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特開2017-100428ポリプロピレン組成物を含む多層フィルムまたはシート
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-100428(P2017-100428A)
(43)【公開日】2017年6月8日
(54)【発明の名称】ポリプロピレン組成物を含む多層フィルムまたはシート
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/32 20060101AFI20170512BHJP
   C08F 10/06 20060101ALI20170512BHJP
   C08F 210/02 20060101ALI20170512BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20170512BHJP
   C08F 255/02 20060101ALI20170512BHJP
【FI】
   B32B27/32 E
   C08F10/06
   C08F210/02
   C08F2/44 C
   C08F255/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-237917(P2015-237917)
(22)【出願日】2015年12月4日
(71)【出願人】
【識別番号】597021842
【氏名又は名称】サンアロマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100094008
【弁理士】
【氏名又は名称】沖本 一暁
(74)【代理人】
【識別番号】100112634
【弁理士】
【氏名又は名称】松山 美奈子
(74)【代理人】
【識別番号】100108899
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 謙
(74)【代理人】
【識別番号】100129311
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 規之
(72)【発明者】
【氏名】栗山 稔
(72)【発明者】
【氏名】別府 隆幸
(72)【発明者】
【氏名】中島 武
【テーマコード(参考)】
4F100
4J011
4J026
4J100
【Fターム(参考)】
4F100AK04B
4F100AK07A
4F100AK07B
4F100AK07C
4F100AK62A
4F100AK62B
4F100AK62C
4F100AL01A
4F100AL01B
4F100AL01C
4F100BA03
4F100BA06
4F100BA10A
4F100BA10C
4F100BA13
4F100EJ172
4F100EJ422
4F100GB23
4F100JA06
4F100JK10
4F100JN01
4F100YY00B
4J011AA04
4J011AA07
4J011AC03
4J011BA01
4J011BB02
4J011PA64
4J011PC02
4J011PC08
4J011PC09
4J011PC15
4J026AA12
4J026AA13
4J026BA01
4J026BA02
4J026BA03
4J026BB03
4J026DA05
4J026DA06
4J026DA17
4J026DB07
4J026DB17
4J026DB24
4J100AA02P
4J100AA02Q
4J100AA03P
4J100AA03Q
4J100AA04Q
4J100CA01
4J100CA03
4J100CA04
4J100DA09
4J100FA09
4J100FA22
4J100FA35
4J100FA43
4J100FA47
4J100JA58
(57)【要約】      (修正有)
【課題】透明性と耐寒衝撃性に優れたポリプロピレン組成物を含む多層シート又はフィルムの提供。
【解決手段】コア層とその両面上の外層を備え、外層とコア層の厚み比が1/100〜1/30とし、コア層が、成分(1):エチレン、C4〜C10−α−オレフィン、およびその組合せから選択されるコモノマー0〜5.0重量%を含むプロピレン共重合体60〜90重量%、及び成分(2):60〜90重量%のエチレンと、1種類以上のC3〜C10−α−オレフィンとを含むエチレン共重合体40〜10重量%を含み、メルトフローレートが1.0〜10g/10分、キシレン可溶分の極限粘度が0.05〜2.0dl/gであるポリプロピレン組成物で構成し、外層が、エチレンおよびC4〜C10−α−オレフィンから選択されるコモノマー0〜5.0重量%を含むプロピレン(共)重合体を含む構成とする多層シート又はフィルム。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア層、およびその両面上に設けられた外層を備え、
