【解決手段】フィルム1を構成しているポリエステルフィルム層2の厚みを25μmとし、芯糸18は、ポリエステルで太さを150デニールとする。裁断工程では、フィルム素片1aのカット幅に相当した厚みを有する複数の刃14を備え、前記刃14の外周面の刃先部16は径方向に突出する逆V字型に形成されており、刃14の逆V字型の刃先部16の先端にてフィルム1を裁断する。撚糸工程では、前記芯糸18の引き上げ速度を毎分約3.7mとし、前記フィルム素片1aを回転しながら解いていく回転体22の回転数を毎分約5,500回としている。3つの加熱蒸気工程からなる第1、第2及び第3の加熱蒸気工程においては、それぞれ100℃の水蒸気を30分間再起反射糸19に当てる。
前記第2の加熱蒸気工程において、前記再起反射糸(19)が巻回されているボビンの外径より約20倍程度の内径を有する枠体(31)に該再起反射糸(19)を巻回し直して、再起反射糸(19)に水蒸気を当てていることを特徴とする請求項1に記載の再起反射糸の製造方法。
前記フィルム(1)は、厚みが約25μmのポリエステルフィルム層(2)と、このポリエステルフィルム層(2)の一面に、散布塗装して接着し、粒径が38〜45μmの透明で無数のガラスビーズ(3)と、このガラスビーズ(3)側の面にアルミ蒸着したアルミ蒸着層(4)とで構成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の再起反射糸の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、この特許文献1には、再起反射糸の構成が開示されているだけであり、その製造方法に関しての記載や示唆さえ記載されていない。
【0006】
また、本出願人は、金糸や銀糸を製造・販売している会社であり、金糸や銀糸の構造自体は再起反射糸と同様である。ただし、再起反射糸にはガラスビーズを使用するが、金糸や銀糸にはガラスビーズは使用しない。
そこで、本発明者は、金糸や銀糸と再起反射糸の構成が同じことから、金糸や銀糸の製造方法と同じように製造すれば、再起反射糸を製造することができるのではないかと考えた。そして、金糸と同じ製造方法で再起反射糸の製造を試みたが、残念ながら再起反射糸は製造することができなかった。
【0007】
本発明は上述の問題点に鑑みて提供したものであって、再起反射糸を確実に製造することができることを目的とした再起反射糸の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、本発明の請求項1に記載の再起反射糸の製造方法では、ガラスビーズ3を多数有し、厚さを約75〜80μmとしたフィルム1を細くカットする裁断工程と、
前記裁断工程によりフィルム1がカットされたフィルム素片1aを第1のボビン7に巻回する第1の巻回工程と、
芯糸18を引き上げながら前記第1の巻回工程にて第1のボビン7に巻回されているフィルム素片1aを回転駆動されている回転体22にて回転されながら解かれていき、該フィルム素片1aを前記芯糸18の表面に巻き付けていく撚糸工程と、
前記撚糸工程により前記芯糸18の表面に前記フィルム素片1aが巻き付けられて形成された再起反射糸19を第2のボビン27に巻回する第2の巻回工程と、
前記第2の巻回工程により前記ボビン27に巻回された前記再起反射糸19に水蒸気を当てる第1の加熱蒸気工程と、
前記第1の加熱蒸気工程の後に、さらに前記再起反射糸19に水蒸気を当てる第2の加熱蒸気工程と、
前記第2の加熱蒸気工程の後に、さらに前記再起反射糸19に水蒸気を当てる第3の加熱蒸気工程と
からなる再起反射糸の製造方法であって、
前記フィルム1を構成しているポリエステルフィルム層2の厚みを25μmとし、
前記芯糸18は、ポリエステルで太さを150デニールとし、
前記裁断工程においては、前記フィルム素片1aのカット幅に相当した厚みを有する複数の刃14を備え、前記刃14の外周面の刃先部16は径方向に突出する逆V字型に形成されており、前記刃14の刃先部16の先端にて前記フィルム1を裁断するものであり、
前記撚糸工程においては、前記芯糸18の引き上げ速度を毎分約3.7mとし、前記フィルム素片1aを回転しながら解いていく前記回転体22の回転数を毎分約5,500回としており、
前記第1、第2及び第3の加熱蒸気工程においては、それぞれ100℃の水蒸気を30分間前記再起反射糸19に当てていることを特徴としている。
