【課題】インサート品のあるシートパッドの厚みが小さくなる場合であっても、所望のクッション性を保ち、さらに裏当て材裏面側への発泡原料の浸み出し,硬化をなくして、シートフレーム等との擦れによる異音発生防止に優れる車両用シートパッドを提供する。
【解決手段】シートパッドPのパッド本体1に、平坦部分63を裏面6b側に有して埋設一体化されているインサート品6と、平坦部分63を覆って、パッド本体1の裏面1bに被着一体化されている不織布からなる裏当て材4と、を具備する車両用シートパッドにおいて、独立気泡性発泡プラスチックのシート材51を有して、一方の面が平坦部分63に当接したシート状のクッション性浸透阻止材5を、さらに具備し、平坦部分63上の浸透阻止材5を裏当て材4が覆ってパッド本体1の裏面1bに被着一体化されている。
シートパッドのパッド本体に、平坦部分を裏面側に有して埋設一体化されているインサート品と、該平坦部分を覆って、前記パッド本体の裏面に被着一体化されている不織布からなる裏当て材と、を具備する車両用シートパッドにおいて、
独立気泡性発泡プラスチックのシート材を有して、一方の面が前記平坦部分に当接したシート状のクッション性浸透阻止材を、さらに具備し、該平坦部分上の該浸透阻止材を前記裏当て材が覆って前記パッド本体の裏面に被着一体化されていることを特徴とする車両用シートパッド。
前記シート材がオレフィン系の独立気泡性発泡プラスチックであり、且つ該シート材の片面又は両面に、難燃性不織布が貼着又は難燃性接着剤が塗布された状態の複合シート材を、前記浸透阻止材とする請求項1記載の車両用シートパッド。
前記インサート品は、表面側にエア噴出口が形成される一方、裏面側にエア導入口が形成された合成樹脂製配風ダクトであり、且つ該合成樹脂製配風ダクトの裏面側に形成した平坦部分に、前記浸透阻止材が当接してなる請求項1又は2に記載の車両用シートパッド。
パッド本体の発泡成形で、平坦部分を裏面側に有したインサート品を埋設し、裏当て材が該裏面側の平坦部分を覆って、パッド本体の裏面に被着一体化する車両用シートパッドの製造方法において、
前記インサート品を、前記平坦部分が上向きになるようにして、発泡型の下型にセットする一方、不織布からなる前記裏当て材と、さらに該裏当て材上に取付けた独立気泡性発泡プラスチックのシート材を有するシート状のクッション性浸透阻止材と、を上型にセットし、次いで、発泡原料を下型側に注入し、その後、型閉じにより、該浸透阻止材が該平坦部分に載り、続く前記パッド本体の発泡成形で、前記インサート品を埋設し、且つ該裏当て材が、該平坦部分上の該浸透阻止材を覆って、該パッド本体の裏面に被着一体化することを特徴とする車両用シートパッドの製造方法。
前記独立気泡性発泡プラスチックのシート材がオレフィン系の独立気泡性発泡プラスチックであり、且つ該シート材の片面又は両面に、難燃性不織布が貼着又は難燃性接着剤が塗布された状態の複合シート材を、前記浸透阻止材に用いた請求項4記載の車両用シートパッドの製造方法。
前記インサート品は、表面側にエア噴出口が形成される一方、裏面側にエア導入口が形成された合成樹脂製配風ダクトであり、該エア導入口をシールテープで塞いで、下型に該配風ダクトをセットし、発泡原料の注入後、型閉じにより、前記浸透阻止材が圧縮されて、前記平坦部分上に載った発泡原料の浸透を阻んで、該平坦部分に該浸透阻止材が載る請求項4又は5に記載の車両用シートパッドの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る車両用シートパッド及びその製造方法について詳述する。
図1〜
図9は本発明の車両用シートパッド(以下、単に「シートパッド」ともいう。)及びその製造方法の一形態で、
図1はシートパッドの概略平面図、
図2は
図1のII-II線矢印図、
図3は
図1のIII-III線矢印図、
図4は
図3の部分拡大図、
図5は
図4との対比説明図、
図6は型開状態で、下型にインサート品をセットした平面図、
図7は型開状態で発泡型に発泡原料を注入している説明断面図、
図8は
図7の後、型閉じし、発泡成形に向かう発泡型の説明断面図、
図9は