当該外層とコア層の厚み比が1/100〜1/30であるシートまたはフィルムであって、
前記コア層が、成分(1):エチレン、C4〜C10−α−オレフィン、およびこれらの組合せからなる群より選択されるコモノマー0〜5.0重量%を含むプロピレン(共)重合体60〜90重量%、および
成分(2):60〜90重量%のエチレンと、1種類以上のC3〜C10−α−オレフィンとの共重合体からなるエチレン共重合体40〜10重量%を含み、
メルトフローレート(230℃、荷重21.18N)が1.0〜10g/10分、
XSIV(キシレン可溶分の極限粘度)が0.05〜2.0dl/gであるポリプロピレン組成物を含み、
前記外層が、エチレンおよびC4〜C10−α−オレフィンからなる群より選択されるコモノマー0〜5.0重量%を含むプロピレン(共)重合体を含む、
多層シートまたはフィルム。
【請求項2】
前記ポリプロピレン組成物が、成分(1)中に成分(2)が分散している相構造を有する、請求項1記載の多層シートまたはフィルム
【請求項3】
前記成分(1)におけるコモノマーがエチレンである、請求項1または2に記載の多層シートまたはフィルム。
【請求項4】
前記成分(2)におけるα−オレフィンが、プロピレンまたはブテン−1である、請求項1〜3のいずれかに記載の多層シートまたはフィルム。
【請求項5】
前記外層のプロピレン(共)重合体におけるコモノマーがエチレンである、請求項1〜4のいずれかに記載の多層シートまたはフィルム。
【請求項6】
前記ポリプロピレン組成物が、
成分(1)または(2)のいずれかの原料モノマーを重合して重合体を得る工程、および当該重合体の存在下で他の成分の原料モノマーを重合する工程を含む方法、あるいは
成分(1)および(2)の原料モノマーを重合して成分(1)および(2)の重合体を生成しながら両者を混合する工程を含む製造方法で製造された組成物である、請求項1〜5のいずれかに記載の多層シートまたはフィルム。
【請求項7】
前記ポリプロピレン組成物が、前記成分(1)と(2)の合計100重量部に対して、0重量部を超え1.0重量部以下の核剤を含む、請求項1〜6のいずれかに記載の多層シートまたはフィルム。
【請求項8】
前記外層のプロピレン(共)重合体が、当該重合体100重量部に対して、0重量部を超え1.0重量部以下の核剤を含む、請求項1〜7のいずれかに記載の多層シートまたはフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリプロピレン組成物から得られる多層フィルムまたはシートに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレンは、優れた物理的特性を有しかつ衛生面にも優れているため食品容器として有用である。しかしポリプロピレン容器は低温で使用する場合に耐衝撃性が低下するという問題があり、これを改善するために容器を多層構造とすることが提案されている(特許文献1〜3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−157033号公報
【特許文献2】特許4040185号
【特許文献3】特開2002−348421号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発明者らは、特許文献に記載された技術について予備的に検討したところ、当該文献に記載されたシートの透明性および耐寒衝撃性は十分でないという知見を得た。かかる事情を鑑み、本発明は、透明性および耐寒衝撃性に優れた、ポリプロピレン組成物を含む多層フィルムまたはシートを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明者らは、特定のポリプロピレン組成物をコア層とし、特定のプロピレン(共)重合体を外層とする多層構造を有する多層フィルムまたはシートにより前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。すなわち、前記課題は以下の本発明により解決される。
[1]コア層、およびその両面上に設けられた外層を備え、
当該外層とコア層の厚み比が1/100〜1/30であるシートまたはフィルムであって、
前記コア層が、成分(1):エチレン、C4〜C10−α−オレフィン、およびこれらの組合せからなる群より選択されるコモノマー0〜5.0重量%を含むプロピレン(共)重合体60〜90重量%、および
