(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-98532(P2016-98532A)
(43)【公開日】2016年5月30日
(54)【発明の名称】アスファルト材溶解装置
(51)【国際特許分類】
E01C 19/08 20060101AFI20160425BHJP
C10C 3/12 20060101ALI20160425BHJP
【FI】
E01C19/08
C10C3/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2014-235129(P2014-235129)
(22)【出願日】2014年11月20日
(71)【出願人】
【識別番号】592259510
【氏名又は名称】竹内工業株式會社
(71)【出願人】
【識別番号】000213286
【氏名又は名称】シーキューブ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107700
【弁理士】
【氏名又は名称】守田 賢一
(72)【発明者】
【氏名】竹内 政雄
(72)【発明者】
【氏名】後藤 波太郎
【テーマコード(参考)】
2D052
4H058
【Fターム(参考)】
2D052AA03
2D052CA09
2D052DA25
4H058DA14
4H058EA16
4H058EA41
4H058GA25
4H058HA25
(57)【要約】
【課題】必要なだけのアスファルト材を無駄なく速やかに溶解できるアスファルト材溶解装置を提供する。
【解決手段】収容したブロックアスファルト材BSの主に下端部を加熱するカートリッジヒータ7と、加熱溶融したアスファルト材MSをアスファルト注入具Yへ流下案内する案内部材5とを備え、さらに、ブロックアスファルト材BSは板体で、当該ブロックアスファルト材BSを起立姿勢に維持するガイド部材3と、起立したブロックアスファルト材BSの下端面が載置され、溶解したアスファルト材MSを下方へ通過させる開口411が形成された受け部材4とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
収容したブロックアスファルト材の主に下端部を加熱する加熱手段と、加熱溶融したアスファルト材をアスファルト注入具へ流下案内する案内部材とを備えるアスファルト材溶解装置。
【請求項2】
前記ブロックアスファルト材は板体で、当該ブロックアスファルト材を起立姿勢に維持するガイド部材と、起立した前記ブロックアスファルト材の下端面が載置され、溶解したアスファルト材を下方へ通過させる開口が形成された受け部材とをさらに備える請求項1に記載のアスファルト材溶解装置。
【請求項3】
前記案内部材を流下するアスファルト材を加熱する他の加熱手段をさらに備えた請求項1又は2に記載のアスファルト材溶解装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアスファルト材溶解装置に関し、特に、アスファルト路面に生じたクラックの補修に使用するアスファルト材の溶解に好適なアスファルト材溶解装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アスファルト路面には長期の使用によってクラックが生じ、これを放置するとクラックから雨水が浸入して舗装路面が破壊される。そこで、クラックに溶解したアスファルト材を充填して水浸入を防止する工事が行われており、これに使用できる現場置きのアスファルト材溶解装置が提案されている。従来の溶解装置では特許文献1に示されるように、タンク内に板状等のブロックアスファルト材を投入してタンク全体をヒータやバーナで加熱する構造のものが多く、特許文献2ではタンク内のブロックアスファルト材の溶解を促進するために撹拌装置を設けることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−27577
【特許文献2】特開2006−63115
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来のようにタンク内にブロックアスファルト材を投入してこれを溶解する方法では溶解に時間を要するとともに、少ないアスファルト材の注入で済む比較的軽微なクラックを補修する際にも過剰なブロックアスファルト材を溶解することになって時間や材料の無駄を生じるという問題があった。
【0005】