図6のIX-IX線矢印図である。尚、図面を判り易くするため、浸透阻止材5やインサート品6を強調図示し、シートパッドP及びその発泡型7は簡略図示する。
【0011】
(1)車両用シートパッドの製造方法
シートパッドの製造方法は、発泡型7を用いて、パッド本体1の発泡成形で、平坦部分63を裏面6b側に有したインサート品6を埋設し、裏当て材4が、該平坦部分63を覆って、パッド本体1の裏面1bに被着一体化するシートパッドPを造る(
図1〜
図5)。インサート品6には、裏面側に平坦部分を有して肩口に剛性をもたせる補強部材等があるが、本実施形態は
図1〜
図3のような配風ダクトとする。シートパッドPは、車両用座席シートの座部用クッションパッドやバックレストのバックパッドに使用される。ここでは、車両用座席シート用座部向けクッションパッドに適用する。発泡成形に先立ち、インサート品6たる配風ダクト,浸透阻止材5,発泡型7が用意される。
【0012】
配風ダクト6はポリプロピレン樹脂等からなる樹脂製管状部材である。本実施形態は
図1,
図2のような基部6Kから四方にダクト部6Dが延びるブロー成形ダクトとする。平面視中央に配される基部6Kから平面視略X字状にダクト部6Dが延び、表面6a側にエア噴出口64が形成される一方、裏面6b側にエア導入口61aが形成された配風ダクトである。本発明の「表面側」とは乗員が座部に腰掛ける時に当接する面の側をいう。
ここでの基部6Kは、
図6でいえば平面視ほぼ方形にしてその左下側にエア導入口61a用の張出し部分が形成される。また
図3の断面図でいうと、基部6Kに係る表面側と裏面側の略全域を平らな面の平坦部分63Kにして、両平坦部分63Kの両側を弧状の側壁部分62Kがつないで、流路60が形成される扁平化した中空オーバル状とする。ダクト部6Dも断面形状が円形でなく、
図9ごとくの扁平化したオーバル状になっている。ダクト部6Dに係るダクト表面部分や、流路60を介して該ダクト表面部分と対向するダクト裏面部分を平坦部分63Dに形成して、両者を弧面状のダクト側壁部分62Dで結合する。ダクト部6D及び前記基部6Kの表面側には短管部からなるエア噴出口64用のノズル部6Nが複数立設する。尚、エア導入口61aのエア導入部61にはノズル部分がなく、基部6Kに孔を開けただけにしている。
【0013】
浸透阻止材5は、独立気泡性発泡プラスチックのシート材51を有して、一方の面が配風ダクト裏面6b側の平坦部分63に当接するシート状のクッション性部材である(
図4)。前記配風ダクト6の裏面6b側に平坦部分63が設けられ、該平坦部分63に浸透阻止材5が配設される。本実施形態の浸透阻止材5は、発泡原料注入時に、発泡原料gのかけ損じで発泡原料gが特に載り易い基部平坦部分63Kを覆う
図1のような矩形のシートである。尚、資材コスト,作業コストよりも歩留まり向上を優先するならば、浸透阻止材5は、
図6に示す基部平坦部分63Kにダクト平坦部分63Dをも含め、配風ダクト裏面6b全体を覆う
図10のプレスフェルト9のような形状とするがより好ましい。
図10中、符号91は基部用プレスフェルト、符号92はダクト部用プレスフェルトを示す。
また、前記シート材51がオレフィン系の独立気泡性発泡プラスチックであり、且つ該シート材51の片面又は両面に難燃性不織布52が貼着一体化した複合シート材を、浸透阻止材5とすると、シート材51が燃え易くても、防炎処理が施されるのでより好ましくなる。シート材51の片面又は両面に難燃性接着剤を塗布した浸透阻止材5も、防火対策が講じられるのでより好ましくなる。
ここで、オレフィン系の独立気泡性発泡プラスチックは、ポリエチレン,ポリプロピレン等で、独立気泡が大部分を占める発泡プラスチックをいう。例えば本出願人のポリプロピレン発泡シートFOLEC(登録商標)がある。難燃性不織布52には、アクリル系繊維を空気中で焼成した耐炎性繊維を含む不織布や、特許第5722246号,特開2015-21192号等のような繊維に難燃剤を付与した不織布がある。難燃性接着剤(難燃性粘着剤を含む)には、特開2015-71716号の難燃性フィラーや特開2013-231094号のリン系難燃剤等を含有する接着剤がある。本実施形態は、全て独立気泡になるとされる型内発泡法を用いたポリプロピレンのシート材51の両面に、ノンハロゲン難燃剤を溶融させたPET繊維の難燃性不織布52を貼着した浸透阻止材5を用いる。