成分(2):60〜90重量%のエチレンと、1種類以上のC3〜C10−α−オレフィンとの共重合体からなるエチレン共重合体40〜10重量%を含み、
メルトフローレート(230℃、荷重21.18N)が1.0〜10g/10分、
XSIV(キシレン可溶分の極限粘度)が0.05〜2.0dl/gであるポリプロピレン組成物を含み、
前記外層が、エチレンおよびC4〜C10−α−オレフィンからなる群より選択されるコモノマー0〜5.0重量%を含むプロピレン(共)重合体を含む、
多層シートまたはフィルム。
[2]前記ポリプロピレン組成物が、成分(1)中に成分(2)が分散している相構造を有する、[1]記載の多層シートまたはフィルム
[3]前記成分(1)におけるコモノマーがエチレンである、[1]または[2]に記載の多層シートまたはフィルム。
[4]前記成分(2)におけるα−オレフィンが、プロピレンまたはブテン−1である、[1]〜[3]のいずれかに記載の多層シートまたはフィルム。
[5]前記外層のプロピレン(共)重合体におけるコモノマーがエチレンである、[1]〜[4]のいずれかに記載の多層シートまたはフィルム。
[6]前記ポリプロピレン組成物が、
成分(1)または(2)のいずれかの原料モノマーを重合して重合体を得る工程、および当該重合体の存在下で他の成分の原料モノマーを重合する工程を含む方法、あるいは
成分(1)および(2)の原料モノマーを重合して成分(1)および(2)の重合体を生成しながら両者を混合する工程を含む製造方法で製造された組成物である、[1]〜[5]のいずれかに記載の多層シートまたはフィルム。
[7]前記ポリプロピレン組成物が、前記成分(1)と(2)の合計100重量部に対して、0重量部を超え1.0重量部以下の核剤を含む、[1]〜[6]のいずれかに記載の多層シートまたはフィルム。
[8]前記外層のプロピレン(共)重合体が、当該重合体100重量部に対して、0重量部を超え1.0重量部以下の核剤を含む、[1]〜[7]のいずれかに記載の多層シートまたはフィルム。
【発明の効果】
【0006】
本発明により透明性および耐寒衝撃性に優れた、ポリプロピレン組成物を含む多層フィルムまたはシートを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明のシート等の一態様を示す図
図2】本発明のシート等の他の態様を示す図
図3】本発明のシート等のさらに他の態様を示す図
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明において、シートとは厚みが200μm以上の平たい部材(葉状部材)であり、フィルムとは厚みが200μm未満の平たい部材(葉状部材)をいう。シートまたはフィルムをまとめて「シート等」ともいう。
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明において「X〜Y」は、両端の値すなわちXとYとを含む。「XまたはY」はX、Yのいずれか、あるいは双方を含む。
【0010】
1.シートまたはフィルム
本発明のシート等は、コア層およびその両面上に設けられた外層を備える。図1に当該シート等の概要を示す。図1中、10はコア層、20は外層である。外層20とコア層10の厚み比は1/100〜1/30であり、好ましくは1/90〜1/35である。当該比が下限値未満であると製造安定性が低下し、上限値を超えると耐寒衝撃性が低下する。外層20はコア層の上面と下面に2つ存在するが、反りを低減する観点からこれらの厚み比は1:0.8〜1:1.2であることが好ましく、1:1であることがより好ましい。シート等の厚みはシート等の構成する層の合計の厚みである。
【0011】
図2に別態様の本発明のシート等を示す。図2に示すとおり、外層20とコア層10の間に第1中間層30を設けてもよい。さらに図3に示すとおり、第1中間層30と外層20の間に第2中間層40を設けてもよい。第1中間層30の厚みは、接着層とする場合は外層20の厚みに対し20%以下が好ましい。第2中間層40の厚みも同様である。工程内でリサイクルして得たリターン材を使用する場合、コア層10または中間層30(40)は最大50重量%までの当該リターン材を含むことがある。この場合のコア層10または中間層30(40)の厚みは、リターン材の量に応じて任意に定められる。
【0012】
(1)コア層
コア層10は成分(1)および成分(2)を含むポリプロピレン組成物を含む。成分(1)は、エチレン、C4〜C10−α−オレフィン、およびこれらの組合せからなる群より選択されるコモノマー0〜5.0重量%を含むプロピレン(共)重合体である。成分(2)は、60〜90重量%のエチレンと、1種類以上のC3〜C10−α−オレフィンとの共重合体からなるエチレン共重合体である。成分(1)と成分(2)の重量比は60〜90:40〜10であり、好ましくは65〜85:35〜15である。成分(2)の量が上限を超えるとシート等の剛性が低下し、下限未満であるとシート等の耐寒衝撃性が低下する。
