特開2016-98880(P2016-98880A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特開2016-98880板ばね装置、及び板ばね装置の生産方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-98880(P2016-98880A)
(43)【公開日】2016年5月30日
(54)【発明の名称】板ばね装置、及び板ばね装置の生産方法
(51)【国際特許分類】
   F16F 1/18 20060101AFI20160425BHJP
   F16F 1/02 20060101ALI20160425BHJP
   B60G 11/04 20060101ALI20160425BHJP
【FI】
   F16F1/18 G
   F16F1/02 B
   B60G11/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-234850(P2014-234850)
(22)【出願日】2014年11月19日
(71)【出願人】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】茅原 英典
(72)【発明者】
【氏名】辻 博人
(72)【発明者】
【氏名】鍬塚 真一郎
【テーマコード(参考)】
3D301
3J059
【Fターム(参考)】
3D301AA69
3D301AA72
3D301AA86
3D301CA22
3D301DA04
3D301DA47
3J059AB11
3J059AD04
3J059BA14
3J059BB05
3J059BB08
3J059BC01
3J059BD03
3J059CA06
3J059CB19
3J059CC03
3J059EA01
3J059EA02
3J059EA08
3J059EA09
3J059GA02
(57)【要約】
【課題】高い疲れ強さと連結部の好適な靭性が両立される板ばね装置、及び板ばね装置の生産方法を提供することを課題とする。
【解決手段】鋼板からなり、撓んで弾性力を生じる弾性部20bと、弾性部20bの端部に形成される目玉部20aとを有する主板ばね20を備え、弾性部20bと目玉部20aが焼き戻しされている板ばね装置1、及び、その板ばね装置1を生産する生産方法とする。目玉部20aは弾性部20bの端部が円形に巻かれて形成されている。そして、目玉部20aは、弾性部20bよりも高温で焼き戻しされていることを特徴とする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼板からなり、撓んで弾性力を生じる弾性部と、前記弾性部の端部に形成される連結部とを有する主板ばねを備え、
前記弾性部と前記連結部が焼き戻しされている板ばね装置であって、
前記連結部は、前記弾性部よりも高温で焼き戻しされていることを特徴とする板ばね装置。
【請求項2】
前記連結部は、前記弾性部の端部が円形に巻かれて形成される目玉部であることを特徴とする請求項1に記載の板ばね装置。
【請求項3】
前記主板ばねと、
前記連結部を有さない1枚以上の補助板ばねと、が積層されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の板ばね装置。
【請求項4】
前記補助板ばねは、前記主板ばねの前記弾性部と同じ温度で焼き戻しされていることを特徴とする請求項3に記載の板ばね装置。
【請求項5】
前記主板ばねは、前記連結部のブリネル硬さ(HBW)が前記弾性部のブリネル硬さよりも低いことを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の板ばね装置。
【請求項6】
前記弾性部のブリネル硬さが461HBWより高く、前記連結部のブリネル硬さが461HBW以下であることを特徴とする請求項5に記載の板ばね装置。
【請求項7】
鋼板からなる主板ばねを有する板ばね装置の生産方法であって、
前記主板ばねにおいて撓んで弾性力を生じる弾性部を焼き戻しする通常焼き戻し工程と、
前記弾性部の端部に形成される連結部を前記弾性部よりも高温で焼き戻しする高温焼き戻し工程と、を有することを特徴とする板ばね装置の生産方法。
【請求項8】
前記通常焼き戻し工程よりも前に、前記連結部となる目玉部を形成する目玉部形成工程を有し、
前記目玉部形成工程は、前記弾性部の端部を円形に巻いて前記目玉部を形成する工程であることを特徴とする請求項7に記載の板ばね装置の生産方法。
【請求項9】
前記目玉部形成工程で前記目玉部が形成された前記主板ばねと、前記目玉部を有さない1枚以上の補助板ばねと、を積層して前記板ばね装置を組み立てる組立工程を、前記高温焼き戻し工程の後に有することを特徴とする請求項8に記載の板ばね装置の生産方法。
【請求項10】
前記補助板ばねを前記通常焼き戻し工程で焼き戻しすることを特徴とする請求項9に記載の板ばね装置の生産方法。
【請求項11】
前記通常焼き戻し工程は、ブリネル硬さが461HBWを超えるように前記弾性部を焼き戻しする工程であり、
前記高温焼き戻し工程は、ブリネル硬さが461HBW以下になるように前記連結部を焼き戻しする工程であること、を特徴とする請求項7から請求項10までのいずれか1項に記載の板ばね装置の生産方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板ばね装置、及び板ばね装置の生産方法に関する。
