(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-100132(P2017-100132A)
(43)【公開日】2017年6月8日
(54)【発明の名称】酸化触媒およびそれを用いた排気ガス浄化システム
(51)【国際特許分類】
B01J 23/44 20060101AFI20170512BHJP
B01J 35/04 20060101ALI20170512BHJP
B01D 53/94 20060101ALI20170512BHJP
F01N 3/10 20060101ALI20170512BHJP
F01N 3/28 20060101ALI20170512BHJP
F01N 3/035 20060101ALI20170512BHJP
F01N 3/08 20060101ALI20170512BHJP
【FI】
B01J23/44 A
B01J35/04 301
B01D53/94 222
F01N3/10 A
F01N3/28 301Q
F01N3/28 301E
F01N3/035 E
F01N3/08 B
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2017-26378(P2017-26378)
(22)【出願日】2017年2月15日
(62)【分割の表示】特願2012-234906(P2012-234906)の分割
【原出願日】2007年11月29日
(31)【優先権主張番号】特願2006-322490(P2006-322490)
(32)【優先日】2006年11月29日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】312016218
【氏名又は名称】ユミコア日本触媒株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】395016659
【氏名又は名称】ユミコア ショクバイ ユーエスエー インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】池田 正憲
(72)【発明者】
【氏名】加藤 尚弘
【テーマコード(参考)】
3G091
3G190
4D148
4G169
【Fターム(参考)】
3G091AA02
3G091AA17
3G091AA18
3G091AA19
3G091AB02
3G091AB04
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3G091EA17
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3G091GA18
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3G091GB01W
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3G091GB09W
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3G190CB18
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3G190CB23
3G190CB25
3G190CB26
3G190DA03
4D148AA06
4D148AB01
4D148BA03X
4D148BA30X
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4D148BA41X
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4G169AA03
4G169BA01A
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4G169BC72A
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4G169EB12Y
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4G169FB06
4G169FB23
4G169FB30
4G169FC08
(57)【要約】
【課題】低温域であっても効率よくNOからNO
2への酸化を促進させる酸化触媒を提供
すること、また低温域であっても効率よく排気ガス成分を除去する排気ガス浄化システム
およびその方法を提供すること。
【解決手段】一酸化窒素から二酸化窒素への酸化を促進させる、白金およびパラジウムを
触媒活性成分として含有する酸化触媒であって、前記白金100質量%に対して前記パラ
ジウムを1〜55質量%含むことを特徴とする酸化触媒。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一酸化窒素から二酸化窒素への酸化を促進させる、白金およびパラジウムを触媒活性成
分として含有する酸化触媒であって、前記白金100質量%に対して前記パラジウムを1
〜55質量%含むことを特徴とする酸化触媒。
【請求項2】
前記触媒活性成分が耐火性無機酸化物に担持されてなる触媒活性成分担持無機酸化物が
さらに三次元構造体に担持されてなる請求項1に記載の酸化触媒。
【請求項3】
前記耐火性無機酸化物が、活性アルミナ、アルミナ−シリカ、ジルコニア、チタニアお
よびゼオライトからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1または2に記載の
酸化触媒。
【請求項4】
前記三次元構造体がハニカム構造体である請求項1〜3のいずれか1項に記載の酸化触
媒。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の酸化触媒を内燃機関の排気通路に備えることを特
徴とする、排気ガス浄化システム。
【請求項6】
前記排気通路の前記酸化触媒の後段に還元剤を供給する還元剤供給装置を備え、さらに
、前記排気通路の前記還元剤供給装置の後段にNOx還元触媒を備える、請求項5に記載
の排気ガス浄化システム。
【請求項7】
さらに、前記酸化触媒の後段にディーゼルパティキュレートフィルター、還元剤スリッ
プ抑制剤、尿素加水分解触媒、酸化触媒からなる群から選ばれる少なくとも1種を備える
、請求項5または6に記載の排気ガス浄化システム。
【請求項8】
前記還元剤が、尿素、アンモニア、軽油、ジメチルエーテル、メタノール、エタノール
およびプロパノールから選ばれる少なくとも1種である請求項5〜7のいずれか1項に記
載の排気ガス浄化システム。
【請求項9】
内燃機関から排出される排気ガスを浄化するための排気ガスの浄化方法であって、
(1)前記排気ガスを、請求項1〜4のいずれか1項に記載の酸化触媒と接触させるこ