【0009】
請求項2に記載の再起反射糸の製造方法では、前記第2の加熱蒸気工程において、前記再起反射糸19が巻回されているボビンの外径より約20倍程度の内径を有する枠体31に該再起反射糸19を巻回し直して、再起反射糸19に水蒸気を当てていることを特徴としている。
【0010】
請求項3に記載の再起反射糸の製造方法では、前記フィルム1は、厚みが約25μmのポリエステルフィルム層2と、このポリエステルフィルム層2の一面に、散布塗装して接着し、粒径が38〜45μmの透明で無数のガラスビーズ3と、このガラスビーズ3側の面にアルミ蒸着したアルミ蒸着層4とで構成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明の請求項1に記載の再起反射糸の製造方法によれば、フィルム1を構成しているポリエステルフィルム層2の厚みを25μmとし、芯糸18は、ポリエステルで太さを150デニールとし、裁断工程においては、フィルム素片1aのカット幅に相当した厚みを有する複数の刃14を備え、前記刃14の外周面の刃先部16は径方向に突出する逆V字型に形成されており、前記刃14の刃先部16の先端にて前記フィルム1を裁断するものであり、撚糸工程においては、前記芯糸18の引き上げ速度を毎分約3.7mとし、前記フィルム素片1aを回転しながら解いていく前記回転体22の回転数を毎分約5,500回としており、第1、第2及び第3の加熱蒸気工程においては、それぞれ100℃の水蒸気を30分間前記再起反射糸19に当てていることで、再起反射糸19を確実に製造することができるものである。また、上述の工程により製造された再起反射糸19は、金銀糸と同等に刺繍が可能となり、今までに無い撚糸製品である。この再起反射糸19の用途としては、刺繍、製紐、織物、アパレル商品等の素材である。
再起反射糸19を素材として用いることで、光源よりの直接反射で夜間、暗闇での認識性を高め、安全性を確保することができる。また、刺繍糸の機能を保持することにより、ファッション性の高い製品の素材たらしめることができる。
【0012】
請求項2に記載の再起反射糸の製造方法によれば、第2の加熱蒸気工程において、前記再起反射糸19が巻回されているボビンの外径より約20倍程度の内径を有する枠体31に該再起反射糸19を巻回し直して、再起反射糸19に水蒸気を当てているものであり、そのため、再起反射糸19が直線状態の部分が長くなっている状態で、再起反射糸19に水蒸気を当てることで、再起反射糸19がスナールし易くなるのを防ぐと共に、フィルム素片1aが芯糸18に一層密着させることができるという一石二鳥の効果を得ている。
【0013】
請求項3に記載の再起反射糸の製造方法によれば、前記フィルム1は、厚みが約25μmのポリエステルフィルム層2と、このポリエステルフィルム層2の一面に、散布塗装して接着し、粒径が38〜45μmの透明で無数のガラスビーズ3と、このガラスビーズ3側の面にアルミ蒸着したアルミ蒸着層4とで構成されており、ポリエステルフィルム層2とアルミ蒸着層4にてガラスビーズ3を内部に閉じ込めて、フィルム素片1aの表面にはガラスビーズ3を露出させていないので、刺繍糸の機能を保持させることができ、他に傷を付けない糸(再起反射糸19)にすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。先ず、参考例として金糸や銀糸の製造方法について説明する。芯糸(芯材)は、強度によってレーヨン100デニール、テトロン(登録商標)100デニール、ナイロン110デニールなどを用いる。
この芯糸の外周面に巻装するフィルム(箔)は、ポリエステルフィルムにアルミ又は銀蒸着したものに上面又は下面を着色したものである。また、フィルムの厚みは9μmである。
【0016】
図1(a)は、厚みが9μmのフィルム51をロール状に巻回したものであり、例えば、幅は610mm、長さは9,000mであるが、幅や長さは適宜変更可能である。
図1(a)に示す実線52の部分をカッターにて裁断し、幅610mmを6カットに大切りする。
図1(b)は、6カットされた部分の1カットのフィルム51を示している。この1カットのフィルム51を
図1(c)に示すように、裁断装置により75等分幅に裁断する。この75等分幅に裁断したものをフィルム素片51aとする。なお、このフィルム素片51aの幅は約1.34mmである。