【0014】
発泡型7は、
図7ごとくの分割型で、下型7aと上型7bとを備える。下型7aと上型7bは図示しないヒンジにより開閉可能に接続されている。ヒンジを支点にして
図8のごとく型閉じすると、下型型面71と上型型面76とで、シートパッドPのキャビティCをつくる。
図6〜
図9に示す本製法では、下型型面71でパッド本体表面1a側が成形され、上型型面76でパッド本体裏面1b側が成形される。
下型7aの型面71には、メイン部2の上半部用型面を中央にして、その両脇にサイド部3の上半部用型面が形成される(
図6,
図7)。そして、下型7aにはメイン部用型面の各所を柱状に盛り上げて、パッド本体表面1aの各窪み21を形成するための隆起部72が複数設けられる。各隆起部72の下部が窪み21の形成を担い、上部がエア噴出口64を封止する役目を担う。各隆起部72の上端面から円柱形の穴72aが掘られている。下型7aへの配風ダクト6のセットで、該穴72aに前記ノズル部6Nが収納され、隆起部72の上端筒状周縁が、配風ダクト表面6aで且つノズル部基端の外周縁域66に当接して、エア噴出口64の口を塞ぐ(
図9)。
【0015】
前記発泡型7,配風ダクト6,浸透阻止材5を用いて、シートパッドPが例えば次のように製造される。
まず、発泡型7を
図7の型開状態とする。この型開状態の下型7aに、配風ダクト6をその裏面6b側の平坦部分63が上向くようセットする。配風ダクト6はエア導入口61aをシールテープSTで塞ぐ前処理がなされている(
図6)。各ノズル部6Nを下方側に向けて穴72a内に収容し、配風ダクト表面6a側で且つノズル部6Nの基端外周縁域66に、隆起部72の上端筒状周縁を当接させて(
図9)、配風ダクト6を下型7aにセットする。配風ダクト6は、ほぼ同一平面上に形成された基部6K,ダクト部6Dが水平に配され、起立するノズル部6Nが穴72aに納められる。配風ダクト裏面6b側が上方側になり、導入口61aがシールテープSTで封止状態にある。
【0016】
配風ダクト6のセットと相前後して、上型7bに裏当て材4と浸透阻止材5とをセットする(
図7)。裏当て材4は、不織布で構成され、パッド本体1の裏面の略全域を覆う大きさを有する。裏当て材4にタグピン等で浸透阻止材5を予め取付けた浸透阻止材5付き裏当て材4が上型型面76にセットされる。浸透阻止材5が型閉じで基部平坦部分63Kに載るよう裏当て材4に取付けられる。尚、裏当て材4を上型7bへセット後、裏当て材4上に浸透阻止材5を取付け、セットしてもよい。
【0017】
次に、型開状態のまま、下型7aのキャビティCを形成する下型型面71上に、注入ホースNL等を使用してシートパッド成形用ウレタン発泡原液等の発泡原料gを所定量注入する(
図7)。発泡原料gの注入では、パッド本体厚みt1が薄くなっているので、特許文献1の時と違って発泡原料gの少ない量を速やかに下型型面71の全体に行き渡らせ、パッド本体1にボイド,欠肉等ができるのを避けねばならない。いきおい、配風ダクト6の上方で、注入ホースNLが
図7の実線矢印のごとく配風ダクト6の上方を横切る動作が入ったり、時に注入ホースの速い動きによって発泡原料gが飛び散ったりして、配風ダクト裏面6bに発泡原料gが載る事態が発生する。本製法によれば、斯かる事態に陥っても、シートパッドPが不良品扱いとならない(詳細後述)。
【0018】
続いて、上型7bを作動させ型閉じする(
図8)。上型7bと下型7aとの型閉じで、配風ダクト6,浸透阻止材5付き裏当て材4がインサートセットされたシートパッド用キャビティCができる。型閉じに伴い、浸透阻止材5が、配風ダクト裏面6b側の平坦部分63上に載った発泡原料g2の浸透を阻んで、該平坦部分63に載る。型閉じで、浸透阻止材5が配風ダクト6の裏面6b、具体的には基部平坦部分63Kに圧縮状態で当接する。型開状態で、上型7bにセットされた例えば当初厚みt5が約1.8mmあった浸透阻止材5は、この圧縮により、厚みt5が約0.2mmにまで潰れる。シート材51の発泡倍率はパッド本体1のものよりも大きい。
