【解決手段】本発明は、金属磁性体粉末を含む磁性体本体と、上記磁性体本体の内部に埋設された内部コイル部と、上記磁性体本体の上面及び下面のうち少なくとも1つに配置されためっき滲み防止層と、を含み、上記めっき滲み防止層は粒径が0.1μm〜10μmの金属磁性体粉末を含むチップ電子部品に関する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下では、添付の図面を参照し、本発明の好ましい実施形態について説明する。しかし、本発明の実施形態は様々な他の形態に変形されることができ、本発明の範囲は以下で説明する実施形態に限定されない。また、本発明の実施形態は、当該技術分野で平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。図面における要素の形状及び大きさなどはより明確な説明のために誇張されることがある。
【0010】
チップ電子部品
以下では、本発明の一実施形態によるチップ電子部品を、特に薄膜型インダクタをもって説明するが、必ずしもこれに限定されない。
【0011】
図1は、本発明の一実施形態のチップ電子部品による内部コイル部が示された概略斜視図である。
【0012】
図1を参照すると、チップ電子部品の一例として、電源供給回路の電源ラインに用いられる薄膜型インダクタが開示されている。
【0013】
本発明の一実施形態によるチップ電子部品100は、磁性体本体50と、磁性体本体50の内部に埋設された内部コイル部42、44と、磁性体本体50の上面及び下面に配置されためっき滲み防止層60と、磁性体本体50の外側に配置されて内部コイル部42、44と電気的に連結された外部電極80と、を含む。
【0014】
本発明の一実施形態によるチップ電子部品100は、
図1を参照して、「長さ」方向は「L」方向、「幅」方向は「W」方向、「厚さ」方向は「T」方向と定義する。
【0015】
磁性体本体50は、金属磁性体粉末を含む。
【0016】
上記金属磁性体粉末は、Fe、Si、Cr、Al及びNiからなる群より選択される何れか1つ以上を含む合金であってもよく、例えば、Fe−Si−B−Cr系非晶質金属粒子を含んでもよいが、必ずしもこれに限定されない。
【0017】
上記金属磁性体粉末は、エポキシ(epoxy)樹脂またはポリイミド(polyimide)樹脂などの熱硬化性樹脂に分散された形態で含まれてもよい。
【0018】
磁性体本体50に含まれる金属磁性体粉末の充填率を向上させるために粒度の異なる2種以上の金属磁性体粉末を一定の比率で混合して製造することができる。
【0019】
定められた単位体積で高いインダクタンスを得るために高透磁率の粒度の大きい金属磁性体粉末を使用し、当該粒度の大きい金属磁性体粉末に粒度の小さい金属磁性体粉末を混合し充填率を向上させて、高透磁率を確保することができ、高周波数及び高電流での磁性損失(Core Loss)による効率の低下を防止することができる。
【0020】
しかし、このように粒度の大きい金属磁性体粉末と粒度の小さい金属磁性体粉末を混合すると、磁性体本体の表面粗さが大きくなる。特に、個別のチップサイズに切断した磁性体本体を研磨する過程で、磁性体本体の表面に粒度の大きい金属磁性体粉末が突出し、突出した部位の絶縁コーティング層が剥離される。
【0021】
これにより、後に、外部電極のめっき層を形成する際、絶縁コーティング層が剥離された金属磁性体粉末上にもめっき層が形成されるめっき滲み不良が発生するという問題がある。
【0022】
そこで、本発明の一実施形態は、磁性体本体50の上面及び下面のうち少なくとも1つに粒度の小さい微粉からなるめっき滲み防止層60を形成することで、上述した問題を解決することができる。
【0023】
本発明の一実施形態によるめっき滲み防止層60に対する具体的な説明は、後述する。
【0024】
磁性体本体50の内部に配置された絶縁基板20の一面にコイル状のパターンを有する内部コイル部42が形成され、絶縁基板20の反対面にもコイル状のパターンを有する内部コイル部44が形成される。
【0025】
絶縁基板20は、例えば、ポリプロピレングリコール(PPG)基板、フェライト基板または金属系軟磁性基板などで形成される。
【0026】
絶縁基板20の中央部を貫通して孔を形成し、当該孔を金属磁性体粉末で充填してコア部55を形成する。金属磁性体粉末で充填されたコア部55を形成することで、インダクタンスを向上させることができる。
【0027】
内部コイル部42、44はスパイラル(spiral)状にコイルパターンが形成されてもよく、絶縁基板20の一面と反対面とに形成される内部コイル部42、44は絶縁基板20に形成されるビア電極を介して電気的に接続される。
【0028】