【0017】
このフィルム素片51aを
図1(d)に示すように、プラスティック製のボビン53に巻き仕上げする。なお、ボビン53に巻回したフィルム素片51aの長さは、フィルム51の長さと同じ9,000mである。
【0018】
ここで、
図1(c)に示すフィルム51を裁断してフィルム素片51aにカットする裁断装置の概略構成を
図2に示す。この裁断装置55は、上交差刃部56と下交差刃部57とで構成されている。
図2(a)に示すように上交差刃部56及び下交差刃部57は同じ構成であり、上交差刃部56は回転駆動される軸58に所定の間隔をあけて多数の円板状の刃59が装着されている。また下交差刃部57も同様であり、回転駆動される軸60に多数の刃59が装着されている。
【0019】
上交差刃部56の刃59の下部と、下交差刃部57の刃59の上部とが上下方向に少し食い込む形で配置されており、それぞれの刃59の間隔は、当該刃59の厚みに対応している。上下の刃59の枚数は、
図1(c)に示すフィルム素片51aの75等分幅に裁断する数に対応させている。なお、見易いように(理解し易いように)、上交差刃部56の刃59の外形を太い実線で示している。
また、
図2(b)の刃59に対応した曲線の矢印に示すように、上下の刃59の回転方向は異なっており、上交差刃部56の刃59は反時計方向で、下交差刃部57の刃59は時計方向である。
【0020】
図2(a)に示すように、上交差刃部56及び下交差刃部57の刃59の周面61は偏平な形状であり、この周面61の両側でフィルム51をカットしており、このカット部分を62の番号で示している。
図2(b)に示すように、フィルム51を裁断装置55の上交差刃部56と下交差刃部57の間に入れていくことで、フィルム51は上下の刃59により裁断され、フィルム素片51aにカットされる。
【0021】
次に、芯糸にフィルム素片51aを巻き付ける工程について説明する。
図3に示すように、ボビン53の上面側にフライヤー64を配置し、このフライヤー64の下部に回動自在で略コ字型の回転体65が設けられている。この回転体65の両側の下端はフィルム素片51aを通す穴66が設けられており、この穴66にボビン53に巻回されているフィルム素片51aを通している。
【0022】
芯糸67をボビン53の中央の穴及びフライヤー64の穴68に挿通して引き上げ、2段のローラ69、70を介して鉄製のボビン71に芯糸67の先端を巻き付ける。また、このボビン71は、図外のモータにより回転駆動されるようになっている。フライヤー64の回転体65も図外のモータにより回転駆動されるようになっている。
【0023】
芯糸67の先端をボビン71に巻き付けておき、ボビン53に巻回しているフィルム素片51aの先端を回転体65の穴66を挿通して芯糸67に巻き付ける。そして、ボビン71と回転体65を回転駆動する。芯糸67の引き上げ速度は、毎分約10mとし、回転体65の回転数は、毎分約12,000回である。
【0024】
芯糸67を引き上げながら回転体65を回転させる。回転体65が回転するとフィルム素片51aはボビン53から解かれていき、フィルム素片51aが芯糸67に巻き付けられながらローラ69、70を経て鉄製のボビン71には金糸72として巻回されていく。このようにしてボビン71に金糸72が巻回された状態を
図4に示す。
【0025】
次に、
図5に示すように、ボイラー73の中に鉄のボビン71に巻き上げた金糸72を入れ、110℃の水蒸気をボイラー73内に吹き込む。これを30分間続ける。なお、ボビン71を鉄製としているのは、ボイラー73内に100℃の水蒸気を吹き込むことから、ボビン71に耐熱性を持たせる必要があるからである。また、金糸72に水蒸気を当てるのは、形状を安定させるためである。
【0026】
30分経過後、ボイラー73から金糸72を取り出し、鉄製のボビン71に巻回していた金糸72を
図6に示すように、プラスティック製のボビン74に巻き直しをする。
このようにして、金糸72が製造されるものであり、
図7は金糸72の要部拡大図を示している。図示するように、金糸72は芯糸67の表面にフィルム素片51aが所定の間隔をあけながら斜めに密着して巻き付けられている。
【0027】
次に、本発明の再起反射糸の製造方法について説明する。