そこで、本発明はこのような課題を解決するもので、必要なだけのアスファルト材を無駄なく速やかに溶解できるアスファルト材溶解装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本第1発明では、収容したブロックアスファルト材(BS)の主に下端部を加熱する加熱手段(7)と、加熱溶融したアスファルト材(MS)をアスファルト注入具(Y)へ流下案内する案内部材(5)とを備えている。
【0007】
本第1発明においては、ブロックアスファルト材は必要量だけその下端部から順次加熱され溶解されるから、従来のように過剰なブロックアスファルト材を溶解して時間や材料の無駄を生じるという問題が避けられる。
【0008】
本第2発明では、前記ブロックアスファルト材(BS)は板体で、当該ブロックアスファルト材(BS)を起立姿勢に維持するガイド部材(3)と、起立した前記ブロックアスファルト材(BS)の下端面が載置され、溶解したアスファルト材(MS)を下方へ通過させる開口(411)が形成された受け部材(4)とをさらに備える。
【0009】
本第2発明においては、起立させた板体のブロックアスファルト材を下端部から順次加熱溶解させるから、単位時間当たりの溶解量を一定にすることが可能で、常に一定の溶解量を得ることができるとともに、必要量のアスファルト材を得るための溶解時間の管理も容易である。
【0010】
本第3発明では、前記案内部材(5)を流下する溶解した前記アスファルト材(MS)を加熱する他の加熱手段(8)をさらに備える。
【0011】
本第3発明ではアスファルト注入具へ至る間にアスファルト材の温度が低下してしまうのを防止することができる。
【0012】
上記カッコ内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を参考的に示すものである。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明のアスファルト材溶解装置によれば、必要なだけのアスファルト材を無駄なく速やかに溶解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】アスファルト溶解装置の部分断面全体側面図である。
【
図3】アスファルト溶解装置の要部断面図で、
図1のA部の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
なお、以下に説明する実施形態はあくまで一例であり、本発明の要旨を逸脱しない範囲で当業者が行う種々の設計的改良も本発明の範囲に含まれる。
【0016】
図1にはアスファルト材溶解装置の垂直部分断面図を示し、
図2にはその正面図を示す。
図1、
図2において、アスファルト材溶解装置は角型のボックス状ハウジングを備えており、ハウジング1は四隅の縦アングル21によって、平面視で四角に成形されたベースアングル22上に支持されている。
【0017】
ベースアングル22の下面四隅には移動用のキャスタ23が設けられており、またベースアングル22の前部(
図1の左方)上には段付きに高くした平板状の載台23が架設されている。この載台23上には、溶解したアスファルト材を受けて貯留し、路面の必要箇所に搬送されてその注ぎ口からアスファルト材を路面のクラックに注入するための、やかん状のアスファルト注入具Yが置かれる。
【0018】
上記ハウジング1内には前後方向(
図1の左右方向)の略中央位置にガイド部材3が設けられている。ガイド部材3は本実施形態では、板体を平面視で両側面を有するコ字形に屈曲させるとともに側面視でL字形に屈曲させて前方へ開放する箱状としたもので、起立したその両側面31(
図1に一方のみ示す)および後面32、当該後面32の下端から略直角に延びる底面33が、全体として後方へ傾斜させて設けられている。
【0019】
ガイド部材3の底面33の上方位置には当該底面33と平行に延びる受け板41を備えた受け部材4が設けられている(
図3)。受け板41は本実施形態では板面に円形の開口411が等間隔で多数形成されたパンチングメタルで構成されている(
図4)。一定幅で左右方向へ延びる受け板41にはその左右縁と後縁(
図4の下側)にアングル材42,43が接合され、これらアングル材42,43を介して受け板41はガイド部材3の空間内に収容固定されている。なお、受け板41は下面の長手方向複数個所を(
図4)、前後方向へ平行に延びる丸棒の支持材44によって支持されている。
【0020】
