【解決手段】排水の浄化処理後の固液分離により生じた汚泥からの水分除去を行うために用いられる高分子凝集剤水溶液の調整方法であって、高分子凝集剤12を水系溶媒20に添加して膨潤させ、高分子凝集剤12の粒子が膨潤した状態で水系溶媒20に短繊維14を混合して水系溶媒中で分散させ、短繊維14の分散液中で高分子凝集剤12を溶解させることを特徴とする。また、その調整方法に用いる装置を提供する。この調整方法及び装置によれば、容易に短繊維14を高分子凝集剤12が添加された水系溶媒20中に分散させることができるので、短繊維14が分散した高分子凝集剤水溶液を効率良く調整することができる。
前記高分子凝集剤が膨潤した状態が、前記高分子凝集剤が添加された水系溶媒の粘度が10〜300mPa・sの範囲の状態であることを特徴とする請求項1に記載の調整方法。
前記溶媒注入手段により水系溶媒が注入された前記分散槽に前記添加手段で高分子凝集剤が添加された後、前記撹拌手段で前記分散槽内の液体を撹拌させ、その後、前記投入手段に前記短繊維を投入させる制御を行う制御部を含むことを特徴とする請求項5に記載の高分子凝集剤水溶液の調整装置。
【背景技術】
【0002】
製紙工場等の各種工場の排水処理場、し尿処理場、下水処理場等において排水の浄化処理を行うと、浄化された処理水とともに汚泥が発生する。
【0003】
図8は、排水の浄化処理により発生した汚泥の処理系を示す図である。図示のように、排水の浄化処理施設において生物処理された汚泥(活性汚泥)混合液150は、固液分離設備152によって液体画分である処理水154と固体画分である汚泥156に分離される。処理水154は、そのまま公共水域に放流されたり、ろ過などの高度処理に付され、処理場などで雑用水などに使用される。汚泥156は濃縮装置158で濃縮されて濃縮汚泥貯槽160に移送され、凝集槽162において凝集処理が施され、脱水機164により脱水されて脱水ケーキ166となる。尚、脱水により生じた脱水ろ液167は、汚泥の処理系の上流の生物処理工程へと移送される。
【0004】
したがって、発生した汚泥は脱水ケーキ166としてセメントや埋め立て材料とされ、あるいは焼却処理されることにより処分される。いずれの方法で処分されるにしても脱水ケーキの重量及び容積を削減するため、脱水ケーキの含水率を可能な限り低下させることが求められる。また、難脱水性の汚泥もあり、かかる難脱水性の汚泥由来の脱水ケーキの含水率を低下させたいというニーズがある。
【0005】
そこで、汚泥の脱水を容易にするため、汚泥中で懸濁しているコロイドや微粒子の表面電荷を中和して粒子を凝集・架橋させて強固で大きなフロックを形成させる高分子凝集剤168が凝集槽162に添加される。
【0006】
高分子凝集剤168は、高分子凝集剤溶解装置170で水系溶媒に溶解され、撹拌機つきの槽172に貯留される。撹拌機つきの槽172内の高分子凝集剤水溶液は、凝集槽162に供給され、濃縮装置158で濃縮された汚泥156と混合される。
【0007】
また、濃縮装置158で濃縮された汚泥156に短繊維(例えば、エバグロースU-700シリーズ(水ing株式会社製))を添加することも提案されている。短繊維を添加すると、脱水機164による脱水処理の際、繊維の作用で汚泥156中の水分の排出が促進され、より低含水率の脱水ケーキ166を得ることができる。
【0008】
この短繊維は汚泥中に分散される必要があることから、上記汚泥の処理系における短繊維の投入箇所としては、撹拌機を備える濃縮汚泥貯槽160や、濃縮汚泥貯槽160と凝集槽162との間に撹拌機構を備えたサービスタンクが設けられている場合には、そのサービスタンクが考えられる。
【0009】
しかし、汚泥の処理系において、濃縮汚泥貯槽160が撹拌機を有しない場合や、濃縮汚泥貯槽160と凝集槽162との間に撹拌機構を備えたサービスタンクが設けられていない場合も当然に考えられ、その場合には投入された短繊維を分散させることができない。
【0010】
そこで、短繊維を
図8の破線で示す高分子凝集剤168の溶解系180に投入することが提案されている。高分子凝集剤168の溶解系180には高分子凝集剤168を溶解させるための撹拌機が備えられていることが一般的であり、短繊維の分散も可能だからである。
【0011】
特許文献1には、
図8の高分子凝集剤溶解装置170に相当する高分子凝集剤溶解装置190(
図9を参照乞う)が開示されている。
図9に示すように、この高分子凝集剤溶解装置190は、高分子凝集剤168を溶解させる水系溶媒が注入されるタンク192と、タンク192内の液体を撹拌する撹拌機194を有する。タンク192の上部には、高分子凝集剤168を定量的にタンク192に高分子凝集剤定量供給装置が付加されたホッパ196と、ホッパ196からタンク192に投入される高分子凝集剤168に対して水平乃至斜め下方に水を噴射するスプレーノズル198が設けられている。
【0012】