図8は再起反射糸に用いるフィルム1の要部拡大断面図を示し、このフィルム1は、厚みが約25μmのポリエステルフィルム層2と、このポリエステルフィルム層2の一面に、散布塗装して接着し、粒径が38〜45μmの透明で無数のガラスビーズ3と、このガラスビーズ3側の面にアルミ蒸着したアルミ蒸着層4とで構成されている。なお、ガラスビーズ3の屈折率は、2.20である。
【0028】
そして、このフィルム1の厚みは、ガラスビーズ3の粒径が38〜45μmと大きいことから、約75〜80μmとなっている。なお、このフィルム1は一般に市販されているものであり、ポリエステルフィルム層2の厚みが種々異なるフィルム1が市販されている。
本発明で用いるフィルム1の厚みは上述したように約75〜80μmのものを用いており、幅は610mmで、長さは1,500mである。フィルム1の幅や長さは特に限定されるものではない。
【0029】
再起反射糸の芯糸としては、ポリエステルで、150デニールのものを用いている。この150デニールの芯糸を用いているのは、フィルム1の厚みと硬さとの相性がよく、強度、耐熱性があるためである。フィルム1の厚みは、金糸72を製造する場合のフィルム51(フィルム素片51a)の9μmの約6倍強の上述した75〜80μmのフィルム1を用いている。
【0030】
本発明の再起反射糸の製造方法は、基本的には金糸72を製造する場合と同様ではあるが、金糸72の製造方法を大幅に改良して再起反射糸を製造することができたものである。本発明の再起反射糸の製造方法について説明した後に、改良した部分について説明する。
なお、金糸72を製造する装置も、再起反射糸を製造する装置も基本的には同じであるが、異なる番号を付して説明していく。ただし、フィルムを裁断する裁断装置の刃は全く異なる。
【0031】
図9(a)は、フィルム1をロール状に巻回したものであり、幅と長さは上述したように、幅が610mm、長さは1,500mであるが、幅や長さは限定されるものではない。
図9(a)に示す実線5の部分をカッターにて裁断し、幅610mmを6カットに大切りする。
図9(b)は、6カットされた部分の1カットのフィルム1を示している。この1カットのフィルム1を
図9(c)に示すように、裁断装置により80等分幅に裁断する。この80等分幅に裁断したものをフィルム素片1aとする。なお、このフィルム素片1aの幅は約1.27mmである。
【0032】
そして、このフィルム素片1aを
図9(d)に示すように、プラスティック製のボビン7に巻回する。なお、ボビン7に巻回したフィルム素片1aの長さは、フィルム1の長さと同じ1,500mである。
【0033】
ここで、
図9(c)に示すフィルム1を裁断してフィルム素片1aにカットする裁断装置10の概略構成を
図10に示す。この裁断装置10は、上交差刃部11と下交差刃部12とで構成されている。
図10及び
図11(a)に示すように、上交差刃部11及び下交差刃部12は同じ構成であり、上交差刃部11は回転駆動される軸13に所定の間隔をあけて多数の円板状の刃14が装着されている。また、下交差刃部12も同様であり、回転駆動される軸15に多数の円板状の刃14を所定の間隔をあけて装着されている。
【0034】
上交差刃部11及び下交差刃部12の刃14は、上述したように円板状に形成されていて、刃14の周面の刃先部16は径方向の外方に向けて突出した断面を略逆V字型に全周にわたって形成されている。なお、
図11(a)での刃14の上部では略逆V字型になるが、刃14の下部では略V字型になるが、以下、略逆V字型と称する。
【0035】
図10及び
図11に示すように、上交差刃部11の刃14の下部の刃先部16の部分と、下交差刃部12の刃14の上部の刃先部16の部分とが上下方向にそれぞれ少し挿入し合う形で配置されており、それぞれの刃14の間隔は、当該刃14の厚みに対応している。上下の刃14の枚数は、
図9(c)に示すフィルム素片1aの80等分幅に裁断する数に対応させている。
図11(b)の刃14に対応した曲線の矢印に示すように、上下の刃14の回転方向は異なっており、上交差刃部11の刃14は反時計方向で、下交差刃部12の刃14は時計方向である。
なお、各刃14の間にはセパレーター40を介装しており、このセパレーター40により各刃14が軸方向に動くのを防いでいる。
【0036】