【0013】
(1−1)成分(1)
成分(1)はプロピレン単独重合体またはプロピレン共重合体である。成分(1)が共重合体である場合、コモノマーの含有量は5.0重量%以下であればよいが1.0〜4.0重量%であることが好ましい。コモノマーの量が上限値を超えると得られるシート等の剛性が低下する。5.0重量%のエチレンを含むプロピレンの共重合体とは、エチレン由来のユニットとプロピレン由来のユニットとの重量比が5.0:95.0である共重合体である。他の共重合体についても同様である。コモノマーはエチレン、C4〜C10−α−オレフィン、およびその組合せからなる群より選択されるが、産業上、安価かつ安定的に流通され、かつ入手が比較的容易であることの観点からエチレンが好ましい。
【0014】
(1−2)成分(2)
成分(2)はエチレンと1種類以上のC3〜C10−α−オレフィンとの共重合体からなるエチレン共重合体である。エチレンの含有量は60〜90重量%であるが、好ましくは65〜85重量%である。エチレン含有量が上限値を超えると得られるシート等の耐寒衝撃性が低下し、下限値未満であるとシート等の透明性が低下する。α−オレフィンはC3〜C10のα−オレフィンであるが、産業上、安価かつ安定的に流通され、かつ入手が比較的容易であることの観点からプロピレンまたはブテン−1が好ましい。
【0015】
(1−3)添加剤
ポリプロピレン組成物は、当該組成物100重量部に対して0重量部を超え1.0重量部以下、好ましくは0.05〜0.5重量部の核剤を含んでいてもよい。ここで言う核剤とは樹脂中の結晶成分のサイズを小さく制御して透明性を高めるために用いられる添加剤(透明核剤)である。核剤は特に限定されず、当該分野で通常使用されるものを使用してよいが、ノニトール系核剤、ソルビトール系核剤、リン酸エステル系核剤、トリアミノベンゼン誘導体核剤、カルボン酸金属塩核剤、およびキシリトール系核剤から選択されることが好ましい。ノニトール系核剤として、例えば、1,2,3―トリデオキシ−4,6:5,7−ビス−[(4−プロピルフェニル)メチレン]−ノニトールが挙げられる。ソルビトール系核剤として、例えば、1,3:2,4−ビス−o−(3,4−ジメチルベンジリデン)−D−ソルビトールが挙げられる。リン酸エステル系核剤として、例えば、リン酸−2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)リチウム塩系造核剤が挙げられる。
【0016】
またこの他に、酸化防止剤、塩素吸収剤、耐熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、内部滑剤、外部滑剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、防曇剤、難燃剤、分散剤、銅害防止剤、中和剤、可塑剤、発泡剤、気泡防止剤、架橋剤、過酸化物、油展および他の有機および無機顔料などのオレフィン重合体に通常用いられる慣用の添加剤を添加してもよい。各添加剤の添加量は公知の量としてよい。
【0017】
(1−4)特性
ポリプロピレン組成物は、成分(1)中に成分(2)が分散している相構造を有することが好ましい。このようなポリプロピレン組成物は任意の方法で製造してよいが、成分(1)または(2)のいずれかの原料モノマーを重合して重合体を得る工程、および当該重合体の存在下で他の成分の原料モノマーを重合する工程を含む方法、あるいは、成分(1)および(2)の原料モノマーを重合して成分(1)および(2)の重合体を生成しながら両者を混合する工程を含む方法で製造することが好ましい。このような製造方法は、例えば、2つ以上の反応器または2つ以上の重合領域を備える反応器等を用いて実施できる。重合に使用する触媒は限定されず公知の物を使用してよい。このような方法で製造されたポリプロピレン組成物はいわゆる重合ブレンドと呼ばれる。重合ブレンドによって得られた組成物は、別々に重合したポリマー同士を溶融混練して得た組成物に比べて、成分(1)と成分(2)が分子レベルに近い状態で一体となっており、分散相(成分(2))のマトリックス(成分(1))に対する分散性に優れる。しかし、このことを請求項において言葉で表現することは現実的でない。
【0018】
ポリプロピレン組成物は1.0〜10g/10分のメルトフローレートを有する。メルトフローレートは230℃、荷重21.18Nで測定される。メルトフローレートが上限値を超えると成形時に耐ドローダウン性が低下し、下限値未満であると成形時の負荷が大きくなる。
