【実施例】
【0033】
以下に実施例を挙げ本発明についてさらに説明するが、本発明はこれらによって何ら限定されない。
【0034】
1.重合体の調製
(1)外層用重合体
[重合体A1]
重合に用いる固体触媒を、欧州特許第674991号公報の実施例1に記載された方法により調製した。当該固体触媒は、MgCl
2上にTiと内部ドナーとしてのジイソブチルフタレートを上記の特許公報に記載された方法で担持させたものである。当該固体触媒と、トリエチルアルミニウム(TEAL)およびジイソプロピルジメトキシシラン(DIPMS)を、固体触媒に対するTEALの重量比が11、TEAL/DIPMSの重量比が3.2となるような量で、−5℃で5分間接触させた。得られた触媒系を、液体プロピレン中において懸濁状態で20℃において5分間保持することによって予備重合を行った。
【0035】
得られた予備重合物を重合反応器に導入した後、水素とプロピレン、エチレンをフィードし、重合温度、水素濃度、エチレン濃度を、それぞれ75℃、0.12モル%、0.45モル%とし、圧力を調整することよって、プロピレンエチレン共重合体を製造した。当該重合体は1.7重量%のエチレンを含むポリプロピレンの共重合体である。当該重合体のパウダー100重量部に、核剤としてMillad 3988(ソルビトール系、ミリケンジャパン株式会社製)0.25重量部添加し、酸化防止剤としてBASF社製B225を0.2重量部、中和剤として淡南化学社製カルシウムステアレートを0.05重量部添加し、ヘンシェルミキサーで1分間撹拌して混合した。この混合物を、ナカタニ機械株式会社製NVCφ50mm単軸押出機を用いて、シリンダ温度230℃で押出し、ストランドを水中で冷却した後、ペレタイザーでカットしペレット状のプロピレン樹脂組成物を得て、重合体A1とした。重合体A1は核剤を含むポリプロピレン組成物である。
【0036】
[重合体A2]
上記重合体A1のパウダーを用い、核剤を添加しなかった以外は、重合体A1と同様にして重合体A2を得た。重合体A2は、核剤を含まないプロピレンエチレン共重合体であり、共重合体組成および特性(核剤によるものを除く)は重合体A1の共重合体組成および特性と同じである。
【0037】
[重合体A3]
ジイソプロピルジメトキシシラン(DIPMS)の代わりにシクロヘキシルメチルジエトキシシラン(CHMMS)を用い、固体触媒に対するTEALの質量比を8、TEAL/CHMMSの質量比を6.5とし、エチレンをフィードせず、水素濃度を0.024モル%とした以外は、重合体A1と同様にしてプロピレン単独重合体を製造した。得られた重合体のパウダー100重量部に、核剤としてMillad 3988の代わりにMillad NX8000J(ノニトール系、ミリケンジャパン株式会社製)を0.25重量部添加した以外は、重合体A1と同様にして重合体A3を得た。重合体A3は核剤を含むポリプロピレン組成物である。
【0038】
[重合体A4]
上記重合体A3のパウダーを用い、核剤を添加しなかった以外は、重合体A3と同様にして重合体A4を得た。重合体A4は、核剤を含まないプロピレン単独重合体であり、その特性(核剤によるものを除く)は重合体A3におけるプロピレン単独重合体の特性と同じである。
【0039】
(2)コア層用樹脂組成物
[重合体B1]
MgCl
2上にTiと内部ドナーとしてのジイソブチルフタレートを担持させた固体触媒を、欧州特許第728769号公報の実施例5に記載された方法により調製した。次いで、上記固体触媒と、有機アルミニウム化合物としてトリエチルアルミニウム(TEAL)と、外部電子供与体化合物としてジシクロペンチルジメトキシシラン(DCPMS)を用い、固体触媒に対するTEALの重量比が20、TEAL/DCPMSの重量比が10となるような量で、12℃において24分間接触させた。得られた触媒系を、液体プロピレン中において懸濁状態で20℃にて5分間保持することによって予備重合を行った。得られた予備重合物を、二段の重合反応器を直列に備える重合装置の一段目の重合反応器に導入し、プロピレンとエチレンをフィードし、プロピレンの液相状態にてプロピレンエチレン共重合体を製造し、二段目の気相重合反応器でエチレン・ブテン−1共重合体を製造した。重合中は、温度と圧力を調整し、水素を分子量調整剤として用いた。