図11(a)に示すように、上交差刃部11及び下交差刃部12の刃14の刃先部16は、略逆V字型としており、この刃先部16の先端の尖った部分でフィルム1を裁断するようにしている。
図11(b)に示すように、フィルム1を裁断装置10の上交差刃部11と下交差刃部12の間に入れていくことで、フィルム1は上下の刃14により裁断されてフィルム素片1aにカットされる。
【0037】
次に、
図12に示すように、芯糸18にフィルム素片1aを巻き付ける工程について説明する。
図12に示すように、金糸72を製造する場合と同様に、ボビン7の上面側にフライヤー21を配置し、このフライヤー21の下部に回動自在で略コ字型の回転体22が設けられている。この回転体22の両側の下端はフィルム素片1aを通す穴23が設けられており、この穴23にボビン7に巻回されているフィルム素片1aを通している。
【0038】
図外のボビンに巻回されている芯糸18をボビン7の中央の穴及びフライヤー21の穴24に挿通して引き上げていき、2段のローラ25、26を介して鉄製のボビン27に芯糸18の先端を巻き付ける。また、このボビン27は、図外のモータにより回転駆動されるようになっている。フライヤー21の回転体22も図外のモータにより回転駆動されるようになっている。
【0039】
芯糸18の先端をボビン27に巻き付けておき、ボビン7に巻回しているフィルム素片1aの先端を回転体22の穴23を挿通して芯糸18に巻き付ける。そして、ボビン27と回転体22を回転駆動する。ここで、芯糸18の引き上げ速度は、1時間当たり223m(毎分約3.71m)であり、回転体22の回転速度は毎分約5,000〜6,000(平均約5,500回転)である。
【0040】
芯糸18を引き上げながら回転体22を回転させる。回転体22が回転するとフィルム素片1aはボビン7から解かれていき、フィルム素片1aが芯糸18に巻き付けられながらローラ25、26を経て、鉄製のボビン27には再起反射糸19として巻回されていく。このようにして、ボビン27に再起反射糸19が巻回された状態を
図13に示す。
【0041】
次に、
図14に示すように、ボイラー30の中に鉄のボビン27に巻き上げた再起反射糸19を入れ、100℃の水蒸気(水蒸気)をボイラー30内に吹き込む。これを30分間1回行なう。
【0042】
図15は、内径が約1mの枠体31の斜視図を示し、この枠体31に
図16に示すようにボビン27に巻回している再起反射糸19を巻き取る。
図17は枠体31に再起反射糸19を巻き取った状態を示し、次に、
図18に示すように、ボイラー30の中に枠体31に巻き上げた再起反射糸19を入れ、100℃の水蒸気をボイラー30内に吹き込む。これを30分間1回行なう。
【0043】
次に、
図19に示すように、ボビン33に枠体31に巻回している再起反射糸19を巻き取り、
図20に示すように、ボイラー30の中にボビン33に巻き上げた再起反射糸19を入れ、100℃の水蒸気をボイラー30内に吹き込む。これを30分間1回行なう。
【0044】
このように、ボイラー30内に再起反射糸19を入れて30分間100℃の水蒸気をボイラー30内に吹き込む工程が最終的に3回したことになる。
【0045】
次に、
図20に示す水蒸気を吹き込む工程が終わった後、
図21に示すように、ボビン34に再起反射糸19を巻き取る。
図22は、最終的に製造された再起反射糸19の要部拡大図を示している。ガラスビーズ3は理解し易いように大きめに描いている。図示するように、フィルム素片1aは芯糸18の表面にフィルム素片1aが所定の間隔をあけながら斜めに密着して巻き付けられている。
【0046】
次に、本発明者が試行錯誤して再起反射糸19を製造できるように改良した部分について説明する。ガラスビーズ3入りのフィルム1を初めは
図2に示す裁断装置55にてカットした。カット後のフィルム素片1aを顕微鏡で見るとガラスビーズ3の部分でうまくカットできておらず、ガラスビーズ3に亀裂が生じていたことが分かった。
【0047】
最初は、何故ガラスビーズ3が破損するのか分からなかったが、何回もフィルム1をカットしているうちに、フィルム1を細くカットする場合、フィルム1を刃59のカット部分62でカットしていたため、ガラスビーズ3の部分がうまくカットできず、ガラスビーズ3に亀裂が生じたのではないかと考えた。これは、刃59の先端の両側の部分で面接触することで、ガラスビーズ3が破損していたと考えられる。