【背景技術】
【0002】
板状の鋼材(鋼板)の板ばねからなる板ばね装置は、車両(特に、大型車両)の懸架装置に多く使用されている。
近年は車両の軽量化が要求され、それにともなって板ばね装置の軽量化も要求される。よって、材料を熱処理によって高硬度化して疲れ強さを高める高応力設計が指向されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−255432号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、鋼板は高硬度化すると(疲れ強さを高めると)靭性(延性)が低下する。板ばね装置は、車体との連結部(目玉部)の靭性が低下すると疲労破壊や遅れ破壊が生じやすくなる。このため、板ばね装置の連結部は高い靭性を有することが好ましい。
【0005】
そこで本発明は、高い疲れ強さと連結部の好適な靭性が両立される板ばね装置、及び板ばね装置の生産方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため本発明は、鋼板からなり、撓んで弾性力を生じる弾性部と、前記弾性部の端部に形成される連結部とを有する主板ばねを備え、前記弾性部と前記連結部が焼き入れ、及び、焼き戻しされている板ばね装置とする。そして、前記連結部は、前記弾性部よりも高温で焼き戻しされていることを特徴とする。
【0007】
本発明によると、板ばね装置の連結部が弾性部よりも高温で焼き戻しされる。主板ばねは鋼板製であるので、弾性部よりも高温で焼き戻しされる連結部は、弾性部よりも高い靭性を有する。また、弾性部は低温での焼き戻しが可能となるので疲れ強さを高めることができる。したがって、板ばね装置において連結部の疲労破壊や遅れ破壊が抑制される。また、疲れ強さが高い弾性部を有する板ばね装置とすることができる。そして、市場での遅れ破壊が抑制される板ばね装置とすることができる。また、市場における長期間経過後の疲労破壊が抑制される板ばね装置とすることができる。
【0008】
また、本発明に係る板ばね装置の前記連結部は、前記弾性部の端部が円形に巻かれて形成される目玉部であることを特徴とする。
本発明によると、弾性部よりも靭性の高い目玉部を有する板ばね装置とすることができる。
【0009】
また、本発明に係る板ばね装置は、前記主板ばねと、前記連結部を有さない1枚以上の補助板ばねと、が積層されていることを特徴とする。
本発明によると、連結部を有する主板ばねに、連結部を有さない補助板ばねが積層された板ばね装置とすることができる。
【0010】
また、本発明に係る板ばね装置の前記補助板ばねは、前記主板ばねの前記弾性部と同じ温度で焼き戻しされていることを特徴とする。
本発明によると、主板ばねに積層されて板ばね装置を構成する補助板ばねの疲れ強さを、主板ばねの弾性部と同じ程度に高めることができる。
【0011】
また、本発明に係る板ばね装置の前記主板ばねは、前記連結部のブリネル硬さ(HBW)が前記弾性部のブリネル硬さよりも低いことを特徴とする。
本発明によると、連結部の硬度(ブリネル硬さ)が弾性部の硬度(ブリネル硬さ)より低い板ばね装置とすることができ、弾性部よりも高い靭性の連結部を有する板ばね装置とすることができる。
【0012】
また、本発明の板ばね装置は、前記弾性部のブリネル硬さが461HBWより高く、前記連結部のブリネル硬さが461HBW以下であることを特徴とする。
本発明によると、主板ばねの弾性部におけるブリネル硬さが461HBWより高い場合に連結部のブリネル硬さを461HBW未満とすることで、連結部の靭性の低下を抑制して耐久性を向上させることができる。
【0013】
また、本発明は、鋼板からなる主板ばねを有する板ばね装置の生産方法とする。そして、前記主板ばねにおいて撓んで弾性力を生じる弾性部を焼き戻しする通常焼き戻し工程と、前記弾性部の端部に形成される連結部を前記弾性部よりも高温で焼き戻しする高温焼き戻し工程と、を有することを特徴とする。
【0014】
本発明によると、板ばね装置の連結部を弾性部よりも高温で焼き戻しできる。主板ばねは鋼板製であるので高温での焼き戻しで連結部の靭性が高められる。また、弾性部は低温での焼き戻しが可能となるので疲れ強さを高めることができる。したがって、靭性の高い連結部と疲れ強さの高い弾性部を有する板ばね装置を生産できる。
【0015】
また、本発明に係る板ばね装置の生産方法は、前記通常焼き戻し工程よりも前に、前記連結部となる目玉部を形成する目玉部形成工程を有し、前記目玉部形成工程は、前記弾性部の端部を円形に巻いて前記目玉部を形成する工程であることを特徴とする。
本発明によると、目玉部形成工程で形成された目玉部を、高温焼き戻し工程で焼き戻しでき、これによって、目玉部の靭性が高い板ばね装置を生産できる。
【0016】
また、本発明に係る板ばね装置の生産方法は、前記目玉部形成工程で前記目玉部が形成された前記主板ばねと、前記目玉部を有さない1枚以上の補助板ばねと、を積層して前記板ばね装置を組み立てる組立工程を、前記高温焼き戻し工程の後に有することを特徴とする。
本発明によると、目玉部形成工程で目玉部が形成されて、高温焼き戻し工程で目玉部が焼き戻しされた主板ばねに、目玉部を有さない1枚以上の補助板ばねを積層した板ばね装置を生産できる。
【0017】
また、本発明に係る板ばね装置の生産方法は、前記補助板ばねを前記通常焼き戻し工程で焼き戻しすることを特徴とする。