浸透阻止材5は、その主要部たるシート材51が独立気泡性発泡プラスチックからなるため、特許文献1の含浸性を有するプレスフェルト9と違って、配風ダクト裏面6bに載った発泡原料g2の裏当て材4側への浸透を完全ブロックする。さらに、該浸透阻止材5が圧縮で圧し潰されることによる反発力で、配風ダクト裏面6bに載った発泡原料g2を配風ダクト6外へと押し出す。型閉じ直後の配風ダクト6上に載った発泡原料g2は、流動性のある液状であり、上方側がシート材51で阻止されるので配風ダクト6上の水平外方へとスムーズに押し出される。万一、発泡原料gの一部分が配風ダクト6上に残ったとしても、その一部分は浸透阻止材5のシート材51への浸透が阻まれるので、続く発泡成形時に、配風ダクト6上で薄膜状の硬化で留まる。
【0019】
前記型閉じの後、主工程の発泡成形に移る。
図8の型閉じ状態を所定時間維持し、
図1〜
図4ごとくの配風ダクト6,浸透阻止材5,裏当て材4が一体化されるシートパッドPを発泡成形する。パッド本体1の発泡成形で、配風ダクト6が埋設され、且つ裏当て材4が基部平坦部分63K上の浸透阻止材5を覆う。裏当て材4は、基部6K上の浸透阻止材5及び該基部6Kを含めた配風ダクト裏面6bを覆って、シートパッドPの発泡成形で、パッド本体裏面1bに被着一体化する。シートパッドPが成形されると、隆起部72が乗員当接側のパッド本体表面1aに窪み21を形成し、該窪み21がエア噴出口64に連通する空気吹出口20となる。
【0020】
ここで、浸透阻止材5による発泡原料gの浸入阻止作用で、その裏面側に配される裏当て材4に発泡原料gの浸入,硬化は起こらない。本実施形態のごとく、浸透阻止材5に、シート材51の両面に難燃性不織布52が貼着一体化されている複合シート材51を用いると、基部6Kと対向する側の難燃性不織布52に発泡原料gが含浸硬化する場合があるが、厚みt5の大半を占めるシート材51、さらに裏当て材4側の難燃性不織布52が発泡原料gに含浸しないので何ら問題ない。基部6Kと対向する側の難燃性不織布52に発泡原料gを含浸させて、浸透阻止材5を配風ダクト6に一体化させるのは必須でない。裏当て材4側だけに難燃性不織布52をシート材51に貼着した浸透阻止材5やシート材51だけの浸透阻止材5であっても、パッド本体1の発泡成形で、裏当て材4は浸透阻止材5を取り囲んでパッド本体裏面1bに被着一体化する。発泡成形を終えると、接着箇所なしの浸透阻止材5であっても、その全周面がパッド本体1,裏当て材4に囲まれて一体化する。
尚、発泡成形で、下型型面71に注がれた発泡原料g1は、配風ダクト裏面6b側の平坦部分63に載った発泡原料g2と違って、製品厚みが小さくなったとはいえ、ある程度発泡硬化が進んだ後、裏当て材4に到達する。よって、浸透阻止材5がない裏当て材4の部位は、その裏面側に発泡原料gの浸み出しがなく、異音防止の役目を担ってパッド本体1と付着一体化する。
【0021】
シートパッドPの発泡成形を終え、脱型すれば、所望のシートパッドPが得られる(
図1〜
図4)。脱型により、圧縮状態のシート材51は開放されるので、その弾性復元力によって、シート材51、浸透阻止材5は当初厚みと同等又はそれに近い状態にまで戻す。
図4のように、パッド本体裏面1bよりも張り出す厚みt5がある浸透阻止材5になる。シートパッドPに図示しない表皮を被せると、所望の車両座席シート向け座部用シートクッションが完成する。符号t7はパッド本体厚みt1に対応するキャビティ高さ、符号71a,符号76aは型合せ面、符号78は吊溝11を形成する凸部で、符号78aは縦溝11a用、符号78bは横溝11b用を示す。
【0022】
(2)車両用シートパッド
上記製造方法等で得られるシートパッドPは、インサート品6たる配風ダクト6が埋設一体化され、裏当て材4,浸透阻止材5がパッド本体1と一体化されているシートパッドPである(
図1〜