【0048】
そこで、本発明者は、フィルム1をカットする場合、そのカットする刃14の接触部分を出来るだけ細くすればフィルム1をうまくカットできるのではないかと考え、
図10及び
図11に示すように、刃14の先端を逆V字型にした刃先部16を考えたのである。
この刃14の刃先部16を逆V字型にすることで、ガラスビーズ3に亀裂がほとんど入らないようにフィルム1を裁断できるようになった。
【0049】
次に、
図8に示すフィルム1のポリエステルフィルム層2の厚みであるが、本発明では25μmを用いているが、最初は、このポリエステルフィルム層2の厚みが16μmを用いた。これは、ポリエステルフィルム層2の厚みが薄い方が再起反射糸19を使って刺繍などはし易くなるからである。また、太くなるほど刺繍などがしづらくなるからである。
【0050】
しかしながら、フィルム1のポリエステルフィルム層2の厚みを16μmとした場合、芯糸18にフィルム素片1aを巻き付けて密着させる工程、つまり、撚糸工程で、芯糸18にフィルム素片1aがうまく密着して再起反射糸19を生産できる場合もあるが、途中でフィルム素片1aが切れることが何回も発生するという問題が発生した。
【0051】
さらに、一部うまく製造された再起反射糸19を用いて刺繍をしてみると、刺繍過程でフィルム素片1aが切れて刺繍ができないという問題も発生した。
フィルム1のポリエステルフィルム層2が薄い(厚み:16μm)と、撚糸工程において、フィルム素片1aが切れ易いため回転体22(
図12参照)の回転数を上げることができず、金糸72を製造する場合のように毎分約12,000回より遅い速度にしなければならない。この場合、芯糸18へのフィルム素片1aの密着が弱くなり、少しの抵抗でフィルム素片1aが芯糸18に対してずれたり、切れたりすることになる。
【0052】
また、遅い速度で芯糸18にフィルム素片1aを巻き付けるため、フィルム素片1a同士が重なり合う部分が生じて、撚り上がりの再起反射糸19が太くなり、刺繍する布の抵抗が大きく、刺繍がスムーズにできない。
【0053】
そこで、本発明者はフィルム素片1aが先ずよく切れたりするのは、フィルム1(フィルム素片1a)のポリエステルフィルム層2の厚みが薄いのが原因ではないかと考え、ポリエステルフィルム層2の厚みを16μmから25μmのものに変更した。
ポリエステルフィルム層2の厚みが25μmに変更した場合でもフィルム素片1aの撚り仕上がり(芯糸18へのフィルム素片1aの巻き付け)が良くないということが判明した。
【0054】
すなわち、フィルム1のポリエステルフィルム層2の厚みを16μmから25μmに変更したことにより、フィルム素片1aのポリエステルフィルム層2の比重が重くなる。そのため、フィルム素片1aの撚り上げる部分の遠心力が強くなり、芯糸18の引き上げ速度を金糸72の場合と同じ毎分10mとし、通常の撚り回転速度(毎分約12,000回)で作業すると、フィルム素片1aが外方へ広がり、芯糸18へ巻き付ける力が低下してフィルム素片1aが浮き上がり、切れ易くなるなどして仕上がり(芯糸18へのフィルム素片1aの巻き付け)が良くないという結果となった。
【0055】
そこで、本発明者は、芯糸18にフィルム素片1aを巻き付ける場合の回転体22の回転速度を、金糸72の場合の約毎分約12,000回から徐々に下げていくと共に、芯糸18の引き上げ速度も徐々に下げていく実験をした。
フィルム素片1aを芯糸18にうまく巻き付けることができ、フィルム素片1aの芯糸18への密着度が増し、フィルム素片1aの間隔(
図22参照)も絶妙のバランスを得ることができる回転体22の速度は、毎分約5,500回で、芯糸18の引き上げ速度も毎分約3.7mが良いという実験結果を得た。
【0056】
これにより、回転体22の回転速度を毎分約5,500回とし、芯糸18の引き上げ速度を毎分約3.7mとすることで、フィルム素片1aを芯糸18にうまく巻き付けることができ、フィルム素片1aの芯糸18への密着度が増し、フィルム素片1aの間隔(
図22参照)も絶妙のバランスを得ることができるようになった。
【0057】
このように、回転体22の回転速度を毎分約5,500回としているものであり、回転体22の回転速度を毎分約5,500回より高くすると、フィルム素片1aを芯糸18に巻き取った場合に、フィルム素片1aが外方へ広がり、芯糸18へ巻き付ける力が低下してフィルム素片1aが浮き上がり切れ易くなる。