本発明によると、補助板ばねの疲れ強さを主板ばねと同等に高めることができ、疲れ強さの高い補助板ばねが積層される板ばね装置を生産できる。
【0018】
また、前記通常焼き戻し工程は、ブリネル硬さが461HBWを超えるように前記弾性部を焼き戻しする工程であり、前記高温焼き戻し工程は、ブリネル硬さが461HBW以下になるように前記連結部を焼き戻しする工程であること、を特徴とする。
本発明によると、主板ばねの弾性部におけるブリネル硬さを461HBWより高くし、連結部のブリネル硬さを461HBW以下とすることができる。そして、連結部の硬度(ブリネル硬さ)を弾性部の硬度(ブリネル硬さ)より低くすることができ、弾性部よりも高い靭性の連結部を有する板ばね装置を生産できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によると、疲れ強さの高い板ばねで構成されて連結部に好適な靭性が確保された板ばね装置、及び板ばね装置の生産方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】シャーシに取り付けられた板ばね装置を示す図である。
図2】板ばね装置の斜視図である。
図3】目玉部の拡大図である。
図4】板ばね装置の生産方法の主な生産工程を示す図であり、第1工程から第4工程までを示す図である。
図5】板ばね装置の生産方法の主な生産工程を示す図であり、第5工程から第8工程までを示す図である。
図6】焼き戻しの加熱温度を示す図である。
図7】目玉部を有する主板ばねの焼き戻しの工程を示すグラフである。
図8】(a)は目玉部を高周波加熱する部分加熱装置を示す図、(b)は目玉部を通電加熱する部分加熱装置を示す図である。
図9】(a)は主板ばねにおいてブリネル硬さを計測した計測点を示す図であり、(b)は各計測点におけるブリネル硬さ(HBW)を示す一覧表であり、(c)は各計測点におけるブリネル硬さ(HBW)を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
図1はシャーシに取り付けられた板ばね装置を示す図である。
図1に示すように、本実施形態の板ばね装置1は、トラック等の大型車両(図示せず)の車体(シャーシ10)に備わって車軸11を支持する。
本実施形態の板ばね装置1は、親ばね2と子ばね3を有する。子ばね3は親ばね2の上方に取り付けられている。なお、子ばね3が備わらない板ばね装置1であってもよい。
板ばね装置1は目玉部20aを有する。目玉部20aは板ばね装置1とシャーシ10の連結部になる。目玉部20aは親ばね2の両端に形成されている。
【0022】
シャーシ10は、大型車両の前後方向に延伸するフレームで構成され、板ばね装置1を取り付ける取付部(前方取付部12,後方取付部13)を有する。前方取付部12は後方取付部13よりも前方に備わっている。
【0023】
前方取付部12はブラケットで形成され、シャーシ10の側面に複数のボルトで取り付けられる。前方取付部12には、シャーシ10の側面から突出する方向に延びる前方支軸12aが備わる。
後方取付部13はブラケットで形成され、シャーシ10の側面に複数のボルトで取り付けられる。後方取付部13にはシャーシ10に沿って前後方向に揺動する腕部13bが取り付けられる。腕部13bには、シャーシ10の側面から突出する方向に延びる後方支軸13aが備わる。
【0024】
前方取付部12の前方支軸12aに板ばね装置1の一方の目玉部20aが嵌合し、後方取付部13の後方支軸13aに他方の目玉部20aが嵌合する。
このように、板ばね装置1の親ばね2は前方取付部12と後方取付部13を介してシャーシ10に取り付けられる。
【0025】
また、シャーシ10には、子ばね3の上方への移動を規制する規制ブラケット14が備わる。規制ブラケット14は、子ばね3の両端部に配設されて上方から子ばね3を押さえ付ける。
【0026】
板ばね装置1にはハウジング11aが取り付けられる。ハウジング11aは、例えばU字ボルト11bで板ばね装置1に懸架される。ハウジング11aは、車軸11を回転自在に支持する。車軸11には車輪Wが取り付けられている。
【0027】
図2は板ばね装置の斜視図である。
図2に示すように、親ばね2は、複数の板ばね(本実施形態では、1枚の主板ばね20と、2枚の補助板ばね21)が積層された構成になっている。また、子ばね3は、複数の板ばね(本実施形態では、3枚の補助板ばね21)が積層された構成になっている。
親ばね2を構成する主板ばね20及び補助板ばね21は、それぞれが、シャーシ10(図1参照)に沿って備わる長尺の鋼板であって弓なりに湾曲している。車軸11(図1参照)に取り付けられる車輪W(図1参照)は、主板ばね20及び補助板ばね21が凸に膨らんだ側で路面に接する。つまり、主板ばね20及び補助板ばね21は、下方(路面側)が凸となるように湾曲した状態で積層されて親ばね2を構成する。
なお、本実施形態の主板ばね20及び補助板ばね21は、例えば、SUP9(ばね鋼鋼材)を素材とするものとする。
【0028】
子ばね3を構成する3枚の補助板ばね21のそれぞれも、下方(路面側)が凸となるように湾曲した状態で積層されて子ばね3を構成する。
【0029】
親ばね2の長手方向の両端には、シャーシ10(図1参照)との連結部となる目玉部20aが形成されている。親ばね2は、目玉部20aを介してシャーシ10に取り付けられる。