【0019】
ポリプロピレン組成物は0.05〜2.0dl/gのXSIVを有する。XSIVとは、ポリプロピレン組成物の25℃でのキシレン可溶分の極限粘度である。キシレン可溶分は結晶性を持たない成分であり、XSIVはその成分の分子量の指標である。キシレン可溶分の主体は成分(2)に由来する。当該組成物におけるXSIVは25℃のキシレンに可溶な成分を得て、当該成分の極限粘度を定法にて測定することで求められる。XSIVが上限値を超えると得られるシート等の透明性が低下し、下限値未満であると製造安定性が低下する。
【0020】
(2)外層
外層は、エチレンおよびC4〜C10−α−オレフィンからなる群より選択されるコモノマー0〜5.0重量%を含むプロピレン(共)重合体を含む。すなわち、外層はプロピレン単独重合体またはプロピレンランダム共重合体を含む。ランダム共重合体においてコモノマーの含有量は5.0重量%以下であればよいが、1.0〜4.0重量%であることが好ましい。コモノマーの量が上限値を超えると得られるシート等の製造安定性が低下する。プロピレン単独重合体およびランダム共重合体は公知の方法で製造できる。プロピレンランダム共重合体におけるコモノマーは産業上、安価かつ安定的に流通され、かつ入手が比較的容易であることの観点からエチレンが好ましい。上記プロピレン(共)重合体は、1.0〜10g/10分のメルトフローレート(230℃、荷重21.18Nで測定)を有することが好ましい。メルトフローレートが上限値を超えると成形時に耐ドローダウン性が低下し、下限値未満であると成形時の負荷が大きくなる。
【0021】
プロピレン単独重合体またはプロピレンランダム共重合体に核剤を添加して組成物としてもよい。核剤の量は前述のとおり、当該重合体100重量部に対して0重量部を超え1.0重量部以下、好ましくは0.05〜0.5重量部としてよい。核剤の例はすでに述べたとおりである。
【0022】
(3)中間層
第1中間層は本発明の効果を損なわない限り任意のポリマーを含んでよい。例えば、本発明の3層からなるシート等をリサイクルして得たリターン材や、本発明の5層からなるシート等をリサイクルして得たリターン材を使用できる。第2中間層についても同様である。
【0023】
(4)シート等の特性
本発明のシート等は、優れた透明性と耐寒衝撃性を有する。従来から非常に限られた成形条件を選択することで優れた透明性と耐寒衝撃性を兼ね備えるシート等を得ることが検討されている。しかし、本発明においては通常の成形条件においても、優れた透明性と耐寒衝撃性を兼ね備えたシート等を得ることができる。この理由は限定されないが、成分(1)中に成分(2)が分散している相構造を有するコア層が優れた耐寒衝撃性を発現する一方で小さな内部ヘイズを有し、融点が大きく異なる成分が存在しないため表面に凹凸が生じない外層が小さな外部ヘイズを有する結果、シート全体が優れた透明性を発現するためと推察される。
【0024】
本発明のシート等は、JIS K7106による剛性(スティフネス)が500MPa以上であり、JIS K7211−2による−20℃での面衝撃強度が5J以上、ISO14782による全ヘイズが10%以下であることが好ましい。
【0025】
2.製造方法
本発明の各ポリマーは前述の方法または公知の方法に従って製造してよいが、原料モノマーを、(A)マグネシウム、チタン、ハロゲン、および電子供与体化合物を含有する固体触媒、(B)有機アルミニウム化合物、ならびに(C)外部電子供与体化合物を含む触媒を用いて重合する工程を含む方法で得ることが好ましい。
【0026】
1)固体触媒(成分A)
固体触媒は、公知の方法、例えばマグネシウム化合物とチタン化合物と電子供与体化合物を相互接触させることにより調製できる。マグネシウム化合物とチタン化合物については公知の物を使用できる。電子供与体化合物は一般には「内部電子供与体」と称される。内部電子供与体としては、フタレート系化合物、スクシネート系化合物、ジエーテル系化合物が挙げられ、本発明においてはいずれも使用できる。
【0027】
2)有機アルミニウム化合物(成分B)
成分Bの有機アルミニウム化合物としては、公知の物を使用できる。
【0028】
3)電子供与体化合物(成分C)
成分Cの電子供与体化合物は、一般に「外部電子供与体」と称される。本発明においては、公知の物を用いてよいが有機ケイ素化合物が好ましい。
【0029】
4)重合
重合は、液相中、気相中または液−気相中で実施してよい。重合圧力は、液相中で行われる場合には好ましくは33〜45barの範囲であり、気相中で行われる場合には好ましくは5〜30barの範囲である。連鎖移動剤(たとえば、水素またはZnEt)などの当該分野で公知の慣用の分子量調節剤を用いてもよい。
