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特開2016-93503生物学的な除染ゲル、およびこのゲルを用いて表面を除染するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-93503(P2016-93503A)
(43)【公開日】2016年5月26日
(54)【発明の名称】生物学的な除染ゲル、およびこのゲルを用いて表面を除染するための方法
(51)【国際特許分類】
   A62D 3/38 20070101AFI20160422BHJP
   A62D 3/36 20070101ALI20160422BHJP
【FI】
   A62D3/38
   A62D3/36
【審査請求】有
【請求項の数】37
【出願形態】OL
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2015-220207(P2015-220207)
(22)【出願日】2015年11月10日
(62)【分割の表示】特願2013-517267(P2013-517267)の分割
【原出願日】2011年6月29日
(31)【優先権主張番号】1055399
(32)【優先日】2010年7月2日
(33)【優先権主張国】FR
(71)【出願人】
【識別番号】502124444
【氏名又は名称】コミッサリア ア レネルジー アトミーク エ オ ゼネルジ ザルタナテイヴ
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クール フレデリック
(72)【発明者】
【氏名】フォーレ シルヴァン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】生物学的な汚染物質の拡散なしに除去が容易な乾燥廃棄物を生じる生物学的除染ゲルであって、それらの形状、幾何学的形状、それらの大きさ及びそれらの性質に拘らず、多様な表面を同じ有効性で処理できる生物学的除染ゲルの提供。
【解決手段】ゲル1の重量に対して、5〜30重量%の少なくとも1つの無機増粘剤と0.5〜10mol/Lの少なくとも1つの活性な生物学的除染剤のゲル1と0.05〜5重量%の少なくとも1つの高吸水性剤ポリマーと0.1〜2重量%の少なくとも1つの界面活性剤を含有するコロイド溶液からなり、残りが、溶媒からなる、生物学的除染ゲル1。前記ゲル1を用いる生物学的除染方法。前記活性な生物学的除染剤が、酸化剤類、及び、酸化剤類を含み、さらに、塩基類、酸類、四級アンモニウム塩またはそれらの混合物を含む混合物から選択される、生物学的除染ゲル。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物学的除染ゲルであって:
− 該ゲルの質量に基づいて、5〜30質量%の少なくとも1つの無機増粘剤と;
− 1Lのゲルあたり0.5〜10molの少なくとも1つの活性な生物学的除染剤と;
− 該ゲルの質量に基づいて、0.05〜5質量%の少なくとも1つの高吸水性剤ポリマーと;
− 該ゲルの質量に基づいて、0.1〜2質量%の少なくとも1つの界面活性剤と;
− 残りの溶媒と;
を含むコロイド溶液からなり、
前記活性な生物学的除染剤が、酸化剤類、及び、酸化剤類を含み、さらに、塩基類、酸類、四級アンモニウム塩またはそれらの混合物を含む混合物から選択される、
生物学的除染ゲル。
【請求項2】
前記酸化剤類が、過酸化物類、過マンガン酸塩類、過硫酸塩類、オゾン、次亜塩素酸塩類、およびそれらの混合物から選択される、請求項1に記載のゲル。
【請求項3】
前記塩基類が、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、およびそれらの混合物から選択される、請求項1に記載のゲル。
【請求項4】
前記酸類が、硝酸、リン酸、塩酸、硫酸、およびそれらの混合物から選択される、請求項1に記載のゲル。
【請求項5】
前記四級アンモニウム塩が、ヘキサデシルピリジニウム塩類である、請求項1に記載のゲル。
【請求項6】
前記無機増粘剤が、アルミナ類、シリカ類、アルミノケイ酸塩類、クレー類、およびそれらの混合物から選択される、請求項1〜5のいずれか1項に記載のゲル。
【請求項7】
前記無機増粘剤が、火成シリカ類、沈降シリカ類、親水性シリカ類、疎水性シリカ類、酸性シリカ類、塩基性シリカ類、およびそれらの混合物から選択される、請求項6に記載のゲル。
【請求項8】
前記無機増粘剤が、沈降シリカおよび火成シリカの混合物からなる、請求項7に記載のゲル。
【請求項9】
前記無機増粘剤が、前記ゲルの質量に基づいて、5%〜30質量%に相当する1つ以上のアルミナ類からなる、請求項6に記載のゲル。
【請求項10】
前記高吸水性剤ポリマーが、ポリ(メタ)アクリル酸ナトリウム、(メタ)アクリルポリマーとグラフトしたデンプン、(メタ)アクリルポリマーとグラフトした加水分解デンプン;デンプンに基づくポリマー、ガムに基づくポリマー、およびセルロース誘導体に基づくポリマー;ならびにそれらの混合物から選択される、請求項1〜9のいずれか1項に記載のゲル。
【請求項11】
前記界面活性剤が、非イオン性界面活性剤である、請求項1〜10のいずれか1項に記載のゲル。
【請求項12】
前記非イオン性界面活性剤が、ブロックコポリマー、エトキシル化脂肪酸、およびそれらの混合物から選択される、請求項11に記載のゲル。
【請求項13】
前記ブロックコポリマーが、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドのブロックコポリマー;ならびにそれらの混合物から選択される、請求項12に記載のゲル。
【請求項14】
前記溶媒が、水、有機溶媒およびそれらの混合物から選択される、請求項1〜13のいずれか1項に記載のゲル。
【請求項15】
表面上で見出される少なくとも1つの生物種によって汚染された、固体基材の表面の、および可能性としては該基材の深部における該表面下での生物学的除染のための方法であって、以下の連続工程:
a)請求項1〜14のいずれか1項に記載のゲルが該表面上に適用される工程;
b)該ゲルは、該ゲルが、生物種を破壊、および/または不活性化、および/または吸収するように、かつ該ゲルが、乾燥して該生物種を含む乾燥した固体の残渣を形成するように、少なくとも十分な時間、該表面上で維持される工程;
c)該生物種を含有する乾燥した固体の残渣が除去される工程;
を包含する少なくとも1つのサイクルが行われる、方法。
【請求項16】
前記固体基材が、多孔性基材である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記多孔性基材が、多孔性無機基材である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記基材が、金属;ポリマー;ガラス、セメント類;モルタルおよびコンクリート;しっくい;レンガ;天然または人工の石;セラミックから選択される少なくとも1つの材料からできている、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記金属が、ステンレス鋼である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記ポリマーが、プラスチック材料またはゴム、ポリプロピレン類またはPP、ポリエチレン類またはPE、ポリ(メチルメタクリレート)類またはPMMA、ポリ(フッ化ビニリデン)またはPVDF、ポリカーボネート類またはPCから選択される少なくとも1つである、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記ゴムが、ポリ(塩化ビニル)類またはPVCである、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記ポリエチレン類またはPEが、高密度ポリエチレンまたはHDPEである、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記生物種が、細菌、真菌、酵母、ウイルス、毒素、芽胞および原生動物から選択される、請求項15〜22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記生物種が、生物毒素種から選択される、請求項15〜22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記生物毒素種が、病原性の芽胞、毒素、およびウイルスから選択される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記病原性の芽胞が、Bacillus anthracisの芽胞である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記毒素が、Botulinum毒素である、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
前記ゲルが、表面の1mあたり100g〜2,000gのゲル量で表面に塗布される、請求項15〜27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記ゲルが、ブラシまたはコテを用いて、噴霧によって固体表面上に塗布される、請求項15〜28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