また、回転体22の回転速度を毎分約5,500回より低くすると、芯糸18へフィルム素片1aを巻き付ける仕上がりの速度が遅くなり、作業効率が低下するという問題が生じる。
【0058】
芯糸18の引き上げ速度も毎分約3.7m以上にすると、フィルム素片1aの間隔が広くなっていき、ガラスビーズ3による光の反射を行なう部分が芯糸18に対して少なくなり、再起反射糸19としての機能が低下してしまう。
また、芯糸18の引き上げ速度も毎分約3.7m以下にすると、フィルム素片1aの間隔が短くなったり、フィルム素片1aが重ね合わさったりして、再起反射糸19が太くなって刺繍がスムーズにできなくなる。
【0059】
そこで、回転体22の回転速度を毎分約5,500回とし、また、芯糸18の引き上げ速度も毎分約3.7mにするのが好適例である。
なお、これらの数値に関して、±10%程度は許容される範囲である。
【0060】
図14において、ボビン27に巻回した再起反射糸19をボイラー30内に入れて、100℃の水蒸気を30分間吹き込む工程は、撚り上った再起反射糸19を水蒸気にあてて形状を安定させる工程である。すなわち、芯糸18に巻き付けたフィルム素片1aが安定に密着して、フィルム素片1aが芯糸18から解けないようにする工程である。
また、水蒸気の温度を約100℃としているのは、それ以上高い水蒸気を当てると再起反射糸19が溶けるため、再起反射糸19が溶けるのを防ぐためである。また、100℃以下の低い温度の場合、芯糸18に対してフィルム素片1aがしまりきらず(しっかりと密着しない)、また、芯糸18にフィルム素片1aが密着していたり、密着していなかったりという「むら」ができるのを防ぐためである。
【0061】
また、水蒸気を当てる時間を30分程度としているのは、30分以上の長い時間を当てると、再起反射糸19が溶けるため、それを防ぐためである。水蒸気を当てる時間を30分以下の短い時間であると、芯糸18に対してフィルム素片1aがしっかりと密着しないからであり、それを防ぐためである。
【0062】
図15〜
図18において、再起反射糸19を内径が約1mの枠体31に巻き直しているのは、
図14に示す小さなボビン27の場合では、再起反射糸19がスナール(カールしてもつれ易くなること)しているので、ボビン27より非常に大きい枠体31に巻き直すことで、再起反射糸19を直線状態に維持させることができ、これにより、再起反射糸19がスナールし易くなるのを防止するためである。
【0063】
また、
図18において、枠体31に巻回した再起反射糸19をボイラー30内に入れて、再起反射糸19に100℃の水蒸気を30分間当てているのは、枠体31の一辺が約1mと長いために、再起反射糸19がスナールし易くなるのを防ぐためである。
水蒸気の温度を約100℃とし、100℃以上の場合や、100℃以下の場合での不具合は、
図14において説明したのと同じ理由からである。また、水蒸気を再起反射糸19に当てる時間も30分以上、30分以下の場合での不具合は、
図14において説明したのと同じ理由からである。
【0064】
図20において、枠体31から小さなボビン33に巻き直した再起反射糸19にボイラー30内で約100℃の水蒸気を30分間当てているのは、フィルム素片1aを芯糸18に対して更に密着度を上げるためである。この工程での再起反射糸19に約100℃の水蒸気を30分間当てる根拠は上述した理由からである。
【0065】
ここで、再起反射糸19を製造する場合、再起反射糸19のフィルム素片1aの厚みが、金糸72を製造する場合のフィルム素片51aと比べて、再起反射糸19の場合は、ガラスビーズ3の粒径が38〜45μmと大きいことからフィルム素片1a自体が厚くなる。また、ガラスビーズ3を多数フィルム素片1aに接着しているので、金糸72の場合と比べて重くなり、そのため、
図14に示す水蒸気を当てる工程が1回だけでは、芯糸18にフィルム素片1aが確実に密着しない。
【0066】
そこで、再起反射糸19がスナールし易くなるのを防ぐべく内径が約1mの枠体31に巻き直し、再起反射糸19が直線状態の部分が長くなっている状態で、再起反射糸19に水蒸気を当てることで、再起反射糸19がスナールし易くなるのを防ぐと共に、フィルム素片1aが芯糸18に一層密着させることができるという一石二鳥の効果を得ている。