特許文献1の高分子凝集剤溶解装置190によれば、ホッパ196から定量的に落下する高分子凝集剤168がスプレーノズル198から噴射される水に接触するので、少量ずつの落下散布で粉体相互間が良く隔離され、高分子凝集剤168はダマやまま粉の発生なく良好に水に溶解する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかし、特許文献1の装置は、粉末状の高分子凝集剤をダマやまま粉を発生させることなく効率的に水に溶解させるための装置であって、高分子凝集剤含有液に短繊維を効率的に分散させるための装置ではない。
【0015】
すなわち、特許文献1によれば、高分子凝集剤水溶液の入った高分子凝集剤溶解装置のタンクに短繊維を添加する場合、高分子凝集剤水溶液は高粘度であるため、完全に分散させるためには長時間の撹拌が必要となる。また、高分子凝集剤の溶解系の撹拌機つきの槽に短繊維を添加する場合も、同様に長時間の撹拌が必要となる。
【0016】
仮に撹拌時間が短く、短繊維が十分に分散していない高分子凝集剤水溶液を用いると、撹拌機つきの槽から凝集槽への送液段階で送液ポンプに閉塞が生じるおそれや、凝集槽における汚泥中での短繊維の分散が不十分となるおそれがあり、汚泥の脱水性能が低下する。
【0017】
また、上記長時間の撹拌を回避するため、高分子凝集剤が投入される前に高分子凝集剤溶解装置のタンク中に先に短繊維を投入しておくことも考えられる。しかし、短繊維が分散した水系溶媒中に高分子凝集剤が添加されると、水系溶媒に添加された膨潤開始前の高分子凝集剤の粒子が短繊維に強く付着するため、撹拌時間を長くしても撹拌強度を高めても、高分子凝集剤の溶解及び短繊維の分散が不十分となる。
【0018】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、短繊維が分散した高分子凝集剤水溶液を効率良く調整する方法及び装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記目的を達成するための請求項1に記載の発明は、排水の浄化処理後の固液分離により生じた汚泥からの水分除去を行うために用いられる高分子凝集剤水溶液の調整方法において、前記高分子凝集剤を水系溶媒に添加し、高分子凝集剤の粒子を膨潤させる添加・膨潤工程と、前記高分子凝集剤粒子が膨潤した状態で前記水系溶媒に短繊維を混合し、該水系溶媒中で短繊維を分散させる混合・分散工程と、該短繊維の分散液中で前記高分子凝集剤を溶解させる溶解工程と、を有することを特徴とする。
【0020】
この構成によれば、短繊維が水系溶媒に混合された際には高分子凝集剤粒子は膨潤して水になじんでいるので、高分子凝集剤が短繊維に付着することはなく、この付着による短繊維の分散阻害及び高分子凝集剤の溶解不足のおそれがない。また、高分子凝集剤粒子が膨潤した状態では水系溶媒の粘度は未だ低く維持されているので、例えば、撹拌等の操作により容易に短繊維を高分子凝集剤が添加された水系溶媒中に分散させることができる。
【0021】
よって、短繊維が分散した高分子凝集剤水溶液を効率良く調整することができる。
【0022】
請求項2に記載の発明は、高分子凝集剤水溶液の調整方法において、前記高分子凝集剤が膨潤した状態が、前記高分子凝集剤が添加された水系溶媒の粘度が10〜300mPa・sの範囲の状態であることを特徴とする。
【0023】
この構成によれば、高分子凝集剤の膨潤状態を示す指標として粘度を用いることで的確に膨潤状態を把握することができ、未膨潤の高分子凝集剤粒子が添加された水系溶媒に短繊維が混合されることによる高分子凝集剤と短繊維の付着による不具合、及び溶解して高粘度となった高分子凝集剤水溶液中に短繊維が混合されることによる不具合を確実に回避することができる。
【0024】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の高分子凝集剤水溶液の調整方法において、前記混合・分散工程が、前記短繊維を分散させる分散槽で行われ、前記混合・分散工程と前記溶解工程の間に、前記短繊維の分散液を前記分散槽から前記高分子凝集剤を溶解させる溶解槽に移送する移送工程が介在することを特徴とする。
【0025】
この構成によれば、高分子凝集剤が添加された水系溶媒中での短繊維の分散と短繊維の分散液中での高分子凝集剤の溶解とが異なる場(分散槽と溶解槽)で行われるので、両者を並行して実施することができる。したがって、溶解槽内の液の下流への送液後に分散槽内の液をこの溶解槽へ移送し、分散槽に水系溶媒及び高分子凝集剤を投入するというように、連続的に短繊維が分散した高分子凝集剤水溶液を調整することができ、より効率的である。
【0026】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の高分子凝集剤水溶液の調整方法において、前記添加・膨潤工程が、前記高分子凝集剤が添加された添加槽において該高分子凝集剤を前記水系溶媒中に分散させる分散操作を含み、該添加・膨潤工程と前記混合・分散工程の間に、前記高分子凝集剤の分散液を前記添加槽から前記分散槽に送る送り工程が介在することを特徴とする。
【0027】
この構成によれば、さらに短繊維の分散の場(分散槽)と高分子凝集剤の添加・分散の場(添加槽)とが分離されているので、さらに流れ作業的に短繊維が分散した高分子凝集剤水溶液を調整することができ、より効率的である。
【0028】