【0030】
また、上述した2つ以上の反応器(重合器)を用いる以外に、モノマー濃度や重合条件の勾配を有する重合器を用いてもよい。このような重合器では、例えば、少なくとも2つの重合領域が接続されたものを使用し、気相重合でモノマーを重合することができる。具体的には、触媒の存在下、上昇管からなる重合領域にてモノマーを供給して重合し、上昇管に接続された下降管にてモノマーを供給して重合し、上昇管と下降管とを循環しながら、ポリマー生成物を回収する。この方法は、上昇管中に存在する気体混合物が下降管に入るのを全面的または部分的に防止する手段を備える。また、上昇管中に存在する気体混合物とは異なる組成を有する気体または液体混合物を下降管中に導入する。上記の重合方法として、例えば、特表2002−520426号公報に記載された方法を適用することができる。
【0031】
本発明のシート等は準備したポリマーを用いてプレス成形または共押出成形によって製造できる。プレス時の温度は通常の温度である200〜230℃としてよい。また共押出時の押出温度およびTダイ温度も、それぞれ通常の温度である200〜230℃および210〜250℃としてよい。
【0032】
3.用途
本発明のシート等は所望の形状に成形されて、種々の用途に使用できる。例えば、本発明のシート等は包装材料、容器用材料、特に食品容器として有用である。例えば、真空成形等によりシート等を容器へ成形できる。得られた容器は、透明性および耐寒衝撃性に優れるので、氷や氷菓用の容器、冷却飲料の容器として有用である。
【実施例】
【0033】
以下に実施例を挙げ本発明についてさらに説明するが、本発明はこれらによって何ら限定されない。
【0034】
1.重合体の調製
(1)外層用重合体
[重合体A1]
重合に用いる固体触媒を、欧州特許第674991号公報の実施例1に記載された方法により調製した。当該固体触媒は、MgCl上にTiと内部ドナーとしてのジイソブチルフタレートを上記の特許公報に記載された方法で担持させたものである。当該固体触媒と、トリエチルアルミニウム(TEAL)およびジイソプロピルジメトキシシラン(DIPMS)を、固体触媒に対するTEALの重量比が11、TEAL/DIPMSの重量比が3.2となるような量で、−5℃で5分間接触させた。得られた触媒系を、液体プロピレン中において懸濁状態で20℃において5分間保持することによって予備重合を行った。
【0035】
得られた予備重合物を重合反応器に導入した後、水素とプロピレン、エチレンをフィードし、重合温度、水素濃度、エチレン濃度を、それぞれ75℃、0.12モル%、0.45モル%とし、圧力を調整することよって、プロピレンエチレン共重合体を製造した。当該重合体は1.7重量%のエチレンを含むポリプロピレンの共重合体である。当該重合体のパウダー100重量部に、核剤としてMillad 3988(ソルビトール系、ミリケンジャパン株式会社製)0.25重量部添加し、酸化防止剤としてBASF社製B225を0.2重量部、中和剤として淡南化学社製カルシウムステアレートを0.05重量部添加し、ヘンシェルミキサーで1分間撹拌して混合した。この混合物を、ナカタニ機械株式会社製NVCφ50mm単軸押出機を用いて、シリンダ温度230℃で押出し、ストランドを水中で冷却した後、ペレタイザーでカットしペレット状のプロピレン樹脂組成物を得て、重合体A1とした。重合体A1は核剤を含むポリプロピレン組成物である。
【0036】
[重合体A2]
上記重合体A1のパウダーを用い、核剤を添加しなかった以外は、重合体A1と同様にして重合体A2を得た。重合体A2は、核剤を含まないプロピレンエチレン共重合体であり、共重合体組成および特性(核剤によるものを除く)は重合体A1の共重合体組成および特性と同じである。
【0037】
[重合体A3]
ジイソプロピルジメトキシシラン(DIPMS)の代わりにシクロヘキシルメチルジエトキシシラン(CHMMS)を用い、固体触媒に対するTEALの質量比を8、TEAL/CHMMSの質量比を6.5とし、エチレンをフィードせず、水素濃度を0.024モル%とした以外は、重合体A1と同様にしてプロピレン単独重合体を製造した。得られた重合体のパウダー100重量部に、核剤としてMillad 3988の代わりにMillad NX8000J(ノニトール系、ミリケンジャパン株式会社製)を0.25重量部添加した以外は、重合体A1と同様にして重合体A3を得た。重合体A3は核剤を含むポリプロピレン組成物である。
【0038】
[重合体A4]
上記重合体A3のパウダーを用い、核剤を添加しなかった以外は、重合体A3と同様にして重合体A4を得た。重合体A4は、核剤を含まないプロピレン単独重合体であり、その特性(核剤によるものを除く)は重合体A3におけるプロピレン単独重合体の特性と同じである。