工程b)の間、前記乾燥が、1℃〜50℃の温度で、かつ20%〜80%の相対湿度下で行われる、請求項15〜29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記ゲルが、2〜72時間の期間にわたって前記表面上で維持される、請求項15〜30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記乾燥した固体の残渣が、1〜10mmのサイズを有する、粒子として出現する、請求項15〜31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記粒子が、フレークである請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記乾燥した固体の残渣が、ブラッシングおよび/または吸引によって前記固体表面から除去される、請求項15〜33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
前記サイクルが、全サイクルの間、同じゲルを用いることによって、または1回以上のサイクルの間異なるゲルを用いることによって、1〜10回繰り返される、請求項15〜34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
工程b)の間、ゲルが、完全乾燥の前に、生物学的除染剤の溶液を用いて再湿潤化される、請求項15〜35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
前記生物学的除染剤の溶液が、工程a)の間に適用されるゲル中の活性な生物学的除染剤の溶液である、請求項36に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の目的は、表面の除染のために用いられ得る生物学的除染ゲルである。
【0002】
本発明はさらに、このゲルを用いることによって表面を除染するための方法に関する。
【0003】
本発明は、生物学的な因子によって汚染され、混入された表面の除染に適用される。
【0004】
本発明による方法は、金属表面、プラスチック材料表面、ガラス材料表面などの任意の種類の表面に適用してもよい。
【0005】
本発明は、最も好ましくは、セメントマトリックスのような多孔性材料、スラリー、モルタルおよびコンクリートのような材料;レンガ、しっくい仕上げ;ならびに石の表面に適用する。
【0006】
従って、本発明の技術分野は、概して、表面上で見出され、かつこれらの表面上で存在することが望まれない混入物である汚染物質をその表面から除去するという観点での表面の除染という分野として定義され得る。
【0007】
さらに具体的には、本発明の技術分野は、例えば、芽胞、毒素、ウイルスなどの有毒の生物種で著しく汚染された、汚染表面の生物学的除染の分野である。
【背景技術】
【0008】
先行技術の状況
約10年間、テロリストの化学的行動、さらに最近では生物学的な行為の連続、例えば、1995年の東京の地下鉄でのサリンガスによる攻撃、2001年のニューヨークのツインタワーの自爆攻撃、2001年の米国での郵便の手紙からの炭疽菌、および2004年のマドリードの駅舎爆破事件により、多くの国は、テロリストの脅威に対して効果的な手段をとろうとして実質的な研究プログラムを構築するように駆り立てられた。
【0009】
20世紀の初頭での化学的性質の本質的な脅威の因子は、より強力な衝撃力を持ち、適用することがより簡易で、かつ最初に身体症状が発症する前に特別に検出できない武器へと進化したことだ。
【0010】
従って、特に経口的に感染性である種類の生物製剤というテロリストの攻撃が現在では恐怖の中心である。Bacillus anthracis(炭疽菌)、さらには、ボツリヌス(Botulinum)毒素などの有毒な生物種は、使用の可能性が最高の武器と考えられる。
【0011】
生物学的な除染の場合、2つの目標が追及される:
− 第一は、殺生剤(通常は強い酸化化学種)と病原性因子との間の長期の接触時に生物学的な生体毒性の汚染物質を不活性化することである。この阻害段階では、用いられる処方物に応じて数時間におよぶ場合もある接触回数を必要とする、− 第二は、最もよく行われることであるが、固相または液相にこの汚染種を移動させて、この不活性化された種を処理された材料から除去できるようにすることである。
【0012】
一般的には、生物学的汚染によって汚染された材料の浄化技術は、汚染された表面に殺生剤を含有する液体を接触させて配置することで構成されている。殺生溶液の塗布は、一般的に噴霧することによるか、または洗浄する工程とブラッシングなどの機械的な効果とを組み合わせるかもしくは組合わせないことで達成される。
【0013】
従って、特許文献1は、生物学的な攻撃後の除染で用いられる抗菌剤および他の薬剤の除去のための浄化組成物を記載する。この組成物には特にエタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、n−ヘキシルエーテル、臭化物および塩化物が含まれる。
【0014】
特許文献2は、大規模な除染方法を記載しており、ここでは、固体の安定な過酸または固体の安定な過酸の供給源が、汚染された表面と接触させられる。
【0015】
さらに最近では、噴霧によるか、または泡状物の突出しによる、新規な湿潤化技術が使われ、用いられる殺生溶液の量、従って、産生される化学的流出液の容積を減らすことが可能になった。この点では、特許文献3および4を参照し得る。
【0016】
他の方法では、非特許文献1に記載の方法の場合のように、過酸化水素またはさらにオゾンなどの気体の形態で殺生剤を用いている。
【0017】
しかし、これらの方法に関連する主な欠点とは、有毒因子が生物学的なおよび化学的な有毒因子(液体噴霧方法の場合)であろうと、または化学的な有毒因子(殺生剤をガス状で適用する方法の場合)であろうと、環境中への有毒因子の拡散の危険である。
【0018】
さらに、ガス型で殺生剤を適用する方法は、これが閉鎖された囲いの中で適用される場合にしか有効ではない。
【0019】
汚染を回復する問題に対処するために、第三カテゴリーの方法が最近開発された。
【0020】
これらの方法では、有毒の生物種を捕捉および/または破壊することができる固体支持材料に向かう汚染の移動が達成される。次に、そうして生成された廃棄物が固体型で見出される。固形廃棄物を得ることは、環境中の有毒因子の分散のリスクを制限するだけでなく、生成される廃棄物の管理と処理とを容易にするためにも特に有用である。
【0021】
固体支持体材料を適用する様々な技術は、現在、既に開発されている。これらは以下である:まず最初は、皮膚で、または装置の部品で見られる永続的な有毒の液体の除染を意図する、いわゆる「パウダー手袋」の技術。
【0022】
この手袋では、除染剤は、吸収粉末剤、通常は、フラー土である。フラー土は、タップすることで、汚染された位置につけられて、有毒な液体を吸収し、その後、手袋のスポンジ面で拭きとられる[非特許文献2]。
【0023】
手袋の組成物は、特定の場合には、フラー土によって捕捉された汚染物を不活性化することのできる酸化性物質、酸化剤を含んでもよい。この技術は、人々のケアに特に適しているにもかかわらず、小規模での液体汚染の処理に限定されたままである。
【0024】
ゲルとして存在する、他の除染製品は、固形廃棄物を生成し、従って、大きい表面と複雑な形状とをともなう、室内清掃のために液体溶液の使用なしで行うという可能性が得られる。
【0025】
これらのゲルは、通常、除染すべき表面にそれらのゲルを噴霧することによって塗布(適用)される。
【0026】
溶媒の蒸発時間に等しい、除染されるべき面とゲルとの接触時間後、得られた乾燥した廃棄物は、ブラッシングおよび/または吸引によって除去される。これらの方法の主な利点は、大きい表面および起伏のある形状を処理する能力である。
【0027】
従って、[特許文献5]は、汚染地域の化学的または生物学的な除染のための酸化剤を含有しているゲル組成物を記載している。この組成物は、粘稠なコロイド状ゲルを形成するために酸化剤溶液中にコロイド形で増粘剤またはゲル化剤を添加することにより調製される。
【0028】
この溶液は、水性溶液であっても、または有機溶液であってもよい。
【0029】
増粘剤またはゲル化剤は、シリカ、アルミナ、アルミノシリケート類、シリカとアルミナとの混合物、およびスメクタイトのようなクレーから選択され得る。
【0030】
酸化剤は、とりわけ、次亜塩素酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、または過酸化水素である。
【0031】
これらのゲルは、細菌、真菌、ウイルス、および芽胞のような微生物などの、生物学的因子、または神経ガスなどの化学剤などの化学物質を除去するために用いられ得ることが示されている。
【0032】
次いで、ゲルを、処理すべき表面に噴霧し、次いで、乾燥させた後に吸引によって回収する。
【0033】
ペルオキシ一硫酸カリウムおよび15%のCab−O−Sil(登録商標)EH−5シリカをゲル化剤として含有する酸化ゲルは、ゲルが乾燥するのに必要な時間内で「マスタード」、「VX」および「GD」化学物質を破壊すること、ならびに炭疽菌をシミュレートする、Bacillus globigii(BG)もまた、このゲルによって部分的に破壊されることが示される。
【0034】
L−Gel 115およびL−Gel 200という名称でローレンス・リバモア国立研究所(Lawrence Livermore National Laboratory)によって開発されたゲル状薬剤は[特許文献5]で開発された薬剤と類似しており、いわゆる「L−Gel」方法を用いて適用される。この方法は、Bacillus globigiiの芽胞による汚染のような、生物学的な汚染に対してある程度の有効性を有するとみなされる[8]。
【0035】
これらのゲルは、有機溶媒およびシリカ充填剤が追加される酸化の酸溶液から生成される。次いで、このゲルは、処理されるべき表面に噴霧され、次いで、乾燥後に吸引によって回収される。この方法の重要な点のうち、強力な酸化剤の存在は最初、極めて時間が限られている場合が多い化学的安定性を生じる。
【0036】
さらに、垂れ流れることを回避するために、特に、ゲルが壁または天井に塗布される場合、それは、特許文献[5]では、125μmを超えない厚みのごく薄いフィルムの形態で塗布される。この結果は、粉末の乾燥廃棄物であり、これは処理の効率が全体でない場合、酸化化合物などの生体毒性および化学的種の大気中への拡散を生じ得る。