請求項5に記載の発明は、排水の浄化処理後の固液分離により生じた汚泥からの水分除去を行うために用いられる高分子凝集剤水溶液の調整装置において、高分子凝集剤が添加された水系溶媒に短繊維を混合・分散させるための分散槽と、前記分散槽に前記水系溶媒を注入する溶媒注入手段と、前記水系溶媒が注入された前記分散槽に前記高分子凝集剤を添加するための添加手段と、前記高分子凝集剤が添加された前記分散槽に前記短繊維を投入するための投入手段と、前記分散槽に設けられ、前記分散槽に添加された高分子凝集剤が前記水系溶媒中で膨潤した状態で前記投入された短繊維を該水系溶媒に分散させるための撹拌手段と、前記分散槽内の前記短繊維の分散液を下流に移送する移送手段と、前記分散槽の下流に設けられ、前記分散槽から移送された前記短繊維の分散液を撹拌機によって撹拌溶解するための溶解槽と、を有する。
【0029】
この構成によれば、分散槽に添加された高分子凝集剤の粒子が水系溶媒中で膨潤した状態で短繊維を撹拌手段によって水系溶媒中に分散可能であるので、容易に短繊維を高分子凝集剤が添加された水系溶媒中に分散させることができる。
【0030】
また、短繊維の水系溶媒中での分散の場(分散槽)と高分子凝集剤の溶解の場(溶解槽)が異なるので、両者を並行して実施することができる。したがって、溶解槽内の液の下流への送液後に分散槽内の液をこの溶解槽へ移送し、分散槽に水系溶媒及び高分子凝集剤を投入するというように、連続的に短繊維が分散した高分子凝集剤水溶液を調整することができ、より効率的である。
【0031】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の高分子凝集剤水溶液の調整装置において、前記溶媒注入手段により水系溶媒が注入された前記分散槽に前記添加手段で高分子凝集剤が添加された後、前記撹拌手段で前記分散槽内の液体を撹拌させ、その後、前記投入手段に前記短繊維を投入させる制御を行う制御部を含むことを特徴とする。
【0032】
この構成によれば、一般に高分子凝集剤の粒子の水系溶媒中での分散は分散槽中での10〜30分間の撹拌手段による撹拌によって達成されることから、水系溶媒が分散槽に注入された後、例えば、制御部が攪拌手段に分散槽内の液体を10〜30分間撹拌させることで高分子凝集剤の粒子の水系溶媒中での分散を実現させることができ、その後投入手段に短繊維を投入させることで、より単純な制御で高分子凝集剤粒子が膨潤した水系溶媒中に短繊維を投入することが可能となる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、短繊維の投入タイミングを最適化することで、短繊維が分散した高分子凝集剤水溶液を効率良く調整することができる。したがって、従来よりも迅速に短繊維が分散した高分子凝集剤水溶液を供給することができる。また、短繊維の投入タイミングを最適化するのみで良いので、新たな機器の導入を要せず、既存の高分子凝集剤の溶解系に適用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0035】
次に、本発明の実施の形態について図に基づいて詳細に説明する。
【0036】
(第1実施の形態)
本発明の第1実施の形態に係る高分子凝集剤水溶液の調整方法を、
図1及び
図2を参照して説明する。
図1は、本実施の形態に係る高分子凝集剤水溶液の調整方法が行われる調整装置を示す模式図であり、
図2は本実施の形態に係る高分子凝集剤水溶液の調整方法のフローチャートである。
【0037】
図1に示すように、本実施の形態に係る高分子凝集剤水溶液の調整方法が行われる調整装置10は、高分子凝集剤12が溶解され、且つ短繊維14が分散される溶解・分散槽16と、溶解・分散槽16内の液体を撹拌する撹拌手段18と、を有する。溶解・分散槽16の上部には、水系溶媒20を溶解・分散槽16に注入するための溶媒注入手段22、高分子凝集剤12を溶解・分散槽16に添加可能な添加手段24、及び短繊維14を溶解・分散槽16に投入可能な投入手段26が設けられている。
【0038】
溶解・分散槽16の下部は汚泥処理系の凝集槽200(
図8の凝集槽162に相当)に接続する管路27が取り付けられており、管路27の途中には送液手段28(送液ポンプ)が設けられている。すなわち、溶解・分散槽16で調整された高分子凝集剤水溶液は、送液手段28によって管路27を介して凝集槽200へと移送される。
【0039】
撹拌手段18は、溶解・分散槽16内の液体を撹拌可能なものであれば、どのようなものであっても良いが、本実施の形態においては、モータによって回転される撹拌軸にインペラ(撹拌翼)を取り付けたものが用いられる。
【0040】
水系溶媒20は、例えば、水道水、工業用水、井水、浄化された処理水のろ過水等が用いられる。
【0041】
溶媒注入手段22は、慣用されるバルブ付きの水系溶媒20供給配管である。
【0042】
添加手段24は、定量的に高分子凝集剤12を溶解・分散槽16に添加可能であるものが用いられ、例えば、ホッパと定量供給装置を組み合わせた市販品が適用できる。
【0043】
短繊維14の投入手段26は、例えば、本願の出願人の特許(特許第4859897号)に係る供給装置を用いることができる。
【0044】