なお、主板ばね20において目玉部20a以外の部分は、撓んで弾性力を生じる弾性部20bとなる。そして、目玉部20aは弾性部20bの端部(両端部)に形成される。
【0030】
板ばね装置1は、目玉部20aを介してシャーシ10(図1参照)に取り付けられる。したがって、目玉部20aはシャーシ10に対して変位せず弾性力を発生しない。板ばね装置1は、目玉部20a以外の部分がシャーシ10に対して変位することで撓み、弾性力を発生する。
【0031】
本実施形態の親ばね2は、上方から、主板ばね20と、2枚の補助板ばね21が積層されている。つまり、主板ばね20が最も上方に配設されている。
また、主板ばね20及び補助板ばね21は下方が凸となるように湾曲し、これによって、親ばね2は下方が凸となるように湾曲した形状を呈する。
【0032】
積層された主板ばね20と2枚の補助板ばね21はクリップ部材(親ばねクリップ4)で係止される。親ばねクリップ4は、本体部4aと、クリップボルト4bと、クリップナット4cと、クリップパイプ4dと、固定ボルト4eと、を有する。
【0033】
本体部4aは上方が開放したU字状のフレーム部材であって、主板ばね20及び補助板ばね21に下方から嵌まり込み、上方を除く3方から主板ばね20及び補助板ばね21を囲う。
本体部4aの上方にはクリップボルト4bが係合する。例えば、本体部4aが平板状である場合にはクリップボルト4bが挿通するボルト孔4a1が開口する。クリップボルト4bは、最も上方に配設される主板ばね20の上方で、本体部4aの一方のボルト孔4a1から他方のボルト孔4a1に向かって挿通されてクリップナット4cが締め込まれる。クリップパイプ4dは、一方のボルト孔4a1から他方のボルト孔4a1に向かうクリップボルト4bの周囲を覆うように備わる。換言すると、クリップボルト4bがクリップパイプ4dに挿通される。
なお、符号4b1は、クリップボルト4bと本体部4aの間に配設される座金(ばね座金等)である。
【0034】
また、最も下方に配設される補助板ばね21には本体部4aが嵌まる位置にねじ穴(図示せず)が形成されている。このねじ穴には、本体部4aの下方から固定ボルト4eがねじ込まれる。本体部4aは固定ボルト4eによって最も下方の補助板ばね21に締結固定される。
積層された主板ばね20及び補助板ばね21は、適宜な数(図2では2つ)の親ばねクリップ4で係止される。
【0035】
子ばね3は、3枚の補助板ばね21が積層されて構成される。各補助板ばね21は下方が凸となるように湾曲し、これによって、子ばね3は下方が凸となるように湾曲した形状を呈する。
【0036】
積層された3枚の補助板ばね21はクリップ部材(子ばねクリップ5)で係止される。子ばねクリップ5は、本体部5aと、クリップボルト5bと、クリップナット5cと、クリップパイプ5dと、固定ボルト(図示せず)と、を有する。
子ばねクリップ5は、親ばねクリップ4と同じ構造で3枚の補助板ばね21を係止する。積層された補助板ばね21は、適宜な数(図2では1つ)の子ばねクリップ5で係止される。
なお、子ばね3において最も下方に配置される補助板ばね21には、親ばね2と同様に、固定ボルト(図示せず)がねじ込まれるねじ穴(図示せず)が形成される。
【0037】
親ばね2と子ばね3の長手方向の中央部にはボルト孔1aが形成されている。ボルト孔1aは、親ばね2においては主板ばね20と2枚の補助板ばね21を貫通し、子ばね3においては3枚の補助板ばね21を貫通する。
親ばね2の上方に子ばね3が配設された状態でセンタボルト1bがボルト孔1aに挿通されてボルトナット1cが締め込まれる。例えば、下方から親ばね2及び子ばね3を貫通したセンタボルト1bに上方からボルトナット1cが締め込まれる。
このように、子ばね3は親ばね2に対してセンタボルト1bで締結固定される。
なお、親ばね2と子ばね3の間や子ばね3の上方に適宜スペーサ1dが配設されていてもよい。
【0038】
親ばね2の両端部には目玉部20aが形成されている。目玉部20aは板ばね装置1をシャーシ10(図1参照)に取り付ける連結部になる。目玉部20aにはブッシュ22aが挿入される。
【0039】
図3は目玉部の拡大図である。
本実施形態の親ばね2において、目玉部20aは親ばね2の最も上方に配設される主板ばね20の端部が内側上方に向かって円形に巻かれて形成される。具体的に、目玉部20aは、弾性部20bの端部が内側上方に向かって円形に巻かれて形成される。そして、目玉部20aにおける内側の端部(弾性部20bとの間)には間隙G1が形成される。
なお、親ばね2の上方から2番目に配設される補助板ばね21の一端(又は、両端)が、主板ばね20に形成される目玉部20aを外側から覆うように巻かれていてもよい。このような構造によって、目玉部20aが破損したときのバックアップ機能が付与される。
【0040】
目玉部20aに挿入されるブッシュ22aの外径φD1は、目玉部20aの内径φD2よりも若干大きく形成され(φD1>φD2)、ブッシュ22aは目玉部20aに圧入される。目玉部20aは、主板ばね20を形成する鋼板の弾性でブッシュ22aを保持する。
【0041】
ブッシュ22aは、金属製の外筒210の内側に内筒211が備わり、外筒210と内筒211の間に弾性部材212が配設されている。弾性部材212は、ゴム等の弾性材料からなる。内筒211には、前方取付部12の前方支軸12a(図1参照)、又は、後方取付部13の後方支軸13a(図1参照)が挿入される。板ばね装置1は、目玉部20aに備わるブッシュ22aを介してシャーシ10(図1参照)に取り付けられる。