内部コイル部42、44及びビア電極は、電気伝導性に優れた金属を含んで形成することができ、例えば、銀(Ag)、パラジウム(Pd)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、金(Au)、銅(Cu)、白金(Pt)またはこれらの合金などで形成されてもよい。
【0029】
絶縁基板20の一面に形成される内部コイル部42の一端部は、磁性体本体50の長さ方向の一端面に露出することができ、絶縁基板20の反対面に形成される内部コイル部44の一端部は、磁性体本体50の長さ方向の他端面に露出することができる。
【0030】
磁性体本体50の長さ方向の両端面に露出する内部コイル部42、44と接続するように、長さ方向の両端面には外部電極80が形成される。
【0031】
外部電極80は、電気伝導性に優れた導電性金属を含んで形成することができ、例えば、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、スズ(Sn)または銀(Ag)などの単独で、またはこれらの合金等で形成してもよい。
【0032】
図2は
図1のI−I'線による断面図であり、
図3は
図1のII−II'線による断面図である。
【0033】
図2及び
図3を参照すると、本発明の一実施形態による磁性体本体50には、第1金属磁性体粉末51と、第1金属磁性体粉末51よりD
50の小さい第2金属磁性体粉末52が混在している。
【0034】
D
50の大きい第1金属磁性体粉末51は高透磁率を実現し、D
50の大きい第1金属磁性体粉末51とD
50の小さい第2金属磁性体粉末52を混合して充填率を上げて透磁率をさらに向上させ、Q特性を向上させることができる。
【0035】
第1金属磁性体粉末51は、D
50が18μm〜22μmであることができ、第2金属磁性体粉末52は、D
50が2μm〜4μmであることができる。
【0036】
上記D
50は、レーザー回折散乱法を用いた測定装置で粒子径、粒度分布を測定する。
【0037】
第1金属磁性体粉末51の粒径は10μm〜50μmであることができ、第2金属磁性体粉末52の粒径は0.5μm〜6μmであることができる。
【0038】
磁性体本体50には、平均粒径の大きい第1金属磁性体粉末51と、第1金属磁性体粉末51より平均粒径の小さい第2金属磁性体粉末52とが混在している。
【0039】
第1金属磁性体粉末51及び第2金属磁性体粉末52は、8:2〜5:5の重量比で混合されてもよい。
【0040】
第1金属磁性体粉末51及び第2金属磁性体粉末52が上記範囲内の重量比で混合されることにより充填率が向上して透磁率が増加し、インダクタンスが向上することができる。
【0041】
磁性体本体50の透磁率は31H/m〜50H/mであってもよい。
【0042】
磁性体本体50の外側には、内部コイル部42、44の端部と接続する外部電極80が形成される。
【0043】
外部電極80は、導電性ペーストを用いて形成した電極層81と、電極層81上にめっき工程により形成しためっき層82と、を含んでもよい。
【0044】
電極層81は、銅(Cu)、ニッケル(Ni)及び銀(Ag)からなる群より選択される何れか1つ以上の導電性金属と熱硬化性樹脂を含む導電性樹脂層であってもよい。
【0045】
めっき層82は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)及びスズ(Sn)からなる群より選択される何れか1つ以上を含んでもよく、例えば、ニッケル(Ni)層とすず(Sn)層が順に形成されることができる。
【0046】
めっき層82を形成するめっき工程の際、磁性体本体50の表面に露出した粗粉の金属磁性体粉末上にめっき層が形成されるめっき滲み不良が発生する恐れがある。
【0047】
しかし、本発明の一実施形態によると、磁性体本体50の上面及び下面に、微粉の金属磁性体粉末からなって高絶縁抵抗を示す高絶縁抵抗層60を形成するが、これがめっき滲み防止層の役割をすることができる。
【0048】
上記高絶縁抵抗層とめっき滲み防止層は同一の構成要素であり、以下ではめっき滲み防止層に統一して説明する。
【0049】
高透磁率を具現するために粗粉の金属磁性体粉末を使用すると、磁性体本体50の表面に粗粉の金属磁性体粉末が露出し、外部電極のめっき層82を形成するめっき工程時に上記粗粉の金属磁性体粉末の露出部位にめっき層が形成されるという不良が発生する。
【0050】
しかし、本発明の一実施形態は、磁性体本体50の上面及び下面に微粉の金属磁性体粉末からなるめっき滲み防止層60を形成して磁性体本体50の表面の粗さを改善し、粗粉によるめっき滲み現象を改善することができる。
【0051】
めっき滲み防止層60は金属磁性体粉末61を含むため、めっき滲み防止層の形成に伴う磁性体本体の厚さ減少によって生じるインダクタンスの低下を防止することができる。
