特開2017-100967(P2017-100967A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-100967(P2017-100967A)
(43)【公開日】2017年6月8日
(54)【発明の名称】毛髪化粧料組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/31 20060101AFI20170512BHJP
   A61K 8/92 20060101ALI20170512BHJP
   A61Q 5/00 20060101ALI20170512BHJP
【FI】
   A61K8/31
   A61K8/92
   A61Q5/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-233311(P2015-233311)
(22)【出願日】2015年11月30日
(71)【出願人】
【識別番号】592255176
【氏名又は名称】株式会社ミルボン
(74)【代理人】
【識別番号】100078064
【弁理士】
【氏名又は名称】三輪 鐵雄
(74)【代理人】
【識別番号】100115901
【弁理士】
【氏名又は名称】三輪 英樹
(72)【発明者】
【氏名】松本 尚人
(72)【発明者】
【氏名】瀧野 雄介
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA082
4C083AA121
4C083AA122
4C083AC011
4C083AC022
4C083AC072
4C083AC122
4C083AC172
4C083AC782
4C083AD021
4C083AD022
4C083AD151
4C083AD152
4C083BB04
4C083CC31
4C083DD30
4C083EE06
4C083EE28
(57)【要約】
【課題】 液状炭化水素とシア脂とが配合されており、シア脂の分散性が良好な毛髪化粧料組成物を提供する。
【解決手段】 本発明の毛髪化粧料組成物は、(A)液状炭化水素、(B)シア脂および(C)(モリンガ油/水添モリンガ油)エステルズが配合されており、水の配合量が2質量%以下であることを特徴とするものである。本発明の毛髪化粧料組成物においては、上記(B)の配合量に対する上記(C)の配合量の比率が、0.5〜2.0であることが好ましい。また、本発明の毛髪化粧料組成物には、(D)液状ジメチルポリシロキサンや(E)ポリエチレン、(F)ノニオン界面活性剤が更に配合されていることが好ましい。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)〜(C)の成分が配合されており、水の配合量が2質量%以下であることを特徴とする毛髪化粧料組成物。
(A)液状炭化水素
(B)シア脂
(C)(モリンガ油/水添モリンガ油)エステルズ
【請求項2】
上記(B)の配合量に対する上記(C)の配合量の比率が、0.5〜2.0である請求項1に記載の毛髪化粧料組成物。
【請求項3】
(D)液状ジメチルポリシロキサンが更に配合されている請求項1または2に記載の毛髪化粧料組成物。
【請求項4】
(E)ポリエチレンが更に配合されている請求項1〜3のいずれかに記載の毛髪化粧料組成物。
【請求項5】
(F)ノニオン界面活性剤が更に配合されている請求項1〜4のいずれかに記載の毛髪化粧料組成物。
【請求項6】
上記(B)の配合量が、5〜50質量%である請求項1〜5のいずれかに記載の毛髪化粧料組成物。
【請求項7】
上記(A)の配合量が、10〜60質量%である請求項1〜6のいずれかに記載の毛髪化粧料組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状炭化水素とシア脂とが配合されており、シア脂の分散性が良好な毛髪化粧料組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、整髪剤などの毛髪化粧料の構成成分として、流動パラフィンなどの液状炭化水素やシア脂が、しばしば使用されている(特許文献1など)。こうした毛髪化粧料において、液状炭化水素は毛髪の艶や保湿感を向上させる機能を発揮し、また、シア脂は毛髪の感触を向上させる機能を発揮するといわれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−181141号公報(特許請求の範囲、段落[0013]、[0016]〜[0020])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、液状炭化水素とシア脂とを配合した毛髪化粧料においては、シア脂が粒状に析出しやすく、特にシア脂の配合量が多くなると、その析出が顕著になることが、本発明者らの検討により明らかとなった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、液状炭化水素とシア脂とが配合されており、シア脂の分散性が良好な毛髪化粧料組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成し得た本発明の毛髪化粧料組成物は、下記(A)〜(C)の成分が配合されており、水の配合量が2質量%以下であることを特徴とするものである。
(A)液状炭化水素
(B)シア脂
(C)(モリンガ油/水添モリンガ油)エステルズ