【0042】
図4,5は、板ばね装置の生産方法の主な生産工程を示す図であり、図4は第1工程から第4工程までを示す図、図5は第5工程から第8工程までを示す図である。
板ばね装置1は、図4に示す第1工程(材料切断)から図5に示す第8工程(リーフ組立,塗装)までの8段階の工程(8工程)を主な生産工程として生産される。
【0043】
≪第1工程(材料切断)≫
図4に示す第1工程(材料切断)では、鋼板200が主板ばね20及び補助板ばね21の形状に切断される。例えば、板ばね装置1の幅を有する鋼板200が、主板ばね20及び補助板ばね21の長さに切断機100で切断される。
また、第1工程では、穴あけ機101などで、主板ばね20及び補助板ばね21にボルト孔1aが加工される。なお、固定ボルト4e(図2参照)等がねじ込まれるねじ穴(図示せず)も第1工程で形成される。
【0044】
≪第2工程(端部加熱)≫
図4に示す第2工程(端部加熱)では、端部加熱装置102で、主板ばね20及び補助板ばね21の端部を加熱する。また、第2工程では、プレス機103などで、主板ばね20及び補助板ばね21の端部の形状が加工(必要に応じたテーパの形成等)される。例えば、主板ばね20及び補助板ばね21の長手方向に向かって傾斜するテーパが形成されると、両端部で板厚が薄く中心部で板厚が厚い板ばね(主板ばね20,補助板ばね21)を成型できる。
【0045】
≪第3工程(目玉加工)≫
図4に示す第3工程(目玉加工)では、主板ばね20に目玉部20aが形成される。第3工程では、主板ばね20を曲げ鉤104bで金型104aに押し当て、さらに、カッター104cで端部を切断して主板ばね20の端部を湾曲させる。その後、押圧部材104dで押さえられた主板ばね20の端部が金型104eで巻かれて目玉部20aが形成される。
また、図3に示すように補助板ばね21の端部が目玉部20aを外側から覆う構成の場合、補助板ばね21の端部は、第3工程で目玉部20aに沿った形状に形成される。
なお、その他、補助板ばね21に対して、第3工程(目玉加工)は実行されない。第3工程における目玉加工は、連結部となる目玉部20aを形成する目玉部形成工程になる。
【0046】
≪第4工程(全体加熱,キャンバー形成)≫
図4に示す第4工程(全体加熱,キャンバー形成)では、主板ばね20及び補助板ばね21が全体加熱装置105で全体加熱される。その後、主板ばね20及び補助板ばね21はプレス装置106でプレス加工(熱間加工)されて、弓なりに湾曲した形状に成型される(キャンバー形成される)。
【0047】
≪第5工程(油焼き入れ,焼き戻し)≫
図5に示す第5工程(油焼き入れ,焼き戻し)では、焼き入れ炉107で、主板ばね20及び補助板ばね21が加熱されたあと油で急冷されて油焼き入れされる。油焼き入れによって、主板ばね20及び補助板ばね21の疲れ強さが高くなる。
その後、主板ばね20及び補助板ばね21は、焼き戻し炉108に導入されて焼き戻しされる。焼き戻し炉108で、主板ばね20及び補助板ばね21は所定の温度まで加熱されたあとに徐冷される。焼き戻しによって、主板ばね20及び補助板ばね21の靭性が高くなる。第5工程における焼き戻しは、靭性が高くなるように、主板ばね20の弾性部20bを焼き戻しする焼き戻し工程(通常焼き戻し工程)になる。
【0048】
≪第6工程(目玉部焼き戻し)≫
図5に示す第6工程(目玉部焼き戻し)では、主板ばね20の目玉部20aが第5工程よりも高温で焼き戻しされる。第6工程では、主板ばね20の目玉部20aが部分加熱装置109で加熱されて焼き戻しされる。部分加熱装置109は、目玉部20aを、第5工程における焼き戻しよりも高温に加熱して焼き戻しする。なお、第6工程では、主板ばね20において目玉部20a以外の部分(弾性部20b)は冷却(徐冷)される。つまり、第5工程での焼き戻しの徐冷が継続される。また、補助板ばね21に対しては、第6工程(目玉部焼き戻し)が実行されない。このように、第6工程では、主板ばね20の弾性部20bと補助板ばね21は焼き戻しされない。これによって、補助板ばね21は、主板ばね20の弾性部20bと同じ温度で焼き戻しされることになる。
第6工程における目玉部焼き戻しは、目玉部20aを弾性部20bよりも高温で焼き戻しする高温焼き戻し工程になる。
【0049】
なお、図5には、目玉部20aを焼き戻し処理する高温焼き戻し工程が、第6工程として通常焼き戻し工程(第5工程)の後工程として記載されている。しかしながら、高温焼き戻し工程と通常焼き戻し工程が同じ工程であってもよい。
例えば、通常焼き戻し工程(第5工程)において、目玉部20aが部分加熱装置109で高温に加熱されて焼き戻しされる構成であってもよい。このような構成とすれば、高温焼き戻し工程と通常焼き戻し工程を同じ工程で実施することが可能となる。
【0050】
≪第7工程(ショットピーニング,下塗り)≫
図5に示す第7工程(ショットピーニング,下塗り)では、主板ばね20及び補助板ばね21がショットピーニングされ、その後、下塗りされる。
ショットピーニングの工程では、射出装置111からショット(小球111a)が主板ばね20及び補助板ばね21に打ち付けられる。ショットピーニングによって、主板ばね20及び補助板ばね21の表面に圧縮応力が残留して疲労強度が向上する。
