁性体シート60a、60bを積層してめっき滲み防止層60を形成する。
【0083】
第2磁性体シート60a、60bは、微粉の金属磁性体粉末、バインダー、及び溶剤などの有機物を混合してスラリーにし、当該スラリーをドクターブレード法でキャリアフィルム(carrier film)上に数十μmの厚さに塗布した後、乾燥してシート(sheet)状に作製することができる。
【0084】
第2磁性体シート60a、60bは、粒径が0.1μm〜10μmの金属磁性体粉末61を含んでもよい。
【0085】
第2磁性体シート60a、60bは微粉の金属磁性体粉末61からなるため、第1磁性体シート50a、50b、50c、50d、50e、50fより高い絶縁抵抗を示す。
【0086】
第2磁性体シート60a、60bを積層し、ラミネート法や静水圧プレス法により圧着してめっき滲み防止層60を形成してもよい。
【0087】
このように、磁性体本体50の上面及び下面に微粉の金属磁性体粉末からなるめっき滲み防止層60を形成することで、磁性体本体50の表面粗さを改善し、粗粉によるめっき滲み現象を改善することができる。
【0088】
図7cには、第2磁性体シート60a、60bが微粉である金属磁性体粉末61を含む実施形態のみを示したが、これに制限されるものではなく、平均粒径が異なる微粉の金属磁性体粉末61、61'が混在する他の実施形態であることもできる。
【0089】
図7dを参照すると、磁性体本体50の厚さをt、めっき滲み防止層60の厚さをtとすると、t/tが0.25以下を満たすように磁性体本体50とめっき滲み防止層60を形成することができる。
【0090】
/tが0.25を超えると、磁性体本体の厚さが大きく減少するため、インダクタンスが大きく低下する恐れがある。
【0091】
図7eを参照すると、磁性体本体50の長さ方向の両端面に露出する内部コイル部42、44と接続するように、長さ方向の両端面には外部電極80を形成する。
【0092】
まず、磁性体本体50の長さ方向の両端面に電極層81を形成し、電極層81上にめっき層82を形成してもよい。
【0093】
電極層81は、銅(Cu)、ニッケル(Ni)及び銀(Ag)からなる群より選択される何れか1つ以上の導電性金属と熱硬化性樹脂を含むペーストを用いて導電性樹脂層を形成することができ、例えば、ディッピング(dipping)法などで形成することができる。
【0094】
めっき層82は、例えば、ニッケル(Ni)層とスズ(Sn)層を順にに形成することができる。
【0095】
本発明の一実施形態は、磁性体本体50の上面及び下面のうち少なくとも1つにめっき滲み防止層60を形成して、上記外部電極のめっき層82を形成するめっき工程時に磁性体本体50の表面に露出した金属磁性体粉末上にめっき層が形成されるめっき滲み現象を改善することができる。
【0096】
その他、上述した本発明の一実施形態によるチップ電子部品の特徴と同じ部分に対する説明は省略する。
【0097】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の権利範囲はこれに限定されず、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想から外れない範囲内で多様な修正及び変形が可能であるということは、当技術分野の通常の知識を有する者には明らかである。
【符号の説明】
【0098】
100 チップ電子部品
20 絶縁基板
42、44 内部コイル部
50 磁性体本体
51 第1金属磁性体粉末
52 第2金属磁性体粉末
55 コア部
60 めっき滲み防止層
61、61' 金属磁性体粉末
80 外部電極
81 電極層
82 めっき層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7a
図7b
図7c
図7d
図7e