図4)。シートパッドPのパッド本体1に、平坦部分63を裏面側に有して埋設一体化されているインサート品6すなわち配風ダクト6と、該平坦部分63を覆って、パッド本体1の裏面1bに被着一体化されている不織布からなる裏当て材4と、を具備する車両用シートパッドPにして、さらに浸透阻止材5を備えるシートパッドPである。独立気泡性発泡プラスチックのシート材51を有するシート状のクッション性浸透阻止材5が、その一方の面を配風ダクト裏面6b側の平坦部分63に当接し、さらに該平坦部分63上の該浸透阻止材5を裏当て材4が覆ってパッド本体1の裏面1bに被着一体化されている車両用シートパッドPとする。
【0023】
インサート品6たる配風ダクトは、平面視中央に配される基部6Kから四方にダクト部6Dが延び、表面側にエア噴出口64が形成される一方、裏面側にエア導入口61aが形成された合成樹脂製品である(
図1〜
図3)。配風ダクト6は、平面視中央に配される基部6Kの裏面側にエア導入口61aを有すると共に、該基部6Kから四方にダクト部6Dが延び、そのダクト経路の表面側にエア噴出口64を有する。本シートパッドPは、基部6Kの裏面側に形成した平坦部分63に浸透阻止材5が当接している。
【0024】
浸透阻止材5は、独立気泡性発泡プラスチックのクッション性シート材51を有し、一方の面が基部6Kの裏面側平坦部分63Kに当接して、他方の面がパッド本体裏面1bとほぼ一様な面を形成しながらも、
図4のごとくパッド本体裏面1bよりも若干外方に張り出す格好になる。既述のごとく、浸透阻止材5は、配風ダクト6に載って圧縮状態で型閉じされて(
図8)、パッド本体1が発泡成形されるので、脱型後に弾性復元力によって元に戻るからである。当初厚みt5の1.8mmほど在る浸透阻止材5が元の厚みに弾性復元すれば、浸透阻止材5の裏面が、その略全域で、パッド本体裏面1bよりも外方へ1.6mmほど出っ張る。尚、
図4で、裏当て材4を判り易くするため、浸透阻止材5,パッド本体裏面1bから離して図示するが、実際の裏当て材4は浸透阻止材5に当接してこれを覆い、また該浸透阻止材5を取り囲んで、その周囲のパッド本体裏面1bに被着一体化している。
本浸透阻止材5は、(1)シートパッドの製造方法で用いたシート材51の両面(又は片面)に、難燃性不織布52が貼着一体化されている複合シート材51からなる浸透阻止材5である。これに代えて、シート材51の片面又は両面に難燃性接着剤が塗布された状態の複合シート材51からなる浸透阻止材5であってもよい。難燃性接着剤にすれば、浸透阻止材5は、裏当て材4の助けを借りずとも、配風ダクト6の平坦部分63に載った段階で該配風ダクト6と一体化するシートパッドPになる。
浸透阻止材5,配風ダクト6,裏当て材4等の他の構成は、シートパッドの製造方法で述べた構成と同様で、その説明を省く。符号29はバックパッドとの当り面、符号40は裏当て材4に設けたエア導入口61a用の開孔を示す。
【0025】
(3)効果
このように構成した車両用シートパッド及びその製造方法は、独立気泡性発泡プラスチックのシート材51を有して、一方の面がインサート品6たる配風ダクトの裏面側平坦部分63に当接したシート状のクッション性浸透阻止材5を備えるので、その製造に係るパッド本体1の発泡原料注入時に、発泡原料gが該平坦部分63に誤って載っても、シート材51がブロックして裏当て材4への浸透を阻止する。したがって、発泡原料gの注入で、該平坦部分63上に発泡原料gを誤って注いだり該発泡原料gが飛び散ったりしても、裏当て材4の裏面側に発泡原料gの浸み出しによる硬化物Rが現れなくなるので、シートフレーム等との擦れによる異音発生防止に優れたシートパッドPを造ることができる。
【0026】
ちなみに、特許文献1の高級車等に適用されるシートパッドは、パッド本体1の厚みが大であるため発泡原料gの量が多く、配風ダクト6にプレスフェルト9を載せた後、配風ダクト6,プレスフェルト9を避ける気配りをして、時間をかけ、下型型面71に発泡原料gを注入できる(特許文献1の
図4〜
図6)。一方、配風ダクト6を普及車等に適用させるべく、低コスト化,軽量化を目指すとなると、パッド本体厚みt1が小になり、発泡原料gの注入量も少なくなる。ボイド,欠肉等の不良品を出さないようにするには、シートパッドの製造で、少ない注入量の発泡原料gを、下型7aにセットした配風ダクト6の頭上を横切って(