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、液状炭化水素とシア脂とが配合されており、シア脂の分散性が良好な毛髪化粧料組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の毛髪化粧料組成物は、水の配合量が2質量%以下といった水の配合量が極めて少ないもの、実質的には、いわゆる非水系の毛髪化粧料組成物であり、(A)液状炭化水素と、(B)シア脂と、(C)(モリンガ油/水添モリンガ油)エステルズとが配合されている。本発明の毛髪化粧料組成物は、整髪剤として特に有用である。
【0009】
本発明の毛髪化粧料組成物において、(A)成分である液状炭化水素は、主に、毛髪に艶や保湿感を付与するための成分であり、また、後述する(E)ポリエチレンの溶媒としても機能する成分である。
【0010】
液状炭化水素としては、少なくとも20〜50℃の温度範囲において液状であるもの(20〜50℃の温度範囲で液状であればよく、50℃以上の温度や20℃未満の温度においても液状であるものであってもよい)が挙げられ、具体的には、流動パラフィン、流動イソパラフィン、スクワランなどが挙げられ、頭皮への刺激を抑止する観点からは、流動パラフィンが良い。
【0011】
毛髪化粧料組成物における(A)成分の配合量は、10〜60質量%であることが好ましく、毛髪化粧料組成物の高温環境下での剤型の安定性を高める観点からは、40質量%以下であることがより好ましい。
【0012】
本発明の毛髪化粧料組成物において、(B)成分であるシア脂は、主に、毛髪の感触の向上や、整髪力の確保に寄与する成分である。
【0013】
なお、本発明の毛髪化粧料組成物に配合するシア脂は、毛髪化粧料組成物の整髪性が向上することから、液状でないものが望ましく、具体的には、融点(凝固点)が30〜45℃のものが好ましい。毛髪化粧料組成物を毛髪に塗布後、ある程度の時間がたってから整髪するような場合、例えば、毛髪化粧料組成物を就寝前に毛髪に塗布し、朝に起床してから整髪するような場合には、毛髪用化粧料組成物に液状でないシア脂を配合していると、整髪にドライヤーを使用することで毛髪表面に付着しているシア脂が溶けて流動性が生じるためにヘアスタイルが整えやすくなり、また、その後に冷えてシア脂が毛髪表面で再度流動性を失うことで、整えたヘアスタイルを良好に維持することができるようになる。
【0014】
毛髪化粧料組成物における(B)成分の配合量は、毛髪の感触をより高めやすくなることから、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、また、(B)成分の粒状析出をより抑えやすくなることから、50質量%以下であることが好ましく、25質量%以下であることがより好ましく、20質量%以下であることが更に好ましく、15質量%以下であることが特に好ましい。
【0015】
本発明の毛髪化粧料組成物において、(C)成分である(モリンガ油/水添モリンガ油)エステルズは、ワサビノキ種子油と水添モリンガ油とのエステル交換により得られるものであり、(B)成分であるシア脂の粒状析出を抑制して、その分散性を高めるための成分である。
【0016】
本発明の毛髪化粧料組成物において、(B)成分であるシア脂の配合量に対する(C)成分である(モリンガ油/水添モリンガ油)エステルズの配合量の比率、すなわち、(B)成分の配合量をb(質量%)とし、(C)成分の配合量をc(質量%)としたときの、比c/bは、シア脂の粒状析出を抑制する効果がより向上することから0.5以上であることが好ましく、毛髪化粧料組成物が硬くなることを回避しやすいことから2.0以下であることが好ましく、1.5以下であることがより好ましく、1.0以下であることが更に好ましい。
【0017】
本発明の毛髪化粧料組成物には、(D)液状ジメチルポリシロキサンを配合することが好ましい。(D)成分を配合することで、毛髪化粧料組成物の操作性を高めることができる。(D)成分には、例えば、化粧品原料基準一般試験法粘度測定法第1法に準拠して測定した粘度が10〜100mm/sである液状ジメチルポリシロキサンを用いる。毛髪化粧料組成物における(D)成分の配合量は、例えば10〜40質量%である。
【0018】
また、本発明の毛髪化粧料組成物には、(E)ポリエチレンを配合することが好ましい。(E)成分を配合することで、液状炭化水素や液状シリコーンといった液状油の配合量を高めても、毛髪化粧料組成物を、例えばワックス状の剤型にすることが容易となる。毛髪化粧料組成物における(E)成分の配合量は、例えば2〜8質量%である。
【0019】
なお、上記の通り、(A)成分である液状炭化水素は(E)成分の溶媒としても機能するため、毛髪化粧料組成物に(E)成分を配合する場合には、(A)成分の配合量を、上記の好適範囲の中でもより多くすることが望ましい。
【0020】
更に、本発明の毛髪化粧料組成物には、(F)ノニオン界面活性剤を配合することが好ましい。(F)成分を配合することで、毛髪から本発明の毛髪化粧料組成物を洗い流す際に、毛髪化粧料組成物の毛髪からの落ちがより良好にとなる。
【0021】