高分子凝集剤12は、浄化処理後の汚泥を凝集させるために慣用されるものを用いることができる。例えば、カチオン系高分子凝集剤、アニオン系高分子凝集剤及び両性高分子凝集剤の何れを用いても良く、粉末品が用いられる。
【0045】
カチオン系高分子凝集剤としては、例えば、エバグロースC104G、エバグロースCS−494(ともに、水ing株式会社製)が用いられる。また、両性高分子凝集剤としては、例えば、エバグロースB−168、エバグロースB−094(ともに、水ing株式会社製)が用いられる。
【0046】
水系溶媒20中に添加される高分子凝集剤12の濃度は、汚泥の凝集という目的を達成できる濃度であればどのような濃度であっても良いが、好ましくは、0.1〜0.4wt/vol%である。0.4wt/vol%を超えると、溶解時間が長くなると共に、調整後の高分子凝集剤水溶液の粘度が高くなり、送液が困難になる。
【0047】
短繊維14とは、本実施の形態においては繊維の長さが20mm以下のものをいう。繊維の長さが20mmを超えると、短繊維14が高分子凝集剤水溶液中に分散できなくなる。上記繊維長を有する短繊維14であればどのようなものであってもよいが、特に、親水性の短繊維を用いることが好ましい。親水性の短繊維とは、一般に繊維構成分子が親水基を有することにより、水に混ざりやすい短繊維をいい、親水基とは、例えば、水酸基やカルボキシ基が挙げられる。かかる親水性の短繊維としては、エバグロースU−700、エバグロースU−710(ともに、水ing株式会社製)を用いることが好ましいが、古紙や繊維くずを用いることも可能である。
【0048】
また、短繊維14として、ピートモス等の市販の短繊維や廃棄物も使用可能である。
【0049】
水系溶媒20中に分散される短繊維14の濃度は、脱水ケーキ166(
図8参照)の脱水性能を向上させる濃度であればどのような濃度であっても良いが、好ましくは、0.1〜2.0wt/vol%である。
【0050】
一般には、脱水機164(
図8参照乞う)に供給される汚泥の固形物濃度である全蒸発残留物(以降、TSと記す)に対して、高分子凝集剤12の添加率は0.5〜2.0wt/vol%であり、短繊維14の添加率は1.0〜5.0wt/wt%である。
【0051】
次に、上記調整装置10を用いた高分子凝集剤水溶液の調整方法について、
図2に基づいて説明する。
【0052】
[添加・膨潤工程]
まず、高分子凝集剤12の添加・膨潤工程S101(
図2を参照乞う)について説明する。溶解・分散槽16には、すでに溶媒注入手段22を介して水系溶媒20が注入されている。この溶解・分散槽16に、高分子凝集剤12を添加する。高分子凝集剤12は一度に多量に添加するとまま粉が発生しやすいため、少量ずつ、撹拌機18による撹拌とともに添加することが好ましい。
【0053】
高分子凝集剤12の粒子は、水系溶媒20に添加すると膨潤を開始する。本明細書において、膨潤とは、高分子凝集剤12の粒子が水系溶媒20をその網目構造内に吸収し、体積が増大することをいう。この膨潤の過程を経て、さらに時間が経過すると高分子凝集剤12の膨潤粒子が消失し水系溶媒20に溶解する。
【0054】
高分子凝集剤12の添加後、水系溶媒20を常温下、約10〜50rpmの回転数で約10〜30分間撹拌する。これにより、高分子凝集剤12が膨潤した状態が達成される。膨潤した状態とは、本発明においては、JIS K7117−1に基づき、B型粘度計(回転数30rpm、スピンドルとしてローターNo,2使用)を用いて常温で測定した粘度が10〜300mPa・sの範囲にある場合に、高分子凝集剤12が水系溶媒20中で膨潤した状態であると定める。
【0055】
一般に、上記撹拌条件により、上記粘度10〜300mPa・sで規定される高分子凝集剤12が膨潤した状態を達成することができる。
【0056】
[混合・分散工程]
高分子凝集剤12の粒子が水系溶媒20中で膨潤した状態で、短繊維14を投膨潤入手段26によって溶解・分散槽16に投入する。短繊維14の投入後、水系溶媒20を撹拌機18によって常温下、約10〜50rpmの回転数で約10分間撹拌する。これにより、短繊維14を、高分子凝集剤12が分散した水系溶媒20中に分散させることができる(以上、混合・分散工程S102)。
【0057】
[溶解工程]
短繊維14が水系溶媒20中に分散した後、さらに水系溶媒20を撹拌手段18によって常温下、約10〜50rpmの回転数で約30〜120分間継続して撹拌する。これにより、高分子凝集剤12は水系溶媒20中に溶解し、短繊維14が分散した高分子凝集剤水溶液となる(以上、溶解工程S103)。
【0058】
従って、本実施の形態に係る高分子凝集剤水溶液の調整方法によれば、短繊維14が水系溶媒20に混合された際には高分子凝集剤12の粒子は膨潤しているので、高分子凝集剤12が短繊維14に付着することはなく、この付着による短繊維14の分散阻害及び高分子凝集剤12の溶解不足のおそれがない。また、高分子凝集剤12の粒子が膨潤した状態では水系溶媒20の粘度は未だ低く維持されているので、撹拌により容易に短繊維14を高分子凝集剤12が添加された水系溶媒20中に分散させることができる。
【0059】
よって、短繊維14が分散した高分子凝集剤水溶液を効率良く調整することができる。