とにより、前記排気ガス中の一酸化窒素を二酸化窒素に転化させる工程と、
(2)前記(1)で得られた排気ガスを、還元剤存在下にてNOx還元触媒と接触させ
て、前記排気ガス中の窒素酸化物を還元する工程とを有することを特徴とする、排気ガス
の浄化方法。
【請求項10】
さらに、(3)粒子状物質の少なくとも一部を除去する工程を有する、請求項9に記載
の排気ガスの浄化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化触媒およびそれを用いた排気ガス浄化システムに関するものである。詳
細には、ディーゼルエンジン等の内燃機関からの特に窒素酸化物の浄化性能に優れた排気
ガス浄化システムである。に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジンなどの内燃機関から排出される窒素酸化物を浄化する方法として、
排気ガスの流れに沿って還元触媒を配置し、還元触媒前方から供給された還元剤によって
還元触媒上でNOxを浄化処理する方法が注目されている。還元剤としてはアンモニア(
NH
3)、尿素((NH
2)
2CO)、軽油等の炭化水素などがある。上記いずれの還元
剤を用いてもNO
2を介してNOx浄化反応が進行することが知られている。例えば、尿
素により窒素酸化物が浄化される反応は主に以下の式(1)〜(4)のように進行するこ
とが知られており、式(2)はstandard−SCR(selective cat
alytic reduction)、式(3)はfast−SCRとして知られており
、式(2)は式(3)よりも遅い反応であることが知られている(非特許文献1)。
【0003】
式(3)はNOとNO
2とが等モルで反応するが、エンジンの低出力(低速)(すなわ
ち排気ガスが低温)時にはエンジンから排出される排気ガス中の窒素酸化物は大部分がN
Oである。このため、低温時においてはNO
2を生成させ、NO
2のNOに対するモル比
を1:1に近づけることで式(3)の反応が進行しやすくなると考えられる。
【0004】
【化1】
【0005】
NO
2を生成させるための技術としては、プラズマを利用する方法が知られており、排
気ガス中にてプラズマを発生させることにより生成した二酸化窒素およびオゾンを利用し
て、粒子状物質を低減させる方法が開示されている(特許文献1)。
【0006】
また、NO
2を生成させるための他の技術としては、上記式(5)の反応を進行させる
酸化触媒を用いる技術がある。例えば、特許文献2では、ディーゼル微粒子(粒子状物質
)の除去を目的として排気ガス中のNOをNO
2に酸化するための触媒の活性成分として
、プラチナ(Pt)、パラジウム(Pd)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)など
が提案されているが、Pt以外に具体的なデータは開示されていない。なお、非特許文献
2では、Pd、Rh、イリジウム(Ir)、Ru触媒はNO酸化性能が低いことが示され
ており、特にAl
2O
3に担持されたPdはNO酸化率が0%であることが示されている
。
【0007】
一方、窒素酸化物の浄化方法として、特許文献3では、還元触媒の多くが、一酸化窒素
よりも二酸化窒素に対して高い活性を有することに着目し、NOの一部をPt触媒を用い
てNO
2に酸化して、その後に排ガスをアンモニアと一緒に還元触媒上に導く排気ガスの
浄化方法が提案されている。
【特許文献1】特開2004−169643号公報
【特許文献2】特開平1−318715号公報
【特許文献3】特開平2002−1067号公報
【非特許文献1】C.Scott Sluder,et al.,Low Temperature Urea Decomposition and SCR Performance,SAE paper,2005−01−1858
【非特許文献2】Barry J.Cooper,et al.,Role of NO in Diesel Particulate Emission Control,SAE paper,890404
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
窒素酸化物を効率よく除去するためには、上記式(1)〜(4)の反応が効率よく進行
することが必要である。高速走行時など排気ガス温度が高い場合には、式(2)の反応が
進行しやすいため、窒素酸化物は効率よく除去できる。一方、市街地走行時など排気ガス
温度が低い場合には、NO
2を生成させるために、式(5)の反応を進行させて式(3)
の反応を進行させることが望ましいことは上述した通りである。これに加えて低温条件下
では、式(2)の反応は進行しにくく、主に式(3)の反応が進行するため、NO
2を生
成させることが重要な課題となる。しかしながら、低温条件下では、上記特許文献2や特
許文献3に記載のPt触媒を用いたとしても式(5)の反応の進行が遅く、十分な窒素酸
化物や粒子状物質の浄化効果が得られなかった。また、排出されるガスが低温の場合、従
来の方法ではさらに排気ガスを高温に上昇させる必要があり、システムが煩雑となる場合
があった。
【0009】
また、式(4)で示されるNO
2の浄化反応は比較的低温でも進行するため、排気ガス
が低温の場合にNOをNO
2に転化させる酸化触媒の要求は一層高まる。
【0010】
さらに、特許文献1のように、NO
2を別途発生させる装置を設けることは、プラズマ
発生装置およびその周辺機器を設置する必要があり、装置コストと電力コストなどが高く
なるなどの問題があるとともに、充分な車載空間が必要であるため自動車などには適して
いない。
【0011】
したがって、本発明の目的は、低温域であっても効率よくNOからNO
2への酸化を促
進させる酸化触媒を提供することにある。
【0012】
さらに、本発明の他の目的は、低温域であっても効率よく窒素酸化物または粒子状物質
を除去する排気ガス浄化システムおよびその方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記課題を解決するため、鋭意検討を行った結果、白金およびパラジウ
ムを触媒活性成分として含有する酸化触媒であって、前記白金100質量%に対して前記
パラジウムを1〜55質量%含む酸化触媒によれば、低温域であっても効率よくNOから
NO
2への酸化が促進されることを見出し、本発明を完成させた。
【0014】
すなわち、本発明は、一酸化窒素から二酸化窒素への酸化を促進させる、白金およびパ
ラジウムを触媒活性成分として含有する酸化触媒であって、前記白金100質量%に対し
て前記パラジウムを1〜55質量%含むことを特徴とする酸化触媒を提供する。
【0015】
また、本発明は、一酸化窒素から二酸化窒素への酸化を促進させる、白金およびパラジ
ウムを触媒活性成分として含有する酸化触媒であって、前記白金100質量%に対して前