【0037】
この方法の能力によって、エアロゾルの形態での炭疽菌による汚染について決定したところ(0.16mのサンプルあたり10および10個の芽胞)、4ケタを超える汚染の低減は可能にしないことが示される[非特許文献3]。
【0038】
さらに、放射能除染の場合には、乾燥廃棄物の粉体性質に関連する問題を除くことが可能で、かつゲル方法の有効性を増大可能であるゲル化処方物が、特許文献[6]および[7]の主題である。そこに記載されているゲル剤では、微粒子型の汚染を、低腐食の支持材料によって、解放することができる。次いで、汚染物質が乾燥ゲルの残渣の中に捕捉されて見出される特許文献[6]、[7]。
【0039】
これらのゲルは、特に放射能除染を意図しており、かつ決して、表面の生物学的除染に適合していることも、または適合することができることもない。
【0040】
さらに、上記のゲルは、多孔質材料の深部における除染は可能にしない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0041】
【特許文献1】米国特許第7,026,274号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2006/0073067号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2003/0109017号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2004/0022867号明細書
【特許文献5】米国特許第6455751号明細書
【特許文献6】仏国特許出願公開第2827530号明細書
【特許文献7】仏国特許出願公開第2891470号明細書
【非特許文献】
【0042】
【非特許文献1】ロジャース・ジェイ・ヴイ(ROGERS.J.V)サボウリン・シー・エル・ケイ(SABOURIN.C.L.K.)、チョウイ・ワイ・ダブリュ(CHOI.Y.W)「デコンタミネーション・アセスメント・オブ・バシラス・サブチリス・アンド・ゲオバシラス・ステアロサーモフィラス・スポアズ・オン・インドア・サーフェイス・ユージング・ア・ヒドロゲン・ペルオキシド・ガス・ジェネレーター(Decontamination assessment of bacillus subtilis ,and Geobacillus stearothermophilus spores on indoor surfaces using a hydrogen peroxide gas generator」,2005。
【非特許文献2】ジョス・ディー(JOSSE.D)、ブードリー・アイ(BOUDRY.I)、ノウド・エヌ(NAUD.N)「デコンタミネーション・キュタニー・ビス・ア・ビス・デス・エージェンツ・オルガノホスホレス・エト・デ・リペライト・アウ・ソウフレ(Decontamination skin vis−a−vis des agents organophosphores et de l’yperite au soufre:Blian et perspectives)」、メディシン・エト・アーミーズ(Medicine et armees),第34巻,第1号、33〜36頁,2006。
【非特許文献3】ハーパー・ビー(HARPER.B)、ラーセン・エル(Larsen・L)「ア・コンパリソン・オブ・デコンタミネーション・テクノロジー・フォー・バイオロジカル・エージェンツ・オン・セレクテッド・コマーシャル・サーフェイス・マテリアルズ(A comparison of decontamination technologies for biological agents on selected commercial surface materials)」、バイオロジカル・ウェポンズ・インプルーブド・レスポンス・プログラム(Biological weapons improved response program),2001年4月。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0043】
従って、上記に関して、生物学的な汚染物質の拡散なしに除去が容易な乾燥廃棄物を生じる生物学的除染ゲルであって、それらの形状、幾何学的形状、それらの大きさおよびそれらの性質にかかわらず、多様な表面を同じ有効性で処理できるゲルの必要性がある。
【0044】
詳細には、生物学的除染ゲルであって、多孔性表面、特に無機表面の効率的な除染を可能にし、かつこのような表面の深部で(例えば、数ミリメートルに到達し得る深部まで)除染を保証する生物学的除染ゲルの必要性がある。
【0045】
処理された表面の任意の化学的、機械的または物理的な変更を生じない除染ゲルがさらに必要である。
【0046】
本発明の目的は、とりわけこの要件を満たす生物学的除染ゲルを提供することである。
【0047】
本発明の目的はさらに、先行技術の除染ゲルの欠点、欠陥、限界および不利な点がなく、かつ先行技術の除染ゲルの問題点を解決する除染ゲルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0048】
本発明の考察
この目標、およびさらに他の目標は、好ましくは、
− このゲルの質量に基づいて、5〜30質量%、好ましくは5〜25質量%、さらに好ましくは8〜20質量%の少なくとも1つの無機増粘剤と;
− 1Lのゲルあたり0.5〜10mol、好ましくは1〜10molの少なくとも1つの活性な生物学的除染剤と;− このゲルの質量に基づいて、0.05〜5質量%、好ましくは0.05〜2質量%の少なくとも1つの高吸水性ポリマーと;
− このゲルの質量に基づいて、0.1〜2質量%の少なくとも1つの界面活性剤と;
− 残りの溶媒と;
からなる、コロイド溶液からなる、生物学的除染ゲルを用いて本発明によって達成される。
【0049】
本発明によるゲルは、先行技術には決して記載されていない。
【0050】
詳細には除染ゲルにおける高吸水性ポリマーの組み込み、さらにはこのような高吸水性ポリマーと生物学的除染剤とのこのようなゲルでの組み合わせは、とりわけ上述の文書によって提示されているとおり、先行技術には決して記載されていない。
【0051】
本発明によるゲルは、上記のすべての要件を満たしており、それらのゲルは上述の文献に記載されるような、先行技術のゲルの欠点、欠陥、限界および不利な点を持っていない。
【0052】
本発明のゲルは、先行技術の生物学的除染ゲルによって提示された問題を、これらのゲルの全ての公知の有益な特性を保持しながら、その欠点なしで解決する。
【0053】
本発明によるゲルは、コロイド溶液であり、これは、本発明によるゲルが、鉱物の、無機の、増粘剤の固体粒子(その主な要素である粒子が一般には2〜200nmの大きさを有する)を含むことを意味する。
【0054】
有機増粘剤をなんら含まない、概して排他的に無機の増粘剤の適用という理由で、本発明によるゲルの有機物含有量は、一般には4質量%未満、好ましくは2質量%未満であり、これはさらに、本発明によるゲルの別の利点である。
【0055】
これらの無機の鉱物の固体粒子は、溶液、例えば、水性溶液がゲル化し、それによって、処理され、除染されるべき表面に対して、その幾何学形状、その形状、その大きさおよび除去すべき汚染物質がどこで見出されるかにかかわらず、付着することを可能にするための増粘剤(viscosifier)の役割を果たす。
【0056】
有利には、無機系増粘剤は、アルミナ類、シリカ類、アルミノシリケート類、スメクタイトなどのクレー類、およびそれらの混合物から選択されてもよい。
【0057】
特に、無機の増粘剤は、アルミナ(Al)および(SiO)から選択されてもよい。
【0058】
無機増粘剤は、単一のシリカもしくはアルミナ、またはそれらの混合物、すなわち、2つ以上の異なるシリカ類(SiO/SiO混合物)の混合物、2つ以上の異なるアルミナ類の混合物(Al/Al混合物)を含んでもよいし、またはさらに、1つ以上のシリカ類と1つ以上のアルミナ類の混合物(SiO/Al混合物)を含んでもよい。
【0059】
有利には、無機系増粘剤は、火成シリカ類、沈降シリカ類、親水性シリカ類、疎水性シリカ類、シリカ酸類、Rhodia社が市販するシリカTixosil 73(商標)のような塩基性シリカ類、およびそれらの混合物から選択されてもよい。
【0060】
酸性シリカ類の中でも、とりわけ、CABOTが市販する火成シリカ類またはヒュームドシリカ類「CAB−O−SIL」M5、H5またはEH5(商標)、およびAEROSIL(商標)の名称でDEGUSSAが市販している火成シリカ類を挙げることができる。
【0061】
これらの火成シリカ類の中でも、比表面積380m/gというシリカAEROSIL380(商標)がさらに好ましく、これは、最小の鉱物負荷で最大の増粘特性をもたらす。
【0062】
用いられるシリカはまた、例えば、湿式の経路を介して、ケイ酸ナトリウム溶液と酸とを混合することによって得られるいわゆる沈降シリカであってもよい。好ましい沈降シリカは、DEGUSSAからSIPERNAT 22 LSおよびFK 310(商標)という名称で、またはさらに、Rhodiaから、TIXOSIL 331(商標)の名称で市販されているものであり、後者の方は、平均の比表面積が170〜200m/gである沈降シリカである。
【0063】
有利には、無機の増粘剤は、沈降シリカの、および火成シリカの混合物からなる。
【0064】
アルミナは、焼成アルミナ類、粉砕した焼成アルミナ類、およびそれらの混合物から選択され得る。
【0065】
例えば、微細な火成アルミナである「AEROXIDE Alumine C」という商標でDEGUSSAから販売されている製品を挙げることができる。
【0066】
有利には、本発明によれば、増粘剤は、ゲルの質量に基づいて5質量%〜30質量%に一般には相当する、1つ以上のアルミナ(単数または複数)からなる。
【0067】
