特開2016-96783(P2016-96783A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特開2016096783-三層菓子 図000009
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-96783(P2016-96783A)
(43)【公開日】2016年5月30日
(54)【発明の名称】三層菓子
(51)【国際特許分類】
   A23G 4/00 20060101AFI20160425BHJP
   A23G 3/00 20060101ALI20160425BHJP
   A23G 3/34 20060101ALI20160425BHJP
【FI】
   A23G3/30
   A23G3/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-236813(P2014-236813)
(22)【出願日】2014年11月21日
(71)【出願人】
【識別番号】307013857
【氏名又は名称】株式会社ロッテ
(74)【代理人】
【識別番号】100087701
【弁理士】
【氏名又は名称】稲岡 耕作
(74)【代理人】
【識別番号】100101328
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 実夫
(74)【代理人】
【識別番号】100149766
【弁理士】
【氏名又は名称】京村 順二
(72)【発明者】
【氏名】尾▲崎▼ 史浩
(72)【発明者】
【氏名】伊東 陽子
【テーマコード(参考)】
4B014
【Fターム(参考)】
4B014GB07
4B014GB13
4B014GB14
4B014GE02
4B014GK02
4B014GL03
4B014GL04
4B014GL10
4B014GP27
(57)【要約】
【課題】経時安定性に優れたチューインガム等の三層菓子を提供すること。
【解決手段】この発明の三層ガム(三層菓子)1は、ガムベースを含む菓子素材で構成された上層2および下層3と、上層2および下層3によって上下から挟まれたセンター層4とを含み、センター層4は、2.0〜10.0重量%の酸味料が配合された菓子素材で構成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガムベースを含む菓子素材で構成された上層および下層と、
前記上層および下層によって上下から挟まれたセンター層とを含む三層菓子であって、
前記センター層は、2.0〜10.0重量%の酸味料が配合された菓子素材で構成されていることを特徴とする、三層菓子。
【請求項2】
前記上層および下層には、それぞれ、0〜2.0重量%の酸味料が配合されていることを特徴とする、請求項1に記載の三層菓子。
【請求項3】
前記センター層は、厚さが2.0mm以下であることを特徴とする、請求項1または2に記載の三層菓子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、三層菓子に関し、たとえば三層の板状チューインガム等の三層菓子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、チューインガムにおいては、香気や香味を増強するために、香料や酸味料を多めに配合することが提案されている。(たとえば、特許文献1および2を参照)
例えば、シトラス系フルーツ味の板状チューインガムを製造する場合などにおいて、実際のフルーツに近い香味を実現させるために、酸味料を多量に配合させることが考えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−171412号公報
【特許文献2】特開2013−85553号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の板状チューインガムでは、酸味料をガム総量中2.0重量%を超えて配合すると、非常に高い吸湿作用が見られ、板状チューインガム製品を一定期間保存しておくと、包装紙にチューインガムが付着してしまう、チューインガムの香味が劣化してしまう、といった課題があった。
そこで、この発明の主たる目的(解決課題)は、経時安定性に優れたチューインガム等の菓子を提供することである。
【0005】
この発明の他の目的は、経時安定性、特に強い酸味を発現するとともに、それが長期に渡って安定している三層菓子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための請求項1に記載の発明は、ガムベースを含む菓子素材で構成された上層および下層と、前記上層および下層によって上下から挟まれたセンター層とを含む三層菓子であって、前記センター層は、2.0〜10.0重量%の酸味料が配合された菓子素材で構成されていることを特徴とする、三層菓子である。
請求項2記載の発明は、前記上層および下層には、それぞれ、0〜2.0重量%の酸味料が配合されていることを特徴とする、請求項1に記載の三層菓子である。
【0007】