記パラジウムを1〜55質量%含む酸化触媒を内燃機関の排気通路に備えることを特徴と
する、排気ガス浄化システムを提供する。
【0016】
さらに、本発明は、内燃機関から排出される排気ガスを浄化するための排気ガスの浄化
方法であって、(1)前記排気ガスを、白金およびパラジウムを触媒活性成分として含有
する酸化触媒であって、前記白金100質量%に対して前記パラジウムを1〜55質量%
含む酸化触媒と接触させることにより、前記排気ガス中の一酸化窒素を二酸化窒素に転化
させる工程と、(2)前記(1)で得られた排気ガスを、還元剤存在下にてNOx還元触
媒と接触させて、前記排気ガス中の窒素酸化物を還元する工程と、を有することを特徴と
する、排気ガスの浄化方法を提供する。
【0017】
さらに、本発明は、内燃機関から排出される排気ガスを浄化するための排気ガスの浄化
方法であって、(1)前記排気ガスを、白金およびパラジウムを触媒活性成分として含有
する酸化触媒であって、前記白金100質量%に対して前記パラジウムを1〜55質量%
含む酸化触媒と接触させることにより、前記排気ガス中の一酸化窒素を二酸化窒素に転化
させる工程と、(2)前記(1)で得られた排気ガスを、還元剤存在下にてNOx還元触
媒と接触させて、前記排気ガス中の窒素酸化物を還元する工程と、(3)粒子状物質の少
なくとも一部を除去する工程と、を有することを特徴とする、排気ガスの浄化方法を提供
する。
【発明の効果】
【0018】
本発明の酸化触媒は、排気ガス温度が低温であってもNO
2を生成できるため、NO
2
を利用して反応が進行する物質に対して、排気ガス温度が低い場合においても効率よく反
応を進行させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の第一実施形態は、一酸化窒素から二酸化窒素への酸化を促進させる、白金およ
びパラジウムを触媒活性成分として含有する酸化触媒であって、前記白金100質量%に
対して前記パラジウムを1〜55質量%含むことを特徴とする酸化触媒である。
【0020】
上述したように、NOからNO
2への酸化を促進させる触媒活性成分として、例えば特
許文献2にはPt、Pd、Ru、Rhなどが記載されている。しかしながら、特許文献2
に具体的に効果が示されているのは、Ptのみを活性成分とする触媒である。Pdを単独
で触媒活性成分として用いた場合には、非特許文献2に記載されているようにPt単独の
場合と比較してNOの酸化活性が著しく低いため、通常はPtをNO
2生成のための活性
成分として用いていた。本発明はPtおよびPdを組み合わせることにより相乗的に触媒
が二酸化窒素生成促進効果を発揮することを見出し、さらにPtおよびPdの含有量を特
定することにより低温条件下でも酸化触媒が効果的に作用する範囲を見出したものである
。また、長期間触媒を使用した後でも十分な活性を示す。
【0021】
PtとPdとの含有質量比は、Pt100質量%に対して、Pdが1〜55質量%であ
る。さらに、PtとPdとの含有質量比は、Pt100質量%に対して、Pdが1〜45
質量%、1〜35質量%、1〜20質量%、4〜20質量%、4〜12質量%、5〜12
%の順で好ましい。この範囲でPtとPdとを含有する酸化触媒は、低温域であってもN
OからNO
2への転化を非常に効率よく進行させる。
【0022】
PtおよびPdの使用量(合計量)は、三次元構造体1リットル当たり、好ましくは0
.1〜20g、より好ましくは0.5〜10gである。この範囲であれば、初期および耐
久後の触媒活性に優れるので好ましい。
【0023】
本発明の酸化触媒は、上記Pt、Pdを上記特定の割合で含む限り、他の金属およびそ
の酸化物を触媒活性成分として含んでいてもよい。具体的には、ルテニウム、ロジウム、
イリジウム、金、コバルト、ニッケル、銅等の金属、およびこれらの合金等などから選択
される。Pt、Pd以外の他の金属およびその酸化物の含有量は、触媒活性成分100質
量%に対して、通常、0〜2000質量%である。
【0024】
本発明の酸化触媒は、触媒活性成分が耐火性無機酸化物に担持されてなる触媒活性成分
担持無機酸化物がさらに三次元構造体に担持されてなる構成を有することが好ましい。
【0025】
耐火性無機酸化物に担持されてなる触媒活性成分は、特に限定されるものではないが、
触媒金属粒子として存在することが好ましく、その平均粒径は、1〜50nmであること
が好ましい。
【0026】
本発明に用いられうる耐火性無機酸化物としては、通常、触媒担体として用いられるも
のであれば特に限定されず、例えば、α、γ、δ、η、θなどの活性アルミナ、ジルコニ
ア、チタニア、ゼオライト、シリカまたはこれらの複合酸化物、例えば、アルミナ−シリ
カ、アルミナ−チタニア、アルミナ−ジルコニア、チタニア−ジルコニアなどを用いるこ
とができる。触媒性能の向上の観点からは、活性アルミナ、アルミナ−シリカ、ジルコニ
ア、チタニアおよびゼオライトが好ましく、より好ましくは、活性アルミナである。上記
無機酸化物は単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。なお、耐火性無機酸
化物の形状としては、粉末であることが好ましい。
【0027】
耐火性無機酸化物の使用量(活性成分を除く)は、三次元構造体1リットルあたり、1
0〜300gであることが好ましく、20〜150gであることがより好ましい。この範
囲であれば、貴金属が十分に分散され、満足のいく耐久性が得られため好ましい。
【0028】
耐火性無機酸化物のBET比表面積は、好ましくは50〜750m
2/gであり、より
好ましくは150〜750m
2/gである。また、耐火性無機酸化物粉末の平均一次粒径
は0.5〜150μm、好ましくは1〜100μmである。
【0029】
本発明に用いられる三次元構造体としては、ハニカム担体などの耐熱性担体が挙げられ
るが、中でも一体成型のハニカム構造体が好ましく、例えば、モノリスハニカム担体、メ
タルハニカム担体、プラグハニカム担体、ペレット担体等を挙げることができる。
【0030】
モノリス担体としては、通常、セラミックハニカム担体と称されるものであればよく、
特に、コージェライト、ムライト、α−アルミナ、ジルコニア、チタニア、リン酸チタン
、アルミニウムチタネート、ベタライト、スポンジュメン、アルミノシリケート、マグネ
シムシリケートなどを材料とするハニカム担体が好ましく、なかでもコージェライト質の
ものが特に好ましい。その他、ステンレス鋼、Fe−Cr−Al合金などの酸化抵抗性の
耐熱性金属を用いて三次元構造体としたものが用いられる。
【0031】
これらのモノリス担体は、押出成型法やシート状素子を巻き固める方法などで製造され
る。そのガス通過口(セル形状)の形は、六角形、四角形、三角形またはコルゲーション