【0039】
(2)コア層用樹脂組成物
[重合体B1]
MgCl上にTiと内部ドナーとしてのジイソブチルフタレートを担持させた固体触媒を、欧州特許第728769号公報の実施例5に記載された方法により調製した。次いで、上記固体触媒と、有機アルミニウム化合物としてトリエチルアルミニウム(TEAL)と、外部電子供与体化合物としてジシクロペンチルジメトキシシラン(DCPMS)を用い、固体触媒に対するTEALの重量比が20、TEAL/DCPMSの重量比が10となるような量で、12℃において24分間接触させた。得られた触媒系を、液体プロピレン中において懸濁状態で20℃にて5分間保持することによって予備重合を行った。得られた予備重合物を、二段の重合反応器を直列に備える重合装置の一段目の重合反応器に導入し、プロピレンとエチレンをフィードし、プロピレンの液相状態にてプロピレンエチレン共重合体を製造し、二段目の気相重合反応器でエチレン・ブテン−1共重合体を製造した。重合中は、温度と圧力を調整し、水素を分子量調整剤として用いた。
【0040】
重合温度と反応物の比率は、一段目の反応器では、重合温度、エチレン濃度、水素濃度が、それぞれ70℃、0.84モル%、0.06モル%、二段目の反応器では、重合温度、H2/C2、C4/(C2+C4)が、それぞれ80℃、0.26モル比、0.48モル比であった。また、共重合体成分の量が18重量%となるように一段目と二段目の滞留時間分布を調整した。得られた重合体のパウダー100重量部に、核剤としてMillad 3988の代わりにアデカスタブNA−71(リン酸エステル系、株式会社ADEKA製)を0.25重量部添加した以外は、重合体A1と同様にして重合体B1を得た。重合体B1は核剤を含むポリプロピレン組成物である。
【0041】
[重合体B2]
上記重合体B1のパウダーを用い、核剤を添加しなかった以外は、重合体B1と同様にして重合体B2を得た。重合体B2は、核剤を含まない以外は重合体B1と同じ組成を有する組成物である。
【0042】
[重合体B3]
MgCl上にTiと内部ドナーとしてのジイソブチルフタレートを担持させた固体触媒を、欧州公開特許出願第674991号公報の実施例に記載された方法により調製した。次いで、上記固体触媒と、有機アルミニウム化合物としてトリエチルアルミニウム(TEAL)と、外部電子供与体化合物としてジシクロペンチルジメトキシシラン(DCPMS)を用い、TEAL/Tiのモル比が65、TEAL/DCPMSの重量比が約15となるような量で、−5℃において5分間接触させた。得られた触媒系を、液体プロピレン中において懸濁状態で20℃にて20分間保持することによって予備重合を行った。得られた予備重合物を、二段の気相重合反応器を直列に備える重合装置の一段目の気相重合反応器に導入してプロピレン単独重合体を製造した。一段目の反応器で製造されたプロピレンホモポリマーを、未反応モノマーを取り除いた後、二段目の気相重合反応器でエチレン・ブテン−1共重合体を製造した。重合中は、温度と圧力を調整し、水素を分子量調整剤として用いた。
【0043】
重合温度と反応物の比率は、一段目の反応器では、重合温度、H2/C3が、それぞれ70℃、0.0052モル比、二段目の反応器では、重合温度、H2/C2、C4/(C2+C4)が、それぞれ80℃、0.20モル比、0.35モル比であった。また、共重合体成分の量が70重量%となるように一段目と二段目の滞留時間分布を調整した。得られた重合体のパウダーを用い、核剤を添加しなかった以外は、重合体A1と同様にして重合体B3を得た。重合体B3は核剤を含まないポリプロピレン組成物である。
【0044】
[重合体C]
重合体B1の製造に用いた予重合物を、二段の重合反応器を直列に備える重合装置の一段目の重合反応器に導入してプロピレン単独重合体を製造し、二段目の重合反応器でエチレン−プロピレン共重合体を製造した。重合中は、温度と圧力を調整し、水素を分子量調整剤として用いた。一段目の反応器の水素濃度を0.12モル%、二段目の反応器の水素濃度、C2/(C2+C3)を、それぞれ1.13モル%、0.48モル比とし、共重合体成分の量が20重量%となるように一段目と二段目の滞留時間分布を調整して重合体のパウダーを得た。それ以外は、重合体B1と同様にして、核剤入りの重合体Cを得た。重合体Cは核剤を含むポリプロピレン組成物である。
【0045】
このようにして準備した重合体の組成を表1にまとめた。
【0046】
【表1】
【0047】
2.シートの製造