【0040】
重合温度と反応物の比率は、一段目の反応器では、重合温度、エチレン濃度、水素濃度が、それぞれ70℃、0.84モル%、0.06モル%、二段目の反応器では、重合温度、H2/C2、C4/(C2+C4)が、それぞれ80℃、0.26モル比、0.48モル比であった。また、共重合体成分の量が18重量%となるように一段目と二段目の滞留時間分布を調整した。得られた重合体のパウダー100重量部に、核剤としてMillad 3988の代わりにアデカスタブNA−71(リン酸エステル系、株式会社ADEKA製)を0.25重量部添加した以外は、重合体A1と同様にして重合体B1を得た。重合体B1は核剤を含むポリプロピレン組成物である。
【0041】
[重合体B2]
上記重合体B1のパウダーを用い、核剤を添加しなかった以外は、重合体B1と同様にして重合体B2を得た。重合体B2は、核剤を含まない以外は重合体B1と同じ組成を有する組成物である。
【0042】
[重合体B3]
MgCl
2上にTiと内部ドナーとしてのジイソブチルフタレートを担持させた固体触媒を、欧州公開特許出願第674991号公報の実施例に記載された方法により調製した。次いで、上記固体触媒と、有機アルミニウム化合物としてトリエチルアルミニウム(TEAL)と、外部電子供与体化合物としてジシクロペンチルジメトキシシラン(DCPMS)を用い、TEAL/Tiのモル比が65、TEAL/DCPMSの重量比が約15となるような量で、−5℃において5分間接触させた。得られた触媒系を、液体プロピレン中において懸濁状態で20℃にて20分間保持することによって予備重合を行った。得られた予備重合物を、二段の気相重合反応器を直列に備える重合装置の一段目の気相重合反応器に導入してプロピレン単独重合体を製造した。一段目の反応器で製造されたプロピレンホモポリマーを、未反応モノマーを取り除いた後、二段目の気相重合反応器でエチレン・ブテン−1共重合体を製造した。重合中は、温度と圧力を調整し、水素を分子量調整剤として用いた。
【0043】
重合温度と反応物の比率は、一段目の反応器では、重合温度、H2/C3が、それぞれ70℃、0.0052モル比、二段目の反応器では、重合温度、H2/C2、C4/(C2+C4)が、それぞれ80℃、0.20モル比、0.35モル比であった。また、共重合体成分の量が70重量%となるように一段目と二段目の滞留時間分布を調整した。得られた重合体のパウダーを用い、核剤を添加しなかった以外は、重合体A1と同様にして重合体B3を得た。重合体B3は核剤を含まないポリプロピレン組成物である。
【0044】
[重合体C]
重合体B1の製造に用いた予重合物を、二段の重合反応器を直列に備える重合装置の一段目の重合反応器に導入してプロピレン単独重合体を製造し、二段目の重合反応器でエチレン−プロピレン共重合体を製造した。重合中は、温度と圧力を調整し、水素を分子量調整剤として用いた。一段目の反応器の水素濃度を0.12モル%、二段目の反応器の水素濃度、C2/(C2+C3)を、それぞれ1.13モル%、0.48モル比とし、共重合体成分の量が20重量%となるように一段目と二段目の滞留時間分布を調整して重合体のパウダーを得た。それ以外は、重合体B1と同様にして、核剤入りの重合体Cを得た。重合体Cは核剤を含むポリプロピレン組成物である。
【0045】
このようにして準備した重合体の組成を表1にまとめた。
【0046】
【表1】
【0047】
2.シートの製造
前述の重合体を、予め25mmφ3種3層フィルム・シート成形機(サーモ・プラスチック工業株式会社製)を用いて、成形温度230℃で成形し、厚み0.01〜0.9mmのフィルムまたはシートを得た後、外層用単層フィルムまたはシートおよびコア層用単層シートを製造した。これらを重ね合わせてさらにプレス成形して(170℃にて加圧10MPa×30秒、30℃冷却×150秒)、積層体(3層シート)を製造した(いずれも大きさ10cm×10cm以上)。3層シートの厚みは0.8〜0.9mmであった。
【0048】
3.分析および評価
(1)MFR
JIS K 7210に準じ、温度230℃、荷重21.18Nの条件下で測定した。