(F)成分の具体例としては、例えば、ステアリン酸PEG−5グリセリル、ステアリン酸PEG−15グリセリル、イソステアリン酸PEG−5グリセリル、イソステアリン酸PEG−8グリセリル、イソステアリン酸PEG10−グリセリル、イソステアリン酸PEG−20グリセリル、イソステアリン酸PEG−25グリセリル、イソステアリン酸PEG−30グリセリル、オレイン酸PEG−5グリセリル、オレイン酸PEG−15グリセリル、トリイソステアリン酸PEG−20グリセリルなどのポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンセチルエーテルなどのポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル;テトラステアリン酸ソルベス−60、テトラオレイン酸ソルベス−6、テトラオレイン酸ソルベス−30、テトラオレイン酸ソルベス−40、テトラオレイン酸ソルベス−60、テトライソステアリン酸ソルベス−30などのポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル;パルミチン酸ソルビタン、ステアリン酸ソルビタン、セスキステアリン酸ソルビタン、イソステアリン酸ソルビタン、セスキイソステアリン酸ソルビタン、オレイン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタンなどのソルビタン脂肪酸エステル;ショ糖脂肪酸エステル;などが挙げられる。
【0022】
毛髪化粧料組成物における(F)成分の配合量は、例えば1〜5質量%である。
【0023】
また、本発明の毛髪化粧料組成物には、上記の(A)〜(F)の各成分以外にも、例えば、通常の整髪剤などの毛髪化粧料に配合されている各種の成分を、本発明の効果を損なわない範囲で配合することができる。このような成分としては、例えば、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、高級アルコール、多価アルコール、糖類、エステル油、油脂、脂肪酸、炭化水素、ロウ、シリコーン、高分子化合物、アミノ酸、動植物抽出物、微生物由来物、無機化合物、香料、防腐剤、金属イオン封鎖剤、紫外線吸収剤などが挙げられる〔ただし、上記の各成分のうち、(A)〜(F)の各成分に該当するものを除く〕。
【0024】
本発明の毛髪化粧料組成物の剤型は、クリーム状またはワックス状である。
【0025】
また、本発明の毛髪化粧料組成物の粘度は、例えば100〜10000Pa・sである。本明細書でいう「毛髪化粧料組成物の粘度」は、応力制御型レオメーター(例えば、HAAKE社製「Rheo Stress 6000」)を使用し、測定温度25℃、コーンプレートセンサーの直径35mm及び傾斜角2°、定常フローカーブモード、待ち時間1分、せん断速度0.7s−1の条件で測定される値を意味している。
【0026】
本発明の毛髪化粧料組成物は、例えば、適量を手に取って、濡れた毛髪または乾いた毛髪に塗布する方法により使用することができる。なお、上記の通り、例えば就寝前の毛髪に塗布しておけば、起床後などでのドライヤーを用いた整髪の際に有用である。
【実施例】
【0027】
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に述べる。ただし、下記実施例は、本発明を制限するものではない。
【0028】
実施例1〜4
流動パラフィン〔(A)成分〕、シア脂〔(B)成分。融点30〜40℃〕、(モリンガ油/水添モリンガ油)エステルズ〔(C)成分〕、液状ジメチルポリシロキサン、ポリエチレン〔(E)成分〕、テトラオレイン酸ソルベス−30〔(F)成分。HLB:11.5〕、ミツロウ、ヒマワリ種子ロウ、ベヘントリモニウムメトサルフェート、セタノール、1,3−ブチレングリコール、2−フェノキシエタノール(防腐剤)および香料を、表1に示す質量比率で配合して、毛髪化粧料組成物を調製した。
【0029】
毛髪化粧料組成物の調製は、防腐剤および香料以外の成分を90℃程度に加熱しながら混合し、その後60℃以下に冷却してから防腐剤および香料を添加することにより行った。
【0030】
比較例1〜5
表2に示すように、(モリンガ油/水添モリンガ油)エステルズなどを配合せず、流動パラフィンおよびシア脂の配合量を変更した以外は、実施例1などと同様にして毛髪化粧料組成物を調製した。
【0031】
実施例および比較例の各毛髪化粧料組成物について、20〜30℃の環境下で保管した後に、その表面を目視観察することで、シア脂の粒状析出の有無を調べた。
それらの結果を表1および表2に併記する。
【0032】
なお、表1および表2には、毛髪化粧料組成物の調製初期にシア脂の粒状析出が認められなかったものを「○」で示し、毛髪化粧料組成物の調製初期からシア脂の粒状析出が認められたものを「×」で示す。また、表1および表2において、「比c/b」は、(B)成分であるシア脂の配合量bに対する、(C)成分である(モリンガ油/水添モリンガ油)エステルズの配合量cの比率を意味し、「比a/b」は、(B)成分であるシア脂の配合量bに対する、(A)成分である流動パラフィンの配合量aの比率を意味している(比c/b、比a/bのいずれも、質量基準での配合量の比率である)。
【0033】
【表1】
【0034】
【表2】
【0035】
表1に示す通り、(A)〜(C)の各成分が配合されており、かつ水が配合されていない実施例1〜4の毛髪化粧料組成物では、比c/bが大きいほど、2週間程度の保管後におけるシア脂の粒状析出が抑制されていた。
【0036】
これに対し、表2に示す通り、(モリンガ油/水添モリンガ油)エステルズを配合していない比較例1〜5の毛髪化粧料組成物では、シア脂と流動パラフィンとの配合比率を変化させても、調製初期からシア脂の粒状析出が生じており、その分散性が実施例の毛髪化粧料組成物よりも劣っていた。