なお、再起反射糸19を巻回している枠体31以外のボビンの外径は、一般的には、4〜5cmくらいであり、かかるボビンと枠体31の大きさを比較すれば、約20倍と枠体31が大きい。そのため、枠体31に再起反射糸19を巻回すると、再起反射糸19が直線状態となる部分が長くなり、スナールし易くなるのを防止することができる。
また、内径の大きな枠体31を用いずに、普通のボビンを用いて加熱蒸気工程を経た場合は、スナールし易くなるものの、再起反射糸19は確実に製造することができる。
【0067】
また、枠体31から更に小さなボビン33へと再起反射糸19を巻き直して、さらに水蒸気を当てているのは、フィルム素片1aが芯糸18に確実に密着させるためである。
【0068】
なお、ボビン33から
図21に示すボビン34へと巻き直しているのは、再起反射糸19をスナールして乱れるのを防ぐためである。また、ボビン33には、5,000mの再起反射糸19が巻回されており、これは製造上であり、小売用に長さを500mに巻き直しているものである。
【0069】
上述のように、再起反射糸19に水蒸気を当てる工程を3回としているのは、本発明者が試行錯誤に実験をしてきた結果、上記の3回の工程を経ることで、フィルム素片1aが芯糸18に確実に密着させることができたからである。再起反射糸19に水蒸気を2回当てる工程とした場合では、フィルム素片1aが芯糸18にある程度は密着するものの、密着の度合いにムラがあり、確実に密着はしなかったという実験結果からである。
【0070】
また、再起反射糸19に水蒸気を4回以上当てるようにしても、3回の工程でフィルム素片1aが芯糸18に確実に密着することから、4回以上水蒸気を再起反射糸19に当てても、密着度はほとんど向上せず、製造の効率が悪くなり、経済的効果が乏しい。
【0071】
なお、水蒸気を再起反射糸19に当てる工程は3回としており、1回目あるいは2回目の水蒸気を当てた後、次の水蒸気を当てる工程に入る場合、水蒸気を当てた再起反射糸19の温度が室温にまで低下してから次の水蒸気を当てる工程に入るようにしている。
再起反射糸19の温度が室温にまで低下させるのは、以下の理由による。すなわち、再起反射糸19の温度が高い状態で直ぐに、次の水蒸気を当てる工程に入ると、単に水蒸気を当てる時間を長くしているに過ぎず、30分以上も水蒸気を当てる必要もないからである。
【0072】
また、芯糸18の材質をポリエステルとし、太さを150デニールとしているのは、耐熱性と強度があるからであり、芯糸18の太さを金糸72の場合のように100デニールとすると、芯糸18にフィルム素片1aを撚り上げる工程で芯糸18が切れる恐れが多分にあるからである。
また、芯糸18の太さを150デニール以上の太いものを使用すると、強度自体は向上するものの、出来上がった再起反射糸19自体が太くなりすぎ、刺繍などに使用するのが不向きとなるからである。したがって、再起反射糸19を製造する実験結果から芯糸18の太さを150デニールとするのが好適例である。
【0073】
図23に金糸72と再起反射糸19を製造する場合の各条件の違いを示す。
【0074】
上述のように、本発明の製造方法により、再起反射糸19を確実に製造することができるものである。また、上述の工程により製造された再起反射糸19は、金銀糸と同等に刺繍が可能となり、今までに無い撚糸製品である。この再起反射糸19の用途としては、刺繍、製紐、織物、アパレル商品等の素材である。
再起反射糸19を素材として用いることで、光源よりの直接反射で夜間、暗闇での認識性を高め、安全性を確保することができる。また、刺繍糸の機能を保持することにより、ファッション性の高い製品の素材たらしめることができる。
【0075】
また、
図8に示すように、フィルム素片1a(フィルム1)は、ポリエステルフィルム層2とアルミ蒸着層4にてガラスビーズ3を内部に閉じ込めて、フィルム素片1aの表面にはガラスビーズ3を露出させていないので、刺繍糸の機能を保持させることができ、他に傷を付けない糸(再起反射糸19)にすることができる。
【0076】
なお、各加熱蒸気工程において、プラスティック製のボビンを用いている場合は、耐熱性のあるボビンを用いている。また、枠体31も耐熱性のあるものを使用しており、耐熱性があれば、プラスティック製でも、木製でも良い。