【0060】
また、高分子凝集剤12の膨潤状態を示す指標としてJIS K7117−1に基づいて測定した粘度を用いることで的確に膨潤状態を把握することができ、粒子が未膨潤の高分子凝集剤12が添加された水系溶媒20に短繊維14が混合されることによる高分子凝集剤12と短繊維14の付着による不具合、及び溶解して高粘度となった高分子凝集剤水溶液中に短繊維14が混合されることによる不具合を確実に回避することができる。
【0061】
(第2実施の形態)
本発明の第2実施の形態に係る高分子凝集剤水溶液の調整方法及び調整装置を、
図3〜
図5を参照して説明する。また、本実施の形態において第1実施の形態と同様の要素には、同一の符号を付しその説明を省略する。
図3は本実施の形態に係る高分子凝集剤水溶液の調整装置30を示す模式図、
図4は本実施の形態に係る分散槽における制御を説明するフローチャート、及び
図5は本実施の形態に係る溶解槽における制御を説明するフローチャートである。
【0062】
図3に示すように、高分子凝集剤水溶液の調整装置30は、高分子凝集剤12が添加された水系溶媒20に短繊維14を混合・分散させるための分散槽32及び分散槽32の下流に設けられた溶解槽50を有する。
【0063】
さらに、調整装置30は、分散槽32の上部に、分散槽32に水系溶媒20を注入するための溶媒注入手段34、分散槽32に高分子凝集剤12を添加するための添加手段36及び分散槽32に短繊維14を投入するための投入手段38を有する。
【0064】
分散槽32の内部には、分散槽32内部の液体を撹拌する撹拌手段40及び粘度検知手段42が設けられている。
【0065】
溶媒注入手段34、添加手段36、投入手段38、撹拌手段40は、第1実施の形態と同様のものを使用可能である。なお、本実施の形態においては、これらは後述する制御部60(分散槽制御部60a)により制御される。
【0066】
粘度検知手段42は、JIS K7117−1に記載されたB型粘度計を採用する粘度検知手段である。図示しないサンプリング機構によって分散槽32内の液体は定期的にサンプリングされ、粘度検知手段42によってその液体の周囲温度での粘度が検知される。粘度検知手段42は、検知した粘度の情報を後述する制御部60に出力する。
【0067】
溶解槽50は、分散槽32の下流である下方位置に在り、撹拌機52を備える溶解部50aと貯留部50bとがサイフォン管部50cによって接続された構成を有する。溶解槽50の溶解部50aには、溶解槽50の水位を検知する水位検知手段54が設けられている。しかしながら、サイフォン管部50c以外に、溶解部50a及び貯留部50bが上部開放であって、溶解部50aの上方から溶解部50a内の液体が越流して貯留部50bに流入する構成を有していてもよい。
【0068】
水位検知手段54は、水晶式、水圧式、超音波式、電波式等、種々の水位計を用いることができる。水位検知手段54は、検知した溶解槽50の溶解部50aの水位の情報を制御部60に出力する。
【0069】
貯留部50bの下部には、凝集槽200に接続する管路27が取り付けられており、管路の途中には下流の凝集槽200に貯留部50b内の液体を送液する送液手段28(送液ポンプ)が設けられている。
【0070】
分散槽32と溶解槽50は、管路56によって接続されており、管路56中には移送手段58(バルブ)が設けられている。移送手段58は、開状態のときに分散槽32内の液体をその自重により下流の溶解槽50(溶解部50a)に移送する移送手段を構成する。なお、移送手段はバルブに限られず、管路56に設けられて分散槽32から溶解槽50へと液体を能動的に移送するポンプであってもよい。
【0071】
分散槽32の容量は、汚泥処理系の脱水機(
図8の脱水機164に相当)における単位時間当たりの高分子凝集剤水溶液の消費量によって適宜に決定することができる。
【0072】
例えば、脱水機において6時間の脱水処理が施され、当該脱水処理の間に1m
3/時間の割合で高分子凝集剤水溶液が消費され、且つ1時間に1回分散槽32におけるバッチ処理が可能という条件であれば、分散槽32の容量は1m
3であれば良い。
【0073】
また、溶解槽50の貯留部50bの容量は、高分子凝集剤水溶液の凝集槽200への送液量の時間変動に耐えられる容量であればよい。
【0074】
一般に、溶解槽50の溶解部50aでの液滞留時間は2〜6時間であり、貯留部50bでの液滞留時間は1〜2時間である。
【0075】
高分子凝集剤水溶液の調整装置30による高分子凝集剤水溶液の調整は、制御部60によって制御される。
【0076】
制御部60は、分散槽32における溶媒注入手段34、添加手段36、投入手段38及び撹拌手段40の作動を制御する分散槽制御部60aと、溶解槽50において撹拌機52の作動を制御する溶解槽制御部60bと、を有する。
【0077】
分散槽制御部60a及び溶解槽制御部60bは、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等を備えたコンピュータである。分散槽制御部60a及び溶解槽制御部60bは、それぞれ、ROMに記憶させたプログラムをRAM上に展開して対応する処理をCPUに実行させる。
【0078】