【0049】
(2)XSIV
サンプル2.5gを、o−キシレン(溶媒)を250ml入れたフラスコに入れ、ホットプレートおよび還流装置を用いて、135℃で、窒素パージを行いながら、30分間、撹拌し、サンプルを完全溶解した。その後、溶液を25℃で1時間冷却した。濾紙を用いて得られた溶液を濾過し、濾液を100ml採取し、アルミカップ等に移し、窒素パージを行いながら、150℃で蒸発乾固を行い、室温で30分間静置してキシレン可溶分を得た。ウベローデ型粘度計を用いて、当該キシレン可溶分の135℃テトラヒドロナフタレン中で極限粘度を測定し、XSIV(dl/g)を得た。
【0050】
(3)透明性
上記成形により得た積層体を140℃で120秒加熱し、Bruckner社製フィルム延伸装置(KARO)を用いて2軸延伸を行ない、厚さ0.2mmのフィルム状積層体を得た。ISO 14782に準拠して、株式会社村上色彩技術研究所製、HM−150を使用し、前述のとおりにして得たフィルム状積層体のヘイズ測定を行い、透明性を評価した。同時に成形および冷却条件に由来するシート表面の凹凸の影響を除外するため、シートの両面に流動パラフィン(関東化学株式会社製、Liquid Paraffin Cat. No.32033−00)を刷毛にて塗布し、同様にヘイズ測定を行った。前者を「全ヘイズ」、後者を「内部ヘイズ」と定義した。またシート表面の寄与を見るため、「外部ヘイズ」(「全ヘイズ」−「内部ヘイズ」)を定義した。
【0051】
(4)耐寒衝撃性
JIS K7211−2に従い、上記成形により得た積層体を円柱形状のストライカー(打刻面12.7mmφ)を用いて試験速度1m/秒で−20℃にて打刻し、パンクチャーエネルギーを算出した。
【0052】
(5)スティフネス
JIS K7106に従い、上記成形により得た積層体のスティフネスを室温23℃の元でテーバー社製スティフネステスター(TB−150)を用いて測定した。
【0053】
(6)重合体または重合体の各成分のエチレン含有量
1,2,4−トリクロロベンゼン/重水素化ベンゼンの混合溶媒に溶解した試料について、日本電子株式会社製JNM LA−400(
13C共鳴周波数100MHz)を用い、
13C−NMR法で測定した値から算出した。
【0054】
[実施例1〜3]
重合体A1を外層に重合体B1をコア層に用いた3層シートを製造し、評価した。各層の厚み比は表1に示すとおりである。
【0055】
[実施例4]
重合体B1の代わりに重合体B2を用いた以外は、実施例1と同様にして3層シートを製造し、評価した。
【0056】
[実施例5]
重合体B1の代わりに重合体B1とB3のドライブレンド(ブレンド重量比は8:2)を用いた以外は、実施例1と同様にして3層シートを製造し、評価した。
【0057】
[実施例6]
重合体A1の代わりに重合体A2を用いた以外は、実施例1と同様にして3層シートを製造し、評価した。
【0058】
[実施例7]
重合体A1の代わりに重合体A3を用いた以外は、実施例1と同様にして3層シートを製造し、評価した。
【0059】
[実施例8]
重合体A1の代わりに重合体A4を用いた以外は、実施例1と同様にして3層シートを製造し、評価した。
【0060】
[比較例1]
重合体B1からなる単層シートを製造し、評価した。
【0061】
[比較例2]
重合体A1とB1のドライブレンド(ブレンド重量比は8:2)からなる単層シートを製造し、評価した。
【0062】
[比較例3]
厚み比を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして3層シートを製造し、評価した。
【0063】
[比較例4]
重合体B1の代わりに重合体Cを使用した以外は、実施例1と同様にして3層シートを製造し、評価した。
【0064】
【表2】
【0065】
本発明のシートは透明性および耐寒衝撃性のバランスに優れていることが明らかである。本例ではプレス成形を用いているが、一般に、当該成形法で得たシートの透明性は押出成形で得たシートの透明性よりも劣る。よって、本発明のシートを多層シート成形機により連続的に製造すればより優れた透明性が期待できる。