この場合には、20℃〜50℃の温度で、かつ平均で20〜60%である相対湿度で30分〜5時間内でゲルを確実に乾燥するために、アルミナは、このゲルの総質量に基づいて、8〜17質量%の濃度であることが好ましい。
【0068】
無機増粘剤の性質は、とりわけ、それが、1つ以上のアルミナ(単数または複数)からなるとき、本発明によるゲルの乾燥、および得られた残渣の粒子サイズに影響することがある。
【0069】
実際、乾燥ゲルは、制御された大きさの粒子として、さらに具体的には、ミリメートルの固体フレークとして出現し、その大きさは、特に、増粘剤が1つ以上のアルミナ(単数または複数)からなる場合、本発明の上述の組成物の使用に特に起因して、一般には、1〜10mm、好ましくは2〜5mmの範囲である。
【0070】
粒径は、一般的にその最大の寸法に相当することに注意のこと。
【0071】
本発明によるゲルは、活性な生物学的除染剤を含む。
【0072】
殺生剤としても記載され得る生物学的除染剤とは、生物種、とりわけ、有毒な生物種と接触させられる場合、これを不活性化または破壊できる、任意の薬剤を意味する。
【0073】
生物種とは、細菌、真菌、酵母、ウイルス、毒素、芽胞、とりわけBacillus Anthracisの芽胞、および原生動物などの任意の種類の微生物を意味する。
【0074】
本発明によるゲルによって除去、破壊、不活性化される生物種とは本質的に、生体毒性種、例えばBacillus Anthracisの芽胞のような病原性の芽胞など、毒素、例えば、ボツリヌス(Botulinum)毒素、およびウイルスなどである。
【0075】
活性な生物学的除染剤は、塩基、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、およびそれらの混合物;酸、例えば、硝酸、リン酸、塩酸、硫酸、およびそれらの混合物;酸化剤、例えば、過酸化物類、過マンガン酸塩類、過硫酸塩類、オゾン、次亜塩素酸塩類、およびそれらの混合物;四級アンモニウム塩、例えば、塩化ヘキサセチルピリジニウムのようなヘキサセチルピリジニウム塩;ならびにそれらの混合物から選択され得る(特に実施例1および2を参照のこと)。
【0076】
特定の活性な除染剤は、上記の定義のカテゴリーのいくつかのうちに分類され得る。
【0077】
従って、硝酸は酸であるが、また酸化剤でもある。
【0078】
殺生剤などの活性な除染剤は、一般的に、ゲルの乾燥時間と適合して、生物種の阻害力、特に生体毒性種の阻害力を確保するために、そして、例えば、20℃〜50℃の温度で、かつ平均で20〜60%である相対湿度で30分〜5時間内でゲルを確実に乾燥するために、ゲル1Lあたり、0.5〜10モル、好ましくは1〜10モルの濃度で用いられる。
【0079】
活性な除染剤は、酸であっても、または酸の混合物であってもよい。これらの酸は、一般には、鉱酸、例えば、塩酸、硝酸、硫酸およびリン酸などから選択される。
【0080】
特に好ましい生物学的な除染剤は、硝酸である。
【0081】
実際、まったく驚くべき方法で、硝酸は、生物種、とりわけ、生体毒性の種を破壊し、不活性化することが見出された。
【0082】
特に驚くべきことに、硝酸は、特に耐性の種であるBacillus thuringiensisの芽胞のような芽胞の破壊、不活性化を確実に行うことが示された。
【0083】
酸(単数または複数)は好ましくは、一般に20℃〜50℃の温度で、かつ平均で20〜60%である相対湿度で30分〜5時間内にゲルを確実に乾燥するために、0.5〜10mol/L、さらに好ましくは1〜10mol/Lの濃度で存在する。
【0084】
この種の酸性ゲルのために、無機の増粘剤は好ましくは、シリカまたはシリカの混合物である。
【0085】
あるいは、活性な生物学的除染剤は、塩基、好ましくは無機塩基、好ましくは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、およびそれらの混合物から選択された塩基であってもよい。
【0086】
このような塩基性ゲル剤の場合、本発明によるゲルの場合には、除染の作用に加えて、脱脂作用を有する。
【0087】
ゲルの乾燥時間に対して最も望ましくない天候条件下であることを含めて、全体的な有効性を得るためには、本発明によるゲルは、広範囲の濃度の塩基性の除染剤(単数または複数)を有してもよい。
【0088】
実際、一般に、殺生剤の役割を果たす、NaOHまたはKOHのような塩基性の除染剤の濃度の増大によって、Bacillus thuringiensisの芽胞について示されたように、生物種を阻害する速度がかなり増大するという可能性が示される(実施例2)。
【0089】
塩基は、20℃〜50℃の温度で、かつ平均で20〜60%である相対湿度で30分〜5時間内にゲルを確実に乾燥するために、10mol/L未満、好ましくは0.5〜7mol/L、さらに好ましくは1〜5mol/Lの濃度で存在することが有利である。
【0090】
この種のアルカリの塩基性のゲルに関しては、無機の増粘剤は、好ましくはアルミナまたはアルミナ類の混合物である。
【0091】
処理の安全性を確保しながら、広範囲の材料にわたって最大効率が得られるように、生物学的な除染剤は、好ましくは水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムである。
【0092】
セメントマトリックスの処理の場合には、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムを使用することにより誘導される、ゲルの塩基性のpHによって、表面上のゲルの整合性を損なう、従って、この方法の有効性を損なう、除染すべき材料とゲルとの間の酸塩基反応を回避する可能性が得られる。
【0093】
水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムの吸湿性はまた、ゲルの乾燥現象を遅くするためにはかなりの利点でもある。本発明によるゲル(例えば、殺生剤溶液を含む)と、生物学的汚染物質との間の接触時間は、これによって、かなり増大することが見出される。
【0094】
実際、水相の蒸発過程と、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムの結晶によって取り込まれる水の蒸発過程との間の競合は、このゲルの乾燥の速度論を好都合に改善する(実施例3)。
【0095】
芽胞を阻害する速度論(実施例2)および温度の関数としてのゲルの乾燥時間(実施例4)に関して、殺生剤は、好ましくは、1〜5mol/Lの濃度の水酸化ナトリウムである。
【0096】
本発明によるゲルは、さらに基本的な成分として、高吸収性ポリマーを含む。
【0097】
「SAP」とも命名された「高吸水性ポリマー」とは、一般的に、乾燥した条件および状態で、その重量の少なくとも10倍、好ましくは少なくとも20倍の、水性の液体、特に水、特に蒸留水を自然に吸収できるポリマーを意味する。
【0098】
いくつかの「SAP」は、その液体重量の最大1,000倍までおよびそれ以上さえ吸収し得る。
【0099】
このような高吸水性ポリマーは、特に、教科書「Absorbent Polymer Technology,Studies in Polymer Science 8」L. BRANNON−PAPPASおよびR.HARLAND,Elsevier編集,1990(参照がなされ得る)に記載されている。
【0100】
自然な吸収とは、最大約1時間におよぶ吸収時間を意味する。
【0101】
高吸水性ポリマーは、その重量の10〜2000倍、好ましくはその重量の20〜2000倍(すなわち、吸収ポリマーの1グラムあたり20g〜2000g)、さらに好ましくは、30〜1500倍、特に50〜1,000倍におよぶ水吸収能力を有する場合がある。
【0102】
これらの水吸収特性は、標準状態の温度(25℃)および圧力(760mmHg、すなわち100,000Pa)のもとで、かつ蒸留水についての意味である。
【0103】
本発明による生物学的除染ゲルのSAPは、ポリ(メタ)アクリル酸ナトリウム塩類、(メタ)アクリルポリマーとグラフトされたデンプン、(メタ)アクリルポリマーとグラフトされた加水分解デンプン;デンプン、ガム、およびセルロース誘導体系のポリマー類;ならびにこれらの混合物から選択され得る。
【0104】
より具体的には、本発明によるゲルで用いられ得るSAPは、例えば以下から選択され得る:
− アクリルポリマー、メタクリルポリマー類(特にアクリル酸および/またはメタクリル酸の重合、および/またはアクリレートおよび/またはメタクリレートのモノマー類の重合に由来する)またはビニルポリマーなどのエチレン性不飽和の水溶性モノマー類の部分的な架橋との重合から生じるポリマー、特に架橋されかつ中和されたポリ(メタ)アクリレート類、特にゲルとして;ならびに塩、特に、アルカリ塩、例えば、これらのポリマー類のナトリウム塩またはカリウム塩;
− ポリアクリレート類とグラフトされたデンプン;
− アクリルアミド/アクリル酸コポリマー類、特にナトリウム塩またはカリウム塩型;
− アクリルアミド/アクリル酸グラフトのデンプン類、特にナトリウム塩類またはカリウム塩型;
− カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩またはカリウム塩類;
− 架橋ポリアスパラギン酸類の塩類、特にアルカリ塩類;
− 架橋ポリグルタミン酸類の塩類、特にアルカリ塩類。
【0105】
特に、「SAP」としては、以下から選択される化合物を用いてもよい:
− 以下の名称で販売される、架橋のポリアクリル酸ナトリウムまたはポリアクリル酸カリウム、SALSORB CL 10、SALSORB CL 20、FSAタイプ101、FSAタイプ102(Allied Colloids);ARASORB、S−310(荒川化学);ASAP 2000 Aridall 1460(Chemdal);KI−GEL 201−K(Siber Hegner);AQUALIC CA W3、AQUALIC CA W7、AQUALIC CA W10;(日本触媒)AQUA KEEP D50、AQUA KEEP D60、AQUA KEEP D65、AQUA KEEP S 30、AQUA KEEP S 35、AQUA KEEP S 45、AQUA KEEP A1 M1、AQUA KEEP A1 M3、AQUA KEEP HP 200、NORSOCRYL S 35、NORSOCRYL FX 007(Arkema);AQUA KEEP 10SH−NF、AQUA KEEP J−550(Kobo);LUQUASORB CF、LUQUASORB MA 1110、LUQUASORB MR 1600、HYSORB C3746−5(BASF);COVAGEL(Sensient Technologies)、SANWET IM−5000D(Hoechst Celanese);
− SANWET IM−100、SANWET IM−3900、SANWET IM−5000S(Hoechst)の名称で販売されるデンプングラフトのポリアクリレート類;
− WATERLOCK A−100、WATERLOCK A−200、WATERLOCK C−200、WATERLOCK D−200、WATERLOCK B−204(Grain Processing Corporation)の名称で販売されるナトリウム塩またはカリウム塩型の、デンプングラフトのアクリルアミド/アクリル酸コポリマー;
WATERLOCK G−400(Grain Processing Corporation)の名称で販売されるナトリウム塩型のアクリルアミド/アクリル酸コポリマー類;
− AQUASORB A250(Aqualon)の名称で販売されるカルボキシメチルセルロース;
− GELPROTEIN(Idemitsu Technofine)の名称で販売される架橋ポリグルタミン酸ナトリウム。
【0106】
高吸水性ポリマー、特に、高吸水性ポリマー(高分子電解質)(例えばポリ(メタクリル酸)アクリル酸エステル型のナトリウムまたはカリウムの、ナトリウムイオンまたはカリウムイオンなどのアルカリイオンを含有する)は、除染ゲルに対して多くの特性を付与する。
【0107】
まず第一に、それらのポリマーは、製品のレオロジー、特にその流動閾値に影響する。この方法の適用に関しては、噴霧されたゲルの厚みが1mmを超えている場合、処理された材料上で、特に垂直面や天井で、ゲルが完全に維持されることを保証することが重要である。
【0108】
ゲルによる生物学的除染方法の範囲内で、高吸水性ポリマーが特に興味深い。なぜなら、このポリマーは、水素結合を介して溶液の一部、例えば、このゲルに含まれる殺生溶液の一部を吸収するからである。ゲルの溶液、例えば、殺生溶液と、ポリアクリル酸ナトリウムなどの高吸水性ポリマーとの間で形成される水素結合の数は、塩負荷に依存するので、吸収/脱離現象は、除染ゲルの塩負荷が改変されるとき、生じる。
【0109】
次いで、この機構は、例えば、セメントマトリックスのような無機でかつ多孔性の材料を除染することが論点である場合、特に重要である。
【0110】
実際、材料と接触している際、カルシウムに基づく場合が極めて多い無機粒子の存在のせいで、ゲルの塩負荷は増大する。ポリアクリル酸ナトリウムなどの高吸水性ポリマーの中では、対イオンNaをカルシウム由来のCa2+で置換することによって、カルシウムイオンのより大きな立体障害という理由で、即時的に、溶液、例えば、殺生溶液の脱塩現象が生じる。
【0111】
次いで、ポリアクリル酸ナトリウムなどの高吸水性ポリマーによって遊離される殺生溶液の量は、即座に材料の孔に拡散し、深く浸透し得る。
【0112】
除染剤の、例えば殺生剤の、この材料のコアに対する拡散現象は、なんら高吸水性ポリマーを含まないゲルの場合、はるかに制限される(実施例6を参照のこと)。
【0113】
従って、本発明によるゲルに高吸水性ポリマーを添加することによって、本発明によるゲルおよび方法の有効性は、1〜数ミリメートル、例えば、最大2、5、10、20または100ミリメートルの厚みにおよぶ深部で汚染されている多孔性材料の存在下で有意に増大することができる(実施例6)。
【0114】
高吸水性ポリマーは、好ましくは、ARKEMAが市販するAquakeep(登録商標)またはNorsocryl(登録商標)のシリーズのなかから選択され得る。
【0115】
このゲルはまた、好ましくは、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドのブロックコポリマーのようなブロックコポリマー、ならびにエトキシル化脂肪酸およびそれらの混合物などの非イオン性界面活性剤のファミリーから選択される界面活性剤または界面活性剤の混合物を含んでもよい。
【0116】
この種類のゲルに関しては、界面活性剤は好ましくは、「PLURONIC(登録商標)」の名称でBASFが市販しているブロックコポリマーである。
【0117】
Pluronics(登録商標)は、エチレンオキシドとプロピレンオキシドのブロックコポリマーである。
【0118】
これらの界面活性剤は、床、壁または天井に噴霧可能にするため、さらに垂れ流れることを回避することによって、ゲルのレオロジー特性、特に製品のチキソトロピー性、および回復時間に影響する。
【0119】
界面活性剤の使用に加えて、乾燥廃棄物の付着を制御し[実施例7]、廃棄物が発塵しないことを保証するために、乾燥残渣のフレークの大きさを制御する[実施例8]ことが可能である。
【0120】
本発明による溶媒は通常、水、有機溶媒、およびそれらの混合物から選択される。
【0121】
好ましい溶媒は水であり、従って、この場合には、溶媒は水からなり、100%の水を含む。
【0122】
本発明は、さらに、この表面上で、可能性としてはこの表面の下で基材の深部で見出される少なくとも1つの生物種によって汚染された固体基材の表面の生物学的除染のための方法であって、ここで以下の連続工程を含む少なくとも1つのサイクルが行われる方法に関する:
a)上記のように、本発明のゲルをこの表面に塗布する工程;
b)このゲルを、少なくとも十分な時間この表面上で維持し、その結果このゲルが、この生物種を破壊および/または不活性化および/または吸収し、かつその結果、このゲルが乾燥して、この生物種を含有する乾燥し、かつ固体の残渣を形成する工程;
c)この生物種を含有する乾燥し、かつ固体の残渣を除去する工程。
【0123】
非多孔性表面の場合には、「不活性化された」生物学的汚染剤は、凍結乾燥フレークによって回収されることに留意すべきである。
【0124】
他方では、セメントマトリックスのような多孔質材料の場合のように、深部汚染の場合、乾燥ゲルは、表面汚染の残渣しか含まない。
【0125】
高吸水性ゲルの作用の後で、その場で「不活性化された」深部の内部汚染は、この基材材料のコアに残る。
【0126】
固体基材は、多孔質基材、好ましくは、多孔性無機基材であることが有利である。
【0127】
しかし、本発明によるゲルの有効性および本発明による方法の有効性は、非多孔性の表面および/または非鉱物表面の存在下で、ちょうど同じように良い。
【0128】
有利には、基材は、ステンレス鋼のような金属;ポリマー、例えば、プラスチック材料またはポリ(塩化ビニル)類またはPVCのようなゴム、ポリプロピレン類またはPP、ポリエチレン類またはPE、特に高密度ポリエチレン類またはHDPE、ポリ(メチルメタクリレート)類またはPMMA、ポリ(フッ化ビニリデン)類またはPVDF、ポリカーボネートまたはPC;ガラス;セメント;モルタルおよびコンクリート;しっくい;レンガ、天然石または人工の石;セラミックスから選択される少なくとも1つの材料からできている。
【0129】
生物種は既に上記で列挙した有毒な生物種から選択されることが有利である。
【0130】
ゲルは、表面1mあたり100g〜2000g、好ましく表面1mあたり500〜1,500グラム、さらに好ましくは表面1mあたり600〜1,000g(これは、一般には、0.5mm〜2mmの表面上に沈着されたゲル厚に相当する)の量で、除染されるべき表面に塗布(適用)されることが有利である。
【0131】
ゲルは、スプレーによって、ブラシを用いて、またはコテを用いて固体表面に塗布(適用)されることが有利である。
【0132】
工程b)において、乾燥は1℃〜50℃、好ましくは15℃〜25℃の温度で、かつ20%〜80%の相対湿度、好ましくは20%〜70%の相対湿度で達成されることが有利である。
【0133】
ゲルは、2〜72時間、好ましくは2〜48時間、より好ましくは5〜24時間の間、表面上で維持されることが有利である。
【0134】
乾燥した固体の残渣は、粒子、例えば、1〜10mm、好ましくは2〜5mmの大きさを有するフレークとして出現することが有利である。
【0135】
この乾燥した固形の残渣は、ブラッシングおよび/または吸引によって固体表面から除去されることが有利である。
【0136】
有利には、上記のサイクルは、全てのサイクルの間、同じゲルを用いて、または1回または複数回のサイクルの間異なるゲルを用いて、例えば、1〜10回繰り返してもよい。
【0137】
工程b)において、ゲルを、完全乾燥の前に、生物学的除染剤の溶液を用いて、好ましくは、このゲルの溶媒中で工程a)の間に適用されるゲルの生物学的活性剤の溶液を用いて、再湿潤化することが有利である。
【0138】
工程b)の間、このゲルは、完全な乾燥の前に、既に上記した生物学的除染ゲル中に含まれる殺生溶液で再湿潤化してもよく、次いでこれによって、一般に、表面上へのゲルの適用の繰り返しが避けられ、試薬の保持および廃棄物の量の制限が生じる。この再湿潤操作は繰り返されてもよい。
【0139】
まとめると、本発明による方法およびゲルは、とりわけ、以下の有利な特性を有する:
− 噴霧によるゲルの塗布(適用)、
− 壁に対する付着、
− 特に多孔性表面の場合には浸透性の汚染の状況を含めて、このゲルの乾燥段階の終わりに最大の除染有効性を得ること。
【0140】