形のいずれであってもよい。セル密度(セル数/単位断面積)は100〜600セル/平
方インチであれば十分に使用可能であり、好ましくは200〜500セル/平方インチで
ある。
【0032】
本発明の酸化触媒は、カリウム等のアルカリ金属、マグネシウム、バリウム等のアルカ
リ土類金属、ランタン、セリウム等の希土類金属、およびそれらの酸化物、またはゼオラ
イトを含有していてもよく、これらの含有量は三次元構造体1リットルあたり、通常0〜
100gである。
【0033】
本発明の酸化触媒の製造方法は、特に限定されるものではないが、以下に具体的に例示
として述べる。
【0034】
まず、Pt、Pdの出発原料としてPt、Pdの塩化物(ハロゲン塩)、硝酸塩、硫酸
塩、アンモニウム塩、アミン、炭酸塩、重炭酸塩、亜硝酸塩、シュウ酸塩などの無機塩類
、蟻酸塩などのカルボン酸塩および水酸化物、アルコキサイド、酸化物など、好ましくは
塩化物、硝酸塩、アンモニウム塩、アミン、炭酸塩を準備する。具体的には、活性成分が
Ptである場合、ジニトロジアンミン白金、塩化白金酸(ヘキサクロロ白金酸)、硝酸白
金などが挙げられ、Pdである場合、硝酸パラジウム、塩化パラジウムなどが挙げられる
。上記出発原料と、耐火性無機酸化物粉末と、を湿式粉砕して水性スラリーを調製する。
このスラリーを三次元構造体にコートし、通常50〜150℃で30分〜8時間乾燥させ
た後、通常300〜800℃、好ましくは400〜600℃で15分〜2時間、好ましく
は30分〜1時間焼成することにより本発明の酸化触媒が得られる。かようにして得られ
た酸化触媒の触媒活性成分の金属粒子径を1〜50nmにすることにより、酸化性能に優
れた触媒を得ることができる。金属粒子径が1nmより小さいと担体との相互作用により
、酸化性能が低下するため好ましくなく、50nmより大きいと金属表面積の減少により
触媒反応に使用される金属原子数が減少するため好ましくない。
【0035】
本発明の第二実施形態は、本発明の第一実施形態の酸化触媒を内燃機関の排気通路に備
える排気ガス浄化システムである。上述の通り、本発明の第一実施形態の酸化触媒は、低
温域であっても効率よくNOをNO
2に転化するため、本発明の第二の排気ガス浄化シス
テムは、低温条件下であっても効率よく窒素酸化物を除去することができる。
【0036】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明するが、本発明の技術的範囲は特
許請求の範囲の記載に基づいて定められるべきであり、以下の形態のみには制限されない
。
【0037】
図2は、本発明の第二実施形態の浄化システムの一実施形態を示す概略図である。
図2
の浄化システムは、内燃機関の排気通路に酸化触媒2、酸化触媒の後段に還元剤を供給す
る還元剤供給装置(還元剤インジェクションノズル8、ポンプ9、還元剤タンク10)、
さらに、還元剤供給装置の後段の排気通路にNOx還元触媒3を備える。また、制御装置
4によって、内燃機関1およびポンプ9は制御される。また、制御装置4は、熱電対5〜
7とともに温度制御装置を構成する。
【0038】
内燃機関1から排出される排気ガスは排気通路を通じて、排気通路上に配置された酸化
触媒2に導入される。排気ガスには、窒素酸化物としてNOおよびNO
2が含まれるが、
低温条件下ではNOが大部分を占める。酸化触媒2との接触により、排気ガス中のNOが
NO
2に転化する反応が進行する。
【0039】
次に、還元剤タンク10に貯蔵される還元剤が、ポンプ9の作動により還元剤インジェ
クションノズル8から排気通路に供給される。
【0040】
還元剤としては、アンモニア、尿素、軽油等の炭化水素、炭素数1〜3のアルコール、
炭素数2〜6のエーテルを用いることができるが、取り扱いの観点から、尿素、軽油、ジ
メチルエーテル、メタン、エタン、プロパン、ヘキサン、エチレン、プロピレン、ヘキセ
ン、ガソリン、灯油、A重油、C重油、メタノール、エタノールおよびプロパノールから
選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましく、尿素、アンモニア、軽油、ジメチルエ
ーテル、メタノール、エタノールおよびプロパノールから選ばれる少なくとも1種を用い
ることがより好ましく、尿素、軽油、ジメチルエーテル、エタノールを用いることがさら
に好ましく、尿素、軽油を用いることが特に好ましい。尿素を用いる場合、
図3に示すよ
うにさらに後段に尿素加水分解触媒14を有する形態とすること、または後述するNOx
還元触媒に尿素加水分解機能を持たせることが好ましい。また、
図3に示すように尿素水
としてインジェクションノズル8から噴射することが好ましい。
【0041】
続いて排気通路に配置されたNOx還元触媒3上で、残存したNOおよびNO
2がN
2
へと転化される。以上のような複数の段階を含むシステムにより、低温条件下であっても
、排気ガス中の窒素酸化物の浄化が効率よく達成される。なお、
図3では、NOx還元触
媒3の後段に、還元剤スリップ抑制触媒11が配置されている。
【0042】
また、
図2の制御装置4、熱電対5〜7から構成される温度制御装置によって、各段階
の排気ガスの温度を制御することができる。排気ガスの温度は、酸化触媒2への導入前は
好ましくは140℃以上、より好ましくは160℃以上に制御するとよい。
【0043】
また、還元触媒3への導入前の排気ガスの温度は、還元剤が尿素である場合、好ましく
は135℃以上、より好ましくは160℃以上に制御するとよい。かような温度範囲であ
れば、下記式(6)の尿素の熱分解反応または、下記式(7)の尿素の熱分解反応によっ
て生成したイソシアン酸の加水分解反応が進行しやすいため好ましい。
【0044】
【化2】
【0045】
さらに、還元剤が炭化水素である場合、NOx還元触媒3への導入前の排気ガスの温度
は、炭化水素成分の沸点以上になることが好ましく、還元剤として軽油を用いる場合には
200℃以上、より好ましくは250〜550℃に制御するとよい。かような温度範囲で
あれば液状炭化水素の還元触媒表面への付着が起こり難く、効率よくNOxが浄化できる
ため好ましい。
【0046】
NOx還元触媒としては、通常公知のものであれば、特に制限されず、搭載される車両
重量、エンジン排気量などによって適宜選択すればよい。還元剤として尿素を用いる場合
は、特定の遷移金属と交換されたゼオライト触媒を用いることが好ましい。また、還元剤
として軽油などの炭化水素、炭素数1〜3のアルコール、炭素数2〜6のエーテルを用い
る場合には、300℃以下の低温域では、Pt、Pd、Rhなどの貴金属をアルミナ、シ
リカ、アルミナ−シリカなどの無機担体に担持したものを用いることが好ましく、300
℃以上の高温域では、特定の遷移金属と交換されたゼオライト触媒を用いることが好まし
い。
【0047】