請求項3記載の発明は、前記センター層は、厚さが2.0mm以下であることを特徴とする、請求項1または2に記載の三層菓子である。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、酸味料を菓子総量中2.0〜5.0重量%配合して非常に強い酸味を発現でき、かつ吸湿安定性や香味、食感の安定性に優れた三層菓子を製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、この発明の一実施形態に係る三層菓子としての三層ガムの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下には、この発明に係る三層菓子について、より具体的に説明をする。
この発明の実施形態は、三層チューインガムとして構成することができる。
図1は、この発明の一実施形態に係る三層菓子としての三層板状チューインガム(以下「三層ガム」と称する。)1の斜視図である。
三層ガム1は、上層2および下層3と、上層2および下層3によって上下から挟まれたセンター層4とを含んでいる。上層2、下層3およびセンター層4は、この実施形態では、いずれもガムベースをたとえば30重量%程度含んだガム組成物により構成されている。
【0011】
三層ガム1は、全体が薄板状の長方形状(短冊形状)に構成されている。その大きさは、一例として、短辺Sが12mm、長辺Lが43mm、上層2の厚さT2および下層3の厚さT3は、同寸法で1.2mm、センター層4の厚さT4は1.0mmである。
なお、三層ガム1の構成としては、センター層4の厚さT4は、2.0mm以下であればよく、また、センター層4の厚さT4に対して、上層2の厚さT2および下層3の厚さT3は、
T4≦T2、T3
T2=T3
の関係が保たれるのがよい。
【0012】
この三層ガム1の特徴は、センター層4を構成するガム組成物に、酸味料を高配合していることである。具体的には、センター層4のガム組成物には、2.0〜10.0重量%の酸味料が配合されている。一方、上層2および下層3を構成するガム組成物は、同じ組成とされ、酸味料は低配合または配合されていない。具体的には、上層2および下層3のガム組成物には、0〜2.0重量%の酸味料が配合されている。
【0013】
かかる構成とすることにより、三層ガム1は、強い酸味を発現する菓子(チューインガム)とすることができ、しかも、酸味料に起因する吸湿等が三層ガム1の表面や裏面に現われ難く、安定した吸湿抑制、香味、食感が担保された食品となる。
三層ガム1の製造方法は特に定められていないが、例えば、本願出願人の先願にかかる特開2013−198462号公報に記載のようにして製造することができる。すなわち、常法に従って各層のガムを製造したのち、吐出口が三層に分かれたエキストルーダーから同時に押し出して、圧延、成形する。
【0014】
酸味料は、例えばアジピン酸、クエン酸、グルコン酸、コハク酸、酢酸、酒石酸、乳酸、フマル酸、リンゴ酸、リン酸、及びそれらの塩など、口中にて酸味が強いとされる酸から選ばれる一つ以上を用いることができる。
なお、この発明の実施形態は、三層(上層2、センター層4および下層3の全て)がガムベースを含むチューインガムとして構成するものに限定されない。三層のうちのセンター層4は、チューインガムに代えて、ソフトキャンディ、ゼリー、フルーツペーストなどを用いることもできる。
【実施例】
【0015】
上記の製造方法に従って、上層2と下層3に酸味料を配合しない、もしくは低配合したチューインガムを、センター層4に酸味料を高配合したチューインガムを配置して、一定形状の三層ガム1を製造した。配合は表1および表2のとおりである。
【0016】
【表1】
【0017】
【表2】
【0018】
成形後の各層のサイズはそれぞれ、短辺Sが12mm、長辺Lが43mmとなるよう調整した。各層の厚さは、上層2と下層3が1.2mm、センター層4が1.0mmとなるよう調整した。
成形後の三層ガム1に、アルミと紙を貼り合わせた銀紙を用いて、包装を行った。使用した銀紙の大きさは、三層ガム1の短辺Sの約3倍、長辺Lの約1.5倍のものとした。
【0019】
三層ガム1を長辺Lが縦となるような向きで銀紙の上に置き、長辺Lの左右外方にはみ出した銀紙を長辺Lに沿って折り込んだのち、短辺Sの上下外方にはみ出した銀紙を短辺Sに沿って折り込むことで、三層ガム1の包装を行った。
三層ガム1の品質の安定性を確認するため、加速虐待試験を行った。高温・高湿の加速虐待条件下で、銀紙で包装した三層ガム1を24時間静置した。加速虐待後の三層ガム1について、それぞれ銀紙への付着や色移りの有無について確認し、吸湿性の評価を行った。また、訓練された専門パネラー3名により、咀嚼した三層ガム1それぞれについて、香味や食感の劣化が見られるかどうかについて、評価を行った。
表3に、三層ガム1の吸湿性の評価を示す。
【0020】
【表3】
【0021】
吸湿性の評価における評価基準は、次の通りである。
[吸湿性評価基準]
◎ 銀紙に色移りが無く、付着もない。
○ 銀紙への色移りや付着が少し見られるも、銀紙から剥離可能。
○’ 銀紙への色移りや付着がやや強く見られるも、銀紙から剥離可能。
△ 銀紙への色移りや付着が強く見られ、銀紙から剥離するのが困難。
× 銀紙への色移りや付着が激しく見られ、銀紙から剥離できない。
【0022】
吸湿性の評価の結果は、次のコメントの通りである。
[吸湿性評価のコメント]
センター層4中の酸味料が10.0重量%以下、かつ上層2および下層3中の酸味料が2.0重量%以下の範囲の場合、銀紙から剥離可能であり、吸湿性が比較的少ない結果となった。しかしセンター層4中の酸味料が15.0重量%の場合、三層ガム1を銀紙から剥離できないほどの著しい吸湿が認められた。また、上層2および下層3中の酸味料が3.0重量%の場合においても、センター層4中の酸味料が5.0重量以上の場合、三層ガム1を銀紙から剥離するのが困難となり、強い吸湿が認められた。