図7の実線矢印)、下型7aの隅々まで急いで注入していかねばならない。その結果、どうしても配風ダクト6上に発泡原料gを垂らしたり飛び散らせたりして平坦部分63上に発泡原料gが載って、歩留まり低下を招く。平坦部分63上に特許文献1のようにプレスフェルト9が在ると、含浸性を有するので、これを汚し硬化させ、不良品扱いになる。プレスフェルト9を仮に上型7bにセットしても、既述のごとく、型閉じで、未だ発泡成形初期にある発泡原料gは液状であり、プレスフェルト9,裏当て材4の裏面側にまで浸透し、硬化物Rが現れる不具合を招く。
【0027】
これに対し、本発明は、独立気泡性発泡プラスチックのシート材51を有する浸透阻止材5を裏当て材4に取付けて、上型7bにセットするので、発泡原料の注入時、配風ダクト6上に発泡原料gを垂らしたり飛び散らせたりして平坦部分63上に発泡原料gを載せても、浸透阻止材5,裏当て材4へ浸透,硬化は起こらない。平坦部分63上に誤って液状発泡原料gが載っても、型閉じ時に、独立気泡性発泡プラスチックのシート材51を有するシート状のクッション性浸透阻止材5が圧縮され、その反力で該発泡原料gを平坦部分63外へ追い出す。型閉じ時の追い出しが不十分で、仮に、浸透阻止材5が発泡成形初期にある液状発泡原料gに接触しても、非含浸性シート材51が液状発泡原料gの浸透,通過を阻み、裏当て材4へ辿りつかせない。かくして、シート材51は勿論、その背面側裏当て材4の領域への発泡原料gの含浸,硬化をなくして、シートフレーム等との擦れ音の異音発生防止に盤石な対策製品となる。シートフレームとの長時間の擦れで、万一、裏当て材4が破れても、クッション性のある柔らかな浸透阻止材4が当たるので、異音は発生せず、万全な対策品になっている。
【0028】
また、型閉じにより、該浸透阻止材5が配風ダクト裏面6b側の平坦部分63に載り、浸透阻止材5が該平坦部分63上に載った発泡原料gの浸透を阻むと、シートパッドの製造で、平坦部分63に発泡原料gが載るようなことがあっても何ら支障なく、不良品にならないので、歩留まり向上を果たす。
【0029】
さらに、製品厚みが小さくなるシートパッドPになっても、プレスフェルト9と違って、浸透阻止材5はシート状で厚みが薄いので、その分、パッド本体厚みt1が大きくとれ、シートパッドPが必要なクッション性を保てるようになる。
さらにいえば、硬いプレスフェルト9とは違って、浸透阻止材5のシート材51が独立気泡性発泡プラスチックからなるので、脱型後、発泡成形で圧縮状態にあった浸透阻止材5は、弾性復元してクッション性に富むシートになる。かくして、シートパッド厚みが小さくなっても、パッド本体厚みt1を大きくとれ、加えて、クッション性の高い浸透阻止材5が加わることによって要求仕様のクッション性をサポートし、所望のクッション性を得る良好なシートパッドPが出来上がる。
クッション性,快適性等の品質を落さずに、低コスト化等に対応してシートパッドPの厚みを小さくでき、低コスト化のみならず軽量化の実現に向けて効を奏す。
【0030】
加えて、シート材51がオレフィン系の独立気泡性発泡プラスチックであると、独立気泡のポリエチレン,ポリプロピレン等があり、低コスト化対応できる。シート材51の片面又は両面に、難燃性不織布52が貼着又は難燃性接着剤が塗布された状態の複合シート材51を、前記浸透阻止材5とすると、防炎対策も講じられるので、安全性向上に貢献する。
このように、本車両用シートパッド及びその製造方法は、上述した種々の優れた効果を発揮し極めて有益である。
【0031】
尚、本発明においては前記実施形態に示すものに限られず、目的,用途に応じて本発明の範囲で種々変更できる。シートパッドP,パッド本体1,裏当て材4,浸透阻止材5,インサート品6,発泡型7等の形状,大きさ,個数,材質等は用途に合わせて適宜選択できる。例えば、実施形態はシートパッドPをクッションパッドに適用したが、バックパッドにも適用できる。インサート品6には補強部材等を用いることができる。