遷移金属と交換されたゼオライト触媒は、三次元構造体に担持されることが好ましい。
三次元構造体としては、前述の酸化触媒の欄で述べたものを使用できる。
【0048】
遷移金属としては、特に限定するものではないが、銅、鉄、セリウム、バナジウム、ク
ロム、ニッケル、およびそれらの酸化物などが挙げられ、好ましくは銅、鉄、バナジウム
およびそれらの酸化物である。
【0049】
遷移金属の使用量は、三次元構造体1リットルあたり、好ましくは1〜80g、より好
ましくは2〜40gである。この範囲であれば、初期および耐久後の触媒活性に優れるの
で好ましい。なお、遷移金属と交換されたゼオライトには、遷移金属がイオン交換された
形態のみであるゼオライトだけではなく、遷移金属とイオン交換された形態および遷移金
属に被覆されている形態が混在するゼオライトも含む。上記遷移金属の使用量は、イオン
交換された遷移金属およびゼオライト上に被覆された遷移金属の合計量を指す。
【0050】
用いられるゼオライトとしては特に限定されるものではないが、BEA型、MFI型、
FER型、FAU型、MOR型等を用いることができるが、好ましくはBEA型またはM
FI型のゼオライトである。
【0051】
ゼオライトの使用量(活性成分を除く)は、三次元構造体1リットルあたり、10〜3
00gであることが好ましく、50〜300gであることがより好ましい。この範囲であ
れば、遷移金属が十分に分散され、満足のいく耐久性が得られため好ましい。また、ゼオ
ライトのBET比表面積は好ましくは50〜750m
2/gであり、より好ましくは15
0〜750m
2/gである。また、ゼオライトの平均一次粒径は好ましくは0.5〜15
0μmであり、より好ましくは1〜100μmである。
【0052】
本発明に用いられるNOx還元触媒は、カリウム等のアルカリ金属、マグネシウム、バ
リウム等のアルカリ土類金属、ランタン、セリウム等の希土類、およびそれらの酸化物、
またはゼオライトを含有していてもよい。
【0053】
本発明で用いられうるNOx還元触媒の製造方法は特に限定されるものではないが、一
例として特定の遷移金属と交換されたゼオライト触媒の製造方法を以下に具体的に記載す
る。
【0054】
まず、遷移金属の出発原料として硝酸鉄、酢酸鉄、硫酸鉄などの遷移金属塩を準備する
。次に出発原料と、ゼオライトと、を湿式粉砕して水性スラリーを調製する。このスラリ
ーを三次元構造体にコートし、通常50〜150℃で30分〜8時間乾燥させた後、30
0〜800℃、好ましくは400〜600℃で15分〜2時間、好ましくは30分〜1時
間焼成することによりNOx還元触媒が得られる。
【0055】
また、本発明の浄化システムでは、本発明の第一実施形態の酸化触媒を用い、好ましく
は、酸化触媒の後段に還元剤供給装置を有し、さらに、還元剤供給装置の後段でNOx還
元触媒を有する形態であれば、種々の改良を包含するものである。例えば、NOx還元触
媒3の後段に還元剤スリップ抑制触媒11を含む形態(
図4)、NOx還元触媒3の後段
にディーゼルパティキュレートフィルター13を含む形態(
図8)、酸化触媒2の後段に
ディーゼルパティキュレートフィルター13を含む形態(
図5)、尿素加水分解触媒14
を含む形態(
図3)、およびそれらの組み合わせ(
図6および
図7)の形態が挙げられる
。
図5または
図6の実施形態では、NOx還元触媒3の後方に熱電対12が配置される。
【0056】
還元剤として尿素またはアンモニアを用いる場合は、
図4のように還元剤スリップ抑制
触媒11を有する形態が好ましい。なお、還元剤スリップ抑制触媒とは、余分なアンモニ
アの排出を防止する触媒を指し、従来公知の酸化触媒を使用することができる。
【0057】
また、ディーゼルパティキュレートフィルターにより粒子状物質の少なくとも一部を除
去することができる。ディーゼルパティキュレートフィルターを含む形態では、
図5また
は
図7で示されるように、ディーゼルパティキュレートフィルター13の前方に燃料イン
ジェクションノズル17、ポンプ18、燃料タンク19から構成される燃料供給装置を配
置してもよい。かような形態は、パティキュレート蓄積時にフィルターの再生処理を行う
必要がある。
図7のシステムを説明すると、燃料供給装置から、排気通路を通じて酸化触
媒16に燃料が供給され、パティキュレートの燃焼に必要な温度まで排気ガスを昇温させ
る制御が行われる。
図7の実施形態では、ディーゼルパティキュレートフィルター13の
後方に熱電対15が配置される。ディーゼルパティキュレートフィルターの再生に必要な
燃料は、上記のように排気通路に供給されてもよいし、エンジンシリンダー内での燃料燃
焼後、排気工程前に供給されてもよい。また、ディーゼルパティキュレートフィルターを
用いる場合には、ディーゼルパティキュレートフィルターの再生の観点から、ディーゼル
パティキュレートフィルターに導入される排気ガスの温度が低すぎないことが好ましく、
具体的には200℃以上であることが好ましい。ディーゼルパティキュレートフィルター
は、種々のものがあり、公知のものを使用でき、例えばコージエライト製フィルター、耐
熱性の高い炭化ケイ素製フィルター等がある。また、ディーゼルパティキュレートフィル
ターは、触媒成分を含有してもよい。該触媒成分は、特に限定されるものではないが、白
金、パラジウム、ロジウム、イリジウム、金、銀、鉄、銅、マンガンなどの触媒活性成分
のうち少なくとも1種を耐火性無機酸化物に担持したものが挙げられる。耐火性無機酸化
物としては、活性アルミナ、ジルコニア、チタニア、ゼオライト、シリカ、セリア、マグ
ネシア、シリカ−アルミナ、セリア−ジルコニアまたはこれらの混合物が挙げられる。触
媒活性成分量は、触媒1リットルあたり、好ましくは0.1〜10g、耐火性無機酸化物
量は、触媒1リットルあたり5〜100gである。
【0058】
還元剤スリップ抑制触媒、尿素加水分解触媒は、従来公知のものを使用することができ
る。
【0059】
本発明の第三実施形態は、内燃機関から排出される排気ガスを浄化するための排気ガス
の浄化方法であって、(1)前記排気ガスを、本発明の第一実施形態の酸化触媒と接触さ
せることにより、前記排気ガス中の一酸化窒素を二酸化窒素に転化させる工程と、(2)
前記(1)で得られた排気ガスを、還元剤存在下にてNOx還元触媒と接触させて、前記
排気ガス中の窒素酸化物を還元する工程と、を有することを特徴とする、排気ガスの浄化
方法である。好ましくは、さらに(3)粒子状物質の少なくとも一部を除去する工程を有
する。各工程の詳細は、前述の通りである。
【0060】
本発明の酸化触媒およびこれを用いた浄化システムにより、ディーゼルエンジンやガソ
リンエンジン、圧縮天然ガスエンジン等の種々の内燃機関により排出される窒素酸化物を
浄化することができるが、中でもディーゼルエンジンに対して好ましく適用され、またデ