前述の重合体を、予め25mmφ3種3層フィルム・シート成形機(サーモ・プラスチック工業株式会社製)を用いて、成形温度230℃で成形し、厚み0.01〜0.9mmのフィルムまたはシートを得た後、外層用単層フィルムまたはシートおよびコア層用単層シートを製造した。これらを重ね合わせてさらにプレス成形して(170℃にて加圧10MPa×30秒、30℃冷却×150秒)、積層体(3層シート)を製造した(いずれも大きさ10cm×10cm以上)。3層シートの厚みは0.8〜0.9mmであった。
【0048】
3.分析および評価
(1)MFR
JIS K 7210に準じ、温度230℃、荷重21.18Nの条件下で測定した。
【0049】
(2)XSIV
サンプル2.5gを、o−キシレン(溶媒)を250ml入れたフラスコに入れ、ホットプレートおよび還流装置を用いて、135℃で、窒素パージを行いながら、30分間、撹拌し、サンプルを完全溶解した。その後、溶液を25℃で1時間冷却した。濾紙を用いて得られた溶液を濾過し、濾液を100ml採取し、アルミカップ等に移し、窒素パージを行いながら、150℃で蒸発乾固を行い、室温で30分間静置してキシレン可溶分を得た。ウベローデ型粘度計を用いて、当該キシレン可溶分の135℃テトラヒドロナフタレン中で極限粘度を測定し、XSIV(dl/g)を得た。
【0050】
(3)透明性
上記成形により得た積層体を140℃で120秒加熱し、Bruckner社製フィルム延伸装置(KARO)を用いて2軸延伸を行ない、厚さ0.2mmのフィルム状積層体を得た。ISO 14782に準拠して、株式会社村上色彩技術研究所製、HM−150を使用し、前述のとおりにして得たフィルム状積層体のヘイズ測定を行い、透明性を評価した。同時に成形および冷却条件に由来するシート表面の凹凸の影響を除外するため、シートの両面に流動パラフィン(関東化学株式会社製、Liquid Paraffin Cat. No.32033−00)を刷毛にて塗布し、同様にヘイズ測定を行った。前者を「全ヘイズ」、後者を「内部ヘイズ」と定義した。またシート表面の寄与を見るため、「外部ヘイズ」(「全ヘイズ」−「内部ヘイズ」)を定義した。
【0051】
(4)耐寒衝撃性
JIS K7211−2に従い、上記成形により得た積層体を円柱形状のストライカー(打刻面12.7mmφ)を用いて試験速度1m/秒で−20℃にて打刻し、パンクチャーエネルギーを算出した。
【0052】
(5)スティフネス
JIS K7106に従い、上記成形により得た積層体のスティフネスを室温23℃の元でテーバー社製スティフネステスター(TB−150)を用いて測定した。
【0053】
(6)重合体または重合体の各成分のエチレン含有量
1,2,4−トリクロロベンゼン/重水素化ベンゼンの混合溶媒に溶解した試料について、日本電子株式会社製JNM LA−400(13C共鳴周波数100MHz)を用い、13C−NMR法で測定した値から算出した。
【0054】
[実施例1〜3]
重合体A1を外層に重合体B1をコア層に用いた3層シートを製造し、評価した。各層の厚み比は表1に示すとおりである。
【0055】
[実施例4]
重合体B1の代わりに重合体B2を用いた以外は、実施例1と同様にして3層シートを製造し、評価した。
【0056】
[実施例5]
重合体B1の代わりに重合体B1とB3のドライブレンド(ブレンド重量比は8:2)を用いた以外は、実施例1と同様にして3層シートを製造し、評価した。
【0057】
[実施例6]
重合体A1の代わりに重合体A2を用いた以外は、実施例1と同様にして3層シートを製造し、評価した。
【0058】
[実施例7]
重合体A1の代わりに重合体A3を用いた以外は、実施例1と同様にして3層シートを製造し、評価した。
【0059】
[実施例8]
重合体A1の代わりに重合体A4を用いた以外は、実施例1と同様にして3層シートを製造し、評価した。
【0060】
[比較例1]
重合体B1からなる単層シートを製造し、評価した。
【0061】
[比較例2]
重合体A1とB1のドライブレンド(ブレンド重量比は8:2)からなる単層シートを製造し、評価した。
【0062】
[比較例3]
厚み比を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして3層シートを製造し、評価した。
【0063】
[比較例4]
重合体B1の代わりに重合体Cを使用した以外は、実施例1と同様にして3層シートを製造し、評価した。
【0064】
【表2】
【0065】
本発明のシートは透明性および耐寒衝撃性のバランスに優れていることが明らかである。本例ではプレス成形を用いているが、一般に、当該成形法で得たシートの透明性は押出成形で得たシートの透明性よりも劣る。よって、本発明のシートを多層シート成形機により連続的に製造すればより優れた透明性が期待できる。
【符号の説明】
【0066】
10 コア層
20 外層
30 第1中間層
40 第2中間層
図1
図2
図3