一般には、乾燥時間は、不活性化に必要な時間より長いかまたは等しいことが保証される。深部不活性化の場合、当業者は一般に、再湿潤化を用いる。
− 極めて広範な材料の処理、
− 処理の終わりにこの材料の任意の機械的または物理的な変化がないこと、
− 変動する気候条件下でこの方法の適用、
− 廃棄容積の減少、
− 乾燥廃棄物の容易な回収。
【0141】
本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明を読めば、さらに明確になり、この説明は、添付の図面に関して、例示であって限定ではないものである。
【図面の簡単な説明】
【0142】
図1図1(A、B)は、固体物質の除染のための本発明による方法の主要な工程を示す概略断面図を示す。
図2図2(A、B、C)は、液体型の汚染によって深部が汚染されたセメント材料に対する、なんら高吸水性ポリマーを含まないゲルの作用機序を示している模式的な断面図を示す。
図3図3(A、B、C)は、液体型の汚染によって深部が汚染されたセメント材料に対する、高吸水性ポリマーを含有するゲルの作用機序を示している模式的な断面図を示す。
図4図4は、4.8%のNaOCl、1MのNaOH、0.5MのHNO、および2%のHPC(ヘキサデシル−ピリジニウムクロライド)の、異なる活性な除染剤を種々の濃度で含む異なる液体殺生溶液中の、Bacillus thuringiensisの芽胞の阻害の速度論を示すグラフであり、1%の界面活性剤Pluronic(登録商標)P 8020、または1%の界面活性剤KR8(エトキシル化脂肪酸)を含有する比較の溶液についても試験する。残留芽胞の数は、1時間および24時間の接触時間で殺生溶液の各々について示す。
図5図5は、0.5MのNaOH、1MのNaOH、5MのNaOH、0.5MのKOH、1MのKOHおよび5MのKOHの、異なる塩基を種々の濃度で含有する異なる液体の殺生溶液中の、Bacillus thuringiensisの芽胞を阻害する速度論を示すグラフである。残留芽胞の数は1時間、2時間、3時間、4時間、および5時間の接触時間について、各々の殺生溶液について示す。
図6図6は、乾燥時間に対するゲル中の水酸化ナトリウムの濃度の影響を示すグラフである。ゲルの質量損失(%)は、縦軸にプロットしており、ゲルの乾燥時間(日数)は、横軸にプロットしている。 曲線A、B、C、およびDはそれぞれ、NaOHなし(水のみ)、および1M、5Mおよび10Mの濃度のNaOHを含むゲルの乾燥を図示している。
図7図7は、1MのNaOHに基づくゲルの乾燥の速度論;および1MのKOHに基づくゲルの乾燥の速度論に対する温度の影響を示すグラフである。ゲルの質量損失(%)は、縦軸にプロットしており、ゲルの乾燥時間(分)は、横軸にプロットしている。曲線Aは、22℃でかつ相対湿度40%における1MのNaOHに基づくゲルの乾燥を図示しており、曲線Bは、22℃でかつ相対湿度40%における1MのKOHに基づくゲルの乾燥を図示しており、曲線Cは、50℃でかつ相対湿度40%における1MのKOHに基づくゲルの乾燥を図示している。
図8図8は、1MのNaOHに基づくゲルの乾燥の速度論に対する堆積されたゲルの厚みの影響を示すグラフである。ゲルの質量の損失(%)は、縦軸にプロットしており、ゲルの乾燥時間(分)を、横軸にプロットしている。曲線Aは、1mmの厚みで堆積したゲルの乾燥を図示しており、曲線Bは、2mmの厚みで堆積したゲルの乾燥を図示している。
図9図9は、モルタルのサンプルに対するBacillus thuringiensisの芽胞の数によって表される、モルタルの生物学的な除染の有効性に対する高吸水性ポリマーの影響を示すグラフである。各ゲルについて、左のバー(淡いグレーAおよびB)は、処理前のモルタルサンプルの汚染を示し、右のバー(濃いグレーCおよびD)は、乾燥ゲルの回収後のモルタルサンプルの残留汚染を表している。このグラフは、第一の(グラフの左部分、グラフの左側に隣り合って配置されるバーAおよびC)なんら高吸水性ポリマーを含まない殺生ゲルの存在下、第二の(グラフの右部分、グラフの右側に隣り合って配置されるバーBおよびD)高吸水性ポリマーを添加した同じ殺生ゲルの存在下における、ゲルによる2つの別個の処理を示す。
図10図10は、乾燥ゲルフレークの接着力に対する界面活性剤(Pluronic(登録商標))濃度の影響を示すグラフである。総接着面積(mm/cm)を、縦軸にプロットし、界面活性剤の濃度(g/L)を横軸にプロットしている。
図11図11は、形成された乾燥ゲルフレークの数に対する界面活性剤(Pluronic(登録商標))の濃度の影響を示すグラフである。フレーク数/cmの数値を縦軸にプロットし、界面活性剤の濃度(g/L)を横軸にプロットしている。
図12図12は、処理された材料の性質に応じた本発明によるゲルの有効性を図示するグラフである。Bacillus thuringiensisの芽胞の数が縦軸にプロットされている。各々の材料については、左のバー(淡いグレー)が、本発明のゲルによる処理の前の汚染に相当し、右のバー(黒)が、このゲルの回収後の残留汚染を示す。
【発明を実施するための形態】
【0143】
特定の実施形態の詳細な考察
本発明によるゲルは、室温で容易に調製され得る。
【0144】
例えば、本発明のゲルは、アルミナおよび/またはシリカのような無機増粘剤を、活性な生物学的除染剤、界面活性剤および高吸水性ポリマーを含有する溶液に、好ましくは徐々に添加することによって調製されてもよい。
【0145】
この添加は、この溶液中に単に増粘剤を注ぐことによって行ってもよい。無機増粘剤の添加の際、活性な生物学的除染剤、界面活性剤および高吸水性ポリマーを含有する溶液は、一般的に機械的な攪拌下に維持される。この攪拌は、例えば、3枚羽根のプロペラを装備した攪拌機によって行われてもよい。
【0146】
攪拌速度は、一般的に600〜800回転/分からなる。
【0147】
無機の増粘剤の添加の終了後、完全に均一なゲルを得るために、例えば、2〜5分間、撹拌をさらに続ける。
【0148】
本発明によるゲルを調製するための他の手順は、上記のものとは異なる順序でゲルの成分を添加することにより適用されてもよいことは全く明らかである。
【0149】
通常、本発明のゲルは、除染されるべき表面上にある距離で(例えば、1〜5mの距離で)、または接近して(例えば、1m未満、好ましくは50〜80cmの距離で)噴霧することを可能にするため、1000s−1剪断速度で200mPa・s未満の粘度を有するべきである。この粘度の回復時間は、一般的に、1秒未満でなければならず、かつ低せん断下の粘度は、壁を流れないように10Pa・sより大きくなければならない。
【0150】
本発明によるゲルの界面活性剤は好ましくは、かつ特に、本発明によるゲルのレオロジー特性に影響を及ぼすことに留意すべきである。この界面活性剤はとりわけ、本発明によるゲルがスプレーすることにより塗布され得、かつ垂直面および天井の処理の際に拡散または流れのリスクを回避する可能性をもたらす。
【0151】
次いで、本発明による、このように調製されたゲルは、固体材料(3)からできている基材の除染されるべき固体表面(2)上に塗布され(1)(図1)、言い換えれば、表面(2)は、生物学的汚染(4)に曝されており;この生物学的汚染(4)は、既に上記した生物種の1つ以上から構成され得る。
【0152】
既に上記したように、活性な生物学的除染剤は、除去されるか、破壊されるか、または不活性化されるべき生物種に応じて選択される。
【0153】
アルミニウムタイプの軽量合金をおそらく除いて、塩基性または酸性のゲルが適用される場合、除染されるべき表面(2)を構成する材料に関して制限はなく、実際、本発明によるゲルで、全種類の材料、脆弱性の材料でさえなんら損傷のない処理が可能になる。
【0154】
本発明のゲルは、処理された材料に対して変化、腐食、化学的、機械的または物理的な攻撃を与えない。従って、本発明によるゲルは、処理された材料の完全性に悪影響を及ぼすものではなく、その再利用さえ可能にする。従って、軍事設備などの機密性の高い機器は保存され、その除染後に再利用されてもよいが、本発明によるゲルで処理されたモニュメントは、完全に分解されることはなく、それらの視覚的および構造的な完全性は保存されることが見出される。
【0155】
従って、基材(3)のこの材料は、ステンレス鋼などの金属から、ポリマー、例えば、プラスチック材料またはゴムから選択されてもよく、その中でも、とりわけ、PVC、PP、PE特にHDPE、PMMA、PVDF、PC、ガラス、セメント、モルタル、およびコンクリート、しっくい、レンガ、天然または人工的な石、セラミックスが言及され得る。
【0156】
いずれの場合にも(実施例9および図12を参照)、材料にかかわらず、本発明のゲルによる除染の効果は完全である。
【0157】
処理された表面は、塗装されていても、または塗装されていなくてもよい。
【0158】
特に驚くべきことに、本発明によるゲルは、多孔性材料、例えば、スラリーのようなセメントマトリックス、モルタルおよびコンクリート、レンガ、しっくい、またはさらに天然もしくは人工の石に特に有効であることがわかった。実際、高吸水性ポリマーの本発明によるゲルの存在によって、高吸水性ポリマーを含まない等価なゲルよりも実質的にかなり深くまで多孔性物質を除染することが可能になる。
【0159】
言い換えれば、本発明によるゲル中の高吸収性ポリマーの存在によって、多孔性基材、特に多孔性の無機基材を処理することが課題である場合、材料の深部への活性な除染剤、例えば、殺生剤の拡散が容易になる。
【0160】
本発明によるゲルを用いた処理の有効性は、数ミリメートルまで深く汚染された材料を含めて、一般的には完全である。
【0161】
除染すべき表面の形状、幾何学的形状および大きさに関する制限はなく、本発明によるゲルおよびこれを塗布する方法で、大サイズの表面、複雑な幾何学的形状を有する表面、例えば、凹部、隅っこ、片隅を有する表面の処理が可能になる。
【0162】
本発明によるゲルは、床のような水平な表面だけでなく、壁または天井などの傾斜面またはオーバーハングしている表面などの垂直面にも、効果的な処理を保証する。