なお、上記プログラムはROMに記憶されている場合に限らず、NVRAM(Non−Volatile Randam Access Memory)に記憶されていればよい。
【0079】
以下、高分子凝集剤水溶液を調整する調整装置30の制御を、分散槽制御部60aと溶解槽制御部60bに分けて順に説明する。まず、分散槽制御部60aにより実行される分散槽32における制御を、
図4に基づいて説明する。
【0080】
高分子凝集剤水溶液の調整装置30の起動により、分散槽制御部60aはROMに記録されたプログラムを読み出し、ステップS111において水位検知手段54は検知した溶解部50aの水位の情報を分散槽制御部60aに出力する。
【0081】
ステップS112では、分散槽制御部60aは水位検知手段54から出力された水位の情報を読み取り、溶解部50aの水位が所定の水位未満であるか否かを判定する。溶解部50aが所定の水位未満であると判定する場合(YES判定)、ステップS113に移行する。溶解部50aの水位が所定の水位以上であると判定する場合(NO判定)、ステップS112にリターンする。
【0082】
ステップS113では、分散槽制御部60aは溶媒注入手段34に信号を送り、溶媒注入手段34を作動させる。この信号により、溶媒注入手段34は、予め設定された量の水系溶媒20を分散槽32中に注入する。
【0083】
[添加・膨潤工程]
ステップS114では、分散槽制御部60aは添加手段36に信号を送り、添加手段36を作動させる。この信号により、添加手段36は予め設定された量の高分子凝集剤12を分散槽32に添加する。
【0084】
ステップS115(分散操作)では、分散槽制御部60aは撹拌手段40に信号を送り、撹拌手段40はこの信号により、例えば、約10〜50rpmの回転数で約10分間、分散槽32内の液体を撹拌する。
【0085】
ステップS116では、粘度検知手段42が、検知した分散槽32内の液体の粘度の情報を分散槽制御部60aに出力する。
【0086】
ステップS117では、分散槽制御部60aは粘度検知手段42から出力された粘度の情報を読み取り、分散槽32内の液体の粘度が10mPa・sを超えているか否かを判定する。液体の粘度が10mPa・sを超えていると判定する場合(YES判定)、ステップS118に移行する。液体の粘度が10Pa・s未満であると判定する場合(NO判定)、ステップS115にリターンする(以上、添加・膨潤工程)。
【0087】
[混合・分散工程]
ステップS118では、分散槽制御部60aは投入手段38に信号を送り、投入手段38を作動させる。この信号により、投入手段38は予め設定された量の短繊維14を分散槽32に投入する。
【0088】
ステップS119では、分散槽制御部60aは撹拌手段40に信号を送り、撹拌手段40はこの信号により、例えば、約10〜50rpmの回転数で約10〜30分間、分散槽32内の液体を撹拌する(以上、混合・分散工程)。
【0089】
[移送工程]
ステップS120では、分散槽制御部60aは移送手段58(バルブ)に信号を送り、移送手段58を作動させる。移送手段58はこの信号により所定時間開動作する。これにより、分散槽32内にある高分子凝集剤12を含む短繊維14の分散液が管路56を通って下方に位置する溶解槽50の溶解部50aに移送される。その後、ステップS111にリターンする(以上、移送工程)。
【0090】
引き続き、分散槽制御部60bにより実行される溶解槽50の溶解部50aにおける制御を、
図5に基づいて説明する。
【0091】
上述した高分子凝集剤水溶液の調整装置30の起動により、溶解槽制御部60bはROMに記録されたプログラムを読み出し、ステップS121において水位検知手段54は検知した溶解部50aの水位の情報を溶解槽制御部60bに出力する。
【0092】
ステップS122では、溶解槽制御部60bは水位検知手段54から出力された水位の情報を読み取り、水が溶解部50a内に有るか否かを判定する。水が溶解部50aに有ると判定する場合(YES判定)、ステップS123に移行する。水が溶解部50aに無いと判定する場合(NO判定)、ステップS121にリターンする。
【0093】
[溶解工程]
ステップS123では、溶解槽制御部60bは撹拌機52に信号を送り、撹拌機62はこの信号により、例えば、約10〜50rpmの回転数で約30〜120分間、溶解部50a内の液体を撹拌する。その後、ステップS121にリターンする(以上、溶解工程)。
【0094】
従って、本実施の形態に係る高分子凝集剤水溶液の調整装置30及び調整方法によれば、分散槽32に添加された高分子凝集剤12が水系溶媒20中で膨潤した状態で短繊維14を撹拌手段40によって水系溶媒20中に分散可能であるので、容易に短繊維14を高分子凝集剤12が添加された水系溶媒20中に分散させることができる。
【0095】
また、短繊維14の水系溶媒20中での分散の場(分散槽32)と高分子凝集剤12の溶解の場(溶解槽50の溶解部50a)が異なるので、両者を並行して実施することができる。したがって、溶解部50a内の液の下流への送液後に分散槽32から分散槽32内の液を溶解部50aへ移送し、分散槽32に水系溶媒20及び高分子凝集剤12を投入するというように、連続的に短繊維14が分散した高分子凝集剤水溶液を調整することができ、より効率的である。