【0023】
従って、センター層4中の酸味料は10.0重量%以下、上層2および下層3中の酸味料は0〜2.0重量%とするのが好適である。
表4に三層ガム1の香味の評価を示す。
【0024】
【表4】
【0025】
香味の評価における評価基準は、次の通りである。
[香味の評価基準]
◎ 劣化がほとんど見られず、非常に良好な香味を有する。
○ 劣化が少し見られるも、良好な香味を有する。
○’ 劣化が幾分見られるも、異味・異臭は見られない。
△ 劣化が大きく見られ、異味・異臭が気になる。
× 劣化が激しく見られ、異味・異臭が目立つ。
【0026】
香味の評価の結果は、次のコメントの通りである。
[香味の評価のコメント]
センター層4中の酸味料が10.0重量%以下、かつ上層2および下層3中の酸味料が2.0重量%以下の範囲の場合、香味の劣化が幾分見られるとしても、異味・異臭は認められないという結果となった。しかし上層2および下層3中の酸味料が3.0重量%の場合、異味・異臭が認められた。これは香料成分などの吸湿による劣化に起因するものと思われる。また、センター層4中の酸味料が15.0重量%の場合においても、上層2および下層3中の酸味料が1.0重量以上の場合、異味・異臭が目立つ結果となった。
【0027】
従って、センター層4中の酸味料は10.0重量%以下、上層2および下層3中の酸味料は0〜2.0重量%とするのが好適である。
表5に、三層ガム1の食感の評価を示す。
【0028】
【表5】
【0029】
食感の評価における評価基準は、次の通りである。
[食感の評価基準]
◎ 非常に良好な食感を有する。
○ 劣化が少しみられるも、良好な食感を有する。
○’ 劣化は見られるも、良好な食感を残している。
△ 劣化が目立ち、好ましくない食感を有する。
× 劣化が激しく、食するに適さない食感を有する。
【0030】
食感の評価結果は、次のコメントの通りである。
[食感の評価のコメント]
センター層4中の酸味料が10.0重量%以下、かつ上層2および下層3中の酸味料が2.0重量%以下の範囲の場合、良好な食感を残しているという結果となった。しかし上層2および下層3中の酸味料が3.0重量%の場合において、センター層4中の酸味料が5.0重量%以上の場合、好ましくない食感を有する結果となった。これは吸湿によるべたつきなどに起因するものと思われる。また、センター層4中の酸味料が15.0重量%の場合においても、上層2および下層3中の酸味料が2.0重量以上の場合、食感の劣化が激しく食するに適さないという結果となった。
【0031】
従って、センター層4中の酸味料は10.0重量%以下、上層2および下層3中の酸味料は0〜2.0重量%とするのが好適である。
吸湿性・香味・食感の評価結果を総合すると、センター層4中の酸味料は10.0重量%以下、上層2および下層3中の酸味料は0〜2.0重量%とするのが好適である、との結果となった。
【0032】
なお、強い酸味を発現させて美味しさを増強させる、という観点から考えると、センター層4中の酸味料は2.0重量%以上、とするのが好ましい。
[センター層4の厚さT4を変更しての吸湿性の評価]
また、センター層4の厚さT4を変更した場合において、吸湿性を評価した。
上記例と同様に三層ガム1の製造を行い、銀紙にて包装したのち、高温・高湿の加速虐待条件下で24時間静置することで、吸湿性についてのみ評価を行った。
【0033】
三層ガム1の配合は、表1および表2の配合表に準じ、センター層4中の酸味料が5.0重量%、かつ上層2および下層3中の酸味料が1.0重量%となるようにした。成形後の各層のサイズはそれぞれ、短辺Sが12mm、長辺Lが43mmとなるよう調整し、各層の厚さを、上層2と下層3が1.2mmで固定し、センター層4が1.0mm、1.5mm、2.0mm、2.5mmとなるよう調整した。
表6に吸湿性の評価結果を示す。
【0034】
【表6】
【0035】
吸湿性の評価基準は次の通りである。
[吸湿性の評価基準]
◎ 銀紙に色移りが無く、付着もない。
○ 銀紙への色移りや付着が少し見られるも、銀紙から剥離可能。
○’ 銀紙への色移りや付着がやや強く見られるも、銀紙から剥離可能。
△ 銀紙への色移りや付着が強く見られ、銀紙から剥離するのが困難。
× 銀紙への色移りや付着が激しく見られ、銀紙から剥離できない。
【0036】
センター層4の厚さT4を変更した場合の吸湿性評価に対するコメントは、以下の通りである。
[吸湿性評価に対するコメント]
センター層4の厚さT4が2.0mm以下の場合、銀紙から剥離可能であり、吸湿性が比較的少ない結果となった。しかしセンター層4の厚さT4が2.5mmの場合、三層ガム1を銀紙から剥離するのが困難となり、強い吸湿が認められた。
従って、センター層4の厚さT4は2.0mm以下とするのが好適である。
【産業上の利用可能性】
【0037】
この発明によれば、菓子としての酸味その他の香味がしっかりとしていて、しかも経時安定性に優れた三層菓子を提供でき、菓子市場にとって有益である。
【符号の説明】
【0038】
1 三層ガム(三層菓子)
2 上層
3 下層
4 センター層
S 短辺
L 長辺
T2 上層2の厚さ
T3 下層3の厚さ
T4 センター層4の厚さ
図1