【0163】
溶液のような液体を適用する既存の生物学的な除染方法に比べて、ゲルを適用する本発明による除染方法は、移動不可能であり屋外に配置される、大きな表面積の物質の処理のために特に有利である。実際、ゲルの適用のおかげで、本発明の方法は、環境への化学溶液の伝播および汚染種の分散を回避しながら、その場で除染を可能にする。
【0164】
本発明によるゲルは、当業者に公知の全ての適用方法によって、処理されるべき表面に適用され得る。
【0165】
標準的な方法は、例えば、噴霧器またはブラシまたはコテによる施行、で噴霧することである。
【0166】
処理されるべき表面にゲルを噴霧することによる、本発明によるゲルの塗布のために、コロイド溶液は、例えば、低圧ポンプ、例えば、7バール以下、すなわち、約7.10パスカルの圧力を加えるポンプを介して運ばれてもよい。
【0167】
表面へのゲルジェットのバーストは、例えば、平らなジェットノズルまたは丸いジェットノズルによって得ることができる。
【0168】
ポンプとノズル間の距離は、任意の距離であってもよく、例えば、それは1〜50m、特に1〜25mであってもよい。
【0169】
本発明によるゲルの粘度を回復するための十分短い時間で、噴霧されたゲルが全ての表面に対して、例えば、壁に対して付着することが可能になる。
【0170】
処理されるべき表面上に堆積されるゲルの量は、一般には、100〜2,000g/m、好ましくは500〜1,500g/m、さらに好ましくは600〜1,000g/mである。
【0171】
単位表面あたりに堆積されるゲルの量、および結果として堆積されたゲルの厚みは、乾燥速度に影響を有する。
【0172】
従って、フィルム、0.5mm〜2mmの厚みを有するゲルの層が、処理されるべき表面上に噴霧されるならば、そのゲルと材料との間の効果的な接触時間は、その乾燥時間に等しく、その間ゲル中に含まれる活性成分が、汚染と相互作用する。
【0173】
多孔性基材、例えば、セメントマトリックスの場合、高吸水性ポリマーの作用後に材料のコアへ浸透される殺生溶液の作用時間は、ゲルの乾燥時間よりも長い場合があり、この場合、殺生溶液での再湿潤化を行うか、またはこのゲルの噴霧を繰り返すかが一般的に必要である。
【0174】
さらに、驚くべきことに、上述の範囲にある場合、500g/mを超える場合、とりわけ500〜1,500g/mの範囲である場合(堆積されたゲルの最小の厚さ、例えば、500g/mを超える堆積されたゲルの量について500μmを超える厚みに相当する)堆積されたゲルの量によって、ゲルの乾燥後、例えば、1〜10mm、好ましくは2〜5mmの大きさ(これは吸い込まれる場合がある)を有する、ミリメートルのフレークの形態で、ゲルの破砕を得ることが可能になることが示された。
【0175】
堆積したゲルの量、従って、堆積されたゲルの厚み、好ましくは、500g/m超、すなわち、500μmが、基本的なパラメーターであり、これは、ゲルの乾燥後に形成される乾燥残渣の大きさに影響し、従って、ミリメートルのサイズの乾燥残渣であって、かつ粉末ではない残渣が形成されることが確実になり、このような残渣は、機械的な方法によって、好ましくは吸引によって容易に除去される。
【0176】
しかし、低濃度の界面活性剤により、ゲルの乾燥が改善され、乾燥残渣の単一分散サイズの均一な破砕現象、および乾燥残渣が支持体から脱離される能力の増強がもたらされることにも留意のこと。
【0177】
次いで、このゲルは、その乾燥に必要な全時間にわたって処理されるべき表面上に維持される。この乾燥工程の間(本発明による方法の活性段階を構成するとみなされ得る)、ゲルに含まれる溶媒、すなわち、一般にはゲル中に含まれる水は、乾燥した固体の残渣が得られるまで蒸発する。
【0178】
乾燥時間は、上で示したその成分の濃度範囲で、ゲルの組成に依存するが、すでに述べたように、また、単位面積あたりの堆積されたゲルの量、すなわち、堆積ゲルの厚みにも依存する。
【0179】
この乾燥時間はまた、気象条件、すなわち、固体表面が見出される、大気の温度および相対湿度に依存する。
【0180】
本発明による方法は、極めて広範な気象条件で、すなわち1℃〜50℃の温度Tで、かつ20%〜80%の相対湿度HRで適用され得る。
【0181】
従って、本発明によるゲルの乾燥時間は、一般には、1℃〜50℃の温度Tで、かつ20%〜80%の相対湿度HRで、1時間〜24時間である。
【0182】
本発明によるゲル剤は本質的に、「Pluronics(登録商標)」のような界面活性剤の存在のおかげで、一般には、材料を汚染する汚染種を不活性化および/または吸収するために必然的に必要である、接触時間(殺生剤のような除染剤と除去されるべき生物種、特に生体毒性種との間の接触)に実質的に等しい乾燥時間が保証されることに注意すべきである。言い換えれば、ゲル剤では、生物学的汚染種の不活性化時間以外のなにものでもなく、生物学的汚染を阻害するための速度論と匹敵する、乾燥時間が保証される。
【0183】
一般に用いられる無機充填剤の比表面積は、一般に、通常50m/g〜300m/g、好ましくは100m/gであり、本発明によるゲルの吸収能力によって、処理されるべき表面を構成する材料の不安定な(表面)汚染を捕捉する能力がもたらされる。
【0184】
必要に応じて、汚染性の生物種は、ゲル相で不活性化される。ゲルを乾燥させた後、不活性化された汚染物は、下記のように、乾燥ゲルの残留物の回収時に除去される。
【0185】
ゲルの乾燥の終わりに、ゲルは均一に破壊し、例えば、1〜10mmの大きさ、好ましくは2〜5mmの(粉末ではない)大きさを有する、一般には、固体フレーク(5)の形態である、ミリメートルの固体の乾燥残渣が得られる。
【0186】
この乾燥残渣は、不活性な汚染種(6)を含んでもよい。
【0187】
乾燥の終わりに得られるフレーク(5)のような乾燥残渣は、除染材料の表面(2)に対して付着性が低い。結果として、ゲルを乾燥後に得られた乾燥残渣は、簡単なブラッシングおよび/または吸引によって容易に回収され得る。しかし、乾燥残渣はまた、ガスジェット、例えば、圧縮空気のジェットにより除去されてもよい。
【0188】
従って、すすぎは必要なく、本発明による方法は、なんら二次流出液を生成しない。
【0189】
従って、本発明による方法は、まず第一に、ある溶液を用いた洗浄による除染方法と比較して、化学的試薬の有意な削減を生じる。次に、直接吸引され得る乾燥残渣の形態での廃棄が得られるので、水またはある液体によるすすぎの作業が省かれる。当然ながら、この結果により、生成される流出液の量が減少されるだけでなく、処理施設のチャネルおよび排出口(出口)に関して顕著に簡素化される。
【0190】
本発明によるゲルの主要な鉱物組成のため、および生成された少量の廃棄物に起因して、乾燥廃棄物は、なんら予備的な処理なしに、貯蔵されてもよいし、または廃棄施設のチャネルに向けられてもよい。
【0191】
例えば、一般的な場合、処理された表面の1mあたり1,000グラムが適用されるとき、生成される乾燥廃棄物質量は、1mあたり300グラム未満である。
【0192】
図2では、水溶液(22)中の芽胞で汚染された多孔質基材(21)の、高吸水性ポリマーを含まない本発明と適合しないゲルでの除染が図示されている。汚染の前部(23)は、基材の深部に延びている(図2A)。基材の表面(25)上に殺生ゲル(24)を塗布する場合は、殺生剤の拡散前部(26)は、基材の深部へごくわずかに延びて、汚染前面の前部(23)にとどまる(図2B)。結果として、ゲルが除去される場合(図2C)、浄化された領域(27)はごくわずかだけ深部に伸び、従って、多孔質基材(21)に残留汚染(28)が残っている。
【0193】
図3では、水溶液(32)中の芽胞で汚染された多孔性基材(31)の、高吸水性ポリマーを含んでいる本発明のゲルによる除染が図示されている。汚染の前面(33)は、基材の深部に伸びている(図3A)。高吸水性ポリマーを含む殺生ゲル(34)を、基材の表面(35)に塗布するとき、この殺生剤の拡散前部(36)は、この基材の深部に延びており、汚染前部を超える(図3B)。結果として、浄化された領域(37)が深部(P)に延び、もはや多孔質基材中に汚染は残留しない。
【0194】
本発明は、ここで、例示であって、限定ではない、以下の実施例を参照することで説明される。
【実施例1】
【0195】
本実施例では、Bacillus thuringiensisの芽胞の阻害の速度論を、種々の濃度で異なる活性な除染剤を含有する(すなわち、4.8%のNaOCl、1MのNaOH;0.5 HNO、2% HPC(ヘキサデシルピリジニウムクロライド)異なる液体の殺生溶液中で研究する。界面活性剤であるPluronic(登録商標)P 8020を1%で、または界面活性剤KR8(エトキシル化脂肪アルコール)を1%で含有する比較の溶液も用いた。
【0196】
実験手順:
この実験は、1mlの液体の殺生溶液と接触して、2×10個の芽胞を、攪拌しながら配置することからなる。
【0197】
撹拌の1時間および24時間の終わりに、サンプルを採取して、この混合物の生物学的活性を明らかにした。これを明らかにすることは、この栄養培地(寒天ゲル)上に混合物の液滴を落とす工程と、30℃で16時間のインキュベーションの終わりに、形成されたコロニーの数をカウントする工程とからなる。各々のコロニーは、不活性化された芽胞の結果である。
【0198】
試験の結果を図4に示しており、ここでは、残留する芽胞の数は、各々の殺生溶液についておよび比較の溶液について、1時間および24時間の接触時間で示す。
【0199】
図4によって、Pluronic(登録商標)P 8020および界面活性剤KR8が芽胞に影響を与えないことが顕著に示される。
【実施例2】
【0200】
本実施例では、種々の濃度で異なる塩基を含有する(すなわち、0.5MのNaOH、1MのNaOH;5MのNaOH、0.5MのKOH、1MのKOHおよび5MのKOH)種々の液体の殺生溶液中での、Bacillus thuringiensisの芽胞の阻害の速度論を研究する。