【0096】
また、分散槽制御部60aは、粘度検知手段42によって検知された分散槽32内の液体の周囲温度での粘度が10mPa・sを超えていると判定するときに投入手段38に短繊維14の投入を行わせるので、自動且つ確実に高分子凝集剤12の膨潤状態において短繊維14を分散させることが可能となる。
【0097】
さらに、制御部60(分散槽制御部60a及び溶解槽制御部60b)が、投入手段38以外にも溶媒注入手段34、添加手段36、撹拌手段40、移送手段58、粘度検知手段42、水位検知手段54及び撹拌機52を制御しているので、上記短繊維が分散した高分子凝集剤水溶液の効率的な調整を自動化することができ、さらに効率的である。
【0098】
そのうえ、制御部60(分散槽制御部60a)は、溶解部50aの水位が所定の閾値を越えているときには分散槽32への水系溶媒20注入の操作を行わない制御を行う。したがって、溶解部50a内の液が下流に供給されて減少し、あるいは分散槽32からの液の供給により増加した溶解部50a内の液の水位によって、短繊維14が分散した高分子凝集剤水溶液の調整を継続するか否かが自動的に制御可能となり、より効率的である。
【0099】
(第3実施の形態)
本発明の第3実施の形態に係る高分子凝集剤水溶液の調整方法及び調整装置を、
図6及び
図7を参照して説明する。また、本実施の形態において第1実施の形態と同様の要素には、同一の符号を付しその説明を省略する。
図6は本実施の形態に係る高分子凝集剤水溶液の調整装置を示す模式図、及び
図7は本実施の形態に係る高分子凝集剤水溶液の調整方法のフローチャートである。
【0100】
図6に示すように、本実施の形態に係る高分子凝集剤水溶液の調整装置70は、高分子凝集剤12が添加される添加槽71、添加槽71の下流に位置して短繊維14が投入され、分散される場となる分散槽76、及び分散槽76の下流に位置して高分子凝集剤12が溶解される場となる溶解槽82を有する。
【0101】
添加槽71の上部には、水系溶媒20を添加槽71に注入するための溶媒注入手段72、高分子凝集剤12を添加槽71に添加するための添加手段74が設けられている。
【0102】
分散槽76は、その上部位置で管路80によって添加槽71に接続されており、添加槽71内からの越流が管路80を介して分散槽76に流入可能となっている。分散槽76の上部には、短繊維14を分散槽76に投入するための投入手段81が設けられている。
【0103】
添加槽71及び分散槽76には、それぞれ撹拌手段75,79が設けられている。
【0104】
溶媒注入手段72、添加手段74、投入手段81、及び撹拌手段75,79は、それぞれ上記第1実施の形態において用いたものと同様のものを用いることができる。
【0105】
溶解槽82は、撹拌機84を備える溶解部82aと貯留部82bとがサイフォン管部82cによって接続された構成を有する。溶解部82aはその上部位置で管路86(移送手段)によって分散槽76に接続されており、分散槽76内からの越流が管路86を介して溶解部82aに流入可能となっている。
【0106】
貯留部82bの下部には、凝集槽200(
図8参照乞う)に接続する管路27が取り付けられており、管路27の途中には下流の凝集槽200に貯留部82b内の液を送液する送液手段28(送液ポンプ)が設けられている。尚、送液手段は送液ポンプに限られるものではない。例えば、貯留部82bの上部に設けられて貯留部82b内の液体の越流を下流の凝集槽200に送液可能な管路とする構成であってもよい。
【0107】
次に、上記調整装置70を用いた高分子凝集剤水溶液の調整方法について
図7に基づいて説明する。
【0108】
[添加・膨潤工程]
まず、高分子凝集剤12の添加・膨潤工程S131について説明する。添加槽71には、水系溶媒20の添加槽71における滞留時間が約10〜30分となるように、溶媒注入手段72からの水系溶媒20の注入を連続的に行う。この水系溶媒20が連続的に注入される添加槽71に、高分子凝集剤12を上記水系溶媒20の注入に合わせて添加手段74から連続的に添加する。添加量は、上記水系溶媒の滞留時間に合わせた適切な量となるようにする。
【0109】
次に、添加・膨潤工程において行われる高分子凝集剤12の添加槽71内における分散(分散操作)について説明する。水系溶媒20の注入が開始されると同時に、撹拌手段75は約10〜50rpmの回転数で添加槽71内の液体を連続的に撹拌し、添加された高分子凝集剤12を分散させる。
【0110】
そして、添加槽71に水系溶媒20の注入及び高分子凝集剤12の添加が開始されてから当該添加槽71内の液体が管路80に越流し始めるまでの時間(すなわち、滞留時間)が約10〜30分間であるから、添加槽71内の液体は約10〜30分間撹拌されることとなり、これにより粘度10mPa・s〜300mPa・sで規定される高分子凝集剤12の粒子が膨潤した状態を達成することができる(以上、添加・膨潤工程S131)。
【0111】
[送り工程]
添加槽71内において約10〜30分撹拌された高分子凝集剤12の分散液は添加槽71から管路80に越流し、分散槽76へと送られる(以上、送り工程S132)。