ィーゼルエンジンを搭載した車両に好ましくは適用される。
【実施例】
【0061】
以下、実施例および比較例を用いて本発明の実施の形態をより詳細に説明するが、本発
明の技術的範囲は下記の形態のみには制限されない。
【0062】
(実施例1)
白金2.32gに相当する量のジニトロジアンミン白金水溶液20.4g、およびパラ
ジウム0.15gに相当する硝酸パラジウム水溶液1.1g、活性アルミナ(γ−Al
2
O
3、BET比表面積200m
2/g、平均一次粒径6μm)80gをボールミルにて湿
式粉砕することにより合計300gの水性スラリー(A)を調製した。このスラリーを断
面積1平方インチ当り400個のセルを有する直径24mmかつ長さ50mmのコージェ
ライト製円柱型ハニカム担体に被覆(ウォッシュコート)し、120℃で8時間乾燥した
のち、500℃で1時間の焼成を行い、ハニカム担体1リットル当たり白金、パラジウム
およびアルミナの合計が82.47gとなるように触媒Aを得た。
【0063】
(実施例2)
白金2.25gに相当する量のジニトロジアンミン白金水溶液19.8gおよびパラジ
ウム0.22gに相当する硝酸パラジウム水溶液1.57g、活性アルミナ(γ−Al
2
O
3、BET比表面積200m
2/g、平均一次粒径6μm)80gをボールミルにて湿
式粉砕することにより合計300gの水性スラリー(B)を調製した。このスラリーを断
面積1平方インチ当り400個のセルを有する直径24mmかつ長さ50mmのコージェ
ライト製円柱型ハニカム担体に被覆(ウォッシュコート)し、120℃で8時間乾燥した
のち、500℃で1時間の焼成を行い、ハニカム担体1リットル当たり白金、パラジウム
およびアルミナの合計が82.47gとなるように触媒Bを得た。
【0064】
(実施例3)
白金1.64gに相当する量のジニトロジアンミン白金水溶液14.4gおよびパラジ
ウム0.83gに相当する硝酸パラジウム水溶液5.92g、活性アルミナ(γ−Al
2
O
3、BET比表面積200m
2/g、平均一次粒径6μm)80gをボールミルにて湿
式粉砕することにより合計300gの水性スラリー(C)を調製した。このスラリーを断
面積1平方インチ当り400個のセルを有する直径24mmかつ長さ50mmのコージェ
ライト製円柱型ハニカム担体に被覆(ウォッシュコート)し、120℃で8時間乾燥した
のち、500℃で1時間の焼成を行い、ハニカム担体1リットル当たり白金、パラジウム
およびアルミナの合計が82.47gとなるように触媒Cを得た。
【0065】
(比較例1)
白金2.47gに相当する量のジニトロジアンミン白金水溶液21.8gおよび活性ア
ルミナ(γ−Al
2O
3、BET比表面積200m
2/g、平均一次粒径6μm)80g
をボールミルにて湿式粉砕することにより合計300gの水性スラリー(D)を調製した
。このスラリーを断面積1平方インチ当り400個のセルを有する直径24mmかつ長さ
50mmのコージェライト製円柱型ハニカム担体に被覆(ウォッシュコート)し、120
℃で8時間乾燥したのち、500℃で1時間の焼成を行い、ハニカム担体1リットル当た
り白金およびアルミナの合計が82.47gとなるように触媒Dを得た。
【0066】
(比較例2)
パラジウム2.47gに相当する量の硝酸パラジウム水溶液17.6gおよび活性アル
ミナ(γ−Al
2O
3、BET比表面積200m
2/g、平均一次粒径6μm)80gを
ボールミルにて湿式粉砕することにより合計300gの水性スラリー(E)を調製した。
このスラリーを断面積1平方インチ当り400個のセルを有する直径24mmかつ長さ5
0mmのコージェライト製円柱型ハニカム担体に被覆(ウォッシュコート)し、120℃
で8時間乾燥したのち、500℃で1時間の焼成を行い、ハニカム担体1リットル当たり
パラジウムおよびアルミナの合計が82.47gとなるように触媒Eを得た。
【0067】
(評価例1)
触媒A、B、C、D、およびEを700℃で11時間焼成したのち、それぞれに対して
、排気ガスとしてNO:300ppm、CO:300ppm,O
2:6%、プロパン:6
0ppm(メタン換算)、プロピレン:240ppm(メタン換算)、CO
2:6%、H
2O:6%および残り窒素よりなるガスを70000h
−1のS.V.(空間速度)で流
通させ、触媒入口および触媒層の温度が100℃から1分間に10℃の昇温速度で200
℃まで昇温させたときの一酸化窒素(NO)濃度および二酸化窒素(NO
2)濃度を測定
した。700℃11時間の焼成は、長期間使用後の触媒性能を評価するための耐久処理で
ある。下記式にてNOからNO
2への転化率を算出し、触媒入口温度に対してプロットし
た結果を
図1に示す。
【0068】
【数1】
【0069】
以上の結果から、本発明の酸化触媒は、PdとPtとを触媒活性成分として特定量含有
することによって、Ptのみを触媒成分として含有する酸化触媒よりもNOからNO
2へ
の転化率が高いことが示される。
【0070】
(実施例4)
白金3gに相当する量のジニトロジアンミン白金水溶液26.4gおよびパラジウム1
gに相当する硝酸パラジウム水溶液7.13g、活性アルミナ(γ−Al
2O
3、BET
比表面積200m
2/g、平均一次粒径6μm)120gをボールミルにて湿式粉砕する
ことにより合計300gの水性スラリー(F)を調製した。このスラリーを断面積1平方
インチ当り400個のセルを有する直径1インチかつ長さ3インチのコージェライト製円
柱型ハニカム担体に被覆(ウォッシュコート)し、120℃で8時間乾燥したのち、50
0℃で1時間の焼成を行い、ハニカム担体1リットル当たり白金、パラジウムおよびアル
ミナの合計が124gとなるように触媒Fを得た。
【0071】
(実施例5)
白金3.2gに相当する量のジニトロジアンミン白金水溶液28.2gおよびパラジウ
ム0.5gに相当する硝酸パラジウム水溶液3.57g、活性アルミナ(γ−Al
2O
3
、BET比表面積200m
2/g、平均一次粒径6μm)120gをボールミルにて湿式
粉砕することにより合計300gの水性スラリー(G)を調製した。このスラリーを断面
積1平方インチ当り400個のセルを有する直径1インチかつ長さ3インチのコージェラ
イト製円柱型ハニカム担体に被覆(ウォッシュコート)し、120℃で8時間乾燥したの
ち、500℃で1時間の焼成を行い、ハニカム担体1リットル当たり白金、パラジウムお
よびアルミナの合計が123.7gとなるように触媒Gを得た。
【0072】
(実施例6)
白金3.32gに相当する量のジニトロジアンミン白金水溶液29.3gおよびパラジ
ウム0.2gに相当する硝酸パラジウム水溶液1.43g、活性アルミナ(γ−Al
2O
3、BET比表面積200m
2/g、平均一次粒径6μm)120gをボールミルにて湿
式粉砕することにより合計300gの水性スラリー(H)を調製した。このスラリーを断