【0052】
即ち、めっき滲み防止層60は、微粉の金属磁性体粉末61を含むことにより、めっき滲み現象を改善するだけでなく、インダクタンスの形成にも寄与する。
【0053】
磁性体本体50の厚さをt
1、めっき滲み防止層60の厚さをt
2とすると、t
2/t
1は0.25以下であることができる。
【0054】
t
2/t
1が0.25を超えると、磁性体本体の厚さが大きく減少するため、インダクタンスが大きく低下する恐れがある。
【0055】
めっき滲み防止層60の厚さは5μm〜20μmであることができる。
【0056】
めっき滲み防止層60の厚さが5μm未満では磁性体本体の表面粗さが十分に改善されず、めっき滲みが発生する恐れがあり、20μmを超えると、磁性体本体の厚さが大きく減少するため、インダクタンスが大きく低下する恐れがある。
【0057】
めっき滲み防止層60の絶縁抵抗は700MΩ以上であることができる。
【0058】
めっき滲み防止層60は微粉の金属磁性体粉末61からなり、700MΩ以上の高い絶縁抵抗を示すことができる。
【0059】
めっき滲み防止層60の絶縁抵抗が700MΩ未満ではめっき滲みの抑制効果が不十分で、外部電極のめっき層82を形成するめっき工程時に粗粉の金属磁性体粉末の露出部位にめっき層が形成される恐れがある。
【0060】
図4は
図2の「A」部分の一実施形態を拡大して示した概略図である。
【0061】
図4を参照すると、めっき滲み防止層60は、粒径が0.1μm〜10μmの微粉の金属磁性体粉末61を含む。
【0062】
めっき滲み防止層60に含まれた金属磁性体粉末61の粒径が0.1μm未満では充填率及び透磁率が減少してインダクタンスが低下することがあり、粒径が10μmを超えると、磁性体本体の表面粗さが十分に改善されずめっき滲みが発生する恐れがある。
【0063】
めっき滲み防止層60は熱硬化性樹脂をさらに含み、金属磁性体粉末61は、エポキシ(epoxy)樹脂またはポリイミド(polyimide)樹脂などの熱硬化性樹脂に分散された状態で含まれてもよい。
【0064】
めっき滲み防止層60は、上記熱硬化性樹脂を15wt%〜30wt%含むことができる。
【0065】
図5は、
図2の「A」部分の他の実施形態を拡大して示した概略図である。
【0066】
図5を参照すると、めっき滲み防止層60には平均粒径の異なる微粉の金属磁性体粉末61、61'が混在している。
【0067】
例えば、D
50が1.5μm〜3.5μmの金属磁性体粉末61と、これより平均粒径の小さいD
50が0.3μm〜1.5μmの金属磁性体粉末61'と、を含んでもよい。
【0068】
このように、D
50が異なる微粉の金属磁性体粉末61、61'を混合することにより充填率を向上させることができる。めっき滲み防止層60に含まれる磁性体粉末の充填率を向上させることで、めっき滲み防止層60の形成によるインダクタンスの低下及びDC−Bias特性の低下を減少させることができ、表面粗さを改善し、めっき滲み現象を改善することができる。
【0069】
本発明の一実施形態によるめっき滲み防止層60は、透磁率が15H/m〜30H/mであることができる。
【0070】
また、本発明の一実施形態によるめっき滲み防止層60は、表面粗さが0.5μm未満に具現されることができる。これにより、外部電極のめっき層82の形成時に発生し得るめっき滲み現象を改善することができる。
【0071】
チップ電子部品の製造方法
図6は本発明の一実施形態によるチップ電子部品の製造工程を示す工程図であり、
図7a〜
図7eは本発明の一実施形態によるチップ電子部品の製造工程を順に説明するものである。
【0072】
図6及び
図7aを参照すると、まず、絶縁基板20の一面及び反対面に内部コイル部42、44を形成する。
【0073】
内部コイル部42、44の形成方法としては、電気めっき法が挙げられるが、これに限定されず、内部コイル部42、44は、電気伝導性に優れた金属を含んで形成することができ、例えば、銀(Ag)、パラジウム(Pd)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、金(Au)、銅(Cu)、白金(Pt)またはこれらの合金などを使用することができる。
【0074】
図6及び
図7bを参照すると、内部コイル部42、44の上部及び下部に複数の第1磁性体シート50a、50b、50c、50d、50e、50fを積層して磁性体本体50を形成する。
【0075】
第1磁性体シート50a、50b、50c、50d、50e、50fは磁性体粉末、例えば、金属磁性体粉末、バインダー及び溶剤などの有機物を混合してスラリーにし、当該スラリーをドクターブレード法でキャリアフィルム(carrier film)上に数十μmの厚さに塗布した後、乾燥してシート(sheet)状に作製することができる。