【0112】
[混合・分散工程]
分散槽76に送られ、粒子が膨潤した状態の高分子凝集剤12の分散液に、投入手段81から短繊維14を連続的に投入する。分散槽76は、上記分散槽76に送られる粒子が膨潤した状態の高分子凝集剤12の分散液が約10〜30分間滞留する容量を有する。したがって、短繊維14の分散槽76への投入量は、上記高分子凝集剤12の分散液の滞留時間に合わせた適切な量となるようにする。
【0113】
粒子膨潤状態の高分子凝集剤12の分散液の分散槽76への流入開始と同時に、撹拌手段79が約10〜50rpmの回転数で分散槽76内の液体を連続的に撹拌し、投入された短繊維14を分散させる。
【0114】
そして、分散槽76内での液体の滞留時間は約10〜30分であるから、分散槽76内の液は約10〜30分撹拌されることとなり、十分な短繊維14の分散が達成される(以上、混合・分散工程S133)。
【0115】
[移送工程]
分散槽76内において約10〜30分撹拌された短繊維14の分散液は分散槽76から管路86に越流し、溶解槽82の溶解部82aへと送られる(以上、移送工程S134)。
【0116】
[溶解工程]
短繊維14の分散液が溶解槽82の溶解部82aに移送されると、撹拌機84は約10〜50rpmの回転数で溶解部82a内の液体を連続的に撹拌し、液体中の高分子凝集剤12を溶解させる。
【0117】
溶解部82aは、溶解部82a内に約30〜120分間滞留可能な容量を有する。これにより、高分子凝集剤12を確実に溶解させることができる。尚、上記溶解部82a内における液体の滞留時間は、送液手段28(送液ポンプ)による貯留部82b内の液の下流の凝集槽200(
図8参照乞う)への流出速度と添加槽71への水系溶媒20の流入速度が同じ条件である場合における滞留時間である。
【0118】
調整された短繊維14が分散した高分子凝集剤水溶液は、溶解部82aからサイフォン部82cを介して貯留部82bに送られ、送液手段28によって汚泥処理系の凝集槽200に送液される。
【0119】
従って、本実施の形態に係る高分子凝集剤水溶液の調整装置70及び調整方法によれば、上記第1及び第2実施の形態同様、高分子凝集剤12が水系溶媒20中で膨潤した状態の低粘度の液中に短繊維14が投入されるので、容易に短繊維14を分散させることができ、効率的に短繊維14が分散した高分子凝集剤水溶液を調整することができる。
【0120】
また、高分子凝集剤12の添加・分散の場(添加槽71)、短繊維14の分散の場(分散槽76)及び高分子凝集剤12の溶解の場(溶解槽82の溶解部82a)が分離され、各槽における液の滞留時間を最上流の溶媒注入手段72の注入速度及び最下流の送液手段28(送液ポンプ)による貯留部82bからの流出速度によって制御可能であるので、流れ作業的に連続して短繊維14が分散した高分子凝集剤水溶液を調整することができ、さらに効率的である。
【0121】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されることはなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、第2実施の形態のみ制御部の制御により自動化された高分子凝集剤水溶液の調整装置を構成しているが、第1、第3実施の形態についても同様に制御部による制御により自動化された高分子凝集剤水溶液の調整装置としてもよい。また、第2実施の形態を、制御部による制御を行わず、自動化しない高分子凝集剤水溶液の調整装置としてもよい。
【0122】
さらに、第2実施の形態の短繊維14の投入のタイミングに関し、液体の粘度により制御するのではなく高分子凝集剤12の添加からの時間で制御してもよい。
【0123】
具体的には、
図4に示すように、第2実施の形態においては、ステップS114での高分子凝集剤12の添加後、ステップS115で約10分間分散槽32内の液体を撹拌し、ステップS116で粘度検知手段42が検知した分散槽32内の液体の粘度の情報を分散槽制御部60aに出力し、ステップS117ではこの粘度情報に基づいてステップS118(短繊維14の投入)に移行するか否かを判定しているが、以下のような制御を行うことも可能である。
【0124】
すなわち、分散槽制御部60a(制御部60)は、ステップS114での高分子凝集剤の添加後、ステップS115に代えて約10〜30分間分散槽32内の液体を撹拌するステップに移行させ、その後ステップS116〜S117を行わずにステップS118に移行して投入手段38に短繊維14を分散槽32に投入させる制御を行うこととしてもよい。
【0125】
この制御によれば、一般に高分子凝集剤12の粒子の水系溶媒20中での膨潤状態は分散槽内での10〜30分間の撹拌手段40による撹拌によって達成されることから、粘度検知手段42及び粘度検知手段42によるフィードバック制御が不要となり、より単純な構成・制御で高分子凝集剤粒子12の粒子が膨潤した水系溶媒中に短繊維14を投入することが可能となる。
【0126】
また、高分子凝集剤を分散・溶解させるため、及び短繊維を分散させるために撹拌手段を用いているが、撹拌手段だけでなく、槽内外で液を循環させる循環手段を用いることも可能である。