下塗りの工程では、塗装装置110から、主板ばね20及び補助板ばね21に下塗り塗装用の塗料が吹き付けられる。
【0051】
≪第8工程(リーフ組立,塗装)≫
図5に示す第8工程(リーフ組立,塗装)では、板ばね装置1が組み立てられた後に塗装される。
リーフ組立の工程では、主板ばね20と2枚の補助板ばね21が積層されて親ばね2が組み立てられる。このとき、主板ばね20及び補助板ばね21は親ばねクリップ4で係止される。また、3枚の補助板ばね21が積層されて子ばね3が組み立てられる。このとき、3枚の補助板ばね21は子ばねクリップ5で係止される。そして、親ばね2に子ばね3が取り付けられてセンタボルト1bとボルトナット1cで締結固定され、板ばね装置1が組み立てられる。
また、塗装の工程では、組み立てられた板ばね装置1が塗装される。この工程では、スプレーガン112から塗料が板ばね装置1に吹き付けられ、板ばね装置1が塗装される。
なお、荷重試験等の各種試験が塗装工程の前に実施される場合もある。
第8工程におけるリーフ組立は、目玉部20aが形成された主板ばね20と、目玉部20aを有さない補助板ばね21を積層して板ばね装置1を組み立てる組立工程である。
【0052】
図4,5に示す第1工程から第8工程で組み立てられた板ばね装置1は、出荷に必要な検査の後に梱包されて出荷される。
【0053】
このように、本実施形態の板ばね装置1は、主に第1工程(図4参照)から第8工程(図5参照)までの8工程で生産される。第5工程は通常焼き戻し工程であって、主板ばね20及び補助板ばね21の疲れ強さを高めるために焼き戻しされる。
【0054】
図6は焼き戻しの加熱温度を示す図である。
なお、図6のグラフは縦軸が加熱温度(T)を示し横軸が経過時間(H)を示す。
鋼板は、高温(図6に示す温度th℃)で焼き戻しすると靭性は高くなるが疲れ強さが低下する。つまり、鋼板は、低温(図6に示す温度tl℃)で焼き戻ししたほうが高い疲れ強さを確保できる。しかしながら、疲れ強さの高い鋼板は靭性が低くなる。
【0055】
図2,3に示すように、目玉部20aにはブッシュ22aが圧入される。そして、ブッシュ22aの外径φD1は目玉部20aの内径φD2よりも若干大きく形成される。したがって、ブッシュ22aが圧入された目玉部20aは応力が残留した状態になる。また、前記したように、板ばね装置1は、目玉部20aが連結部になってシャーシ10(図1参照)に取り付けられる。そして、板ばね装置1には車軸11(図1参照)の荷重が入力される。このため、目玉部20aには、シャーシ10の前方支軸12a(図1参照)、又は、後方支軸13a(図1参照)から外力が入力される。
【0056】
このように、目玉部20aはブッシュ22aの圧入による応力が残留した状態であり、さらに、シャーシ10から外力が入力される。このため、目玉部20aは、疲労破壊や遅れ破壊が生じやすくなっている。
目玉部20aの疲労破壊や遅れ破壊を効果的に抑制するため目玉部20aは靭性が高いことが好ましい。そこで、本実施形態では、図5に示す第6工程(高温焼き戻し工程)で目玉部20aを第5工程よりも高温で焼き戻しして、目玉部20aの靭性を高める。
【0057】
図7は、目玉部を有する主板ばねの焼き戻しの工程を示すグラフである。
なお、図7のグラフは縦軸が加熱温度(T)を示し横軸が経過時間(H)を示す。
図4,5に示すように、板ばね装置1(図2参照)の生産工程において、目玉部20a(図2参照)が形成される主板ばね20(図2参照)は、第5工程と第6工程で焼き戻しされる。
そして、本実施形態の第5工程での焼き戻しでは主板ばね20の全体が焼き戻しされ、第6工程では目玉部20aが第5工程よりも高温で焼き戻しされる。
【0058】
図7に示すように、第5工程の焼き戻しでは、加熱温度が所定の温度(tl℃)に設定され、主板ばね20の全体が所定の時間(0〜h1秒)に亘って焼き戻し(通常焼き戻し)される。
第6工程では、加熱温度が所定の温度(th℃)に設定され、所定の時間(h1〜h2秒)に亘って、目玉部20aのみが部分的に焼き戻し(高温焼き戻し)される。第6工程における加熱温度(th℃)は第5工程における加熱温度(tl℃)よりも高く設定される(th>tl)。
【0059】
なお、第5工程における加熱温度(tl℃)および加熱時間(0〜h1秒)は、主板ばね20に要求される疲れ強さに応じて適宜決定される。また、第6工程における加熱温度(th℃)および加熱時間(h1〜h2秒)は、主板ばね20の目玉部20aに要求される靭性等に応じて適宜決定される。
また、図7に記載される太い破線は、第6工程で焼き戻しされない部分(主板ばね20の弾性部20b)の温度低下を示す。
【0060】
目玉部20a(図2参照)は、図7に示すように、第6工程において第5工程よりも高温で焼き戻しされることで靭性が高くなる。したがって、主板ばね20(図2参照)は、目玉部20aの靭性が弾性部20b(図3参照)の靭性よりも高くなり、目玉部20aの疲労破壊や遅れ破壊が抑制される。一方、主板ばね20の弾性部20bは第6工程で高温焼き戻しされず疲れ強さが高いままとなる。つまり、第5工程と第6工程の2つの工程で主板ばね20を焼き戻しする生産方法によって、弾性部20bの疲れ強さが高く目玉部20aの靭性が高い主板ばね20の生産が可能となる。
【0061】
なお、図5に示す第5工程から第6工程に移行するとき、主板ばね20は、焼き戻し炉108から部分加熱装置109に移される。この間、主板ばね20の温度が低下する。したがって、図7に示すように、第5工程から第6工程に移行するときに主板ばね20(目玉部20a)の温度が微減する。