【0201】
用いる実験手順は、実施例1で上記した手順と同様である。関連の殺生培地中での芽胞の阻害の速度論を決定するために、混合物のサンプリングの数のみを増やす(1時間、2時間、3時間、4時間、5時間)。
【0202】
テスト結果は、図5に示しており、ここでは、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間の接触時間で、各々の殺生溶液について残存する芽胞の数を示す。
【0203】
図5によって、殺生剤の濃度の増大は、Bacillus thuringiensisの芽胞の阻害率をかなり向上させる能力をもたらすことが示される。
【実施例3】
【0204】
本実施例では、本発明のゲルにおける乾燥時間に対する水酸化ナトリウム濃度の影響を検討した。
【0205】
このゲルは、質量割合で以下の組成物を有する:
− アルミナ:14%
− 水酸化ナトリウム溶液(変動濃度):85%
− 界面活性剤(Pluronic(登録商標)P8020):0.7%
− 高吸水性ポリマー:ポリアクリル酸ナトリウムNorsocryl(登録商標)S35:0.3%。
【0206】
実験手順:
変動する濃度の水酸化ナトリウム(0M、1M、5Mおよび10M)を含むゲルを、1mmの制御された厚みにわたって不活性な金属支持体上に広げた。次いで、ゲルフィルムを含む金属支持体を、ゲルの質量損失の経時的な追跡を保証する正確なバランスを装備した、耐候性、気候性の筐体に入れた。この耐候性の筐体は、22℃の温度、および60%の相対湿度に調節した。
【0207】
図6の曲線によって、水酸化ナトリウムの(同様に水酸化カリウムの)吸湿性は、ゲルの乾燥現象を遅らせることが示される。その結果、除染剤、すなわち殺生溶液と生物学的汚染との間の接触時間はかなり増大される。
【実施例4】
【0208】
本実施例では、1MのNaOHに基づくゲルの乾燥の速度論;および1MのKOHに基づくゲルの乾燥の速度論に対する温度の影響を研究する。
【0209】
このゲルは、重量パーセントで、以下の組成を有する:
− アルミナ:14%
− 水酸化ナトリウムの溶液(1M):85%
− 界面活性剤(Pluronic(登録商標)P8020):0.7%
− 高吸水性ポリマー:ポリアクリル酸ナトリウムNorsocryl(登録商標)S35:0.3%。
【0210】
または、
− アルミナ:14%
− 水酸化カリウム溶液(1M):85%
− 界面活性剤(Pluronic(登録商標)P8020):0.7%
− 高吸水性ポリマー:ポリアクリル酸ナトリウムNorsocryl(登録商標)S35:0.3%。
【0211】
用いられる実験手順は、実施例3に、上述したものと同様である。耐候性の筐体は、ある場合には、22℃の温度、かつ40%の相対湿度に調節され(1MのNaOHを含むゲル、1MのKOHを含むゲル)、別の場合には、50℃の温度で、かつ40%の相対湿度に調節される(1MのNaOHを含むゲル、左の曲線C)。
【0212】
図7の曲線では、22℃で1MのNaOHに基づくゲルの乾燥時間が同じ温度で1MのKOHに基づくゲルの乾燥時間よりもわずかに長いことが示されるが、1MのNaOHを含むゲルの乾燥時間は50℃では、大きく低下する。
【実施例5】
【0213】
本実施例では、1MのNaOHに基づく本発明のゲルの乾燥の速度論に対する、堆積したゲルの厚さの影響を研究している。
【0214】
このゲルは、質量百分率で以下の組成を有する:
− アルミナ:14%
− 水酸化ナトリウム溶液(1M):85%
− 界面活性剤(Pluronic(登録商標)P8020):0.7%
− 高吸水性ポリマー:ポリアクリル酸ナトリウムNorsocryl(登録商標)S35:0.3%。
【0215】
用いられる実験手順は、実施例3で上述したものと同様である。耐候性の筐体は、この場合、22℃の温度で、かつ40%の相対湿度に調節される。金属支持体上に堆積されたゲルの厚みだけを1mmから2mmに変化する。
【0216】
図8の曲線によって、乾燥時間は、1mmという堆積されたゲルの厚み(曲線A)から2mmという堆積されたゲルの厚み(曲線B)まで移行する場合、明確に延長されることが示される。
【実施例6】
【0217】
本実施例では、モルタルサンプル上でBacillus thuringiensisの芽胞の数によって表される、モルタルの生物学的除染の有効性に対する高吸水性ポリマーの影響を研究する。
【0218】
実験手順:
モルタルサンプルは、Bacillus thuringiensisの2×10個の芽胞を含有する100μl容積の水を滴下することによって汚染させる。
【0219】
セメント系材料の深部への汚染溶液の拡散後、殺生除染ゲルを、モルタルサンプルの汚染された面の上に広げる。堆積されたゲルの量は、1,000g/mに等しい。
【0220】
24時間の乾燥の後、形成された乾燥ゲルのフレークを、モルタルのサンプルから取り除く。次いで、モルタルのサンプルを、37℃の温度で3時間撹拌しながら維持した、栄養性溶液ルリアブロス(Luria Broth)中に浸漬する。
【0221】
従って、モルタルサンプルの残留の生物学的活性は、モルタルサンプルを浸漬した栄養性溶液Luria Brothの既知容積をサンプリングする工程と、これをアガロースゲル上に置く工程によって明らかにされる。インキュベーションの24時間後、細菌のコロニーをカウントすることによって、殺生除染ゲルによって不活性化されない芽胞の数を明らかにすることが可能になる。
【0222】
高吸水性ポリマーを含まないゲルは、質量パーセントで次の組成を有する:
− アルミナ:14%
− 水酸化ナトリウム(1M)の溶液:85%
− 界面活性剤(Pluronic(登録商標)P8020):0.7%
− 高吸水性ポリマー:ポリアクリル酸ナトリウムNorsocryl(登録商標)S35:0.3%
【0223】
高吸収性ポリマーを省いている以外は、吸収性ポリマーなしのゲルは同じ組成を有する。
【0224】
図9のグラフによって、高吸水性ポリマーの添加が、数ミリメートルの厚みにわたって深部まで汚染されているモルタルのような多孔性材料の除染の有効性を有意に増大する可能性をもたらすことが示される。
【実施例7】
【0225】
本実施例では、乾燥ゲルフレークの付着能力に対する、界面活性剤Pluronic(登録商標)P8020の濃度の影響を研究する。
【0226】
実験手順:
このゲルは、その機械的特性が公知である(厚さ25μm、長さ2センチ、幅1センチ、および2.1011Paのヤング率)可塑性のステンレス鋼の刃(Outillage
francilienの較正シート)に適用され、この一端は固定されており、かつ他方はフリーである。ゲル層の表面は、その上に1ミリメートルの一定の厚みを堆積するのに適したスクレーパーでならされる。
【0227】
2台のカメラを追加して、ゲル層の上方に位置する1つのカメラは、裂け目の出現を見ることを可能にし、側方に位置する別のカメラは、時間の経過とともにゲルの層の厚さの変化を測定することを可能にする。フレークの付着は、両方のカメラで得られる画像の分析によって研究される。
【0228】
研究されるゲルは、界面活性剤の濃度が様々な、なんら高吸収性ポリマーを含まないゲルである。他の化合物は、実施例6の質量含量と等しい質量含量で維持されている。
【0229】
この界面活性剤の濃度は、0.10g/L、および50g/Lである。
【0230】
図10のグラフでは、本発明者らの着目した濃度範囲で(<10g/L)、Pluronic(登録商標)の濃度の増大は、このフレークの付着の減少を生じることが示される。次いで、ブラッシングおよび/または吸引による乾燥ゲル廃棄物の回収は、容易になることが見出される。
【実施例8】
【0231】
本実施例では、形成された乾燥ゲルフレークの数に対する、界面活性剤、すなわちPluronic(登録商標)の濃度の影響を研究する。
【0232】
研究されるゲルは、実施例7のゲルであり、ここでは界面活性剤濃度が変化されている。
【0233】
界面活性剤濃度は、0.10g/L、および50g/Lである。
【0234】
用いられる実験手順は、実施例7に用いられるものと厳密に同じである。
【0235】
図11のグラフによって、ゲル剤に対するPluronic(登録商標)の添加が、フレークの数の減少を生じることが示される。Pluronic(登録商標)の添加により、乾燥によって誘導される破砕に対してゲル化マトリックスの強靭性を向上させることができる:このゲルは、破砕することがより困難であり、破砕の数は、少なくなり、従ってフレークの数はより少なくなる。除染方法に関しては、フレークの数の減少は、利益があり:フレークが大きくなるにつれて、廃棄物は、ブラッシングおよび/または吸引により、廃棄物を回収するための段階では非粉末性になる。
【実施例9】
【0236】
本実施例では、Bacillus thuringiensisの芽胞による汚染に対する本発明による処理ゲルの有効性を、処理される材料の性質に応じて研究する。
【0237】
研究されるゲルは、実施例6の吸収ポリマーを含むゲルである。
【0238】
本実験手順は、実施例6の手順と同一である。研究した材料は、非多孔質材料であるので、この材料を、汚染液滴を蒸発させる30分の段階の後にゲルで処理する。この蒸発段階は、この物質の表面を覆っている、本発明の方法にとって先験的に最も有害である、乾燥した汚染物を処理するという要望に対応する。
【0239】
図12のグラフによって、ゲルの回収後、処理した材料(ステンレス鋼、塗装した鋼、ガラス、PVC、PP、PMMA、HDPE、PVDF、PC)にかかわらず、除染は、材料が変わっても、完全であることが示される。
【0240】
本実施例は、本発明によるゲルの有効性および多様性を示す。
【0241】
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図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12