【0076】
第1磁性体シート50a、50b、50c、50d、50e、50fは、第1金属磁性体粉末51と、第1金属磁性体粉末51よりD
50の小さい第2金属磁性体粉末52とを混合して形成することができる。
【0077】
第1金属磁性体粉末51は、D
50が18μm〜22μmであることができ、第2金属磁性体粉末52は、D
50が2μm〜4μmであることができる。
【0078】
第1金属磁性体粉末51の粒径は10μm〜50μmであることができ、第2金属磁性体粉末52の粒径は0.5μm〜6μmであることができる。
【0079】
複数の第1磁性体シート50a、50b、50c、50d、50e、50fを積層した後、ラミネート法や静水圧プレス法で圧着し、硬化して磁性体本体50を形成することができる。
【0080】
このとき、個別のチップサイズに切断した磁性体本体を研磨する過程で、磁性体本体の表面に粗粉である第1金属磁性体粉末51が突出し、突出した部位の絶縁コーティング層が剥離される。
【0081】
これにより、外部電極のめっき層を形成する際、絶縁コーティング層が剥離された金属磁性体粉末上にめっき層が形成されるめっき滲み不良が発生する。
【0082】
図6及び
図7cを参照すると、磁性体本体50の上面及び下面のうち少なくとも1つに第2磁性体シート60a、60bを積層してめっき滲み防止層60を形成する。
【0083】
第2磁性体シート60a、60bは、微粉の金属磁性体粉末、バインダー、及び溶剤などの有機物を混合してスラリーにし、当該スラリーをドクターブレード法でキャリアフィルム(carrier film)上に数十μmの厚さに塗布した後、乾燥してシート(sheet)状に作製することができる。
【0084】
第2磁性体シート60a、60bは、粒径が0.1μm〜10μmの金属磁性体粉末61を含んでもよい。
【0085】
第2磁性体シート60a、60bは微粉の金属磁性体粉末61からなるため、第1磁性体シート50a、50b、50c、50d、50e、50fより高い絶縁抵抗を示す。
【0086】
第2磁性体シート60a、60bを積層し、ラミネート法や静水圧プレス法により圧着してめっき滲み防止層60を形成してもよい。
【0087】
このように、磁性体本体50の上面及び下面に微粉の金属磁性体粉末からなるめっき滲み防止層60を形成することで、磁性体本体50の表面粗さを改善し、粗粉によるめっき滲み現象を改善することができる。
【0088】
図7cには、第2磁性体シート60a、60bが微粉である金属磁性体粉末61を含む実施形態のみを示したが、これに制限されるものではなく、平均粒径が異なる微粉の金属磁性体粉末61、61'が混在する他の実施形態であることもできる。
【0089】
図7dを参照すると、磁性体本体50の厚さをt
1、めっき滲み防止層60の厚さをt
2とすると、t
2/t
1が0.25以下を満たすように磁性体本体50とめっき滲み防止層60を形成することができる。
【0090】
t
2/t
1が0.25を超えると、磁性体本体の厚さが大きく減少するため、インダクタンスが大きく低下する恐れがある。
【0091】
図7eを参照すると、磁性体本体50の長さ方向の両端面に露出する内部コイル部42、44と接続するように、長さ方向の両端面には外部電極80を形成する。
【0092】
まず、磁性体本体50の長さ方向の両端面に電極層81を形成し、電極層81上にめっき層82を形成してもよい。
【0093】
電極層81は、銅(Cu)、ニッケル(Ni)及び銀(Ag)からなる群より選択される何れか1つ以上の導電性金属と熱硬化性樹脂を含むペーストを用いて導電性樹脂層を形成することができ、例えば、ディッピング(dipping)法などで形成することができる。
【0094】
めっき層82は、例えば、ニッケル(Ni)層とスズ(Sn)層を順にに形成することができる。
【0095】
本発明の一実施形態は、磁性体本体50の上面及び下面のうち少なくとも1つにめっき滲み防止層60を形成して、上記外部電極のめっき層82を形成するめっき工程時に磁性体本体50の表面に露出した金属磁性体粉末上にめっき層が形成されるめっき滲み現象を改善することができる。
【0096】
その他、上述した本発明の一実施形態によるチップ電子部品の特徴と同じ部分に対する説明は省略する。
【0097】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の権利範囲はこれに限定されず、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想から外れない範囲内で多様な修正及び変形が可能であるということは、当技術分野の通常の知識を有する者には明らかである。