【0062】
図8の(a)は目玉部を高周波加熱する部分加熱装置を示す図、(b)は目玉部を通電加熱する部分加熱装置を示す図である。
図5に示す第6工程(高温焼き戻し工程)では、目玉部20a(図2参照)のみを部分的に加熱する。そこで、第6工程では、図8の(a),(b)に一例を示す部分加熱装置109で目玉部20aが加熱される。
【0063】
部分加熱装置109は、目玉部20aのみを部分的に加熱可能な構成であればよく、構造や加熱方法は限定されない。
一例として、図8の(a)に、目玉部20aを高周波加熱する部分加熱装置109を示す。この部分加熱装置109は、コイル部109aと交流電源109bを有する。
【0064】
コイル部109aは主板ばね20の目玉部20aの内側に挿入されて、目玉部20aに沿って巻回される。交流電源109bはコイル部109aに所定の周波数で交流電流を通電する。コイル部109aにおいて電磁誘導による磁力が発生し、この磁力によって目玉部20aに渦電流が生じる。そして、渦電流によるジュール熱で目玉部20aが加熱される。ジュール熱は渦電流が発生している領域に発生するため、目玉部20aに挿入されるコイル部109aを有する部分加熱装置109では目玉部20aのみが部分的に加熱される。
【0065】
板ばね装置1(図2参照)の生産工程における第6工程(図5参照)では、主板ばね20の目玉部20aが、図7に示す所定の温度(th℃)まで加熱されるような電圧の交流電流を部分加熱装置109の交流電源109bからコイル部109aに通電する。この状態を、図7に示す所定の時間(h1〜h2秒)に亘って維持する。その後、目玉部20aを冷却(徐冷)する。
【0066】
また、他の一例として、図8の(b)に、目玉部20aを通電加熱する部分加熱装置109を示す。この部分加熱装置109は、一対の電極109cと直流電源109dを有する。一対の電極109cは主板ばね20の目玉部20aの両端に装着される。
【0067】
直流電源109dは、目玉部20aに装着された電極109cに直流電流を通電する。目玉部20aでは一方の電極109cから他方の電極109cに直流電流が通電する。このとき、目玉部20aは自身が有する抵抗で発熱する。これによって、目玉部20aが部分的に加熱される。
【0068】
板ばね装置1(図2参照)の生産工程における第6工程(図5参照)では、主板ばね20の目玉部20aが、図7に示す所定の温度(th℃)まで加熱されるような電圧の直流電流を部分加熱装置109の直流電源109dから電極109cに通電する。この状態を、図7に示す所定の時間(h1〜h2秒)に亘って維持する。その後、目玉部20aを冷却(徐冷)する。
【0069】
このように、本実施形態の板ばね装置1は、図2に示すように、1枚の主板ばね20と2枚の補助板ばね21が積層された親ばね2と、3枚の補助板ばね21が積層された子ばね3とを有する。
親ばね2には、目玉部20aを有する主板ばね20が積層されている。
主板ばね20は、生産工程において、図7に示す所定の温度(tl℃)まで加熱されて全体が焼き戻しされる(図5に示す第5工程)。さらに、目玉部20aは、図7に示す所定の温度(th℃)まで加熱されて焼き戻しされる(図5に示す第6工程)。第6工程での加熱温度(th℃)は第5工程での加熱温度(tl℃)よりも高温に設定される。
【0070】
したがって、目玉部20a(図2参照)は、主板ばね20(図2参照)の他の部分(弾性部20b)よりも高温で焼き戻しされて靭性が高くなる。
目玉部20aの靭性が高くなると、ブッシュ22a(図2参照)が圧入されることで目玉部20aに残留する応力に対する耐久性が高くなって遅れ破壊が抑制される。特に、市場での遅れ破壊が抑制される。
また、目玉部20aは、シャーシ10の前方支軸12a(図1参照)、及び後方支軸13a(図1参照)から入力される外力に対する耐久性が高くなって疲労破壊が抑制される。特に、市場における長期間経過後の疲労破壊が抑制される。
【0071】
一方、主板ばね20の目玉部20a以外の部分(弾性部20b)は高温で焼き戻しされないので疲れ強さが高い。したがって、厚みが薄い主板ばね20であっても市場で要求される高い疲れ強さが得られ、市場における耐久強度を高めることができる。
【0072】
また、補助板ばね21は、第5工程での焼き戻し(図7に示すtl℃での焼き戻し)によって疲れ強さが高められ高温で焼き戻しされない。したがって、厚みが薄い補助板ばね21であっても市場で要求される高い疲れ強さが得られる。
そして、このような主板ばね20と補助板ばね21が積層された板ばね装置1(図2参照)を車両の懸架装置に使用した場合には、耐久強度の高い懸架装置とすることができ、市場投入されてから長期間経過後の疲労破壊や遅れ破壊の発生が大幅に低減する。
【0073】
このように、板ばね装置1(図2参照)は、厚みの薄い主板ばね20と補助板ばね21を積層して構成可能であり、板ばね装置1の効果的な軽量化が可能となる。
【0074】
図9の(a)は主板ばねにおいてブリネル硬さを計測した計測点を示す図であり、(b)は各計測点におけるブリネル硬さ(HBW)を示す一覧表であり、(c)は各計測点におけるブリネル硬さ(HBW)を示すグラフである。
なお、図9の(c)のグラフは、縦軸がブリネル硬さ(HBW)を示し、横軸が計測点を示している。