面積1平方インチ当り400個のセルを有する直径1インチかつ長さ3インチのコージェ
ライト製円柱型ハニカム担体に被覆(ウォッシュコート)し、120℃で8時間乾燥した
のち、500℃で1時間の焼成を行い、ハニカム担体1リットル当たり白金、パラジウム
およびアルミナの合計が123.52gとなるように触媒Hを得た。
【0073】
(比較例3)
白金3.4gに相当する量のジニトロジアンミン白金水溶液30.0gおよび活性アル
ミナ(γ−Al
2O
3、BET比表面積200m
2/g、平均一次粒径6μm)120g
をボールミルにて湿式粉砕することにより合計300gの水性スラリー(I)を調製した
。このスラリーを断面積1平方インチ当り400個のセルを有する直径1インチかつ長さ
3インチのコージェライト製円柱型ハニカム担体に被覆(ウォッシュコート)し、120
℃で8時間乾燥したのち、500℃で1時間の焼成を行い、ハニカム担体1リットル当た
り白金およびアルミナの合計が123.4gとなるように触媒Iを得た。
【0074】
(評価例2)
触媒F、G、HおよびIを700℃で16時間焼成したのち、それぞれに対して排気ガ
スとしてNO:175ppm、CO:20ppm、O
2:13.5%,プロパン:18p
pm(メタン換算)、プロピレン:72ppm(メタン換算)、CO
2:6%、H
2O:
5.1%および残り窒素よりなるガスを45000h
−1のS.V.(空間速度)で流通
させ、1分間に10℃の昇温速度で昇温した時の175℃における一酸化窒素(NO)か
ら二酸化窒素(NO
2)への転化率を測定したところ、表1の結果が得られた。700℃
16時間の焼成は、長期間使用後の触媒性能を評価するための耐久処理である。
【0075】
【表1】
【0076】
評価例2の結果(表1)から、貴金属量、ハニカム担体容量および排気ガス濃度を変更
して評価した場合にも、本発明の酸化触媒は、PdとPtとを触媒活性成分として特定量
含有することによって、Ptのみを触媒活性成分として含有する酸化触媒よりもNOから
NO
2への転化率が高いことが示される。
【0077】
(実施例7)
水性スラリー(F)を実施例4の15倍重量作製し、断面積1平方インチ当り300個
のセルを有する直径10.5インチかつ長さ6インチのコージェライト製円柱型ハニカム
担体に1リットル当り白金、パラジウムおよびアルミナの合計が124gとなるように被
覆(ウォッシュコート)し、120℃で8時間乾燥したのち、500℃で1時間の焼成を
行い、触媒Jを得た。
【0078】
(比較例4)
水性スラリー(I)を比較例3の15倍重量作製し、断面積1平方インチ当り300個
のセルを有する直径10.5インチかつ長さ6インチのコージェライト製円柱型ハニカム
担体に1リットル当り白金およびアルミナの合計が124gとなるように被覆(ウォッシ
ュコート)し、120℃で8時間乾燥したのち、500℃で1時間の焼成を行い、触媒K
を得た。
【0079】
(参考例1)
鉄48gに相当する量の硝酸鉄水溶液およびMFI型ゼオライト(BET比表面積38
0m
2/g、平均一次粒径15μm)1600gをボールミルにて湿式粉砕することによ
り合計4500gの水性スラリー(L)を調製した。このスラリーを断面積1平方インチ
当り400個のセルを有する直径10.5インチかつ長さ6インチのコージェライト製円
柱型ハニカム担体に1リットル当り鉄およびゼオライトの合計が164.8gとなるよう
に被覆(ウォッシュコート)し、120℃で8時間乾燥したのち、500℃で1時間の焼
成を行い、触媒Lを得た。
【0080】
(実施例8)
触媒Jを
図2に示すようにエンジン1の後方に設置し、該触媒の後方に還元触媒Lを配
置して排気ガス排出装置を作製した。内燃機関としては9.8Lの直噴ディーゼルエンジ
ンを用いた。
【0081】
(比較例5)
触媒Kを
図2に示すようにエンジン1の後方に設置し、該触媒の後方に還元触媒Lを配
置して排気ガス排出装置を作製した。内燃機関としては9.8Lの直噴ディーゼルエンジ
ンを用いた。
【0082】
(比較例6)
触媒Kの代わりに断面積1平方インチ当り300個のセルを有する直径10.5インチ
かつ長さ6インチのコージェライト製円柱型ハニカム担体を設置した以外は比較例5と同
様にして、排気ガス排出装置を作製した。内燃機関としては9.8Lの直噴ディーゼルエ
ンジンを用いた。
【0083】
(評価例3)
触媒J、Kおよび還元触媒Lを700℃で50時間焼成したのち、実施例8および比較
例5の排気ガス排出装置を用いてNOx転化率の評価を行った。700℃50時間の焼成
は、長期間使用後の触媒性能を評価するための耐久処理である。酸化触媒前方(比較例6
の場合は、還元触媒前方)の熱電対5が400℃となるようエンジンを回転させ、15分
間酸化触媒前方から排気ガスを流した。次に、酸化触媒前方の熱電対5が平均180℃お
よび平均200℃となるようにエンジンを回転させ、還元剤インジェクションノズル8か
ら32.5質量%の尿素水溶液を、熱電対5が平均180℃のときに1時間当たり平均1
40g、熱電対5が平均200℃のときに1時間当たり平均180gの流量で添加した。
それぞれの温度において酸化触媒前方および還元触媒後方(比較例6の場合は、ハニカム
担体前方および還元触媒後方)のNOx濃度を測定し、下記式にてNOx転化率を測定し
た。結果を表2に示す。
【0084】
【数2】
【0085】
【表2】
【0086】
(実施例9)
水性スラリー(A)を実施例1の5倍重量作製し、断面積1平方インチ当り400個の
セルを有する直径5.7インチかつ長さ6インチのコージェライト製円柱型ハニカム担体
に1リットル当り白金、パラジウムおよびアルミナの合計が124gとなるように被覆(
ウォッシュコート)し、120℃で8時間乾燥したのち、500℃で1時間の焼成を行い
、触媒Mを得た。
【0087】
(比較例7)
水性スラリー(D)を比較例1の5倍重量作製し、断面積1平方インチ当り400個の
セルを有する直径5.7インチかつ長さ6インチのコージェライト製円柱型ハニカム担体
に1リットル当り白金およびアルミナの合計が124gとなるように被覆(ウォッシュコ
ート)し、120℃で8時間乾燥したのち、500℃で1時間の焼成を行い、触媒Nを得
た。
【0088】
(実施例10)
触媒Mを2.2Lの直噴ディーゼルエンジンの後方に設置し、該触媒の後方に該エンジ
ンから排出された粒子状物質9gが蓄積された、断面積1平方インチ当り316個のセル
を有する直径5.2インチかつ長さ9インチのSiC製円柱型ディーゼルパティキュレー
トフィルターを配置して排気ガス排出装置を作製した。
【0089】
(比較例8)
触媒Nを2.2Lの直噴ディーゼルエンジンの後方に設置し、該触媒の後方に該エンジ
ンから排出された粒子状物質9gが蓄積された、断面積1平方インチ当り316個のセル
を有する直径5.2インチかつ長さ9インチのSiC製円柱型ディーゼルパティキュレー