受け板41の下方にはガイド部材3の底面33との間に案内部材5が配設されている。案内部材5は本実施形態では、前下方へ傾斜して漸次底面33へ接近する金属板製の傾斜板で構成されている。なお、上記底面33の後端部には上下方向へ貫通する排出口331が設けられて、当該排出口331に接続された排出管5(
図1)が下方へ延びて載台23の上方位置に開口している。
【0021】
排出管6の途中には公知の開閉弁61が設けられており、開閉弁61はハウジング1の前面に設けた操作ノブ11に連結されて、操作ノブ11を正逆旋回操作することで開閉させられるようになっている。
【0022】
案内部材5の板体裏面に接してその幅方向へアルミパイプ71が配設されており、アルミパイプ71内には第1加熱手段としての一対のカートリッジヒータ7が設けられている。これらカートリッジヒータ7からの輻射熱によってその周囲の、案内部材5とこれの上方に位置する受け板41、およびガイド部材3の底面33が加熱される。同時に、後述するように受け板41上に支持されるブロックアスファルト材BSの下端面がカートリッジヒータ7によって効率的に加熱される。また、ガイド部材3の両側面31および後面32のそれぞれ下半部裏面にはこれに沿って第2加熱手段としてのラバーヒータ8が設けられて、受け板41、案内部材5およびガイド部材3の底面33を含む空間内が加熱されている。
【0023】
ハウジング1の前面上半は後方へ傾斜するとともに矩形状に前方へ大きく開放して供給口12(
図1)となっている。供給口12には蓋体9が覆着されており、蓋体9はその下縁がハウジング1の低くなった頂面上にヒンジ結合されて前上方へ開放可能となっている。
【0024】
なお、ハウジング1の後半部内には給電制御回路10が収納されており、ハウジング1前面の図略のスイッチを操作して各ヒータ7,8への給電およびその停止を行うとともに、これらヒータ7,8への通電を制御してその温度を所望の値に維持している。給電制御回路10の電源は外部の発電機等から供給される。なお、カートリッジヒータ7の設定温度の一例は290℃、ラバーヒータ8の設定温度の一例は200℃である。
【0025】
上記構造のアスファルト材溶解装置を使用する場合には、蓋体9を開放して、角型板状のブロックアスファルト材BSを供給口12からハウジング1内に挿入する。そして
図1に示すように、ガイド部材3の後面32に沿ってブロックアスファルト材BSを傾斜した起立姿勢に保持させつつ、その下端面を受け部材4の受け板41上に載置する。この状態でヒータ8,9に給電して、カートリッジヒータ7によってブロックアスファルト材BSの特に下端部分を加熱しその下端面から溶解させる。
【0026】
溶解したアスファルト材MSは受け板41の開口411から下方へ落下して(
図3)傾斜する案内部材5の板上を下方へ流れ、ガイド部材3の底面33上へ流下してここに貯留される。受け板41から案内部材5を経て底面33に至り貯留される間、溶解したアスファルト材MSはヒータ8,9によって加熱されるから適正な溶解状態に維持される。この状態で必要な時に載台23上にアスファルト注入具Yを置き、開閉弁61を開いて、溶解されたアスファルト材MSを必要量だけ注入具Yに供給して、路面のクラックに注入し補修する。
【0027】
この際、ブロックアスファルト材BSの溶解はその下端部においてのみ行われる。すなわち、ブロックアスファルト材BSのうちカートリッジヒータ7に対向する下端面が当該ヒータ7からの放熱を効率的に受けて加熱され、ブロックアスファルト材BSの下端部のみが溶解して落下する。このように、起立させられたブロックアスファルト材BSはその下端部から順次溶解される。必要量のアスファルト材MSが溶解されたらヒータ7,8への通電を停止する。
【0028】
このように、ブロックアスファルト材BSは下方から順次溶解されるから、ブロックアスファルト材BS全体を無駄に溶解することがなく、必要なだけのアスファルト材MSを効率的かつ速やかに溶解することができる。必要量のアスファルト材MSの溶解が終了した場合にはヒータ7,8への給電を停止する。この溶解の終了は、蓋体9を開けて、ブロックアスファルト材BSの消耗程度や、実際にガイド部材3の底面33に貯留されている溶解したアスファルト材MSの量を目視して確認する。
【符号の説明】
【0029】
1…ハウジング、3…ガイド部材、4…受け部材、41…受け板、411…開口、5…案内部材、7…カートリッジヒータ(加熱手段)、8…ラバーヒータ(他の加熱手段)、BS…ブロックアスファルト材、MS…溶融アスファルト材。