図4,5に示す板ばね装置1(図2参照)の生産工程(第1工程〜第8工程)で生産された板ばね装置1の主板ばね20のブリネル硬さ(HBW)を、図9の(a)に示す計測点A1〜A8,B1〜B6で計測した結果を図9の(b),(c)の「NEW」に示す。
なお、計測点A1〜A8は目玉部20aにおける計測点であり、計測点B1〜B6は弾性部20bにおける計測点である。
また、図9の(b),(c)における「SP1」は、図5に示す第5工程で全体を通常焼き戻しして第6工程で高温焼き戻ししないサンプル1のブリネル硬さ(計測点A1〜A8,B1〜B6)を示す比較データであり、「SP2」は、図5に示す第6工程で全体を高温焼き戻ししたサンプル2のブリネル硬さ(計測点A1〜A8,B1〜B6)を示す比較データである。なお、図9の(c)において、サンプル1(SP1)は破線で示し、サンプル2(SP2)は一点鎖線で示し、本実施形態(NEW)は実線で示す。
【0075】
各計測点の位置は、計測点B1が主板ばね20の中心とし、計測点B2〜B6が計測点B1から弾性部20bを等分した位置とする。また、計測点A1〜A8が目玉部20aの円形を等分した位置とする。
【0076】
図9の(b),(c)に示すように、図5に示す第5工程で全体を通常焼き戻しして第6工程で高温焼き戻ししないサンプル1(SP1)は、全ての計測点A1〜A8,B1〜B6のブリネル硬さが438HBW〜451HBWとなった。
このような主板ばね20は、全体的に疲れ強さが高いが目玉部20aの靭性が低いため、疲労破壊や遅れ破壊が生じやすい目玉部20aとなる。
【0077】
一方、図5に示す第5工程で全体を通常焼き戻しして、さらに、第6工程で全体を高温焼き戻ししたサンプル2(SP2)は、全ての計測点A1〜A8,B1〜B6のブリネル硬さが464HBW〜471HBWとなった。
このような主板ばね20は、全体的に靭性が高いので目玉部20aの疲労破壊や遅れ破壊は抑制できるが、弾性部20bの疲れ強さが弱くなる。
【0078】
本実施形態の生産方法(板ばね装置の生産方法)で生産した主板ばね20は、図9の(b),(c)に示すように、目玉部20aの計測点A1〜A8でブリネル硬さが438HBW〜444HBWとなり、弾性部20bの計測点B1〜B6でブリネル硬さが471HBW〜477HBWとなった。
つまり、図5に示す第5工程で主板ばね20の全体を通常焼き戻しした後で、第6工程において目玉部20aのみを高温焼き戻しすることで、ブリネル硬さが弾性部20bより低い目玉部20aとすることができる。
したがって、本実施形態の生産方法(板ばね装置の生産方法)によると、目玉部20aの靭性が高く、且つ、弾性部20bの疲れ強さが高い主板ばね20(板ばね装置1)を生産できる。
【0079】
図9の(a)〜(c)には、中心(計測点B1)に対して一方の半身における計測点と計測値が記載されているが、図示しない他方の半身においてもブリネル硬さは、ほぼ同等に分布している。
【0080】
なお、主板ばね20は、目玉部20aにおいてはブリネル硬さが461HBW以下であれば商品として充分な靭性であり、弾性部20bにおいてはブリネル硬さが461HBWより高ければ商品として充分な疲れ強さであることがわかっている。したがって、本実施形態の生産方法で得られた、目玉部20a(ブリネル硬さ:438HBW〜444HBW)及び弾性部20b(ブリネル硬さ:471HBW〜477HBW)は、商品として必要な性能を充分に満たしている。
【0081】
なお、本発明は、発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜設計変更が可能である。
例えば、図5に示す第7工程での下塗りは、主板ばね20及び補助板ばね21が、下塗り塗装用の塗料で満たされた容器に浸けこまれる工程であってもよい。同様に、図5に示す第8工程での塗装は、板ばね装置1が、塗装用の塗料で満たされた容器に浸けこまれる工程であってもよい。
【0082】
また、目玉部20a(図3参照)は、主板ばね20(図3参照)の端部が内側上方に向かって円形に巻かれた形状に限定されない。目玉部20aは、主板ばね20の端部が内側下方に向かって円形に巻かれた形状であってもよい。さらに、目玉部20aは円形に限定されず、矩形など他の形状に形成されていてもよい。
【0083】
また、補助板ばね21(図2参照)が備わらず、1枚の主板ばね20(図2参照)のみからなる板ばね装置1(図2参照)であってもよいし、1枚以上の補助板ばね21が主板ばね20に積層された板ばね装置1であってもよい。
【0084】
また、主板ばね20(図3参照)及び補助板ばね21(図2参照)の素材(鋼材)はSUP9(ばね鋼鋼材)に限定されない。SUP9以外の鋼板を素材とする場合、目玉部20a(図2参照)及び弾性部20b(図2参照)のブリネル硬さ(HBW)は、素材とする鋼板の特性に応じて適宜設定される。なお、どのような素材の鋼板からなる主板ばね20であっても、弾性部20bは、ブリネル硬さが461HBWより高ければ商品として充分な疲れ強さが備わり、目玉部20aは、ブリネル硬さが461HBW以下であれば商品として充分な靭性(耐久性)が備わる、とすることができる。
【符号の説明】
【0085】
1 板ばね装置
20 主板ばね(板ばね)
20a 目玉部(連結部)
20b 弾性部
21 補助板ばね(板ばね)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9