トフィルターを配置して排気ガス排出装置を作製した。
【0090】
(評価例4)
実施例10および比較例7の排気ガス排出装置を用いて粒子状物質の除去率の評価を行
った。酸化触媒前方の熱電対が115℃から400℃まで100分で昇温させる前後にお
いて、ディーゼルパティキュレートフィルターの重量変化を測定し、ディーゼルパティキ
ュレートフィルター上の粒子状物質の残存重量を算出した。なお、ディーゼルパティキュ
レートフィルターの重量測定は、ディーゼルパティキュレートフィルターを150℃で1
時間乾燥した後に測定した。得られた粒子状物質の残存重量から下記式にて粒子状物質の
除去率を測定した。結果を表3に示す。
【0091】
【数3】
【0092】
【表3】
【0093】
評価例4の結果(表3)から、本発明の触媒は、ディーゼルパティキュレートフィルタ
ーに蓄積させた粒子状物質に対しても除去率が高いことが示される。
【0094】
(実施例11) 白金7.4gに相当する量のジニトロジアンミン白金水溶液65.7
gおよびパラジウム0.74gに相当する硝酸パラジウム水溶液5.27g、活性アルミ
ナ(γ−Al
2O
3、BET比表面積200m
2/g、平均一次粒径6μm)120gを
ボールミルにて湿式粉砕することにより合計300gの水性スラリー(O)を調製した。
このスラリーを断面積1平方インチ当り400個のセルを有する直径24mmかつ長さ6
7mmのコージェライト製円柱型ハニカム担体に被覆(ウォッシュコート)し、120℃
で8時間乾燥したのち、500℃で1時間の焼成を行い、ハニカム担体1リットル当たり
白金、パラジウムおよびアルミナの合計が32.04gとなるように触媒Oを得た。
【0095】
(実施例12)
白金7.4gに相当する量のジニトロジアンミン白金水溶液65.7gおよびパラジウ
ム0.37gに相当する硝酸パラジウム水溶液2.64g、活性アルミナ(γ−Al
2O
3、BET比表面積200m
2/g、平均一次粒径6μm)120gをボールミルにて湿
式粉砕することにより合計300gの水性スラリー(P)を調製した。このスラリーを断
面積1平方インチ当り400個のセルを有する直径24mmかつ長さ67mmのコージェ
ライト製円柱型ハニカム担体に被覆(ウォッシュコート)し、120℃で8時間乾燥した
のち、500℃で1時間の焼成を行い、ハニカム担体1リットル当たり白金、パラジウム
およびアルミナの合計が31.94gとなるように触媒Pを得た。
【0096】
(実施例13)
白金7.4gに相当する量のジニトロジアンミン白金水溶液65.7gおよびパラジウ
ム0.19gに相当する硝酸パラジウム水溶液1.32g、活性アルミナ(γ−Al
2O
3、BET比表面積200m
2/g、平均一次粒径6μm)120gをボールミルにて湿
式粉砕することにより合計300gの水性スラリー(Q)を調製した。このスラリーを断
面積1平方インチ当り400個のセルを有する直径24mmかつ長さ67mmのコージェ
ライト製円柱型ハニカム担体に被覆(ウォッシュコート)し、120℃で8時間乾燥した
のち、500℃で1時間の焼成を行い、ハニカム担体1リットル当たり白金、パラジウム
およびアルミナの合計が31.90gとなるように触媒Qを得た。
【0097】
(実施例14)
白金7.4gに相当する量のジニトロジアンミン白金水溶液65.7gおよびパラジウ
ム0.093gに相当する硝酸パラジウム水溶液0.66g、活性アルミナ(γ−Al
2
O
3、BET比表面積200m
2/g、平均一次粒径6μm)120gをボールミルにて
湿式粉砕することにより合計300gの水性スラリー(R)を調製した。このスラリーを
断面積1平方インチ当り400個のセルを有する直径24mmかつ長さ67mmのコージ
ェライト製円柱型ハニカム担体に被覆(ウォッシュコート)し、120℃で8時間乾燥し
たのち、500℃で1時間の焼成を行い、ハニカム担体1リットル当たり白金、パラジウ
ムおよびアルミナの合計が31.87gとなるように触媒Rを得た。
【0098】
(比較例9)
白金7.4gに相当する量のジニトロジアンミン白金水溶液65.7gおよび、活性ア
ルミナ(γ−Al
2O
3、BET比表面積200m
2/g、平均一次粒径6μm)120
gをボールミルにて湿式粉砕することにより合計300gの水性スラリー(S)を調製し
た。このスラリーを断面積1平方インチ当り400個のセルを有する直径24mmかつ長
さ67mmのコージェライト製円柱型ハニカム担体に被覆(ウォッシュコート)し、12
0℃で8時間乾燥したのち、500℃で1時間の焼成を行い、ハニカム担体1リットル当
たり白金およびアルミナの合計が31.85gとなるように触媒Sを得た。
【0099】
(評価例5)
触媒O、P、Q、RおよびSを700℃で50時間焼成したのち、それぞれに対して排
気ガスとしてNO:175ppm、CO:20ppm、O
2:13.5%、プロパン:1
8ppm(メタン換算)、プロピレン:72ppm(メタン換算)、CO
2:6%、H
2
O:5.1%および残り窒素よりなるガスを45000h
−1のS.V.(空間速度)で
流通させ、温度200℃における一酸化窒素(NO)から二酸化窒素(NO
2)への転化
率を測定したところ、表4の結果が得られた。700℃50時間の焼成は、長期間使用後
の触媒性能を評価するための耐久処理である。
【0100】
【表4】
【図面の簡単な説明】
【0101】
【
図2】本発明の排気ガス浄化システムの一例を示す概略図である。
【
図3】本発明の排気ガス浄化システムの一例を示す概略図である。
【
図4】本発明の排気ガス浄化システムの一例を示す概略図である。
【
図5】本発明の排気ガス浄化システムの一例を示す概略図である。
【
図6】本発明の排気ガス浄化システムの一例を示す概略図である。
【
図7】本発明の排気ガス浄化システムの一例を示す概略図である。
【
図8】本発明の排気ガス浄化システムの一例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0102】
1 内燃機関、
2、16 酸化触媒、
3 NOx還元触媒、
4 制御装置、
5〜7、12、15 熱電対、
8 還元剤インジェクションノズル、
9 ポンプ、
10 還元剤タンク、
11 還元剤スリップ抑制触媒、
13 ディーゼルパティキュレートフィルター、
14 尿素加水分解触媒、
17 燃料インジェクションノズル、
18 ポンプ、
19 燃料タンク。
【手続補正書】
【提出日】2017年3月16日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一酸化窒素から二酸化窒素への酸化を促進させる、白金およびパラジウムを触媒活性成分として含有する酸化触媒であって、前記白金100質量%に対して前記パラジウムを1〜55質量%含むことを特徴とする酸化触媒。